(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】光走査装置およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/12 20060101AFI20230317BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230317BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20230317BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20230317BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G02B26/12
G02B26/10 F
B41J2/47 101D
H04N1/113
G03G15/04 111
(21)【出願番号】P 2019089915
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 篤夫
(72)【発明者】
【氏名】元山 貴晴
(72)【発明者】
【氏名】山本 弥史
(72)【発明者】
【氏名】青木 礼至
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-026539(JP,A)
【文献】特開2001-201707(JP,A)
【文献】特開2019-105804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0105570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光ビームを偏向して被走査体を走査させる光走査装置であって、
光源と、
前記光源から出射された光ビームを偏向する偏向部と、
前記偏向部で偏向された前記光ビームを反射して特定の被走査体へと導く少なくとも3つの反射ミラーと、
前記偏向部から、前記反射ミラーのうちの1つの反射ミラーへの前記光ビームの光路上に設けられ、集光特性を有する第1の光学部材とを備え、
前記反射ミラーを、前記光ビームの光路の上流側から順に、第1、第2および第3の反射ミラーとすると、
前記第3の反射ミラーで反射された光ビームの光路は、前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間の光路を横切るように、前記第1、第2および第3の反射ミラーが配設され
、
前記第3の反射ミラーから前記被走査体までの光ビームの光路上に、集光特性を有する第2の光学部材が備えられ、
前記第2の光学部材に入射する前記光ビームの光路は、前記第1の光学部材から前記第1の反射ミラーへの光ビームの光路および前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間の光路を横切るように設けられ、
前記光ビームの光路上には、前記第3の反射ミラーで反射された前記光ビームを受ける第4の反射ミラーが備えられ、
前記偏向部の回転中心軸に直交し該偏向部の反射面を等分する平面を基準面とするとき、または前記偏向部の回転中心軸に直交して、前記偏向部と、前記偏向部から最も離間した反射ミラーとの間の光ビームの光路を含む平面を基準面とするとき、
前記第1の反射ミラーおよび前記第3の反射ミラーは前記基準面の被走査体側に配設され、前記第2の反射ミラーおよび第4の反射ミラーは前記基準面の被走査体側の反対側に配設されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
光源から出射された光ビームを偏向して被走査体を走査させる光走査装置であって、
光源と、
前記光源から出射された光ビームを偏向する偏向部と、
前記偏向部で偏向された前記光ビームを反射して特定の被走査体へと導く少なくとも3つの反射ミラーと、
前記偏向部から、前記反射ミラーのうちの1つの反射ミラーへの前記光ビームの光路上に設けられ、集光特性を有する第1の光学部材とを備え、
前記反射ミラーを、前記光ビームの光路の上流側から順に、第1、第2および第3の反射ミラーとすると、
前記第3の反射ミラーで反射された光ビームの光路は、前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間の光路を横切るように、前記第1、第2および第3の反射ミラーが配設され
、
前記第3の反射ミラーから前記被走査体までの光ビームの光路上に、集光特性を有する第2の光学部材が備えられ、
前記第2の光学部材に入射する前記光ビームの光路は、前記第1の光学部材から前記第1の反射ミラーへの光ビームの光路および前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間の光路を横切るように設けられ、
前記光ビームの光路上には、前記第3の反射ミラーで反射された前記光ビームを受ける第4の反射ミラーが備えられ、
