(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】新規融合タンパク質の調製およびそのタンパク質合成の向上における使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230317BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230317BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230317BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230317BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C07K19/00
C12N1/19
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2020506225
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 CN2017115972
(87)【国際公開番号】W WO2019024379
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】201710642517.4
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520037016
【氏名又は名称】康碼(上海)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】KANGMA-HEALTHCODE (SHANGHAI) BIOTECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】BUILDING 12, 118 FURONGHUA ROAD, PUDONG NEW AREA, SHANGHAI 201321,PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 敏
(72)【発明者】
【氏名】劉 帥 龍
(72)【発明者】
【氏名】于 雪
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-544296(JP,A)
【文献】特表2016-521133(JP,A)
【文献】特表2001-514490(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125036(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第103060334(CN,A)
【文献】Molecular and Cellular Biology,1998年,Vol.18, No.1,p.51-57
【文献】The EMBO Journal,1999年,Vol.18, No.17,p.4865-4874
【文献】生化学,2007年,VOl.79, No.3,p.229-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iaの構造を有する、ことを特徴とする融合タンパク質。
S-A-B-C (Ia)
(式中、
Aは
酵母のPab1タンパク質であり、
Bは無いか、またはリンカーペプチドであり、
Cは酵母のeIF4Gタンパク質であり、
Sは無いか、または任意のシグナルペプチドであり、
各「-」はペプチド結合である。)
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む、ことを特徴とするベクター。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターを含むか、またはゲノムに請求項2に記載のポリヌクレオチドが組み込まれている、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項5】
(i)(a)酵母細胞抽出物、(b)必要に応じるポリエチレングリコール、(c)選択可能な外因性ショ糖、および(d)水または水性溶媒である選択可能な溶媒を含む酵母によるインビトロタンパク質合成系と、
(ii)請求項1に記載の融合タンパク質と、
を含む、ことを特徴とする外来性タンパク質を発現するためのインビトロタンパク質合成系。
【請求項6】
(iii)付加的に添加されたeIF4Gタンパク質を更に含む、ことを特徴とする請求項5に記載のインビトロタンパク質合成系。
【請求項7】
前記eIF4Gタンパク質は、構成的または誘導性プロモーターにより誘導発現される、ことを特徴とする請求項6に記載のインビトロタンパク質合成系。
【請求項8】
(i)発現に適した条件で、請求項4に記載の宿主細胞を培養し、請求項1に記載の融合タンパク質を発現することと、
(ii)前記融合タンパク質を分離することと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質の生産方法。
【請求項9】
インビトロタンパク質合成系のインビトロタンパク質の合成能力を向上させる製剤を調製するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項10】
(i)請求項1に記載の融合タンパク質を含む酵母によるインビトロタンパク質合成系を提供することと、
(ii)タンパク質の発現に適した条件で、外来性タンパク質のテンプレートの存在下で、前記酵母によるインビトロタンパク質合成系をインキュベートし、前記外来性タンパク質を発現することと、
を含む、ことを特徴とする発現待ちの外来性タンパク質の発現方法。
【請求項11】
前記融合タンパク質は付加的に添加されたものである、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(ii)は、外来性タンパク質活性の発現活性Q1を検出し、且つ、ステップ(ii)と同じ条件で野生型酵母株をインキュベートし、前記外来性タンパク質の活性Q2を検出し、Q1がQ2よりも著しく高ければ、外来性タンパク質の発現効率が著しく向上したことを示すというステップ(iii)を更に含む、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
外来性タンパク質を発現するインビトロタンパク質合成系を調製するために用いられ、前記インビトロタンパク質合成系は、外来性タンパク質の発現効率を向上させるために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学の分野に関し、具体的には、新規融合タンパク質の調製およびそのタンパク質合成の向上における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は細胞における重要な分子であり、ほとんど細胞の全ての機能の実行に関与する。タンパク質の配列および構造の異なりにより、その機能の異なりが決まられる。細胞内において、タンパク質は酵素類として各種の生化学反応を触媒することができ、シグナル分子として生物体の各種の活動を協調することができ、生物形態をサポートし、エネルギーを蓄積し、分子を輸送し、生物体を動かせることができる。生物医学分野において、タンパク質抗体は標的薬剤として、癌等の疾患を治療する重要な手段である。
【0003】
細胞において、タンパク質翻訳の調節は、栄養欠乏等の外界圧力の対応、細胞発育および分化等の多くのプロセスにおいて重要な役割を果たす。タンパク質翻訳は、翻訳開始、翻訳伸長、翻訳終止、およびリボソームリサイクルという4つのプロセスを含み、ここで、翻訳開始は最も多く制御されるプロセスである。翻訳開始の段階では、リボソーム小サブユニット(40S)が(tRNA)i
Metと結合し、翻訳開始因子の作用でmRNAの5’末端を識別する。小サブユニットが下流へ移動し、開始コドン(AUG)の位置においてリボソーム大サブユニット(60S)と結合し、完全なリボソームを形成し、翻訳伸長の段階に移行する。
【0004】
急速に分裂する酵母細胞において、タンパク質の合成速度は約13000個/秒である。体内で、タンパク質の合成速度はリボソーム数により制限され、細胞の平均リボソーム数は約200000個であり、mRNA分子の数は約15000~60000個である。
【0005】
現在、よく実験された商業化インビトロタンパク質発現システムは、大腸菌システム(E.coli extract、ECE)、ウサギ網状赤血球(Rabbit reticulocyte Lysate、RRL)、小麦胚芽(Wheatgerm extract、WGE)、昆虫(Insect cell extract、ICE)およびヒト由来システムを含む。
【0006】
従来の商業化タンパク質インビトロ合成系において、原核システムの収量は~0.5mg/mLに達成することができ、費用は約~10RMB/μgである。真核システムにおけるCHOシステムの収量は~0.7mg/mLに達成することができ、費用は約~20RMB/μgである。そのため、自然界中の細胞内の製造タンパク質合成系でも細胞外の製造タンパク質合成系でも、いずれも効率が低く、速度が遅いという特徴を有し、タンパク質合成の適用を大きく制限する。
【0007】
そのため、本分野では、インビトロタンパク質の合成効率を効果的に強化できるインビトロタンパク質合成系の開発が差し迫って必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、インビトロタンパク質の合成効率を効果的に強化できるインビトロタンパク質合成系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様では、式Iaまたは式Ibの構造を有する融合タンパク質を提供する。
【数1】
(式中、
AはPabIエレメントであり、
Bは無いか、またはリンカーペプチドであり、
CはeIF4Gエレメントであり、
Sは任意のシグナルペプチドであり、
各「-」はペプチド結合である。)
【0010】
