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特許7246252引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造および取付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造および取付け方法
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
E05D15/06 125C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019097623
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020193432
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐三
(72)【発明者】
【氏名】松原 可菜子
(72)【発明者】
【氏名】坂村 光一
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-46923(JP,A)
【文献】特開2003-239617(JP,A)
【文献】特開平8-135292(JP,A)
【文献】特開2000-291324(JP,A)
【文献】特開2008-6052(JP,A)
【文献】特開平10-212858(JP,A)
【文献】特開2000-226963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
E05F 1/02- 1/04
A47H 1/00-23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成される引き戸式ドア装置において、
前記吊りレールを、横移動方向に間隔を存する状態で躯体側に設けられる複数の支持ブラケットを介して戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けられた構成にするにあたり、
前記各支持ブラケットには、水平基準線に対して吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応したレール高さになるよう支持ブラケットの上下方向の取付け位置の位置合わせするための位置合わせ手段が設けられたものであり、
前記位置合わせ手段は支持ブラケットに設けられるマークであり、該マークは、吊りレールを水平状に取付けるための水平取付け位置用のものと、吊りレールを傾斜状に取付けるべく吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のものとの二種類であることを特徴とする引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造。
【請求項2】
傾斜取付け位置用のマークは、水平取付け位置用のマークに対して上下方向に位置ずれして設けられていることを特徴とする請求項記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造。
【請求項3】
支持ブラケットは、出入り口の左右両側に設けられるものと、戸尻側に設けられるものとの少なくとも三つあり、そのうちの基準となる一つの支持ブラケットは、水平取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされ、残りの支持ブラケットは、傾斜取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされてそれぞれ設けられ、
吊りレールは、これら位置合わせされた支持ブラケットに支持されることで傾斜状に取付けられることを特徴とする請求項1または2記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造。
【請求項4】
引き戸式ドア装置は、戸体の横移動長さに対応して複数の仕様があり、支持ブラケットに設けられる傾斜取付け位置用マークは、前記複数の仕様に対応して複数設けられていることを特徴とする請求項1、2、または3記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造
【請求項5】
吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成されるトイレブース用の引き戸式ドア装置において、
前記戸体は平面視で円弧状をし、
吊りレールを、前記円弧状の戸体が開閉移動するべく少なくとも出入り口の左右に設けられる支持ブラケットと、戸尻側に設けられる支持ブラケットとを介して円弧状で、かつ戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けられた構成にするにあたり、
前記各支持ブラケットには、吊りレールを水平状に取付けるための水平取付け位置用のマークと、吊りレールを傾斜状に取付けるべく吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のマークとが設けられていることを特徴とするトイレブース用の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造。
【請求項6】
支持ブラケットは、出入り口の左右両側に設けられるものと、該出入り口よりも奥の戸尻側に設けられるものとの少なくとも三つあり、そのうちの基準となる一つの支持ブラケットは、水平取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされ、残りの支持ブラケットは、傾斜取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされてそれぞれ設けられ、
吊りレールは、これら位置合わせされた支持ブラケットに支持されることで傾斜状に設けられることを特徴とする請求項記載のトイレブース用の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造。
【請求項7】
吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成される引き戸式ドア装置において、
前記吊りレールを、横移動方向に間隔を存する状態で躯体側に設けられる複数の支持ブラケットを介して戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けるにあたり、
前記各支持ブラケットには、水平基準線に対して吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応したレール高さになるようマークが設けられ、
前記各支持ブラケットを、水平基準線に対応するマークを位置合わせした状態で躯体側に設けた後、該設けられた支持ブラケットに吊りレールを支持させることで該吊りレールが傾斜状に取付けられるようにしたことを特徴とする引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け方法。
【請求項8】
マークには、吊りレールを水平状に取付けるための水平取付け位置用のものと、吊りレールを傾斜状に取付けるべく吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のものとの二種類あり、
支持ブラケットの水平基準線に対する位置合わせは、基準となる支持ブラケットの水平取付け位置用マークの位置合わせと、残りの支持ブラケットの傾斜取付け位置用マークの位置合わせであることを特徴とする請求項記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け方法。
【請求項9】
吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成されるトイレブース用の引き戸式ドア装置において、
前記戸体は平面視で円弧状をし、
吊りレールを、前記円弧状の戸体が開閉移動するべく少なくとも出入り口の左右に取付けられる支持ブラケットと、該出入り口よりも奥の戸尻側に設けられる支持ブラケットとを介して円弧状で、かつ戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けるにあたり、
前記各支持ブラケットには、水平基準線に対して吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応したレール高さになるようマークが設けられ、
前記各支持ブラケットを、水平基準線に対応するマークを位置合わせした状態で躯体側に設けた後、該設けられた支持ブラケットに吊りレールを支持させることで該吊りレールが傾斜状に取付けられるようにしたことを特徴とするトイレブース用の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトイレブースやシャワーブース等、小さく仕切られた(区画された)ブース(部屋、空間)の出入り口(開口部)に建て付けられる引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造および取付け方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブース等の小さく仕切られたブースの出入り口に建て付けられるドア装置として円弧状の戸体を円弧軌跡に沿って左右方向にスライド移動させることで出入り口の開閉をするようにした所謂円弧状の引き戸式ドア装置が知られている。このような円弧状の引き戸式ドア装置は、出入り口を開放したときに戸体を円弧軌跡に沿ってブース内に引き入れた状態にできることから、戸体を前後方向に開閉揺動する開き戸式のドア装置のように、戸体の開閉スペースを出入り口の前後方向に広く確保する必要がないこと、また戸体を左右方向直線状にスライド移動(横移動)させる通常の引き戸式のドア装置のように、左右方向に開放したときの戸体の納まりスペースを確保する必要がないこと等の理由から、トイレブースのように狭い部屋の出入り口に設けられるドア装置として採用されることがある(例えば特許文献1参照。)。
ところでこの様な円弧状のドア装置は、戸体が円弧軌跡を描いて移動するものの、概念的にみたときには左右方向にスライド移動するものと殆ど同じであるため、左右方向にスライド移動する引き戸式のドア装置の分野に含まれたものとして捉えることができる。そしてこのような引き戸式のドア装置のなかには、天井部側に設けた吊りレール(ハンガーレール)に案内されて横方向に開閉移動する方式のものがあり、このもののなかには、吊りレールを傾斜状にすることにより、戸体自体が自重を受けて傾斜下降側(傾斜下手側)に自動的に移動するようにし、これにより戸体が開閉操作されない常時(自然状態)において、戸体を開放(常開、常時開、常時開放)姿勢、又はその逆の閉鎖(常閉、常時閉、常時閉鎖)姿勢に維持できるようにしたものが知られ、このような構成のものを前記円弧状の引き戸式ドア装置にも採用することができる。
そしてこのように引き戸式ドア装置の戸体を、傾斜下降側に自重で移動させる方式のものに構成するためには吊りレールを傾斜状に設ける必要があり、この場合、該吊りレールを躯体側に取付けるため用いられる複数の支持ブラケットを、吊りレールの傾斜に対応させて上下異なる位置に取付けるようにしている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-71921号公報
