(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】あと施工アンカー及びその設置構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20230317BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230317BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
E04B1/41 503F
E04G21/12 105Z
F16B37/04 C
(21)【出願番号】P 2019047548
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 学
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博司
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003503(JP,A)
【文献】特開2018-080520(JP,A)
【文献】特開2005-066725(JP,A)
【文献】特開2003-106323(JP,A)
【文献】特開2015-071216(JP,A)
【文献】特開2014-128838(JP,A)
【文献】特開2018-059566(JP,A)
【文献】特許第7179423(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04G 21/12
E04G 23/02
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部の先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部が設けられているインナー部材と、
先端側に前記テーパ部の入り込みで拡張する拡張片が設けられ、後端側に
撤去用アタッチメントの雄ねじに螺着される雌ねじが
後端まで形成されているスリーブを備え、
前記インナー部材に後端面で開口する雌ねじ穴が設けられ、前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合可能である
と共に、
前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の先端面の係合突起を係合可能な係合穴が、前記係合突起と対応する形状で形成されていることを特徴とするあと施工アンカー。
【請求項2】
基部の先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部が設けられているインナー部材と、
先端側に前記テーパ部の入り込みで拡張する拡張片が設けられ、後端側に撤去用アタッチメントの雄ねじに螺着される雌ねじが後端まで形成されているスリーブを備え、
前記インナー部材に後端面で開口する雌ねじ穴が設けられ、前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合可能であると共に、
前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の雄ねじ部を螺合して係合可能な係合部として、前記雌ねじ穴より小径の小径雌ねじ穴が形成されていることを特徴とするあと施工アンカー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のあと施工アンカーの設置構造であって、
前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されて前記あと施工アンカーがコンクリートの穿孔に打設され、
前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付
により、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成された状態で、前記拡張片が追従拡張されていることを特徴とするあと施工アンカーの設置構造。
【請求項4】
請求項1又は2記載のあと施工アンカーの施工方法であって、
コンクリートの穿孔に前記あと施工アンカーを挿入し、前記スリーブを打ち込んで前記テーパ部を前記拡張片に入り込ませて前記拡張片を拡張させる第1工程と、
前記インナー部材の前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合する第2工程と、
前記取付ボルトに対する取付ナットの締付で前記インナー部材を前記穿孔の孔口側に引っ張り、
前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成されるようにして、前記拡張片を追従拡張する第3工程を備えることを特徴とするあと施工アンカーの施工方法。
【請求項5】
請求項
1記載のあと施工アンカーが、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されてコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付
により、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成された状態で、前記拡張片が追従拡張されている構造からあと施工アンカーを撤去する方法であって、
