(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】胸椎支承具
(51)【国際特許分類】
A63B 23/02 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
A63B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2021147674
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】500067112
【氏名又は名称】株式会社プレジール
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】弁理士法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】登坂 好正
(72)【発明者】
【氏名】永木 和載
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212793(JP,A)
【文献】特開2006-141694(JP,A)
【文献】特開2018-7854(JP,A)
【文献】特開2016-10575(JP,A)
【文献】特開2013-116201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0280970(US,A1)
【文献】米国特許第5611765(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第2818210(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第110022837(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0073126(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/02
A47G 9/00
A61F 5/01
A61H 1/00
A61G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上部において正面視の断面が台形の台座(1)を含む胸椎支承具(A)において、使用者が仰向けに横たわった状態において前記使用者の胸椎(3)を前記上部が備える平らな面の上面にあてがった状態において、
前記胸椎(3)の幅方向と長さ方向とにおいて前記胸椎(3)を安定して支承するように所定の輪郭形状と大きさとを備える胸椎支承面(2)として前記上面が形成されているとともに、
前記胸椎(3)の両側の筋肉と脂肪から成る組織を安定して支承するように前記台座(1)の前記上部の側面が形成されていること、
前記台座(1)の前記側面が含む左右両側面の前記上部は、傾斜面(la)を形成しており、かつ前記胸椎支承面(2)と前記傾斜面(la)とのなす角度(a)は、30度から40度までの数値範囲であること、
前記台座(1)の前記胸椎支承面(2)の長さ(L)は、25センチから35センチまでの数値範囲であること、
前記台座(1)の前記胸椎支承面(2)の幅(W)は、4センチから7センチまでの数値範囲であること、及び、
前記台座(1)における、前記上面の反対側に位置する平面の下面と前記上面との間の距離が対応する前記台形の高さ(H)は、5センチから8センチまでの数値範囲であること、
を特徴とする前記胸椎支承具(A)。
【請求項2】
台座の高さは、一端が他端よりも低く形成された、
請求項1に記載の胸椎支承具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肩甲骨のストレッチ(肩こり症状の緩和)、胸椎や肋骨の可動性の改善などに寄与する胸椎支承具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肩甲骨のストレッチのためには、直径15センチ程度のストレッチポールが使用されている。胸椎にストレッチポールをあてがって仰向けに横たわって使用するのであるが、以下のような問題点がある。
第一に、断面が円形であるため体が安定しにくく(胸骨を安定して支障できない)リラックスできない。リラックスが難しいことによって、肋骨の動きが制限され、肩甲骨のストレッチに必要な動きである、腕を胸元からゆっくりと大きく動かすことが難しくなる。
第二に、直径が15センチ程度であるためにストレッチポールが肋骨に抵触して肋骨の動きが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献としては以下の発明、考案が提案されている。
【文献】実用新案登録第3191869号公報
【文献】特開2002-325784号公報
【文献】特開平11-113705号公報
【0004】
特許文献1の考案は、円柱状に形成された丸棒2本をレール状に配設し、両端を楕円形の木材で繋げたものである。この構成においては胸椎が2本の丸棒の間に位置することとなるので、丸棒が肋骨に抵触して肋骨の動きが制限される。
【0005】