別の好ましい例において、前記式IaまたはIbは、N端からC端までの構造である。N端はNH2端であり、C端はCOOH端である。
【0011】
別の好ましい例において、前記エレメントAは、野生型および変異型のPabI配列を含む。
【0012】
別の好ましい例において、前記PabIは、酵母に由来するPabIである。
【0013】
別の好ましい例において、エレメントAは、SEQ ID NO.:1で表される配列またはその活性断片を有し、あるいは、SEQ ID NO:1で表されるアミノ酸配列と85%以上の相同性(好ましくは、90%以上の相同性、より好ましくは、95%以上の相同性、最も好ましくは、97%以上の相同性、例えば、98%以上、99%以上)を有し、且つ、SEQ ID NO.:1配列と同じ活性を有するポリペプチドである。
【0014】
別の好ましい例において、前記エレメントCは、野生型および変異型のeIF4G配列を含む。
【0015】
別の好ましい例において、前記eIF4Gは、酵母に由来するeIF4Gである。
【0016】
別の好ましい例において、エレメントCは、SEQ ID NO.:2で表される配列またはその活性断片を有し、あるいは、SEQ ID NO:2で表されるアミノ酸配列と85%以上の相同性(好ましくは、90%以上の相同性、より好ましくは、95%以上の相同性、最も好ましくは、97%以上の相同性、例えば、98%以上、99%以上)を有し、且つ、SEQ ID NO.:2配列と同じ活性を有するポリペプチドである。
【0017】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は組換えタンパク質であり、酵母により発現された組換えタンパク質であることが好ましい。
【0018】
別の好ましい例において、前記酵母は、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0019】
別の好ましい例において、前記酵母は、クルイベロマイセスラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロマイセスマルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセスドブジャンスキー(Kluyveromyces dobzhanskii)、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0020】
別の好ましい例において、前記エレメントAは、酵母のPabIタンパク質に由来する。
【0021】
別の好ましい例において、前記エレメントCは、酵母のeIF4Gタンパク質に由来する。
【0022】
別の好ましい例において、前記ペプチドリンカーの長さは0~50アミノ酸であり、10~40個のアミノ酸であることが好ましく、15~25個のアミノ酸であることがより好ましい。
【0023】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、
(A)SEQ ID NO:3で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(B)SEQ ID NO:3で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性(好ましくは、90%以上の相同性、より好ましくは、95%以上の相同性、最も好ましくは、97%以上の相同性、例えば、98%以上、99%以上)を有し、且つ、外来性タンパク質の発現効率を向上させる機能または活性を有するポリペプチド、
(C)SEQ ID NO:3のいずれかで表されるアミノ酸配列を、1~15(好ましくは、2~10、より好ましくは、3~8)個のアミノ酸残基により置換、欠失、または付加することで形成され、外来性タンパク質の発現効率を向上させる機能または活性を有する誘導されたポリペプチド、
の群から選ばれる。
【0024】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示すとおりである。
【0025】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は、
(a)外来性タンパク質の発現効率を向上させるという特性、
(b)インビトロ翻訳効率を向上させるという特性、
の群から選ばれる1つまたは複数を有する。
【0026】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質は、蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体の可変領域、ルシフェラーゼ突然変異、α-アミラーゼ、エンテロシンA、c型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン前駆体、インターフェロンα A、インターロイキン-1β、リゾチーム、血清アルブミン、一本鎖抗体セグメント(scFV)、トランスサイレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0027】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0028】
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、DNA配列、RNA配列の群から選ばれる。
【0029】
別の好ましい例において、前記DNA配列は、ゲノム配列、cDNA配列の群から選ばれる。
【0030】
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドはmRNAまたはcDNAであり、且つ、前記ポリヌクレオチドは式IIで表される構造を有する。
【数2】
(式中、
A1は、上記Aエレメントをコードするヌクレオチド配列であり、
C1は、上記Cエレメントをコードするヌクレオチド配列であり、
「-」は、エレメントA1とエレメントC1との間の結合手である。)
【0031】
別の好ましい例において、前記エレメントA1は、SEQ ID NO.:4で表される配列を有する。
【0032】
別の好ましい例において、前記エレメントC1は、SEQ ID NO.:5で表される配列を有する。
【0033】
本発明の第3態様では、本発明の第2態様に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0034】
本発明の第4態様では、本発明の第3態様に記載のベクターを有するか、またはゲノムに本発明の第2態様に記載のポリヌクレオチドが組み込まれている宿主細胞を提供する。
【0035】
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、本発明の第3態様に記載の発現ベクターまたは本発明の第2態様に記載のポリヌクレオチドを導入して相同組換えにより形成され、それにより、ゲノムまたは染色体に本発明の第1態様に記載の融合タンパク質のコード配列が組み込まれている。
【0036】
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、クルイベロマイセス、サッカロマイセスセレビシエ、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0037】
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、クルイベロマイセスラクティス、クルイベロマイセスマルシアヌス、クルイベロマイセスドブジャンスキー、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0038】
別の好ましい例において、前記宿主細胞はクルイベロマイセスラクティスである。
【0039】
本発明の第5態様では、
(i)(a)酵母細胞抽出物、(b)必要に応じるポリエチレングリコール、(c)必要に応じる外因性ショ糖、および(d)水または水性溶媒である必要に応じる溶媒を含む酵母によるインビトロタンパク質合成系と、
(ii)本発明の第1態様に記載の融合タンパク質と、
を含む外来性タンパク質を発現するためのインビトロタンパク質合成系を提供する。
【0040】
別の好ましい例において、前記反応系は、(iii)付加的に添加されたeIF4Gタンパク質を更に含む。
【0041】
別の好ましい例において、前記eIF4Gタンパク質は、構成的または誘導性プロモーターにより誘導発現される。
【0042】
別の好ましい例において、前記構成的または誘導性プロモーターは酵母に由来する。
【0043】
別の好ましい例において、前記酵母は、クルイベロマイセス、サッカロマイセスセレビシエ、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0044】
別の好ましい例において、前記構成的または誘導性プロモーターは、pScTEF1、pScPGK1、pKlTEF1、pKlPGK1、pScADH1、pScTPI1、pScTDH3、pKlADH1、pKlTPI1、pKlTDH3、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0045】
本発明の第6態様では、
(i)発現に適した条件で、本発明の第4態様に記載の宿主細胞を培養し、本発明の第1態様に記載の融合タンパク質を発現することと、
(ii)前記融合タンパク質を分離することと、
を含む本発明の第1態様に記載の融合タンパク質の生産方法を提供する。
【0046】
本発明の第7態様では、外来性タンパク質を発現するインビトロタンパク質合成系を調製するために用いられ、前記インビトロタンパク質合成系は、外来性タンパク質の発現効率を向上させるために用いられる本発明の第1態様に記載の融合タンパク質の使用を提供する。
【0047】
別の好ましい例において、前記反応系は、付加的なeIF4Gタンパク質を更に含む。
【0048】
本発明の第8態様では、本発明の第1態様に記載の融合タンパク質の、インビトロタンパク質合成系のインビトロタンパク質の合成能力を向上させる製剤の調製における使用を提供する。
