(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】歯科用多色ミルブランク
(51)【国際特許分類】
A61C 13/087 20060101AFI20230317BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20230317BHJP
A61C 13/09 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61C13/087
A61C13/00 Z
A61C13/09
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229137
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2020-04-20
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】コンラード ハーゲンブーフ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス アンドレアス ハーフェレ
(72)【発明者】
【氏名】カール ランバッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ミッテルホーファ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク シュプレンガー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507069(JP,A)
【文献】国際公開第2017/114772(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0220337(US,A1)
【文献】国際公開第2019/035467(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011055393(DE,A1)
【文献】国際公開第2018/009518(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0137064(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/087
A61C 13/00
A61C 13/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なった色および/または明度を有する材料からなり相互に隣接するとともに相互に固定式に結合される少なくとも2つの層を有し、それらの層間においてそれの延在範囲の少なくとも一部にわたって移行領域(22)が存在し、その移行領域内に前記第1の層の材料と前記第2の層の材料の両方が存在し、さらに前記移行領域(22)内において少なくとも1つの層間の移行部幾何学形状(32)が三次元に延在する歯科用多色ミルブランクであり、前記移行部幾何学形状(32)が湾曲面(30)を含み、層の両方の延伸方向(24,26)に向かって斜めに指向する斜面(36)が前記湾曲面に接続し、後に加工する歯科補綴物の基底面を起点にして外方、すなわち咬合方向(52)および/または口腔方向および/または前庭方向に延在するノブ上に湾曲面(30)を形成することを特徴とする多色ミルブランクにおいて、
前記湾曲面(30)が、基底側から見て、丸型の窪みを有するゴルフボール状の表面として形成され、および/または湾曲面(30)が丸型の窪み上で(咬合方向(52)から見て)相互に交接することを特徴とする多色ミルブランク。
【請求項2】
象牙質材料層(18)である第1の層とエナメル質材料層である第2の層の間に移行領域(22)が存在し、従って第1の材料が象牙質材料で第2の材料はエナメル質材料であることを特徴とする請求項1記載の多色ミルブランク。
【請求項3】
第1の材料が象牙質材料、中間層(16)の第2の材料と中間層(16)が第2の層で、また第3の材料がエナメル質材料として第3の層内に存在し、移行領域(22)を象牙質材料と中間材料の間の移行領域(22)とし、また第2の移行領域(22)を中間材料とエナメル質材料の間に形成することを特徴とする請求項1記載の歯科用多色ミルブランク。
【請求項4】
複数の移行領域(22,24)が存在し、それらがいずれも互いに隣接する層間に三次元に延在し、すなわち平坦ではなく三次元に構造化され、請求項1の特徴を備える移行部幾何学形状(32)を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項5】
移行部幾何学形状(32)の湾曲面(30)の面法線が延伸方向(24,26)に対して最大で45°の角度を指向し、および/または湾曲面(30)上における両延伸方向(24,26)(すなわち延伸面のX方向(24)とY方向(26))に対する勾配が全て45°未満であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項6】
