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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20230317BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230317BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20230317BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B60R99/00 330
G06T7/00 650A
G06T7/60 200J
B60R99/00 321
H04N7/18 J
H04N7/18 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018213429
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079030
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴之
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092501(JP,A)
【文献】特開2018-118593(JP,A)
【文献】特開2013-216305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
G06T 7/00
G06T 7/60
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の路面を撮像する撮像装置から出力される画像信号に基づいて、前記路面上に描かれた2方向に延在する白線部を有するマーカーを検出するマーカー検出部と、
検出された前記マーカーのうち前記路面上で隣接する前記マーカーを算出し、これら隣接するマーカー間の距離に基づいて、これらマーカーにより特定される駐車枠を検出する駐車枠検出部と、
検出された前記駐車枠に含まれる前記マーカーの前記白線部の延在方向を検出し、検出された前記白線部の延在方向に基づいて前記駐車枠の形状を推定する形状推定部とを有し、
前記マーカー検出部は、前記画像信号に基づく画像中のコーナーを検出することで前記白線部が交差する前記マーカーのコーナー部を検出するコーナー検出部を有し、
前記形状推定部は、前記コーナー部から、前記白線部の延在方向に直交すると考えられる方向に向けて、前記マーカーにかかる画素の輝度値をスキャンすることで、前記白線部の縁部がどこに位置するかを把握し、前記白線部が延在する2方向がなす角度に基づいて前記駐車枠の形状を推定する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記コーナー検出部は、前記画像信号の輝度パターンに基づいて前記コーナー部を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記マーカー検出部は、前記コーナー検出部により検出された前記コーナー部の位置に基づいて前記マーカーを検出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記形状推定部は、前記画像信号の輝度パターンに基づいて前記白線部の延在方向を検出する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
車両の周囲の路面を撮像する撮像装置から出力される画像信号に基づいて、前記路面上に描かれた2方向に延在する白線部を有するマーカーを検出し、
検出された前記マーカーのうち前記路面上で隣接する前記マーカーを算出し、これら隣接するマーカー間の距離に基づいて、これらマーカーにより特定される駐車枠を検出し、
検出された前記駐車枠に含まれる前記マーカーの前記白線部の延在方向を検出し、検出された前記白線部の延在方向に基づいて前記駐車枠の形状を推定し、
前記マーカーを検出するとき、前記画像信号に基づく画像中のコーナーを検出することで前記白線部が交差する前記マーカーのコーナー部を検出し、
前記駐車枠の形状を推定するとき、前記コーナー部から、前記白線部の延在方向に直交すると考えられる方向に向けて、前記マーカーにかかる画素の輝度値をスキャンすることで、前記白線部の縁部がどこに位置するかを把握し、前記白線部が延在する2方向がなす角度に基づいて前記駐車枠の形状を推定する