特許文献2の発明は、断面横長直方体のパッド材によって胸椎を支承するものである。この発明においては、使用時に胸椎に圧力が集中してストレスがかかる。加えて、公報に
図5として開示されている使用態様においては肩甲骨が接地しており自由な回転が妨げられ、肩甲骨の接地を解消するためにパッド材の高さを高くすると、胸椎を過剰に押し出してしまう。
【0006】
特許文献3の発明は、断面形状において側面に上下2段の凹弧状の面を形成したものである。この発明においても、肩部は上段の凹弧面で支承されるが肩部以外は上面で支承される胸椎に圧力が集中する。
そして、いずれの特許文献の発明・考案においても、肋骨及び肩甲骨の動きを規制しないことへの配慮は見られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
呼吸運動時、肋骨は胸椎と連結する関節部分で前後(仰向けの状態では上下)に回転する。肋骨が大きく回転するためには、肋骨の土台にあたる胸椎が物理的に安定することが必要である。
この発明の第1の課題は、胸椎を物理的にしっかりと安定して支承でき、かつ使用時の圧力を胸椎に集中することなく胸椎の左右の組織(筋肉や脂肪)に分散させることであり、第2の課題は、呼吸運動時の肋骨の動きを妨げることがなく、上肢運動時の肩甲骨の動きを妨げることのない、胸椎支承具を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の胸椎支承具は、少なくとも上部を断面台形状とした台座の上面を、胸椎を幅方向及び長さ方向で支承することができ、かつ肋骨及び肩甲骨の動きを妨げることのない輪郭形状、大きさである胸椎支承面とし、前記台座の側面を、胸椎の両側の組織を支承することができ、肩甲骨の動きを妨げない形状に形成して構成する。
成人の胸椎の長さが30センチ程度であること、胸椎を安定して支承するために5センチ程度の幅が必要であること、肩甲骨間の長さが10~15センチ程度であることを勘案すると、前記胸椎支承面の輪郭形状(平面視形状)、大きさは、長さ25~35センチ程度、幅4~7センチ程度の長方形が適当である。
【0009】
前記胸椎支承面は、胸椎を安定して支承することができれば、必ずしも平面である必要はなく、断面凹弧状(
図1のA)、断面凸弧状(
図1のB)も「台形状」に含まれる。
前記台座の少なくとも上部の形状を断面台形状とする理由は、使用時の圧力を胸椎のみではなく、胸椎の両側の組織でも支承することによって、圧力を胸椎に集中させずに左右に分散させることと、肋骨の動きを妨げないようにするためである。
したがって、台座の側面は係る効果が得られる形状であればよく、断面凸弧状(
図1のC)、断面凹弧状(
図1のD)も「台形状」に含まれる。
【0010】
前記台座の左右両側面の上部は傾斜面とし、胸椎支承面と前記傾斜面とのなす角度を30度ないし
40度とする。
台座の左右両側面は、上部のみを傾斜面とする(
図2)ほか、断面台形として両側面を上下に亘り傾斜面とする形状も含まれる。
胸椎と連結されている上位肋骨(第1~第6肋骨)が呼吸時に回転運動をする際の肋骨運動軸の静止時の角度が一般に35度程度であるから、胸椎支承面と傾斜面とのなす角度を30度ないし40度とすることにより、傾斜面が肋骨運動軸の角度に対応し、呼吸時における肋骨の運動を妨げることがない。
【0011】
尤も、肋骨運動軸の角度に対応させる観点からは30度以上、望ましくは35度以上であることが要求されるが、胸椎の左右の組織を支承するという観点から40度以上とすることは好ましくない。角度が大きいと胸骨の左右の組織を傾斜面が支承できない。
そこで、30度ないし40度と規定している。また、適切な胸椎の押出量を得るために、台座の高さは5センチないし8センチとする。
【0012】
請求項2の発明は、台座部の高さにおいて、一端を他端よりも低く形成したものである(
図3)。このような形状として使用者の足側に台座の低い位置を対応させて使用すると、胸椎への圧力が急激に加わることによる違和感を減少させることができる。なお、この形状にする場合は長さ25~35センチ程度、幅4~7センチ程度とした胸椎支承面の高さは一定とし、これに傾斜面を付加する形状とすることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明における断面台形状の台座の例を示す図。
【
図2】同じく上部を傾斜面とした台座の形状の例を示す図。
【
図3】同じく一端を他端よりも低く形成した台座の形状の例を示す図。
【
図8】この発明実施例の胸椎支承具と胸椎及び肋骨との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0015】
図4及び
図5において、正面視(断面)台形とした所定の長さの台座1の平らな上面を胸椎支承面2として胸椎支承具Aを構成している。台座1の素材はウレタンである。
【0016】
前記台座1の長さ(胸椎支承面2の長さ)Lは、成人の胸椎3の一般的な長さ30センチ程度(
図6符号L1)に対応して30センチとしてある。また、台座1の上面の幅(胸椎支承面2の幅)Wは、胸椎3を安定して支承するために5センチ程度の幅が必要であること、左右の肩甲骨5の間隔が10~15センチ程度(