各湾曲面(30)の半分超にわたって一定であるか、または湾曲面(30)全体にわたって一定である湾曲半径を湾曲面(30)が有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項7】
各移行領域(22)あるいは少なくとも1つの移行領域(22)が、咬合面に対して平行であるかまたは咬合面に対して最大でも40°未満の角度で延在する平面内に存在することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項8】
各移行領域(22)あるいは少なくとも1つの移行領域(22)が、咬合面に対して平行であるかまたは咬合面に対して20°未満の角度で延在する平面内に存在することを特徴とする請求項7に記載の多色ミルブランク。
【請求項9】
湾曲面(30)が基本要素の中心であり、前記基本要素が層間の移行領域(22)の延伸範囲にわたって規則的に反復し、移行領域(22)全体にわたって均一なグリッドであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項10】
各基本要素(40)が、層の延伸方向に見て、10000nmないし3mmの大きさを有することを特徴とする請求項9記載の多色ミルブランク。
【請求項11】
第1の層と第2の層、ならびに第3の層も、明度および/または彩度に関して相互に異なり、また象牙質材料層(18)が他の層に比べてより濃色および/または彩度が高いことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項12】
より濃色および/または彩度が高い層が凸状の湾曲面(30)を有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項13】
2つの移行領域(22)が実質的に相互に平行に延在し、それらが互い違いの湾曲面(30)をそれぞれ有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の多色ミルブランク。
【請求項14】
それぞれ異なった色および/または明度を有する材料からなり相互に隣接するとともに張り合わせによって相互に固定式に結合される少なくとも2つの層を有し、それらの層間においてそれの延在範囲の少なくとも一部にわたって移行領域(22)が存在し、その移行領域内に前記第1の層の材料と前記第2の層の材料の両方が存在し、さらに前記移行領域(22)内において層間の移行部幾何学形状(32)が三次元に延在す
る多色歯科補綴物であり、前記移行部幾何学形状(32)が湾曲面(30)を含み、層の両方の延伸方向(24,26)に向かって斜めに指向する斜面(36)が前記湾曲面に接続することを特徴とする多色歯科補綴物において、
前記湾曲面(30)が、基底側から見て、丸型の窪みを有するゴルフボール状の表面として形成され、および/または湾曲面(30)が丸型の窪み上で(咬合方向(52)から見て)相互に交接することを特徴とする多色歯科補綴物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前文に記載の歯科用多色ミルブランク、ならびに請求項16前文に記載の付加製造によって形成された歯科補綴物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯を作成する際にブロック形状あるいは円盤型で存在するミルブランクを使用するか、またはそれに代えて対応する歯を付加製造によって作成することが以前から知られている。
【0003】
製造は樹脂、複合材料、あるいはセラミックに基づいて行うことができ、外観的印象を自然歯に近づけることが目標とされる。
【0004】
自然歯は主に象牙質から形成され、それがエナメル質の層によって被覆されている。エナメル質の層厚は様々であり、エナメル質の透明性によって象牙質の構造が外観的な印象に影響を与える。
【0005】
人工歯を複製する際には通常適宜な層構造が選択され、従って透明な歯材料がより透明性の低い歯材料に重ねられる。
【0006】
樹脂から歯を製造する場合は、高架橋材料と低架橋材料の両方が使用される。低架橋樹脂によって層間の色移行部を形成することもできる。
【0007】
しかしながら、その種の樹脂は長期耐久性の点で不利であり、従ってそれらの材料はむしろ暫定的な補綴物に適するもの見られる。
【0008】
高架橋樹脂の場合、段階的な色変化を有する色移行部の疑似を行うために、通常異なった着色が成された多数の個別層から加工する。
【0009】
個別の層間の色差および不透明度差は比較的小さく、外観的に満足できる補綴を達成するために5層あるいはそれ以上の層をミルブランクが備える必要がある。
【0010】
