(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】電動操作装置
(51)【国際特許分類】
H01H 31/02 20060101AFI20230317BHJP
H01H 31/32 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01H31/02 E
H01H31/32 B
(21)【出願番号】P 2019114887
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】平野 智宏
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-48836(JP,U)
【文献】特開2003-261281(JP,A)
【文献】特開昭62-37490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 31/02
H01H 31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断路器または断路器用接地装置に用いられる電動操作装置であって、
駆動源としてマグネットモータを用い、
前記マグネットモータの電機子に通電するための通電回路と、
前記電機子の両端を導通して閉回路を構成するための導通回路と、
前記通電回路を開閉するための通電用接点と、
前記導通回路を開閉するための導通用接点と、
前記通電用接点並びに前記導通用接点の開閉を制御する制御手段と、
を備え、
前記導通用接点と抵抗は直列に配置され、
前記制御手段は、駆動開始に伴い前記通電用接点を閉じる処理を行う機能と、駆動終了前の制動が必要な期間で前記導通用接点を閉じる処理を行う機能を備え、
前記抵抗の抵抗値は、前記導通回路が閉回路を構成した状態で前記電機子の回転に伴い発生する発電制動の制動力が、手動操作に伴う遅い回転の場合には手動で回転可能となり、前記手動操作ではない速い回転の場合には当該速い回転を抑制するものであ
り、
前記断路器用接地装置は、ブレードが昇降するものであり、
手動操作により上方位置にある前記ブレードが、自重による落下移動した場合の前記電機子が前記速い回転をした場合に、当該速い回転を抑制するダンパー効果を発揮するようにしたことを特徴とする電動操作装置。
【請求項2】
前記抵抗は、複数の抵抗素子を並列接続して構成することを特徴とする請求項1に記載の電動操作装置。
【請求項3】
前記通電用接点は常開接点で、前記導通用接点は常閉接点であることを特徴とする請求項1または2に記載の電動操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動操作装置に関するもので、例えば断路器接点の開閉や断路器用接地装置の開閉等の駆動源として使用される装置に関する。
【背景技術】
【0002】
断路器は、回路が無負荷状態で開閉されることから瞬時に動作する遮断器等と相違して比較的ゆっくりと開閉することができる。同様に、接地装置の投入/開放動作も比較的ゆっくりと行われる。接点の開閉や接地装置のブレードを動作させて投入/開放動作をするための主軸の回転動作を行うための駆動源として、直流のマグネットモータを用いるものがある。さらに、この種の電動操作装置は、動作の特徴として動作終了時の機器への衝撃を緩和するため、動作完了手前で適切なタイミングでブレーキをかける機能と、モータによる駆動停止後に手動で簡単に操作ができる手動操作機能を備える必要がある。
【0003】
図1は、係るマグネットモータ1を駆動源とする電動操作装置の回路構成の一例を示している。同図に示すように、駆動源のマグネットモータ1の電機子1aに通電するための通電回路(第二接点C2により開閉する正回転用,第六接点C6,第七接点C7により開閉する逆回転用)と、電機子の両端を短絡して閉回路を構成するための短絡回路2(第四接点C4,第五接点C5,第八接点C8により開閉)と、各接点の開閉を制御する制御回路3を備える。
【0004】
これにより、例えば短絡回路2を開いた状態で通電回路に通電することで、マグネットモータ1の回転子を回転させ、その回転力を当該主軸に伝え、断路器または断路器用接地装置の接点を開閉したり、接地装置のブレードを動作させたりする。そして、マグネットモータ1は、界磁側が永久磁石のため常に磁力が発生している。そこで電機子が回転している際に短絡回路2を閉じると発電制動を生じ、その制動力を利用して電機子の回転にブレーキをかけ、電機子の回転数を減速し、動作終了時の機器への衝撃を緩和する。