【0049】
本発明の第9態様では、
(i)本発明の第1態様に記載の融合タンパク質を含む酵母によるインビトロタンパク質合成系を提供することと、
(ii)タンパク質の発現に適した条件で、前記外来性タンパク質のテンプレートの存在下で、前記酵母によるインビトロタンパク質合成系をインキュベートし、前記外来性タンパク質を発現することと、
を含む発現待ちの外来性タンパク質の発現方法を提供する。
【0050】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質は付加的に添加されたものである。
【0051】
別の好ましい例において、前記融合タンパク質および前記酵母によるインビトロタンパク質合成系における他のタンパク質は、同じ酵母の抽出物に由来する。
【0052】
別の好ましい例において、前記方法は、非診断的および非治療的なものである。
【0053】
別の好ましい例において、前記ステップ(ii)は、外来性タンパク質活性の発現活性Q1を検出し、且つ、ステップ(ii)と同じ条件で野生型酵母株をインキュベートし、前記外来性タンパク質の活性Q2を検出し、Q1がQ2よりも著しく高ければ、外来性タンパク質の発現効率が著しく向上したことを示すというステップ(iii)を更に含む。
【0054】
別の好ましい例において、前記「~よりも著しく高い」とは、Q1/Q2≧2であることを意味し、好ましくは≧3、より好ましくは≧4であることを意味する。
【0055】
別の好ましい例において、前記酵母によるインビトロタンパク質合成系は、遺伝子組換えされたクルイベロマイセスインビトロタンパク質合成系(好ましくは、クルイベロマイセスラクティスインビトロタンパク質合成系)である。
【0056】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質のコード配列は、原核生物、真核生物に由来する。
【0057】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質のコード配列は、動物、植物、病原体に由来する。
【0058】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質のコード配列は哺乳動物に由来し、好ましくは、ヒト、マウス、ラットを含む霊長類動物、齧歯類動物に由来する。
【0059】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質のコード配列は、蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体の可変領域をコードする外因性DNA、ルシフェラーゼ変異体のDNA、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0060】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質は、蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体の可変領域、ルシフェラーゼ突然変異、α-アミラーゼ、エンテロシンA、c型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン前駆体、インターフェロンα A、インターロイキン-1β、リゾチーム、血清アルブミン、一本鎖抗体セグメント(scFV)、トランスサイレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0061】
本発明の範囲内において、本発明の上記各技術的特徴と後(例えば、実施例)で具体的に説明する各技術的特徴との間は、互いに組み合わせて新しいまたは好ましい技術案を構成できることを理解すべきである。紙面の都合のために、ここで説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】pKM-CAS1.0-KleIF4Gのプラスミドマップを示す。
【
図2】pKM-pScTEF1-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図3】pKM-pScPGK1-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図4】pKM-pKlTEF1-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図5】pKM-pKlPGK1-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図6】pKM-CAS1.0-KlTDH3-1のプラスミドマップを示す。
【
図7】pKM-CAS1.0-KlTDH3-2のプラスミドマップを示す。
【
図8】pKM-KlTDH3-1-F-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図9】pKM-KlTDH3-2-F-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図10】pKM-CAS1.0-KlPab1のプラスミドマップを示す。
【
図11】pKM-KlPab1-KleIF4G-DDのプラスミドマップを示す。
【
図12】操作された株のインビトロ翻訳活性を測定する模式図を示す。蛍光タンパク質の強度を用いてシステムのタンパク質の発現能力を指示する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
鋭意検討を行ったところ、大量のスクリーニングおよび模索により、式Iaまたは式Ibの構造を有する融合タンパク質が初めて意外と見出され、本発明の融合タンパク質は、インビトロ翻訳効率を大幅に向上させることができる。また、本発明は、eIF4Gの前に構成的または誘導性プロモーター(例えば、pScTEF1、pScPGK1、pKlTEF1、pKlPGK1、pScADH1、pScTPI1、pScTDH3、pKlADH1、pKlTPI1、pKlTDH3等)を挿入することにより、インビトロタンパク質の合成能力を著しく強化できることを更に見出した。
【0064】
且つ、本発明者は、本発明の融合タンパク質がインビトロ翻訳効率を向上させる際に、本発明の融合タンパク質のエレメントeIF4Gの発現量が増加しないことを更に見出した。
【0065】
具体的には、本発明の融合タンパク質を含む酵母によるインビトロタンパク質合成系において、合成されたルシフェラーゼ活性の相対光単位値は1.50×109と高く、eIF4Gの前に構成的または誘導性プロモーターを挿入することにより合成されたルシフェラーゼ活性の相対光単位値は1.57×109と高く、野生型酵母株(例えば、Y1140)により合成されたルシフェラーゼの相対光単位値(4.11×108)よりも遥かに高い。これに基づき、本発明者は本発明を完成した。
【0066】
eIF4Fエレメント
【0067】
真核生物では、複数種の翻訳開始因子はタンパク質翻訳開始プロセス(表1)に関与する。ここで、eIF4Fは「キャップ構造」の識別および下流翻訳開始因子とリボソームの応募を担当する。eIF4Fは、eIF4E、eIF4GおよびeIF4Aという3つのタンパク質サブユニットからなる。eIF4Eは「キャップ構造」と特異的に結合し、eIF4FをmRNAの5’端の非翻訳領域にアンカーする。eIF4Aは1種のRNAヘリカーゼであり、eIF4Gは、ほぼ翻訳開始プロセス全体にわたる足場タンパク質であり、複数種の翻訳開始因子と相互作用でき、下流因子の応募プロセスにおいて重要な作用を有する。
【0068】
【0069】
本発明において、eIF4Gの前に酵母由来(例えば、サッカロマイセスセレビシエ、クルイベロマイセス等)の構成的または誘導性プロモーター(例えば、pScTEF1、pScPGK1、pKlTEF1、pKlPGK1、pScADH1、pScTPI1、pScTDH3、pKlADH1、pKlTPI1、pKlTDH3等)を挿入することにより、インビトロタンパク質の合成能力を強化する。
【0070】
1つの好ましい実施形態において、前記eIF4Gのヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:5示すとおりであり、前記eIF4Gのタンパク質配列はSEQ ID NO.:2に示すとおりである。
【0071】
【0072】
【0073】
Pab1エレメント(Pab1タンパク質)
本発明において、「Pab1」と「PabI」は、同じ意味を有し、交換使用可能なものである。
【0074】
Pab1は1つの71kDaのRNA結合タンパク質であり、4つのRRM(RNA recognition motif 1~4)ドメインおよび1つのMLLEドメインからなる。各RRMドメインにいずれも2つの保存的RNP構造(RNP1/2)が含まれ、RNAとの結合を担当する。
【0075】
1つの好ましい実施形態において、前記Pab1のヌクレオチド配列はSEQ ID NO.:4に示すとおりであり、前記Pab1のタンパク質配列はSEQ ID NO.:1に示すとおりである。
【0076】
【0077】
【0078】
融合タンパク質
【0079】
本明細書で使用されるように、「本発明の融合タンパク質」、「本発明のPabI-eIF4G融合タンパク質」および「PabI-eIF4G融合タンパク質」という用語は、相互に交換して使用することができ、PabIエレメントとeIF4Gエレメントとが融合して形成した融合タンパク質を指す。本発明の融合タンパク質において、PabIエレメントとeIF4Gエレメントとの間に、リンカーペプチドまたはフレキシブルジョイントが含まれても含まれなくてもよい。また、前記融合タンパク質には開始のMetが含まれても含まれなくてもよく、シグナルペプチドが含まれても含まれなくてもよく、タグ配列(例えば、6His等)が含まれても含まれなくてもよい。
【0080】
1つの好ましい実施形態において、本発明に係る融合タンパク質は、上記式Iaまたは式Ib構造を有する。好ましくは、本発明の融合タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO.:3に示すとおりである。