一般的に、ブランク盤は約100mmの直径と約20mmの高さを有する。例えば異なった不透明度と色強度を有する8層とする場合、適宜な高さ長を選択することによってより明色あるいは濃色の歯を作成することもできる。
【0011】
しかしながら歯を最下方、すなわち象牙質材料の方に向かってシフトさせると、エナメル質材料特性の透明性が欠如し、一方最上方、すなわちエナメル質材料の方に向かってシフトさせると象牙質材料特性が欠如するため、この解決方式は美観的に満足できるものではない。比較的小さな歯を製造する場合、少なくとも3層である所要の被覆がしばしば達成不可能になる。
【0012】
加えて、多数の層を設けると高コストになるばかりでなく、不良も発生しやすい。
【0013】
高架橋樹脂の材料は通常ペーストリ状の粘度を有していて階層の形成が不可能であるため、高架橋樹脂システムにおいて材料を混合することは不可能である。
【0014】
1番目の層と2番目の層の材料が共に存在する移行領域を設けることも既に提案されている。しかしながら、この種の解決方式によっても必要な層の数を削減することはできず、また特に不透明度低い歯、すなわち透明なエナメル質材料からなる歯の場合に疑似が不満足になるため、この解決方式も普及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明の目的は、美観的に顕著に改善され、必要な層の数を削減することもでき、さらに恒久的な歯科補綴物への適応性も有する、請求項1前文に記載の多色ミルブランク、ならびに付加製造によって形成された多色補綴物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題は本発明に従って請求項1あるいは請求項16によって解決される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0017】
本発明によれば、2つの層間の移行領域内に特殊な三次元の移行部幾何学形状を形成し、その移行部幾何学形状に前記2つの層の両方の延伸方向を指向する湾曲面を設ける。前記の湾曲面は凸状または凹状とされ、多次元に交替する方式で山と谷を超えて延在する。1つの山は両方の延伸方向において谷によって囲繞される。山と谷の間には同様に全ての方向を指向する斜面が層の延伸面に対して斜めに延在する。
【0018】
この解決方式は、明色の歯と濃色の歯のいずれにおいても意外なほど美観的に良好な結果を達成し、僅か2枚の層のみを使用して加工することが可能になる。そのことが、ミルブランクの作成ならびに対応する付加製造によって作成される補綴物の両方を大幅に単純化させる。
【0019】
本発明によれば材料として高架橋樹脂が使用され、従って良好な長期耐久性が提供される。
【0020】
本発明に係る湾曲面は三次元に湾曲し、従って異なった空間方向に同時に延在する曲面を備える。
【0021】
その種の曲面の一例は半円環体である。その半円環体は1つの空間方向に見て半円形を有し、別の空間方向に見ると円形を有する。表面が2つの空間方向に湾曲し、従って層の複数の延伸方向に湾曲する曲面を形成する。
【0022】
意外なことに、本発明に係る特殊に湾曲した湾曲面によって所要の美観的な効果が達成されるとともに、大幅に削減された層数、例えば僅か2枚あるいは3枚の層数で充足させることが可能になる。
【0023】
好適な構成形態によれば、湾曲面が少なくとも部分的に楕円形に形成される。
【0024】
そのため、確率的に均一に分散された2つの層間の境界面上の屈折角あるいは反射角の配分が当然有効である。
【0025】
当該2つの層は相互に嵌合式に結合することが好適であるが、さらに例えばミルブランクの各層を相互に結合する際に層のうち少なくとも一方を熱処理するか、または例えば付加製造によって歯科補綴物を作成する際には溶融によって結合することが好適である。
【0026】
本発明によれば、1つの色移行部のみによって所要の外観的効果が達成可能であるため、大きな歯および小さな歯のいずれにおいても同様に所要の色移行が視覚的に形成されることが好適である。
【0027】
歯科補綴物内の境界面の位置は必要に応じて広範囲に調節可能であることが理解される。完全な歯列弓を作成する場合、境界面は実質的に咬合面に対して平行に延在することができる。単に1本あるいは2本の前歯のみを作成すべき場合は、境界層の位置を必要に応じて適宜調節することが可能であり;例えば天然のエナメル質と象牙質の間の境界層の軌道に合わせて傾斜状にすることができる。
【0028】
天然の境界面の軌道に疑似させるために、必要に応じて境界層を肉眼で見て構造化されたものとすることができ、例えば湾曲および/または波状にすることができる。
【0029】
肉眼で見て境界面がグリッドを有することが好適であり、すなわち周期的に反復する湾曲面の構造を有していて、それが2つの層の両方の延伸方向に向かって繰り返される。
【0030】