前記第3の反射ミラーは、主走査方向および副走査方向に直交する高さ方向において少なくとも前記第2の光学部材に重なる部分を有するように配設されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の光走査装置において、
前記光路上には、前記第1の光学部材を介して光ビームが入射される前記第1の反射ミラーと、前記第1の反射ミラーで反射された光ビームを受ける前記第2の反射ミラーと、前記第2の反射ミラーで反射された光ビームを受ける前記第3の反射ミラーとが配設されたことを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1つの請求項に記載の光走査装置において、
前記第3の反射ミラーで反射された光ビームの光路は、前記第1の光学部材から前記第1の反射ミラーへの光ビームの光路を横切ることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1つの請求項に記載の光走査装置において、
前記反射ミラーはそれぞれ、当該反射ミラーへの光ビームの入射光と反射光のなす角が鋭角となるように設けられていることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか1つの請求項に記載の光走査装置において、
前記偏向部の回転中心軸に直交し該偏向部の反射面を等分する平面を基準面とするとき、または前記偏向部の回転中心軸に直交して、前記偏向部と、前記偏向部から最も離間した反射ミラーとの間の光ビームの光路を含む平面を基準面とするとき、
前記第2の反射ミラーは、前記基準面の被走査体側に配設され、前記第1の反射ミラーおよび第3の反射ミラーは前記基準面の被走査体側の反対側に配設されたことを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれか1つの請求項に記載の光走査装置において、
前記第2の反射ミラーは、主走査方向および副走査方向に直交する高さ方向において少なくとも前記第2の光学部材に重なる部分を有するように配設されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1つの請求項に記載の光走査装置を備え、
前記光走査装置により前記被走査体上に潜像を形成し、前記被走査体上の潜像を可視像に現像して、前記可視像を前記被走査体から用紙に転写形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームにより被走査体を走査する光走査装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置では、複数の色に対応する各感光体(各被走査体)表面を均一に帯電させてから、各光ビームにより各感光体表面を走査して、各感光体表面にそれぞれの静電潜像を形成し、各色のトナーにより各感光体表面の静電潜像を現像して、各感光体表面に各色のトナー像を形成し、各色のトナー像を各感光体から中間転写体に重ね合わせ転写して、中間転写体上にカラーのトナー像を形成し、このカラーのトナー像を中間転写体から記録用紙に転写している。光ビームによる各感光体の走査は、光走査装置により行われ、一般的には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナーを用いて、少なくとも4本の光ビームにより4つの感光体を走査する必要がある。
【0003】
近年では、画像形成装置の小型化や薄型化が求められるようになっており、光走査装置の小型化や薄型化が要望されている。例えば特許文献1に記載された光走査装置では、偏向部からの光ビームの光路に複数の反射ミラーが配置され、前記反射ミラーからの光ビームの光路にfθレンズが備えられている。また、光源から出射されたそれぞれの光ビームは、偏向部で反射させて各光学系に振り分けられ、各光学系により各光ビームをそれぞれの感光体に入射させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の光走査装置では、一体となった光ビームを各色に分離する複数の反射ミラーが副走査方向に間隔を設けてそれぞれ配置され、偏向部の回転軸方向にもそれぞれ間隔を設けて互いに重ならない配置形態とされている。そして、かかる配置形態によって折り返された光ビームは、各光学系に振り分けられるよう構成されている。そのため、複数の反射ミラーの配置によって光走査装置の高さ方向に厚みを要してしまい、光走査装置の小型化や薄型化の弊害となっている。
【0006】