図6符号W1)であることを勘案して5センチとしてある。そして、適切な胸椎3の押出量を得るために、台座の高さHは6センチとしてある。
前記台座1の上面(胸椎支承面2)と台座1の両側の傾斜面1aのなす角度αは、上位肋骨(第1~第6肋骨)4の運動軸6の静止時の一般的な角度である35度(
図8符号α1)と、胸椎3の左右の組織を支承するという観点から35度としてある。
【0017】
この胸椎支承具Aは、
図7に示すように人体の背丈方向に載置して、この上に、胸椎を胸椎支承具Aの胸椎支承面2にあてがって仰向けに横たわって使用する。
このとき、この実施例の胸椎支承具Aによれば、以下の効果を得ることができる。
1)胸椎を安定して支承できる。
この胸椎支承具Aの胸椎支承面2は、長さ30センチ、幅5センチの平面であるので、仰向けに横たわった状態で胸椎3は胸椎支承面2の上で安定し、ストレッチポールのように回転したりすることがない。したがって、使用者は胸椎3を安定させるための努力をする必要がない。その結果、胸椎にストレスが発生せず肋骨4が大きく回転することができる。
2)肋骨の回転運動が阻害されない。
この胸椎支承具Aは、胸椎支承面2と台座1の両側の傾斜面1aのなす角度αを、上位肋骨(第1~第6肋骨)4の運動軸6の静止時の一般的な角度である35度としてある。したがって、横たわった状態で肋骨は前記傾斜面1aに自然な状態で沿う。そして、肋骨4はこの状態から上方に回転するので、胸椎3が安定して支承されていることに加えてその回転は阻害されないので、肋骨4は大きくかつ安定した回転運動が得られる。
3)肩甲骨の回転運動が阻害されない。
この胸椎支承具Aの胸椎支承面2は、幅が5センチであり肩甲骨5間の長さである10~15センチ程度よりも狭い。したがって、肩甲骨5は台座1の胸椎支承面2に当たることがなく、肩甲骨5の回転運動が阻害されることがない。
4)圧力が分散される。
この胸椎支承具Aにおいては、胸椎3は胸椎支承面2で支承され、胸椎の両側の組織(筋肉や脂肪)及び肋骨4は傾斜面1aに沿うので、使用者の体重による圧力は胸椎3に集中することなく胸椎3の両側に分散され、胸椎3へのストレスが緩和される。
5)胸椎が適度に押し出される。
この胸椎支承具Aにおいては、胸椎3が胸椎支承面2に支承され、胸椎3の両側部分が傾斜面1aに支承される。そして台座1の高さを6センチとしてある。そのために、胸椎3が適度に押し出される。
【0018】
以下、この胸椎支承具Aの使用方法を説明する。
1)胸椎のストレッチ
この胸椎支承具Aを胸椎にあてがって仰向けに横たわると、胸椎3が適度に押し出される。これによって胸椎3をストレッチすることができ胸椎3の可動性が増加する。その結果、背筋が伸びて猫背を改善することができ、首や肩の負担を軽減することができる。
2)肋骨の可動性の改善
この胸椎支承具Aを胸椎3にあてがって仰向けに横たわった状態において、肋骨4は回転運動を阻害されることがない。したがって、この状態で呼吸を行うことによって肋骨4は大きく、安定した回転運動を行うことができる。
その結果、肋骨4の可動性が改善され、呼吸がしやすくなり、疲れにくい体になる。
3)肩甲骨の動きの改善
肩甲骨を動かすことによって肩こりが改善されるが、そのためには仰向けに寝た状態で肩甲骨を動かすことが効果的である。この胸椎支承具Aを胸椎にあてがって仰向けに横たわった状態において、肩甲骨5は回転運動が阻害されることがない。したがって、上肢運動時(肩甲骨を動かすとき)、肩甲骨付近の血管、神経が圧迫されることはなく、痛みなく、安全に肩甲骨を動かすことができる。加えて、このとき胸椎3は適度に押し出されており胸を張った状態となっている。
その結果、肩こりを改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の胸椎支承具は、胸椎を適切な状態で支承できるものであり、この胸椎支承具を使用することにより胸椎のストレッチ、肋骨や肩甲骨の動きを改善することができ、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0020】
A 胸椎支承具
1 台座
1a 傾斜面
2 胸椎支承面
3 胸椎
4 肋骨
5 肩甲骨
6 肋骨の運動軸
【要約】
【課題】この発明の第一の課題は、胸椎を物理的にしっかりと安定して支承でき、かつ使用時の圧力を胸椎に集中することなく胸椎の左右の組織(筋肉や脂肪)に分散させることであり、第二の課題は、呼吸運動時の肋骨の動きを妨げることがなく、上肢運動時の肩甲骨の動きを妨げることのない、胸椎支承具を得ることである。
【解決手段】この発明の胸椎支承具Aは、少なくとも上部を断面台形状とした台座1の上面を、胸椎3を幅方向及び長さ方向で支承することができ、かつ肋骨4及び肩甲骨5の動きを妨げることのない輪郭形状、大きさである胸椎支承面2とし、前記台座1の側面を、胸椎の両側の組織を支承することができ、肩甲骨の動きを妨げない形状に形成して構成する。
前記胸椎支承面の輪郭形状は、長さ25~35センチ程度、幅4~7センチ程度の長方形が適当であり、台座1の傾斜面1aの傾斜角度は35度が適当である。
【選択図】
図8