ことを特徴とする画像処理装置による画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲の路面を撮像する撮像装置から出力される画像信号に基づいて、この路面に設けられた駐車枠を推定する画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐車場に設けられた駐車枠を、この駐車枠の端部に相当する路面に描かれたマーカーを検出することにより検出し、この駐車枠に関する情報を車内のモニターに提供し、あるいは車両に設けられたソナーや操舵装置等の制御装置に提供して車両の駐車を支援する駐車支援装置は公知である(例えば特許文献1参照)。そして、この駐車支援動作の際に、車両の周囲の路面を撮像する撮像装置から出力される画像信号に対して画像処理技術を用いてマーカーを検出し、このマーカーから駐車枠を推定する技術も公知である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-210864号公報
【文献】特開2013-216305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、マーカーを構成する白線がなすコーナー部における白線の延在方向をパターン化してあてはめることで駐車枠を推定していた。このため、特許文献2に開示された技術によれば、パターンマッチングに相当の時間を要するとともに、検出できる白線の幅にも一定の限界が生じる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、駐車場等の路面に設けられた駐車枠の推定を迅速かつ確実に行うことが可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、車両の周囲の路面を撮像する撮像装置から出力される画像信号に基づいて、路面上に描かれた2方向に延在する白線部を有するマーカーを検出するマーカー検出部と、検出されたマーカーのうち路面上で隣接するマーカーを算出し、これら隣接するマーカー間の距離に基づいて、これらマーカーにより特定される駐車枠を検出する駐車枠検出部と、検出された駐車枠に含まれるマーカーの白線部の延在方向を検出し、検出された白線部の延在方向に基づいて駐車枠の形状を推定する形状推定部とを有する。マーカー検出部は、画像信号に基づく画像中のコーナーを検出することで白線部が交差するマーカーのコーナー部を検出するコーナー検出部を有する。形状推定部は、コーナー部から、白線部の延在方向に直交すると考えられる方向に向けて、マーカーにかかる画素の輝度値をスキャンすることで、白線部の縁部がどこに位置するかを把握し、白線部が延在する2方向がなす角度に基づいて駐車枠の形状を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された本発明の画像処理装置では、形状推定部が、検出された駐車枠に含まれるマーカーの白線部の延在方向を検出し、検出された白線部の延在方向に基づいて駐車枠の形状を推定する。このとき、白線部が交差するマーカーのコーナー部から、白線部の延在方向に直交すると考えられる方向に向けて、マーカーにかかる画素の輝度値をスキャンすることで、白線部の縁部がどこに位置するかを把握する。そして、白線部が延在する2方向がなす角度に基づいて駐車枠の形状を推定する。
【0008】
このようにすることで、駐車場等の路面に設けられた駐車枠の推定を迅速かつ確実に行うことが可能となる。そして、白線部の延在方向を考慮して駐車枠を設定しているので、縦列駐車用の駐車枠であっても並列駐車用の駐車枠であっても、適切に駐車枠を設定することができる。加えて、白線部が斜めに交わるようなマーカーであっても、適切に駐車枠を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態である画像処理装置が適用される駐車支援装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態である駐車支援装置の撮像装置の配置位置の一例を示す図である。
図3】実施の形態である画像処理装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図4】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図5】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図6】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図7】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図8】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図9】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図10】実施の形態である画像処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図11】実施の形態である画像処理装置の作用の一例を説明するための図である。