本発明は、前記のような事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、複数の反射ミラーによって光ビームを各光学系へ良好に振り分けるとともに、更なる小型化および薄型化を図ることが可能な光走査装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、光源から出射された光ビームを偏向して被走査体を走査させる光走査装置を前提とし、光源と、前記光源から出射された光ビームを偏向する偏向部と、前記偏向部で偏向された前記光ビームを反射して特定の被走査体へと導く少なくとも3つの反射ミラーと、前記偏向部から、前記反射ミラーのうちの1つの反射ミラーへの前記光ビームの光路上に設けられ、集光特性を有する第1の光学部材とを備え、前記反射ミラーを、前記光ビームの光路の上流側から順に、第1、第2および第3の反射ミラーとすると、前記第3の反射ミラーで反射された光ビームの光路は、前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間の光路を横切るように、前記第1、第2および第3の反射ミラーが配設されていることを特徴としている。
【0008】
この特定事項により、前記偏向部で偏向された光ビームを複数の反射ミラーで反射して前記被走査体へ導く光路において、その光路長を十分に確保しつつ、各反射ミラーを集約して配置させコンパクトに納めることが可能となる。
【0009】
前記光走査装置における、より具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記光路上には、前記第1の光学部材を介して光ビームが入射される前記第1の反射ミラーと、前記第1の反射ミラーで反射された光ビームを受ける前記第2の反射ミラーと、前記第2の反射ミラーで反射された光ビームを受ける前記第3の反射ミラーとが配設されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光走査装置においては、前記第3の反射ミラーで反射された光ビームの光路は、前記第1の光学部材から前記第1の反射ミラーへの光ビームの光路を横切るように構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明の光走査装置においては、前記反射ミラーはそれぞれ、当該反射ミラーへの光ビームの入射光と反射光のなす角が鋭角となるように設けられることが好ましい。
【0012】
また、本発明の光走査装置においては、前記第3の反射ミラーから前記被走査体までの光ビームの光路上に、集光特性を有する第2の光学部材が備えられ、前記第2の光学部材に入射する前記光ビームの光路は、前記第1の光学部材から前記第1の反射ミラーへの光ビームの光路および前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーとの間の光路を横切るように構成されることが好ましい。
【0013】
また、前記構成の光走査装置において、前記偏向部の回転中心軸に直交し該偏向部の反射面を等分する平面を基準面とするとき、または前記偏向部の回転中心軸に直交して、前記偏向部と、前記偏向部から最も離間した反射ミラーとの間の光ビームの光路を含む平面を基準面とするとき、前記第2の反射ミラーは、前記基準面の被走査体側に配設され、前記第1の反射ミラーおよび第3の反射ミラーは前記基準面の被走査体側の反対側に配設されることが好ましい。
【0014】
また、前記構成の光走査装置において、前記光ビームの光路上には、さらに、前記第3の反射ミラーで反射された前記光ビームを受ける第4の反射ミラーが備えられてもよい。その場合、前記第1の反射ミラーおよび前記第3の反射ミラーは前記基準面の被走査体側に配設され、前記第2の反射ミラーおよび第4の反射ミラーは前記基準面の被走査体側の反対側に配設されることが好ましい。
【0015】
前記の目的を達成するため、前記の構成を有する光走査装置を備えた画像形成装置にあっても本発明の技術的思想の範疇にある。すなわち、画像形成装置として、前記光走査装置を備えるとともに、前記光走査装置により前記被走査体上に潜像を形成し、前記被走査体上の潜像を可視像に現像して、前記可視像を前記被走査体から用紙に転写形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、偏向された光ビームを複数の反射ミラーで反射して被走査体へと導く光路において、その光路長を十分に確保しつつ複数の前記反射ミラーを集約して備えさせることができるので、光走査装置および画像形成装置として小型化や薄型化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る光走査装置を備えた画像形成装置を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る光走査装置を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る光走査装置の上蓋を外した筐体内部を斜め上方から見て示す斜視図である。
【
図4】実施形態1に係る光走査装置における各光学部材の配設位置を断面により示す説明図である。
【
図5】実施形態1に係る光走査装置の複数の光学部材を抽出して示す説明図である。
【
