(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】リーンLNGの処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C10L 3/10 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
C10L3/10
(21)【出願番号】P 2019155116
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 大生
(72)【発明者】
【氏名】山森 康之
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-19244(JP,A)
【文献】特表2008-511734(JP,A)
【文献】特開2002-115564(JP,A)
【文献】特表2018-538506(JP,A)
【文献】特開2018-013326(JP,A)
【文献】特表2019-516912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 3/00-12
F25J 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタン及びエタンが富化されたリーンLNGから、製品ガスと、大気圧付近の圧力P1を有する製品LNGとを得る、リーンLNGの処理方法であって、
a)前記リーンLNGを分岐して、製品ガス用リーンLNGと製品LNG用リーンLNGとを得る工程;
b)前記製品LNG用リーンLNGを、冷媒を用いる冷却器において冷却する工程;
c)工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNGに由来する液体流を分岐して、前記冷媒として使用される冷媒LNGと、その残部である残LNGとを得る工程;
d)前記残LNGに対して、減圧及び気液分離を施して、圧力P1の気相流と、製品LNGとしての圧力P1の液相流とを得る工程;
e)前記冷媒LNGを減圧する工程;
f)工程eからの流れを、前記冷却器の冷媒として用いる工程;
g)工程fの前又は後に、工程eからの流れに、圧力P1の前記気相流を合流させる工程;
h)工程f及び工程gを経た流れに対して、昇圧及び前記製品ガス用リーンLNGとの熱交換による冷却を施して、工程f及び工程gを経た流れを液化させる工程;
i)工程hの熱交換に用いる前の前記製品ガス用リーンLNGを昇圧する工程;
j)工程h及び工程iを経た後の前記製品ガス用リーンLNGを気化させて、前記製品ガスを得る工程;
k)工程hで液化した流れを、工程aで得られた前記製品LNG用リーンLNGに合流させる工程
を含むリーンLNGの処理方法。
【請求項2】
工程gにおいて、工程fの前に、工程eからの流れに、工程dで得た圧力P1の前記気相流を合流させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程hにおいて、前記昇圧を第1の圧縮機を用いて、その後第2の圧縮機を用いて行い、前記製品ガス用リーンLNGの冷熱を利用して、前記第2の圧縮機の吐出流体を冷却し、その後前記第1の圧縮機の吐出流体を冷却する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程hにおいて、前記昇圧を第1の圧縮機によって、その後第2の圧縮機によって行い、前記第1の圧縮機の吐出流体及び前記第2の圧縮機の吐出流体の少なくとも一方を、水冷式または空冷式の熱交換器を用いて冷却する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程cにおいて、工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNGの全量を分岐して、前記冷媒LNGと前記残LNGとを得る、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程cにおいて、工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNGに対して、減圧及び気液分離を施して、前記圧力P1より高い圧力P2の気相流と液相流とを得、
圧力P2の前記液相流を冷却した後に分岐して、前記冷媒LNGと前記残LNGとを得る、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程hにおいて、前記昇圧を第1の圧縮機によって、その後第2の圧縮機によって行い、前記製品ガス用リーンLNGの冷熱を利用して、前記第2の圧縮機の吐出流体を冷却し、その後前記第1の圧縮機の吐出流体を冷却し、
圧力P2の前記気相流を、前記第1の圧縮機の吐出流体に、合流させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
圧力P2の前記気相流を、工程bにおける製品LNG用リーンLNGの冷却のための冷媒として用いる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程hにおいて、前記昇圧を第1の圧縮機によって、その後第2の圧縮機によって行い、前記製品ガス用リーンLNGの冷熱を利用して、前記第2の圧縮機の吐出流体を冷却し、その後前記第1の圧縮機の吐出流体を冷却し、
外部冷媒を使用して前記第2の圧縮機の吐出流体の冷却を行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタン及びエタンが富化されたリーンLNGから、製品ガスと、大気圧付近の圧力P1を有する製品LNGとを得る、リーンLNGの処理装置であって、
前記リーンLNGを分岐して、製品ガス用リーンLNGと製品LNG用リーンLNGとを得る第1の分岐手段;
前記製品LNG用リーンLNGを、冷媒を用いて冷却する冷却器;