【0081】
【0082】
本発明において、本発明の融合タンパク質は、無細胞のインビトロタンパク質合成系(特に、酵母によるインビトロタンパク質合成系)のインビトロタンパク質の合成能力を著しく向上させることができる。
【0083】
インビトロタンパク質合成系
【0084】
本発明の融合タンパク質は、インビトロタンパク質合成系のタンパク質の合成能力を向上させるために使用できる。
【0085】
典型的なインビトロタンパク質合成系は酵母によるインビトロタンパク質合成系である。
【0086】
酵母(yeast)は、培養が簡単であり、タンパク質の折り畳みが効率的であり、翻訳後に修飾するという利点を兼ね備える。ここで、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキアパストリス(Pichia pastoris)は、複雑な真核タンパク質および膜タンパク質を発現するモデル生物であり、酵母はインビトロ翻訳システムを調製する原料としてもよい。
【0087】
クルイベロマイセス(Kluyveromyces)は子嚢胞子酵母であり、その中のクルイベロマイセスマルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)およびクルイベロマイセスラクティス(Kluyveromyces lactis)は、工業的に広く使用される酵母である。例えば、クルイベロマイセスラクティスは、乳酸をその唯一の炭素源およびエネルギー源とすることができる酵母である。他の酵母と比べ、クルイベロマイセスラクティスは、超強い分泌能力、良好な大規模発酵特性と食品安全のレベル、およびタンパク質を翻訳した後に修飾する能力を同時に有する等のような多くの利点を有し、宿主系として製剤タンパク質を発現することにも巨大な潜在力を示す。
【0088】
本発明において、酵母によるインビトロタンパク質合成系は特に限定されず、1つの好ましい酵母によるインビトロタンパク質合成系は、クルイベロマイセス発現システム(より好ましくは、クルイベロマイセスラクティス発現システム)である。
【0089】
本発明において、クルイベロマイセス(例えば、クルイベロマイセスラクティス)は特に限定されず、タンパク質の合成効率を向上させることができる任意のクルイベロマイセス(例えば、クルイベロマイセスラクティス)株を含む。
【0090】
1つの好ましい実施形態において、本発明の酵母によるインビトロタンパク質合成系は、遺伝子組換えされた酸クルイベロマイセス発現システムである。
【0091】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、
(a)酵母細胞抽出物と、
(b)ポリエチレングリコールと、
(c)必要に応じる外因性ショ糖と、
(d)水または水性溶媒である必要に応じる溶媒と、
を含むインビトロの無細胞のタンパク質合成系を提供する。
【0092】
別の好ましい例において、前記ポリエチレングリコールは、PEG3000、PEG8000、PEG6000、PEG3350、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0093】
別の好ましい例において、前記ポリエチレングリコールは、分子量(Da)が200~10000であるポリエチレングリコール、好ましくは、分子量が3000~10000であるポリエチレングリコールを含む。
【0094】
別の好ましい例において、前記タンパク質合成系で、前記タンパク質合成系の総体積で計算し、成分(a)の濃度(v/v)は20%~70%であり、好ましくは、30~60%であり、より好ましくは、40%~50%である。
【0095】
別の好ましい例において、前記タンパク質合成系で、成分(b)の濃度(w/v、例えば、g/ml)は0.1~8%であり、好ましくは、0.5~4%であり、より好ましくは、1~2%である。
【0096】
別の好ましい例において、前記タンパク質合成系で、前記タンパク質合成系の全重量で計算し、成分(c)の濃度は0.03~40wt%、好ましくは、0.08~10wt%であり、より好ましくは、0.1~5wt%である。
【0097】
特に好ましい実施形態において、本発明に係るインビトロタンパク質合成系は、酵母細胞抽出物、4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、アデニンヌクレオシド三リン酸(ATP)、グアニンヌクレオシド三リン酸(GTP)、シトシンヌクレオシド三リン酸(CTP)、チミンヌクレオシド三リン酸(TTP)、アミノ酸混合物、ホスホクレアチン、ジチオスレイトール(DTT)、ホスホクレアチンキナーゼ、RNA酵素阻害剤、ルシフェリン、ルシフェラーゼDNA、RNAポリメラーゼを含む。
【0098】
本発明において、RNAポリメラーゼは特に限定されず、1種または複数種のRNAポリメラーゼから選ばれてもよく、典型的なRNAポリメラーゼはT7 RNAポリメラーゼである。
【0099】
本発明において、前記酵母細胞抽出物のインビトロタンパク質合成系における割合は特に限定されず、通常、前記酵母細胞抽出物のインビトロタンパク質合成系に占める体系体積は20~70%であり、好ましくは、30~60%であり、より好ましくは、40~50%である。
【0100】
本発明において、前記酵母細胞抽出物は、完全な細胞を含まず、典型的な酵母細胞抽出物は、タンパク質翻訳用のリボソーム、トランスファーRNA、アミノアシルtRNA合成酵素、タンパク質の合成に必要な開始因子と伸長因子、および終止放出因子を含む。また、酵母抽出物には、いくつかの酵母細胞由来の細胞質における他のタンパク質、特に可溶性タンパク質が含まれる。
【0101】
本発明において、前記酵母細胞抽出物に含まれるタンパク質の含有量は20~100mg/mLであり、好ましくは、50~100mg/mLである。前記タンパク質の含有量を測定する方法はクーマシーブリリアントブルー測定方法である。
【0102】
本発明において、前記酵母細胞抽出物の調製方法は限定されず、1つの好ましい調製方法は、
(i)酵母細胞を提供するステップと、
(ii)酵母細胞を洗浄処理し、洗浄された酵母細胞を取得するステップと、
(iii)洗浄された酵母細胞を細胞破砕処理し、酵母粗抽出物を取得するステップと、
(iv)前記酵母粗抽出物を固液分離し、液体部分、すなわち、酵母細胞抽出物を取得するステップと、
を含む。
【0103】
本発明において、前記固液分離の形態は特に限定されず、1つの好ましい形態は遠心である。
【0104】
1つの好ましい実施形態において、前記遠心は液体状態下で行われる。
【0105】
本発明において、前記遠心条件は特に限定されず、1つの好ましい遠心条件は5000~100000gであり、より好ましくは、8000~30000gである。
【0106】
本発明において、前記遠心時間は特に限定されず、1つの好ましい遠心時間は0.5min~2hであり、より好ましくは、20~50minである。
【0107】
本発明において、前記遠心の温度は特に限定されず、好ましくは、前記遠心は1~10℃で行われ、より好ましくは、2~6℃で行われる。
【0108】
本発明において、前記洗浄処理の形態は特に限定されず、1つの好ましい洗浄処理の形態は、洗浄液を用いてpH7~8(好ましくは、7.4)で処理し、前記洗浄液は特に限定されず、典型的な前記洗浄液は、4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸カリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0109】
本発明において、前記細胞破砕処理の形態は特に限定されず、1つの好ましい前記細胞破砕処理は、高圧破砕、凍結融解(例えば、低温液体窒素)破砕を含む。
【0110】
前記インビトロタンパク質合成系におけるヌクレオシド三リン酸混合物は、アデニンヌクレオシド三リン酸、グアニンヌクレオシド三リン酸、シトシンヌクレオシド三リン酸、およびウラシルヌクレオシド三リン酸である。本発明において、各種のモノヌクレオチドの濃度は特に限定されず、通常、それぞれのモノヌクレオチドの濃度は0.5~5mMであり、好ましくは、1.0~2.0mMである。
【0111】
前記インビトロタンパク質合成系におけるアミノ酸混合物は、天然または非天然のアミノ酸を含んでもよく、D型またはL型のアミノ酸を含んでもよい。代表的なアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびヒスチジンという20種の天然アミノ酸を含む(これらに限定されない)。それぞれのアミノ酸の濃度は、通常、0.01~0.5mMであり、好ましくは、0.02~0.2mMであり、例えば、0.05、0.06、0.07、0.08mMである。
【0112】
好ましい例において、前記インビトロタンパク質合成系には、ポリエチレングリコールまたはその類似体が更に含まれる。ポリエチレングリコールまたはその類似体の濃度は特に限定されず、前記タンパク質合成系の全重量で計算し、通常、ポリエチレングリコールまたはその類似体の濃度(w/v)は0.1~8%であり、好ましくは、0.5~4%であり、より好ましくは、1~2%である。代表的なPEGの例は、PEG3000、PEG8000、PEG6000、およびPEG3350を含む(これらに限定されない)。本発明の系は、他の様々な分子量のポリエチレングリコール(例えば、PEG200、400、1500、2000、4000、6000、8000、10000等)を更に含んでもよいことを理解すべきである。
【0113】
好ましい例において、前記インビトロタンパク質合成系はショ糖を更に含む。ショ糖の濃度は特に限定されず、前記タンパク質合成系の全重量で計算し、通常、ショ糖の濃度は0.03~40wt%であり、好ましくは、0.08~10wt%であり、より好ましくは、0.1~5wt%である。
【0114】