前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側の前記係合穴に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の先端面に形成された前記係合穴と対応する形状の係合突起を係合し、前記押込棒を打ち込んで前記インナー部材を前記穿孔の孔奥側に押し込んで、前記インナー部材と前記スリーブとを縁切り状態或いは縁切りに近い状態にする第1工程と、
雌ねじ穴が貫通形成され、少なくとも先端側に雄ねじが設けられている
撤去用アタッチメントの前記雄ねじを、前記スリーブの
前記雌ねじに螺着し、抜出用ボルトの雄ねじを前記
撤去用アタッチメントの雌ねじ穴に螺入して前記抜出用ボルトの先端を前記インナー部材に当接する第
2工程と、
前記抜出用ボルトの先端で前記インナー部材を押しながら前記抜出用ボルトを回転させることにより、前記
撤去用アタッチメントと螺着された前記スリーブを抜き出す第
3工程を備えることを特徴とするあと施工アンカーの撤去方法。
【請求項6】
請求項2記載のあと施工アンカーが、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されてコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付により、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成された状態で、前記拡張片が追従拡張されている構造からあと施工アンカーを撤去する方法であって、
前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側の小径雌ねじ穴に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の雄ねじ部を螺合して係合し、前記押込棒を回転させて前記インナー部材を前記穿孔の孔奥側に押し込んで、前記インナー部材と前記スリーブとを縁切り状態或いは縁切りに近い状態にする第1工程と、
雌ねじ穴が貫通形成され、少なくとも先端側に雄ねじが設けられている撤去用アタッチメントの前記雄ねじを、前記スリーブの前記雌ねじに螺着し、抜出用ボルトの雄ねじを前記撤去用アタッチメントの雌ねじ穴に螺入して前記抜出用ボルトの先端を前記インナー部材に当接する第2工程と、
前記抜出用ボルトの先端で前記インナー部材を押しながら前記抜出用ボルトを回転させることにより、前記撤去用アタッチメントと螺着された前記スリーブを抜き出す第3工程を備えることを特徴とするあと施工アンカーの撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設のコンクリートに穿孔して打設されるあと施工アンカー及びその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既設のコンクリートに穿孔して打設されるあと施工アンカーとして、本体打込式アンカーと、スリーブ打込式アンカーが用いられている。本体打込式アンカー200は、
図9(a)、(b)に示すように、先端側に拡張片202、後端側に雌ねじ203が形成された略筒状の本体201と、本体201の先端側に配置される先端コーン204から構成され、先端コーン204で拡張片202を拡張してコンクリート210に形成された穿孔211に打設される。打設された本体打込式アンカー200の雌ねじ203には取付ボルト205を螺合し、コンクリート210から突出する取付ボルト205の部分に取付物220を外挿し、例えばワッシャー206を介してナット207を取付ボルト205に螺入して、取付物220が取り付けられる。
【0003】
本体打込式アンカー200は、取付ボルト205を外してしまえばコンクリート210からの突出部分が無くなるので、仮設アンカーとして利便性に優れる。更に、本体打込式アンカー200の本体201自体を撤去したい場合には、特許文献1、2のように、先端コーン204で反力を取りながら本体201を引き抜いて撤去することが可能である。
【0004】
また、スリーブ打込式アンカー300は、
図9(c)、(d)に示すように、先端側に拡張片302が形成されたスリーブ301と、先端側にテーパ部304、後端側に雄ねじ部305が形成されたテーパボルト303とから構成され、テーパ部304で拡張片302を拡張してコンクリート310に形成された穿孔311に打設される。打設されたスリーブ打込式アンカー300のテーパボルト303のコンクリート310から突出する部分には、取付物320を外挿し、例えばワッシャー306、スプリングワッシャー307を介してナット308を雄ねじ部305に螺入し、取付物320が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-106323号公報
【文献】特開2015-71216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本体打込式アンカーは、取付ボルトが螺着される略筒状の本体と、先端コーンが別部材であるため、取付ボルトに荷重が負荷されても先端コーンは引っ張られずに本体だけに引抜方向の力が作用する。そのため、撤去時には本体を引き抜いて撤去することが可能であるが、拡張片からの先端コーンの抜け出しが発生し、本体がコンクリートから抜け出してしまう可能性が高くなる。
