(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】ダンパユニット、ダンパアセンブリ、ダンパユニットおよびダンパアセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20230317BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230317BHJP
F16F 7/104 20060101ALI20230317BHJP
B62D 7/22 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B62D1/04
F16F15/02 C
F16F7/104
B62D7/22
(21)【出願番号】P 2020529409
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018085043
(87)【国際公開番号】W WO2019129512
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520067644
【氏名又は名称】ヴィブラコースティック フォーシェダ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Vibracoustic Forsheda AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ミュクレブスト,エーリク
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159696(JP,A)
【文献】特開2014-054991(JP,A)
【文献】特開2016-064808(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19653684(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0031399(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
F16F 15/02
F16F 7/104
B62D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール用の周波数調整振動ダンパアセンブリで使用するためのダンパユニットであって、挿入端および反対側の後端を有し、その挿入端を、前記ダンパアセンブリのホーンプレート
の取付開口部に通して挿入されるように構成されたダンパユニットにおいて、
・軸に沿って延びる中央ボアを有するスリーブと、
・エラストマーダンパ要素であって、前記スリーブおよび当該
エラストマーダンパ要素が単一構造を形成するように前記スリーブの半径方向外側に成形されたエラストマーダンパ要素とを備え、
前記エラストマーダンパ要素が、前記ホーンプレートの取付開口部内に挿入されるように構成されたエラストマー挿入部分と、前記ダンパユニットの最終取付位置を規定するように構成されたエラストマー支持部分と
、を有し、
前記エラストマー挿入部分が、少なくとも部分的に前記軸に沿って延在し、かつ前記軸に対して周方向に相互に間隔を置いて配置された複数のエラストマーリブを提供し、
当該複数のエラストマーリブが一緒になって、前記取付開口部の内面と直接係合するように構成された半径方向外側の係合面を形成し、
前記半径方向外側の係合面が、第1の半径方向寸法を有し、前記エラストマー支持部分が、前記第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有し、
前記エラストマーリブの少なくともいくつかが、前記取付開口部を通して挿入されて前記ダンパユニットをその最終取付位置にスナップロックするように構成された半径方向外側に延びるスナップロック突起を提供し、
前記エラストマー支持部分が、周方向に相互に間隔を置いて
配置された複数のエラストマー支持スタッドを提供し、
前記複数のエラストマー支持スタッドのそれぞれのエラストマー支持スタッドが:
前記エラストマー支持スタッドのスタッドの端部に向かって前記軸の方向に突出しており、
前記軸を横断するすべての方向に可撓性を有しており、
前記スタッドの端部によって規定され前記ダンパユニットの挿入端を向いた遠位端面を提供し、前記
エラストマー支持スタッドの
前記遠位端面が、前記ホーンプレートの取付開口部内への前記ダンパユニットの組立中に、前記最終取付位置で前記ホーンプレートの後面と接触するように構成されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパユニットにおいて、
前記複数の
エラストマー支持スタッドが、前記
エラストマーリブの半径方向外側の半径方向位置に配置されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダンパユニットにおいて、
前記複数の
エラストマー支持スタッドが、第1のセットの第1の
エラストマー支持スタッドを
形成し、
前記エラストマー支持部分が、1または複数の第2のエラストマー支持スタッドをさらに提供し、第2の
エラストマー支持スタッドの各々が、
当該第2のエラストマー支持スタッドのスタッドの端部に向かって前記軸の方向に突出し、前記第2のエラストマー支持スタッドの遠位端面が、前記ダンパユニットの挿入端に向かって軸方向を向き、かつ少なくとも部分的に前記軸の方向に
延びており、
前記第1の
エラストマー支持スタッドの遠位端が、前記第2の
エラストマー支持スタッドの遠位端よりも前記ダンパユニットの挿入端に軸方向に近い位置にあることを特徴とするダンパユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のダンパユニットにおいて、
前記1または複数の第2の
エラストマー支持スタッドが、複数の第2の
エラストマー支持スタッドの第2のセットを形成し、それら第2の
エラストマー支持スタッドが、周方向に相互に離間するとともに、前記第1の
エラストマー支持スタッドと周方向に織り交ぜられて、前記第1の
エラストマー支持スタッドから離間することを特徴とするダンパユニット。
【請求項5】
請求項3または4に記載のダンパユニットにおいて、
前記第1の
エラストマー支持スタッドが一緒になって第1の総軸方向剛性を与え、前記1または複数の第2の
エラストマー支持スタッドが一緒になって前記第1の総軸方向剛性よりも大きい第2の総軸方向剛性を与えることを特徴とするダンパユニット。
【請求項6】
請求項4または5に記載のダンパユニットにおいて、
・前記第1の
エラストマー支持スタッドの軸方向遠位端が一緒になって、前記ダンパユニットの挿入端を軸方向に向く第1の総表面積を形成し、
・前記第2の
エラストマー支持スタッドの軸方向遠位端が一緒になって、前記ダンパユニットの挿入端を軸方向に向く第2の総表面積を形成し、前記第2の総表面積が前記第1の総表面積よりも大きいことを特徴とするダンパユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記ダンパユニットのスリーブが、前記ステアリングホイールのホーン作動時に、
前記スリーブの中央ボアに受け入れられたガイドシャフトに沿って前記軸の方向にスライドするように構成されたスライダであることを特徴とするダンパユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のダンパユニットにおいて、
前記エラストマーダンパ要素が、前記スライダの第1の部分に成形され、
前記ダンパユニットがさらに、ホーンバネ部分および取付部分が互いに一体に成形されたエラストマーホーンバネ要素を含み、
前記
エラストマーホーンバネ要素の取付部分が、前記スライダの第2の部分に成形され、
前記ホーンバネ部分が、前記ステアリングホイール上のホーン作動前および作動時に、前記スライダに軸方向に力を及ぼすように構成されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のダンパユニットにおいて、
前記エラストマーダンパ要素および前記エラストマーホーンバネ要素が、互いに一体に成形されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項10】
請求項8または9に記載のダンパユニットにおいて、
前記
エラストマーホーンバネ要素の取付部分が前記スライダに機械的に結合されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項11】
請求項10に記載のダンパユニットにおいて、
前記
エラストマーホーンバネ要素の取付部分が、前記
エラストマーダンパ要素および前記
エラストマーホーンバネ要素と一体に成形された1または複数の成形固定要素によって前記スライダに機械的に結合され、前記1または複数の成形固定要素が、前記スライダの関連する1または複数の固定開口部と機械的に固定係合することを特徴とするダンパユニット。
【請求項12】
請求項11に記載のダンパユニットにおいて、
前記スライダが、
前記軸に沿って延在し、前記
中央ボアを与える管状要素と、
前記管状要素から半径方向外向きに延び、貫通穴の形態で前記固定開口部を提供するフランジとを備え、
前記
エラストマーダンパ要素および前記
エラストマーホーンバネ要素が、前記フランジの軸方向両側に配置されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項13】
請求項8乃至12の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記
エラストマーホーンバネ部分が、少なくとも部分的に軸方向に前記スライダを越えて延びることを特徴とするダンパユニット。
【請求項14】
請求項8乃至13の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記ホーンバネ部分が、少なくとも部分的に蛇腹形状であることを特徴とするダンパユニット。
【請求項15】
請求項8乃至14の何れか一項に記載のダンパユニットにおいて、
前記エラストマーダンパ要素および前記エラストマーホーンバネ要素の取付部分の少なくとも一方が、
前記スライダに化学的に結合されていることを特徴とするダンパユニット。
【請求項16】
ステアリングホイールの振動を減衰するための周波数調整ダンパアセンブリであって、
ステアリングホイールに固定され、減衰すべき振動を示すベース構造と、
ホーンプレートと、
請求項1に記載の1または複数のダンパユニットであって、各ダンパユニットが、前記ホーンプレートの関連する取付開口部に配置され、その半径方向外側の係合面が、前記振動を伝達するために前記ホーンプレートと直接接触し、前記
エラストマー支持スタッドの遠位端面が前記ホーンプレートの後面と接触する、1または複数のダンパユニットと、
1または複数のガイドシャフトであって、各ガイドシャフトが、前記ベース構造に固定されるとともに、関連するダンパユニットのスリーブの
軸に沿って延びる中央ボアに受け入れられる、1または複数のガイドシャフトと、
質量体であって、前記軸を横断する質量体の移動を可能にするために、前記ダンパユニットの
前記エラストマーダンパ要素を介して前記ベース構造によって支持される質量体とを備え、
前記
エラストマーダンパ要素および前記質量体が、前記振動を減衰させるための周波数調整動的ダンパを形成する周波数調整されたバネ質量系として動作するように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項17】
請求項16に記載のアセンブリにおいて、
前記質量体の重量が、少なくともホーンプレートの重量および前記ホーンプレートによって支持されるエアバッグアセンブリの重量を含むことを特徴とするアセンブリ。
【請求項18】
請求項
16または17に記載のアセンブリにおいて、
各ガイドシャフトがネジ付きボルトの一部であり、各
ネジ付きボルトのボルトヘッドが、関連するスライダの軸方向の動きを制限するストッパとして機能するように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項19】
請求項
18に記載のアセンブリにおいて、
各ダンパユニットのエラストマーリブの遠位端が、前記ダンパユニットを前記ホーンプレートにさらに固定するために、関連する
ネジ付きボルトのボルトヘッドによって圧縮されることを特徴とするアセンブリ。
【請求項20】
請求項16乃至19の何れか一項に記載のアセンブリにおいて、
各ダンパユニットのスリーブが、前記ステアリングホイールのホーン作動時に、
前記スリーブの中央ボアに収容される関連するガイドシャフトに沿って前記軸の方向にスライドするように構成されたスライダであり、
