(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
F23L 5/02 20060101AFI20230317BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
F23L5/02
F23G5/44 F ZAB
(21)【出願番号】P 2019213184
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 圭
(72)【発明者】
【氏名】眞野 文宏
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132480(JP,A)
【文献】実開昭54-058541(JP,U)
【文献】特開2015-227747(JP,A)
【文献】特開2015-227748(JP,A)
【文献】特開2008-025965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 5/02
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉に燃焼用空気を導くための空気導入経路と、
前記空気導入経路から流入する燃焼用空気を、前記焼却炉から排出される排ガスにより加熱する予熱器と、
前記空気導入経路に配置された過給機であって、燃焼用空気を圧縮して前記予熱器側へ吐出するコンプレッサと、前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記コンプレッサを駆動させるタービンと、を含む前記過給機と、
前記空気導入経路のうち前記コンプレッサと前記タービンとの間の部位である高圧経路に配置され、燃焼用空気の流通及び遮断を切り替える切替弁と、
前記高圧経路のうち前記切替弁よりも前記タービン側に配置されたバーナと、
前記高圧経路内へ燃焼用空気を供給する送風機と、
前記高圧経路内の圧力を検知する圧力検知部と、
前記高圧経路の外へ燃焼用空気を放出するための放風弁と、
前記切替弁の開放後であって前記バーナの消火前の間に、前記圧力検知部により検知される圧力が前記送風機の最大圧力以下の目標圧力になるように前記放風弁を制御する制御部と、を備えた、廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記制御部は、
前記切替弁の開放前において、前記目標圧力を指標とする前記放風弁の制御を実行せず、前記高圧経路のうち前記切替弁よりも上流側における圧力が前記高圧経路のうち前記切替弁よりも下流側における圧力よりも大きくなるように前記放風弁を制御する第1制御を実行し、
前記切替弁の開放後において、前記第1制御から、前記圧力検知部により検知される圧力が前記目標圧力になるように前記放風弁を制御する第2制御へ切り替える、請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉に燃焼用空気を導くための空気導入経路と、前記空気導入経路から流入する燃焼用空気を、前記焼却炉から排出される排ガスにより加熱する予熱器と、前記空気導入経路に配置された過給機であって、燃焼用空気を圧縮して前記予熱器側へ吐出するコンプレッサと、前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記コンプレッサを駆動させるタービンと、を含む前記過給機と、前記空気導入経路のうち前記コンプレッサと前記タービンとの間の部位である高圧経路に配置され、燃焼用空気の流通及び遮断を切り替える切替弁と、前記高圧経路のうち前記切替弁よりも前記タービン側に配置されたバーナと、前記高圧経路内へ燃焼用空気を供給する送風機と、前記高圧経路の外へ燃焼用空気を放出するための放風弁と、を備えた廃棄物処理設備を運転する方法であって、
前記廃棄物処理設備の立ち上げ運転時における前記切替弁の開放後であって前記バーナの消火前の間に、前記高圧経路内の圧力が前記送風機の最大圧力以下の目標圧力になるように前記放風弁を操作する、廃棄物処理設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、下水汚泥等の廃棄物を焼却する廃棄物処理設備であって、廃棄物の焼却に必要な空気を過給機によって焼却炉内へ供給するものが知られている。このような過給式の廃棄物処理設備は、廃棄物の焼却時に生じる排ガスの熱を利用して過給機を駆動させることにより焼却炉内へ空気を供給可能であるため、省電力性等において優れた設備である。
【0003】
