IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-オーバービュー画像を提供する方法 図1
  • 特許-オーバービュー画像を提供する方法 図2
  • 特許-オーバービュー画像を提供する方法 図3
  • 特許-オーバービュー画像を提供する方法 図4
  • 特許-オーバービュー画像を提供する方法 図5
  • 特許-オーバービュー画像を提供する方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】オーバービュー画像を提供する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20230317BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/06
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019093623
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2019207403
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10 2018 207 821.1
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク,シーベンモルゲン
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0126046(US,A1)
【文献】特開2001-344601(JP,A)
【文献】特開2013-101512(JP,A)
【文献】特開2017-173820(JP,A)
【文献】特開2015-118378(JP,A)
【文献】特表2019-537748(JP,A)
【文献】特表2017-533450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01N 21/62 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料面に配置される対象物のオーバービュー画像を提供する方法であって、
光シートを生成するステップであって、前記光シートは、第1光軸に沿って、少なくとも部分的に試料面上に生成される、ステップAと、
前記試料面から到来する検出光を第2光軸に沿って捕捉するステップBと、
を含み、
前記第1光軸及び前記第2光軸は、前記試料面において交差し、互いに直角を成し、
前記第1光軸及び前記第2光軸はそれぞれ、前記試料面に直交する基準軸と、ゼロとは異なる角度を成し、
前記方法はさらに、
検出器を用いて検出面内で捕捉された検出光を少なくとも一つの捕捉画像の画像データとして画像化するステップであって、前記捕捉画像は、前記試料面に対して傾いた画像面において延在する、ステップCと、
前記光シートと前記対象物との相対的運動において、前記光シートを試料面内でずらすことによって、前記対象物の少なくとも一つの領域の複数の画像を捕捉するステップであって、前記捕捉画像は、前記試料面に対して傾いており、傾斜したスタックを形成する、ステップDと、
前記傾斜したスタックを正規化されたZスタックに変換するステップであって、前記捕捉画像の画像データの座標を前記傾斜したスタックの座標系から前記Zスタックの座標系に移し替えることにより、前記捕捉画像の画像データは、基準軸に関して正しい配向で割り当てられ、前記Zスタックの座標系は、前記試料面に平行な面が前記基準軸の方向に積層されるように構成されている、ステップEと、
を含む、方法において、
ステップFとして、前記ステップEにおいて前記正規化されたZスタックにおいて最大強度投影を実行し、前記第2光軸に沿って又はそれと平行な軸に沿って前後に位置する全ての画像点をそれぞれの強度に関して評価し、各軸に沿って最高強度を有する前記画像点を選択し、
選択された前記画像点のそれぞれを前記検出器の画像面に平行な投影面に仮想投影として画像化することにより、結果として得られるオーバービュー画像を生成する、
方法。
【請求項2】
結果として得られるオーバービュー画像を、オーバービュー画像データセットとして捕捉するステップによって特徴づけられ、
ステップGにおいて、前記結果として得られるオーバービュー画像のコントラストに対して低減されたコントラストを有する前記オーバービュー画像データセットのコピーが作成され、