【0005】
係る制御の一例を示すと、制御回路は、正転駆動開始に伴い第二接点C2,第八接点C8を閉じ第四接点C4を開き、駆動終了前の制動が必要な期間で第二接点C2を開き、第四接点C4,第八接点C8を閉じる。すなわち、補助リレー3bは、投入用電磁接触器3cを介して主回路3aに接続されている。投入用電磁接触器3cは、常開接点であり、主回路3aからの制御信号S6がONになると、接点が閉じて補助リレー3bが通電される。この通電により、補助リレー3bから出力される第五信号S5は、OFFからONになり、第八接点C8を閉じる。
【0006】
一方、そのままの状態では、電動操作による動作終了後に、操作ハンドルを操作して主軸を回転させる手動動作を行おうとすると、電機子が回転し、それに伴い短絡回路2により発電制動による制動力が生じてしまい、回転させるために大きな力が必要となり、スムーズな手動操作ができなくなる。そこで、特許文献1に開示された装置では、制御回路は、駆動終了後に補助リレー3bの接点である第八接点C8を開く制御を行う。すなわち、投入用電磁接触器3cが閉じ、補助リレー3bが通電されて第五信号S5がONとなり、第八接点C8が閉じている状態において、制御信号S6がOFFとなると、投入用電磁接触器3cが開き、補助リレー3bへの通電がなくなる。これにより、補助リレー3bが有する電磁接触器コイルに印加されるコイル電圧もOFFとなり、第五信号S5もOFFになる。よって、第八接点C8が開く。
【0007】
さらに第八接点C8の開閉を行う第五信号S5を出力する補助リレー3bに並列に抵抗3dを接続する。この抵抗3dを設けることで、ブレーキの継続時間を伸ばすようにしている。すなわち、補助リレー3bへの通電がなくなりコイル電圧がOFFとなってから、実際に第五信号S5がOFFになって第八接点C8がONからOFFに遷移するのに一定時間遅れが生じる。そして補助リレー3bに対し、抵抗3dを並列に接続しているため、投入用電磁接触器3cが開くと、補助リレー3bの電磁接触器コイルと抵抗3dとによる閉ループが形成され、補助リレー3bの電磁接触器コイルが切れる時に発生する逆起電力によりコイル通電時間が延び、それにより、コイル電圧がOFFとなってから実際に第五信号S5がOFFになって第八接点C8が開くまでの時間を、抵抗3dを設けない場合に比べて長くすることができる。
【0008】
これにより、短絡回路2は開き、電機子が回転しても発電制動回路は構成されず、手動操作が可能となる。すなわち、作業員が図示省略する手動ハンドルを操作して主軸を回転させると、それに連係する電機子も回転する。しかし、短絡回路2が開放しているので発電制動も生じず、小さい力で回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来のマグネットモータを用いた電動操作装置は、電動操作時に短絡回路2による発電制動でブレーキをかけた後、手動動作を可能にするため駆動源とするため、短絡回路2を開放するための補助リレーを設けなければならない。すなわち、制御回路内には補助リレー3bと抵抗3d設け、短絡回路2には他の接点に対して直列に第八接点C8を設ける。そのため、複雑な回路が必要となり、配線処理も煩雑となる。さらに部品点数の増加に伴うコスト高となる。さらに、制御回路は、補助リレーに対して適宜のタイミングで指令を発するため制御も煩雑となる。
【0011】
また、接地装置は、ブレードが下端を回転中心に垂直平面内で正逆回転したり、ボックス内に収納されたブレードが昇降したりするものがある。ブレードが昇降移動するタイプのものは、通常時はブレードがボックス内に収納され、接地する際にブレードが上昇する。手動操作時におけるブレードを昇降・伸縮させる場合、操作ハンドルを回しながら行うが、ブレードは重量があり、例えばブレードを上昇させるべくハンドル操作中に誤って手が操作ハンドルから外れると、ブレードの自重で急激に下降移動し、それに伴い操作ハンドルも逆回転してしまうおそれがあり危険である。そこで、係る急激な下降移動を抑止するため、従来は、例えばブレードを昇降させるための動力伝達系統の所定位置にウォームギヤを設け、操作ハンドルから手を離しても逆回転しないようにしている。このように複雑な歯車構造が必要となり、装置が大型化し、コスト高を招くという課題もある。