特許文献1に記載された廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、コンプレッサ及びタービンを有する過給機と、焼却炉から排出された排ガスによってコンプレッサから吐出された酸素含有ガスを加熱する予熱器と、コンプレッサ、予熱器、タービン及び焼却炉をこの順に接続する酸素含有ガス供給流路と、酸素含有ガス供給流路のうち予熱器とタービンとの間の部位に配置されたバーナと、酸素含有ガス供給流路のうち予熱器とバーナとの間の部位に酸素含有ガスを供給するブロワと、酸素含有ガス供給流路のうち予熱器の下流側で且つブロワから酸素含有ガスが供給される部位の上流側に配置された第1流量調整弁と、酸素含有ガス供給流路のうち予熱器の下流側で且つ第1流量調整弁の上流側の部位から分岐する排気流路と、排気流路に配置された第2流量調整弁と、を備えている。
【0004】
この従来の廃棄物処理設備の立ち上げ運転は、以下の手順で行われる。すなわち、第1流量調整弁が全閉で且つ第2流量調整弁が全開の状態において、まず、ブロワ及びバーナをそれぞれ駆動させる。次に、予熱器の出口側における酸素含有ガスの温度が所定の基準温度を超えた後、第1流量調整弁の上流側における圧力が第1流量調整弁の下流側における圧力よりも大きくなるように第2流量調整弁の開度を減少させ、その後第1流量調整弁の開度を増加させる。そして、第2流量調整弁が全閉で且つ第1流量調整弁が全開となった後、バーナ及びブロワを順に停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、特許文献1に記載された廃棄物処理設備の立ち上げ運転において、第1流量調整弁の全開後からバーナの消火までの間に、ブロワから酸素含有ガス供給流路内へ酸素含有ガスを供給するのが困難になり、酸素含有ガスの流量が不足する場合があることを新たに知見した。
【0007】
すなわち、過給機の自立条件が成立するためには、十分な熱エネルギーを有するガスがタービンへ流入する必要があるが、第1流量調整弁の全開後には、予熱器により加熱された後の酸素含有ガスとバーナで生じる燃焼排ガスとを含む混合ガスが、タービンへ流入する。そして、バーナの消火後には、タービンへ供給される熱エネルギーのうちバーナの燃焼排ガスに相当する熱エネルギーが減少する。このため、第1流量調整弁の全開後には、タービンへ流入する混合ガスの熱エネルギーが自立条件の成立に必要な熱エネルギーに到達しただけでは十分ではなく、バーナの消火後もなお自立条件の成立に必要な熱エネルギーが確保できるまで、バーナ及びブロワを駆動させ続ける必要がある。
【0008】
この間に、酸素含有ガス供給流路内のガスの温度が上昇し、それに伴い当該流路内の圧力も上昇する。このため、ブロワのスペックが低い場合には流路内の圧力がブロワの最大吐出圧力を超えてしまい、ブロワから吐出されたガスが流路内へ供給されずに逆流してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、廃棄物処理設備の立ち上げ運転において、高スペックの送風機を用いなくても空気を経路内へ安定に供給可能な廃棄物処理設備及びその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係る廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉に燃焼用空気を導くための空気導入経路と、前記空気導入経路から流入する燃焼用空気を、前記焼却炉から排出される排ガスにより加熱する予熱器と、前記空気導入経路に配置された過給機であって、燃焼用空気を圧縮して前記予熱器側へ吐出するコンプレッサと、前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記コンプレッサを駆動させるタービンと、を含む前記過給機と、前記空気導入経路のうち前記コンプレッサと前記タービンとの間の部位である高圧経路に配置され、燃焼用空気の流通及び遮断を切り替える切替弁と、前記高圧経路のうち前記切替弁よりも前記タービン側に配置されたバーナと、前記高圧経路内へ燃焼用空気を供給する送風機と、前記高圧経路内の圧力を検知する圧力検知部と、前記高圧経路の外へ燃焼用空気を放出するための放風弁と、前記切替弁の開放後であって前記バーナの消火前の間に、前記圧力検知部により検知される圧力が前記送風機の最大圧力以下の目標圧力になるように前記放風弁を制御する制御部と、を備えている。
【0011】