前記冷却器により冷却された製品LNG用リーンLNGに由来する液体流を分岐して、前記冷媒として使用される冷媒LNGと、その残部である残LNGとを得る第2の分岐手段;
前記残LNGに対して、減圧及び気液分離を施して、圧力P1の気相流と、製品LNGとしての圧力P1の液相流とを得るための、減圧及び気液分離手段;
前記冷媒LNGを減圧する冷媒LNG用減圧器;
前記冷媒LNG用減圧器からの流れを、前記冷媒として前記冷却器に導くライン;
前記冷媒LNG用減圧器からの流れの流れ方向を基準として前記冷却器より上流又は下流で、冷媒LNG用減圧器からの流れに、圧力P1の前記気相流を合流させる第1の合流手段;
前記冷媒LNG用減圧器からの流れの流れ方向を基準として前記冷却器及び前記第1の合流手段のうちの下流側にある一方から得られた流れに対して、昇圧及び前記製品ガス用リーンLNGの冷熱との熱交換による冷却を施して、前記下流側の一方から得られた流れを液化させるための圧縮機及び熱交換器;
前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記熱交換器より上流で前記製品ガス用リーンLNGを昇圧するポンプ;及び
前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記熱交換器より下流かつ前記ポンプより下流の前記製品ガス用リーンLNGを気化させて、前記製品ガスを得る蒸発器;
前記圧縮機及び熱交換器によって液化した流れを、前記第1の分岐手段で得られた前記製品LNG用リーンLNGに合流させる第2の合流手段
を含むリーンLNGの処理装置。
【請求項11】
前記第1の合流手段が、前記冷媒LNG用減圧器からの流れの流れ方向を基準として前記冷却器より上流で、前記冷媒LNG用減圧器からの流れに圧力P1の前記気相流を合流させるよう配された、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記圧縮機が、第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機で圧縮される流れの方向を基準として前記第1の圧縮機の下流に配された第2の圧縮機を含み、
前記熱交換器が、前記第1の圧縮機の吐出流体を冷却する第1の熱交換器と、前記第2の圧縮機の吐出流体を冷却する第2の熱交換器と、を含み、
前記第2の熱交換器が、前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記第1の熱交換器よりも上流に配された、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記圧縮機が、第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機で圧縮される流れの方向を基準として前記第1の圧縮機の下流に配された第2の圧縮機を含み、
前記第1の圧縮機の吐出流体及び前記第2の圧縮機の吐出流体の少なくとも一方を冷却する水冷式または空冷式の熱交換器を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記冷却器により冷却された製品LNG用リーンLNGの全量を前記第2の分岐手段に導くラインを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記冷却器により冷却された製品LNG用リーンLNGに対して、減圧及び気液分離を施して、前記圧力P1より高い圧力P2の気相流と液相流とを得るための、減圧及び気液分離手段と、
圧力P2の前記液相流を冷却する冷却器と、
冷却した圧力P2の前記液相流を前記第2の分岐手段に導くラインを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記圧縮機が、第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機で圧縮される流れの方向を基準として前記第1の圧縮機の下流に配された第2の圧縮機を含み、
前記熱交換器が、前記第1の圧縮機の吐出流体を冷却する第1の熱交換器と、前記第2の圧縮機の吐出流体を冷却する第2の熱交換器と、を含み、
前記第2の熱交換器が、前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記第1の熱交換器よりも上流に配され、
圧力P2の前記気相流を、前記第1の圧縮機の吐出流体に、合流させるラインを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記製品LNG用リーンLNGを冷媒を用いて冷却する前記冷却器の中に又はこの冷却器とは別に、圧力P2の前記気相流によって製品LNG用リーンLNGを冷却する熱交換構造を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記圧縮機が、第1の圧縮機と、前記第1の圧縮機で圧縮される流れの方向を基準として前記第1の圧縮機の下流に配された第2の圧縮機を含み、
前記熱交換器が、前記第1の圧縮機の吐出流体を冷却する第1の熱交換器と、前記第2の圧縮機の吐出流体を冷却する第2の熱交換器と、を含み、
前記第2の熱交換器が、前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記第1の熱交換器よりも上流に配され、