前記オーバービュー画像データセットのコピーの画像データが前記オーバービュー画像の画像データセットのそれぞれ相応する画像データで差し引きされることにより、算出されたオーバービュー画像は前記結果として得られるオーバービュー画像に対して高められたコントラストを得る、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記オーバービュー画像は、前記基準軸に直交して延在する画像面に変換されている、
請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に顕微鏡法において、光シートを用いて、オーバービュー画像を提供する方法に関する。
【0002】
オーバービュー画像は、例えば、対象物の画像データの取得(Erfassung)前、取得中、又は取得後に、方法又は装置のユーザに対象物の迅速なオーバービューを与えるために、提供される。オーバービュー画像を用いて、例えば、画像化されるべき領域(関心領域(region of interest)、ROI)を選択し、及び/又は捕捉された画像データの品質を評価することができる。
【背景技術】
【0003】
オーバービュー画像を提供するための従来技術から知られている選択肢は、所謂、最大強度投影(maximum intensity projection、MIP)及び最小強度投影である。以下では、MIPとも称される最大強度投影について説明する。
【0004】
MIP(標準MIP)の原理は、図1に、非常に模式的に示される。対象物1、例えば生物学的試料の体積内で、画像データ9が同時に又は順次、取得される。この画像データ9は、例えば、異なる強度のマーカー2を表す。マーカー2は、例えば蛍光放射を放出するように励起放射によって励起された、例えば発光色素が設けられた構造又は分子であり得る。放出された検出放射の放出位置とそれぞれの強度は取得された。本明細書の意味における用語「マーカー(Marker)」は、色素だけでなく、それによってマーキングされた構造又はそのようにしてマーキングされた分子をも含む。
【0005】
仮想的に、対象物1を通る互いに平行な軸の束があれば(例えば矢印によって示される)、最高(最大)強度を有するそれらの画像点が各軸に沿って投影面3に投影され得る。単純化のために、本明細書において別の意味が明示的に言及されない場合は、マーカー2と画像点は、同一視される。ここで、複数の軸のうちの1つの軸上に、低強度のマーカー2と高強度のマーカー2が存在する場合、それぞれ、高強度のマーカー2は投影されるが、低強度のマーカー2は、高強度の領域2によって重ね合わされされ、表示されない。図1において、高強度のマーカーは黒丸で、低強度のマーカー2は白丸で示される。
【0006】
MIPは、比較的低い計算コスト(Rechenaufwand)で、オーバービュー画像を迅速に作成することを可能にする。各マーカー2の二次元位置に関する情報は保持されているが、マーカー2の空間的配向(raeumlichen Lage)に関する情報は失われる。いくつかのMIPが異なる方向から実行される場合、オーバービュー画像を生成することができ、それは必要に応じて異なる観察方向に回転されることができる。
【0007】
一例として、DE10 2005 029 225 A1が挙げられ、そこでは最大/最小強度投影を生成するシステム及び方法が開示されている。
【0008】
医用画像形成の分野におけるMIPの使用は、例えば、Prokop,M.他(1997:Use of Maximum Intensity Projections in CT Angiography(CT血管造影における最大強度投影の使用):A Basic Review;Radio Graphics 1997,17:433-451)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許公開第10 2005 029 225号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、光学シート顕微鏡法においてオーバービュー画像を生成するための改善された可能性を提供するという課題に基づくものである
【0011】
この課題は、請求項1による方法によって達成される。有利な実施態様は、従属クレームの対象である。
【0012】
本方法は、試料面に配置された対象物、例えば生物学的試料のオーバービュー画像を提供するのに役に立つ。方法は、相前後して実行される以下のステップA~Fを含む。本方法のさらなる実施形態では、さらなるステップ及び/又は中間ステップが実施され得る。