【0007】
これに対して、スリーブ打込式アンカーは、テーパボルトのテーパ部がスリーブ内に引き込まれて拡張片が拡張するため、テーパボルトに荷重が負荷されればテーパ部がスリーブ内により引き込まれて拡張力が生じ、定着力が増すことになる。しかしながら、スリーブ打込式アンカーでは、コンクリートへのアンカー打設、取付物の設置が不要になった場合、ナット・ワッシャー・取付物を外しても、テーパボルトはそのままコンクリートに残置され、コンクリートから出っ張って邪魔な状態ともなる。一旦打ち込まれたスリーブ打込式アンカーを撤去しようとすると、スリーブ打込式アンカーの引抜強度以上の荷重で抜くことが必要になるため、コンクリートが破壊されてしまう可能性が高い。そのため、コンクリートからの抜け出しを防止できると共に、不要時に容易に撤去することができるあと施工アンカーが求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、高い定着力を有し、コンクリートからの抜け出しを防止することができると共に、不要時に容易に撤去することができるあと施工アンカー及びその設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のあと施工アンカーは、基部の先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部が設けられているインナー部材と、先端側に前記テーパ部の入り込みで拡張する拡張片が設けられ、後端側に雌ねじが形成されているスリーブを備え、前記インナー部材に後端面で開口する雌ねじ穴が設けられ、前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合可能であることを特徴とする。
これによれば、インナー部材の雌ねじ穴に取付ボルトを螺合することにより、取付ボルトに荷重が負荷されればテーパ部が拡張片により引き込まれて拡張力が生じ、定着力を増すことができる。従って、本体打込式アンカーの先端コーンの抜け出しのような事態が無く、高い定着力を発揮して、コンクリートからの抜け出しを防止できる信頼性の高いあと施工アンカーとすることができる。また、あと施工アンカーの設置構造であと施工アンカーが不要になった際には、スリーブの雌ねじを利用してスリーブを引き抜くことができ、不要時に容易に撤去することができる。従って、あと施工アンカーの設置のためにコンクリートに形成された穿孔を再利用することも可能となる。
【0010】
本発明のあと施工アンカーは、前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒を係合可能な係合部が設けられていることを特徴とする。また、本発明のあと施工アンカーは、基部の先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部が設けられているインナー部材と、先端側に前記テーパ部の入り込みで拡張する拡張片が設けられ、後端側に撤去用アタッチメントの雄ねじに螺着される雌ねじが後端まで形成されているスリーブを備え、前記インナー部材に後端面で開口する雌ねじ穴が設けられ、前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合可能であると共に、前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の先端面の係合突起を係合可能な係合穴が、前記係合突起と対応する形状で形成されていることを特徴とする。また、本発明のあと施工アンカーは、基部の先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部が設けられているインナー部材と、先端側に前記テーパ部の入り込みで拡張する拡張片が設けられ、後端側に撤去用アタッチメントの雄ねじに螺着される雌ねじが後端まで形成されているスリーブを備え、前記インナー部材に後端面で開口する雌ねじ穴が設けられ、前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合可能であると共に、前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の雄ねじ部を螺合して係合可能な係合部として、前記雌ねじ穴より小径の小径雌ねじ穴が形成されていることを特徴とする。
これによれば、押込棒を係合部に係合してインナー部材を孔奥に押し込むことにより、スリーブの拡張片に対するインナー部材の入り込みを外す或いは押圧状態を緩めることができ、より簡単且つ確実にスリーブを引き抜くことができる。
【0011】
本発明のあと施工アンカーの設置構造は、本発明のあと施工アンカーを設置する構造であって、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されて前記あと施工アンカーがコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付で前記拡張片が追従拡張されていることを特徴とする。また、本発明のあと施工アンカーの設置構造は、本発明のあと施工アンカーを設置する構造であって、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されて前記あと施工アンカーがコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付により、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成された状態で、前記拡張片が追従拡張されていることを特徴とする。