上記廃棄物処理設備によれば、切替弁の開放後であってバーナの消火前の間に、圧力検知部により検知される圧力(空気導入経路のうちコンプレッサとタービンとの間の高圧経路内の圧力)が送風機の最大圧力以下の目標圧力になるように放風弁が制御される。このため、従来の廃棄物処理設備のように切替弁の全開後からバーナの消火までの間に放風弁を全閉状態に維持するものと異なり、高スペックの送風機を用いなくても、送風機から空気導入経路内へ燃焼用空気を安定に供給することが可能になる。これにより、廃棄物処理設備の立ち上げ運転中における燃焼用空気の流量不足を抑制することができる。
【0012】
上記廃棄物処理設備において、前記制御部は、前記切替弁の開放前において、前記目標圧力を指標とする前記放風弁の制御を実行せず、前記高圧経路のうち前記切替弁よりも上流側における圧力が前記高圧経路のうち前記切替弁よりも下流側における圧力よりも大きくなるように前記放風弁を制御する第1制御を実行してもよい。前記制御部は、前記切替弁の開放後において、前記第1制御から、前記圧力検知部により検知される圧力が前記目標圧力になるように前記放風弁を制御する第2制御へ切り替えてもよい。
【0013】
この構成によれば、切替弁の開放後において燃焼用空気がコンプレッサ側へ逆流するのを抑制することができる。また切替弁を開放するタイミングに合わせて、放風弁の制御を適宜切り替えることができる。
【0014】
本発明の他の局面に係る廃棄物処理設備の運転方法は、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉に燃焼用空気を導くための空気導入経路と、前記空気導入経路から流入する燃焼用空気を、前記焼却炉から排出される排ガスにより加熱する予熱器と、前記空気導入経路に配置された過給機であって、燃焼用空気を圧縮して前記予熱器側へ吐出するコンプレッサと、前記予熱器で加熱された燃焼用空気によって回転することにより前記コンプレッサを駆動させるタービンと、を含む前記過給機と、前記空気導入経路のうち前記コンプレッサと前記タービンとの間の部位である高圧経路に配置され、燃焼用空気の流通及び遮断を切り替える切替弁と、前記高圧経路のうち前記切替弁よりも前記タービン側に配置されたバーナと、前記高圧経路内へ燃焼用空気を供給する送風機と、前記高圧経路の外へ燃焼用空気を放出するための放風弁と、を備えた廃棄物処理設備を運転する方法である。この方法では、前記廃棄物処理設備の立ち上げ運転時における前記切替弁の開放後であって前記バーナの消火前の間に、前記高圧経路内の圧力が前記送風機の最大圧力以下の目標圧力になるように前記放風弁を操作する。
【0015】
この方法では、廃棄物処理設備の立ち上げ運転時における切替弁の開放後であってバーナの消火前の間に、空気導入経路のうちコンプレッサとタービンとの間の高圧経路内の圧力が送風機の最大圧力以下の目標圧力になるように放風弁を操作する。このため、従来のように廃棄物処理設備の立ち上げ運転時において切替弁の全開後からバーナの消火までの間に放風弁を全閉状態に維持する方法と異なり、高スペックの送風機を用いなくても、送風機から空気導入経路内へ燃焼用空気を安定に供給することが可能になる。これにより、廃棄物処理設備の立ち上げ運転中における燃焼用空気の流量不足を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、廃棄物処理設備の立ち上げ運転において、高スペックの送風機を用いなくても空気を経路内へ安定に供給可能な廃棄物処理設備及びその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る廃棄物処理設備の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る廃棄物処理設備の運転方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】上記運転方法における放風弁の開度制御を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る廃棄物処理設備の運転方法を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る廃棄物処理設備及びその運転方法を詳細に説明する。
【0019】
(廃棄物処理設備)
まず、本発明の一実施形態に係る廃棄物処理設備1の構成を、
図1に基づいて説明する。本実施形態に係る廃棄物処理設備1は、例えば下水汚泥等の廃棄物を焼却する設備である。
図1に示すように、廃棄物処理設備1は、焼却炉10と、空気導入経路20と、予熱器30と、排ガス経路40と、コンプレッサ51及びタービン52を含む過給機50と、切替弁V1と、バーナ60と、送風機70と、第1圧力検知部80と、第2圧力検知部85と、第1放風経路90と、第1放風弁V2と、第2放風経路91と、第2放風弁V6と、制御部100と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0020】