図6】実施形態2に係る光走査装置の複数の光学部材を抽出して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る光走査装置10および画像形成装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る光走査装置10を備えた画像形成装置1を示す断面図である。この画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、または単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。このため、現像装置12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、および帯電器15等は、各色に応じた4種類のトナー像を形成するためにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれがブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応付けられて、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0020】
各画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdのいずれにおいても、ドラムクリーニング装置14により感光体ドラム13表面の残留トナーを除去および回収した後、帯電器15により感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させ、光走査装置11により感光体ドラム13表面を露光して、その表面に静電潜像を形成し、現像装置12により感光体ドラム13表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13表面にトナー像を形成する。これにより、各感光体ドラム13表面に各色のトナー像が形成される。
【0021】
引き続いて、中間転写ベルト21を周回移動させつつ、ベルトクリーニング装置22により中間転写ベルト21の残留トナーを除去および回収した後、各感光体ドラム13表面の各色のトナー像を中間転写ベルト21に順次転写して重ね合わせ、中間転写ベルト21上にカラーのトナー像を形成する。
【0022】
中間転写ベルト21と2次転写装置23の転写ローラ23aとの間にはニップ域が形成されており、用紙搬送経路31を通じて搬送された記録用紙をそのニップ域に挟み込んで搬送しつつ、中間転写ベルト21表面のカラーのトナー像を記録用紙上に転写する。そして、定着装置17の加熱ローラ24と加圧ローラ25との間に記録用紙を挟み込んで加熱および加圧し、記録用紙上のカラーのトナー像を定着させる。
【0023】
記録用紙は、ピックアップローラ33により給紙カセット18から引出されて、用紙搬送経路31を通じて搬送され、2次転写装置23や定着装置17を経由し、排紙ローラ36を介して排紙トレイ39へと搬出される。この用紙搬送経路31には、記録用紙を一旦停止させて、記録用紙の先端を揃えた後、中間転写ベルト21と転写ローラ23a間のニップ域でのトナー像の転写タイミングに合わせて記録用紙の搬送を開始するレジストローラ34、記録用紙の搬送を促す搬送ローラ35等が配置されている。
【0024】
(実施形態1)
次に、画像形成装置1に備えられる本発明の光走査装置10の実施形態1について、
図2~
図5を参照しつつ説明する。
【0025】
図2は、光走査装置10を示す上面図であり、
図3は、光走査装置10の上蓋42を取り外して斜め上方から見て示す斜視図であり、
図4は、光走査装置10における各光学部材の配置形態を断面により示す説明図であり、
図5は、光走査装置10の複数の光学部材を抽出して示す説明図である。なお、
図3等に示すように、主走査方向Yと直交する方向を副走査方向Xとし、主走査方向Yおよび副走査方向Xと直交する方向(ポリゴンミラー53の回転中心軸Gの長手方向)を高さ方向Zとして、以下説明する。
【0026】
光走査装置10の筐体41は、
図2および
図3に示すように、矩形状の上蓋42、底板43、および底板43を囲む4つの側板44を有している。筐体41は、上蓋42によって閉塞され防塵されている。光走査装置10は、光源である複数の発光素子(半導体レーザ)51から出射された光ビーム52を、ポリゴンミラー53の反射面へと導き、光ビーム52をポリゴンミラー53の反射面で反射して偏向させる。
【0027】
反射した光ビーム52は、筐体41内に備えられた各光学部材によって、被走査体としての感光体ドラム13へとそれぞれ導かれる。光走査装置10は、このような光ビーム52によって、対応する各感光体ドラム13を走査する構成とされている。
【0028】
図2に示すように、各発光素子51からポリゴンミラー53までは、各発光素子51からポリゴンミラー53へと向う順に、4つのコリメータレンズ54、4つの第1ミラー55a、55b、シリンドリカルレンズ56、および第2ミラー57が配置されている。
