(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】調整装置を起動および制御する方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/66 20180101AFI20230317BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20230317BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20230317BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230317BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20230317BHJP
【FI】
F24F11/66
A61B5/16 130
A61B5/107 300
A61B5/02 C
F24F120:14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018167673
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】102018000008235
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512129996
【氏名又は名称】デロンギ アップリアンチェース エッセエレエッレ コン ウーニコ ソーチオ
【氏名又は名称原語表記】DE’LONGHI APPLIANCES SRL CON UNICO SOCIO
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロシャナク ミルミラン
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150764(JP,A)
【文献】特開2013-213642(JP,A)
【文献】特開2013-061111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/66
A61B 5/16
A61B 5/107
A61B 5/02
F24F 120/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整装置(10)を起動および制御する方法であって、前記調整装置(10)が電子デバイス(14)によって遠隔で起動可能な制御および指令ユニット(12)を備える方法において、前記方法は、少なくともユーザの覚醒状態または睡眠状態の関数として前記調整装置(10)の機能パラメータを調節することを提供し、前記方法は、
ユーザが寝ている間の温度の制御機能を実行することを提供する前記調整装置(10)の機能モードを、同ユーザが目を覚ますことが予想される時間まで選択して、前記ユーザの睡眠状態に関連する予め定義された値の範囲内(Tmin、T
*、Tmax)に室温を維持するステップと、
ユーザの覚醒状態若しくは睡眠状態、または覚醒状態または睡眠状態にそれぞれ相関する直立位置若しくは横臥位置を監視するステップと、
ユーザの状態または位置に変化が検出されたときに、選択された機能モードを起動し、温度制御機能を開始するステップと、
を含
み、
前記方法は、
前記ユーザの横臥位置が検出されたときに、選択された前記機能モードを作動させることを提供し、
ユーザによって装着され、かつ前記電子デバイス(14)と一体化されているか、前記電子デバイス(14)に接続されているかの少なくともいずれかである心拍数検出デバイス(15)によって検出されたユーザの心拍の周波数の変動に基づいて、前記ユーザの前記横臥位置を検出することを提供し、かつ
前記ユーザの前記横臥位置を検出するために、前記ユーザの心拍の傾向における心拍の周波数ピーク(HR_P)を識別するステップと、周波数ピークが識別された後に前記ユーザによって想定される位置を検証するステップとを含む検出アルゴリズムを自動的かつ周期的に実行することを提供することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記周波数ピーク(HR_P)を識別するステップが、
定義された期間におけるユーザの心拍の周波数値(HR(i))をサンプリングして周期的に記録するステップと、
記録された値を記憶し、アルゴリズムが開始された最初の時点から徐々にそれらをベクトルまたは行列にて順序付けするステップと、
記録された値(HR(i))を処理するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記処理するステップが、
考慮されているサンプリング時点における心臓周波数の値と以前のサンプリング時点で記録された心臓周波数の値との間の差(ΔHR(i))を、各サンプリング時点について計算するステップと、
アルゴリズムが開始された最初の時点から現在の時点までの値の差(ΔHR(i))の合計を計算するステップと、