【0012】
上述した課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、本発明は、必ずしも記載した課題の全てを解決できる必要はなく、少なくとも一つの課題が解決できれば良い。またこの課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)断路器または断路器用接地装置に用いられる電動操作装置であって、駆動源としてマグネットモータを用い、前記マグネットモータの電機子に通電するための通電回路と、前記電機子の両端を導通して閉回路を構成するための導通回路と、前記通電回路を開閉するための通電用接点と、前記導通回路を開閉するための導通用接点と、前記通電用接点並びに前記導通用接点の開閉を制御する制御手段と、を備え、前記導通用接点と抵抗は直列に配置され、前記制御手段は、動作開始に伴い前記通電用接点を閉じる処理を行う機能と、動作終了前の制動が必要な期間で前記導通用接点を閉じる処理を行う機能を備え、前記抵抗の抵抗値は、前記導通回路が閉回路を構成した状態で前記電機子の回転に伴い発生する発電制動の制動力が、手動操作に伴う遅い回転の場合には手動で回転可能となり、前記手動操作ではない速い回転の場合には当該速い回転を抑制するものであり、前記断路器用接地装置は、ブレードが昇降するものであり、手動操作により上方位置にある前記ブレードが、自重による落下移動した場合の前記電機子が前記速い回転をした場合に、当該速い回転を抑制するダンパー効果を発揮するようにした。
このようにすることで、手動操作中に発生する発電制動による制動力は、小さく手動操作が可能となる。一方、例えば電動操作中の電機子の回転数は手動操作に比べて速いため、発電制動による制動力は大きい。よって、電動操作の動作終了時の機器への衝撃を緩和するため、動作完了手前で大きい制動力によりブレーキをかけることができる。そして、駆動源としてマグネットモータを用いることで安価・小形で安定供給可能となる。
(2)前記抵抗は、複数の抵抗素子を並列接続して構成するとよい。このようにすると、例えば1つの抵抗素子が損傷等してオープンになっても、所望の制動力を発揮することができる。
(3)前記通電用接点は常開接点で、前記導通用接点は常閉接点とするとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、駆動源としてマグネットモータを用いつつ、動作終了前の制動機能並びに動作終了後の手動操作機能を発揮することができる。また、制動装置を装備する必要なく、ダンパー効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の電動操作装置における回路構成の一部を示す図である。
【
図2】本発明に係る電動操作装置が実装される断路器の一例を示す図である。
【
図3】本発明に係る電動操作装置の好適な一実施形態を示す正面図である。
【
図5】本実施形態の電動操作装置における回路構成の一部を示す図である。
【
図6】本発明に係る電動操作装置が実装される別の断路器用接地装置の一例を示す図である。
【
図7】本発明に係る電動操作装置が実装される別の断路器の一例を示す図である。
【
図8】駆動モータの主軸と手動軸を示す一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
図2は、本発明の好適な一実施形態である電動操作装置が実装される超高圧変電所に設置される断路器10の一例を示している。断路器10の導電部は、地上に設置された架台11の上に起立された碍子装置12の頂上に設置される。碍子装置12は、複数本の碍子12aを直列に連結して形成される3本の脚部を塔のように組み付けて構成される。
【0018】
この碍子装置12の頂上に設置される断路器10の導電部は、その頂点で回転するヒンジ部13と、ヒンジ部13に連結された水平方向に延びるバット側ブレード14と、そのバット側ブレード14の先端に取り付けられた上下に延びる円柱状の主接触部(バット)15,シールドリング16を備える。これらバット側ブレード14,主接触部15及びシールドリング16は、ヒンジ部13の回転に伴い一体となって回転する。ヒンジ部13は、コンプレッサー,駆動モータ等の駆動源からの力を受けて正逆回転する。
【0019】