これによれば、取付ボルトの取付ナットによる締付でインナー部材が引き寄せられ、インナー部材のテーパ部が拡張片により引き込まれて追従拡張されるので、通常の設置状態でもより高い定着力を得ることができ、アンカー全体の剛性を非常に高めることができる。また、取付ボルトに荷重が負荷されて取付ボルトが引っ張られた際の耐性をより増すことができる。
【0012】
本発明のあと施工アンカーの施工方法は、本発明のあと施工アンカーを施工する方法であって、コンクリートの穿孔に前記あと施工アンカーを挿入し、前記スリーブを打ち込んで前記テーパ部を前記拡張片に入り込ませて前記拡張片を拡張させる第1工程と、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合する第2工程と、前記取付ボルトに対する取付ナットの締付で前記インナー部材を前記穿孔の孔口側に引っ張り、前記拡張片を追従拡張する第3工程を備えることを特徴とする。また、本発明のあと施工アンカーの施工方法は、本発明のあと施工アンカーを施工する方法であって、コンクリートの穿孔に前記あと施工アンカーを挿入し、前記スリーブを打ち込んで前記テーパ部を前記拡張片に入り込ませて前記拡張片を拡張させる第1工程と、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に取付ボルトを螺合する第2工程と、前記取付ボルトに対する取付ナットの締付で前記インナー部材を前記穿孔の孔口側に引っ張り、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成されるようにして、前記拡張片を追従拡張する第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、スリーブの打ち込みでインナー部材のテーパ部を拡張片に入り込ませて拡張片を拡張させることに加え、取付ボルトの取付ナットによる締付でインナー部材を穿孔の孔口側に引き寄せ、インナー部材のテーパ部を拡張片により引き込んで拡張片を追従拡張することができる。従って、設置されたあと施工アンカーは通常の設置状態でもより高い定着力を得ることができ、アンカー全体の剛性を非常に高めることができる。また、取付ボルトに荷重が負荷されて取付ボルトが引っ張られた際の耐性をより増すことができる。
【0013】
本発明のあと施工アンカーの撤去方法は、本発明のあと施工アンカーが、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されてコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された前記取付ボルトに対する取付ナットの締付で前記拡張片が追従拡張されている構造からあと施工アンカーを撤去する方法であって、雌ねじ穴が貫通形成され、少なくとも先端側に雄ねじが設けられているアタッチメントの前記雄ねじを、前記スリーブの雌ねじに螺着し、抜出用ボルトの雄ねじを前記アタッチメントの雌ねじ穴に螺入して前記抜出用ボルトの先端を前記インナー部材に当接する第1工程と、前記抜出用ボルトの先端で前記インナー部材を押しながら前記抜出用ボルトを回転させることにより、前記アタッチメントと螺着された前記スリーブを抜き出す第2工程を備えることを特徴とする。
これによれば、抜出用ボルトの先端でインナー部材を押しながら抜出用ボルトを回転させることにより、簡単にスリーブを抜き出すことができる。
【0014】
本発明のあと施工アンカーの撤去方法は、前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側に係合部が設けられている前記あと施工アンカーを撤去する際に、前記第1工程より前に、押込棒を前記係合部に係合し、前記インナー部材を孔奥に押し込む工程を行うことを特徴とする。また、本発明のあと施工アンカーの撤去方法は、本発明のあと施工アンカーが、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されてコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付により、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成された状態で、前記拡張片が追従拡張されている構造からあと施工アンカーを撤去する方法であって、前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側の前記係合穴に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の先端面に形成された前記係合穴と対応する形状の係合突起を係合し、前記押込棒を打ち込んで前記インナー部材を前記穿孔の孔奥側に押し込んで、前記インナー部材と前記スリーブとを縁切り状態或いは縁切りに近い状態にする第1工程と、雌ねじ穴が貫通形成され、少なくとも先端側に雄ねじが設けられている撤去用アタッチメントの前記雄ねじを、前記スリーブの前記雌ねじに螺着し、抜出用ボルトの雄ねじを前記撤去用アタッチメントの雌ねじ穴に螺入して前記抜出用ボルトの先端を前記インナー部材に当接する第2工程と、前記抜出用ボルトの先端で前記インナー部材を押しながら前記抜出用ボルトを回転させることにより、前記撤去用アタッチメントと螺着された前記スリーブを抜き出す第3工程を備えることを特徴とする。