図12】実施の形態である画像処理装置の作用の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(駐車支援装置の概略構成)
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態である画像処理装置が適用される駐車支援装置の概略構成を示すブロック図、図2は実施の形態である駐車支援装置の撮像装置の配置位置の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、駐車支援装置1は、車両V(図2参照)に搭載され、駐車支援動作を行う。具体的には、駐車支援装置1は、この車両Vが駐車可能な駐車枠を認識する。そして、駐車支援装置1は、認識した駐車枠に車両Vを駐車させるようにこの車両Vを制御する。
【0012】
車両Vの前後左右には、図2に示すように複数の小型カメラ(撮像装置)が備えられている。
【0013】
具体的には、車両Vのフロントバンパまたはフロントグリルには、車両Vの前方に向けて前方カメラ20aが装着されている。車両Vのリアバンパまたはリアガーニッシュには、車両Vの後方に向けて後方カメラ20bが装着されている。車両Vの左ドアミラーには、車両Vの左側方に向けて左側方カメラ20cが装着されている。車両Vの右ドアミラーには、車両Vの右側方に向けて右側方カメラ20dが装着されている。
【0014】
前方カメラ20a、後方カメラ20b、左側方カメラ20c、右側方カメラ20dには、それぞれ、広範囲を観測可能な広角レンズや魚眼レンズが装着されており、4台のカメラ20a~20dで車両Vの周囲の路面を含む領域を漏れなく観測することができるようになっている。これらカメラ20a~20dにより、車両Vの周囲の路面を撮像する撮像装置が構成されている。なお、以下の説明において、個々のカメラ(撮像装置)20a~20dを区別せずに説明する場合は単にカメラ20として説明する。
【0015】
図1に戻って、駐車支援装置1は、前方カメラ20a、後方カメラ20b、左側方カメラ20c、右側方カメラ20dと、カメラECU22と、ナビゲーション装置30と、車輪速センサ32と、操舵角センサ34とを有する。
【0016】
カメラECU22は、カメラ20を制御するとともに、カメラ20が検知した情報を用いて、俯瞰画像の生成処理や、駐車枠を検知する検知処理や、検知した駐車枠に車両Vを駐車できるか否かを判定する判定処理等を行う。
【0017】
ナビゲーション装置(表示装置)30は画像表示機能を有するモニター31を有する。ナビゲーション装置30は、経路案内用の地図データ等が格納された記憶部を有する。ナビゲーション装置30は、この地図データ等及び図略のGPS装置等により検出された車両Vの現在位置に基づいて、ナビゲーション装置30の操作者が設定した目標地点までの経路案内を行う。経路案内動作中の各種画像はモニター31に表示される。
【0018】
車輪速センサ32は、車両Vの車輪速を検知するセンサである。車輪速センサ32で検知された検知情報(車輪速)は、車両制御ECU40に入力される。
【0019】
操舵角センサ34は、車両Vのステアリングの操舵角を検知する。車両Vが直進状態で走行するときの操舵角を中立位置(0度)とし、その中立位置からの回転角度を操舵角として出力する。操舵角センサ34で検知された検知情報(操舵角)は、車両制御ECU40に入力される。
【0020】
さらに、駐車支援装置1は、車両制御ECU40と、ステアリング制御ユニット50と、スロットル制御ユニット60と、ブレーキ制御ユニット70とを有する。
【0021】
車両制御ECU40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されたマイコンを主体として構成される。車両制御ECU40は、カメラECU22、車輪速センサ32及び操舵角センサ34から入力された各検知情報に基づいて、車両Vの駐車を支援する各種処理を実行する。
【0022】
すなわち、例えば図略の自動駐車開始スイッチを運転手がオン操作して駐車支援装置1を作動させると、車両制御ECU40は、カメラECU22が駐車可と判定した駐車枠に車両Vを自動で駐車させる自動駐車処理を実行する。
【0023】
ステアリング制御ユニット50は、車両制御ECU40で決定した車両制御情報に基づいて、パワステアクチュエータ52を駆動して、車両Vの操舵角を制御する。
【0024】
スロットル制御ユニット60は、車両制御ECU40で決定した車両制御情報に基づいて、スロットルアクチュエータ62を駆動して、車両Vのスロットルを制御する。
【0025】
ブレーキ制御ユニット70は、車両制御ECU40で決定した車両制御情報に基づいて、ブレーキアクチュエータ72を駆動して、車両Vのブレーキを制御する。