前記第2の熱交換器の中に、又は前記第1の圧縮機で圧縮される流れの方向を基準として前記第2の熱交換器の上流に、外部冷媒を使用して前記第2の圧縮機の吐出流体の冷却を行う熱交換構造を含む、請求項10~17のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)から天然ガス液(NGL:Natural Gas Liquids、炭素数2以上の炭化水素からなる)あるいは液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas、炭素数3~4の炭化水素を主成分とする)を分離して得られるリーンLNGの処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスは産ガス国で液化、輸出され、消費国のLNG受入基地にてLNGタンクに受け入れ、貯蔵される。LNGはポンプにて昇圧後、気化して天然ガスパイプラインに送出されるか、液体状態のまま輸送されたのちエンドユーザーにて燃料ガスとして利用される。
【0003】
プロパン、ブタン、ペンタン等の重質炭化水素が多く含まれると発熱量が高くなるため、消費地の天然ガスパイプライン規格に適合しないことがある。このような場合を含めて、受け入れたLNGすなわち原料LNGから、重質炭化水素を分離、回収することが望ましい場合がある。そのため、原料LNGからNGLあるいはLPGを抽出し、メタンが富化されたあるいはメタン及びエタンが富化されたリーンLNGを得ることが行われている。
【0004】
特許文献1~4には、蒸留塔を用いて原料LNGから炭化水素を分離するプロセスが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6,510,706号明細書
【文献】米国特許第2,952,984号明細書
【文献】米国特許第7,216,507号明細書
【文献】特開2019-85332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4に開示されるLNGからの炭化水素分離方法においては、蒸留塔を用いて原料LNGから比較的重質な炭化水素を抽出し、蒸留塔から温度-70~-105℃程度、圧力2,000~3,000kPaA程度のリーンLNGを得ることができる。なお、圧力単位における「A」は絶対圧を意味し、「G」はゲージ圧を意味する。
【0007】
しかし、このようなリーンLNGを、大気圧付近で運転されるLNGタンク又は輸送用タンクローリーに送液すると、多量の気化ガス(以下、「BOG(Boil Off Gas)」ということがある)が発生することがある。これは蒸留塔への入熱によってリーンLNG中のエンタルピーが増加していることに起因する。
【0008】
BOGをガスの状態で圧縮機を用いて圧縮する場合の昇圧に要する消費エネルギーは、液の昇圧に必要となる消費エネルギーに比べて大きい。従い、BOGが多量に発生すると、BOGを処理するために多くのエネルギーを要する。
【0009】
なお、製品LNGまたは製品ガスのガス送出先として、都市ガス、LNGローリー出荷、または発電用燃料供給があり、それぞれ要求されるガス発熱量が異なる。例えば、都市ガスは45MJ/Nm3、LNGローリー出荷は43.5MJ/Nm3、発電用燃料は発電機により絶対値として共通の規定はないものの、概ね40MJ/Nm3前後がガス発熱量の目安である。産ガス国より受け入れるLNGの発熱量が45MJ/Nm3より低い、例えば41~43MJ/Nm3である場合、都市ガス用、LNGローリー出荷は増熱が必要である一方、発電用燃料は軽質化したガスを使用してよいことになる。そこで、後者の場合に、LNGを加温、分離し、発熱量の高いリッチLNGと、発熱量の低いリーンLNGを得ることが行われることがある。
【0010】
本発明の目的は、原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタンおよびエタンが富化されたリーンLNGを、大気圧付近で運転されるタンク等に送液する場合においてもBOGを発生させない、あるいはBOG発生量を低減することのできる、リーンLNGの処理方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様により、
原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタン及びエタンが富化されたリーンLNGから、製品ガスと、大気圧付近の圧力P1を有する製品LNGとを得る、リーンLNGの処理方法であって、
a)前記リーンLNGを分岐して、製品ガス用リーンLNGと製品LNG用リーンLNGとを得る工程;
b)前記製品LNG用リーンLNGを、冷媒を用いる冷却器において冷却する工程;
c)工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNGに由来する液体流を分岐して、前記冷媒として使用される冷媒LNGと、その残部である残LNGとを得る工程;
d)前記残LNGに対して、減圧及び気液分離を施して、圧力P1の気相流と、製品LNGとしての圧力P1の液相流とを得る工程;
e)前記冷媒LNGを減圧する工程;
f)工程eからの流れを、前記冷却器の冷媒として用いる工程;
g)工程fの前又は後に、工程eからの流れに、圧力P1の前記気相流を合流させる工程;
h)工程f及び工程gを経た流れに対して、昇圧及び前記製品ガス用リーンLNGとの熱交換による冷却を施して、工程f及び工程gを経た流れを液化させる工程;
i)工程hの熱交換に用いる前の前記製品ガス用リーンLNGを昇圧する工程;
j)工程h及び工程iを経た後の前記製品ガス用リーンLNGを気化させて、前記製品ガスを得る工程;
k)工程hで液化した流れを、工程aで得られた前記製品LNG用リーンLNGに合流させる工程
を含むリーンLNGの処理方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様により、
原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタン及びエタンが富化されたリーンLNGから、製品ガスと、大気圧付近の圧力P1を有する製品LNGとを得る、リーンLNGの処理装置であって、
前記リーンLNGを分岐して、製品ガス用リーンLNGと製品LNG用リーンLNGとを得る第1の分岐手段;