焼却炉10は、下水汚泥等の廃棄物を焼却する設備であり、例えば流動床式の焼却炉である。焼却炉10の側部には、燃焼用空気A1を炉内へ導入するための空気入口11が形成されており、焼却炉10の頂部には、廃棄物の焼却時に生じる排ガスG1を炉外へ排出するための排ガス出口12が形成されている。
【0021】
図1に示すように、焼却炉10内の下部には、例えば砂等の流動媒体が充填されることにより流動層110が形成されており、当該流動層110の上側の空間がフリーボードFBとなっている。空気入口11から炉内へ導入される燃焼用空気A1は、廃棄物の燃焼及び砂の流動化に用いられる。
【0022】
空気導入経路20は、焼却炉10に燃焼用空気A1を導くための経路である。空気導入経路20は、第1~第4経路21~24を有しており、燃焼用空気A1は第1~第4経路21~24を順に通過して焼却炉10内へ導入される。第1~第4経路21~24のそれぞれは、燃焼用空気A1の流路が内部に形成された配管からなる。なお、本実施形態における燃焼用空気A1は屋外の空気(外気)であるが、屋内の空気が燃焼用空気として用いられてもよい。
【0023】
第1経路21は、上流端側に燃焼用空気A1の取込口(図示しない)が形成されており、下流端がコンプレッサ51の吸込口に接続されている。本実施形態では、当該取込口が外気中に開放されている。第2経路22は、上流端がコンプレッサ51の吐出口に接続されていると共に、下流端が予熱器30の空気入口31に接続されている。第3経路23は、上流端が予熱器30の空気出口32に接続されていると共に、下流端がタービン52の流入口に接続されている。第4経路24は、上流端がタービン52の流出口に接続されていると共に、下流端が焼却炉10の空気入口11に接続されている。
図1に示すように、第3経路23のうち予熱器30の空気出口32の近傍には、温度検知部84が設置されている。なお、本明細書での「空気導入経路20における上流及び下流」は、焼却炉10へ向かう燃焼用空気A1の流れ方向を基準とする。
【0024】
予熱器30は、空気導入経路20及び排ガス経路40に配置された熱交換器であり、空気導入経路20(第2経路22)から流入する燃焼用空気A1を、焼却炉10から排出される排ガスG1により加熱する。予熱器30は、例えばシェル&チューブ式熱交換器であり、排ガスG1との熱交換を介して燃焼用空気A1を加熱する。なお、予熱器30は、シェル&チューブ式熱交換器に限定されるものではなく、他のタイプの熱交換器であってもよい。
【0025】
排ガス経路40は、上流端が焼却炉10の排ガス出口12に接続されていると共に下流端が予熱器30の排ガス入口33に接続された第1排ガス経路41と、上流端が予熱器30の排ガス出口34に接続された第2排ガス経路42と、を有している。排ガスG1は、排ガス出口12から焼却炉10の外へ排出された後、第1排ガス経路41を通過して予熱器30内へ流入する。そして、排ガスG1は、予熱器30において燃焼用空気A1との熱交換により温度が低下した後、排ガス出口34から予熱器30の外へ流出する。その後、排ガスG1は、図略のボイラ、減温塔、バグフィルタ及び触媒反応塔等の各設備を順に通過し、煙突から排出される。
【0026】
過給機50は、空気導入経路20に配置されており、コンプレッサ51とタービン52とが回転軸50Aにより互いに接続された構成を有している。
図1に示すように、コンプレッサ51は、空気導入経路20のうち予熱器30よりも上流側に配置されている。タービン52は、空気導入経路20のうち予熱器30よりも下流側に配置されている。
【0027】
コンプレッサ51は、タービン52から回転軸50Aを介して伝達される回転力により駆動する。コンプレッサ51は、第1経路21から吸い込んだ燃焼用空気A1を圧縮して所定の圧力まで昇圧させ、昇圧後の燃焼用空気A1を予熱器30側へ吐出する。吐出後の燃焼用空気A1は、第2経路22を通過した後、予熱器30内へ流入する。コンプレッサ51は、例えば遠心圧縮機であり、軸回りに回転して遠心力により燃焼用空気A1を昇圧する羽根車と、当該羽根車を収容するケーシングとを有している。
【0028】
タービン52は、予熱器30で加熱された燃焼用空気A1によって回転することにより、コンプレッサ51を駆動させる。具体的に、タービン52は、燃焼用空気A1の流れを受けて軸回りに回転する図略の翼車を有しており、当該翼車の回転が回転軸50Aを介してコンプレッサ51へ伝達される。
【0029】