前記合計を第1の基準値(Vref_1)と比較するステップと、
を含むことを特徴とする請求項
2に記載の制御方法。
【請求項4】
周波数ピーク(HR_P)が識別された後にユーザによって想定された位置を検証する前記ステップが、
制御機能が選択された時点と、前記周波数ピーク(HR_P)が識別された時点より前のサンプリング時点との間に含まれる各サンプリング時点について検出された心拍の周波数の値(HR(i))を考慮して、その第1の平均値(VM_1)を計算するステップと、
前記周波数ピーク(HR_P)が識別された時点の後に検出された心拍の周波数の値(HR(i))を考慮して、その第2の平均値(VM_2)を計算するステップと、
前記第1の平均値(VM_1)と前記第2の平均値(VM_2)との間の平均の差(ΔVM)を計算して、それを第2の基準値(Vref_2)と比較するステップと、
を提供することを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記機能モードが開始されると、前記ユーザの前記横臥位置の検出の後に、温度(T)を最小値(Tmin)まで下げて、前記ユーザの深い睡眠段階の推定持続時間に相関する第2の切り替え時点(t2)まで、所定の期間において前記温度(T)を前記最小値(Tmin)にて一定に維持することを提供し、前記期間の持続時間は、
予め設定されるとともに記憶された値またはユーザによって入力された値に基づいて定義されているか、あるいはユーザによって供給される1つまたは複数のパラメータに基づいて
決定される、ことを特徴とする、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の
切り替え時点(t2)において、前記最小値(Tmin)よりも高い中間温度値(T
*)を設定し、次に、第3の時点(t3)まで、定義された期間の間、前記温度(T)を前記中間
温度値(T
*)にて一定に維持し、その後、前記ユーザが目を覚ますことが予想される時間の付近にて最大温度値(Tmax)に達するまで前記温度(T)を漸進的に上昇させることを提供することを特徴とする、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
以下のパラメータ:予め定義された温度値(Tmin、T
*、Tmax)、直立位置(HR_standing)および横臥位置(HR_supine)におけるユーザの心拍の周波数の平均値と相関する基準値(Vref_1、Vref_2)、予想される起床時刻または時間、の1つ以上の初期設定ステップを提供することを特徴とする、請求項
1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調整装置を起動及び制御する方法に関し、同方法は、ユーザの睡眠と休息の質を最適化するために、同ユーザが眠りにつくとき、および/または睡眠中に、同ユーザの快適性および幸福感を最適化するために部屋の温度状態を調節することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
睡眠は、多かれ少なかれ意識および意思が完全に停止した周期的な状態であり、個人の身体的および精神的効率を回復させるために不可欠であり、その間、神経系は不活性であり、目は閉じられ、姿勢筋は緩和状態にあり、意識は事実上停止している。
【0003】
睡眠中には、REM相(急速眼球運動)とも称される活動的な睡眠相と次第に深くなる睡眠の4つの段階を含むNREM相(非急速眼球運動)とも一般的に称される静穏な睡眠相との間で周期的に繰り返される、多かれ少なかれ深い睡眠の相が交互に繰り返されていることが知られている。完全な睡眠サイクルは、一般に、REM相に達する前の第1段階から第4段階への進行および再開によって特徴付けられる。睡眠中、REM相の期間は、NREM相であって一般に睡眠状態の開始時に起こり最も深い段階が生物の回復に強く影響を及ぼすNREM相を犠牲にして徐々に増加する傾向がある。
【0004】
睡眠の質は、個人の身体的および精神的健康に重要な役割を果たし、例えば、年齢、病気、アルコール使用/乱用、覚醒剤、または向精神薬、ライフスタイルおよびダイエットを含む様々な要因によって影響を受けることが知られている。
【0005】
睡眠の質はまた、睡眠する部屋の気候条件(climatic conditions)に依存する。温度が低すぎたり高すぎたりすると、休息に悪影響を及ぼし、特に、より良い休息を得ることができる深い睡眠相に個人が到達することを妨げてしまう。
【0006】
また、個人の体温は、周期的な傾向に従って、1日の間に変化することも知られており、午後遅くに向かって最大温度値に到達し、夜間の、目覚める直前に最小値になる。睡眠状態は、一般に体温が低下し始める期間中に始まり、これは熱生成の減少および熱損失の増加によるものである。
【0007】
さらに、個人の体温の傾向は、深い睡眠の量に相関している。換言すれば、より低い体温を有する個人は、より深い睡眠を達成することができ、より良好な休息および身体的および精神的効率の最適な回復が保証される。