前記製品LNG用リーンLNGを、冷媒を用いて冷却する冷却器;
前記冷却器により冷却された製品LNG用リーンLNGに由来する液体流を分岐して、前記冷媒として使用される冷媒LNGと、その残部である残LNGとを得る第2の分岐手段;
前記残LNGに対して、減圧及び気液分離を施して、圧力P1の気相流と、製品LNGとしての圧力P1の液相流とを得るための、減圧及び気液分離手段;
前記冷媒LNGを減圧する冷媒LNG用減圧器;
前記冷媒LNG用減圧器からの流れを、前記冷媒として前記冷却器に導くライン;
前記冷媒LNG用減圧器からの流れの流れ方向を基準として前記冷却器より上流又は下流で、冷媒LNG用減圧器からの流れに、圧力P1の前記気相流を合流させる第1の合流手段;
前記冷媒LNG用減圧器からの流れの流れ方向を基準として前記冷却器及び前記第1の合流手段のうちの下流側にある一方から得られた流れに対して、昇圧及び前記製品ガス用リーンLNGの冷熱との熱交換による冷却を施して、前記下流側の一方から得られた流れを液化させるための圧縮機及び熱交換器;
前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記熱交換器より上流で前記製品ガス用リーンLNGを昇圧するポンプ;及び
前記製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として前記熱交換器より下流かつ前記ポンプより下流の前記製品ガス用リーンLNGを気化させて、前記製品ガスを得る蒸発器;
前記圧縮機及び熱交換器によって液化した流れを、前記第1の分岐手段で得られた前記製品LNG用リーンLNGに合流させる第2の合流手段
を含むリーンLNGの処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタンおよびエタンが富化されたリーンLNGを、大気圧付近で運転されるタンク等に送液する場合においてもBOGを発生させない、あるいはBOG発生量を低減することのできる、リーンLNGの処理方法及び装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のリーンLNGの処理方法の一形態を説明するためのプロセスフロー図である。
【
図2】本発明のリーンLNGの処理方法の別の形態を説明するためのプロセスフロー図である。
【
図3】本発明のリーンLNGの処理方法のさらに別の形態を説明するためのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタン及びエタンが富化されたリーンLNGから、製品ガスと、製品LNGとを得る。製品LNGは、大気圧付近の圧力P1を有する。以下図面を参照しつつ本発明の形態について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0016】
〔リーンLNG〕
リーンLNGは、消費地で受け入れた原料LNGに、加温、気液分離及び液化処理を施してメタンまたはメタン及びエタンを富化することによって得ることができる。加温により原料LNG(液体)の一部を気化して気液二相流を得、これを気液分離することにより、原料LNGよりもメタンが富化されたまたはメタン及びエタンが富化された気体画分と、それよりも重質な成分が富化された液体画分(NGL)を得ることができる。この気体画分を液化することによりリーンLNGを得ることができる。前記液体画分に、さらに加温、気液分離及び液化処理を施すことによって、LPGを得ることもできる。LPGを取り出した後の他の成分は適宜燃焼等に利用できる。このように、リーンLNGを製造する際に、原料LNGを加温するため、前述のようにエンタルピーが増加する。
【0017】
〔製品ガス、製品LNG〕
製品ガスは、リーンLNGを気化させたガスであり、天然ガスパイプラインに送出することができる。製品LNGは、リーンLNGのエンタルピーを冷却によって減少させたのち大気圧付近の圧力P1まで減圧した液体である。製品LNGは、LNGタンク又は輸送用タンクローリーに送液することができる。圧力P1は、典型的には送液先(LNGタンク又は輸送用タンクローリー)の運転圧力に、製品LNGを送液する際の圧力損失を加えた圧力である。圧力P1は、例えば5~50kPaG程度の圧力である。
【0018】
〔第1の形態〕
以下、本発明の一形態に係るリーンLNGの処理方法について
図1を用いて説明する。この処理方法は、以下の工程a~kを含む。
【0019】
a)リーンLNG31を分岐して、製品ガス用リーンLNG33と製品LNG用リーンLNG32とを得る工程
この分岐を行うための第1の分岐手段は、適宜配管を分岐させて形成することができる。リーンLNG31は、製品LNGと製品ガスのエンドユーザーの需要に鑑みて分岐される。分岐比は、弁(減圧器として使用される減圧弁)、昇圧手段(ポンプまたは圧縮機)などの適宜の手段を利用して調整することができる。
【0020】
b)製品LNG用リーンLNG32を、冷媒を用いる第1の冷却器1において冷却する工程
第1の冷却器1は、製品LNG用リーンLNG32と、冷媒(ストリーム40)との熱交換構造を備えることができる。
この冷却では、例えば-105℃程度で液体状態のLNGの温度を-150℃程度まで冷却する。この冷却は、過冷却とも呼ばれる。したがって、第1の冷却器1は製品LNG用リーンLNGの過冷却器として機能する。この冷却は、リーンLNG中のエンタルピーを減少させるために行う。
【0021】
c)工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNG34aに由来する液体流を分岐して、第1の冷却器1で冷媒として使用される冷媒LNG34bと、その残部である残LNG34cとを得る工程