当該アセンブリが、各ダンパユニット用のホーンバネをさらに含み、前記ホーンバネが、前記ステアリングホイールのホーン作動前および作動時に
前記スリーブに軸方向の力を及ぼすように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項21】
請求項20に記載のアセンブリにおいて、
前記ホーンバネが、
前記スリーブ上に成形されたエラストマーホーンバネ要素であることを特徴とするアセンブリ。
【請求項22】
請求項20に記載のアセンブリにおいて、
前記ホーンバネが、前記ダンパユニットと前記ベース構造との間に配置された別個の金属ホーンバネであることを特徴とするアセンブリ。
【請求項23】
請求項20に記載のアセンブリにおいて、
前記1または複数のダンパユニットが、請求項3に記載のダンパユニットであり、
・前記第1の
エラストマー支持スタッドの遠位端
面がともに、ホーン作動する前に、前記ホーンプレートの後面と軸方向に接触するように構成され、
・前記第2の
エラストマー支持スタッドの遠位端
面が、ホーン作動前に、前記ホーンプレートの後面から軸方向ギャップだけ離れており、
・前記第1の
エラストマー支持スタッド
が、ホーン作動の初期段階で、前記軸方向ギャップのサイズに対応する量だけ軸方向に圧縮されるように構成され、それにより、前記軸方向ギャップがなくなって、前記第2の
エラストマー支持スタッド
の遠位端面も前記ホーンプレートの後面と接触するようになっていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項24】
請求項1乃至15の何れか一項に記載のダンパユニットの製造方法であって、
スリーブの半径方向外側の第1の部分に、
エラストマーダンパ要素を成形するステップを含み、
前記エラストマーダンパ要素が、
ホーンプレートの取付開口部に挿入されるように構成されたエラストマー挿入部分と、前記ダンパユニットの最終挿入位置を規定するように構成されたエラストマー支持部分とを有し、
・前記エラストマー挿入部分が、少なくとも部分的に前記軸に沿って延在し、かつ前記軸の周方向に相互に間隔を置いて配置された複数のエラストマーリブを提供し、
当該複数のエラストマーリブが一緒になって、取付開口部の内面と直接係合するように構成された半径方向外側の係合面を形成し、
・前記半径方向外側の係合面が、第1の半径方向寸法を有し、前記エラストマー支持部分が、前記第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有し、
・前記エラストマー支持部分が、周方向に相互に間隔を置いて
配置された複数のエラストマー支持スタッドを提供し、
前記複数のエラストマー支持スタッドのそれぞれのエラストマー支持スタッドが:
前記エラストマー支持スタッドのスタッドの端部に向かって前記軸の方向に突出しており、
前記軸を横断するすべての方向に可撓性を有しており、
前記スタッドの端部によって規定され前記ダンパユニットの挿入端を向いた遠位端面を提供し、前記
エラストマー支持スタッドの前記遠位端面が、前記ホーンプレートの取付開口部内への前記ダンパユニットの組立中に、前記最終取付位置で前記ホーンプレートの後面と接触するように構成されていることを特徴とする製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の製造方法において、
エラストマーホーンバネ要素を成形するステップをさらに含み、前記エラストマーホーンバネ要素が、互いに一体に成形されたホーンバネ部分および取付部分を備え、
前記エラストマーホーンバネ要素の前記取付部分が、前記スリーブの第2の部分に成形されることを特徴とする製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の製造方法において、
前記エラストマーダンパ要素およびエラストマーホーンバネ要素が互いに一体に成形されることを特徴とする製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の製造方法において、
前記スリーブが、前記軸に沿って延在する管状要素と、前記管状要素から半径方向外向きに延在し、かつ貫通穴の形態の1または複数の固定開口部を提供するフランジとを含み、
前記エラストマーダンパ要素および前記エラストマーホーンバネ要素を成形することが、前記
エラストマーダンパ要素および前記
エラストマーホーンバネ要素を、前記フランジの軸方向の両側で、互いに一体にかつ1または複数の固定要素と成形することを含み、前記固定要素が、前記固定開口部を通って延びて、前記
エラストマーダンパ要素および前記
エラストマーホーンバネ要素を
前記スリーブに機械的に結合することを特徴とする製造方法。
【請求項28】
請求項24乃至27の何れか一項に記載の製造方法において、
・前記
エラストマーリブの数と、
・前記
エラストマーリブの周方向寸法、半径方向寸法および/または軸方向寸法と、
・前記
エラストマーリブ間の空間の周方向寸法、半径方向寸法および/または軸方向寸法と
を含むパラメータのうちの1または複数を選択することによって、前記ダンパを周波数調整するステップをさらに含むことを特徴とする製造方法。
【請求項29】
ステアリングホイール用の周波数調整振動ダンパアセンブリで使用するためのダンパユニットであって、挿入端および反対側の後端を有し、その挿入端を、前記ダンパアセンブリのホーンプレートに設けられた取付開口部に通して挿入されるように構成されたダンパユニットにおいて、
前記ダンパユニットがエラストマーダンパ要素を備え、前記エラストマーダンパ要素が、
軸に沿って延びる中央チャネルと、前記ホーンプレートの取付開口部内に挿入されるように構成されたエラストマー挿入部分と、前記ダンパユニットの最終取付位置を規定するように構成されたエラストマー支持部分とを有し、
前記エラストマー挿入部分が、少なくとも部分的に前記軸に沿って延在し、かつ前記軸に対して周方向に相互に間隔を置いて配置された複数のエラストマーリブを提供し、
当該複数のエラストマーリブが一緒になって、前記取付開口部の内面と直接係合するように構成された半径方向外側の係合面を形成し、
前記半径方向外側の係合面が、第1の半径方向寸法を有し、前記エラストマー支持部分が、前記第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有し、
前記エラストマーリブの少なくともいくつかが、前記取付開口部を通して挿入されて前記ダンパユニットをその最終取付位置にスナップロックするように構成された半径方向外側に延びるスナップロック突起を提供し、
前記エラストマー支持部分が、周方向に相互に間隔を置いて
配置された複数のエラストマー支持スタッドを提供し、
前記複数のエラストマー支持スタッドのそれぞれのエラストマー支持スタッドが:
前記軸の方向に突出しており、
前記軸に対するすべての方向に可撓性を有しており、
前記スタッドの端部によって規定され前記ダンパユニットの挿入端を向いた遠位端面を提供し、前記
エラストマー支持スタッドの前記遠位端面が、前記ホーンプレートの取付開口部内への前記ダンパユニットの組立中に、前記最終取付位置で前記ホーンプレートの後面と接触するように構成されていることを特徴とするダンパユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して自動車用の周波数調整振動ダンパの分野に関する。ステアリングホイール用の振動低減アセンブリで使用するためのダンパユニットが開示されている。1または複数のそのようなダンパユニットを含む周波数調整振動ダンパアセンブリ、並びに、ダンパユニットおよび周波数調整振動ダンパアセンブリを製造する方法も開示されている。
【背景技術】
【0002】
周波数調整振動ダンパは、調整質量ダンパ、動的ダンパまたは振動吸収材とも呼ばれ、その機能は、1または複数の弾性ダンパ要素を使用して振動構造から少なくとも1の質量体に振動を移し、それにより位相をずらして振動させて振動を減衰することにより、ダンパが接続されている構造または表面の振動を打ち消して低減する減衰バネ質量系に基づくものである。国際公開第01/92752号、国際公開第2013/167524号および国際公開第2008/127157号は、周波数調整振動ダンパの例を開示している。
【0003】
自動車産業において、いくつかのステアリングホイールには、道路やエンジンからの振動がステアリングホイールに伝わることによって引き起こされるステアリングホイールの振動を低減するために、周波数調整振動ダンパが設けられている。そのようなダンパ構造では、エアバッグモジュールの重量が、バネ質量系の質量体の重量の一部として使用される。また、ステアリングホイールには、一般に、運転者が車両のホーンを作動させるためのホーン作動機構が設けられている。機械式のホーン作動機構は、一般に、ホーン作動後にホーン作動機構をその通常の状態に戻すために、ホーンバネと呼ばれる1または複数の金属渦巻きバネを含む。ホーンバネを有さない電子ホーン作動メカニズムも利用することができる。
【0004】
欧州特許出願第2085290号は、ボルトシャフトにスライド可能に取り付けられたスライダに配置された弾性ダンパ要素を含む、ステアリングホイール用の先行技術の振動低減ダンパ構造の一例を開示している。ステアリングホイールの振動は、減衰のために、弾性ダンパ要素によってエアバッグアセンブリに伝達される。ホーン作動中、スライダはボルトシャフトに沿ってスライドする。従来の渦巻きバネは、ボルトシャフトに配置され、ホーン作動時に圧縮され、ホーン作動が終了するとスライダを通常の位置に戻す。この先行技術の1つの欠点は、全体的な構造の組立が複雑で時間がかかり、製造時間とコストが増加することである。
【0005】
米国特許第8,985,623号は、ステアリングホイール用の代替的なダンパ構造を開示している。全体的な動作は、上述した欧州特許出願第2085290号に開示されているものと同様であるが、弾性要素が、複数部分の硬質プロテクタ構造にカプセル化されている。プロテクタは、シャフトにスライド可能に配置されるとともに、ホーン作動機構の非作動位置に向けてホーンバネによって付勢されている。この先行技術の解決策は本質的に同じ欠点を有し、実際に、プロテクタの製造に追加のコストと時間を必要とする。
【0006】
先行技術の他の欠点には、周波数調整の難しさ、周波数範囲の制限、周波数調整の維持の難しさ、並びに、ホーン作動時に所望のバネ特性を得ることの難しさが含まれる。
【発明の概要】
【0007】
以上に鑑み、本発明の概念の一目的は、先行技術の上記欠点の1または複数に対処することであり、この目的のために、(i)ステアリングホイール用の振動低減ダンパアセンブリに使用するためのダンパユニット、(ii)ステアリングホイールの振動を減衰する振動ダンパアセンブリ、(iii)ダンパユニットの製造方法、並びに、(iv)周波数調整振動ダンパアセンブリの製造方法を提供することである。
【0008】
第1の態様によれば、ステアリングホイール用の周波数調整振動ダンパアセンブリで使用するためのダンパユニットが提供され、ダンパユニットが、挿入端および反対側の後端を有し、その挿入端を、ダンパアセンブリのホーンプレートに設けられた取付開口部に通して挿入されるように構成され、ダンパユニットが、
・軸に沿って延びる中央ボアを有するスリーブと、
・エラストマーダンパ要素であって、前記スリーブおよび当該ダンパ要素が一緒に単一構造を形成するように前記スリーブの半径方向外側に成形されたエラストマーダンパ要素とを備え、
前記エラストマーダンパ要素が、前記ホーンプレートの取付開口部に挿入されるように構成されたエラストマー挿入部分と、前記ダンパユニットの最終取付位置を規定するように構成されたエラストマー支持部分とを提供し、
前記エラストマー挿入部分が、少なくとも部分的に前記軸に沿って延在し、かつ前記軸に対する周方向に相互に間隔を置いて配置された複数のエラストマーリブを提供し、それらリブが一緒に、前記取付開口部の内面と直接係合するように構成された半径方向外側の係合面を形成し、
前記半径方向外側の係合面が、第1の半径方向寸法を有し、前記エラストマー支持部分が、前記第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有し、
前記エラストマーリブの少なくともいくつかが、前記取付開口部を通して挿入されて前記ダンパユニットをその最終取付位置にスナップロックするように構成された半径方向外側に延びるスナップロック突起を提供し、
前記エラストマー支持部分が、周方向に相互に間隔を置いて配置され、かつ少なくとも部分的に前記軸の方向に延びる複数のエラストマー支持スタッドを提供し、前記エラストマー支持スタッドが、前記軸を横断するすべての方向に曲げることができる。
【0009】