【0008】
室内の少なくとも気候条件を適切な方法で調節するために、所望の温度で空気の流れを生成し、場合によってはその流量および湿度を調節するのに適した換気装置または調整装置を使用することが知られている。
【0009】
例えば、ユーザが自身の温度、湿度および/または空気速度設定を定義することができる換気装置または調整装置が知られている。これら既存の装置はまた、所定の時間または所定の遅延時間間隔でそれらの起動を設定することを可能にする。したがって、これらの装置は、ユーザが眠っているか目を覚ましているかに相関する推定タイミングに基づいて、その機能状態を変更するようにプログラムされ得る。
【0010】
このため、既存の解決策では、ユーザの睡眠の有効な品質を最適化することができず、したがって、同ユーザの快適性および身体的健康を向上させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は、既存の解決策よりも効果的に睡眠および休息状況におけるユーザの快適性を向上させる調整装置を起動および制御する方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ユーザの睡眠相の間に適応的な方法で部屋の状態を調節することを可能にする調整装置の制御方法を提供することである。
本発明の別の目的は、ユーザが睡眠に入ったときに調整装置の選択された機能モードを自動的に起動させ、ユーザの睡眠の質を最適化するのに適した制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願人は、最先端技術の欠点を克服し、これらおよび他の目的および利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具現化した。
本発明は、独立請求項に記載され特徴付けられるが、従属請求項は、本発明の他の特徴または主たる発明思想に対する変形を記載する。
【0014】
本明細書に記載の実施形態は、少なくともユーザの覚醒または睡眠の状態の関数として、後者の機能パラメータを変更することを提供する調整装置(conditioning apparatus)を起動(activate)および制御する方法に関する。
【0015】
本発明に従う制御方法は、特に、ユーザが寝ている間に、室温を予め定義された範囲内の値に保つために、温度の制御機能を実行することを提供する調整装置の機能モードを選択することを提供する。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、同方法は、ユーザの覚醒または睡眠の状態あるいは起立位置または横臥位置を監視すること、選択された機能モードを起動させること、すなわち、変化がユーザの状態または位置において検出されるときに温度制御機能を開始すること、を提供する。
【0017】
特に、本発明に従う方法は、使用者がベッドに横たわり、従ってまさに寝ようとしているという事実の指標として使用されるものである、ユーザの横臥位置が検出されたときに選択された機能モードを起動させることを提供する。
【0018】
換言すれば、本発明の方法によれば、ユーザは、夜の時間および睡眠に対する特定の機能モードを日中の任意の時点で選択し、その後、同ユーザの通常の活動を継続することができる。いずれの場合においても、ユーザが就寝準備をしてベッドに横たわったときに選択された機能モードが起動し、その機能を開始する。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、ユーザの心拍の周波数(frequency)の変動に基づいてユーザの横臥位置を検出することを提供する。
他の実施形態によれば、ユーザの横臥状態を検出するために、本発明の方法は、例えば、加速度計またはジャイロスコープによって検出された、ユーザの動きに対応する慣性パラメータを考慮することも提供する。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、温度の制御機能の実行は、ユーザが横たわっている時点にて室温を下げるように、予め定義された最低温度値を最初に設定することを提供する。
このようにして、ユーザの体温が最高である初期睡眠相の間に、室温が最小値にされ、それによりユーザが深い睡眠相に達することを助ける。
【0021】
本発明に従う方法はまた、ユーザの深い睡眠段階の長さ、すなわちユーザが一般的により高い温度によって汗をかくか、またはより悪影響を受ける傾向にある期間に相関する、定義された時間の間、温度を最小値で一定に保つことを提供する。
【0022】
その後、本発明に従う方法は中間の温度値を設定し、第2の期間にわたってそれを一定に保ち、次いで、ユーザが目を覚ます時間に対応して、所望の最高温度を得るために徐々に温度を上昇させる。
【0023】
このように、ゆっくりと上昇する温度は、ユーザの漸進的かつ段階的な温度損失を補償し、あらゆる時点において高い快適性を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に従う方法のいくつかのステップを示すブロック図である。