【文献】特開平10-46923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記従来のもののように、吊りレールを傾斜状に取付けるためには、前記支持ブラケットを、吊りレールの傾斜に対応して上下異なる位置に取付ける必要があるが、そのため一般的には、吊りレールの傾斜に対応した傾斜状の基準線(墨出し線)を描き、この傾斜状の基準線に位置合わせするようにして支持ブラケットを躯体側に設けることが試みられるが、このような傾斜状の基準線を描くことは手間がかかって作業性が悪く、特にトイレブースに設けた円弧状ドア装置のような場合、吊りレールは、開口した出入り口を挟んで左右両側に架け渡されるよう左右に離間した状態で、しかも円弧状に取付ける必要があるため、支持ブラケットの取付け位置に対応した傾斜状の基準線を正確に描くことが難しいこともあって作業性が悪い等の問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成される引き戸式ドア装置において、前記吊りレールを、横移動方向に間隔を存する状態で躯体側に設けられる複数の支持ブラケットを介して戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けられた構成にするにあたり、前記各支持ブラケットには、水平基準線に対して吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応したレール高さになるよう支持ブラケットの上下方向の取付け位置の位置合わせするための位置合わせ手段が設けられたものであり、前記位置合わせ手段は支持ブラケットに設けられるマークであり、該マークは、吊りレールを水平状に取付けるための水平取付け位置用のものと、吊りレールを傾斜状に取付けるべく吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のものとの二種類であることを特徴とする引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造である。
請求項2の発明は、傾斜取付け位置用のマークは、水平取付け位置用のマークに対して上下方向に位置ずれして設けられていることを特徴とする請求項記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造である。
請求項3の発明は、支持ブラケットは、出入り口の左右両側に設けられるものと、戸尻側に設けられるものとの少なくとも三つあり、そのうちの基準となる一つの支持ブラケットは、水平取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされ、残りの支持ブラケットは、傾斜取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされてそれぞれ設けられ、吊りレールは、これら位置合わせされた支持ブラケットに支持されることで傾斜状に取付けられることを特徴とする請求項1または2記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造である。
請求項4の発明は、引き戸式ドア装置は、戸体の横移動長さに対応して複数の仕様があり、支持ブラケットに設けられる傾斜取付け位置用マークは、前記複数の仕様に対応して複数設けられていることを特徴とする請求項1、2、または3記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造である。
請求項5の発明は、吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成されるトイレブース用の引き戸式ドア装置において、前記戸体は平面視で円弧状をし、吊りレールを、前記円弧状の戸体が開閉移動するべく少なくとも出入り口の左右に設けられる支持ブラケットと、戸尻側に設けられる支持ブラケットとを介して円弧状で、かつ戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けられた構成にするにあたり、前記各支持ブラケットには、吊りレールを水平状に取付けるための水平取付け位置用のマークと、吊りレールを傾斜状に取付けるべく吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のマークとが設けられていることを特徴とするトイレブース用の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造である。
請求項6の発明は、支持ブラケットは、出入り口の左右両側に設けられるものと、該出入り口よりも奥の戸尻側に設けられるものとの少なくとも三つあり、そのうちの基準となる一つの支持ブラケットは、水平取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされ、残りの支持ブラケットは、傾斜取付け位置用のマークを水平基準線に対して位置合わせされてそれぞれ設けられ、吊りレールは、これら位置合わせされた支持ブラケットに支持されることで傾斜状に設けられることを特徴とする請求項記載のトイレブース用の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け構造である。
請求項7の発明は、吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成される引き戸式ドア装置において、前記吊りレールを、横移動方向に間隔を存する状態で躯体側に設けられる複数の支持ブラケットを介して戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けるにあたり、前記各支持ブラケットには、水平基準線に対して吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応したレール高さになるようマークが設けられ、前記各支持ブラケットを、水平基準線に対応するマークを位置合わせした状態で躯体側に設けた後、該設けられた支持ブラケットに吊りレールを支持させることで該吊りレールが傾斜状に取付けられるようにしたことを特徴とする引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け方法である。
請求項8の発明は、マークには、吊りレールを水平状に取付けるための水平取付け位置用のものと、吊りレールを傾斜状に取付けるべく吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のものとの二種類あり、支持ブラケットの水平基準線に対する位置合わせは、基準となる支持ブラケットの水平取付け位置用マークの位置合わせと、残りの支持ブラケットの傾斜取付け位置用マークの位置合わせであることを特徴とする請求項記載の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け方法である。