また、本発明のあと施工アンカーの撤去方法は、本発明のあと施工アンカーが、前記インナー部材の前記テーパ部の入り込みで前記拡張片が拡張されてコンクリートの穿孔に打設され、前記インナー部材の前記雌ねじ穴に螺着された取付ボルトに対する取付ナットの締付により、前記穿孔に前記インナー部材を孔奥側に押し込み可能な空間が形成された状態で、前記拡張片が追従拡張されている構造からあと施工アンカーを撤去する方法であって、前記インナー部材の前記雌ねじ穴よりも先端側の小径雌ねじ穴に、前記インナー部材を孔奥に押し込む押込棒の雄ねじ部を螺合して係合し、前記押込棒を回転させて前記インナー部材を前記穿孔の孔奥側に押し込んで、前記インナー部材と前記スリーブとを縁切り状態或いは縁切りに近い状態にする第1工程と、雌ねじ穴が貫通形成され、少なくとも先端側に雄ねじが設けられている撤去用アタッチメントの前記雄ねじを、前記スリーブの前記雌ねじに螺着し、抜出用ボルトの雄ねじを前記撤去用アタッチメントの雌ねじ穴に螺入して前記抜出用ボルトの先端を前記インナー部材に当接する第2工程と、前記抜出用ボルトの先端で前記インナー部材を押しながら前記抜出用ボルトを回転させることにより、前記撤去用アタッチメントと螺着された前記スリーブを抜き出す第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、押込棒を係合部に係合し、インナー部材を孔奥に押し込むことにより、スリーブの拡張片に対するインナー部材の入り込みを外す或いは押圧状態を緩めることができ、より簡単且つ確実にスリーブを引き抜くことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い定着力を有し、コンクリートからの抜け出しを防止することができると共に、不要時に容易に撤去することができるあと施工アンカーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明による第1実施形態のあと施工アンカーの正面図、(b)は第1実施形態のあと施工アンカーの縦断面図、(c)は第1実施形態のあと施工アンカーの取付に用いられる取付ナット、ワッシャー、取付ボルトを示す正面図。
【
図2】(a)~(e)は第1実施形態のあと施工アンカーを打設する工程を説明する断面説明図。
【
図3】(a)は第1実施形態のあと施工アンカーの撤去工程で用いる押込棒の正面図、(b)はその撤去工程で用いるアタッチメントの正面図、(c)はその撤去工程で用いるアタッチメントの縦断面図、(d)はその撤去工程で用いる抜出用ボルトの正面図。
【
図4】(a)~(e)は第1実施形態のあと施工アンカーを撤去する工程の前半工程を説明する断面説明図。
【
図5】(a)~(d)は第1実施形態のあと施工アンカーを撤去する工程の後半工程を説明する断面説明図。
【
図6】(a)は本発明による第2実施形態のあと施工アンカーの正面図、(b)は第2実施形態のあと施工アンカーの縦断面図。
【
図7】第2実施形態のあと施工アンカーの撤去工程で用いる押込棒の正面図。
【
図8】(a)~(e)は第2実施形態のあと施工アンカーを打設する工程と撤去する工程を説明する断面説明図。
【
図9】(a)は従来の本体打込式アンカーの縦断面図、(b)は従来の本体打込式アンカーによる取付物の取り付けを説明する説明図、(c)は従来のスリーブ打込式アンカーの縦断面図、(d)は従来のスリーブ打込式アンカーによる取付物の取り付けを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態のあと施工アンカー〕
本発明による第1実施形態のあと施工アンカー1は、
図1に示すように、略円柱形の基部21の先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部22が設けられているインナー部材2と、略円筒状の本体31の先端側に先端から切り込まれたスリット32で区分される拡張片33が設けられ、本体31の後端側の内周に雌ねじ34が形成されているスリーブ3を備える。
【0018】
インナー部材2には、後端面23で開口する雌ねじ穴24が設けられ、雌ねじ穴24に後述する取付ボルト4の外周に形成されている雄ねじ41を螺合可能になっている。インナー部材2の雌ねじ穴24よりも先端側には、後述するインナー部材2を孔奥に押し込む押込棒8と引抜用ボルト10を係合可能な係合部が設けられており、第1実施形態における係合部は略円錐状の係合穴25で構成され、係合穴25が雌ねじ穴24の先端に隣接してテーパ部22に内設されている。
【0019】
あと施工アンカー1の拡張片33が拡張されていない状態では、スリーブ3の拡張片33にインナー部材2の基部21が内装され、テーパ部22の略全体が拡張片33の先端から先で露出するように配置される。そして、拡張片33の拡張時には、スリーブ3がインナー部材2の先端に向かって打ち込まれることで、拡張片33にテーパ部22が入り込んで拡張片33が拡張される(
図2参照)。
【0020】
あと施工アンカー1を後述するコンクリート100に設置して取付物110を取り付ける際には、