【
図2】本発明に従う方法が実施され得る調整装置の一例の概略図である。
【
図3】ユーザが直立または起立位置から横臥位置に移行したときの同ユーザの心拍の周波数の傾向を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態に従う、ユーザの異なる睡眠相の関数としての調整装置の温度設定の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付図面を参照して非限定的な例として与えられるいくつかの実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
理解を容易にするために、可能であれば、図面中の同一の共通要素を識別するために同じ参照番号が使用されている。1つの実施形態の要素および特性は、さらなる説明なしに他の実施形態に都合よく組み込むことができることが理解される。
【0026】
本明細書に記載の実施形態は、ユーザが就寝するときに温度を制御する特定の機能を起動し、ユーザが寝ている間の予め定義された期間内にて温度値を維持することを提供する調整装置10を起動および/または制御する方法に関する。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、調整装置10は、既知の方法で、空気の流れを加熱、冷却および/または除湿するように構成された調整デバイス11と、場合によっては空気の流れを生成し、それを調整デバイス11に向けるように構成された換気デバイス(図示しない)と、を含む。
【0028】
調整装置10はまた、既知の方法で、例えば、温度、圧力、湿度、空気流の速度など1つまたは複数の特性および量の値を測定するのに適した1つまたは複数のセンサデバイス(図示しない)を含んでいてもよい。
【0029】
調整装置10は、例えば調整されるべき部屋の壁に設置され、かつ/または一体化された、移動式または固定式のものとすることができる。一例として、調整装置10は、オイルラジエータ、ヒートポンプ、対流式ヒータ、ファン対流式ヒータ、または類似の装置とすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、調整装置10は、あらかじめ定義されたパラメータに基づいてその動作を調節するように構成される、またはユーザによって設定される制御および指令ユニット12を含む。
【0031】
この目的のために、調整装置10は、制御および指令ユニット12に接続されたユーザインタフェース13を含んでいてもよく、それによって、ユーザは、おそらくは特定の時間間隔および/または空気の流出速度のために定義された所望の温度値を設定する、或いは、あらかじめ定義された異なる機能モードのうちの1つを選択することができる。
【0032】
制御ユニット12および/またはユーザインタフェース13には、無線モードでデータを受信および/または送信するのに適した既知のタイプのデータ通信デバイスを設けることができる。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、制御ユニット12は、専用のソフトウェアアプリケーションがインストールされた電子デバイス14によって遠隔にて指令されてもよい。
電子デバイス14は、スマートフォン、スマートウォッチ、または制御ユニット12および/または調整装置10のユーザインタフェース13と無線通信するのに適した処理ユニット16および通信インタフェース17を備えた他の同様のデバイスから選択することができる。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、電子デバイス14は、心拍数検出デバイス15、例えば1分当たりの心拍数(HR-Heart Rate)、すなわち、ユーザの心臓の周波数(cardiac frequency)を検出するように構成された心拍数モニタを含むか、またはそれに接続されている。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、心拍数検出デバイス15は、例えばスマートウォッチの場合には電子デバイス14に一体化されているか、または、例えば胸部バンド、ブレスレット、またはそのようなものといった、ユーザによって装着可能なアクセサリと一体化されており、電子デバイス14と無線通信するのに適したデータ通信手段を備えていてもよい。
【0036】
本発明に従う調整装置10を制御する方法は、調整装置10の特定の機能モード、特に、あらかじめ定義されたパラメータに基づいて、ユーザの睡眠期間中に温度の調節を実行する機能モードを選択することを提供する。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、あらかじめ定義されたパラメータは、制御および指令ユニット12に、事前設定され、かつ記憶されていてもよく、あるいはユーザインタフェース13および/または専用ソフトウェアアプリを備えた電子デバイス14によってユーザによって挿入されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、あらかじめ定義されたパラメータは、最小温度値および最大温度値、ユーザが目を覚ますためにスケジュールされた時間、またはその他を含むことができる。