1つの特に好ましいインビトロタンパク質合成系には、酵母抽出物に加え、22mMのpH7.4の4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、30~150mMの酢酸カリウム、1.0~5.0mMの酢酸マグネシウム、1.5~4mMのヌクレオシド三リン酸混合物、0.08~0.24mMのアミノ酸混合物、25mMのホスホクレアチン、1.7mMのジチオスレイトール、0.27mg/mLのホスホクレアチンキナーゼ、1%~4%のポリエチレングリコール、0.5%~2%のショ糖、8~20ng/μlのホタルルシフェラーゼのDNA、0.027~0.054mg/mLのT7 RNAポリメラーゼが更に含まれる。
【0115】
1つの好ましい実施形態において、本発明の酵母によるインビトロタンパク質合成系には、(a)本発明に係る融合タンパク質、すなわち、PabI-eIF4G融合タンパク質が更に含まれる。
【0116】
1つの好ましい実施形態において、本発明の酵母によるインビトロタンパク質合成系には、eIF4Gタンパク質が更に含まれ、ここで、本発明のeIF4Gタンパク質は、酵母(例えば、サッカロマイセスセレビシエ、クルイベロマイセス等)由来の構成的または誘導性プロモーター(例えば、pScTEF1、pScPGK1、pKlTEF1、pKlPGK1、pScADH1、pScTPI1、pScTDH3、pKlADH1、pKlTPI1、pKlTDH3等)により誘導発現される。
【0117】
本発明において、本発明の融合タンパク質を含む酵母によるインビトロタンパク質合成系は、インビトロタンパク質の合成能力を著しく強化することができる。また、本発明の融合タンパク質とeIF4Gタンパク質とを合わせて使用する酵母によるインビトロタンパク質合成系は、より高いインビトロタンパク質の合成能力を有する。
【0118】
1つの好ましい酵母によるインビトロタンパク質合成系は、本発明者の先願CN201710125619.9に記載されている。本明細書において、該特許文献は引用により全て本明細書に援用される。該文献における酵母によるインビトロタンパク質合成系は、本発明に係る融合タンパク質を採用しない。
【0119】
典型的には、本発明の酵母によるインビトロタンパク質合成系は、(a)酵母細胞抽出物と、(b)必要に応じるポリエチレングリコールと、(c)必要に応じる外因性ショ糖と、(d)水または水性溶媒である必要に応じる溶媒と、(ii)本発明に係る融合タンパク質とを含む。
【0120】
別の好ましい例において、前記無細胞のタンパク質合成系は、
(e1)RNAを合成するための基質、
(e2)タンパク質を合成するための基質、
(e3)マグネシウムイオン、
(e4)カリウムイオン、
(e5)緩衝剤、
(e6)RNAポリメラーゼ、
(e7)エネルギー再生システム、
の群から選ばれる1種または複数種の成分を含む。
【0121】
別の好ましい例において、前記タンパク質合成系において、成分(e1)の濃度は0.1~5mMであり、好ましくは、0.5~3mMであり、より好ましくは、1~1.5mMである。
【0122】
別の好ましい例において、前記酵母細胞抽出物は、酵母細胞に対する水性抽出物である。
【0123】
別の好ましい例において、前記酵母細胞抽出物は酵母内因性の長鎖核酸分子を含まない。
【0124】
別の好ましい例において、前記合成RNAの基質は、ヌクレオシド一リン酸、ヌクレオシド三リン酸、またはその組み合わせを含む。
【0125】
別の好ましい例において、前記合成タンパク質の基質は、1~20種の天然アミノ酸および非天然アミノ酸を含む。
【0126】
別の好ましい例において、前記マグネシウムイオンはマグネシウムイオン源に由来し、前記マグネシウムイオン源は、酢酸マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0127】
別の好ましい例において、前記カリウムイオンは、カリウムイオン源に由来し、前記カリウムイオン源は、酢酸カリウム、グルタミン酸カリウム、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0128】
別の好ましい例において、前記エネルギー再生システムは、ホスホクレアチン/ホスホクレアチンキナーゼシステム、糖分解経路およびその中間生成物エネルギーシステム、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0129】
別の好ましい例において、前記無細胞のタンパク質合成系は、(f1)人工的に合成されたtRNAを更に含む。
【0130】
別の好ましい例において、前記緩衝剤は、4-ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、またはその組み合わせの群から選ばれる。
【0131】
別の好ましい例において、前記無細胞のタンパク質合成系は、(g1)外因性のタンパク質合成指導用のDNA分子を更に含む。
【0132】
別の好ましい例において、前記DNA分子は線形である。
【0133】
別の好ましい例において、前記DNA分子は環状である。
【0134】
別の好ましい例において、前記DNA分子は、外来性タンパク質をコードする配列を含む。
【0135】
別の好ましい例において、前記外来性ンパク質をコードする配列は、ゲノム配列、cDNA配列を含む。
【0136】
別の好ましい例において、前記外来性タンパク質をコードする配列は、プロモーター配列、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列を更に含む。
【0137】
本発明の主な利点は以下を含む。
(a)本発明は、初めて遺伝子組換え技術により、効率的な細胞形質転換ステージを介して、細胞内の遺伝子を組換え、翻訳システムのタンパク質の合成効率を向上させる。
(b)本発明は、インビトロタンパク質の合成能力を著しく強化できる融合タンパク質を初めて見出した。
(c)本発明は、eIF4Gの前に構成的または誘導性プロモーター(例えば、pScTEF1、pScPGK1、pKlTEF1、pKlPGK1、pScADH1、pScTPI1、pScTDH3、pKlADH1、pKlTPI1、pKlTDH3等)を挿入することにより、インビトロタンパク質の合成能力を著しく強化することができることを初めて見出した。
(d)本発明は、初めてCRISPR-Cas9遺伝子編集技術によりeIF4Gを組換え、インビトロタンパク質の合成能力を著しく強化する。
(e)本発明は、本発明の融合タンパク質がインビトロ翻訳システムの効率を向上させる際に、本発明の融合タンパク質のエレメントeIF4Gの発現量が増加しないことを初めて見出した。
【0138】
実施例1 遺伝子組換えによりタンパク質合成を向上させる理論モデル
【0139】
本発明は、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術により、K.lactisにおける翻訳開始因子eIF4GおよびPab1を最適化し、無細胞のインビトロ翻訳システムの効率を向上させた。
【0140】
実施例2 CRISPR-Cas9により翻訳開始因子を組換え、インビトロ翻訳システムの効率を向上させる
【0141】
2.1 CRISPR-Cas9技術により、翻訳開始因子KleIF4Gの前に強力なプロモーターを加える
【0142】
2.1.1 KleIF4G配列の検索およびCRISPR gRNA配列の確定
【0143】
eIF4Gは翻訳開始プロセスにおける重要な因子である。現在の記事では、遺伝子編集技術により内因性eIF4G発現を最適化し、インビトロ翻訳活性を向上させるケースが見られなかった。本発明は、実施例1における理論モデルに従い、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術により、翻訳開始因子KleIF4Gの発現を組換え、無細胞インビトロ翻訳システムの効率を向上させた。
【0144】
i.S.cerevisiae酵母におけるeIF4G遺伝子配列に基づいた。NCBIデータベースにおいて、eIF4G遺伝子でBLASTアライメント分析を行い、クルイベロマイセスラクティスにおけるeIF4G相同的遺伝子配列を確定し、KleIF4G(染色体Aの421863・・・・・・424928に位置する)と命名した。ここで、この遺伝子の尾部に1セグメントの標識DNAが挿入されることを例とし、他のターゲット遺伝子または挿入位置、配列は、いずれも類似する方法で操作することができる。
ii.KleIF4G遺伝子開始コドンで、近接するPAM配列(NGG)を探索し、gRNA配列を確定した。GC含有量が適当であり、本発明の標準はGC含有量が40%~60%であること、およびpoly T構造の存在を回避することをgRNA選択の原則とした。最終的には、本発明で確定した最適化されたKleIF4GのgRNA配列はCGGTTTTTCAAAGCAGATAT(SEQ ID NO.:6)であり、染色体Aの424927・・・・・・424936部位に位置する。
【0145】
2.1.2 CRISPR-Cas9により媒介されるKleIF4Gの前に強力なプロモーターを挿入するプラスミド構築
【0146】
KleIF4Gの過剰発現を実現するために、本発明は、CRISPR-Cas技術によりKleIF4G遺伝子の前にpScTEF1、pScPGK1、pKlTEF1およびpKlPGK1プロモーターをそれぞれ挿入した。プラスミド構築および形質転換方法は以下のとおりである。
【0147】
i.CRISPRのプラスミド構築
【0148】
プライマーPF1:CGGTTTTTCAAAGCAGATATGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCG(SEQ ID NO.:7)、PR1:GCTCTAAAACATATCTGCTTTGAAAAACCGAAAGTCCCATTCGCCACCCG(SEQ ID NO.:8)を用い、pCASプラスミドをテンプレートとしてPCR増幅を行った。17μLの増幅産物を混合し、1μLのDpnI、2μLの10×digestion bufferを加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Kan耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-CAS1.0-KleIF4G(