切替弁V1は、空気導入経路20内における燃焼用空気A1の流通及び遮断を切り替える弁であり、空気導入経路20のうちコンプレッサ51とタービン52との間の部位である高圧経路25に配置されている。
図1に示すように、本実施形態では、切替弁V1は、第3経路23のうち第1放風経路90が接続される部位L1よりも下流側で且つバーナ60よりも上流側の部位に配置されている。切替弁V1は、制御部100により開度調整可能な流量調整弁である。
【0030】
バーナ60は、高圧経路25のうち切替弁V1よりもタービン52側(下流側)の部位に配置されている。
図1に示すように、バーナ60には、燃焼用空気供給経路71を介して送風機70が接続されていると共に、燃料供給経路72を介して燃料ポンプ73が接続されている。バーナ60は、燃料ポンプ73から燃料供給経路72を介して供給される重油等の燃料を、送風機70から燃焼用空気供給経路71を介して供給される空気により燃焼させる。燃料供給経路72には、燃料の流通及び遮断を切り替える燃料供給弁V4が設置されており、燃焼用空気供給経路71には空気の流通及び遮断を切り替える燃焼用空気供給弁V5が設置されている。
【0031】
送風機70は、高圧経路25内へ燃焼用空気A1を供給するものであり、例えばブロワである。
図1に示すように、燃焼用空気供給経路71は、上流端が送風機70の吐出口に接続されていると共に下流端がバーナ60の空気入口に接続されており、当該燃焼用空気供給経路71から送風経路74が分岐している。送風経路74は、第3経路23のうち切替弁V1よりも下流側で且つバーナ60よりも上流側の部位L2に接続されており、空気の流通及び遮断を切り替える送風弁V3が設置されている。これにより、送風機70から吐出された燃焼用空気A1は、一部がバーナ60へ供給されると共に、残部が第3経路23の部位L2へ供給される。なお、送風機70は、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転時や定常運転中において空気流量が不足したときに用いられる補助ブロワである。
【0032】
第1圧力検知部80は、高圧経路25内の圧力を検知するセンサである。
図1に示すように、本実施形態では、第1圧力検知部80は、第2経路22のうち第2放風経路91が接続される部位L3よりもコンプレッサ51側(上流側)に設置されている。第1圧力検知部80は、コンプレッサ51の下流側における圧力を検知し、その検知圧力に応じた信号を制御部100へ送信する。
【0033】
第2圧力検知部85は、第1圧力検知部80と同様に高圧経路25内の圧力を検知するセンサである。第2圧力検知部85は、第3経路23のうち切替弁V1よりも下流側で且つ部位L2よりも上流側の部位に設置されている。第2圧力検知部85は、切替弁V1の下流側における圧力を検知し、その検知圧力に応じた信号を制御部100へ送信する。
【0034】
第1放風経路90は、第3経路23内を流れる燃焼用空気A1を当該第3経路23の外(外気中)へ放出するための経路である。
図1に示すように、第1放風経路90は、一端が第3経路23のうち切替弁V1よりも上流側で且つ温度検知部84よりも下流側の部位L1に接続されており、他端が外気中に開放されている。
【0035】
第1放風弁V2は、第3経路23の外へ燃焼用空気A1を放出するための弁であり、第1放風経路90に設置されている。第1放風弁V2は、制御部100により開度調整可能に構成された流量調整弁であり、その開度によって第3経路23から第1放風経路90を介して外気中へ放出される燃焼用空気A1の流量が調整される。
【0036】
第2放風経路91は、第2経路22内を流れる燃焼用空気A1を当該第2経路22の外(外気中)へ放出するための経路である。
図1に示すように、第2放風経路91は、一端が第2経路22のうち第1圧力検知部80よりも下流側の部位L3に接続されており、他端が外気中に開放されている。
【0037】
第2放風弁V6は、第2経路22の外へ燃焼用空気A1を放出するための弁であり、第2放風経路91に設置されている。第2放風弁V6は、制御部100により開度調整可能に構成された流量調整弁であり、その開度によって第2経路22から第2放風経路91を介して外気中へ放出される燃焼用空気A1の流量が調整される。
【0038】
制御部100は、廃棄物処理設備1の各種動作を制御するコンピュータであり、受付部101と、判定部102と、弁制御部103と、送風機制御部104と、バーナ制御部105と、ポンプ制御部106と、記憶部107とを含む。受付部101、判定部102、弁制御部103、送風機制御部104、バーナ制御部105及びポンプ制御部106は、上記コンピュータの中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)により実行される各機能であり、記憶部107はメモリ等の記憶装置により構成されている。