この分岐を行うための第2の分岐手段は、適宜配管を分岐させて形成することができる。分岐比は、冷媒LNG34bが、工程bにおいて製品LNG用リーンLNG32を例えば-150℃程度まで冷却するために必要な冷熱量を供給できるよう決められる。分岐比は、弁(減圧器として使用される減圧弁)、昇圧手段(ポンプまたは圧縮機)などの適宜の手段を利用して調整することができる。
工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNG34aに由来する液体流は、当該製品LNG用リーンLNG34aの少なくとも一部からなる。本形態では、工程cにおいて、工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNGの全量を分岐して、前記冷媒LNGと前記残LNGとを得る。そのために、第1の冷却器1により冷却された製品LNG用リーンLNG(34a)の全量を第2の分岐手段に導くラインを用いる。
【0022】
d)残LNG34cに対して、減圧及び気液分離を施して、圧力P1の気相流36と、製品LNGとしての圧力P1の液相流37とを得る工程
この工程における減圧によって、減圧される流体の一部が気化する。この減圧及び気液分離を行うための減圧及び気液分離手段は、残LNG用減圧器3と、残LNG用気液分離器4を備える。残LNG34cを残LNG用減圧器3で圧力P1に減圧することによりその一部を気化させ、得られた気液二相流35を残LNG用気液分離器4で分離する。残LNG用気液分離器4の頂部から圧力P1の気相流(気化ガス)36を得、底部から圧力P1の液相流37を得る。液相流37は製品LNGとして払い出し、LNGタンクに貯蔵する。残LNG用減圧器3として、適宜の減圧弁を用いることができる。
【0023】
e)冷媒LNG34bを減圧する工程
この工程を行うために冷媒LNG用減圧器2を用いる。冷媒LNG用減圧器2としても、適宜の減圧弁を用いることができる。この工程では、典型的には大気圧付近の圧力(P1と同程度)まで冷媒LNG34bを減圧する。この工程における減圧によって、冷媒LNG34bは一部が気化し、気液二相流となる(ストリーム40)。
【0024】
f)工程eからの流れを、第1の冷却器1の冷媒として用いる工程
この工程を行うために、工程eからの流れすなわち冷媒LNG用減圧器2からの流れを、冷媒として第1の冷却器1に導くライン(
図1ではストリーム40のライン)を用いる。この流れ(ストリーム40)は、第1の冷却器1で加熱される。これにより、この流れの全部を気体にすることができる。
【0025】
g)工程fの前又は後に、工程eからの流れに、圧力P1の気相流36を合流させる工程
この工程を行うために、第1の冷却器1より上流又は下流で(冷媒LNG用減圧器2からの流れの流れ方向を基準として)、冷媒LNG用減圧器2からの流れに、圧力P1の気相流36を合流させる第1の合流手段を用いる。第1の合流手段は、適宜配管を合流させて形成することができる。
【0026】
・合流箇所
図1に示す形態では、工程eからの流れ(ストリーム40)を、工程fで冷媒として用い(ストリーム41)、さらに第2の熱交換器14で冷媒として用いた後(ストリーム41a)に、気相流36を合流させる。すなわち、冷媒LNG用減圧器2からの流れに、冷媒LNG用減圧器2からの流れの流れ方向を基準として第1の冷却器1及び第2の熱交換器14より下流で、気相流36を合流させる。しかし後述する実施形態2のように、気相流36が保有する冷熱を回収するため、工程fの前に、すなわち冷媒LNG用減圧器2からの流れの流れ方向を基準として第1の冷却器1より上流で、冷媒LNG用減圧器2からの流れに、気相流36を合流させてもよい。あるいは、図示しないが、工程fの後、かつ第2の熱交換器14で冷媒として用いる前に、すなわち冷媒LNG用減圧器2からの流れの流れ方向を基準として第1の冷却器1より下流、かつ第2の熱交換器14より上流で、冷媒LNG用減圧器2からの流れに、気相流36を合流させてもよい。
【0027】
h)工程f及び工程gを経た流れ(ストリーム42)に対して、昇圧及び製品ガス用リーンLNGとの熱交換による冷却を施して、工程f及び工程gを経た流れを液化させる工程
この工程を行うために、冷媒LNG用減圧器2からの流れの流れ方向を基準として第1の冷却器1及び第1の合流手段のうちの下流側にある一方から得られた流れ(ストリーム42)に対して、昇圧及び製品ガス用リーンLNGの冷熱との熱交換による冷却を施して、前記下流側の一方から得られた流れ(ストリーム42)を液化させるための圧縮機及び熱交換器を用いる。典型的には、ストリーム42は気体であり、その流れを全凝縮させ、過冷却させる。この工程では、製品ガス用リーンLNGの冷熱が回収される。
【0028】
・二段階の昇圧・冷却
図1に示す形態では、この工程で行う昇圧及び冷却を、二段階で行っている。すなわちこの工程の昇圧を、第1の圧縮機11によって、その後第2の圧縮機13によって行う。つまり、この工程で用いる圧縮機が、第1の圧縮機11と、第1の圧縮機11で圧縮される流れの方向を基準として第1の圧縮機11の下流に配された第2の圧縮機13を含む。第1の圧縮機11及び第2の圧縮機13は同軸の圧縮機であってもよいが、その限りではない。
【0029】
また、この工程の冷却を、製品ガス用リーンLNG33の冷熱を利用して、第2の圧縮機の吐出流体45を冷却し、その後第1の圧縮機の吐出流体43を冷却することによって行う。つまり、この工程で用いる熱交換器が、第1の圧縮機11の吐出流体43を冷却する第1の熱交換器(圧縮機一段目クーラー)12と、第2の圧縮機13の吐出流体45を冷却する第2の熱交換器(圧縮機二段目クーラー)14と、を含む。製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準として、第2の熱交換器14が第1の熱交換器12よりも上流に配される。
【0030】