図2では、一相分の系統の上流側或いは下流側の一方のみ示しており、図示する断路器の構成が反対側にも配置されて1相分が形成される。さらにそれらが3相分設置される。なお、対を構成する相手側の主接触部は二股状となり、その二股状の主接触部(フィンガ)内に棒状の主接触部15が入り込んで両者が導通する。そして、ヒンジ部13が正逆回転することにより、対となる主接触部15同士が接続されて断路器の接点が入り状態となったり、離反して切り状態になったりする。この断路器の導電部の部分の基本構成は、従来と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0020】
断路器10に併設して接地装置20が配置される。この接地装置20は、切り状態となった断路器10のヒンジ部13・ブレード14・主接触部15及び端子台に接続された架線を接地するものである。つまり、切り状態となったヒンジ部13・ブレード14・主接触部15及び端子台に接続された架線は、空中に浮いた状態となっている。そこで、接地装置20にて接地することで回路的に安定させる。なお、実際には主接触部15に直接触するのではなく、ヒンジ部13にある端子台等に導通させるようにしている。
【0021】
接地装置20は、断路器10のヒンジ部13側に取り付けられた固定接触部23と、その固定接触部23に接触・離反する金属製(導電性)のブレードと、そのブレードを移動させる電動操作装置等を備えている。ブレードは、下端を回転中心として90度の角度範囲(起立姿勢と倒れた姿勢をとる)内で回転する起伏ブレード21と、その起伏ブレード21の上端に接続され軸方向に伸縮する伸縮ブレード22を備える。起伏ブレード21は、図示省略するリード線等により地面に直接或いは接地導体に接続されてアースがとられる。図示するように、起伏ブレード21が起立するとともに、伸縮ブレード22が延びた状態では、伸縮ブレード22の先端が固定接触部23と接続して導通する。よって、固定接触部23は、ヒンジ部13ひいては断路器10の主接触部15に導通しているため、主接触部15は伸縮ブレード22,起伏ブレード21を介して接地される。一方、図中2点鎖線で示すように、伸縮ブレード22が収縮するとともに起伏ブレード21が転倒した状態では、伸縮ブレード22の先端と固定接触部23とが離反する。よって、断路器10の接地状態が解除される。
【0022】
本発明が対象とする電動操作装置26は、起伏ブレード21を垂直平面内で回転(起伏)させるものである。すなわち、電動操作装置26の出力である操作軸26aに連結ロッド25を連結し、その連結ロッド25の上端にリンク機構24を連結し、そのリンク機構24を介して起伏ブレード21に電動操作装置26の出力を伝達する。これにより、起伏ブレード21が下端を回転中心として正逆回転する。なお、伸縮ブレード22の伸縮動作も別途設けた伸縮用モータ27の動力により行う。なおまた係るブレード(起伏ブレード21,伸縮ブレード22)の動作は後述する。
【0023】
図3は、電動操作装置26の一実施形態を示している。この電動操作装置26は、矩形状の機構箱30の前面が開放され、その前面に正面扉31が取り付けられる。機構箱30の前面のみが開放されるため、リレー類を実装した電装品パネル32や、端子台33などは、機構箱30の内部の前方側に配置する。電装品パネル32は、主要リレー類を単一パネルに集約して構成している。よって、部品交換が容易になる。本実施形態では、このように一面のみが開放する構造としているので、当該前面側に保守管理する際の作業空間が確保されればよい。
【0024】
また、機構箱30の所定位置には、駆動モータユニット35を配置する。この駆動モータユニット35は、駆動モータ36と、減速機部37とが一体となって1つのケース内に収納された構成を採る。
【0025】
機構箱30の天面所定位置に、操作軸26aが外部に突出状態で配置される。駆動モータユニット35の動力を操作軸26aに直接伝達し、操作軸26aは190度回転の往復水平回転を行う。また、操作軸26aは、190度回転すると、ロック機構38により回転角が規制され、その位置を保持する。また、図示省略する手動ハンドルを操作軸26aに連結し、手動ハンドルを操作軸26aを中心に回転させることで、当該操作軸26aを所定角度範囲内で正逆回転させることができる。これらの構成は、基本的に従来のものと同様の構成を採ることができる。
【0026】