【0039】
受付部101は、第1圧力検知部80、第2圧力検知部85及び温度検知部84の各々から送信される検知信号を受信する。判定部102は、第1圧力検知部80による検知圧力と第2圧力検知部85による検知圧力とを比較してその大小関係を判定し、また第1圧力検知部80による検知圧力と送風機70の最大圧力(最大吐出圧力)以下の目標圧力とを比較してその大小関係を判定する。当該目標圧力は、送風機70のスペック(最大吐出圧力)に応じて予め定められており、その情報(データ)が記憶部107に格納されている。
【0040】
弁制御部103は、判定部102による判定結果に基づいて、第1放風弁V2の開度を制御する。送風機制御部104は、送風機70の駆動のオン/オフを切り替える。バーナ制御部105は、バーナ60の点火及び消火を切り替える。ポンプ制御部106は、燃料ポンプ73の駆動のオン/オフを切り替える。
【0041】
制御部100は、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転時における切替弁V1の開放後であってバーナ60の消火前の間に、第1圧力検知部80により検知される圧力が送風機70の最大圧力以下の目標圧力になるように第1放風弁V2の開度を制御する。より具体的には、制御部100は、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転時における切替弁V1の開放前において、上記目標圧力を指標とする第1放風弁V2の制御を実行せず、高圧経路25のうち切替弁V1よりも上流側における圧力が高圧経路25のうち切替弁V1よりも下流側における圧力よりも大きくなるように第1放風弁V2を制御する第1制御を実行する。そして、制御部100は、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転時における切替弁V1の開放後において、上記第1制御から、第1圧力検知部80により検知される圧力が上記目標圧力になるように第1放風弁V2の開度を制御する第2制御へ切り替える。この制御の具体的な内容を以下において説明する。
【0042】
(廃棄物処理設備の運転方法)
次に、本実施形態に係る廃棄物処理設備の運転方法を、
図2,3のフローチャート及び
図4のタイムチャートに従って説明する。本運転方法は、上記廃棄物処理設備1の立ち上げ時の運転方法であり、上記制御部100によって以下の順序で実施される。
図4中において、横軸は立ち上げ運転中の時間経過を示し、縦軸は切替弁V1及び第1放風弁V2の開閉状態、ブロワ(送風機70)のオン/オフ、バーナ60のオン/オフ、第1圧力検知部80による検知圧力及び過給機50のエネルギーをそれぞれ示している。
【0043】
まず、廃棄物処理設備1の立ち上げ開始時には、切替弁V1が全閉で且つ第1放風弁V2が全開であり、送風機70及びバーナ60がそれぞれ停止している。この状態で、まず、制御部100が、送風機70及びバーナ60をそれぞれ駆動させる(ST10)。
【0044】
具体的には、送風機制御部104が送風機70を駆動させ、バーナ制御部105がバーナ60を駆動させる。また弁制御部103が送風弁V3、燃焼用空気供給弁V5及び燃料供給弁V4を開くと共に、ポンプ制御部106が燃料ポンプ73を駆動させる。
【0045】
これにより、送風機70からの燃焼用空気A1の一部が燃焼用空気供給経路71を介してバーナ60へ供給されると共に、重油等の燃料が燃料供給経路72を介してバーナ60へ供給される。そして、バーナ60において燃料が燃焼し、高温の燃焼排ガスが発生する。一方、送風機70からの燃焼用空気A1の残部が送風経路74を介して第3経路23の部位L2へ流入し、バーナ60において燃焼排ガスと混合された後、タービン52へ流入する。この混合ガスは、タービン52から流出した後、第4経路24を介して焼却炉10へ導入される。
【0046】
タービン52は、上記混合ガスの流れを受けて回転し、これによりコンプレッサ51が駆動する。コンプレッサ51は、第1経路21から燃焼用空気A1(外気)を吸い込み、所定の圧力まで圧縮した後に吐出する。コンプレッサ51から吐出された燃焼用空気A1は、第2経路22及び予熱器30を順に通過し、空気出口32から第3経路23内へ流出した後、第1放風経路90を介して外気中へ放出される。
【0047】
制御部100は、切替弁V1の開放前の状態(以下、「接続前状態」ともいう、