【0013】
ステップAにおいて、光シートを生成し、光シートは第1光軸に沿って少なくとも部分的に試料面上に生成される。ステップBにおいて、試料面から到来する光(検出光)を第2光軸に沿って捕捉し(erfasst)、第1光軸及び第2光軸は試料面において交差し、互いに直角を成す。さらに、第1光軸及び第2光軸はそれぞれ、試料面に直交する基準軸と、ゼロとは異なる角度を成す。
【0014】
ステップCにおいて、検出器を用いて検出面内で捕捉された検出光を少なくとも一つの捕捉画像の画像データの形態で画像化するステップを実行し、捕捉画像は試料面に対して傾いた画像面において延在する。この傾きは、試料面に対する第1光軸の傾きに相当する。さらにまた、ステップDにおいて、光シートと対象物との相対的運動において試料面内で光シートを移動することによって、対象物の少なくとも一つの領域の複数の画像を捕捉する。相対運動は、漸進的(schrittweise)又は連続的(kontinuierlich)、あるいは両選択肢の順次続く(sequentiell abfolgende)組み合わせであり得る。試料面に対して傾いた複数の捕捉画像は、傾斜したスタックを形成する。画像面は、相互に平行に延在する。
【0015】
ステップEにおいて、傾斜したスタックを正規化されたZスタックに仮想的に(virtuell)変換し(ueberfuehrt)、そこでは、捕捉画像の画像データが基準軸に関して正しい配向で(lagerichtig)割り当てられている。このプロセスは、「ひずみ補正(deskewing)」又は「デスキュー」とも称される。表現の観察(Eine Betrachtung von Darstellungen)、特に正規化されたZスタックの層及び/又は領域の観察は、好ましくは基準軸又はそれに平行な軸に沿って行われる。
【0016】
本発明による方法は、ステップEにおいて、正規化されたZスタックにおいて最大強度投影が実行され、検出対物レンズの光軸に沿って、即ち第2光軸に沿って、光軸に沿って又はそれと平行な軸に沿って前後に位置する全ての画像点が、それぞれの強度に関して評価され、各軸に沿って最高強度を有する画像点が選択されることにより特徴づけられる。画像点を選択する際に、任意選択的に、それ以下では選択が行われない強度の下限閾値を指定することができる。
【0017】
結果として得られるオーバービュー画像は、ステップFにおいて、選択された画像点のそれぞれが検出器の画像面に平行な投影面に仮想投影として画像化されることにより、生成される。
【0018】
本明細書においては、簡単化のために、試料キャリア、例えばガラス又は試料台の表面は、試料面と同一視される。
【0019】
ここでは、画素(ピクセル)も画像点として理解される。検出器は、所定の分解能(面積毎のピクセル)を有することができる。画素又はピクセルの強度は、画像点の強度として理解される。
【0020】
光シートとは、顕微鏡法、特に高分解能顕微鏡法及び/又は蛍光顕微鏡法の分野において、ディスク状又はシート状の照明された空間であると理解される。光シートの空間的アライメント(Die raeumliche Ausrichtung)は、好ましくは、光シートに形成された照明放射の伝搬方向によって定義される。
【0021】
光シートは、試料体積を照明するために設けられた照明放射経路の領域であり、そこでは、照明放射が検出方向において又は検出対物レンズの光軸の方向において測定される、例えば10μmの、空間的広がりを超えず、従って、光シート顕微鏡法の原理によって試料体積を検出又は測定するために適している。
【0022】
光学シート顕微鏡法の実践において、光シートを生成する際に、しばしば、二次極大(Nebenmaxima)(「サイドローブ」又は「副極」とも称される)が生じることが認識されている。これらの二次極大は実質的に本来の光シート(dem eigentlichen Lichtblatt)と平行に延在し、それらの効果において独自の光シートを表し、本来の光シートよりも低い放射強度を有する。より低い放射強度にもかかわらず、二次極大は、例えば、放射マーカーの励起又は照明放射の反射をもたらし得る。これらの不所望な励起及び放出又は反射の結果として、付加的な画像データが検出器によって捕捉され、これは、結果として得られる画像、この場合には結果として得られるオーバービュー画像に、不鮮明に画像化された領域又は構造、及び/又は、ゴースト構造をもたらす。ゴースト構造は、画像化されるべき対象物の存在しない構造を示唆するか、又は間違った位置における構造の画像をもたらす画像データである。