【0029】
コリメータレンズ54は、発光素子51から出射された光ビーム52を平行光に変換する。3つの第1ミラー55bは、3つの発光素子51からそれぞれのコリメータレンズ54を通じて入射した光ビーム52を1つの第1ミラー55aへと反射する。1つの第1ミラー55aは、3つの第1ミラー55bで反射された各光ビーム52をシリンドリカルレンズ56へと反射する。また、他の1つの発光素子51からコリメータレンズ54を透過した光ビーム52は、第1ミラー55aの上方を通過してシリンドリカルレンズ56に入射する。
【0030】
シリンドリカルレンズ56は、副走査方向Xについて、光ビーム52を集光してポリゴンミラー53の反射面もしくは該反射面の近傍でほぼ収束させ、かつ光ビーム52のスポットをポリゴンミラー53の反射面もしくは該反射面の近傍で絞り、また副走査方向Xと直交する主走査方向Yについて、光ビーム52をそのまま平行光として出射する。
【0031】
ポリゴンミラー53は、偏向部(回転多面鏡)に相当し、回転中心軸Gを中心にして高速回転しており、各反射面で光ビーム52を反射して主走査方向Yに繰返し偏向させる。ポリゴンミラー53で偏向された光ビーム52を各感光体ドラム13へと導くために、ポリゴンミラー53からの光ビーム52の光路には、複数の反射ミラー6が備えられている。
【0032】
図4に示すように、本実施形態に係る光走査装置10では、ポリゴンミラー53から各感光体ドラム13までの光路に、ポリゴンミラー53から各感光体ドラム13へと向う順に、第1の光学部材としての第1fθレンズ71、複数の反射ミラー6、および第2の光学部材としての4つの第2fθレンズ72がそれぞれ配置されている。
【0033】
複数の反射ミラー6は、入射した光ビーム52を各感光体ドラム13に向かって反射する。上蓋42には、反射された光ビーム52を通過させる防塵窓421が形成されている。防塵窓421は例えば透明ガラスにより上蓋42の開口部を閉塞するように構成されている。防塵窓421を通過した光ビーム52は、感光体ドラム13に結像する。
【0034】
第1fθレンズ71は、主走査方向Yおよび副走査方向Xのいずれについても、光ビーム52をそれぞれの感光体ドラム13の表面で所定のビーム径となるように集光して出射し、かつポリゴンミラー53により主走査方向Yに等角速度で偏向されている光ビーム52をそれぞれの感光体ドラム13上の主走査線に沿って等線速度で移動するように変換する。これにより、光ビーム52は、それぞれの感光体ドラム13の表面を主走査方向Yに繰返し走査する。
【0035】
光路に設けられた複数の反射ミラー6は、第1fθレンズ71を透過した光ビーム52を反射し、それぞれの第2fθレンズ72に入射させる。第2fθレンズ72は、主に、副走査方向Xについて、平行光の光ビーム52を集光してそれぞれの感光体ドラム13の表面で所定のビーム径(スポット径)となるように絞り、また主走査方向Yについて、収束光となった光ビーム52をそれぞれの感光体ドラム13へと出射する。
【0036】
光走査装置10においては、各光ビーム52が、ポリゴンミラー53の反射面で反射されて偏向され、それぞれの光路を通って各感光体ドラム13に入射し、各感光体ドラム13の表面を繰返し主走査する。各感光体ドラム13が回転駆動されることで、各光ビーム52により各感光体ドラム13の2次元表面(周面)は走査され、各感光体ドラム13の表面に静電潜像が形成される。
【0037】
これらの光路のうち、マゼンタ(M)用感光体ドラム13mへの光ビーム52の光路について説明する。
図5に示すように、マゼンタ用感光体ドラム13mへの光ビーム52の光路には、ポリゴンミラー53からマゼンタ用感光体ドラム13mまでの間の複数の反射ミラー6として、ポリゴンミラー53からマゼンタ用感光体ドラム13mへと向う順に、光路の上流側から、第1反射ミラー61と、第1反射ミラー61で反射された光ビーム52を受ける第2反射ミラー62と、第2反射ミラー62で反射された光ビーム52を受ける第3反射ミラー63とが備えられている。
【0038】
ポリゴンミラー53から、最前段で上流側の第1反射ミラー61までの光ビーム52の光路には、第1fθレンズ71が設けられている。また、最後段で下流側の第3反射ミラー63からマゼンタ用感光体ドラム13mまでの光ビーム52の光路には、第2fθレンズ72が設けられている。
【0039】
図4に示すように、光走査装置10において、ポリゴンミラー53の回転中心軸Gに直交してポリゴンミラー53の反射面を等分する平面を基準面Lとするとき、第1反射ミラー61は基準面Lに対して、マゼンタ用感光体ドラム13m側の反対側に配設されている。あるいは、基準面Lは、ポリゴンミラー53の回転中心軸Gに直交する平面であって、ポリゴンミラー53から、ブラック(K)用感光体ドラム13へ光ビーム52を入射するK用反射ミラー65への光ビーム52の光路を含む平面であってもよい。このK用反射ミラー65は、ポリゴンミラー53から最も離れた位置に配設されている。
【0040】