図1)と命名した。
【0149】
ii.供与体DNAのプラスミド構築および増幅
【0150】
線形供与体DNAの保存および増幅を容易にするために、本発明は、まず、供与体DNAをpMD18プラスミドに挿入し、その後、PCR増幅により線形供与体DNA配列を得た。
【0151】
クルイベロマイセスラクティスゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF2:GAGCTCGGTACCCGGGGATCCTCTAGAGATAATAAAATTTCAACCTTTAAGCCATTGA ATTTTACCATTACG(SEQ ID NO.:9)およびPR2:GCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACgATCTTGTTAGTAATCTCAACCTTCGCTGG(SEQ ID NO.:10)でPCR増幅を行い、pMD18プラスミドをテンプレートとし、プライマーpMD18-F:ATCGTCGACCTGCAGGCATG(SEQ ID NO.:11)およびpMD18-R:ATCTCTAGAGGATCCCCGGG(SEQ ID NO.:12)でPCR増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL混合し、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液を加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KleIF4G-DDと命名した。
【0152】
pKM-KleIF4G-DDプラスミドをテンプレートとし、プライマーPF3:ATGGGCGAACCTACATCCGATC(SEQ ID NO.:13)およびPR3:ATCTGCTTTGAAAAACCGCTCTTTCTCTC(SEQ ID NO.:14)でPCR増幅を行い、S.cerevisiae酵母ゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF4:AGAGAGAAAGAGCGGTTTTTCAAAGCAGATCCACACACCATAGCTTCAAAATGTTTCTAC(SEQ ID NO.:15)およびPR4:TGGTTGCTGATCGGATGTAGGTTCGCCCATCTTAGATTAGATTGCTATGCTTTCTTTCTAATGAGC(SEQ ID NO.:16)でPCR増幅(pScTEF1プロモーター増幅)を行い、S.cerevisiae酵母ゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF5:AGAGAGAAAGAGCGGTTTTTCAAAGCAGATAGACGCGAATTTTTCGAAGAAGTACC(SEQ ID NO.:17)およびPR5:AGCTTCAACAGCTGGTTGCTGATCGGATGTAGGTTCGCCCATTGTTTTATATTTGTTGTAAAAAGTAGATAATTACTTCCTTGATGATC(SEQ ID NO.:18)でPCR増幅(pScPGK1プロモーター増幅)を行い、クルイベロマイセスラクティスゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF6:AGAGAGAAAGAGCGGTTTTTCAAAGCAGATGAGCCTGTCCAAGCAAATGCC(SEQ ID NO.:19)およびPR6:TGGTTGCTGATCGGATGTAGGTTCGCCCATTTTTAATGTTACTTCTCTTGCAGTTAGGGAAC(SEQ ID NO.:20)でPCR増幅(pKlTEF1プロモーター増幅)を行い、クルイベロマイセスラクティスゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF7:AGAGAGAAAGAGCGGTTTTTCAAAGCAGATGTTCCTCATCACTAGAAGCCGAACTG(SEQ ID NO.:21)およびPR7:AGCTTCAACAGCTGGTTGCTGATCGGATGTAGGTTCGCCCATTTTTATTAATTCTTGATCGATTTTTTTGTTATTTCTGAAGTAACTCT(SEQ ID NO.:22)でPCR増幅(pKlPGK1プロモーター増幅)を行った。PF3/PR3増幅産物をそれぞれPF4/PR4、PF5/PR5、PF6/PR6およびPF7/PR7増幅産物と混合し、それぞれpKM-pScTEF1-KleIF4G-DD、pKM-pScPGK1-KleIF4G-DD、pKM-pKlTEF1-KleIF4G-DDおよびpKM-pKlPGK1-KleIF4G-DD(例えば、
図2、3、4、5)を構築した。具体的なステップは以下のとおりである。2種のPCR生成物をそれぞれ8.5μL混合し、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液を加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存した。
【0153】
2.1.3 クルイベロマイセスラクティスの形質転換および陽性同定
【0154】
i.クルイベロマイセスラクティス菌液をYPD固体培地上にストリークしてモノクローナルを選別し、25mLの2×YPD液体培地で一晩振とう培養し、2mLの菌液を50mLの液体2×YPD培地に入れて2~8h振とう培養し続けた。20℃の条件において3000gで5min遠心して酵母細胞を採取し、500μLの滅菌水を加えて再懸濁し、同様の条件で遠心して細胞を採取した。コンピテント細胞溶液(5%のv/vグリセロール、10%のv/v DMSO)を調製し、酵母細胞を500μLの該溶液に溶解した。50μLを1.5mLの遠心管に分注し、-80℃で保存した。
【0155】
コンピテント細胞を37℃で置いて15~30s融解させ、13000gで2min遠心して上清を除去した。形質転換緩衝液を以下のように調製した。PEGの3350(50%(w/v))260μL、LiAc(1.0M)36μL、carrier DNA(5.0mgの/mL)20μL、Cas9/gRNAプラスミド15μL、供与体DNA 10μLに、最終体積が360μLとなるまで滅菌水を加えた。熱ショック後、13000gで30s遠心して上清を除去した。1mLのYPD液体培地を加えて2~3h培養し、200μLを吸い取って固体YPD(200μg/mLg418)培地に塗布し、単一コロニーが出現するまで2~3日間培養した。
【0156】
ii.クルイベロマイセスラクティスが形質転換した後のプレート上で10~20個のモノクローナルを選別し、1mLのYPD(200μg/mLg418)液体培地に置いて一晩振とう培養し、菌液をテンプレートとし、CRISPR Insertion Checkをプライマー対とし、対応するサンプルをPCR検出した。PCR結果が陽性でシーケンシングを経た菌株が陽性菌株であると確定した。
【0157】
2.2 CRISPR-Cas9技術によりKleIF4Gと高発現遺伝子とを融合する
【0158】
2.2.1 KlTDH3配列検出およびCRISPRg RNA配列確定
【0159】
サッカロマイセスセレビシエ(S.cerevisiae)において、TDH3はテトラマーの形で存在し、糖分解経路における触媒反応に関与する。そのプロモーターpTDH3は遺伝子工学に広く使用される持続型強力なプロモーターである。クルイベロマイセスラクティスにおけるKleIF4Gの十分な発現を実現し、翻訳開始機能を実行する際に局所的な高濃度を形成するために、本発明は、KleIF4G遺伝子をクルイベロマイセスラクティスTDH3遺伝子のORF 3’端に連結した。
【0160】
i.S.cerevisiae酵母におけるTDH3遺伝子配列に基づいた。NCBIデータベースにおいて、TDH3遺伝子でBLASTアライメント分析を行い、クルイベロマイセスラクティスにおけるTDH3相同的遺伝子配列を確定した。アライメントにより、クルイベロマイセスラクティスゲノムに2つのTDH3相同的遺伝子が存在し、本発明においてそれぞれKlTDH3-1(染色体Aの1024297・・・・・・1025292に位置する)およびKlTDH3-2(染色体Fの1960417・・・・・・1961406に位置する)と命名されたことが見出された。ここで、この遺伝子の尾部に1セグメントの標識DNAが挿入されることを例とし、他のターゲット遺伝子または挿入位置、配列は、いずれも類似する方法で操作することができる。
【0161】
ii.KlTDH3遺伝子終止コドン付近で、PAM配列(NGG)を探索し、KlTDH3gのRNA配列(KlTDH3-1:CTTGTTGCTAAGAACTAAAG(SEQ ID NO.:23)は、染色体Aの1024272・・・・・・1024291部位に位置し、KlTDH3-2:CTCTGAAAGAGTTGTCGATT(SEQ ID NO.:24)は、染色体Fの1960378・・・・・・1960397部位に位置する)を確定した。
【0162】
2.2.2 CRISPR-Cas9により媒介されるKleIF4GをKlTDH3部位に組み込むプラスミド構築
【0163】
CRISPRのプラスミド構築
【0164】
i.KlTDH3-1に対し、プライマーPF8:CTTGTTGCTAAGAACTAAAGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAAT(SEQ ID NO.:25)、PR8:GCTCTAAAACCTTTAGTTCTTAGCAACAAGAAAGTCCCATTCGCCACCCG(SEQ ID NO.:26)を用い、pCASプラスミドをテンプレートとしてPCR増幅を行った。17μLの増幅産物を混合し、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液を加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Kan耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-CAS1.0-KlTDH3-1(例えば、