減衰動作中、ダンパ要素のエラストマー材料は振動方向に圧縮される。リブ付き構成によって得られる利点は、減衰動作中に、エラストマー材料がリブ間の空間内で拡張できることである。それにより、ダンパ要素のバネ定数は、圧縮されたエラストマーが拡張することができる空間のない「コンパクトな」従来技術のリブ無しダンパ要素と比較して、より直線的な特性を示すこととなる。このため、本発明の概念に係るダンパユニットを使用することにより、1または複数の目標周波数に向けてより良好に調整された状態に留まる動的バネ質量系を構成することが可能になり、より効率的で信頼性の高い減衰動作をもたらすことができる。
【0010】
リブ付き構成によって得られる更なる利点は、設計および製造中の周波数調整における柔軟性が向上することである。ダンパアセンブリの減衰周波数は、リブの数を変えること、リブの周方向、半径方向および/または軸方向の寸法を変えること、および/またはリブ間の間隔を変えることによって、周波数調整することができる。このため、周方向により厚いまたは薄いリブ、軸方向に長いまたは短いリブ、半径方向に長いまたは短いリブなどを使用することができる。
【0011】
また、ダンパ要素を調整することができる周波数間隔も、従来技術のエラストマーダンパ要素と比較して、リブ付き構成を使用することにより、拡大および/または移動させることができる。また、リブの設計を異なる方向に変えることによって、異なる方向に異なる減衰周波数を有するダンパユニットを容易に設計することができる。
【0012】
エラストマーリブの少なくとも一部、好ましくはすべてが、半径方向外向きに延びるスナップロック突起を提供する。スナップロック突起は、取付開口部に挿入されて取付開口部を通り抜け、ダンパユニットをその最終的な取付位置にスナップロックするように構成されている。挿入動作中、スナップロック突起は、取付開口部を通り抜けるときに、一時的に圧縮および/または半径方向内向きに移動される。ダンパユニットが最終的な取付位置に挿入されると、エラストマースナップロック突起が、自動的に半径方向外側に移動および/または拡張して、ホーンプレートの遠位側または取付開口部に固定されたスリーブと係合する。
【0013】
エラストマーダンパ要素の支持部分は、挿入部分の係合面よりも大きな半径方向寸法を有する。支持部分の寸法は、組立時に支持部分が取付開口部を通り抜けるのを防ぐのに十分な大きさに選択することができる。それにより、エラストマーダンパ要素の支持部分は、組立中に挿入ストッパとして機能し、ホーンプレートに対するダンパ要素の最終的な取付位置を規定することができる。最終組立において、エラストマー支持部分は、通常、ホーンプレートの後面または取付開口部に配置されたスリーブの後面と直接接触する。したがって、最終組立では、支持部分とスナップロック突起が、ホーンプレートの両側に配置され、それらが一緒にダンパユニットをホーンプレートに対して固定位置に保持する。
【0014】
エラストマーダンパ要素の支持部分は、複数のエラストマー支持スタッドを提供し、それらの端部が、ダンパユニットの挿入端または遠位端を向く。支持スタッドは、周方向に相互に間隔を置いて配置され、好ましくは軸の周りの360度にわたって分散配置される。それらは、少なくとも部分的に軸の方向に延びる。好ましい実施形態では、軸と平行に延びる。エラストマー支持スタッドは、軸を横断するすべての方向、例えば、半径方向、周方向およびそれらの組合せを含む方向に曲げることができる。組立中、ダンパユニットの挿入端を向く支持スタッドの遠位端面は、最終的な取付位置でホーンプレートの後面に接触する。支持スタッドとホーンプレートの間のこの接触は、振動減衰時とホーン作動時の両方で、アセンブリのすべての動作中に維持される。支持スタッドとホーンプレートの後面の間の摩擦力により、支持スタッドは、振動減衰動作に応答して、横方向に移動する。ホーンプレートの後面にある個別の横方向に柔軟な支持スタッドを使用するこの設計の特有の利点は、振動減衰効果(ホーンプレートの反対側のみで実質的に発生する)が、ホーンプレートとエラストマーダンパ要素の間の後面における接触または境界面によって受ける影響が実質的に少なくなる。例えば、ステアリングホイールが時計方向3時←→9時に水平に前後に振動している場合、3時位置と9時位置またはその近傍にある支持スタッドが水平方向に曲がることができ、それが、振動減衰機能に実質的に影響を与えないようにするために、ステアリングホイールの中心に対して半径方向となる。12時と6時の位置にある支持スタッドも水平方向に曲がることがあるが、それは、振動減衰機能に実質的な影響を与えないように、周方向になる。他の支持スタッドは、部分的に半径方向、部分的に周方向に曲がることとなる。
【0015】
いくつかの実施形態、特に、ホーンプレートの軸方向の動きに依存する機械的ホーン作動機構を有するステアリングホイール用の振動ダンパアセンブリでダンパユニットが使用される実施形態では、複数の支持スタッドが、第1セットの第1支持スタッドを形成し、各々がダンパユニットの挿入端に向けて軸方向を向く遠位端を有し、エラストマー支持部分が、1または複数の第2のエラストマー支持スタッドをさらに提供し、第2の支持スタッドの各々が、ダンパユニットの挿入端に向かって軸方向に向き、かつ少なくとも部分的に軸の方向に延びる遠位端を有し、第1の支持スタッドの遠位端が、第2の支持スタッドの遠位端よりもダンパユニットの挿入端に軸方向に近い位置にある。好ましい実施形態では、そのような第2の支持スタッドが複数ある。いくつかの実施形態では、第1および第2の支持スタッドが、異なる高さを有することができる。
【0016】
この設計によって得られる利点は、2つの望ましいが一見両立しない特性が1つの同じダンパユニットによって得られることであり、その一方の特性が振動減衰に関するもので、他方の特性がホーン作動に関するものである。振動減衰に関しては、上述したように、振動減衰動作への影響を低減するために、エラストマー材料とホーンプレートの後面との間の柔軟な境界面が好ましい。一方、ホーン作動に関しては、運転者がホーンパッドを押したときにホーンバネがなるべく直ぐに圧縮を開始するために、硬い境界面が好ましい。ホーンプレートはエラストマー、よって圧縮可能な材料によって後面が支えられているため、ホーン作動時にエラストマー材料が軸方向に最初に圧縮されてから力がホーンバネに伝達されることとなり、ホーン作動中の後半までホーンバネが圧縮されない危険性がある。これにより、ホーンパッドが押されたときに、ホーンプレートの最初の移動中にホーンバネが圧縮されない、望ましくない変動するバネ定数がもたらされる。この「ジレンマ」は、第1および第2の支持スタッドを備えて、ホーンプレートの移動中にその特性が変化する「動的」支持境界面を作り出す設計によって解決される。
【0017】
ホーンが作動する前は、第1の支持スタッドはホーンプレートの後面に接触するが、第2の支持スタッドは、ホーンプレートの後面から軸方向のギャップだけ軸方向に間隔があけられている。この軸方向ギャップのサイズΔは、例えば、1ミリメートルまたは数ミリメートルのオーダーである。他のサイズも可能である。運転者がホーン作動パッドを押してホーン作動を開始すると、ホーンプレートが動き、第1の支持スタッドが圧縮される。この圧縮を生じさせるために、第1の支持スタッドは、相対的に限られた総断面寸法または剛性を有することが好ましい。第1の支持スタッドのセット全体の総「バネ定数」は、ホーンバネのバネ定数よりも小さくなるように選択されることが好ましい。したがって、ホーンバネの圧縮はまだ始まっていない。第1の支持スタッドが軸方向に量Δだけ圧縮されて、それらの遠位端面が第2のセットの支持スタッドの遠位端面と面一になると、ホーンバネの後面が第1の支持スタッドと第2の支持スタッドの両方に接触することとなる。ここで、ギャップΔがなくなる。このように、支持スタッドの第1のセットに小さい寸法を選択することにより、柔軟な境界面を確保し、ホーン作動の初期段階で高速軸圧縮を確保することができるという利点がある。第2の支持スタッドとホーンプレート間の軸方向のギャップΔがなくなると、すべての第1および第2の支持スタッドを組み合わせた総軸方向剛性または総バネ定数は、運転者がホーン作動パッドを押したときにホーンバネを圧縮するのに十分な大きさに選択されることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、支持スタッドの第1および第2のセットの総軸方向バネ定数がそれぞれk1およびk2であり、ホーンバネのバネ定数がk3である場合、ギャップΔがなくなり、かつ支持スタッドからの合成力が、k3によって与えられる事前圧縮のホーンバネ力よりも大きくなったときに、ホーンバネが確実に圧縮されるようにするために、k1+k2>k3となるように支持スタッドを好ましくは設計すべきである。
【0019】
好ましい実施形態では、ホーン作動が存在しないときに境界面をできるだけ柔軟に保つために、k1<k2またはk1<<k2とされる。しかしながら、k1とk2の間の他の関係も可能である。支持スタッドの剛性または圧縮率は、様々な方法で変えることができる。例えば、第2の支持スタッドは、第1の支持スタッドよりもダンパの軸を横断するより大きい断面を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、1または複数の第2の支持スタッドが、複数の第2の支持スタッドの第2のセットを形成し、それら第2の支持スタッドが、周方向に互いに離間するとともに、第1の支持スタッドと周方向に織り交ぜられて、第1の支持スタッドから離間する。他の実施形態では、例えば、ダンパユニットの軸の周りを周方向に延びる連続したリングの形状の、単一の第2の支持スタッドのみがあってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、ホーンバネが、ホーン作動の前に事前圧縮される。
【0022】
いくつかの実施形態では、ダンパユニットのスリーブが、ステアリングホイールでホーンが作動されると、スライダの中央ボアに収容されるガイドシャフトに沿って軸の方向にスライドするように構成されたスライダである。そのような実施形態では、エラストマー振動ダンパ要素をスライダの第1の部分に成形することができ、ダンパユニットが、互いに一体に成形されたホーンバネ部分および取付部分を有するエラストマーホーンバネ要素をさらに含むことができる。ホーンバネ要素の取付部分は、スライダの第2の部分に成形されるようにしてもよい。ホーンバネ部分は、ステアリングホイール上でホーンを作動する前および作動時に、軸方向の力をスライダに及ぼすように構成されるものであってもよい。
【0023】
ダンパユニットと一体的に形成されたエラストマーホーンバネを含む実施形態は、少なくとも以下の利点を提供する。
・製造、管理および組立の対象となる構成要素の数が減る。組立中、ダンパユニットには成形されたホーンバネ要素が既に設けられている。これにより、ホーンバネがダンパユニットの一体要素として既に設置されるため、組立中に別個のホーンバネを取り扱う必要がない。機械的なホーンバネ機構は、スライダをガイドシャフトに取り付けることにより、直接かつ自動的に得られる。
・ホーンプレートは、1または複数のダンパユニットによって迅速かつ容易にベース構造に連結することができ、各ダンパユニットは、(ユニットを取り付ける直接的な結果として)別個の減衰要素または別個のホーンバネの取り扱いまたは組立を要することなく、振動減衰機能とホーンバネ機能の両方を自動的に提供する。
・1回の成形工程でダンパ要素とホーンバネ要素をスライダ上で互いに一体に成形することにより、多機能一体型ダンパユニットを製造することができる。一体型ダンパユニット(スライダとエラストマーダンパ要素とホーンバネ要素を含む)は、スライダ機能、振動減衰機能およびホーンバネ機能をそれぞれ提供するものとなる。
・エラストマーホーンバネ要素をスライダ上に成形することにより、ホーンバネを製造することと、ホーンバネをスライダに結合することの両方を1回の成形操作で行うことができる。ホーンバネ要素をスライダ上に成形することにより、ホーンバネの個別の位置決めと取り付けが不要になるため、最終製品の品質を向上させることができる。
【0024】
ダンパユニットは、従来の金属渦巻きバネなどの別個のホーンバネと併用することもできる。他の実施形態では、機械的ホーン作動の代わりに電子ホーン作動を有するステアリングホイール用のダンパアセンブリにおいてダンパユニットが使用される場合に、エラストマー要素を介してホーンプレートをベース構造に接続するためだけに、ホーンバネなしでダンパユニットを使用して、動的振動減衰効果を達成することができる。
【0025】
ダンパユニットの他の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0026】
第2の態様によれば、ステアリングホイールの振動を減衰するための周波数調整ダンパアセンブリが提供され、このアセンブリが、
ステアリングホイールに固定され、減衰すべき振動を与えるベース構造と、