第2反射ミラー62は、このような基準面Lに対して、マゼンタ用感光体ドラム13m側に配設されている。また、第3反射ミラー63は、基準面Lに対して、マゼンタ用感光体ドラム13m側の反対側に配設されている。
【0041】
図5に示すように、最後段の第3反射ミラー63への光ビーム52の光路は、最前段の第1反射ミラー61への光路を横切るように、これらの第1反射ミラー61、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63が配設されている。ポリゴンミラー53で偏向された光ビーム52は、第1fθレンズ71を介して第1反射ミラー61に入射される。第1反射ミラー61で反射された光ビーム52は、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63で反射され、第2fθレンズ72を介してマゼンタ用感光体ドラム13mに入射される。
【0042】
ここで、第1反射ミラー61、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63は、光ビーム52の入射光と反射光のなす角が鋭角となるように筐体41内に設けられている。例えば、
図5に示す例では、光ビーム52の入射光と反射光のなす角は、第1反射ミラー61では10度(α1)、第2反射ミラー62では17度(α2)、第3反射ミラー63では53度(α3)とされている。
【0043】
イエロー(Y)用、シアン(C)用、およびブラック(B)用の反射ミラー6にあっても同様に、光ビーム52の入射光と反射光のなす角は鋭角となされており、それぞれ13度(α4)、74度(α5)、14度(α6)、76度(α7)、89度(α8)とされている。
【0044】
また、
図5に示すように、第3反射ミラー63は、マゼンタ用感光体ドラム13mと第2fθレンズ72とを結ぶ光路の延長上に配設されている。これにより、第3反射ミラー63は、第2fθレンズ72と、光走査装置10の筐体41内での位置が上方からみて重なるように配置されている。つまり、第3反射ミラー63と第2fθレンズ72とは、回転中心軸Gに沿う高さ方向Zから見て重複する部分を有するように配置されている。
【0045】
第1反射ミラー61は、第2反射ミラー62へ光ビーム52を導く。また、第2反射ミラー62は、第3反射ミラー63へ光ビーム52を導く。光走査装置10において、第1反射ミラー61および第2反射ミラー62は、第1反射ミラー61と第2反射ミラー62との間に形成される光ビーム52の光路が、第3反射ミラー63から第2fθレンズ72への光路を横切るように設けられている。また、第3反射ミラー63から第2fθレンズ72への光路は、第1fθレンズ71から第1反射ミラー61への光ビーム52の光路を横切るように設けられている。
【0046】
これらの第1反射ミラー61および第2反射ミラー62は、第1反射ミラー61と第2反射ミラー62の間に形成される光ビーム52の光路が、第3反射ミラー63から第2fθレンズ72への光ビーム52の光路を横切るように設けられている。
【0047】
さらに、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63は、第2反射ミラー62と第3反射ミラー63との間に形成される光ビーム52の光路が、第1fθレンズ71から第1反射ミラー61への光ビーム52の光路を横切るように設けられている。これらの光路は互いに交差している。
【0048】
光走査装置10において、第1反射ミラー61は、ポリゴンミラー53から副走査方向Xに、第2反射ミラー62よりも離間するように配置されている。また、副走査方向Xには、第1反射ミラー61は、ポリゴンミラー53から、マゼンタ(M)用感光体ドラム13mの位置よりも、さらに副走査方向Xに離間するように配置されている。
【0049】
主走査方向Yおよび副走査方向Xと直交する高さ方向Zには、第2反射ミラー62は、第2fθレンズ72に重なり合う部分を有する高さ位置に配置されている。例示の形態では、第2反射ミラー62は、高さ方向Zにおいて、少なくとも第2fθレンズ72に対して一部が重なり合うように備えられており、例えば基準面Lに対して感光体ドラム13側(マゼンタ用感光体ドラム13m側)に配設されている。
【0050】
光走査装置10において、ポリゴンミラー53で偏向された光ビーム52を反射する第1反射ミラー61、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63は、前記のような規則性に基づいて配置されていることにより、複数回の折り返し光路を形成して、第1fθレンズ71から第2fθレンズ72までの光ビーム52の光路長を十分に確保しうるものとなる。しかも、
図4および
図5に示されるように、これらの複数の反射ミラー6は、ポリゴンミラー53の回転中心軸Gに沿う方向(光走査装置10の高さ方向Z)に、互いに間隔を広く設けずとも配設することができるので、従来に比して光走査装置10の小型化および薄型化に十分に対応しうるものとなる。