図6)と命名した。
【0165】
ii.KlTDH3-2に対し、プライマーPF9:CTCTGAAAGAGTTGTCGATTGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAAT(SEQ ID NO.:27)、PR9:GCTCTAAAACAATCGACAACTCTTTCAGAGAAAGTCCCATTCGCCACCCG(SEQ ID NO.:28)を用い、pCASプラスミドをテンプレートとしてPCR増幅を行った。17μLの増幅産物を混合し1μLのDpnI、2μLの10×digestion bufferを加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Kan耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-CAS1.0-KlTDH3-2(例えば、
図7)と命名した。
【0166】
2.2.3 供与体DNAのプラスミド構築および増幅
【0167】
線形供与体DNAの保存および増幅を容易にするために、本発明は、まず、供与体DNAをpMD18プラスミドに挿入し、その後、PCR増幅により線形供与体DNA配列を得た。
【0168】
i.KlTDH3-1に対し、クルイベロマイセスラクティスゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF10:GAGCTCGGTACCCGGGGATCCTCTAGAGATCATCCACTCCATCACCGCTACCCAA(SEQ ID NO.:29)およびPR10:GCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACGATCAACGTCCCCATCTACAAGAGC(SEQ ID NO.:30)でPCR増幅を行い、pMD18プラスミドをテンプレートとし、プライマーpMD18-F:ATCGTCGACCTGCAGGCATG(SEQ ID NO.:31)およびpMD18-R:ATCTCTAGAGGATCCCCGGG(SEQ ID NO.:32)でPCR増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL混合し、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液を加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KlTDH3-1-DDと命名した。
【0169】
pKM-KlTDH3-1-DDをテンプレートとし、プライマーPF11:GATGCATTGATGGATGCCGAAGATGATTAAAGAGGTTGATGTAATTGATATTTTCCTGATAAAATTACTATTG(SEQ ID NO.:33)およびPR11:AGCTGGTTGCTGATCGGATGTAGGTTCGCCAGATCCACCTCCTTCCACGTTTGTTGGTCTTGATCCACCTCCACCGTTCTTAGCAACAAGTTCGACCAAATCG(SEQ ID NO.:34)で増幅を行い、K.lactisゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF12:GGCGAACCTACATCCGATCAGC(SEQ ID NO.:35)およびPR12:TTAATCATCTTCGGCATCCATCAATGC(SEQ ID NO.:36)で増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL、1μLのDpnI、2μLの10×digestion bufferと混合し、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KlTDH3-1-F-KleIF4G-DD(
図8)と命名した。
【0170】
pKM-KlTDH3-1-F-KleIF4G-DDプラスミドをテンプレートとし、プライマーM13-F:GTAAAACGACGGCCAGT(SEQ ID NO.:37)およびM13-R:CAGGAAACAGCTATGAC(SEQ ID NO.:38)で増幅を行い、線形供与体DNAを得た。
【0171】
ii.KlTDH3-2に対し、クルイベロマイセスラクティスゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF13:GAGCTCGGTACCCGGGGATCCTCTAGAGATGAAGCTTTGATGACTACCGTTC(SEQ ID NO.:39)およびPR13:GCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACGATGTCTATTGTATCGGAAGAACTGTCA(SEQ ID NO.:40)でPCR増幅を行い、pMD18プラスミドをテンプレートとし、プライマーpMD18-F:ATCGTCGACCTGCAGGCATG(SEQ ID NO.:41)およびpMD18-R:ATCTCTAGAGGATCCCCGGG(SEQ ID NO.:42)でPCR増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL混合し、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液を加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KlTDH3-2-DDと命名した。
【0172】
pKM-KlTDH3-2-DDをテンプレートとし、プライマーPF14:GATGCATTGATGGATGCCGAAGATGATTAAATTACTCTTTTAAGTTAACGAACGCTTTTGATGAG(SEQ ID NO.:43)およびPR14:AGCTGGTTGCTGATCGGATGTAGGTTCGCCAGATCCACCTCCTTCCACGTTTGTTGGTCTTGATCCACCTCCACCAGCAACGTGCTCAACtAAgTCaACgACcCTTTCAGAGTAACCGTATTCGTTATCG(SEQ ID NO.:44)で増幅を行い、クルイベロマイセスラクティスDNAをテンプレートとし、プライマーPF15:GGCGAACCTACATCCGATCAGC(SEQ ID NO.:45)およびPR15:TTAATCATCTTCGGCATCCATCAATGC(SEQ ID NO.:46)で増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液と混合し、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KlTDH3-2-F-KleIF4G-DD(
図9)と命名した。
【0173】
pKM-KlTDH3-2-F-KleIF4G-DDプラスミドをテンプレートとし、プライマーM13-F:GTAAAACGACGGCCAGT(SEQ ID NO.:47)およびM13-R:CAGGAAACAGCTATGAC(SEQ ID NO.:48)で増幅を行い、線形供与体DNAを得た。
【0174】
2.2.4 クルイベロマイセスラクティスの形質転換および陽性同定
【0175】
i.クルイベロマイセスラクティス菌液をYPD固体培地上にストリークしてモノクローナルを選別し、25mLの2×YPD液体培地で一晩振とう培養し、2mLの菌液を50mLの液体2×YPD培地に入れて2~8h振とう培養し続けた。20℃の条件において3000gで5min遠心して酵母細胞を採取し、500μLの滅菌水を加えて再懸濁し、同様の条件で遠心して細胞を採取した。コンピテント細胞溶液(5%のv/vグリセロール、10%のv/v DMSO)を調製し、酵母細胞を500μLの該溶液に溶解した。50μLを1.5mLの遠心管に分注し、-80℃で保存した。
【0176】
コンピテント細胞を37℃で置いて15~30s融解させ、13000gで2min遠心して上清を除去した。形質転換緩衝液を以下のように調製した。PEGの3350(50%(w/v))260μL、LiAc(1.0 M)36μL、carrier DNA(5.0mg/mL)20μL、Cas9/gRNAプラスミド15μL、供与体DNA 10μLに、最終体積が360μLとなるまで滅菌水を加えた。熱ショック後、13000gで30s遠心して上清を除去した。1mLのYPD液体培地を加えて2~3h培養し、200μLを吸い取って固体YPD(200μg/mLg418)培地に塗布し、単一コロニーが出現するまで2~3日間培養した。
【0177】
ii.クルイベロマイセスラクティスが形質転換した後のプレート上で10~20個のモノクローナルを選別し、1mLのYPD(200μg/mLg418)液体培地に置いて一晩振とう培養し、菌液をテンプレートとし、CRISPR Insertion CheckプライマーKlTDH3-1-CICF1(KlTDH3-1配列内のプライマー):CTTCTACTGCTCCAATGTTCGTCGTT(SEQ ID NO.:49)およびプライマーKlTDH3-2-CICF1(KlTDH3-2配列内のプライマー):TTAACGAAGACAAGTACAACGGTGA(SEQ ID NO.:50)でそれぞれPCR増幅を行い、それぞれKleIF4G-CICR2(KleIF4G配列内のプライマー):TTCTCTTCGACAGCCTTCTTAGCAG(SEQ ID NO.:51)とペアにしてPCRを行い、KlTDH3-1およびKlTDH3-2部位のKleIF4G挿入を検出し、PCR結果が陽性でシーケンシングを経た菌株が陽性菌株であると確定した。
【0178】
2.3 CRISPR-Cas9技術によりKleIF4Gとその相互作用タンパク質とを融合する
【0179】
2.3.1 KlPab1配列検出およびCRISPRgRNA配列確定
【0180】