図1(c)に示す取付ボルト4、ワッシャー5、取付ナット6が用いられる。取付ボルト4は全長に亘って外周に雄ねじ41が形成されている全ねじボルトであり、インナー部材2の雌ねじ穴24に螺合可能になっている。ワッシャー5は取付ボルト4に外挿可能であり、取付ナット6は取付ボルト4に螺合可能になっている。
【0021】
第1実施形態のあと施工アンカー1をコンクリート100に施工して設置する際には、
図2(a)、(b)に示すように、コンクリート100に穿孔101を形成し、穿孔101内を清掃して非拡張状態のあと施工アンカー1をインナー部材2を孔奥側にして穿孔101に挿入する。次いで、
図2(c)に示すように、スリーブ3の後端面に打込棒71を当接させ、ハンマー72で打込棒71を打ち込むことによってスリーブ3を孔奥側に打ち込み、インナー部材2のテーパ部22をスリーブ3の拡張片33に相対的に入り込ませて拡張片33を拡張させ、拡張片33を穿孔101の孔壁に食い込ませる。
【0022】
その後、
図2(d)、(e)に示すように、インナー部材2の雌ねじ穴24に取付ボルト4を螺合し、インナー部材2に螺着した取付ボルト4に取付物110を外挿し、取付物110の外側で取付ボルト4にワッシャー5を外挿し、取付ナット6を取付ボルト4に螺合する。そして、この取付ボルト4に対する取付ナット6の締付で、
図2(e)の太線矢印のようにインナー部材2を穿孔101の孔口側に引っ張る。このインナー部材2の引っ張りにより、拡張片33が追従拡張されると共に、インナー部材2の引き上げで穿孔101の孔底に空間が生ずる或いは孔底の空間が大きくなる。
【0023】
このように施工されたあと施工アンカー1の設置構造は、あと施工アンカー1の拡張片33が、インナー部材2のテーパ部22の入り込みで拡張され、且つインナー部材2に螺着された取付ボルト4に対する取付ナット6の締付で追従拡張され、あと施工アンカー1にプレロードをかけた構造となり、設置されたあと施工アンカー1の剛性は非常に高くなる。
【0024】
また、あと施工アンカー1の設置構造からあと施工アンカー1を撤去する場合には、
図3(a)の押込棒8、
図3(b)のアタッチメント9、
図3(c)の抜出用ボルト10が用いられる。押込棒8は、スリーブ3及びインナー部材2の雌ねじ穴24に挿入可能な径で形成されており、その先端面に係合突起81が形成されている。係合突起81は、インナー部材2の係合部に相当する係合穴25に当接して係合可能であり、係合穴25に対応する形状で形成され、本例では係合穴25の略円錐形状に対応して略円錐状に形成されている。
【0025】
アタッチメント9は、雌ねじ穴91が貫通形成された略円筒状であり、円筒形の基部92の先端側の外周に雄ねじ93が設けられている。抜出用ボルト10は、軸部11と頭部12を有する頭付ボルトであり、軸部11の後部に雄ねじ13が形成され、その先端面14に係合突起15が形成されている。係合突起15は、インナー部材2の係合部に相当する係合穴25に当接して係合可能であり、係合穴25に対応する形状で形成され、本例では係合穴25の略円錐形状に対応して略円錐状に形成されている。
【0026】
そして、あと施工アンカー1の撤去時には、
図4(a)、(b)に示すように、取付ナット6、ワッシャー5、取付物110、取付ボルト4をあと施工アンカー1から外した後、設置されたあと施工アンカー1のスリーブ3及びインナー部材2の雌ねじ穴24に押込棒8を挿入して、押込棒8の係合突起81をインナー部材2の係合穴25に当接して係合し、押込棒8の位置合わせを行う。この状態でハンマー82で押込棒8を打ち込むことによってインナー部材2を孔奥側に押し込み(
図4(b)の太線矢印参照)、インナー部材2とスリーブ3の縁切りを行う或いは縁切りに近い状態にする。
【0027】
押込棒8を外した後、
図4(c)に示すように、アタッチメント9の雄ねじ93をスリーブ3の雌ねじ34に螺着してアタッチメント9をスリーブ3に取り付け、更に、
図4(d)に示すように、抜出用ボルト10の雄ねじ13をアタッチメント9の雌ねじ穴91に螺入して抜出用ボルト10の先端をインナー部材2に当接する。本例では、抜出用ボルト10の先端の係合突起15が、インナー部材2の係合部に相当する係合穴25に当接して係合し、位置合わせも行われる。
【0028】
その後、抜出用ボルト10の先端で当接するインナー部材2を押しながら、電動工具15等で抜出用ボルト10を回転させると、抜出用ボルト10に対してアタッチメント9及びこれに螺着されたスリーブ3が穿孔101の外に上がってきて、アタッチメント9と螺着されたスリーブ3が抜き出される(
図4(d)、(e)参照)。この抜出時には、スリーブ3の拡張片33はスプリングバックして拡張前の形状にほぼ戻り、穿孔径以下の形に窄んだ状態で穿孔101から出てくる。
【0029】
その後、アタッチメント9の雄ねじ93とスリーブ3の雌ねじ34との螺合を外して、アタッチメント9と抜出用ボルト10を取り外し、スリーブ3を穿孔101から撤去する(
図5(a)、(b)参照)。更に、例えば取付ボルト4或いは取付ボルト4の雄ねじ41と同一の雄ねじが設けられているボルトを用い、雄ねじ41等を少しインナー部材2の雌ねじ穴24に螺合し、ボルト毎抜き出す等により、穿孔101に残ったインナー部材2を撤去する(
図5(c)参照)。そして、空洞になった穿孔101は、必要に応じて充填材16を充填して塞がれるか(
図5(d))、或いは同径等の別のあと施工アンカーの打設に再利用される。