【0051】
また、振動によって光路に振れが生じると、形成される画像に濃度むら(ジッタまたはバンディング)が発生してしまうことが既に知られている。これに対して、本実施形態では複数の反射ミラー6を、入射光と反射光とのなす角をいずれも鋭角となるように配置したことによって、振動の発生を抑えてバンディング等を低減するとともに、走査線の湾曲(ボウ)を小さくすることが可能となる。
【0052】
光走査装置10における複数の光路のうち、イエロー(Y)用感光体ドラム13(13y)への光ビーム52の光路について説明すると、
図5に示すように、イエロー用感光体ドラム13yへの光ビーム52の光路には、ポリゴンミラー53からイエロー用感光体ドラム13yまでの間に、第1反射ミラー66と、この第1反射ミラー66で反射された光ビーム52を受ける第2反射ミラー67とが備えられている。ポリゴンミラー53から、前段の第1反射ミラー66までの光ビーム52の光路には、第1fθレンズ71が配置されている。また、後段にある第2反射ミラー67からイエロー用感光体ドラム13yまでの光ビーム52の光路には、第2fθレンズ72が配置されている。
【0053】
ポリゴンミラー53の回転中心軸Gに直交してポリゴンミラー53の反射面を等分する平面を基準面Lとしたとき、第1反射ミラー66は基準面Lに対して、イエロー用感光体ドラム13y側(基準面Lより高さ方向Z上方)に配設され、第2反射ミラー67は、基準面Lに対して、イエロー用感光体ドラム13y側の反対側に配設されている。第1fθレンズ71は、ほぼ基準面L上に配設されている。
【0054】
第1反射ミラー66および第2反射ミラー67は、第2反射ミラー67から第2fθレンズ72を介してイエロー用感光体ドラム13yへと到る光ビーム52の光路が、ポリゴンミラー53から第1fθレンズ71への光ビーム52の光路を横切るように筐体41内に配設されている。また、これらの第1反射ミラー66および第2反射ミラー67は、光ビーム52の入射光と反射光のなす角が鋭角となるように筐体41内に設けられている。
【0055】
イエロー(Y)用感光体ドラム13(13y)への光ビーム52の光路について、第1反射ミラー66および第2反射ミラー67は、このような規則性に基づいて配置されていることにより、複数回の折り返し光路を形成し得て、第1fθレンズ71から第2fθレンズ72までの光ビーム52の光路長を十分に確保しうるものとなる。しかも、第1反射ミラー66および第2反射ミラー67は、ポリゴンミラー53の回転中心軸Gに沿う方向(光走査装置10の高さ方向Z)に、互いに間隔を広く設けずとも配設することができるので、従来に比して光走査装置10の小型化および薄型化に十分に対応することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態ではマゼンタ用感光体ドラム13mへ導かれる光ビーム52の光路について説明したが、複数の反射ミラー6の配置形態は、他の感光体ドラム13に対しても同様に適用することができ、マゼンタ用感光体ドラム13mに限定されるものではない。
【0057】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る光走査装置10における複数の光学部材を抽出して示す説明図である。以下に説明する実施形態2に係る光走査装置10およびそれを備えた画像形成装置1については、複数の反射ミラー6の配置形態に特徴を有するものであり、他の基本構成は実施形態1と同様であることから、反射ミラー6に関して詳細に説明し、他の構成については実施形態1と共通の符号を用いて説明を省略する。
【0058】
図示するように、マゼンタ用感光体ドラム13mへの光ビーム52の光路には、ポリゴンミラー53からマゼンタ用感光体ドラム13mまでの複数の反射ミラー6として、ポリゴンミラー53からマゼンタ用感光体ドラム13mへと向う順に、光路の上流側から、第1反射ミラー61と、第1反射ミラー61で反射された光ビーム52を受ける第2反射ミラー62と、第2反射ミラー62で反射された光ビーム52を受ける第3反射ミラー63とが備えられている。本実施形態では、さらに、第3反射ミラー63で反射された光ビーム52を受ける第4反射ミラー64が備えられている。
【0059】
この場合に、ポリゴンミラー53の回転中心軸Gに直交してポリゴンミラー53の反射面を等分する平面を基準面とすると、第1反射ミラー61および第3反射ミラー63は前記基準面のマゼンタ用感光体ドラム13m側に配設されている。また、第2反射ミラー62および第4反射ミラー64は前記基準面のマゼンタ用感光体ドラム13m側の反対側に配設されている。
【0060】
ポリゴンミラー53で偏向された光ビーム52は、第1fθレンズ71を介して第1反射ミラー61に入射される。これらの複数の反射ミラー6は、最後段の第4反射ミラー64への光ビーム52の光路が、最前段の第1反射ミラー61への光路を横切るように設けられている。第4反射ミラー64で反射された光ビーム52は、第2fθレンズ72を介してマゼンタ用感光体ドラム13mに入射される。