【0026】
なお、カメラECU22、車輪速センサ32及び操舵角センサ34と、車両制御ECU40との間は、車内LAN(Local Area Network)であるセンサ情報CAN(登録商標)(Controller Area Network)80によって接続される。
【0027】
また、ステアリング制御ユニット50、スロットル制御ユニット60及びブレーキ制御ユニット70と、車両制御ECU40との間は、車内LANである車両情報CAN(登録商標)82によって接続される。
【0028】
以上の構成を有する駐車支援装置1において、本実施の形態の画像処理装置100は、カメラECU22により主に構成されている。
【0029】
(画像処理装置の機能構成)
図3は、本実施の形態である画像処理装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0030】
本実施の形態である画像処理装置100は、制御部110及び記憶部120を有する。
【0031】
主にカメラECU22から構成される制御部110は、画像処理装置100全体の制御を行う。加えて、制御部110は、後述するマーカー検出部111、駐車枠検出部112及び形状推定部113により検出、推定されたマーカーや駐車枠に基づいて、車両Vが駐車可と判定した駐車枠にこの車両Vを自動で駐車させる自動駐車処理を車両制御ECU40に実行させるために、自動駐車処理に必要な情報(駐車枠の位置、形状など)をこの車両制御ECU40に送出する。
【0032】
車両制御ECU40は、制御部110から提供された情報に基づいて、さらに、車輪速センサ32及び操舵角センサ34(図3ではセンサとのみ図示している)が検知した検知情報に基づいて、パワステアクチュエータ52、スロットルアクチュエータ62及びブレーキアクチュエータ72(図3ではアクチュエータとのみ図示している)を駆動制御する。
【0033】
制御部110はCPU、FPGAなどのプログラマブルロジックデバイス、ASIC等の集積回路に代表される演算素子を有する。
【0034】
画像処理装置100の記憶部120には図略の制御用プログラムが格納されており、この制御用プログラムが画像処理装置100の起動時に制御部110により実行されて、画像処理装置100は図3に示すような機能構成を備えたものとなる。特に、本実施形態の画像処理装置100は、後述するように高速の画像処理を行うので、高速演算可能な演算素子、例えばFPGAなどを有することが好ましい。
【0035】
制御部110は、マーカー検出部111、駐車枠検出部112、形状推定部113及び表示制御部114を有する。
【0036】
マーカー検出部111は、車両Vの周囲の路面を撮像するカメラ20から出力される画像信号に基づいて、路面上に描かれた2方向に延在する白線部を有するマーカーを検出する。
【0037】
特に、マーカー検出部111は、画像信号に基づく画像中のコーナーを検出することで白線部が交差するマーカーのコーナー部を検出するコーナー検出部111aを有する。このコーナー検出部111aは、画像信号の輝度パターンに基づいてコーナー部を検出することが好ましい。そして、マーカー検出部111は、コーナー検出部111aにより検出されたコーナー部の位置に基づいてマーカーを検出することが好ましい。
【0038】
駐車枠検出部112は、マーカー検出部111により検出されたマーカーのうち路面上で隣接するマーカーを算出し、これら隣接するマーカー間の距離に基づいて、これらマーカーにより特定される駐車枠を検出する。
【0039】
形状推定部113は、駐車枠検出部112により検出された駐車枠に含まれるマーカーの白線部の延在方向を検出し、検出された白線部の延在方向に基づいて駐車枠の形状を推定する。特に、形状推定部113は、画像信号の輝度パターンに基づいて白線部の延在方向を検出する。
【0040】
表示制御部114は、カメラ20により撮像された車両V周辺の路面画像やマーカー検出部111、駐車枠検出部112及び形状推定部113により検出、推定されたマーカーや駐車枠を示す画像をこの路面画像に適宜重複して、あるいは単独でナビゲーション装置(表示装置)30のモニター31に表示させるための表示制御信号をナビゲーション装置30に送出する。
【0041】
主に車両制御ECU40から構成される記憶部120は、ハードディスクドライブ等の大容量記憶媒体やROM、RAM等の半導体記憶媒体などの記憶媒体を有する。記憶部120には、制御部110における各種動作の際に用いられる各種データが一時的または非一時的に格納される。
【0042】
また、記憶部120には駐車枠登録データ121が格納されている。この駐車枠登録データ121は、駐車枠検出部112及び形状推定部113により検出、推定された駐車枠に関するデータである。
【0043】