請求項9の発明は、吊りレールと、該吊りレールに案内されることで横移動して出入り口の開閉をする戸体とを備えて構成されるトイレブース用の引き戸式ドア装置において、前記戸体は平面視で円弧状をし、吊りレールを、前記円弧状の戸体が開閉移動するべく少なくとも出入り口の左右に取付けられる支持ブラケットと、該出入り口よりも奥の戸尻側に設けられる支持ブラケットとを介して円弧状で、かつ戸尻側または戸先側の何れか一方側の端部が低くなるよう傾斜状に取付けるにあたり、前記各支持ブラケットには、水平基準線に対して吊りレールの横移動方向の取付け位置に対応したレール高さになるようマークが設けられ、前記各支持ブラケットを、水平基準線に対応するマークを位置合わせした状態で躯体側に設けた後、該設けられた支持ブラケットに吊りレールを支持させることで該吊りレールが傾斜状に取付けられるようにしたことを特徴とするトイレブース用の引き戸式ドア装置における吊りレールの取付け方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、吊りレールを支持ブラケットを介して傾斜状に取付けるにあたり、支持ブラケットは、該支持ブラケットに設けた位置合わせ手段を水平基準線に位置合わせすることで、傾斜状の基準線を描くことなく簡単に取付けることができる。
しかも吊りレールを傾斜状に取付けるため設けられる位置合わせ手段を、水平取付け位置用のマークと傾斜取付け位置用のマークとの二種類とした簡単な構成でできることになる。
請求項の発明とすることにより、水平取付け位置用マークと傾斜取付け位置用マークとが上下に位置ずれした状態で設けられるため、支持ブラケットを躯体側に取付ける際の位置決め作業が容易になる。
請求項の発明とすることにより、吊りレールは、少なくとも三つある支持ブラケットのうちの一つの支持ブラケットを基準にして水平基準線に水平取付け位置用マークを位置合わせをし、残りの支持ブラケットの傾斜取付け位置用マークを水平基準線に位置合わせをして取付けることで、傾斜状の取付けが簡単にできることになって作業性が向上する。
請求項の発明とすることにより、引き戸式ドア装置が、戸体の横移動長さに対応して複数の仕様があったとして、傾斜取付け位置用のマークが、これらの仕様に対応して設けられている結果、吊りレールは、横移動長さが異なった仕様においても傾斜角度を一定にした取付けができることになって戸体が自重移動する場合の移動速度に緩急変化が来さないようにすることが簡単にできる。
請求項の発明とすることにより、トイレブースにおいて、吊りレールを傾斜状に設けることが、支持ブラケットに設けた水平取付け位置用マークと傾斜取付け位置用マークとを用いることで、傾斜状の基準線ではなく水平基準線を用いて簡単にできることになる。
請求項の発明とすることにより、トイレブースにおいて、吊りレールは、少なくとも三つある支持ブラケットのうちの一つの支持ブラケットを基準にして水平基準線に水平取付け位置用マークを位置合わせをし、残りの支持ブラケットの傾斜取付け位置用マークを水平基準線に位置合わせをして取付けることで、傾斜状の取付けが簡単にできることになって作業性が向上する。
請求項の発明とすることにより、吊りレールを支持するため設けられる支持ブラケットを、該支持ブラケットに設けられるマークを水平基準線に位置合わせする状態で躯体側に取付けた後、該支持ブラケットに吊りレールを支持すればよいことになって、いちいち傾斜状の基準線を設ける必要がなくなって作業性の向上が図れることになる。
請求項の発明とすることにより、傾斜状の吊りレールの取付けが、支持ブラケットに設けた水平取付け位置用マークと傾斜取付け位置用マークを水平基準線に位置合わせをして取付けることで、傾斜状の基準線を描くことなく簡単に取付けることができる。
請求項の発明とすることにより、トイレブースにおいて、傾斜状の吊りレールの取付けが、支持ブラケットに設けた水平取付け位置用マークと傾斜取付け位置用マークを水平基準線に位置合わせをして取付けることで、傾斜状の基準線を描くことなく簡単に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トイレブースの正面図である。
図2】トイレブースの平面図である。
図3】トイレブースの側面図である。
図4】トイレブースの要部拡大平面図である。
図5】第三支持ブラケットを介して吊りレールを取付けた状態を示す縦断面図である。
図6】(A)(B)(C)(D)は第一支持ブラケットの平面図、正面図、側面図、斜視図である。
図7】(A)(B)(C)(D)は第二支持ブラケットの平面図、正面図、側面図、斜視図である。
図8】(A)(B)(C)(D)は第三支持ブラケットの平面図、正面図、側面図、斜視図である。
図9】(A)(B)(C)(D)は第四支持ブラケットの平面図、正面図、側面図、斜視図である。
図10】水平用吊りレールを設ける場合の支持ブラケットの取付け状態を示す展開図である。
図11】吊りレールの長さが短い仕様の自開用吊りレールを設ける場合の支持ブラケットの取付け状態を示す展開図である。
図12】吊りレールの長さが短い仕様の自閉用吊りレールを設ける場合の支持ブラケットの取付け状態を示す展開図である。
図13】大きさが異なる二つの仕様のトイレブースの平面図である。
図14】吊りレールの長さが長い仕様の自開用吊りレールを設けた場合の支持ブラケットの取付け状態を示す展開図である。
図15】吊りレールの長さが長い仕様の自閉用吊りレールを設けた場合の支持ブラケットの取付け状態を示す展開図である。
図16】吊りレールの長さが長くかつ自開の仕様において、支持ブラケットを吊りレールの傾斜に合わせて取付け状態を示す展開図である。
図17】(A)(B)(C)は吊りレールが長い仕様において長い設定の傾斜取付け位置用マークUを水平基準線Xに位置合わせした状態、吊りレールが短い仕様において短い設定の傾斜取付け位置用マークuを水平基準線Xに位置合わせした状態、吊りレールが長い仕様において短い設定の傾斜取付け位置用マークuを水平基準線Xに位置合わせした状態の吊りレールの傾斜状態を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトイレブースであって、該トイレブース1は、左右に複数が隣接する状態で設けられたものであり、出入り口(開口部)Eを構成すべく正面(前面)に左右間隙を存する状態で設けられる戸先側、戸尻側の正面パネル体2と、該正面パネル体2に先端部(前端部)が連結されていて、これら正面パネル体2とトイレブース奥端側の壁面Wとのあいだを仕切る側面パネル体(奥行パネル体)3とを備えることで平面視で四角形状に区画形成されていること等は何れも従来通りである。