【0023】
検出対物レンズの光軸に沿った正規化されたZスタックにおけるMIPの実行は、誤って検出された領域又は構造の少なくとも一部がより高い強度の実際の構造によって重ね合わされるという有利な効果をもたらす。結果において改善されたオーバービュー画像が得られる。本発明による方法によって得られた画像は、ここではLSFM-MIPとも称される。
【0024】
方法の有利な実施形態では、オーバービュー画像、より正確にはその画像データがオーバービュー画像データセットとして捕捉される。ステップGにおいて、結果として得られるオーバービュー画像のコントラストに対して低減されたコントラストを有するオーバービュー画像データセットのコピーが作成される。コピー画像データセットの画像データは、オーバービュー画像データセットのそれぞれ対応する画像データでピクセル毎に差し引かれ(verrechnet)、従って、算出されたオーバービュー画像は、結果として得られるオーバービュー画像と比べてコントラストが強調されて得られる。この手順は、画像処理の分野では「アンシャープマスキング(unsharp-masking)」又は不鮮明化マスキング(Unscharfmaskierung)としても知られている。
【0025】
結果として得られるオーバービュー画像又は算出されたオーバービュー画像は、基準軸に直交して延在する画像面に変換されることができる。かかる座標変換(Transformation)によって、それぞれのオーバービュー画像はあたかもユーザが基準軸に沿ってオーバービュー画像を上から見るかのようになる。従って、ユーザには、オーバービュー画像を直感的に使用して解釈することがより容易になる。
【0026】
本発明は、例示的実施形態及び図面に基づいて、以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来技術による最大強度投影の原理を模式的に示す図である。
図2】光シート顕微鏡のための構成及び、画像データの捕捉及び画像処理の選択された方法ステップを模式的に示す図である。
図3】オーバービュー画像の生成及び画像処理の選択された方法ステップを示す図である。
図4】画像データ捕捉及び画像処理のための、本発明による、選択された方法ステップ及び光シート顕微鏡法のための構成を模式的に示す図である。
図5】結果として生じるオーバービュー画像の生成及び画像処理のための、本発明による、選択された方法ステップを模式的に示す図である。
図6】対象物の一部及び結果として生じるオーバービュー画像の比較を示す図であり、a)従来技術によるMIPを使用した図、b)本発明による方法の第1構成に相当するMIPの図、c)本発明による方法の第2構成の計算されたオーバービュー画像の図、及びd)従来技術によるデコンボリューションステップ及びMIPを用いたオーバービュー画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2は、光シート顕微鏡のための構成を簡単化して示す。画像化されるべき対象物1は、試料面5として作用する上向きの表面を有する試料キャリア4上に配置される。照明対物レンズ6は、その第1光軸A1によって試料キャリア4を通って試料面5内にかつ対象物1内に方向づけられる。照明対物レンズ6は、それ及び場合によってはさらなる素子(ここでは図示されていない)、例えば円筒レンズ又はスキャナによって、光シート8が第1光軸A1に沿って及び描画面(Zeichnungsebene)に対して垂直に生成されることができるように構成されている。従って、光シート8は、横断面で示される。
【0029】
同様に存在する検出対物レンズ7は、第2光軸A2とも称されるその光軸によって、同様に、試料キャリア4を通って試料面5内にかつ対物レンズ1内に方向づけられる。第1光軸A1及び第2光軸A2は、試料面5内で交差し、互いに関して90°の角度を成す。簡単化のために、試料キャリア4の上向きの表面上方の空間は、同様に試料面5と称される。検出対物レンズ7の焦点位置又は焦点面は、光シート8と一致し(faellt zusammen)、その結果、光シート8内に位置する領域は、検出対物レンズ7によって鮮明に画像面内に画像化され、鮮明に画像化された画像データの領域9sと称される。鮮明に画像化された画像データの領域9sは、太い実線によって視覚化される(以下参照)。
【0030】