図4中のT0~T1の間)において、高圧経路25のうち切替弁V1よりも上流側における圧力が高圧経路25のうち切替弁V1よりも下流側における圧力よりも大きくなるように第1放風弁V2の開度を制御する第1制御(接続前制御)を実行する(ST20)。具体的には、当該接続前状態において、第1圧力検知部80及び第2圧力検知部85によって高圧経路25のうち切替弁V1の前後の圧力をそれぞれ検知し、判定部102が両検知圧力の大小関係を比較する。そして、第1圧力検知部80による検知圧力が第2圧力検知部85による検知圧力以下である場合には、弁制御部103が第1放風弁V2の開度を減少させる。本実施形態では、
図4に示すように、弁制御部103が第1放風弁V2の開度を時間経過と共に徐々に減少させ、これにより高圧経路25のうちコンプレッサ51から切替弁V1までの領域における圧力(第1圧力検知部80による検知圧力、
図4中のP1圧力)が時間経過と共に次第に上昇する。この間、制御部100は、送風機70の最大圧力以下の目標圧力を指標とする第1放風弁V2の制御を実行しない。一例として、当該接続前状態においては、第2圧力検知部85による検知圧力が70~80kPaであるのに対し、第1圧力検知部80による検知圧力が83kPaになるように第1放風弁V2の開度を徐々に絞る。
【0048】
次に、コンプレッサ51とタービン52の接続条件(第1圧力検知部80による検知圧力が第2圧力検知部85による検知圧力よりも大きいこと)が成立すると(ST30のYES)、弁制御部103が切替弁V1を閉状態から開状態へ切り替える(ST40)。以後、制御部100は、切替弁V1の開放後であってバーナ60の消火前の間(
図4中のT1~T2の間)に、第1圧力検知部80により検知される圧力が送風機70の最大圧力以下である目標圧力になるように第1放風弁V2の開度を制御する第2制御(接続後制御)を実行する。つまり、制御部100は、切替弁V1が全閉から全開に切り替わることに基づいて、第1放風弁V2の制御モードを上記第1制御から第2制御へ切り替える。
【0049】
本実施形態における目標圧力は、送風機70の最大吐出圧力(例えば、150kPa)よりも小さい圧力(例えば、当該最大吐出圧力よりも5kPa小さい145kPa)であるが、これに限定されない。上記目標圧力は、送風機70の最大圧力と同じであってもよい。
【0050】
図3は、第2制御の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、第1圧力検知部80が第2経路22内の圧力を検知し(ST21)、その検知信号が受付部101へ送信される。そして、判定部102が第1圧力検知部80による検知圧力が上記目標圧力未満であるか否かを判定する(ST22)。そして、第1圧力検知部80による検知圧力が目標圧力未満である場合は(ST22のYES)、弁制御部103が第1放風弁V2の開度を減少させる(ST23)。一方、第1圧力検知部80による検知圧力が目標圧力以上である場合は(ST22のNO)、第1放風弁V2の開度を減少させずにステップST24へ進む。
【0051】
ステップST24では、判定部102が、第1圧力検知部80による検知圧力が目標圧力を超えるか否かを判定する。そして、当該検知圧力が目標圧力を超える場合は(ST24のYES)、弁制御部103が第1放風弁V2の開度を増加させる(ST25)。これにより、第1放風経路90を介して高圧経路25の外へ放出される燃焼用空気A1の流量が増加し、高圧経路25内の圧力が低下する。一方、第1圧力検知部80による検知圧力が目標圧力と同じである場合は、第1放風弁V2の開度を維持し、ステップST21へ戻る。
【0052】
上記のような第1放風弁V2の開度制御(
図3中のST21~ST25による接続後制御)を、過給機50の自立条件が成立するまでの間繰り返し行う。具体的には、
図4に示すように、過給機50のエネルギーが当該過給機50の自立運転に必要なエネルギーE1よりも大きいエネルギーE2に到達した時に、過給機50の自立条件が成立する。このエネルギーE1とエネルギーE2との差は、接続後制御中におけるバーナ60による熱エネルギー(バーナ60へ最小流量の燃料を供給する間に生じる燃焼排ガスの熱エネルギー)である。これにより、バーナ60の消火後においても、過給機50の自立運転に必要なエネルギーE1が確保される。
【0053】
このように、過給機50のエネルギーがエネルギーE2(
図4)に到達するまでの間に、高圧経路25内の温度が上昇し、それに伴い高圧経路25内の圧力も上昇するため、第1放風弁V2が全閉状態のままでは高圧経路25内の圧力が過上昇する場合がある。そこで、本実施形態では、上述のように第1放風弁V2の開度によって高圧経路25内の圧力が上がり過ぎないように調整することにより、切替弁V1の開放後においても送風機70から高圧経路25内へ空気を安定して送り込むことができる。