前述したように、Pab1タンパク質およびeIF4Gタンパク質は翻訳開始プロセスにおいて相互作用が存在する。本発明は、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術により、KlPab1とKleIF4Gとを融合し、両者の相互作用を促進し、インビトロ翻訳効率を向上させる。
【0181】
Pab1配列に基づき、クルイベロマイセスラクティスにおけるKlPab1遺伝子配列(染色体Cの1553322・・・・・・1555100に位置する)を得た。KlPab1遺伝子終止コドン付近でPAM配列(NGG)を探索し、gRNA配列を確定した。GC含有量が適当であり、本発明の標準はGC含有量が40%~60%であること、およびpoly T構造の存在を回避することをgRNA選択の原則とした。最終的には、本発明で確定したKlPab1 gRNA配列はTGCTTACGAAAACTTCAAGA(SEQ ID NO.:52)であり、染色体Cの1555058・・・・・・1555077部位に位置する。
【0182】
2.3.2 CRISPR-Cas9により媒介されるKleIF4GをKlPab1部位に組み込むプラスミド構築
【0183】
i.CRISPRのプラスミド構築
【0184】
プライマーPF16:TGCTTACGAAAACTTCAAGAGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCG(SEQ ID NO.:53)、PR16:GCTCTAAAACTCTTGAAGTTTTCGTAAGCAAAAGTCCCATTCGCCACCCG(SEQ ID NO.:54)を用い、pCASプラスミドをテンプレートとしてPCR増幅を行った。17μLの増幅産物を混合し、1μLのDpnI、2μLの10×digestion bufferを加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Kan耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-CAS1.0-KlPab1(
図10)と命名した。
【0185】
ii.KlPab1-KleIF4G供与体DNAのプラスミド構築および増幅
【0186】
線形供与体DNAの保存および増幅を容易にするために、まず、供与体DNAをpMD18プラスミドに挿入し、その後、PCR増幅により線形供与体DNA配列を得た。
【0187】
クルイベロマイセスラクティスゲノムDNAをテンプレートとし、プライマーPF17:GAGCTCGGTACCCGGGGATCCTCTAGAGATCCGGTAAGCCATTGTACGTTGCCAT(SEQ ID NO.:55)およびPR17:GCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTCGACGATCAGTATACCGTCCATGTTGATGACT(SEQ ID NO.:56)でPCR増幅を行い、pMD18プラスミドをテンプレートとし、プライマーpMD18-F:ATCGTCGACCTGCAGGCATG(SEQ ID NO.:57)およびpMD18-R:ATCTCTAGAGGATCCCCGGG(SEQ ID NO.:58)でPCR増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL混合し、1μLのDpnI、2μLの10×消化緩衝液を加え、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KlPab1-DDと命名した。
【0188】
pKM-KlPab1-DDをテンプレートとし、プライマーPF18:GATGCATTGATGGATGCCGAAGATGATTAAACTTGATTTTTTGACCTTGATCTTCATCTTGTC(SEQ ID NO.:59)およびPR18:CTTGAACTTCATCTTGAGTTGAACCTCCACCTCCAGATCCACCTCCACCAGCTTGAGCTTCTTGTTCtTTtTTaAAaTTcTCGTAAGCAGCTAAGGCTTC(SEQ ID NO.:60)で増幅を行い、クルイベロマイセスラクティスDNAをテンプレートとし、プライマーPF19:GTGGAGGTTCAACTCAAGATGAAGTTCAAGGTCCACATGCTGGTAAGTCTACTGTTGGTGGAGGTGGATCTGGCGAACCTACATCCGATCAGC(SEQ ID NO.:61)およびPR19:TTAATCATCTTCGGCATCCATCAATGC(SEQ ID NO.:62)で増幅を行った。2回の増幅産物をそれぞれ8.5μL、1μLのDpnI、2μLの10×digestion bufferと混合し、37℃の温浴で3h置いた。10μLのDpnI処理後生成物を100μLのDH5αコンピテント細胞に加え、氷上で30min置き、42℃で熱ショックを45s行った後、1mLのLB液体培地を加えて37℃で1h振とう培養し、Amp耐性LB固体に塗布して培養し、37℃で逆さまにしてモノクローナルに成長するまで培養した。5つのモノクローナルを選別してLB液体培地で振とう培養し、PCR検出が陽性でシーケンシングした後、プラスミドを抽出して保存し、pKM-KlPab1-KleIF4G-DD(
図11)と命名した。
【0189】
pKM-KlPab1-KleIF4G-DDプラスミドをテンプレートとし、プライマーM13-F:GTAAAACGACGGCCAGT(SEQ ID NO.:63)およびM13-R:CAGGAAACAGCTATGAC(SEQ ID NO.:64)で増幅を行い、線形供与体DNAを得た。
【0190】
2.3.3 クルイベロマイセスラクティスの形質転換および陽性同定
【0191】
i.クルイベロマイセスラクティス菌液をYPD固体培地上にストリークしてモノクローナルを選別し、25mLの2×YPD液体培地で一晩振とう培養し、2mLの菌液を50mLの液体2×YPD培地に入れて2~8h振とう培養し続けた。20℃の条件において3000gで5min遠心して酵母細胞を採取し、500μLの滅菌水を加えて再懸濁し、同様の条件で遠心して細胞を採取した。コンピテント細胞溶液(5%のv/vグリセロール、10%のv/v DMSO)を調製し、酵母細胞を500μLの該溶液に溶解した。50μLを1.5mLの遠心管に分注し、-80℃で保存した。
【0192】
コンピテント細胞を37℃で置いて15~30s融解させ、13000gで2min遠心して上清を除去した。形質転換緩衝液を以下のように調製した。PEG3350(50%(w/v))260μL、LiAc(1.0 M)36μL、carrier DNA(5.0mgの/mL)20μL、Cas9/gRNAプラスミド15μL、供与体DNA 10μLに、最終体積が360μLとなるまで滅菌水を加えた。熱ショック後、13000gで30s遠心して上清を除去した。1mLのYPD液体培地を加えて2~3h培養し、200μLを吸い取って固体YPD(200μg/mLg418)培地に塗布し、単一コロニーが出現するまで2~3日間培養した。
【0193】
ii.クルイベロマイセスラクティスが形質転換した後のプレート上で10~20個のモノクローナルを選別し、1mLのYPD(200μg/mLg418)液体培地に置いて一晩振とう培養し、菌液をテンプレートとし、プライマーKlPAB1-CICF1(KlPAB1配列内のプライマー):TCTCCAGAAGAAGCTACCAAGGCTA(SEQ ID NO.:65)およびプライマーKleIF4G-CICR2(KleIF4G配列内のプライマー):TTCTCTTCGACAGCCTTCTTAGCAG(SEQ ID NO.:66)でPCR増幅を行い、KlPAB1部位のKleIF4G挿入に対してPCR検出を行い、PCR結果が陽性でシーケンシングを経た菌株が陽性菌株であると確定した。
【0194】
実施例3 操作された株のインビトロ翻訳活性の測定
【0195】
遺伝子組換えされたクルイベロマイセスラクティス菌株をインビトロタンパク質合成系に調製し、ホタルルシフェラーゼ(Firefly Luciferase、 Fluc)遺伝子DNAテンプレートを加えて操作された株のタンパク質翻訳能力を測定した。上記反応系を25~30℃の環境に置き、約2~6h静置してインキュベートした。反応が終了した後、96穴の白色プレートまたは384穴の白色プレートに等体積のFluc基質ルシフェリン(luciferin)を加え、直ちにEnvision 2120多機能マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer)に置き、データを読み出し、Fluc活性を検出し、相対光単位値(Relative Light Unit、RLU)を活性単位とした。
【0196】
組換えされた構造において、KleIF4Gの前にプロモーターpKlPGK1が挿入された構造pKlPGK1::KleIF4GおよびKleIF4GがKlPab1のC端に連結された構造KlPab1-KleIF4Gは、いずれも野生型酵母株Y1140よりも強いインビトロタンパク質の合成能力を示す。それでコードして合成されたFlucタンパク質から放出される相対光単位値はそれぞれ1.57×10
9および1.50×10
9に達することに対し、野生型酵母株Y1140で合成されたFlucタンパク質の相対光単位値は4.11×10
8だけである。これは、KleIF4Gに対する組換えが、酵母によるインビトロタンパク質合成系のタンパク質の合成効率を効果的に強化できることを示す(
図12)。
【0197】
具体的な効果は表2に示すとおりである。
【0198】
【0199】
上記実験結果により、クルイベロマイセスラクティスKleIF4G遺伝子に対する相関組換えにより、本発明の融合タンパク質は、酵母によるインビトロタンパク質合成系のタンパク質の生成効率を著しく強化することができる。
【0200】
本発明で言及された全ての文献は、各文献が単独で参照として引用されるように、いずれも参照として本出願に引用される。また、本発明の上記説明を閲読することで、当業者は本発明に対して様々な変更または修正を行うことができ、これらの等価形態は同様に本出願の特許請求の範囲に限定された範囲に含まれることを理解すべきである。
【配列表】