尚、本実施の形態では、図2において、左側のトイレブース1の左側面は、側面パネル体3ではなく側面側の壁面Wが躯体側面となって形成されているが、トイレブース1自体の構成については必要において適宜の構成で実施できることは言うまでもない。そして本実施の形態では、後述するように、支持ブラケット7~10は正面パネル体2、側面パネル体3、壁面Wを躯体側とする状態でこれらに設けられ(取付けられ)る構成になっている。
【0009】
4は平面視で円弧形状をした戸体であって、該戸体4の左右上端縁部にはハンガーローラ(吊りローラ、走行ローラ)5が設けられるが、該ハンガーローラ5が転動することで戸体4の横方向(左右方向、水平方向)の開閉移動案内をするため設けられる吊りレール(ハンガーレール、案内レール)6は、前記戸体4の円弧径に沿うよう円弧形状をしている。
そして前記吊りレール6は、戸先側半部が出入り口Eをあいだに挟む状態で左右の正面パネル体2にそれぞれ設けられた出入り口E側(正面側)の第一、第二の支持ブラケット7、8に支持され、戸尻側半部がブース内に位置するよう左右方向一方側(図2において左側)の側面パネル体3あるいは壁面Wに設けられたブース奥側(奥行側)の第三、第四の支持ブラケット9、10に支持される状態で取付けられるが、該吊りレール6は、本実施の形態においては、戸尻側端縁部が低くなっていて、閉鎖した戸体4が自重により自開(自動開放)するよう傾斜したものと、逆に戸先側端縁部が低くなっていて、開放した戸体4が自重により自閉(自動閉鎖)するよう傾斜したものとの両者の取付けが選択してできる構成になっている。そしてこの様に構成されることで、第一支持ブラケット7が最も戸先側の支持ブラケット、第四支持ブラケット10が最も戸尻側の支持ブラケットとなるよう設定されている。
尚、Tはトイレブース1内に設けられる便器、Fは床面、Jは吊りレール5の正面側部位を塞ぐ塞ぎ板である。また、戸体4には把手11、施錠摘み12が設けられ、さらに、戸体4の戸先側、戸尻側の横方向移動端で該戸体4の全開、全閉位置での移動停止をするためのストッパ13、14が配された構成になっている。
【0010】
前記第一~第四の各支持ブラケット7~10は、躯体側(正面パネル体2、側面パネル体3、若しくは躯体面W)にビス15を介して取付けるため縦板状になった取付け片部7a~10aと、前記吊りレール6を支持するため横板状(水平状)になった支持片部7b~10bとを備えたもので構成されている。そして取付け片部7a~10aには、上下に一対のビス孔7c~10c、7d~10dが設けられるが、下側のビス孔7c~10cは上下方向に長孔となっており、支持ブラケット7~10を躯体側に取付ける場合に、該下側のビス孔7c~10cを貫通する状態でビス15を躯体側に緩螺入して支持ブラケット7~10を躯体側に仮保持した状態とし、この仮保持状態でこれら支持ブラケット7~10について、後述するように上下方向の位置決めをした後、上側の丸孔となったビス孔7d~10dを貫通するビス15並びに前記螺入したビス15を介して緊締することで支持ブラケット7~10の躯体側への位置決めされた取付けができるようになっている。
また支持片部7b~10bには吊りレール6を取付け支持するための取付け孔7e~10eが形成されており、支持片部7b~10bの下面に吊りレール6の上面を当接した状態で取付け孔7e~10eに上側から挿入したボルト16を支持片部7b~10bの下側に設けたナット16aに螺入させることで吊りレール6の支持ブラケット7~10に対する取付け支持ができるようになっている。
尚、吊りレール6を各支持ブラケット7~10に取付けるにあたり、前記ボルト-ナット16、16aのような緊締具に限定されず、ビス等、通常知られた緊締具を用いることができる。
因みに本実施の形態では、前記支持ブラケット7~10のうち、出入り口E側(正面側)の第一、第二支持ブラケット7、8については、出入り口Eを挟んで左右に設けられるものであるため左右勝手違い、つまり両者が左右対称形状のもので形成され、奥側の第三、第四支持ブラケット9、10については、トイレブース1を正面視したときに、左側に開放移動する仕様のものと、右側に開閉移動する仕様のものとの左右何れの側の仕様でも利用できるよう各それぞれが線対称形状のもので形成されている。このため本実施の形態のものでは、戸体4の横移動方向が右方向、左方向の何れにおいても採用できるようになっている。
以下、これらの支持ブラケット7~10についてそれぞれ詳述する。
【0011】
まず第一支持ブラケット7について説明するが、該第一支持ブラケット7には、正面パネル体2の裏面(トイレブース1のブース内(室内)側の面、内面)2aにビス15を介して取付けられる取付け片部7aが前述したように縦板状に設けられている一方、支持片部7bは、取付け片部7aの上端縁から正面視したときに左右方向横板状に長く延出(出入り口E側に長く延出)する状態でブース奥方に向けて折曲するよう設けられているが、さらに第一支持ブラケット7には、支持片部7bの左右方向外端縁部から下方に向けてL字形に折曲し、かつ取付け片部7aに対しては平面視でL字形に折曲した状態で補強片部7fが設けられた構成になっている。
また第二支持ブラケット8については、取付け片部8a、支持片部8b、補強片部8fが前述したように第一支持ブラケット7とは左右勝手違いの形状になって設けられている。
【0012】
一方、第三、第四支持ブラケット9、10は、側面パネル体3の内面(トイレブース1のブース内(室内)側の面、裏面)3aにビス15を介して取付けられる取付け片部9a、10aが、前述したように縦板状に設けられる一方、支持片部9b、10bが、取付け片部9a、10aの上端縁から左右横方向ブース内側に向けて延出した構造になっているが、さらに前後一対の補強片部9f、10fが、取付け片部9a、10aに対しては平面視でL字形に折曲し、支持片部9b、10bに対しては側面視で逆L字形に折曲した状態で設けられている。