ストリーム42に関して言えば、例えば、この流れを第1の圧縮機11で780kPaAまで圧縮し(ストリーム43)、次いで第1の熱交換器12で-49.8℃まで冷却し(ストリーム44)、次いで第2の圧縮機13で4,100kPaAまで圧縮し(ストリーム45)、次いで第2の熱交換器14で-94.0℃まで冷却することにより、液化した流れを得る(ストリーム46)。製品ガス用リーンLNG33に関して言えば、この流れをポンプ21で昇圧し(ストリーム51)、第2の熱交換器14において冷媒として用いてその冷熱を回収し(ストリーム52)、次いで第1の熱交換器12で冷媒として用いてその冷熱を回収する(ストリーム53)。
【0031】
・水冷、空冷
図示しないが、圧縮機の動力の低減を目的として、第1の圧縮機11の吐出流体43及び第2の圧縮機13の吐出流体45の少なくとも一方を、水冷式または空冷式の熱交換器を用いて冷却することができる。第1の圧縮機11の吐出流体43は、水冷もしくは空冷を行った後に、第1の熱交換器12において製品ガス用リーンLNGの冷熱を利用して冷却することができる。第2の圧縮機13の吐出流体45は、水冷もしくは空冷を行った後に、第2の熱交換器14において製品ガス用リーンLNGの冷熱を利用して冷却することができる。
【0032】
i)工程hの熱交換に冷媒として用いる前の前記製品ガス用リーンLNGを昇圧する工程
この工程を行うために、工程hで用いる熱交換器より上流で(製品ガス用リーンLNGの流れ方向基準)、製品ガス用リーンLNGを昇圧するポンプを用いる。この昇圧は、製品ガス54を天然ガスパイプラインへ送出するに好適な圧力(実施例1では9,461kPaA)にするために行う。熱交換器12及び14よりも上流において(製品ガス用リーンLNGの流れ方向基準)、製品ガス用リーンLNG33をポンプ21で昇圧する。昇圧された製品ガス用リーンLNG51は、第2の熱交換器14、次いで第1の熱交換器12において、冷媒として使用される。
【0033】
j)工程h及び工程iを経た後の製品ガス用リーンLNG53を気化させて、製品ガス54を得る工程
この工程を行うために、製品ガス用リーンLNGの流れ方向を基準としてポンプ21より下流かつ熱交換器12及び14より下流の製品ガス用リーンLNG(ストリーム53)を気化させて、製品ガス54を得る蒸発器22を用いる。製品ガス54は、天然ガスパイプラインへと送出される。
蒸発器22は、加熱源として海水や空気等、0℃以上の外部熱媒を使用する熱交換構造を含むことができる。
【0034】
k)工程hで液化した流れを、工程aで得られた製品LNG用リーンLNG32に合流させる工程
この工程を行うために、工程hで用いる圧縮機及び熱交換器によって液化した流れを、第1の分岐手段で得られた製品LNG用リーンLNG32に合流させる第2の合流手段を用いることができる。この合流手段は、適宜配管を合流させて形成することができる。この工程によって冷媒LNGがリサイクルされる。
【0035】
工程kの合流の前に、前記液化した流れをさらに冷却することができる。その後、適宜その流れを、工程aで得られた製品LNG用リーンLNG32の圧力まで減圧することができる。
図1に示した形態では、まず、第2の熱交換器14で得られる液化した流れ(ストリーム46)を、第1の冷却器1においてストリーム40の冷媒LNGによって冷却してストリーム46aを得る。次いでストリーム46aを、循環LNG用減圧器15で減圧し(ストリーム47)、その後に製品LNG用リーンLNG32と合流させている。循環LNG用減圧器15としても適宜の減圧弁を用いることができる。
【0036】
・冷却、減圧及び気液分離の多段化
図1に示した形態では、第1の冷却器1および減圧器3、気液分離器4を用いて、製品LNG用リーンLNGの冷却、減圧及び気液分離を一段階で行っている。しかし、
図3に示すように、製品LNG用リーンLNGの冷却、減圧及び気液分離を複数段階、例えば二段階で行うこともできる。例えば、工程cにおいて、工程bにより冷却された製品LNG用リーンLNG(ストリーム234)に対して、減圧及び気液分離を施して、圧力P1より高い圧力P2の気相流(ストリーム237)と圧力P2の液相流(ストリーム236)とを得、その後、圧力P2の液相流を冷却する。そして、冷却した圧力P2の液相流(ストリーム34a)を分岐して、冷媒LNG(34b)と残LNG(34c)とを得る。このために、減圧及び気液分離を行う減圧及び気液分離手段と、圧力P2の液相流の冷却のための冷却器(熱交換器)7と、冷却した圧力P2の液相流を第2の分岐手段に導くラインを用いる。減圧及び気液分離手段として、減圧器(適宜の減圧弁)5と、気液分離器6を用いることができる。
【0037】
具体的には、工程bにおいて第1の冷却器1で製品LNG用リーンLNGを例えば-110℃程度まで冷却し(ストリーム234)、次いで減圧器5による第1の減圧を行い(ストリーム235)、次いで気液分離器6による第1の気液分離を施して、圧力P1より高い圧力P2の気相流(ストリーム237)と液相流(ストリーム236)とを得る。その後、得られた圧力P2の液相流を第2の冷却器7において-150℃程度まで冷却し(ストリーム34a)、これを分岐する(ストリーム34b及び34c)。分岐した一方の液相流(ストリーム34c)に、さらに減圧器3による第2の減圧及び気液分離器4による第2の気液分離を施して、圧力P1の気相流(ストリーム36)と液相流(ストリーム37)とを得ることができる。分岐した残りの液相流(ストリーム34b)は減圧器2にて減圧されたのち(ストリーム240)、第1の気液分離により得られる圧力P2の液相流(ストリーム236)を冷却する冷媒として第2の冷却器7で使用され(ストリーム241)、次いで第1の冷却器1で冷媒として使用される。
圧力P2は、第1の冷却器1の出口のリーンLNG(ストリーム234)の圧力よりも低く、圧力P1よりも高い。第1の気液分離により得た気相流(ストリーム237)は第2の圧縮機13に吸い込まれるため、圧力P2は第1の圧縮機11の吐出圧力と同程度となる。