【0030】
第1実施形態によれば、インナー部材2の雌ねじ穴24に取付ボルト4を螺合することにより、取付ボルト4に荷重が負荷されればテーパ部22が拡張片33により引き込まれて拡張力が生じ、定着力を増すことができる。従って、本体打込式アンカーの先端コーンの抜け出しのような事態が無く、高い定着力を発揮して、コンクリート100からの抜け出しを防止できる信頼性の高いあと施工アンカー1とすることができる。また、あと施工アンカー1の設置構造であと施工アンカー1が不要になった際には、スリーブ3の雌ねじ34を利用してスリーブ3を引き抜くことができ、あと施工アンカー1を不要時に容易に撤去することができる。従って、あと施工アンカー1の設置のためにコンクリート100に形成された穿孔101を再利用することも可能となる。
【0031】
また、インナー部材2に押込棒8を係合可能な係合穴25が設ける構成によれば、押込棒8を係合穴25に係合してインナー部材2を孔奥に押し込むことにより、スリーブ3の拡張片33に対するインナー部材2の入り込みを外す或いは押圧状態を緩めることができ、より簡単且つ確実にスリーブ3を引き抜くことが可能となる。
【0032】
また、あと施工アンカー1の設置構造或いは施工方法では、取付ボルト4の取付ナット6による締付でインナー部材2が引き寄せられ、インナー部材2のテーパ部22が拡張片33により引き込まれて追従拡張されるので、通常の設置状態でもより高い定着力を得ることができ、アンカー全体の剛性を非常に高めることができる。また、取付ボルト4に荷重が負荷されて取付ボルト4が引っ張られた際の耐性をより増すことができる。
【0033】
また、あと施工アンカー1の撤去方法では、抜出用ボルト10の先端でインナー部材2を押しながら抜出用ボルト10を回転させることにより、簡単にスリーブ3を抜き出すことができる。また、予め押込棒8を係合穴25に係合し、インナー部材2を孔奥に押し込んでおく場合には、スリーブ3の拡張片33に対するインナー部材2の入り込みを外す或いは押圧状態を緩めることができ、より簡単且つ確実にスリーブ3を引き抜くことができる。
【0034】
〔第2実施形態のあと施工アンカー〕
本発明による第2実施形態のあと施工アンカー1aは、
図6に示すように、略円柱形の基部21aの先端側に先端に向かって漸次拡径するテーパ部22aが設けられているインナー部材2aと、第1実施形態と同一構成のスリーブ3を備える。
【0035】
インナー部材2aには、後端面23aで開口する雌ねじ穴24aが設けられ、雌ねじ穴24aに第1実施形態と同一構成の取付ボルト4の外周に形成されている雄ねじ41を螺合可能になっている。インナー部材2aの雌ねじ穴24aよりも先端側には、後述するインナー部材2aを孔奥に押し込む押込棒8aを係合可能な係合部が設けられており、第2実施形態における係合部は、雌ねじ穴24aよりも小径で形成されている雌ねじ穴26aで構成されている。雌ねじ穴26aは、雌ねじ穴24aの先端に隣接して雌ねじ穴24aと連通するようにテーパ部22aに内設されている。
【0036】
あと施工アンカー1aの拡張片33が拡張されていない状態では、スリーブ3の拡張片33にインナー部材2aの基部21aが内装され、テーパ部22aの略全体が拡張片33の先端から先で露出するように配置される。そして、拡張片33の拡張時には、スリーブ3がインナー部材2aの先端に向かって打ち込まれることで、拡張片33にテーパ部22aが入り込んで拡張片33が拡張される(
図8(a)参照)。
【0037】
第2実施形態のあと施工アンカー1aをコンクリート100に設置して取付物110を取り付ける際には、第1実施形態と同一構成の取付ボルト4、ワッシャー5、取付ナット6が用いられる(
図8(a)参照)。第2実施形態のあと施工アンカー1aをコンクリート100に施工して設置する際の工程は、基本的に第1実施形態のあと施工アンカー1をコンクリート100に施工して設置する工程と同様である。
【0038】
即ち、コンクリート100に形成して清掃した穿孔101に、非拡張状態のあと施工アンカー1aをインナー部材2aを孔奥側にして挿入する。次いで、スリーブ3を孔奥側に打ち込み、インナー部材2aのテーパ部22aをスリーブ3の拡張片33に相対的に入り込ませて拡張片33を拡張させ、拡張片33を穿孔101の孔壁に食い込ませる。
【0039】
その後、インナー部材2aの雌ねじ穴24aに取付ボルト4を螺合し、インナー部材2aに螺着した取付ボルト4に取付物110を外挿し、取付物110の外側で取付ボルト4にワッシャー5を外挿し、取付ナット6を取付ボルト4に螺合する。そして、取付ボルト4に対する取付ナット6の締付で、
図8(a)の太線矢印のようにインナー部材2aを穿孔101の孔口側に引っ張る。このインナー部材2aの引っ張りにより、拡張片33が追従拡張される。
【0040】
また、あと施工アンカー1aの設置構造からあと施工アンカー1aを撤去する場合には、
図7の押込棒8aと、第1実施形態と同一構成のアタッチメント9、抜出用ボルト10が用いられる。押込棒8aは、スリーブ3及びインナー部材2aの雌ねじ穴24aに挿入可能な径で形成されており、係合部を構成する雌ねじ穴26aと螺合可能な雄ねじ83aが形成されている。押込棒8aは、雄ねじ83aの雌ねじ穴26aとの螺合で雌ねじ穴26aと係合するようになっている。尚、図示例の押込棒8aは頭付ボルトの軸部の全長に亘って雄ねじ83aが形成されている構成としたが、雌ねじ穴26aの深さと対応する長さ分など、先端から所定長さの一部分に雄ねじ83aが形成されたものであれば適用可能である。また、抜出用ボルト10の先端面14は、インナー部材22aの雌ねじ穴26aよりも大径で形成されており、雌ねじ穴26a内に挿入不能になっている。