駆動モータ36は、マグネットモータで構成している。つまり、界磁を構成する永久磁石から発する磁界が、電機子36aに対して常時かかるようになる。そして、電動操作装置は、動作終了時の機器への衝撃を緩和するため、動作完了手前でブレーキをかける機能と、手動で簡単に操作ができる手動操作機能を備える必要がある。係る2つの機能を実現するための回路を以下のようにしている。
【0027】
図5は、マグネットモータを用いた駆動モータ36を駆動源として使用する電動操作装置における回路の一部を示している。
図5に示すように、駆動モータ36の電機子36aの両端にそれぞれ直列接続された第一接点C1,第二接点C2を介して電源ラインに接続される。この第二接点C2を経由して電機子36aに通電するための回路が正回転用回路となる。なお、本実施形態の駆動モータ36は、マグネットモータであるため、界磁のための磁力発生源は永久磁石であり、この回路図上には記載されない。
【0028】
一方、駆動モータ36の電機子36aの一方の端子と、電機子36aの他方の端子側に接続された第一接点C1と第二接点C2の間を、第六接点C6を介して接続する。また電機子36aの他方の端子と、電機子36aの一方の端子側に接続された第一接点C1と第二接点C2の間を、第七接点C7を介して接続する。これら第六接点C6.第七接点C7を経由して電機子36aに通電するための回路が逆回転用回路となる。
【0029】
また、電機子36aの両端を導通させる導通回路40を備えている。この導通回路40には、第四接点C4と、第五接点C5と、抵抗器40aが直列に配置される。よって、第四接点C4と第五接点C5のすべてが閉じた場合、電機子36aの両端子間が外部回路である導通回路40を介して閉じた閉回路となり、少なくとも一方の接点が開くと電機子36aの両端子間は非導通となる。
【0030】
これら各接点は、例えば電磁接触器を用いて構成する。そしてこれら各接点の開閉制御は、制御回路41からの制御信号に基づいて行われる。すなわち、制御回路41は、例えば電磁接触器動作のタイミング差を利用したリレー回路から構成し、第一信号S1,第二信号S2,第四信号S4の3つの信号から出力され、各信号が適宜のタイミングでON/OFFする。そして、第一信号S1は第一接点C1の開閉を制御し、第二信号は第二接点C2と第四接点C4を制御し、第四信号S4は第五接点C5と第六接点C6と第七接点C7の開閉を制御する。
図5は、各信号がOFFの時の各接点の状態を示している。すなわち、例えば第四接点C4,第五接点C5は信号がON時に接点が開く常閉接点となり、他の接点はOFF時に接点が開く常開接点となる。そして、信号がONになった場合、対応する接点の開閉状態は反転する。そして、制御回路41から出力される制御信号の出力タイミングは、以下の通りである。
【0031】
制御回路41は、図示省略の動作スイッチボタンの押下や遠方にある制御盤からの指令等により正回転の動作指令を受けると、第一信号S1をONにして第一接点C1を閉じ、第二信号S2をONにして第二接点C2を閉じる。また、第二信号S2のONに伴い、第四接点C4は開く。これにより短絡回路4はオープンとなる。またこの状態では第四信号S4はOFFのままとなり、第六接点C6,第七接点C7は開く。これに伴い、電機子36aの両端子間は短絡されず、正回転用回路により電機子36aが通電し、永久磁石による界磁は常時働いているため駆動モータ36が動作開始する。
【0032】
制御回路41は、動作開始から一定時間経過後、第二信号S2をOFFにする。これに伴い、第二接点C2が開いて電機子36aへの通電が遮断されるとともに第四接点C4が閉じる。これにより、導通回路40により電機子36aの両端子間が導通する。電機子36aは導通回路40を介して閉回路が構成される。そして、永久磁石から発生する電磁力は常時働いているため、電機子36aの回転により発電制動が発生しブレーキがかかる。これにより、駆動モータ36の回転数が減速し、動作終了時の機器への衝撃を緩和する。
【0033】
一方、制御回路41は、図示省略の動作スイッチボタンの押下等により逆回転の動作指令を受けると、第一信号S1をONにし、第四信号S4をONにし、第二信号S2はOFFのままとする。第四信号S4のONに従い、第六接点C6,第七接点C7が閉じ、逆回転用回路により電機子36aが正回転時とは逆方向に通電し、駆動モータ36が逆回転動作を開始する。なお、その他の制御動作については、上述した正回転時のものと同じである。
【0034】