【0038】
図3に示した形態のように工程hでストリーム42の昇圧及び冷却を二段階で行う場合、圧力P2の気相流(ストリーム237)を、工程h(第1の熱交換器12)で冷却する前(ストリーム43)または冷却した後(ストリーム44)の第1の圧縮機の吐出流体に、合流させることができる。合流して得た流れはその後第2の圧縮機13で圧縮する。
【0039】
あるいは、圧力P2の気相流(ストリーム237)を、工程bにおける製品LNG用リーンLNG(ストリーム32)の冷却のための冷媒として用いることができる。このために第1の冷却器1の中に、又は第1の冷却器1とは別に、圧力P2の気相流(ストリーム237)によって製品LNG用リーンLNGを冷却する熱交換構造を設けることができる。第1の冷却器1とは別にこの熱交換構造を設ける場合、製品LNG用リーンLNGの流れの流れ方向を基準として第1の冷却器1より上流又は下流にこの熱交換構造を設けることができる。圧力P2の気相流(ストリーム237)を、このように冷媒として用いた後に、工程h(第1の熱交換器12)で冷却する前(ストリーム43)または冷却した後(ストリーム44)の第1の圧縮機の吐出流体に、合流させることができる。
【0040】
あるいは、工程hと並行して、あるいは工程hの後に、圧力P2の気相流(ストリーム237)を、工程f及び工程gを経た流れ(例えばストリーム45、46又は46a)の冷却のための冷媒として用いることができる。このために第2の熱交換器14の中に、又は第2の熱交換器14とは別に、圧力P2の気相流によって工程f及び工程gを経た流れ(例えばストリーム45、46又は46a)を冷却する熱交換構造を設けることができる。第2の熱交換器14とは別にこの熱交換構造を設ける場合、冷媒LNGの流れ方向を基準として第1の冷却器1より上流又は下流にこの熱交換構造を設けることができる。第1の冷却器1より上流の場合はストリーム46に対して、下流の場合はストリーム46aに対する熱交換器となる。圧力P2の気相流(ストリーム237)を、このように冷媒として用いた後に、工程h(第1の熱交換器12)で冷却する前(ストリーム43)または冷却した後(ストリーム44)の第1の圧縮機の吐出流体に、合流させることができる。
【0041】
・外部冷媒の使用
外部冷媒を利用して工程f及び工程gを経た流れ(例えば第2の圧縮機13の吐出流体45)を冷却することができる。このために、第2の熱交換器14の中にまたは第2の熱交換器14の上流に、プロパン冷媒等の外部冷媒との熱交換構造を設けることができる。これによって第2の熱交換器14へ流れるガスの温度を例えば-35℃程度まで冷却できる。
【0042】
〔実施形態2〕
実施形態2について、
図2を用いて説明する。実施形態1と同様の点については、説明を省略する。
本形態では、工程gにおいて、工程fの前に、工程eからの流れに、工程dで得た圧力P1の気相流を合流させる。このために、第1の合流手段が、冷媒LNGの流れ方向基準で第1の冷却器1より上流において、冷媒LNG用減圧器2からの流れ(ストリーム140a)に圧力P1の気相流36を合流させるよう配される。合流後の流れ(ストリーム140b)が、第1の冷却器1において工程bの冷媒として使用される。第1の冷却器1で冷媒として使用された後の流れ(ストリーム141)が、第2の熱交換器14においてストリーム45を冷却するための冷媒として使用される。第2の熱交換器14で冷媒として使用した後の流れ(ストリーム142)が、第1の圧縮機11に供給される。
【0043】
〔その他〕
冷却器、熱交換器、気液分離器、ポンプ、圧縮機、減圧器など、前述される機器に関して、個々の機器の構造や材料については、LNGの分野で公知のものを適宜使用することができる。また、各機器は適宜のラインで接続することができ、それらのラインは適宜の配管材を用いて形成することができる。
【0044】
本発明によれば、供給されるリーンLNGを、製品ガス用リーンLNGと製品LNG用リーンLNGに分岐してそれぞれ処理する。製品LNG用リーンLNGの冷却に、製品LNG用リーンLNG(冷媒LNGとしてリサイクルされる部分)自身が保有する冷熱を利用する。また、気化した冷媒LNGを再凝縮させるために、製品ガス用リーンLNGの冷熱を利用している。そのため外部冷凍を必要とせずに、製品LNGを低温化かつ低圧化することができる。したがって、BOGを発生させることなく、あるいは少量のBOG発生量で、製品LNG(ストリーム37)として液体画分を得ることができる。
【実施例】
【0045】
〈実施例1〉
図1に示す実施形態1に係るプロセスについてプロセスシミュレーションを行った。リーンLNG(ストリーム31)の条件は表1に示す(組成は、窒素0.45モル%、メタン90.34モル%、エタン9.21モル%とした)。なお、単位「kg-mol」は「10
3mol」を意味する。
【0046】
なお、極低温の装置と外部の周辺環境との熱の授受は十分小さいものとして計算には含めていない。市場で購入できる保冷材を極低温の装置に施工することで、外部との熱の授受は十分小さくできるため、上記の仮定は妥当と考えられる。
【0047】
リーンLNG31は温度-104.6℃、圧力2,015kPaAで供給され、製品LNG用リーンLNG32と製品ガス用リーンLNG33とに分岐される。ここでは、リーンLNGのうち、40モル%が製品LNGとして出荷するためにストリーム32へ送液され、60モル%が製品ガスとして出荷するためにストリーム33へ送液される。
【0048】