【0039】
特定の機能モードが選択されると、本発明に従う方法は、ユーザの状態または位置を監視し、この状態および/または位置の変化が検出されたときに前記機能モードの実行を起動または開始することを提供する。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、ユーザの横臥位置が検出されたとき、すなわち立ったり、おそらくは座ったりすることから横たわったりすることへとユーザの位置における変化が検出されたときに、特定の機能モードを起動することを提供する。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、本発明に従う方法は、心拍数検出デバイス15によって検出され得る、ユーザの直立位置/横臥位置の指標として同ユーザの心拍の周波数を使用することを提供する。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、ユーザの位置の変化を示す、ユーザの心拍数の傾向におけるピークを識別し、検出されたピークの下流で、ユーザが横臥位置にあると想定したか否かを検証することを提供する。
【0043】
図3は、個人が直立位置/起立位置から横臥位置へとその姿勢を変えたときの同個人の心拍数の典型的な傾向を示している。
一般的に良好な健康状態にある個人の場合、直立/着座位置にあるとき、同個人の心拍数は第1の平均周波数HR_standing付近にあり、個人が横臥位置にあるとき、同個人の心拍数は、第1の平均周波数HR_standingよりも低い第2の平均周波数HR_supine付近にある。
【0044】
図3に見られるように、直立位置と横臥位置との間の移行ゾーン、すなわち直立位置の第1の平均値HR_standingと横臥位置の第2の平均値HR_supineとの間の移行ゾーンにおいて、心拍数は最大ピーク値HR_Pに達する。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、ユーザの横臥位置を特定し、選択された機能モードに関連する温度制御機能をいつ作動させるかを決定するために、本発明に従う方法は、自動的かつ定期的に検出アルゴリズムを実行することを提供する。
【0046】
検出アルゴリズムは、適切な処理ユニット16、例えば電子デバイス14の処理ユニット16によって実行することができる。
しかしながら、アルゴリズムが電子デバイス14から受信したデータに基づいて調整装置10の制御ユニット12によって実行され得ることが排除されるものではない。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、特定の機能モードが選択されたときに検出アルゴリズムの実行を開始することを提供する。
ユーザの横臥位置を特定するために使用できるアルゴリズムの例を以下に説明する。しかしながら、本発明は、ユーザの横臥位置を特定し、所望の機能モードをいつ起動させるかを決定するために、説明されたアルゴリズムの代替または追加として、他のアルゴリズムまたは他のタイプの処理を使用できることが理解される。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムは、周波数ピークを特定するステップと、ピークが特定された後にユーザによって想定された(assumed)位置を検証するステップとを含む。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムは、定義された期間に従ってユーザの心拍の周波数値HRのサンプリングおよび周期的な記録を含む。
一例として、期間はt秒間継続していてもよく、ここで、tは、例えば検出デバイス15のサンプリング周波数に相関させた予め定義された数とすることができる。一例として、約0.2Hzの機能周波数の場合、期間は約5秒になる。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムはまた、複数の連続するサンプリング時点(instant)にて記録されたHR(i)値を記憶するステップと、アルゴリズムの初期開始時点(ここで、i=1である)から漸進的な方法でそれらをベクトルまたは行列に順序付けする(ordering)ステップと、を含む。
【0051】
可能な解決策によれば、アルゴリズムは、ユーザの心拍の周波数傾向における少なくともピークを識別するために記録され、順序付けされたデータを処理することを提供する。
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムは、それらが検出されている間にリアルタイムで記録された値を処理することを提供する。
【0052】