本実施形態では、回転動作終了後の停止中であっても、導通回路40が閉じているため、例えば回転が停止した後の適宜のタイミングで手動操作を行おうとして、作業員が図示省略する手動ハンドルを操作し、起伏ブレードを昇降させ、それに伴い電機子36aが回転すると、回転速度に応じて発電制動が発生する。
【0035】
ここで本実施形態では、従来の短絡回路に換えて第四接点C4,第五接点C5及び抵抗器40aの直列回路からなる導通回路40としたため、抵抗器40aの抵抗値を適宜に設定することで、導通回路に流れる電流値を調整できるため、界磁側の磁力の影響を調整でき、発電制動が生じても手動操作ができる程度に抑えることができる。換言すると、抵抗器40aの抵抗値は、電動操作時では終わり付近で適度な制動がかかり動作完了し、手動操作に伴う電機子36aの回転により発生する制動力が手動で回転可能な程度に抑える値とするとよい。係る抵抗値は、短絡回路を構成する非常に小さい抵抗値(例えば数オーム程度)ではなく、電機子のコイル抵抗と同等から5倍程度とするとよく、より好ましくは10倍から20倍の範囲内を目安として設定するとよい。
【0036】
また、導通回路40が導通状態の時に電機子36aの回転により発生する発電制動の制動力は、電機子36aの回転速度に応じても変化する。従って、手動操作で操作ハンドルをゆっくりと回転させると、発電制動により発生する制動力も小さく、係る点に鑑みても導通回路40を導通させた状態において手動操作が可能となる。
【0037】
上述したように、本実施形態によれば、電動操作装置は、電動操作の動作に伴い導通回路40が導通した状態においても、手動操作が可能となる。そして、
図1に示す従来の電動操作装置と比較し、手動操作のために必要不可欠であった補助リレー3b、投入用電磁接触器3c、抵抗3d等の回路が不要となり、省スペース化、配線の簡素化及びコストダウンが可能となる。さらにそれらの回路の削除にともない短絡回路に設けた第八接点を開閉するための処理ステップも不要となり、制御が簡易化する。
【0038】
なお、制御回路41は、故障発生・異常時等に第一信号S1をOFFにする。これにより、第一接点C1が開き、駆動モータ36への通電が強制的に遮断され、緊急停止を行うことができる。
【0039】
さらに上述したように、本実施形態の制御回路41は、電磁接触器動作のタイミング差を利用したリレー回路で形成している。そして、
図5に示すように、制御回路41は、第一信号S1,第二信号S2並びに第四信号S4を出力する機能を備える。当該制御回路41の具体的なリレー回路の構成を省力しているが、この制御回路41は、
図1に示す従来の主回路3aが出力する制御信号と同じであり、各信号を同じタイミングで出力すればよいので、係る主回路3aと同様のものを適用できる。このようにすると、制御回路41は、従来のシーケンスを利用することができ、その動作は保証される。
【0040】
図6,
図7は、断路器並びにそれに実装される接地装置の別のタイプの実施形態を示している。この実施形態では、断路器10は、片側が架台11の上に垂直に起立した1本の碍子装置12(図では、碍子装置12の片側のみ示し、他方の図示は省略している)を備え、その碍子装置12の頂上に導電部が配置される。
【0041】
また、接地装置20は、通常時はボックス50内に収納されたブレード51が、電動操作装置26の駆動を受けて上昇し、そのブレード51の上端が導電部に電気的に連係される接地用接触部52に接触すると、導電部がブレード51を介して接地されるように構成する(
図7参照)。また、係る接地した状態で電動操作装置26が反転駆動すると、ブレード51が下降してブレード51の上端が接地用端子52から離反し、ボックス50内に収納される。
【0042】
係るタイプに実装される電動操作装置26も、上述した実施形態と同様に駆動源としてマグネットモータを用い、電機子36a間をつなぐように直列接続した第四接点C4,第五接点C5及び抵抗器40aを導通回路40等を備え、電動操作機能と手動操作機能を備える。そして手動操作機能を用いてブレード51を昇降・伸縮させる場合、操作ハンドルを回しながら行うが、ブレード51は重量があり、例えばブレード51を上昇させるべくハンドル操作中に誤って手が操作ハンドルから外れると、ブレード51の自重で急激に下降移動しようとする。すると、電機子36aの回転数が急速に増加し、発電制動により発生する制動力も急激に増加する。係る大きな制動力により電機子36aの回転が抑制され、ブレード51の落下速度を鈍らせ、操作ハンドルの急な逆回転も抑止するといったダンパー効果を発揮する。