図3に示す、画像処理装置100を構成する各部の具体的動作については後に詳述する。
【0044】
(画像処理装置の動作)
次に、本実施の形態である画像処理装置100の動作の一例を図4のフローチャート及び図5図10を参照して説明する。
【0045】
図4は画像処理装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図4のフローチャートに示す動作は、運転者が図略の自動駐車開始スイッチを操作して自動駐車開始の指示入力を行うことにより開始する。
【0046】
ステップS1では、画像処理装置100の制御部110が、カメラ20により撮像された車両V周囲の路面の画像信号を取得する。
【0047】
ステップS2では、ステップS1により取得された画像信号に基づき、制御部110がこれら画像信号を合成した信号を生成する。ステップS2において合成される信号は、あたかも車両Vの上方にカメラを設置して真下を見下ろしたような画像(俯瞰画像)をナビゲーション装置30に表示させるための信号である。このような俯瞰画像を生成する技術は公知であり、一例として、特開平3-99952号公報や特開2003-118522号公報に開示された技術が知られている。
【0048】
なお、ステップS2において画像合成作業を行わず、あるいは、後述するステップS3におけるマーカーのコーナー点検出作業の後にステップS2における画像合成作業を行ってもよい。しかしながら、俯瞰画像を生成してからマーカーのコーナー点検出作業を行うほうが画像処理装置100の処理負担が低減できる。
【0049】
ステップS3では、ステップS2で合成した画像に基づき、マーカー検出部111が路面上に描かれたマーカーのコーナー点を検出する。
【0050】
駐車場等の路面に描かれたマーカーの一例を図5を参照して説明する。図5に示す駐車場Pは、車両Vを駐車させる駐車領域A1と、車両Vの通行用として設けられた通路領域A2とを有する。そして、この駐車場Pの路面には、駐車領域A1と通路領域A2とを区分する境界部分に複数のマーカー200が描かれている。
【0051】
図5に示すマーカー200は、通路領域A2における車両Vの進行方向(図中矢印で示す)に沿って延びる第1の白線部201aと、この第1の白線部201aを略等分する位置から駐車領域A1に向かって延びる第2の白線部201bとを有する。この第2の白線部201bは、第1の白線部201aに対して垂線をなすように描かれている。
【0052】
そして、隣り合うマーカー200により囲まれた領域に、車両Vを駐車すべき駐車枠202がある。駐車枠202は、図示例では上面視した状態で車両Vの外形にほぼ外接する矩形状の枠である。駐車枠202は駐車場Pの路面に描かれているとは限らない(図5に示す例では路面に描かれていない)。従って、駐車支援装置1がこの駐車枠202を目標として車両Vを駐車する駐車支援動作を行うためには、マーカー200が描かれた位置及びマーカー200を構成する一対の白線部201a、201bの延在方向に基づいて、駐車枠202の位置及び延在方向を推定する必要がある。
【0053】
マーカー検出部111により、図5に示すようなマーカー200のコーナー点を検出する動作の詳細について図6及び図7を参照して説明する。
【0054】
マーカー検出部111のコーナー検出部111aは、車両V周囲の路面の画像信号の輝度値に基づいて、マーカー200のコーナー部を検出する。ここにいうコーナー部とは、マーカー200を構成する第1及び第2の白線部201a、201bの縁(枠線)が交わる部分である。一例として、図6に示すマーカー200のうち、カギ括弧のような形状を有するマーカー200aの場合、2つのコーナー部203a、203bが存在する。同様に、図6に示すマーカー200のうち、T字状の形状を有するマーカー200bの場合、同様に2つのコーナー部203c、203dが存在する。なお、以下の説明において、個々のコーナー部203a~203dを区別せず説明する場合、単にコーナー部203として説明する。
【0055】
コーナー検出部111aは、マーカー200のコーナー部203a~203dを、第1及び第2の白線部201a、201bの枠線が交わる点であるコーナー点204a~204dを検出することで、コーナー部203a~203dを検出する。なお、以下の説明において、個々のコーナー点204a~204dを区別せず説明する場合、単にコーナー点204として説明する。
【0056】
コーナー検出部111aによるコーナー点204a~204dの検出手法の一例を図6及び図7を参照して説明する。
【0057】
コーナー点204aについては、図7(a)において(1)に示すような12個の画素205からなる検出領域206を設け、この検出領域206を構成する画素205の輝度値からコーナー点204aを検出する。ここに、X軸を図中の左右方向に設定し、Y軸を図中の上下方向に設定する。具体的には、注目する画素205aの図中右上、左下及び左上の画素205b、205c、205dの輝度値が高くて白い画素であると判定でき、右下の画素205eの輝度値が低くて黒い画素(図ではハッチングで示す)であると判定できるとき、注目する画素205aの左上の点をコーナー点204aとして判定する。