他の変形例によれば、アルゴリズムは、モバイルウィンドウを作成し、それらを記憶した後にデータを処理することを提供することができる。
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムは、各サンプリングの時点iにおいて、HR(i)と考えられるサンプリング時の心拍数の値と前回のサンプリングの時点HR(i-1)に記録された心拍数との間の差ΔHR(i)を計算することを提供する。
【0053】
アルゴリズムのいくつかの実施形態によれば、以下の式を使用することができる:
ΔHR(i)=HR(i)-HR(i-1)。
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムはまた、アルゴリズムが開始された最初の時点、すなわち特定の機能モードの選択から、現在の時点までの差分値ΔHR(i)の合計を計算し、この合計を第1の基準値Vref_1と比較することを提供する。
【0054】
第1の基準値Vref_1は、ピーク値HR_Pと直立位置における第1の平均値HR_standingとの間の差に対応し得る。
第1の基準値Vref_1は、検出デバイス15のサンプリング周波数に従って選択することができる。一例として、第1の基準値Vref_1は、5心拍数/分以上、例えば15心拍数/分、20心拍数/分以上であり得る。
【0055】
アルゴリズムの可能な実装によれば、それが起こるとき:
【0056】
【0057】
すなわち、1から現在のサンプリングの時点kに進むiについて計算された差分値ΔHR(i)の合計が第1の基準値Vref_1より大きい場合、周波数ピークHR_Pの存在が、考慮されるサンプリング時点kの付近において特定される。
【0058】
周波数ピークHR_Pが検出された後、アルゴリズムは、ユーザの潜在的な睡眠状態に関連して、覚醒状態に相関する直立位置から横臥位置までのユーザの位置の変化に対応するかどうかを検証することを提供する。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、検証を実行するために、アルゴリズムは、制御機能の選択の時点(i=1に対応する)と、ピークが特定されたものに先行する時点(例えば、i=kに先行する)との間に含まれる各時点iについて検出された心拍の値HR(i)の全てを考慮して、第1の平均値VM_1を計算することを提供する。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムはまた、ピークが検出された時点の後(例えば、i=k+1に続く)に測定された心拍数の周波数の値HR(i)を考慮して、第2の平均値VM_2を計算することを提供する。
【0061】
最後に、本発明に従うアルゴリズムは、第1の平均値VM_1と第2の平均値VM_2との間の平均ΔVMの差を計算し、それを第2の基準値Vref_2と比較することを提供する。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、第2の基準値Vref_2は、心拍数検出デバイス15のサンプリング周波数に従って選択することができる。一例として、第2の基準値Vref_2は、第1の基準値Vref_1に類似した、15心拍数/分、20心拍数/分などの5心拍数/分よりも大きくてもよく、またはそれよりも高くてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、平均ΔVMの差が第2の基準値Vref_2を超える場合、即ち:
ΔVM=VM_1-VM_2>Vref_2
である場合、
ユーザの横臥位置が特定される。
【0064】
ユーザの横臥位置が認識されると、本発明に従う方法は、選択された機能モードを起動して開始することを提供する。
特に、本発明の方法は、選択された機能モードによって提供される温度制御機能を実行するように装置10の機能を指令する調整装置10の制御および指令ユニット12に起動信号を送信することを提供する。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、アルゴリズムによって使用される、直立位置の平均値HR_standing、横臥位置の平均値HR_supineおよびピーク値HR_Pは、例えば、心拍数検出デバイス15および/または電子デバイス14上に設けられた専用ソフトウェアアプリケーションおよび/または制御および指令ユニット12内の初期設定ステップで検出された個々のユーザの特性値であってもよい。
【0066】
図4の上部には、睡眠の開始時により頻繁に、そして徐々に短くなるNREM睡眠相と、逆に睡眠時間が経過するにつれて次第に増加する傾向があるREM睡眠相と、の間で連続する周期で交互に繰り返される、ユーザの睡眠の相が概略的に示されている。
【0067】
図4の下部は、本発明の方法に従って調節される温度の可能な傾向を示しており、同方法はユーザの睡眠を最適化することを可能にし、特に眠気を促進し、NREM睡眠のより深い相の達成を容易にするのに適した熱的な快適さを保証する。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、時点t0において、すなわち睡眠中の温度を調節する機能モードの開始時において、本発明に従う方法は、温度Tを最小値Tminまで低下させることを提供する。