ホーンプレートと、
請求項1に記載の1または複数のダンパユニットであって、各ダンパユニットが、前記ホーンプレートの関連する取付開口部に配置され、その半径方向外側の係合面が、前記振動を伝達するために前記ホーンプレートと直接接触している、1または複数のダンパユニットと、
1または複数のガイドシャフトであって、各ガイドシャフトが、前記ベース構造に固定されるとともに、関連するダンパユニットのスリーブの中央ボアに受け入れられる、1または複数のガイドシャフトと、
質量体であって、前記軸を横断する質量体の移動を可能にするために、前記ダンパユニットのダンパ要素を介して前記ベース構造によって支持される質量体とを備え、
前記ダンパ要素および前記質量体が、前記振動を減衰させるための周波数調整動的ダンパを形成する周波数調整されたバネ質量系として動作するように構成されている。
【0027】
機械的なホーン作動を伴うダンパアセンブリのいくつかの実施形態では、各ダンパユニットのエラストマーダンパアセンブリの遠位部分が、ホーンプレートの取付開口部を超えて軸方向に突出するようにしてもよい。ホーンの作動時に、運転者がステアリングホイールのホーンパッドを押すと、ホーンプレートが1または複数のホーンバネのバネ力に抗して移動する。その後、運転者がホーンパッドを離すと、ホーンバネによってホーンプレートがその通常の位置に戻る。この設計により得られる利点は、ホーンプレートの取付開口部を超えて軸方向に突出するダンパ要素のエラストマー遠位部分が、ホーンプレートの戻り動作中にエラストマー係止要素として機能できることである。ホーンの作動時には、ダンパ要素の遠位部分がボルトヘッドから離れることができる。ホーンパッドが解放されると、ホーンバネがホーンプレートを通常の位置に向けて押し戻す。戻り動作の間、ダンパ要素のエラストマー遠位部分はボルトヘッドと係合して、戻り動作のための「ソフト」な減衰停止位置を規定する。このため、ステアリングホイール用のダンパアセンブリで使用されるダンパユニットのエラストマーダンパ要素は、周波数調整減衰動作における径方向に向かう振動の伝達や、軸方向に向かうホーン機構の戻り動作の減衰に限定されるものではないが、それらを含む複数の機能を持つことができる。
【0028】
従来技術で知られているように、ステアリングホイールのエアバッグアセンブリの重量を、動的バネ質量系の動的減衰機能の質量体の一部として使用することにより、この目的のための別の荷重を使用することが好ましい。ホーンプレートの重量と、ホーンプレートによって支持される更なる構成要素の重量も、振動する質量体の総重量に寄与する。
【0029】
好ましい実施形態では、ダンパユニットがホーンプレートに挿入されて取り付けられる結果として、振動減衰動作に関与するエラストマーダンパ要素の部分が事前に圧縮される。
【0030】
ダンパユニットの挿入および取付の結果として、ダンパユニットの外側係合面は、ホーンプレートの取付開口部の内側係合面と直接係合して、振動を伝達するようになる。内側係合面は、(例えば、金属からなる)ホーンプレート自体によって形成されるか、またはホーンプレートに固定的に接続または成形されたスリーブであって、ホーンプレートから軸方向に延びて軸方向係合境界面を提供するスリーブによって形成されるものであってもよい。そのようなスリーブは、例えば比較的硬質なプラスチック材料によって、ホーンプレート上に成形されたスリーブであってもよい。
【0031】
振動低減ダンパアセンブリは、少なくとも1、好ましくは複数の本発明に係るダンパユニットを含む。任意選択的には、ダンパユニットは、様々な方向の振動を減衰するように構成することができる。これは、ある振動方向に1または複数のダンパユニットを使用し、別の振動方向に1または複数の他のダンパユニットを使用することにより達成することができる。各ダンパユニットを、異なる方向の異なる振動を減衰するように設計することも可能である。
【0032】
ダンパアセンブリの好ましい実施形態は、従属請求項2乃至8の何れかに記載の1または複数のダンパユニットを含むことができる。アセンブリの好ましい実施形態は、従属請求項に示されている。
【0033】
第3の態様によれば、ダンパユニットを製造する方法が提供され、この方法が、
スリーブの半径方向外側の第1の部分に、エラストマー振動ダンパ要素を成形するステップを含み、前記エラストマー振動ダンパ要素が、前記ホーンプレートの取付開口部に挿入されるように構成されたエラストマー挿入部分と、前記ダンパユニットの最終挿入位置を規定するように構成されたエラストマー支持部分とを有し、
・エラストマー挿入部分が、少なくとも部分的に前記軸に沿って延在し、かつ前記軸に対する周方向に相互に間隔を置いて配置された複数のエラストマーリブを提供し、それらリブが一緒に、取付開口部の内面と直接係合するように構成された半径方向外側の係合面を形成し、
・前記半径方向外側の係合面が、第1の半径方向寸法を有し、前記エラストマー支持部分が、前記第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有し、
・前記エラストマー支持部分が、周方向に相互に間隔を置いて配置され、かつ少なくとも部分的に前記軸の方向に延びる複数のエラストマー支持スタッドを提供し、前記エラストマー支持スタッドが、前記軸を横断するすべての方向に曲げることができる。
【0034】
本発明の概念の第4の態様によれば、ステアリングホイールの振動を減衰させるための周波数調整振動ダンパアセンブリの製造に使用する方法が提供され、この方法が、
1または複数のダンパユニットを使用するステップを含み、各ダンパユニットが、軸に沿って延びる中央ボアを有するスリーブと、前記スリーブとともに単一構造を形成するように前記スリーブの半径方向外側に成形されたエラストマー振動ダンパ要素とを備え、前記エラストマー振動ダンパ要素が、
・挿入端に1または複数の半径方向外向きに延びるスナップロック突起と、前記スナップロック突起から軸方向に間隔を置いて配置された半径方向外側の係合面であって、第1の半径方向寸法を有する半径方向外側の係合面とを提供するエラストマー挿入部分と、
・前記第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有するエラストマー支持部分とを含み、
前記方法がさらに、
各ダンパユニットを挿入方向に、前記ダンパユニットの軸に沿ってホーンプレートの関連する取付開口部に挿入するステップを含み、前記ダンパユニットが、最終挿入位置に到達するまで取付開口部に挿入され、
・前記エラストマー挿入部分の半径方向外側の係合面が、前記取付開口部の内面と直接接触し、
・前記ホーンプレートに対する前記ダンパユニットのスナップロックを形成するために、前記取付開口部を通して前記スナップロック突起が挿入され、
・前記エラストマー支持部分が、前記ホーンプレートの後面と軸方向に接触する。
【0035】
周波数調整ダンパアセンブリを製造する本発明の方法の特定の特徴は、エラストマーダンパ要素とスライダ/スリーブが、組立中にホーンプレートの片側のみからホーンプレートの取付開口部に一緒に挿入されること、並びに、およびエラストマーダンパ要素が、エラストマー係合面が取付開口部の内側係合面と係合する程度まで挿入方向に挿入されること、並びに、スナップロック突起を含むエラストマーダンパ要素の遠位部分が、取付開口部の内側係合面を超えて軸方向に突出することである。
【0036】
周波数調整ダンパアセンブリを製造する方法の第1の利点は、組立中にエラストマーダンパ要素とスライダがホーンプレートの取付開口部にホーンプレートの片面のみから一緒に挿入されることにより、構成要素の組立を短時間で実行することができることである。エラストマーダンパ要素とスライダは、ホーンプレートの片面から組み立てられる単一構造を形成する。
【0037】
周波数調整ダンパアセンブリを製造する方法の第2の利点は、ダンパユニットを取付プレートに容易にスナップロックできることである。ダンパユニットは、エラストマーダンパ要素の1または複数の半径方向外側に延びるスナップロック突起が、取付開口部の遠位軸方向縁部を超えて突出する程度まで挿入される。それにより、挿入されたエラストマーダンパ要素は、スナップロック突起によってホーンプレートに対してその正確な位置に保持される。1または複数のスナップロック突起は、エラストマー要素と一体的に形成され、結果として、エラストマー材料で作られるため、挿入ステップ中に一時的に半径方向に圧縮および/または屈曲されて、取付開口部を通り抜けることができる。これにより、ホーンプレートの反対側から別個の固定要素を組み立てる必要がなくなり、組立時間と製造コストを低減することができる。
【0038】
ダンパアセンブリを製造する方法は、上述したまたは特許請求の範囲で規定されるダンパユニットの実施形態の何れかの使用を含むことができる。すなわち、ダンパユニットは、リブ、支持スタッド、一体化されたエラストマーホーンバネを含むことができる。しかしながら、リブが無い代わりに連続的な半径方向外側の係合面を有する設計など、他の設計も可能である。
【0039】
用語
本開示において、エラストマー要素がスリーブまたはスライダ上に「成形される」と述べられている場合、それは、第一に、関連要素が、成形によって製造される成形細部であると解釈されるべきである。第二に、「成形される」という表現は、別個の部品として別個に製造されてアセンブリに取り付けられた従来の螺旋状の金属バネの形態など、関連要素が別個の部品として作成される従来の解決策とは対照的に、関連要素がスリーブやスライダに直接作成/成形されると解釈されるべきである。好ましい実施形態では、エラストマー材料がシリコーンゴムを含む。
【0040】
本開示では、「スライダ」という用語が、ホーンの作動中にガイドシャフトに沿ってスライドするように構成された構成要素を指すことがある。これは、機械的なホーン作動機構が使用される場合である。しかしながら、「スライダ」という用語は、ガイドシャフトに取り付けられるが、ガイドシャフトに沿ってスライドしないように構成されたスリーブを指す場合もある。これは、ホーン作動中にホーンプレートがガイドシャフトに対して軸方向に移動するように構成されていない電子ホーン作動が使用される場合である。
【0041】
本開示において、「ホーンプレートの後面に接触している」という表現は、ホーンプレートに直接接触する場合と、ダンパユニット用の取付開口部の周りでホーンプレートに固定されたスリーブと直接接触する場合の両方を含むと解釈されるべきである。
【0042】
本開示では、「結合する」または「結合される」という用語は、関連要素がスリーブまたはスライダから脱落したり、容易に取り外されたりするのを防ぐような、関連要素とスリーブまたはスライダとの間の接続または固着として解釈されるべきである。したがって、「結合」という用語は、アセンブリの観点からダンパユニットの一体部分として、関連要素が、スライダの意図された位置における結合によって確実に保持される固着または接続として解釈されるべきである。軸方向に作用する機械的結合または接着なしにガイドシャフトが受け入れられる中央ボアを有する円筒形ダンパ要素など、要素がスライダから容易に取り外されたり、スライダから容易に脱落したりする実施形態では、スライダに対する半径方向の動きがたとえ制限されていたとしても、要素はスライダに「結合」されているとは見なされない。
【0043】
本開示では、「機械的結合」または「機械結合」は、「化学的結合」の代替として解釈されるべきである。機械的結合は、スライダへの関連要素の非化学的固着として解釈されるべきであり、関連要素がスライダ上の意図された位置に機械的に維持されることを保証する。
【0044】
本開示では、「化学的結合」、「化学結合」、「接着」結合または「接着」などの表現は、機械的結合の代替として解釈されるべきである。化学的結合は分子間の結合と見なされる。いくつかの実施形態では、機械的結合および化学的結合を組み合わせて使用することができる。好ましい化学的結合は、膠ではなく、接着結合である。成形中に化学的結合を提供することができる。いくつかの実施形態では、化学的結合は、類似のまたは関連するポリマー間の接着結合を伴うオーバーモールド技術を使用することによって得られるものであってもよい。
【0045】
本開示では、「スナップロック」などの用語は、ダンパユニットがその最終取付開口部に挿入される結果として固定機能をもたらす固定機構として解釈されるべきである。特に、この用語は、挿入中に必ずしも明確な「スナップ」が発生するのではなく、スナップロック突起が徐々に拡張/移動する実施形態も包含するように解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
次に、本発明の概念、いくつかの非限定的な好ましい実施形態、および本発明の概念の更なる利点を、図面を参照して説明する。
【
図1】
図1Aは、車両のステアリングホイールを例示している。