【0058】
同様に、コーナー点204bについては、図7(a)において(2)に示すような検出領域206を設ける。そして、注目する画素205fの右横及び右下の画素205g、205hが白い画素であると判定でき、検出領域206を構成するその他の画素205が黒い画素であると判定できるとき、注目する画素205fの左上の点をコーナー点204bとして判定する。
【0059】
さらに、コーナー点204c、204dについては、図7(b)において(3)、(4)に示すような検出領域206を設け、コーナー点204a、204bと同様に、この検出領域206を構成する画素205のうち白い画素及び黒い画素の位置関係に基づいて判定する。
【0060】
図4に戻って、ステップS4では、ステップS3で検出したマーカー200のコーナー部203a~203d(コーナー点204a~204d)に基づき、駐車枠検出部112が駐車領域を検出する。より詳細には、駐車枠検出部112は、路面上で隣接する一対のマーカー200のコーナー点204a~204dの間の距離を、これらマーカー200の間の距離として算出し、この距離が閾値以内であれば、これらマーカー200の間に駐車領域があるものとして検出する。このとき、駐車枠検出部112は、隣接する一対のマーカー200のコーナー点204a~204dのうち、向かい合うコーナー点204a、204cの距離をマーカー200の間の距離とする。
【0061】
駐車枠検出部112が検出する駐車領域は、向かい合うコーナー点204b、204cを矩形の短辺とし、コーナー点204b、204cから短辺に直交する方向に車両Vの車長分(例えば5m)だけ延ばした直線を矩形の長辺とする矩形状の枠である。そして、駐車枠検出部112は、駐車領域を構成する矩形枠のコーナー4点の座標値を駐車枠登録データ121として記憶部120に仮に格納する。
【0062】
図4に戻って、ステップS5では、形状推定部113が、ステップS4で仮決定された駐車枠202に隣接するマーカー200の白線部201a、201bの延在方向を検出する。
【0063】
形状推定部113による白線部201a、201bの延在方向の検出手順について、図8及び図9を参照して説明する。
【0064】
まず、形状推定部113は、ステップS4で検出した駐車領域を構成するマーカー200のうち、一つのマーカー200を選択する。そして、選択したマーカー200のコーナー点204から、白線部201a、201bの延在方向に直交すると考えられる方向に向けて、このマーカー200にかかる画素の輝度値をスキャンすることで、白線部201a、201bの縁部がどこに位置するかを把握する。
【0065】
一例として、図8に示すように、X軸を図中の左右方向に設定し、Y軸を図中の上下方向に設定する。形状推定部113は、一つのコーナー点204cの左及び下の画素205j、205kからX軸正方向及びY軸正方向に1つ進んだ画素を選択し、この画素の輝度値が高い(つまり白い画素)かどうかを判定する。さらに、白い画素であればさらにX軸正方向及びY軸正方向に1つ進んだ画素を選択して白い画素であるか否かを判定する作業を繰り返す。そして、黒い画素205m、205nであると判定した時点で画素のスキャンを停止する。この黒い画素205m、205nが位置するところが白線部201a、201bの縁部に相当すると判断する。画素のスキャンについては、コーナー点204dについても同様に行う。
【0066】
この際、一定距離(一定個数の画素)だけ画素のスキャンを行っても白い画素が発見できない、あるいは、白い画素から黒い画素に移り変わらない場合、形状推定部113は、ステップS4で検出した駐車領域を破棄する。但し、第2の白線部201bが第1の白線部201aに対して斜めに交わるようなマーカー200を考慮して、画素のスキャン幅は広めに取る(つまり一定距離を長めに取る)ことが好ましい。
【0067】
次いで、形状推定部113は、図9に示すように、スキャンの始点である画素205j、205kの左及び下の画素から同様に画素のスキャンを行うことを繰り返す。これにより、白線部201a、201bの延在方向(図中矢印E1、E2)を検出することができる。この際、画素のスキャン方向は、それまでの画素のスキャン結果から修正してもよい。つまり、上述したように、第2の白線部201bが第1の白線部201aに対して斜めに交わるようなマーカー200の場合、特にY軸正方向にのみ画素のスキャンを行うのではなく、第2の白線部201bが延在する方向をそれまでの画素のスキャン結果から修正してもよい。
【0068】