【0041】
そして、あと施工アンカー1aの撤去時には、
図8(b)に示すように、取付ナット6、ワッシャー5、取付物110、取付ボルト4をあと施工アンカー1aから外した後、設置されたあと施工アンカー1aのスリーブ3及びインナー部材2aの雌ねじ穴24aに押込棒8aを挿入し、押込棒8aの雄ねじ83aをインナー部材2aの雌ねじ穴26aに螺合して係合し、電動工具15m等で押込棒8aを回転させることにより、インナー部材2aを孔奥側に押し込み(
図8(b)の太線矢印参照)、インナー部材2aとスリーブ3の縁切りを行う或いは縁切りに近い状態にする。
【0042】
押込棒8aを外した後、
図8(c)に示すように、アタッチメント9の雄ねじ93をスリーブ3の雌ねじ34に螺着してアタッチメント9をスリーブ3に取り付け、更に、抜出用ボルト10の雄ねじ13をアタッチメント9の雌ねじ穴91に螺入して抜出用ボルト10の先端をインナー部材2aに当接する。本例では、抜出用ボルト10の先端面14がインナー部材2aの雌ねじ穴26aの開口周縁に突き当たって当接される。
【0043】
その後、抜出用ボルト10の先端で当接するインナー部材2aを押しながら、電動工具15等で抜出用ボルト10を回転させると、抜出用ボルト10に対してアタッチメント9及びこれに螺着されたスリーブ3が穿孔101の外に上がってきて、アタッチメント9と螺着されたスリーブ3が抜き出される(
図8(d)、(e)参照)。この抜出時には、スリーブ3の拡張片33はスプリングバックして拡張前の形状にほぼ戻り、穿孔径以下の形に窄んだ状態で穿孔101から出てくる。その後は、第1実施形態のあと施工アンカー1と同様の撤去工程を行う。
【0044】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0045】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0046】
例えば本発明のあと施工アンカーにおけるインナー部材の押込棒を係合可能な係合部は、第1実施形態の係合穴25、第2実施形態の雌ねじ穴26a以外にも本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、又、インナー部材に孔奥に押し込む押込棒を係合可能な係合部が設けられていない構成も本発明に含まれる。また、インナー部材の後端面で開口する雌ねじ穴は、有底穴状に形成すると好適であるが、係合部を有しない構成等としてインナー部材を軸方向に貫通する貫通穴状とすることも可能である。
【0047】
また、第1、第2実施形態では、押込棒8、8aを係合部に相当する係合穴25、雌ねじ穴26aに係合し、インナー部材2、2aを孔奥に押し込む工程を行ってあと施工アンカー1を撤去する工程について説明したが、この工程を行わずに、アタッチメント9の雄ねじ93をスリーブ3の雌ねじ34に螺着し、抜出用ボルト10の雄ねじ13をアタッチメント9の雌ねじ穴91に螺入して抜出用ボルト10の先端をインナー部材2、2aに当接する工程を行う撤去方法も本発明に含まれる。
【0048】
また、本発明のあと施工アンカーは、コンクリートに下向き、上向き或いは横向きで打設して設置構造を構築できるものであり、その打設方向は適宜である。更に、これらの適宜の打設方向で打設され設置されたあと施工アンカーを撤去する方法が本発明に含まれる。また、第1、第2実施形態では、電動工具15、15mを用いてあと施工アンカー1、1aを撤去する工程について説明したが、電動工具15、15mに代えて手工具を用いて撤去工程を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、既設のコンクリートに穿孔してあと施工アンカーを打設する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a…あと施工アンカー 2、2a…インナー部材 21、21a…基部 22、22a…テーパ部 23、23a…後端面 24、24a…雌ねじ穴 25…係合穴 26a…雌ねじ穴 3…スリーブ 31…本体 32…スリット 33…拡張片 34…雌ねじ 4…取付ボルト 41…雄ねじ 5…ワッシャー
6…取付ナット 71…打込棒 72…ハンマー 8、8a…押込棒 81…係合突起 82…ハンマー 83a…雄ねじ 9…アタッチメント 91…雌ねじ穴 92…基部 93…雄ねじ 10…抜出用ボルト 11…軸部 12…頭部 13…雄ねじ 14…先端面 15…係合突起 15、15m…電動工具 16…充填材 100…コンクリート 101…穿孔 110…取付物 200…本体打込式アンカー 201…本体 202…拡張片 203…雌ねじ 204…先端コーン 205…取付ボルト 206…ワッシャー 207…ナット 210…コンクリート 211…穿孔 220…取付物 300…スリーブ打込式アンカー 301…スリーブ 302…拡張片 303…テーパボルト 304…テーパ部 305…雄ねじ部 306…ワッシャー 307…スプリングワッシャー 308…ナット 310…コンクリート 311…穿孔 320…取付物