分岐した製品LNG用リーンLNG32は、冷媒LNGをリサイクルする循環ラインにおいて再凝縮された-108.5℃のLNG(ストリーム47)と合流したのちに、第1の冷却器1に送液され、-148.8℃まで過冷却される。過冷却されたLNG(ストリーム34a)は分岐し、そのうち30モル%(ストリーム34b)は、冷媒LNG減圧器2において150kPaAまで減圧される。減圧により冷媒LNGは-156.6℃まで温度が低下し(ストリーム40)、第1の冷却器1において冷媒として利用されて-96.0℃まで昇温され(ストリーム41)、次いで第2の熱交換器14に冷媒として供給されて-49.6℃まで昇温される(ストリーム41a)。過冷却されたLNG(ストリーム34a)のうち、70モル%(ストリーム34c)は、残LNG用減圧器3に送液され、150kPaAまで減圧され、気液二相流35となる。この気液二相流は残LNG用気液分離器4において二相に分離され、底部より製品LNGが液体画分で得られる(ストリーム37)。
【0049】
残LNG用気液分離器4において、頂部より得られる気化ガス36は第2の熱交換器14出口の冷媒LNG(ストリーム41a)と合流して、ストリーム42となる。
【0050】
ストリーム42は、第1の圧縮機11の吐出ライン(ストリーム43)において780kPaAまで昇圧され、次いで第1の熱交換器12において65.1℃から-47.5℃まで冷却され、次いで第2の圧縮機13の吐出ライン(ストリーム45)において4,100kPaAまで昇圧されたのち、第2の熱交換器14において89.9℃から-94.0℃まで冷却されて再凝縮される。再凝縮された循環LNG(ストリーム46)は第1の冷却器1において-108.0℃まで過冷却され(ストリーム46a)、次いで製品LNG用リーンLNG32の圧力まで循環LNG減圧器15にて減圧されて(ストリーム47)、製品LNG用リーンLNG32のラインにリサイクルされる。
【0051】
製品ガス用リーンLNG33は、ポンプ21により9,461kPaAまで昇圧され(ストリーム51)、第2の熱交換器14において-96.0℃から-49.6℃まで昇温され(ストリーム52)、次いで第1の熱交換器12において-35.5℃まで昇温される(ストリーム53)。ストリーム53は蒸発器22において気化され(ストリーム54)、0℃、9,411kPaAにてパイプラインへ送出される。
【0052】
本例の物質収支とエネルギー消費量をまとめたものが表1及び表2である。なお、
図1に示した各ストリームのうち、ストリーム36、41、41a、42、43、44、45及び54は気体である。また、ストリーム31、32、33、51、52、34a、34b、34c、37、46、46a、47は液体である。他のストリームは気液二相流である。
【0053】
【0054】
【0055】
〈実施例2〉
図2に示す実施形態2に係るプロセスについてプロセスシミュレーションを行った。
【0056】
実施例1と同様に、リーンLNG31が製品LNG用リーンLNG32と製品ガス用リーンLNG33に分岐される。
【0057】
分岐した製品LNG用リーンLNG32は、冷媒LNGをリサイクルする循環ラインにおいて再凝縮された-108.5℃のLNG(ストリーム47)と合流したのちに、第1の冷却器1に送液され、-151.0℃まで過冷却される。過冷却されたLNG(ストリーム34a)は分岐し、そのうち30モル%(ストリーム34b)は、冷媒LNG減圧器2において150kPaAまで減圧される。減圧により冷媒LNGは-156.6℃まで温度が低下し、第1の冷却器1において冷媒として利用される。過冷却されたLNG(ストリーム34a)のうち、70モル%(ストリーム34c)は、残LNG用減圧器3に送液され、150kPaAまで減圧され、気液二相流35となる。この気液二相流は残LNG用気液分離器4において二相に分離され、底部より製品LNGが液体画分で得られる(ストリーム37)。
【0058】
残LNG用気液分離器4において、頂部より得られる気化ガス36は冷媒LNG減圧器2出口の冷媒LNG(ストリーム140a)と合流し、合流したストリーム140bが第1の冷却器1において冷媒として使用されて-96.0℃まで昇温され(ストリーム141)、次いで第2の熱交換器14で冷媒として使用されて-51.9℃まで昇温される(ストリーム142)。
【0059】
ストリーム142は第1の圧縮機11の吐出ライン(ストリーム43)において780kPaAまで昇圧され、次いで第1の熱交換器12において79.6℃から-49.5℃まで冷却され(ストリーム44)、次いで第2の圧縮機13の吐出ライン(ストリーム45)において4,100kPaAまで昇圧されたのち、第2の熱交換器14において86.4℃から-94.0℃まで冷却されて再凝縮される。再凝縮された循環LNG(ストリーム46)は第1の冷却器1において-108.0℃まで過冷却され(ストリーム46a)、次いで製品LNG用リーンLNG32の圧力まで循環LNG減圧器15にて減圧されて(ストリーム47)、製品LNG用リーンLNG32のラインにリサイクルされる。
【0060】
製品ガス用リーンLNG33は、ポンプ21により9,461kPaAまで昇圧され(ストリーム51)、第2の熱交換器14において-51.9℃まで昇温され(ストリーム52)、次いで第1の熱交換器12において-36.6℃まで昇温される(ストリーム53)。ストリーム53は蒸発器22において気化され(ストリーム54)、0℃、9,411kPaAにてパイプラインへ送出される。
【0061】
本例の物質収支とエネルギー消費量をまとめたものが表3及び表4である。なお、
図2に示した各ストリームのうち、ストリーム36、141、142、43、44、45及び54が気体である。また、ストリーム31、32、33、51、52、34a、34b、34c、37、46、46a、47が液体である。他のストリームは気液二相流である。
【0062】
【0063】
【符号の説明】
【0064】
1 第1の冷却器
2 冷媒LNG用減圧器
3 残LNG用減圧器
4 残LNG用気液分離器
5 減圧器
6 気液分離器
7 第2の冷却器
11 第1の圧縮機
12 第1の熱交換器(圧縮機一段目クーラー)
13 第2の圧縮機
14 第2の熱交換器(圧縮機二段目クーラー)
15 循環LNG減圧器
21 ポンプ
22 蒸発器