図1Bは、振動低減アセンブリの主要部分を例示している。
【
図2】
図2は、振動低減アセンブリの分解図である。
【
図6】
図6は、
図2のアセンブリに取り付けられたダンパユニットを拡大して示している。
【
図7】
図7は、
図2のアセンブリに取り付けられたダンパユニットを拡大して示している。
【
図8】
図8A~
図8Dは、ダンパユニットの第1の実施形態のスライダを例示している。
【
図17】
図17A~
図17Cは、第4の実施形態に係るダンパユニットを含むアセンブリのホーン作動を例示している。
【
図21】
図21は、第5の実施形態に係るダンパユニットを用いた別の組立方法を例示している。
【
図23】
図23A~
図23Cは、第5の実施形態に係るダンパユニットを含むアセンブリのホーン作動を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の概念は、概して、動的ダンパとも呼ばれる、周波数調整振動ダンパの分野に関する。そのようなダンパは、自動車のステアリングホイールのような振動する構成要素など、振動する表面または構造における振動を減衰させるために使用することができる。動的振動ダンパは、振動体として機能する質量体と、少なくとも1の弾性ダンパ要素とにより構成される。質量体および少なくとも1の弾性ダンパ要素は一緒に、減衰されるバネ-質量系を提供するとともに、任意選択的には中間構成要素によって、振動する構造に接続される。
【0048】
質量体の重量、並びに、弾性減衰要素の剛性および減衰は、振動する構造に減衰効果を提供するように選択され、振動構造は、1または複数の予め設定された目標周波数で振動することが期待される。振動構造が目標周波数で振動すると、質量体は構造と同じ周波数で振動/共振するが、位相がずれているため、構造の振動は実質的に減衰する。質量体は、振動構造の振動振幅よりも実質的に大きい振幅で振動することができる。本発明の概念は、ステアリングホイールの振動を減衰させるために車両のステアリングホイールに配置される、そのような動的ダンパアセンブリで使用するためのダンパユニットに関する。
【0049】
第1の実施形態
図1Aは、自動車4のステアリングホイール2を例示している。道路およびエンジンからの振動は、ステアリングホイール2に伝達されることがある。それらステアリングホイールの振動は、上下および左右の矢印に示すように、ステアリングコラムに対して垂直となる場合がある。ステアリングホイール2には、ステアリングホイール2内部の破線ボックスによって概略的に示される振動低減アセンブリ6が設けられ、この振動低減アセンブリが、ステアリングホイールの振動の少なくとも一部を動的に減衰するように構成されている。
【0050】
当技術分野で知られているように、ステアリングホイール2には、車両4のホーン(図示省略)を作動させるためのホーン作動機構も設けられている。そのために、ホーン作動パッド8が、ホーン作動時に運転者によって押圧されるようにステアリングホイール2の中央に配置されている。運転者がホーン作動パッド8を解放すると、ホーン作動機構は、1または複数のホーンバネによって非作動状態または初期状態に戻る。図示の実施形態では、ホーン作動機構が機械式である。ホーンバネを含まない電子設計のホーン作動機構も存在する。
【0051】
また、エアバッグアセンブリは、ホーン作動パッド8の下のステアリングホイール2内に配置することができる。
図1Bは、エアバッグアセンブリのガス発生器の部分10を概略的に示している。本実施形態では、エアバッグアセンブリの重量が、振動低減バネ質量系で使用される質量体の総重量の少なくとも一部として使用される。これにより、この目的のための別個の重りの使用を省くか、または大幅に削減することができる。
【0052】
ステアリングホイール2内部の振動低減アセンブリ6は、ステアリングホイール2に固定されたベース構造またはアーマチュア12上に配置されて、それらによって支持される。このため、ステアリングコラムに対して垂直な
図7の振動Vによって示されるように、ステアリングホイール2の振動は、ベース構造12にも存在する。振動低減アセンブリ6は、ホーンプレート14を備え、このホーンプレート上に、ガス発生器およびエアバッグを含むエアバッグアセンブリが取り付けられている。好ましい実施形態では、ホーンプレート14が金属で作られ、このホーンプレートには、任意選択的には、ホーンプレート14上に成形された比較的硬質のプラスチック材料からなるプラスチックカバーが設けられ、このプラスチックカバーが、トップカバー16およびボトムカバー18を含む。ホーンプレート14には3つの開口部が設けられ、各々が、後述するように、ダンパユニット40の一部を受け入れるように構成されている。図示の実施形態では、円筒状スリーブ20が、ホーンプレート14の各開口部の周りに配置されるとともに、ホーンプレート14の平面の上に延在する。スリーブ20は、プラスチックカバー16、18と一体に成形され、よってホーンプレート14にしっかりと結合されている。他の実施形態では、スリーブ20を省くことができる。
【0053】
図2に示すように、ベース構造12は、ホーンプレート14に向かって突出し、それぞれにネジ付きボルト穴が設けられた3つの支持体13を含むことができる。支持体13上には、別個のブラケット22が支持されている。ブラケット22は、各支持体13と位置合わせされた貫通開口部または取付開口部24を有する。各取付開口部24に隣接して、ブラケット22は、ホーンプレート14を向くホーンバネ支持面26を提供し、その反対側に、ベース支持体12を向くブラケット支持面28を提供する。組立状態(
図7)では、ブラケット22が、支持体13によってブラケット支持面28で支持されている。
【0054】
ブラケット22は、様々な構成要素を支持するための多機能ブラケットであり、特に、ステアリングホイール2のホーンスイッチ機構の部品、ここでは4つの接触スタッド30の形態のものを含むことができ、それら接触スタッドが、ホーンプレート14に向かって突出し、ホーンプレート14の底面から突出する対応する接触パッド15と整列している。
図5に示すように、接触スタッド30と接触パッド15は、通常、互いに距離Dを置いて配置されている。ホーン作動時には、接触パッド15と接触スタッド30が電気的に係合してホーンが作動し、同時に、ホーンプレート14の移動が停止するまで、ブラケット22に向けてホーンプレート14が押圧される。例示的な実施例では、距離Dが、数ミリメートル程度である。
【0055】
エアバッグアセンブリが固定されたホーンプレート14は、3つのダンパユニット40を介してベース構造12上で移動可能に支持される。このユニットを本開示では「ダンパユニット」と呼ぶが、ダンパユニット40は、後述するように、振動減衰機能と別個のホーンバネ機能の両方を提供することに留意されたい。各ダンパユニット14は、少なくともホーンプレート14およびエアバッグアセンブリによって提供される質量体が、(i)振動減衰目的でダンパユニット40の軸Aに対して垂直に移動することができ、かつ(ii)ホーン作動目的で主軸Aに沿って移動することができるように構成される。次に、ダンパユニット40の第1の実施形態を、
図8A~
図8D、
図9A~
図9Dおよび
図10Aおよび10Bを参照して説明する。
【0056】
ダンパユニット40は、スライダ50、ダンパ要素70およびホーンバネ要素90を含む。好ましい実施形態では、スライダ50、ダンパ要素70およびバネ要素90が、1ユニット40に互いに結合され、それら3つの構成要素が、ベース構造12およびホーンプレート14にすぐに接続される単一構造を形成する。構成要素50、70、90は、互いに簡単に分離できないように、機械的および/または化学的に互いに結合することができる。
【0057】
図8A~
図8Dは、スライダ50の第1の実施形態を示している。スライダ50は、適切な合成樹脂材料などの比較的硬質の材料から作製することができる。機械式のホーン作動構造では、スライダが、後述するように、ホーン作動時にガイドシャフト上をスライドするように配置されている。スライダ50は、ガイドシャフトを受けるための貫通ボア54を規定する管状要素52と、半径方向に延びるフランジ56とを備える。フランジ56は、管状要素52を、フランジ56の片側の第1の管状部分58と、フランジ56の軸方向反対側の第2の管状部分60とに分割する。図示の実施形態では、第1の管状部分58が、第2の管状部分60よりも長い。フランジ56は、複数の軸方向を向く貫通穴62の形態の1または複数の固定開口部を提供し、それらが、ダンパ要素40およびホーンバネ要素90を機械的に互いに結合し、それら要素をスライダ50に機械的に結合するために使用される。フランジ56は、ホーンバネ要素90からのバネ力を吸収し、スライダ50およびダンパ要素70間の軸方向の力を伝達する働きもする。
【0058】
ここで
図9A~
図9Eを参照すると、第1の実施形態の完成したダンパユニット40が示されている。弾性ダンパ要素70は、第1のスライダ部分58上に配置されている。弾性ダンパ要素70は、シリコーンゴムなどのエラストマー材料で作られ、動的ダンパの弾性バネ要素としての使用に適している。ダンパ要素70は、少なくともエアバッグモジュールおよびホーンプレート14によって与えられる質量体とともにバネ質量系として作動して、ベース構造体12およびステアリングホイール2における振動Vを減衰する周波数調整動的振動ダンパを形成するように構成されている。
【0059】
図示の実施形態では、ダンパ要素70が、フランジ56とは反対側を向く遠位端71と、フランジ56の方を向く近位端72と、外側係合面75とを備えた略円筒形状を有する。例示的な非限定的な例では、ダンパ要素の軸方向の長さを7mmのオーダーとすることができる。
図7に示す最終的な振動低減アセンブリでは、各ダンパ要素70の外側係合面75が、ホーンプレート14上の関連するスリーブ20の内側係合面21と係合して、振動をホーンプレート14に伝達する。図示の実施形態では、ダンパ要素70の軸方向長さが、本質的に第1のスライダ部分58の軸方向長さに対応するが、第1のスライダ部分58の遠位端を越えて軸方向に短い距離だけ延びている。ダンパ要素70の近位端72は、フランジ56と接触している。ダンパ要素70の遠位端71は、半径方向外向きに延びるリング形状のスナップロック突起73を形成するために、外径が増大している。ダンパー要素70の近位端72は、さらに大きい直径を有し、アセンブリ6のホーンプレート14の下方に延在するように配置される。近位端72は、後述する理由のために、リング形状の溝76によって規定される上向きの支持リング74を提供することができる。
【0060】
図示の第1の実施形態では、ダンパ要素70が、複数の軸方向に延びるリブ77(
図9D)に分割され、それらリブが、ダンパユニット40の軸Aの周りに周方向に分配され、その間に空間78を規定している。リブ77の半径方向外面は一緒になって、ダンパ要素70の外側係合面75を形成する。リブ77および空間78によって得られる作用および利点は後で述べる。他の実施形態では、ダンパ要素40が、連続的な外側係合面を規定する周方向に途切れていない円筒の形態を有することができる。
【0061】
ダンパユニット40のホーンバネ要素90は、スライダ50の第2の部分、この実施形態ではフランジ56の軸方向反対側、第2の管状部分60、およびフランジ56の一部にも配置される。バネ要素90は、エラストマー材料から作られ、ホーンバネ部分94および取付部分92(
図9C)を含み、それらが、エラストマー材料により、互いに一体に成形されている。ホーンバネ要素90の成形中、少なくともその取付部分92がスライダ50上に成形され、それによりホーンバネ要素90が製造時にスライダ50上に正確に位置決めされるようになっている。
【0062】
図9Cに最もよく示されるように、ホーンバネ要素90の取付部分92はL字形断面を有し、一方の辺がスライダ50の短い管状部分60と接触し、もう一方の辺がフランジ56と接触する。他の実施形態では、短い管状部分60が省略されて、取付部分92がフランジ56のみと係合するようにしてもよい。
【0063】
ホーンバネ要素90に使用されるエラストマー材料は、必要なバネ定数に応じて、目的とするホーンバネ機能を提供するのに適した任意のエラストマー材料であってよい。好ましい実施形態では、材料がシリコーンゴムを含む。特にダンパ要素40およびホーンバネ要素90が互いに一体に成形される場合、それら要素を成形するために同じエラストマー材料を使用することができる。図示の第1の実施形態では、ホーンバネ部分94が、軸Aの方向にバネ作用を提供するために蛇腹形状である。他の実施形態は、蛇腹形状設計のように屈曲するのではなく、圧縮に部分的にまたは圧縮のみに依存する異なるバネ設計を有するようにしてもよい。バネ定数は、ホーンバネ部分94の1または複数のパラメータ、例えば材料、軸方向長さ、直径、壁厚、および蛇腹設計(角度など)を変えることによって、変えることができる。開口部および/または別個のバネ脚部を与える「途切れた」設計を使用することも可能であり、それは、バネ特性の更なる調整オプションも提供するであろう。