【0043】
このように導通回路40に設ける抵抗器40aの抵抗値は、上述したように正規・通常の手動操作のようにゆっくりと電機子36aが回転したときには手動で回すことができる程度の制動力が発揮し、大きな速度で電機子36aが回転した場合には高速回転がしないように大きな制動がかかるような抵抗値にするとよく、これらの条件を満たすのが、上述した実施形態のものである。
【0044】
さらに電動操作装置26は、手動操作時においても所定の制動力が発生し、その発生する制動力の大きさは電機子の回転に応じたものとなることを利用し、ゆっくりと回すことで手動操作を可能にしつつ、外部要因に伴う急激な回転を抑止し、ダンパー効果を発揮させることできるようにした。
【0045】
係る構成を採ることで、従来のようにウォームギヤを設ける必要がなくなり、例えば
図8に示すように、駆動モータ36の主軸36bに対し、手動軸55を単純なギヤ56を介して接続する構成を採ることで、例えば手動軸に連携する図示省略する操作ハンドルの回転操作に伴い手動軸55が回転し、それを受けて主軸36bを回転させることができる。よって、係る点にておいても構成が簡略化され、装置の小型化を図ることができる。
【0046】
さらに上述した実施形態に用いる抵抗器40aは、好ましくは複数の抵抗素子を並列接続して構成するとよく、複数本の数は多いとよい。例えば、単独の抵抗素子を用いると、当該抵抗素子が切れて回路が開放状態になると、制動力が発生せず、電動操作時のスムーズな停止や、手動操作時のダンパー効果が発揮しなくなる。そこで、複数の抵抗素子を並列接続の構成にすることで、1つが破損等しても所望の制動力が発揮するようにすると良い。
【0047】
また、そのように複数の抵抗素子を並列に接続した場合、一部の抵抗素子が破損等してオープンになると、抵抗器40aの抵抗値は増加する。そして、複数の抵抗素子が同時に損傷する可能性は極めて少ないので、例えばすべての抵抗素子が正常な場合の抵抗器40aの抵抗値と、1つが損傷した場合の抵抗値の何れの場合が、例えば上述した実施形態の抵抗値の範囲内に収まり、電動操作時と手動操作時の何れも適切な制動力を発揮するようにすると良い。
【0048】
また、仮に1つの抵抗素子が破損等した場合に、上記の適切な範囲を外れたとしても、導通回路40が開放されなければある程度の制動力が発揮するため、必ずしも上述したように正規と破損した等した何れの場合も抵抗器40aの抵抗値が所望の範囲内に収まる設定にしなくてもよいが、両方とも収まる設定とするとより好ましい。
【0049】
[変形例]
上述した実施形態では、制御回路41はリレー回路により構成したが、本発明はこれに限ることはなく、例えば制御回路41をCPUを用いたアプリケーションプログラムを用いて構成してもよいし、一部または全部を各種タイマーにより制御するようにしてもよく、各種の構成により実現するとよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、導通回路40に第四接点C4,第五接点C5,抵抗器40aを直列に配置した。これは、従来の電動操作装置の構成から変更点を少なくし、既設の装置の交換を行いやすく、動作の信頼性も得るようにしたためである。一方、新規に設置する場合、導通回路40に必ずしも各接点を直列に配置する必要は無く、例えば、動作開始に伴い接点を開いて導通回路を開放し、動作終了前の制動が必要な期間で接点を閉じて導通回路で閉回路を構成するように制御するとよい。
【0051】
[その他の利用]
上述した実施形態では、接地装置の電動操作装置26に適用する例を示したが、本発明はこれに限ることはなく、断路器の開閉動作用の駆動源にも用いても良い。接地装置の動作と断路器接点の動作方式は異なるが、電動操作装置の動作は同じである。また、設置場所も、実施形態に示す超高圧変電所に限ることはなく、それ以下の電圧階級の変電所や、開閉所など各種の場所に設置してよく、直流電源がある場所であれば適用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 :断路器
20 :接地装置
21 :起伏ブレード
22 :伸縮ブレード
23 :固定接触部
26 :電動操作装置
26a :操作軸
36 :駆動モータ
36a :電機子
40 :導通回路
40a :抵抗器
41 :制御回路
50 :ボックス
51 :ブレード
52 :接地用接触部