【0069】
最小温度値Tminはユーザによって設定されてもよく、あるいは、例えば、実験室で行われた分析試験によって得られた、または科学論文に報告された、もしくはおそらく室温に従って計算される、制御ユニット12に記憶されたテーブルまたはパラメータに基づいて、あらかじめ定義された値であってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、最小温度値Tminは、約15℃~約20℃、好ましくは約16℃~約19℃の間で構成され得る。
したがって、温度Tは、ユーザが横臥位置を想定したときに実質的に対応する初期時点t0から始めて、第1の時点t1において最小値Tminのあたりに落ち着くまで低下し始める。これは、覚醒状態と睡眠状態との間の移行(passage)が生理学的に減少する傾向があるユーザの体温を低下させることに寄与し、したがって、ユーザはより容易かつ迅速に眠りに落ちることができる。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、本発明に従う方法は、所定の時間間隔の間、第2の時点t2まで、特にNREM相の最も深い睡眠状態の終了時まで、温度Tを最小値Tminにて一定に保つことを提供する。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、第2の時点t2は、起動時点t0に対する時間間隔として、制御および指令ユニット12に予め設定および記憶されてもよく、またはユーザによって入力された値であってもよく、ここでも、ユーザの年齢、季節の気象条件、または他のパラメータなどの1つまたは複数のパラメータに基づく推定値であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、第2の時点t2、すなわちNREM相を含む睡眠周期の終了時に、本発明に従う方法は、最小値Tminよりも高い中間温度値T*を設定することを提供する。
【0074】
可能な解決策によれば、中間値T*は最小値Tminよりわずかに高く、例えば1~2℃高くすることができる。中間値T*は、予め設定された値であってもよく、ユーザによって挿入されてもよく、または1つ以上のパラメータに従って決定されてもよい。
【0075】
続いて、本発明に従う方法は、温度Tをあらかじめ定義された期間、第3の時点t3まで中間値T*で一定に保ち、次にユーザが目を覚ます時間付近にて最大温度値Tmaxに達するまで温度Tを徐々に増加させることを提供する。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、最大値Tmaxは、ユーザによって設定されてもよいし、または予め定義された値であってもよく、またはおそらく室温の関数として計算されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、第3の時点t3は、起動時点t0または第2の時点t2からの時間間隔として制御および指令ユニット12に予め設定および記憶されてもよく、またはユーザが目を覚ますために設定された時間に基づいて計算されてもよく、または他のパラメータに基づいて計算されてもよい。
【0078】
したがって、本発明に従う方法は、ユーザの睡眠の相に相関する方法で温度Tを調節し、快適感および幸福感、したがって睡眠および休息の全体的な質を最適化することを可能にする。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、本発明に従う方法は、加速度計または他の同様のデバイスによって、ユーザが実際に眠っているかどうかを検証するために、定義されたサンプリング時点でユーザの可能な動きを検出することを提供することもできる。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、加速度計によって検出されたデータは、ユーザの横臥位置および/または睡眠状態のさらなる検証として使用することができる。
可能な変形実施形態によれば、加速度計によって検出されたデータは、例えばREM相とNREM相の連続した周期の繰り返しに基づいて、ユーザによって経験される実際の睡眠周期の関数として調整装置10によって供給される温度をさらに調節するために使用され得る。
【0081】
本発明の分野および範囲から逸脱することなく、上述したような調整装置10を制御する方法に対して、部品の修正および/または追加を行うことができることは明らかである。
【0082】
本発明は、いくつかの特定の例を参照して記載されているが、特許請求の範囲に記載されており、従って、全てが、それによって規定される保護の分野に入る特性を有する調整装置を制御するための方法の多くの他の同等の形態を当業者が確実に達成することができることは明らかである。