【0061】
また、第3反射ミラー63から第4反射ミラー64への光ビーム52の光路は、第1反射ミラー61から第2反射ミラー62への光路を横切る。さらに、第4反射ミラー64で反射された光ビーム52は、第1反射ミラー61から第2反射ミラー62への光ビーム52の光路を横切る。
【0062】
これらの各反射ミラー61、62、63、64は、光ビーム52の入射光と反射光のなす角が鋭角となるように筐体41内に設けられている。例えば、
図6に示す例では、光ビーム52の入射光と反射光のなす角は、第1反射ミラー61では21度(β1)、第2反射ミラー62では48度(β2)、第3反射ミラー63では59度(β3)、第4反射ミラー64では41度(β4)とされている。
【0063】
イエロー(Y)用、シアン(C)用、およびブラック(B)用の反射ミラー6にあっても同様に、光ビーム52の入射光と反射光のなす角は鋭角となされており、それぞれ5度(β5)、87度(β6)、14度(β7)、76度(β8)、89度(β9)とされている。
【0064】
この形態に係る光走査装置10では、第4反射ミラー64が、マゼンタ用感光体ドラム13mと第2fθレンズ72とを結ぶ光路の延長上に配設されている。これにより、第4反射ミラー64は、第2fθレンズ72と、光走査装置10の筐体41内での位置が上方からみて重なるように配置されている。つまり、第4反射ミラー64と第2fθレンズ72とは、回転中心軸Gに沿う高さ方向Zから見て重複する部分を有するように配置されている。
【0065】
また、光走査装置10において、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63は、第2反射ミラー62と第3反射ミラー63との間に形成される光ビーム52の光路が、第1fθレンズ71から第1反射ミラー61への光ビーム52の光路を横切るように設けられている。第4反射ミラー64は、第3反射ミラー63と第4反射ミラー64との間に形成される光ビーム52の光路が、第1fθレンズ71から第1反射ミラー61への光ビーム52の光路を横切るように設けられている。
【0066】
さらに、第1反射ミラー61および第2反射ミラー62は、第1反射ミラー61と第2反射ミラー62の間に形成される光ビーム52の光路が、第4反射ミラー64から第2fθレンズ72への光ビーム52の光路を横切るように設けられている。これらの光路は互いに交差している。
【0067】
主走査方向Yおよび副走査方向Xと直交する高さ方向Zには、第3反射ミラー63は、第2fθレンズ72に重なり合う部分を有する高さ位置に配置されている。例示の形態では、第2反射ミラー63は、高さ方向Zにおいて、少なくとも第2fθレンズ72に対して一部が重なり合うように備えられており、例えば基準面Lに対して感光体ドラム13側(マゼンタ用感光体ドラム13m側)に配設されている。
【0068】
光走査装置10では、このように配設された複数の反射ミラー6によって、光ビーム52が良好に各感光体ドラム13へと導かれ、各感光体ドラム13を走査する。そして、光ビーム52の検出タイミングに基づいて、光ビームによる各感光体ドラム13の走査タイミングが設定される。実施形態2に係る光走査装置10においても、実施形態1と同様、光ビーム52の光路長を十分に確保しつつ、複数の反射ミラー6を筐体41内にコンパクトに納めることが可能となる。したがって、光走査装置10およびこれを備えた画像形成装置1において、小型化および薄型化を図ることが可能となるとともに、高画質の画像形成を可能にするものとなる。
【0069】
なお、本発明に係る光走査装置10において、光ビーム52を反射して各感光体ドラム13へと導く複数の反射ミラー6は、実施形態1および2に示した設置数であるに限られず、より多くの反射ミラーが設けられてもよい。また、各反射ミラー6の配置形態にあっても、
図5および
図6に例示したものに限定されず、第3反射ミラー63で反射された光ビーム52の光路が、第1反射ミラー61と第2反射ミラー62との間の光路を横切るように、第1反射ミラー61、第2反射ミラー62および第3反射ミラー63が設けられたものであれば、どのような形態であってもよい。
【0070】
本発明の技術的範囲は、前記実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲に基づくものとされる。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置
10 光走査装置
12 現像装置
13 感光体ドラム(被走査体)
14 ドラムクリーニング装置
34 レジストローラ
35 搬送ローラ
36 排紙ローラ
41 筐体
51 発光素子(光源)
52 光ビーム
53 ポリゴンミラー(偏向部)
6 反射ミラー
61 第1反射ミラー
62 第2反射ミラー
63 第3反射ミラー
64 第4反射ミラー
71 第1fθレンズ
72 第2fθレンズ