形状推定部113が画素のスキャンを行う方法は、図8に示すようなX-Y方向に限定されない。一例として、1つのマーカー200について2つのコーナー点204が検出されているので、これらコーナー点204を結んだ直線が第1の白線部201aの延在方向と考えることができる。また、2つのコーナー点204を結んだ直線に直交する方向を仮に第2の白線部201bの延在方向として設定することもできる。
【0069】
図4に戻って、ステップS6では、形状推定部113が、ステップS5で検出した白線部201a、201bの延在方向に基づいて、方位角、つまり、第2の白線部201bが第1の白線部201aと交わる角度を決定する。この方位角は、駐車領域を構成するコーナー点204毎の平均値として求めればよい。
【0070】
そして、ステップS7では、形状推定部113が、ステップS6で決定した方位角に沿うように、駐車枠202を決定して登録する。つまり、図10に示すように、向かい合うコーナー点204を矩形の短辺とし、コーナー点204からステップS6で定めた方位角の方向に車両Vの車長分(例えば5m)だけ延ばした直線を矩形の長辺とする矩形状の枠を駐車枠202として決定する。そして、形状推定部113は、駐車枠202を構成する矩形枠のコーナー4点の座標値を駐車枠登録データ121として記憶部120に格納する。
【0071】
(画像処理装置の効果)
以上のように構成された本実施の形態である画像処理装置100では、形状推定部113が、駐車枠検出部112により検出された駐車枠202に含まれるマーカー200の白線部201a、201bの延在方向を検出し、検出された白線部201a、201bの延在方向に基づいて駐車枠202の形状を推定している。
【0072】
従って、上述した従来の画像処理装置と異なり、マーカーを構成する白線がなすコーナー部における白線の延在方向をパターン化してあてはめることなく、駐車枠202の形状を正確に推定することができる。これにより、駐車場P等の路面に設けられた駐車枠202の推定を迅速かつ確実に行うことが可能となる。
【0073】
なお、コーナー検出部111aにより検出されたコーナー部203のうち、隣接するコーナー部203の距離が一定距離であることを条件に駐車枠202を検出する手法も考えられる。しかしながら、コーナー検出部111aによるコーナー部203検出のみで駐車枠202を設定してしまうと、駐車場P等の路面のざらつき、ペイントの剥がれ、さらには木漏れ日や駐車中の白い車両Vをコーナー検出部111aがコーナー部203であると誤検出する可能性が否定できない。従って、コーナー検出部111aにより検出されたコーナー部203の距離のみで駐車枠202を検出すると、誤検出することがあり得る。
【0074】
さらに、一定の距離にあるコーナー点204を結んだ直線に直交する方向に向けて駐車枠202を設定する手法も考えられる。しかしながら、かかる手法では、第2の白線部201bが第1の白線部201aに対して斜めに交わるようなマーカー200の場合、駐車枠202を適切に設定、登録することが難しい。
【0075】
本実施の形態である画像処理装置100では、コーナー部203の距離だけに依存せずに、白線部201a、201bの延在方向を考慮して駐車枠202を設定しているので、例えば図11に示すような縦列駐車用の駐車枠202aであっても並列駐車用の駐車枠202bであっても、適切に駐車枠202を設定することができる。加えて、図12に示すように、第2の白線部201bが第1の白線部201aに対して斜めに交わるようなマーカー200であっても、適切に駐車枠202を設定することができる。
【0076】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0077】
一例として、上述の実施の形態である画像処理装置100により検出可能なマーカー200は図示例に限定されず、コーナー検出部111aによりコーナー部203が検出可能なマーカー200であればその形状に特段の限定はない。一例として、十字形、つまり、第1の白線部201aと第2の白線部201bとがその中央部で交差するような形状のマーカー200であってもよい。
【0078】
また、上述の実施の形態である画像処理装置100では、画像の輝度値により白黒判定を行っていたが、画像のRGB値から白黒判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0079】
V 車両
P 駐車場
1 駐車支援装置
20 カメラ(撮像装置)
22 カメラECU
100 画像処理装置
110 制御部
111 マーカー検出部
111a コーナー検出部
112 駐車枠検出部
113 形状推定部
200 マーカー
201a 第1の白線部
201b 第2の白線部
202 駐車枠
203 コーナー部
204 コーナー点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12