図2には、2つの座標系が示されている。軸x、y及びzを有するデカルト座標系は、特に、試料キャリア4、試料面5及び基準軸Bに関連する。試料面5は、軸x及びy(x軸及び/又はy軸)によって定義されるx-y面内に延在し、基準軸Bは軸z(z軸)の方向に延在する。この座標系は、正規化Zスタックの座標系12とも称される(図3参照)。
【0031】
軸X’、Y’及びZ’を有する第2座標系は、特に第1及び第2光軸A1及びA2に関する。第1光軸A1は、2つの軸X’及びY’によって画定されるX’-Y’平面に平行に方向づけられる。第2光軸A2は軸Z’の方向に方向づけられている。この座標系は検出座標系11とも称される(図3参照)。
【0032】
試料面5に垂直な基準軸Bに関して、第1光軸A1と第2光軸A2とは、それぞれ1つの、ゼロとは異なる角度を成し、ここではα1及びα2と称される。
【0033】
対象物1内において、例えば同一水平上に位置する4つの略球形の対象領域が示されている。これらの対象領域は、例えば蛍光色素でマークされているタンパク質であり、したがって、以下では簡単化のためにマーカー2.1~2.4と称される。蛍光色素は、照明対物レンズ6及び光シート8の照明放射によって励起可能であり、励起状態において検出放射として蛍光放射を放出する。これは、画像データ9として第2の光軸A2に沿って検出対物レンズ7によって捕捉される。蛍光色素の励起及び検出放射の放出は、対応するマーカー2.1~2.4が光シート8内に位置する場合にのみ行われる。
【0034】
対象物1は、試料面5に沿って光シート8に対して移動される(矢印によって記号化されている)。その際、異なる時点t1~t5において、それぞれ画像データが捕捉され、それぞれ捕捉画像9として記憶される。
【0035】
図2には、一例として、時点t3における画像データ9の捕捉が示されている。過去の時点t1において、マーカー2.1は光シート8内に位置していた。このマーカー2.1によって放出された検出放射は捕捉され、画像面内の二次元位置と共に時点t1に割り当てられた。画像面は、例えば、X’-Y’平面に平行な細い実線によって示され、例えば、図示されていない検出器の検出面に相当する。それぞれのマーカー2.1~2.4の空間分解された捕捉は、それぞれ黒丸で記号化されている。図2及び4には、見やすさのために(der besseren Uebersicht halber)、画像面が個別の時点t1~t5に割り当てられて模式的に示されている。捕捉検出放射の元の位置が求められることによって、使用される検出器は領域2の二次元位置割当て(eine zweidimensionale Ortszuordnung)を可能にする。これは、例えば、検出素子のアレイ(マトリックス)を有する位置感知検出器を用いて行うことができる。
【0036】
時点t2において、マーカー2.1~2.4はいずれも光シート8内に位置せず、その結果、対応する画像データ9は捕捉されず、画像面は、鮮明に画像化された画像データの領域9sによって線としてのみ(lediglich als Linie mit dem Bereich scharf abgebildeter Bilddaten 9s)示される。時点t3において、第2のマーカー2.2は、光シート8内に移動し、検出放射を放出し、これは画像データ9として捕捉され、保存される。時点t4及びt5において、マーカー2.3又は2.4でも同じことが起こる。
【0037】
光シート顕微鏡のための構成のユーザに直観的に解釈可能なオーバービュー画像OV(図3及び6を見る)を提供することを可能にするために、捕捉画像データ9は、正規化されたZ-スタック10に変換される(Ueberfuehrt)。そのために、捕捉画像データ9は、デスキューDSと称される方法ステップによって、計算上、仮想的正規化Zスタック10に(in den virtuellen normalisierten Z-Stapel 10)変換される。ユーザが正規化されたZスタック10の一部又は層、好ましくは水平の層をそれぞれ表示させる場合、ユーザは、基準軸Bに沿ってデジタル化された対象物1を見るかのような印象を得る。マーカー2.1~2.4の画像データ9は、好ましくは、正しい面の正しい位置(seiten- und ortsrichtig)に示される。
【0038】
図3は、捕捉された画像データ9を検出座標系11から正規化されたZスタック10の座標系12へ座標変換する(Transformation)方法ステップを示す。検出対物レンズ7によって捕捉された検出放射は、図2に模式的に示されるように、空間的に分解されて捕捉され、マーカー2.1~2.4の位置情報は、検出座標系11における画像データ9として存在する。これは、一点鎖線によって模式的に示され、第2光軸A2の傾斜に相応する傾斜を有する(図2及び4を参照)。見やすさのために、検出座標系11と座標系12は、完全には重なり合っていない。