そして第三、第四支持ブラケット9、10は、このように構成されることで、出入り口Eを正面視したときに、戸体4が左方に横移動して開放するもの、逆に右方に横移動して開放するものとして設けられる吊りレール6の何れの仕様にも共用することができ、また、第一、第二支持ブラケット7、8についても、対応する一方を戸先側のものとして使用することで、横移動方向が左方、右方の両仕様のものに対応できることになる。
【0013】
そして前記各支持ブラケット7~10の取付け片部7a~10aは、躯体側である正面パネル体2の裏面(内面)2a、側面パネル体3の内面3a、躯体面Wに当接する状態で取付けられることになるが、斯かる躯体側の取付け面に近接対向(隣接)していて両者を直視(対比)可能な縦向きの端縁部7g~10gには、これら支持ブラケット7~10を、該各支持ブラケット7~10の取付け位置に設けられる水平基準線Xを基準として位置決め状に取付けるため後述するマークが設けられている。
尚、マークが施される端縁部7g~10gは、第一、第二支持ブラケット7、8については、取付け面部7a、8aの補強片部7f、8fがない(設けられていない)側の端縁部となり、第三、第四支持ブラケット9、10については、取付け片部9a、10aの左右端縁部となっている。
因みにマークとしては、端縁部7g~10gに対して凹溝状(V溝やU溝状等)に形成したもの、あるいは単純にペン等の筆記手段を用いて線を描いたもの等、支持ブラケット7~10の取付け作業時に作業者が視認して位置決め取付けの作業ができるものであれは、どの様な形態のものであっても勿論よいが、本実施の形態では凹溝状に形成されたものになっている。
また躯体側に設けられる水平基準線Xとしては、支持ブラケット7~10が取付けられる横移動(左右)方向の対応位置に、これら支持ブラケット7~10を取付けるときの目印になるよう点在状に(間隔を存して)描かれたものであれば施工上の問題はなく、第一支持ブラケット7から第四支持ブラケット10までの取付け幅(長さ)の全長に亘って描かれたものとする必要はない。尚、図面に示す展開図では、便宜上、水平基準線Xを全長に亘る長いものとして描いているが、これは説明を判りやすくするためであって、これに限定されず、前述したように支持ブラケット7~10の取付け部位に作業者が認識できる程度に点在状に描いたものでよいことは勿論である。
【0014】
前記マークとしては、吊りレール6を、水平姿勢の取付けをするための水平取付け位置用マークHと、傾斜姿勢の取付けをするための傾斜取付け位置用マークとが設けられているが、該傾斜取付け位置用のマークとしては第一支持ブラケット7を基準とし、該第一支持ブラケット7側(戸先側)が低く、第四支持ブラケット10側(戸尻側)が高くなる自閉仕様(開放した戸体4が自動的に出入り口Eを閉鎖する仕様)のマークU、uと、逆に第一支持ブラケット7側が高く、第四支持ブラケット10側が低くなる自開仕様(閉鎖した戸体4が自動的に出入り口Eを開放する仕様)のマークD、dとが、前記水平取付け位置用マークHの上下にそれぞれ設けられている。
【0015】
これら傾斜取付け位置用のマークには、説明として「U、u」、「D、d」の符号をそれぞれ別けたものとしてつけているが、これは吊りレール6の円弧径R、rが異なる仕様に対応して吊りレール6のレール長さが異なったものになったことに対応したものである。つまり本実施の形態では図13に示すように、トイレブース1の大小二つの大きさの仕様に対応して戸体4(吊りレール6)の円弧径R、rを大小異なる設定にした場合、吊りレール6の長さが長短異なる二つの仕様が設定されることになり、このため傾斜取付け位置用マークについてもそれぞれの仕様に対応したものが設けられている。
この理由として、例えばトイレブース1の大きさが図13に示すように大小異なることで、戸体4の円弧径が「R」「r」と大小異なる仕様のものが設定される場合に、これに対応して吊りレール6の長さも長短異なった仕様になる。このような異なった仕様があった場合に、支持ブラケット7~10の取付け位置も、吊りレール6の長さに対応して横移動(左右、水平)方向に位置ずれしたものとなる。
このように異なった仕様であっても、吊りレール6の傾斜角度(勾配)θ1を一定にして自重移動する戸体4の移動速度に変化を来さないようにすることが好ましく、そこでいま、自開状態での取付けをした場合についてみたときに、図17(A)(B)に示すようにレール長さに対応した各支持ブラケット7~10の水平基準線Xに対して、後述するように水平取付け位置用マークHと傾斜取付け位置用のマーク「U2、U3、U4」「u2、u3、u4」とを位置合わせした状態での吊りレール6の取付けがなされることになる。これに対し、図17(C)に示すようにレール長が長い設定のものに、短い設定の位置合わせ用マーク「u2、u3、u4」を用いて吊りレール6の取付けをすると、吊りレール6の傾斜角度θ2は、前記傾斜角度θ1よりも小さい(θ1>θ2)ものになって緩傾斜になり、この結果、戸体4の自重による移動速度が遅くなるか、自重移動しない状態になってしまい、円滑な戸体4の自重移動が損なわれる惧れがある。また、逆の場合には自重による移動速度が速くなって自走停止時の衝撃が大きくなってしまう等の惧れがある。
尚、図17では、説明を判りやすくするため、傾斜取付け位置用のマーク「U2、U3、U4」、「u2、u3、u4」で支持ブラケット7~10を取付けた場合の水平基準線Xに対する相対的な吊りレール6の傾斜幅(長さ)を「A、B、C」「a、b、c」と表記している。
【0016】
これを避けるため、吊りレール6の傾斜角度(勾配)を、戸体4の円弧径(吊りレール6の長さ)の大小に拘わらず一定(θ1)になるようして戸体4の自重による走行速度(移動速度)に殆ど変化が生じないように設定することが好ましく、そこで本実施の形態では、これらの仕様に対応したマークとして傾斜取付け位置用マークU、u、D、dが設けられている。そしてこの場合に、小径仕様側の傾斜取付け位置用マークについては「u」、「d」の小文字の符号をつけ、大径仕様側の傾斜取付け位置用マークについては「U」、「D」の大文字の符号をつけたものとして便宜上の説明をする。