【0054】
過給機50の自立条件が成立すると(ST50のYES)、例えば予熱器30から流出する燃焼用空気A1の温度が所定の基準温度以上になると、バーナ制御部105がバーナ60を消火すると共に弁制御部103が第1放風弁V2を閉じ(ST60)、続いて送風機制御部104が送風機70を停止させる(ST70)。以上のようにして、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転が完了し、以後、廃棄物処理設備1の定常運転が行われる。
【0055】
以上の通り、本実施形態に係る廃棄物処理設備1によれば、立ち上げ運転時における切替弁V1の開放後であってバーナ60の消火前の間に、第1圧力検知部80により検知される圧力が送風機70の最大圧力以下の目標圧力になるように第1放風弁V2の開度が制御される。このため、切替弁V1の全開後からバーナ60の消火までの間に第1放風弁V2を全閉状態に維持する場合と異なり、高スペックの送風機を用いなくても、送風機70から空気導入経路20内へ燃焼用空気A1を安定に供給することが可能になる。これにより、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転中における燃焼用空気A1の流量不足を抑制することができる。
【0056】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0057】
上記実施形態では、切替弁V1の開放後からバーナ60の消火までの間に第1放風弁V2の開度を制御する場合を一例として説明したが、この間に開度制御される放風弁の位置は、空気導入経路20のうちコンプレッサ51からタービン52の間であれば特に限定されない。例えば、切替弁V1の開放後からバーナ60の消火までの間に、第2放風弁V6の開度が
図3のフローチャートに従って制御されてもよい。
【0058】
上記実施形態では、切替弁V1の開放後からバーナ60の消火までの間に、第1放風弁V2の開度を第1圧力検知部80による検知圧力に基づいて制御する場合を一例として説明したが、この間に圧力検知する位置は、空気導入経路20のうちコンプレッサ51からタービン52までの間であれば特に限定されない。例えば、切替弁V1の開放後からバーナ60の消火までの間に、第2圧力検知部85による検知圧力に基づいて第1放風弁V2(又は第2放風弁V6)の開度を制御してもよい。
【0059】
上記実施形態では、送風機70が高圧経路25のうち予熱器30よりも下流側の部位L2に燃焼用空気A1を供給する場合を一例として説明したがこれに限定されず、高圧経路25のうち予熱器30よりも上流側の部位に送風機70から燃焼用空気A1を供給してもよい。
【0060】
上記実施形態では、接続前制御及び接続後制御のいずれにおいても第1放風弁V2の開度を制御する場合を一例として説明したが、両制御において異なる放風弁を使用してもよい。例えば、接続前制御においては第1放風弁V2の開度により切替弁V1よりも上流側の圧力を制御し、接続後制御においては第2放風弁V6の開度により高圧経路25内の圧力を制御してもよい。
【0061】
上記実施形態では、接続後制御における第1放風弁V2の操作が制御部100により自動で行われる場合を説明したが、第1放風弁V2の開度が手動で調整されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、廃棄物処理設備1の立ち上げ運転時に送風機70を起動し、送風機70から高圧経路25内へ空気を安定して供給するために第1放風弁V2の開度制御を行う場合を説明したが、廃棄物処理設備1の定常運転中においても燃焼用空気A1の流量が不足し、送風機70の起動が必要な場合もある。この場合にも、
図3のフローチャートに従って第1放風弁V2の開度を制御し、高圧経路25内の圧力が上がり過ぎないように調整してもよい。
【0063】
上記実施形態では、焼却炉が流動床式のものである場合を一例として説明したが、例えばストーカ式焼却炉等の他のタイプの焼却炉が用いられてもよい。また焼却炉における焼却対象である廃棄物は下水汚泥に限られず、例えば都市ごみ等であってもよい。
【0064】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 廃棄物処理設備
10 焼却炉
20 空気導入経路
25 高圧経路
30 予熱器
50 過給機
51 コンプレッサ
52 タービン
60 バーナ
70 送風機
80 第1圧力検知部
100 制御部
A1 燃焼用空気
G1 排ガス
V1 切替弁
V2 第1放風弁(放風弁)
V6 第2放風弁(放風弁)