【0039】
正規化されたZスタック10の座標系12が定義され、画像データ9の座標が、検出座標系11から座標系12に移し換えられ(Uebertragen)、特に換算される(umgerechnet)。場合によっては、欠落している画像データ9は、補間又は他の公知の方法によって補足される。
【0040】
すると、図1を参照して冒頭で原理的に説明したように、z軸に沿ってMIPを行うことができる。軸に沿って配置された画像データ9のそれぞれの最高強度(矢印で表されている)が投影面3に投影され、オーバービュー画像OVが得られる。
【0041】
本発明にとって重要なのは、光シート8の不所望な二次極大8aによって引き起こされ得る画像収差(Abbildungsfehler)である。サイドローブとも称されるこれらの二次極大8aは、図4に概略的に示されている。
【0042】
そうすると、図2に関して既に述べたように、対象物1と光シート8とが互いに対してずらされ(verschoben)、時点t1~t5において画像データ9が捕捉されると、追加の画像データ9が誤って発生する。図4は、例示的に時点t3を再び示している。第2マーカー2.2は、光シート8内に位置する。光シート8の照明放射によって励起された少なくとも1つの蛍光色素は、検出対物レンズ7によって画像データ9として空間的及び時間的に分解されて捕捉される検出放射を放出する。しかしながら、時点t3において、第3マーカー2.3は、二次極大8aの照射放射によって既に照射されおり、検出放射を放出するために励起される。すなわち、第2マーカー2.2の画像データ9に加えて、時点t3においては第3マーカー2.3の画像データ9も捕捉され、その検出放射は、二次極大8aの照明放射が低強度であること及び第3マーカー2.3が検出対物レンズ7の焦点面に存在しないという事情に基づいて、より低い強度及びシャープネス又は鮮明度(Schaerfe)の画像データ9として捕捉される。二次極大の効果によって引き起こされる焦点面外の位置の検出放射は、白い楕円によって記号化された、不鮮明に画像化された画像データ9uの領域を示す。
【0043】
図2と異なり、例示的に選択された時点t1~t5の各々において、鮮明に画像化された画像データ9sの領域は太い実線の形態で、及び、場合によっては不鮮明に画像化された画像データ9uの領域が模式的に示される。時点t4において、二次極大8a内に第2及び第4マーカー2までもが配置され、その結果、鮮明に画像化された画像データ9sの領域に加えて、不鮮明に画像化された画像データ9uの2つの領域が焦点面から捕捉される。
【0044】
画像データ9、9s、9uを捕捉した後、デスキューDSのステップが実行され、上述のように、正規化されたZスタック10が生成される。本発明による方法に関するさらなる説明のために、以下では、鮮明に画像化された画像データ9sの領域及び不鮮明に画像化された画像データ9uの領域のみを示す。
【0045】
図5は、見やすさのために、正規化されたZスタック10の座標系12に制限される。図3に示されるようにMIPが実行される場合、オーバービュー画像OVが得られ、そのために、例えば、鮮明に画像化された画像データ9sの領域と、不鮮明に画像化された画像データ9uの3つの領域も寄与する。
【0046】
対照的に、MIPが第2光軸A2(図2及び4を参照)の方向に実行される場合、多くの、この例では全ての、不鮮明に画像化された画像データ9uの領域が、鮮明に画像化された画像データ9sの領域によって投影方向において覆われる。本発明による方法で使用する投影面3と、前記方法により得られたオーバービュー画像OVとを左上に斜めに示している。
【0047】
オーバービュー画像OVは、ユーザが再びz軸の方向を見ることができるようにするために、基準軸に直交して延在する画像面に変換されることができる。
【0048】
従って、本発明による方法を用いてオーバービュー画像OVが得られ、そこでは、z軸に沿ってMIPを実行する場合よりも、より少ない不鮮明に画像化された画像データ9uの領域が寄与している。
【0049】
本発明の実際の効果は、図6a)~図6d)に示されている。図6a)においては、図2及び図3に関して上述したように、標準MIPと称される最大強度投影を使用して作成された対象物1のある部分の概観画像OVを示す。二次極大8aは、例えば、矢印によって示される、不鮮明に画像化された画像データ9uの領域を生じる。