尚、戸体4としては、前述したように自重を受けての自閉仕様、または自開仕様となっているが、必ずしも自開、自閉の仕様にする必要はなく、逆に、自閉、自開をしない仕様、つまり戸体4が、開閉移動した場合に、その移動位置に停止したままの状態に維持される通常の開閉仕様のものにおいても実施することができる。この場合に、吊りレール6を、水平状に取付けるのではなく、戸先側、戸尻側の何れか一方を、戸体4が自重移動する場合の傾斜角度よりも緩い傾斜(緩傾斜)角度のものとして戸体4が自重移動しない程度の傾斜を設けたものにしておく構成にし、これによって開閉操作したときの戸体4を任意の停止位置に位置した状態に維持できる構成にし、そして次に停止位置から開放又は閉鎖移動しようと操作したとき、その開閉操作方向が傾斜下手側(下り傾斜)方向の移動操作である場合に、戸体4は下り勾配の移動になって戸体4の開閉移動操作の援助(支援)をする仕様のものとしても実施することができる。
【0017】
前記第一~第四支持ブラケット7~10は、それぞれに設けられる水平取付け位置用マークHを前記水平基準線Xに位置合わせした状態で対応する左右方向の取付け位置に取付け、そして該取付けられた各支持ブラケット7~10の支持片部7b~10bに吊りレール6をビス16を介して取付け支持をすることにより、該吊りレール6は水平姿勢での取付けができるようになっている(図10参照)。
【0018】
これに対し、第一支持ブラケット7を基準とし、第四支持ブラケット10側が高くなる自閉仕様になるよう吊りレール6を取付け支持する場合には、マークd、Dが相当する傾斜取付け位置用のものとなる。そしてこのものにおいて、前記円弧径が小径設定の吊りレール6を設ける場合には、第一支持ブラケット7の水平取付け位置用マークHを水平基準線Xに位置合わせすると共に、第二~第四支持ブラケット8~10の小径側の傾斜取付け位置用マークd2~d4を水平基準線Xに位置合わせした状態で、これら第一~第四支持ブラケット7~10を躯体側にそれぞれビス15を介して取付け、しかる後、該取付けられた第一~第四支持ブラケット7~10に吊りレール6を取付け支持することで、吊りレール6は、第一支持ブラケット7を基準とした自閉仕様でかつ小径円弧径に対応する傾斜姿勢での支持ができることになる。
これに対し大径円弧径での吊りレール6の取付けは、同様にして、第一支持ブラケット7の水平取付け位置用マークHを水平基準線Xに位置合わせすると共に、第二~第四支持ブラケット8~10については大径側の傾斜取付け位置用マークD2~D4を水平基準線Xに位置合わせした状態で、これら第一~第四支持ブラケット7~10を躯体側に取付けし、さらに吊りレール6を取付け支持することで、吊りレール6は、第一支持ブラケット7を基準とした自閉仕様でかつ大径円弧径に対応する傾斜姿勢での支持ができることになる。
【0019】
一方、第一支持ブラケット7を基準とし、第四支持ブラケット10側が低くなる自開仕様になるよう吊りレール6を取付け支持する場合には、小径用、大径用の傾斜取付け位置用マークu、Uが相当する傾斜取付け位置用のものとなり、そこで前記同様にして、第一支持ブラケット7の水平取付け位置用マークHを水平基準線Xに位置合わせすると共に、第二~第四支持ブラケット8~10の小径側、または大径側の傾斜取付け位置用マークu2~u4、またはU2~U4を水平基準線Xに位置合わせした状態で、これら第一~第四支持ブラケット7~10を躯体側にそれぞれ取付けし、しかる後、該取付けられた第一~第四支持ブラケット7~10に吊りレール6を取付け支持することで、吊りレール6は、第一支持ブラケット7を基準とした自開仕様でかつ円弧径に対応する傾斜姿勢での支持ができることになる。
【0020】
尚、前述したように吊りレール6を傾斜姿勢で取付ける場合に、本実施の形態では、支持ブラケット7~10の吊りレール取付け面Sが水平姿勢の状態になるよう躯体側に取付けているが、この状態で吊りレール6を取付けると、該吊りレール6は、支持ブラケット7~10部位では水平状態になり、隣接する支持ブラケット7~10間では傾斜状態になり、傾斜した状態での直線性が損なわれるが、吊りレール6の支持ブラケット7~10部位の長さは、吊りレール6の全長に対して僅かであること、戸体4の左右に設けられるハンガーローラ5が同時に支持ブラケット7~10部位の吊りレール6に位置することがないこと、自重移動している戸体4の慣性が働くこと等の理由により、吊りレール6が支持ブラケット7~10部位で水平状態になっていたとしても扉体4の自重を受けた自動の開閉移動(横移動)が途中で停止したり緩慢になったり(減速したり)する等の支障を来すことがない。
そしてこの場合、第三、第四支持ブラケット9、10については、マークが左右両側に設けられているため、該両側のマークを水平基準線Xに位置合わせした状態で取付けることで、吊りレール取付け面Sが正確に姿勢合わせされた水平姿勢での取付けが簡単にできることになり、作業性が向上する。
因みに、第一、第二支持ブラケット7、8についてはマークが一方側にのみ設けられたものであるため、このような効果は期待できないが、これら第一、第二支持ブラケット7、8にも左右にマークを設けたものとすれば、同様の効果を奏するものになる。
【0021】
しかしながら支持ブラケット7~10を水平状に取付けた場合、吊りレール6に傾斜部分と水平部分とが混在する状態となって見た目に違和感を生じるようなことが想定され、そこで、各支持ブラケット7~10をビス15を介して躯体側に取付ける場合、ビス孔7c~10c、7d~10dはビス15を遊嵌する状態(隙間を有する状態)で設定されていることから、図16に示すように、支持ブラケット7~10を、必要において吊りレール6の設計上の傾斜に合わせた傾斜状態や、ある程度(例えば違和感を感じない程度)傾斜した状態での取付けをすることも必要においてできる。
この場合、第三、第四ブラケット9、10は、左右両側にマークが設けられたものになっており、左右のマークを不作為に選択して水平基準線Xに位置合わせして第三、第四ブラケット9、10を取付けた場合、第三、第四ブラケット9、10については傾斜が不揃いになった取付けがなされる惧れがあり、そこで本実施の形態のマークは、戸先側(本実施の形態では第一支持ブラケット7側、図16において右側)のマークを水平基準線Xに位置合わせするようにして傾斜状に取付けることで、第三、第四ブラケット9、10については吊りレール6の傾斜角度に対応した取付けができるように設定されている。