【0064】
最終的な振動低減アセンブリ6では、成形されたホーンバネ部分94が、軸線Aの方向にホーンバネとして作用し、スライダ50およびダンパ要素40を介してホーンプレート14にバネ力を及ぼすように構成される。ホーン作動が終了すると、ホーンプレート14を戻すためのバネ力が提供される。ホーンバネ部分94の事前圧縮により、バネ力は、非作動状態にあっても付勢バネ力として提供される。それにより得られる利点は、運転者がホーンを操作するときに、ホーンバネによって生成されるバネ力をより早く利用できることである。
【0065】
図示の第1の実施形態では、ホーンバネ要素90が、スライダ50上に直接成形されており、その結果、金属渦巻きバネを別個に製造する必要がなく、そのような別個の金属渦巻きバネを、組立中にスライダに対して取付けおよび/または位置合わせする必要がない。現在のところ、オーバーモールディングが好ましい成形方法と考えられるが、スライダ50とエラストマー部品の両方が1台の2K射出成形機を使用して製造される2K射出成形など、他の手法も考えられる。現在好ましいわけではないが、ダンパ要素70とホーンバネ要素90に異なる成形技術を使用することが可能である。好ましい実施形態では、ホーンバネ要素90が、スライダ50上に成形されるだけでなく、スライダ50にも結合される。結合は、機械的(摩擦結合を含む)および/または化学的なものとすることができる。
【0066】
図示の第1の実施形態では、スライダ50の図示の位置にホーンバネ要素90を維持するために、ホーンバネ要素90がスライダ50に機械的に結合されている。これは、複数のエラストマー固定要素100によって達成され、それらは、ホーンバネ要素90と一体に成形され、フランジ56の固定開口部62と固定係合している。図示の実施形態では、ダンパ要素40も、スライダ50に機械的に結合され、それにより、スライダ50の図示の位置にダンパ要素40が維持される。これも、固定要素100によって達成される。好ましい実施形態では、同じ固定要素100が、ホーンバネ要素90とダンパ要素40の両方を結合するために使用され、その結果、エラストマーホーンバネ要素90、エラストマーダンパ要素40および固定要素100が、一つの単一体として成形されるとともに、貫通開口部62によってスライダ50に機械的に結合される。説明目的のためだけに、この単一のエラストマー本体70、90、100は、
図10Aおよび
図10Bでは、スライダ50なしで示されている。この実施形態では、エラストマー要素70、90とスライダ50の管状部分との間に摩擦結合も存在するようにしてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、ダンパ要素40およびホーンバネ要素90の一方または両方が、接着によりスライダ50に化学的に結合されるものであってもよい。ダンパ要素40およびホーンバネ要素90の一方または両方に対して、図面に開示されるような機械的結合および化学的接着の両方を使用することも可能である。化学的接着は、成形中に実行されるものであってもよい。摩擦結合のみに、または部分的に依存することも可能である。摩擦結合は、エラストマー材料の成形後の収縮によって得ることができる。
【0068】
次に、
図2~
図7を参照して、第1の実施形態に係る多数のダンパユニット40を使用して振動低減アセンブリ6を組み立てる方法を説明する。ここで説明するステップの順序または順番は変更することが可能である。第1のステップとして、ブラケット22をベース構造12の支持体13上に配置する。第2のステップとして、単一構造を形成するスライダ50およびリブ形状のダンパ要素70を含む各ダンパユニット40を、
図2の下側から、ホーンプレート14の関連する取付開口部24に挿入する。
【0069】
なお、各ダンパユニット40のスライダ50およびエラストマーダンパ要素70は、ユニットとして一緒に、ホーンプレート14の片側のみから挿入されることに留意されたい。ダンパ要素70の挿入中、ダンパ要素70の半径方向外側係合面75を対応するスリーブ20の内側係合面21と係合させて、ステアリングホイールの振動Vがダンパ要素70からホーンプレート14に伝達されるようにする。好ましくは、ダンパ要素70が、スライダ50とスリーブ20の内側係合面21との間で径方向に幾分圧縮されるように、半径方向の寸法が選択される。
【0070】
ダンパ要素70の挿入中、ダンパ要素70と一体的に形成された支持リング74は、
図7に示すようにホーンプレート14の底面に係合し、最終的な挿入位置を規定する。ダンパ要素70の挿入中、ダンパ要素70の上部スナップロック突起73は、スリーブ20を通過するために一時的に圧縮される。最終位置では、スナップロック突起73が、スリーブ20の上縁の上に延びる。これにより、支持リング74およびスナップロック突起73は、一緒になって、ダンパ要素70がホーンプレート14に対して正確に軸方向に位置決め/固定されて保持されるようにする。別個の固定要素は不要であり、ダンパユニットの片側挿入時に、軸方向固定が自動的に得られる。また、この第1の実施形態におけるエラストマーダンパ要素70の軸方向遠位部分が、スリーブ20の遠位端を越えて軸方向に延びることにも留意されたい。
【0071】
ダンパ要素70がホーンプレート14に正確に配置されると、ボルト120を各スライダ50のボア54内に挿入することができる。各ボルト120は、ボルトヘッド126、円筒ガイドシャフト122およびねじ付き端部124を有する。スライダ50の管状部分52は、ガイドシャフト122に沿ってスライドすることができる。
図7に示すように、ボルト120は、ベース構造12の支持体13のボルト穴に固定される。各ボルト120の最終的な締結中に、対応するホーンバネ部分94の事前圧縮が得られる。非限定的な例として、ホーンバネ部分は、組立中に10mmから7mmに事前に圧縮され、その後、ホーンが作動すると1または数mmさらに圧縮される。最終組立において、各ホーンバネ部分94の遠位端95は、ブラケット22の関連するホーンバネ支持面26と係合する。最終組立状態では、ボルトヘッド126が、エラストマーダンパ要素70の上部端71と軸方向に係合し、スナップロック突起73がスリーブ20とボルトヘッド126との間に突出する。
【0072】
ダンパユニット40を製造し、本発明のダンパユニット40を使用して振動低減アセンブリを組み立てる開示の方法は、製造コストと時間の面だけでなく、品質の面でも大きい利点がある。多数の個々の部分の製造、処理および組立を行う必要のある従来技術と比較して、そして、多くの場合ホーンプレート14の両側から、多くの様々な部品の処理および組立を行う必要のある従来技術と比較して、本発明の概念は、各ダンパユニット40において、単純なボルト120とともに単一のダンパユニット40のみを使用することにより、ダンパ機能およびホーンバネ機能の両方を確立することを可能にする。
【0073】
アセンブリ6のホーン作動機構の動作は以下の通りである。すなわち、ホーン機構が運転者によって作動されないとき、各事前圧縮または付勢されたホーンバネ部分94が、スライダ50のフランジ56を押圧し、スライダ50をベース構造12から離れる方向に上方へと付勢する。軸方向のバネ力は、フランジ56を介してダンパ要素70に伝達され、支持リング74を介してホーンプレート14に伝達される。ここで、ボルト120は複数の機能を有し、すなわち、
・ボルト120は、ホーン作動中のスライダ50の軸方向移動のためのガイドシャフト122を提供し、
・ボルトヘッド126は、ダンパユニット40の軸方向移動のための上部軸方向ストッパを規定し、
・ボルトヘッド126は、ダンパ要素70の上部を押圧することにより、ホーンプレート14に対してダンパユニット40を定位置に固定するのを補助することに留意されたい。
【0074】
図示の実施形態では、ダンパ要素70の遠位端71が、スリーブ20の上縁を越えて短い距離だけ延び、それにより、ダンパユニット40の上部停止位置が、ダンパ要素70の端部71とボルトヘッド120との間の柔軟な係合によって規定される。
【0075】
ホーン作動時に、運転者がステアリングホイール2のホーンパッド8を押すと、ホーンプレート14がベース構造12に向かって押される。力は、ダンパ要素40を介してスライダ50に伝達され、それによりスライダがガイドシャフト122に沿って変位し、
図5の距離Dがゼロに減少してホーンスイッチ15、30が閉じるまで、ホーンバネ部分94を軸方向にさらに圧縮する。ホーンパッド8への圧力が解放されると、ホーンバネ部分94がホーンプレート14をその通常の位置に戻し、エラストマー端部分71とボルトヘッド124との間の柔軟な係合が「ソフトな」停止を与える。
【0076】
アセンブリ6の振動減衰機能は次の通りである。先ず、ステアリングホイール2およびベース構造12に生じるステアリングホイールの振動V(
図7)が、ボルト120およびスライダ50を介してエラストマーダンパ要素70に伝達される。エラストマーダンパ要素70は、スリーブ20を介してステアリングホイールの振動Vをホーンプレート14に伝達し、それにより、質量体(ホーンプレート、エアバッグアセンブリ、およびホーンプレート14によって支持される他の任意の細部構造の質量によって提供される)を位相をずらして振動させて、ステアリングホイール2の振動Vが動的に減衰されるようにする。振動減衰の間、ダンパ要素70のエラストマー材料の半径方向の圧縮は変化することとなる。ダンパ要素70のリブ付き設計により、エラストマー材料は、振動中にリブ77間の空間78内に拡張することができる。この設計は、ダンパの圧縮とダンパ要素70のバネ定数との間に、より直線的な有利な関係を与える。リブのない中実円筒のエラストマー材料においては、材料にそのような「逃げ」がないため、より非直線的なばね定数となり、それにより、目標周波数に一致させるのがより困難となって、動的減衰機能の効率が低下する。リブ付き構成によって得られる更なる利点は、設計および製造中の周波数調整における柔軟性の向上である。アセンブリの減衰周波数は、リブ77の数、リブ77およびリブ77間の空間78の周方向寸法、半径方向寸法および/または軸方向の寸法等のうちの1または複数のパラメータを変えることによって調整することができる。このため、より厚いまたはより薄いリブ、軸方向により長いまたはより短いリブ、半径方向により長いまたはより短いリブなどを使用することができる。また、ダンパ要素70を調整することができる周波数間隔は、従来のダンパ要素と比較して、リブ付き構成を使用することにより、シフトおよび/または拡大することができる。
【0077】
このため、振動減衰動作中、ホーンプレート14は、特にホーンプレート14を軸方向に支持するダンパ要素70の下側部分または近位部分72に対して、軸Aに垂直な方向に移動させられる。半径方向に移動するホーンプレート14がその後面で下側部分72の表面に直接接触しているため、ホーンプレート14のそのような半径方向の移動は、ホーンプレート14の底面と
図7の符号74におけるダンパ要素70との間の境界面で不要な摩擦運動およびシリコーン摩耗を引き起こす可能性がある。また、ダンパ要素70の下側部分72とホーンプレート14の後面との間のこの軸方向の直接的な接触は、減衰機能(調整)に否定的な形で影響を及ぼす可能性がある。これが、リング状の溝76を設ける理由である。これにより、支持リング74は、減衰中に、ホーンプレート14の左右の動きとともに、
図7の左右方向により自由に動くことができ、その結果、ホーンプレート14とダンパ要素70との間の摩擦運動が少なくなり、また、ダンパ要素部分70とホーンプレート14の後面との間の接触から振動減衰を「分離」することができる。
【0078】
第2の実施形態
図11Aおよび
図11Bは、ダンパユニット240の第2の実施形態を示している。第1の実施形態と同じ符号が200番台で使用されている。前の段落で説明したリング74およびリング状溝76による解決策は有利となることもあるが、追加の可動性は振動方向のみにおいて得られることに留意されたい。例えば、振動Vが
図7で左右を向く場合、
図7の左側と右側に示される支持リング74の部分は、溝76によって、ホーンプレート12とともに自由に移動することができる。しかしながら、
図7の読み手に向かいかつ読み手から離れる方向を向く支持リング74上の様々な周方向の位置において、そのような左右の動きは、溝76によって許容されることはない。
【0079】
この問題に対処するために、第2の実施形態に係るダンパ要素270の底部分271が、
図11Aおよび