【0050】
対照的に、図6bにおいて、オーバービュー画像OVは、図4及び図5に関して述べたように、本発明による方法の第1構成によって生成された(LSFM-MIP)。不鮮明に画像化された画像データ9uの領域の、オーバービュー画像OVにおける割合は、顕著に減少している。オーバービュー画像OVは、より鮮明になり、よりコントラストが高くなり、画像化された構造のより詳細を認識させる。例示的に、鮮明に画像化された画像データ9sの領域が識別され、そこは、図6a)においては、まだ不鮮明に画像化された画像データ9uの領域によって強く影響されていた。
【0051】
本発明による方法のさらなる構成では、結果として生じるオーバービュー画像OVは図示されず、オーバービュー画像データセットとして捕捉される。
【0052】
ステップGでは、結果として得られたオーバービュー画像OVのコピーがコピー画像データセットとして作成され、このコピーは、結果として得られたオーバービュー画像OVのコントラストに関して低減されたコントラストを有する。コピー画像データセットの画像データからオーバービュー画像データセットの対応する画像データがピクセル毎に計算されて差し引かれ、従って、結果として得られるオーバービュー画像に対して増加したコントラストを有する算出されたオーバービュー画像OVcompが得られる。かかる算出されたオーバービュー画像OVcompを図6c)に示す。
【0053】
LSFM-MIPのオーバービュー画像OV又は算出されたオーバービュー画像OVcompは、標準MIPの場合よりもX’軸の方向にいくぶん長い。LSFM-MIPの画像がX’軸の方向に圧縮される場合、寸法に関して標準MIPのように見える画像を生成することが可能である。ここで、必要な圧縮ファクターは、画像化された対象物1の高さ及び長さに依存する。かかる圧縮は、図6b)及び6c)の画像において行われた。
【0054】
図6d)は、図6a)に従うMIPの実行に続く展開プロセス(デコンボリューションプロセス、DCV)の適用後の対象物1の部分(den Ausschnitt)を示す。かかるMIPが、予めデコンボリューションされた、先行技術に従って得られたZスタックに適用される場合、二次極大はもはや見られない。図6d)は、本発明による方法によれば、より低い計算コストにもかかわらず、定性的に比較可能なオーバービュー画像を得ることができることを示す。
【符号の説明】
【0055】
1 対象物(Objekt)
2 (励起状態の)マーカー((angeregter)Marker)
3 投影面(Projektionsebene)
4 試料キャリア(Probentraeger)
5 試料面(Probenebene)
6 照明対物レンズ(Beleuchtungsobjektiv)
7 検出対物レンズ(Detektionsobjektiv)
8 光シート(Lichtblatt)
8a 二次極大、サイドローブ(Nebenmaxima,Sidelobes)
9 画像データ(Bilddaten)
9s 鮮明に画像化された画像データ(scharf abgebildete Bilddaten)
9u 不鮮明に画像化された画像データ(unscharf abgebildete Bilddaten)
10 正規化されたZスタック(normalisierter Z-Stapel)
11 検出座標系(Detektions-Koordinatensystem)
12 (正規化されたZスタック10の)座標系(Koordinatensystem(des normalisierten Z-Stapels 10))
A1 第1光軸(erste optische Achse)
A2 第2光軸(zweite optische Achse)
B 基準軸(Bezugsachse)
DS デスキュー(方法ステップ)(Deskew(Verfahrensschritt))
OV (結果として得られる)オーバービュー画像((resultierendes)Uebersichtbild)
OVcomp 算出されたオーバービュー画像(errechnetes Uebersichtsbild)
α1 (第1光軸A1と基準軸Bとの間の)角度(Winkel(zwischen erster optischer Achse A1 und Bezugsachse B))
α2 (第2光軸A2と基準軸Bとの間の)角度(Winkel(zwischen zweiter optischer Achse A2 und Bezugsachse B))
図1
図2
図3
図4
図5
図6