【0022】
叙述の如く構成された本実施の形態において、トイレブース1において、円弧状の戸体4が横方向に開閉移動するため円弧状の吊りレール6を設けることになるが、このものにおいて、戸体4を自閉または自開仕様とするため吊りレール6を傾斜状に設ける必要がある場合、該吊りレール6は、左右方向(横方向)に間隔を存する状態で躯体側に設けられる第一~第四支持ブラケット7~10を介して傾斜状に取付けられることになるが、この場合に、前記第一~第四支持ブラケット7~10には、水平基準線Xに対して吊りレール6の左右方向の取付け位置に対応したレール高さになるよう各支持ブラケット7~10の上下方向の取付け位置の位置合わせするためのマークが位置合わせ手段として設けられており、このため各支持ブラケット7~10は、これらマークを水平基準線Xに位置合わせした状態で躯体側に取付けることで、傾斜状の基準線を描くことなく簡単に取付けることができる。
【0023】
そしてこの場合に、吊りレール6を傾斜状に取付けるためのマークとしては、吊りレール6を水平状に取付けるための水平取付け位置用のマークHと、吊りレール6を傾斜状に取付けるべく該吊りレール6の左右方向取付け位置に対応した傾斜取付け位置用のマークU、u、D、dとの二種類とした簡単な構成でできることになる。そしてこのよう構成することで、吊りレール6は、これらマークに基づいて、水平姿勢と傾斜姿勢との両取付けが、水平基準線Xを基準としてできることになる。
しかもこのものでは、傾斜取付け位置用のマークU、u、D、dは、支持ブラケット7~10の端縁部7g~10gに水平取付け位置用のマークHに対して上下方向に位置ずれした状態で同じように設けられているため、水平仕様、傾斜仕様の何れにおいても支持ブラケット7~10を躯体側に取付ける際の位置決め作業が容易になる。
【0024】
また本実施の形態では、出入り口Eの左右両側に設けられる出入り口側の第一、第二支持ブラケット7、8と、該出入り口よりも奥側のブース1内に設けられる第三、第四支持ブラケット9、10の四つあり、そのうちの基準となる第一支持ブラケット7については、水平取付け位置用マークHを水平基準線Xに対して位置合わせをし、残りの第二~第四支持ブラケット8~10は、傾斜取付け位置用マークU、u、D、dのうち対応するものを水平基準線Xに対して位置合わせをしてそれぞれ取付けた後、吊りレール6を、これら位置合わせされた第一~第四支持ブラケット7~10に取付け支持することで傾斜姿勢での取付けが、面倒な傾斜状基準線を描くことなく簡単にできることになって作業性が向上する。
そしてこのように構成することにより、基準となる第一支持ブラケット7については、水平取付け位置用マークHが傾斜取付け位置用マークに兼用されることになり、構造の簡略化を図れることになる。
【0025】
しかもこの場合に、引き戸式ドア装置としては、トイレブース1の室内の大きさに対応して戸体4の円弧径R、rが大小異なる仕様のものが設定され、これに伴い吊りレール6は、長さが長短二種類の仕様のものが設定されることになり、これに対応して支持ブラケット7~10に設けられる傾斜取付け位置用マークU、u、D、dは、これら長さの仕様に対応して自閉用、自開用のそれぞれ二種類が設けられており、この結果、吊りレール6としては、同じ支持ブラケット7~10を用いながら、長さが異なった仕様においても傾斜角度θを一定にした取付けができることになって戸体4が自重移動する場合の移動速度に緩急変化が来さないようにすることが簡単に対応できることになる。勿論、長さの仕様が三種類以上ある場合には、これに対応した種類のマークをそれぞれ設けることができる。
【0026】
尚、本発明は、前記実施の形態のものに限定されないことは言うまでもないが、前記実施の形態のものは、図面において戸体4が左開き(戸体6を左方向に移動させることにより開く)のものについて説明をしたが、逆に右開きのものとする場合には、第二支持ブラケット8が最も戸先側の支持ブラケットとなる。そこでこの場合には、第二支持ブラケット8の水平取付け位置用マークHを水平基準線Xに位置合わせすると共に、自閉仕様とする場合には残りの第一、第三、第四支持ブラケット7、9、10の各傾斜取付け位置用のマークd1、d3、d4(あるいはD1、D3、D4)を水平基準線Xに位置合わせをした状態で取付け、また自開仕様とする場合には残りの第一、第三、第四支持ブラケット7、9、10の各傾斜取付け位置用のマークu1、u3、u4(あるいはU1、U3、U4)を水平基準線Xに位置合わせをした状態で取付け、この状態でさらに各支持ブラケット7~10に吊りレール6を取付け支持をすればよいことになる。
【0027】
また本発明としては、基準となる支持ブラケットを最も戸先側の第一支持ブラケット7(または第二支持ブラケット8)として残りの支持ブラケット8(または7)~10を傾斜状態に位置合わせして取付ける構成にしたが、最も戸尻側である第四支持ブラケット10を基準として残りの支持ブラケット7~9を傾斜状態に位置合わせして取付ける構成にすることもでき、さらには基準となる支持ブラケットを、最も戸先側、戸尻側のものではなく、中間の支持ブラケット、例えば第二支持ブラケット8を基準とし(第三ブラケット9を基準とする場合もある。)、戸先側の第一支持ブラケット7を高くし、戸尻側の第三、第四支持ブラケット9、10を低くなる傾斜姿勢(またはその逆の傾斜姿勢)となるようマークを施したものとしても実施できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、特にトイレブースの出入り口を自開または自閉で開閉するために設けられる円弧傾斜状の引き戸式ドア装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 トイレブース
4 戸体
6 吊りレール
7 第一支持ブラケット
8 第二支持ブラケット
9 第三支持ブラケット
10 第四支持ブラケット
E 出入り口
X 水平基準線
H 水平取付け位置用マーク
d 小径傾斜取付け位置用マーク
D 大径傾斜取付け位置用マーク
u 小径傾斜取付け位置用マーク
U 大径傾斜取付け位置用マーク
R、r 吊りレールの半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17