図11Bに示すように設計されている。第1の実施形態における支持リング74は、多数の個々の支持スタッド274へと周方向に分割されて、周方向におけるそれらの間に空間279が設けられている。リング設計74と比較して、個々の支持スタッド274は、すべての半径方向でより柔軟となる。この設計により、ホーンプレート14の後面と係合している支持スタッド274が、振動減衰中に、振動減衰動作に実質的に影響を与えることなく、ホーンプレート14と一緒に、軸Aに対して半径方向および周方向の両方に移動することができる。この設計は、支持スタッド274がホーンプレート14の動きによりよく追従することを可能にする。すべての方向で均一な可動性を得るために、支持スタッド274は好ましくは円形断面を有すること、すなわち、軸Aに垂直なすべての方向においてほぼ同じ寸法を有するようにしてもよい。
【0080】
第3の実施形態
図12Aおよび
図12Bは、異なる方向に異なる減衰特性が必要とされる状況で使用するためのバネユニット340の第3の実施形態を示している。上記と同じ符号が300番台で使用されている。支持スタッド374および空間376は、第2の実施形態と同様に配置される。第3の実施形態では、バネユニット340のエラストマーダンパ要素370が、長円形または楕円形構成などの非円形構成を有する。
図12Bに示すように、非円形ダンパ要素370は、ホーンプレート14の対応する非円形開口321に収容される。この非円形設計により、アセンブリは、
図12Bの垂直方向および水平方向で異なる調整周波数を提供することができる。
【0081】
第4の実施形態
図15A~
図15Cは、ダンパユニット440の第4の実施形態を示している。上記と同じ符号が400番台で使用されている。ダンパユニット440のスライダ450は、
図13A~
図13Dに示されている。ダンパユニット440のエラストマーダンパ要素470は、
図14A~
図14Cに示されている。製造、任意選択的な結合、機能、材料などに関する先の実施形態について述べたすべてが、すべての関連部分において、この第4の実施形態440にも当てはまる。ベース構造12、ブラケット22およびホーンプレート14は、結果として得られるダンパアセンブリを示す図面に概略的に描かれている。
【0082】
第2の実施形態と同様に、第4の実施形態に係るダンパユニット440のダンパ要素470は、複数の軸方向に延びるリブ477に分割され、それらリブが、ダンパユニット440の軸Aを中心に周方向に分配され、それらの間に空間478が規定されている。上述したリブの動作および利点は、この第4の実施形態にも、すべての関連する態様で当てはまる。しかしながら、ダンパユニット440のこの第4の実施形態は、いくつかの追加の特徴を提供する。
【0083】
第4の実施形態では、軸Aの方向に見られるように、各リブ477が、リブ477の振動減衰部分を形成する近位リブ部分477aと、振動減衰動作に主に関与しない遠位リブ部分477bとを有する(
図14A~
図14C)。近位リブ部分477aは、軸Aと平行に延びる外側半径方向面475を有する。それらリブ477の半径方向外側面475は一緒になって、ダンパ要素470の外側係合面を形成する。最終アセンブリでは、近位リブ部分477aが、上述したように、半径方向に僅かに圧縮された状態で保持されることとなる。遠位リブ部分477bは、第1の実施形態のスナップロック突起73と同様に、スナップロックの目的で、半径方向外側に延びるスナップロック突起473を有する。スナップロック突起473は、近位傾斜固定面473aおよび遠位傾斜挿入面473bを提供する。さらに、図示の第4の実施形態では、遠位リブ部分477bとスライダ450の管状要素458との間に半径方向にギャップ473cがあってもよい。他の実施形態では、この半径方向のギャップ473cを省いてもよい。
【0084】
ダンパユニット440のホーンバネ要素490は、スライダフランジ456の反対側、スライダ450の下側管状部分460上に配置されている。ホーンバネ要素90の構造、製造、代替例および動作に関して第1の実施形態で述べたことは、すべての関連する態様において、この第4の実施形態のホーンバネ要素490に適用される。図示の実施形態では、ホーンバネ要素490が、第1の実施形態と同様に、スライダ450上でエラストマーダンパ要素470と一体に成形され、エラストマー固定要素100が、スライダフランジ456の開口部462を通って延在する。この実施形態では、エラストマー材料の部分101が、スライダフランジ456の外側リムの半径方向外側にも延在する。代替的な実施形態では、ダンパ要素470およびホーンバネ要素490が、固定要素100のみによって、または部分101のみによって、一体に保持される。説明のために、この単一のエラストマー本体470、490、100が、
図14Aおよび
図14Cでは、スライダ450なしで示されている。この実施形態では、エラストマー要素470、490とスライダ450の管状部分との間に摩擦結合もあってもよい。
【0085】
第4の実施形態では、
図14A~
図14Cおよび
図15A~
図15Dに示すように、エラストマーダンパ要素470には、個別の支持スタッド474aの第1のセットおよび個別の支持スタッド474bの第2のセットが設けられている。第1のセットの支持スタッド474aは、第2のセットの支持スタッド474bと比較して、ダンパユニットの遠位挿入端に軸方向に量Δだけ僅かに近く配置される。非限定的な例として、Δの値は、大凡1ミリメートルまたは数ミリメートルである。図示の実施形態では、2つのセットの支持スタッド474a、474bが、周方向に織り交ぜられている。支持スタッド474a、474bは、軸Aを横断するすべての方向に可撓性となるように、周方向に互いに離間しており、半径方向にスライダから離間している。図示のような好ましい実施形態では、第2のセットの支持スタッド474bが、軸Aに垂直な断面が大きいという点で、第1のセットの支持スタッド474aよりも大きくなっている。以下では、これらの異なるスタッドを、小さい支持スタッド474aおよび大きい支持スタッド474bと称する。図示の実施形態では、小さい支持スタッド474aは円形の断面を有し、大きい支持スタッド474bは細長い断面を有する。支持スタッド474a、474bの設計および形状は、この例とは異なってもよい。小さい支持スタッド474aは、第2の実施形態の支持スタッド274と本質的に同じ機能を有する。すなわち、小さい支持スタッドは、振動減衰を妨げることがないよう、支持スタッドとホーンプレート14の後面との間の接触または境界面が半径方向平面においてフレキシブルであることを確実にする。大きいスタッド474bの機能については以下に述べる。
【0086】
図16A~
図16Eは、第4の実施形態に係る3つのダンパユニット440を備える振動ダンパアセンブリ6(
図16F)を組み立てる方法を示している。
図16Aは、ホーンプレート14の3つの開口部のうちの1つに下方から挿入されるダンパユニット440を示している。前述した実施形態と同様に、各ダンパユニット440のスライダ450およびエラストマーダンパ要素470は、ホーンプレート14の一方の面のみから、一緒に挿入される。図示の実施形態では、ホーンプレート14の各開口部にスリーブ20が設けられている。スリーブは、ホーンプレートに成形される硬質プラスチック材料のような比較的硬質の材料から形成されることが好ましい。スリーブ20の一機能は、ダンパ要素470に軸方向に延びる係合面を提供することである。スリーブ20の別の機能は、組立中および動作中の損傷からエラストマーダンパ要素470を保護することである。
【0087】
図16Bに示すように、リブ477の遠位傾斜挿入面473bがダンパユニット440を開口部内に案内し、また、エラストマーダンパ要素470を開口部内に通すか又は押圧するのも補助するように、スリーブの内側半径寸法が選択されている。
【0088】
図16Cは、ダンパユニット440がスリーブ20の開口部を通って移動するときに、リブ477のスナップロック突起473が半径方向内向きにどのように押されるのかを示している。この半径方向の移動は、遠位リブ部分477bの半径方向内向きの曲げおよび/またはスナップロック突起473の半径方向の圧縮により、可能となる。
【0089】
図16Dは、ホーンプレート14に対するダンパユニット440の最終取付位置を示している。最終位置は、小さい支持スタッド474aがスリーブ20の下側と係合に至る挿入位置によって規定される。その係合は、ホーンプレート14の後面と直接であってもよい。ダンパユニット440がその最終位置まで完全に挿入されると、リブ477のスナップロック突起473が、
図16Dに矢印で示すように、半径方向外向きにスナップする。各リブ477の近位傾斜固定面473bは、ダンパユニット440を定位置に固定すべく、スリーブ20のスナップロック突起の上側と固定係合する。このとき、ダンパユニット440は、エラストマーダンパ要素470によって、すなわち一方では小さい支持スタッド474aによって、そして他方ではスナップロック突起473によって、その最終位置で軸方向に保持される。大きい支持スタッド474bは、この段階では使用されない。
【0090】
第1の実施形態において述べたように、ダンパ要素470の挿入中に、近位リブ部分477aの半径方向外側の係合面475は、対応するスリーブ20の内側係合面21と係合し、その結果、ステアリングホイールの振動Vをダンパ要素470からホーンプレート14に伝達することができる。適切な振動減衰効果を達成するためには、ダンパ要素470が挿入の結果としてスライダ450とスリーブ20の内側係合面21との間で半径方向にある程度事前圧縮されるように、半径方向の寸法を選択することが好ましい。
【0091】
図16Eに示すように、ダンパ要素470がホーンプレート14に正確に配置されている場合、ボルト120を各スライダ450のボア454内に挿入することができる。各ボルト120は、ボルトヘッド126、円筒ガイドシャフト122およびねじ付き端部124を有する。スライダ450の管状部分452は、ガイドシャフト122に沿ってスライドすることができる。ボルト120は、ベース構造12の支持体13のボルト穴に固定される。
【0092】
各ボルト120の最終的な締結中(
図16F)に、対応するホーンバネ部分494の事前圧縮が得られる。非限定的な例として、ホーンバネ部分494は、組立中に10mmから7mmに事前に圧縮され、その後、ホーンの作動時に1ミリメートルまたは数ミリメートルさらに圧縮されるようにしてもよい。最終アセンブリ6では、各ホーンバネ部分494の遠位端495が、ブラケット22の関連するホーンバネ支持面26と係合する。
【0093】
図16Fの拡大図に示すように、各ボルト120の最終締結中に、リブ477の遠位端がスライダ450の遠位端と同じ高さになるまで、ボルトヘッド126は、リブ477と係合して、リブを軸方向に圧縮することができる。
図16Fに矢印で示すように、この最終圧縮は、スナップロック突起473またはリブ477をスリーブ20によりしっかりと固定し、それによりホーンプレート14に対して軸方向にダンパユニット440をさらに確実に固定することができる。他の実施形態では、そのような最終的な圧縮を省くことができる。
【0094】
ここで、より大きい/より剛性のある支持スタッド474bの動作を、
図17A~
図17Cを参照して説明する。運転者がホーンを作動させる前(
図17A)は、各スリーブ20の後面が、小さい支持スタッド474aのみと接触し、スリーブ20の後面と大きい支持スタッド474bとの間に軸方向のギャップΔが存在する。
【0095】
図17Bは、運転者がホーン起動パッド8を押圧することによってホーン作動を開始したばかりのホーン作動の初期段階を示している。ここで、ホーンプレート14は、距離Δだけ軸方向に移動している。小さい支持スタッド474aは、相対的に小さい断面寸法のため、軸方向に圧縮されている。したがって、ホーンバネ494の圧縮はまだ始まっていない。小さい支持スタッド474aが大きい支持スタッド474bと同じ軸方向高さを有する程度まで軸方向に圧縮されると、
図17Bの拡大図に示すように、スリーブ20の後面が、小さい支持スタッド474aおよび大きい支持スタッド474bの両方と接触することになる。このとき、距離Δがなくなる。よって、支持スタッド474aの第1のセットに小さい寸法を選択することは、柔軟な境界面を確保し、ホーン作動時の軸方向の圧縮を確保するという両方の利点を有する。
【0096】
図17Cは、ホーン作動の次の段階を示している。大きい支持スタッド474bへの距離Δがなくなったとき、すべての支持スタッド474a、474bを合わせた総軸方向剛性は、運転者によってホーン作動パッド8が押されたときにホーンバネ部分494を圧縮するのに十分なものとなる。説明のために、
図17Cは、ホーンプレート14の動きおよびホーンバネの圧縮を非常に誇張した大きさで示している。実際には、この動きはたった1ミリメートルまたは数ミリメートル程度であり得る。
【0097】
ホーンプレートまでの距離が異なる支持スタッド474a、474bを含み(この設計では、高さが異なることによってそれが得られ)、任意選択的には軸方向の剛性が異なるこの設計によって得られる特定の利点は、2つの有利な特性が同時に得られることであり、その1つが振動減衰に関するもので、もう1つがホーン作動に関するものである。振動減衰に関しては、エラストマー材料とスリーブ20またはホーンプレート14の後面との間に半径方向に柔軟な境界面が好ましい。ホーン作動に関しては、運転者がパッド8を押したときにホーンバネがなるべく直ぐに圧縮されるように、軸方向に硬い境界面が同じ位置で好ましい。この「ジレンマ」は、異なる支持スタッド474a、474bを提供して「動的」支持境界面を作り出すことによって解決される。
【0098】
一方で、ホーン作動が存在しない場合、ホーンプレート14の後面は、比較的可撓性のある小さい支持スタッド474aのみによって支持される。これは、エラストマー材料とホーンプレート14の後面との間の境界面が振動減衰機能を妨害しないという利点を有する。大きい支持スタッド474bは、ホーン作動が存在しないときは、非作動である。一方、ホーンの作動が開始されたとき、完全に作り出されたホーンバネ力ができるだけ早く得られることが好ましい。大きくて比較的硬質な支持スタッド474bと、軸方向剛性が比較的低い小さい支持スタッド474aの存在により、小さい支持スタッド474aの軸方向の圧縮によってホーン作動が開始されると、距離Δが急速に取り除かれ、その結果、通常の振動減衰時に境界面が柔軟であるにもかかわらず、望ましい軸方向に硬い境界面を確立することができる。
【0099】
第5の実施形態
図19A~
図19Cは、ダンパユニット540の第5の実施形態を示している。上記と同じ符号が500番台で使用されている。ダンパユニット540のスライダは、
図13A~
図13Dに示す第4の実施形態のスライダ450と同じ設計である。ダンパユニット540のダンパ要素570は、
図18A~
図18Cに示されている。製造、選択的な結合、機能、組立、材料、リブ、支持スタッド、代替例などに関する先の実施形態について述べたすべてが、すべての関連部分においてこの第5の実施形態540にも適用される。
【0100】
第5の実施形態のダンパユニット550が成形エラストマー材料から作られた一体形成ホーンバネ要素を有していない点で、第5の実施形態のダンパユニット540は、第4の実施形態のダンパユニット440とは異なる。代わりに、別個のホーンバネ594が使用されている。ホーンバネ594は、図示のように渦巻バネであり、一般に金属から作製される。図示の実施形態では、スライダ550が、
図20Bに示すように、ホーンバネ590の遠位端を受け入れるために、その下端または後端にリング形状の溝556aを備えている。
【0101】
図20A~
図20Eは、第5の実施形態に係る3つのダンパユニット540を備える振動ダンパアセンブリ6(
図20F)を組み立てる方法の第1の実施形態を示している。
図20Aは、ホーンプレート14の3つの取付開口部の1つに下方から挿入されるダンパユニット540を示している。先の実施形態と同様に、各ダンパユニット540のスライダ550およびエラストマーダンパ要素570は、ホーンプレート14の片側のみから、一緒に挿入される。図示の実施形態では、ホーンプレート14の各取付開口部には、スリーブ20が設けられている。スリーブ20は、好ましくは、ホーンプレートに成形された硬質プラスチック材料などの比較的硬質の材料から形成されている。スリーブ20の1つの機能は、ダンパ要素570のために、軸方向に延びる係合面を提供することである。スリーブ20の別の機能は、組立中および動作中に損傷からエラストマーダンパ要素570を保護することである。この実施形態では、ダンパユニット540がホーンプレート14に挿入される前に、別個のホーンバネ594の各々が、関連するダンパユニット540に接続されている。いくつかの実施形態では、ホーンバネ594の端部が組立中に溝556a内に固定されたまま維持されるように、ホーンバネ594およびリング状溝556aの半径寸法が選択される。上述した片側取付に関する利点は、この実施形態にも当てはまる。
【0102】
図21Aは、第5の実施形態に係る3つのダンパユニット540を含む振動ダンパアセンブリ6を組み立てる方法の第2の実施形態を示している。この実施形態では、各ダンパユニット540が、上述したように、ホーンプレート14に取り付けられるが、別個のホーンバネ594がダンパユニット540に取り付けられていない。ホーンバネ594は、ブラケット22のブラケット面26上に、ダンパユニット540とは別個に配置される。その後、
図21に示すように、ダンパユニット540が取り付けられたホーンプレート14が、ホーンバネ594上に配置される。最後に、他の実施形態で述べたように、ボルト120が挿入されて締め付けられる。
【0103】
代替例
上述した図示の実施形態は、多くの方法で変更することができる。
【0104】
図示の実施形態では、ホーン作動機構が機械的である。ホーンの作動は、ボルトシャフトに沿ってスライダをスライドさせて、ホーンプレート14をブラケット22に向けて移動することによって行われる。ホーンの作動中、ホーンバネが圧縮される。運転者がホーン作動パッド8を解放すると、ホーンバネ(エラストマーまたは金属)がホーンプレート14をそのデフォルト位置に戻す。他の実施形態では、ホーン作動機構が電子式であってもよい。そのような実施形態では、ホーンプレート14が、ベース構造12に向かって移動する必要はない。その代わりに、ホーンは、電子接点を含む他の手段によって作動される。しかしながら、依然として振動減衰の必要性があり、ホーンプレートは、前述したように、ダンパユニットを介してベース構造12に接続されるが、ホーンバネは使用されない。そのような実施形態において、スライダは、ホーンの作動中にボルトシャフト上をスライドするように設計されたスライダとしては実際に機能しない。その代わりに、スライダ部分は、ダンパユニットを取り付けるためにボルトが挿入される取付スリーブになる。スライド動作がないため、ホーンバネは必要ない。そのような実施形態では、半径方向スライダフランジも省くことができる。
【0105】
図示の実施形態では、ガイドシャフトが、振動ベース構造にねじ込まれるボルトの一部である。ガイドシャフトは、例えば、振動する構造と一体に作られたガイドシャフトであって、任意選択的にナットによりアセンブリを固定するための自由ねじ端部を有するガイドシャフトによって、異なる形で実現されるものであってもよい。また、いくつかの実施形態では、ボルトを反対方向に向けること、すなわち、代わりにホーンプレートにねじ込むことを可能にすることができる。
【0106】
代替的な実施形態では、ホーンプレートのスリーブ20が省略され、ダンパ要素が、異なる方法でホーンプレート14に接続されて、任意選択的にはホーンプレート14と直接接触する。
【0107】
他の実施形態は、スライダの第2の管状部分が、ホーンバネ部分の中にさらに延びるが、ホーンの作動時にスライダの移動を可能にするために、その中全体には延びないことが好ましい。いくつかの実施形態では、第2の管状部分が省略され、ホーンバネ要素が、フランジのみに取り付けられるなど、他の方法でスライダに取り付けられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、振動が本質的にすべての半径方向に伝達され得るように、ダンパ要素の外側係合面が、ダンパユニットの軸の周りで周方向に実質的に360度にわたって延在するようにしてもよい。そのような実施形態は、外側係合面が周方向に連続的ではないリブ付き設計も含むとみなすことができる。
【0109】
他の実施形態では、ダンパユニットが特定の方向にのみ振動を伝達するように構成されている場合に、ダンパ要素の外側係合面が一部の方向のみに存在するものであってもよい。これは、周方向に限られた内側係合面を規定する内側突出部分、例えばスリーブの内側突出部分をホーンプレートの取付開口部に配置するなどして、様々な方法で実現することができる。これは、一部の方向にのみ係合面を有するエラストマーダンパ要素を設計することによって実現されるものであってもよい。単一のダンパユニットが特定の方向のみに振動を伝達するように構成されたそのような実施形態では、完成したアセンブリが、異なる方向の振動を処理するように構成されたいくつかのダンパユニットを含むことができる。一例としては、1または複数のダンパユニットが、垂直方向の振動を減衰するように構成され、1または複数の他のダンパユニットが、水平方向の振動を減衰するように構成される。
【0110】
代替の実施形態では、例えば異なる方向において異なる減衰特性が望まれていて、ダンパユニットをガイドシャフト上で特定の方向に向ける必要がある場合に、スライダおよびエラストマー要素の対応するチャネルまたはボアが非円形断面を有するようにしてもよい。
【0111】
更なる発明概念
更なる発明の概念によれば、上述した実施形態の何れかで述べたようなダンパユニットが提供されるが、スリーブまたはスライダはない。
図24A~
図24Cは、そのような代替例を示している。それら図面は、スライダとエラストマー要素の底部分が取り除かれていることを除いて、
図18A~
図18Cと同じである。このようなダンパユニットは、上述した構造および機能のうちの1または複数を含む単一の一体型エラストマーダンパ要素として製造し、組み立てることもできる。したがって、エラストマーダンパ要素は、一体的に形成されたホーンバネを有していてもよいし、ホーンバネを全く有していなくともよい。必要に応じて圧縮のために上述したボルトヘッドを使用する固定手順も使用することができる。ダンパユニットを取り付ける際、ボルトは、エラストマーダンパユニットの中央チャネルまたは穴を通して導入されるようにしてもよく、任意選択的には、エラストマーダンパユニットの半径方向内面と直接接触するようにしてもよい。
【0112】
この更なる発明の概念によれば、ステアリングホイール用の周波数調整振動ダンパアセンブリで使用するためのダンパユニットが提供され、このダンパユニットが、挿入端および反対側の後端を有し、その挿入端を、前記ダンパアセンブリのホーンプレートに設けられた取付開口部に通して挿入されるように構成され、
ダンパユニットが、エラストマーダンパ要素であって、スリーブおよびダンパ要素が単一構造を形成するようにスリーブの半径方向外側に成形されたエラストマーダンパ要素を備え、
エラストマーダンパ要素が、ホーンプレートの取付開口部に挿入されるように構成されたエラストマー挿入部分と、ダンパユニットの最終取付位置を規定するように構成されたエラストマー支持部分とを提供し、
エラストマー挿入部分が、少なくとも部分的に軸に沿って延在し、かつ軸に対する周方向に相互に間隔を置いて配置された複数のエラストマーリブを提供し、それらリブが一緒に、取付開口部の内面と直接係合するように構成された半径方向外側の係合面を形成し、
半径方向外側の係合面が、第1の半径方向寸法を有し、エラストマー支持部分が、第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有し、
エラストマーリブの少なくともいくつかが、取付開口部を通して挿入されてダンパユニットをその最終取付位置にスナップロックするように構成された半径方向外側に延びるスナップロック突起を提供し、
エラストマー支持部分が、周方向に相互に間隔を置いて配置され、かつ少なくとも部分的に軸方向に延びる複数のエラストマー支持スタッドを提供し、エラストマー支持スタッドが、軸を横断するすべての方向に可撓性を有する。
【0113】
この更なる発明の概念によれば、ステアリングホイールの振動を減衰させるための周波数調整振動ダンパアセンブリの製造に使用する方法も提供され、この方法が、
1または複数のダンパユニットを使用するステップを含み、各ダンパユニットがエラストマー振動ダンパ要素を備え、このエラストマー振動ダンパ要素が、
・挿入端に1または複数の半径方向外向きに延びるスナップロック突起と、スナップロック突起から軸方向に間隔を置いて配置された半径方向外側係合面とを提供し、半径方向外側係合面が第1の半径方向寸法を有する、エラストマー挿入部分と、
・第1の半径方向寸法よりも大きい第2の半径方向寸法を有するエラストマー支持部分とを含み、本方法がさらに、
各ダンパユニットを挿入方向に、ダンパユニットの軸に沿ってホーンプレートの関連する取付開口部に挿入するステップを含み、
ダンパユニットが、最終挿入位置に到達するまで取付開口部に挿入され、
・エラストマー挿入部分の半径方向外側の係合面が、取付開口部の内面と直接接触し、
・ホーンプレートに対するダンパユニットのスナップロックを形成するために、取付開口部を通してスナップロック突起が挿入され、
・エラストマー支持部分が、ホーンプレートの後面と軸方向に接触している。
【0114】
第1~第4の実施形態において上述した構造、設計、方法および代替例は、この更なる発明の概念において、すべての関連部分で使用することができる。