そのため、本発明によれば基本要素が設けられ、その上に湾曲面が形成される。基本要素は例えば0.01mmないし3mmの大きさとし、湾曲面の半径も同程度の数値レベルとすることができ、例えば5000nmないし4mmの範囲とすることができる。
【0031】
本発明によれば、基本要素を六角形構造あるいはハニカム構造に配列し、相互に調和的に合体させることが極めて好適である。
【0032】
このことは、特に隆起部と低没部が交互に規則的に存在するノブ群からなる構造を形成する場合に、例えば湾曲面を相互に交差させることによって形成することができる。
【0033】
前記ノブ群は球状ノブから形成することが好適であり、すなわち球状の上面を有していて、それらの間にいずれも対称形の湾曲面を有する窪み部あるいは溝が延在する。
【0034】
本発明によれば、湾曲面が一方の層延伸方向のみでなく両方の層延伸方向を指向することも極めて重要である。それによって初めて、両方の空間方向において連続的に変化する反射角あるいは屈折角が提供される。
【0035】
実験の結果1つの延伸方向のみを指向する湾曲面によれば美観的に顕著に低質な印象が提供され、それがさらに観察者の目視角度にも依存することが示された。
【0036】
本発明によれば、基本要素の高さがそれの大きさと同程度の数値レベルになり、好適には大きさの10ないし60%となる。それによって45°の傾斜を有する湾曲面が得られるが、その際本発明により傾斜角が両方の空間方向において極めて幅広なガウス曲線となることが理解される。
【0037】
境界面の傾斜角を本発明に係る層の延伸方向において観測すると、分散が実質的に線形であって平均傾斜の重心が約30°となるが、頻度分布の中に例えば0°および60°等の末端値も最頻値の半分超の頻度を有するような方式で含まれる。
【0038】
傾斜角の頻度分布は両方の延伸方向の空間方向において実質的に同等であることが好適である。
【0039】
本発明の好適な追加構成によれば、エナメル質層と中間層と象牙質層の3つの層が設けられる。その際、中間層はブランクの象牙質側よりもブランクのエナメル質側により近く配置することが好適である。
【0040】
本発明によれば高架橋樹脂結合が基本であるものの、層の重ね合わせに際して圧力および/または熱のためにペーストリ状の粘度にもかかわらず最小限の混合が発生することは排除し得ない。そのため、混合領域が僅か数nmないし場合によっては500nm程であるとしても、両方の層間の移行部はより不鮮明になる。
【0041】
それに代えて、層を相互に接着することもでき、その際接着層を例えば50000nmの厚さとすることができる。
【0042】
本発明に係る層間の移行部における多様な角度に基づいた極めて良好な分散によって以下に記す効果が観察できる:
【0043】
中間層と象牙質層の間の移行部はエナメル質層と中間層の間に比べて色強度およびコントラストがより強くなる。それにもかかわらずその移行部は不可視あるいは実質的に不可視であり、その理由は、あまり深くに延在しない領域、すなわち前庭側あるいは咬合側の移行領域、つまりエナメル質層と中間層の間の移行領域が、より深くに延在する移行領域、すなわち口腔側あるいは歯肉側に延在する移行領域内の細部が認識不可能になるような方式でマスキング効果をもたらすためである。
【0044】
このことは、中間層とエナメル質の間の移行部が本発明に従って構造化されておらずむしろそこに平坦な移行部が設けられる場合でも該当する。
【0045】
しかしながら、本発明に従って少なくとも部分的に複数の延伸方向を指向する湾曲面を両方の移行領域に設けることが好適である。
【0046】
湾曲面上において当然垂直軸周りの湾曲が特に重要である。それが最も強力に拡散および解像効果をもたらし、従って上述した本発明に係るノブ構造が好適である。
【0047】
本発明によれば、ミルブランクの各歯に対して隣接する歯から分離された移行領域が存在し、それが咬合面に隣接する頂点と、口腔側および前庭側ならびに近心側および遠心側方向において歯肉に向かって下降する弓状フランクを有することが好適である。
【0048】
本発明によれば、湾曲面を円弧上に形成し、その円弧の軸をブランクの延伸方向に対して直角に延在させることが好適である。
【0049】
本発明によれば、ブランクを60ないし120mmの直径を有する平坦なシリンダ形状、特に円盤型に形成することが好適である。
【0050】
本発明によれば、咬合側方向から見て湾曲面が水平に切断された(ハーフ)ゲート上に形成されることが好適である。
【0051】
本発明によれば、湾曲面が六角形構造に配置され、それの中央円環開口が特に球体セグメントによって閉鎖されるか、または中央円環開口が平坦に閉鎖されることが好適である。
【0052】
本発明によれば、各基礎要素の高さがその基礎要素の大きさの1%ないし300%、特に10%ないし100%であることが好適である。
【0053】
本発明によれば、基礎要素がそれの大きさの10ないし50%に切断されることが好適である。
【0054】
本発明によれば、切断部を丸み付けし、特に0.1mmないし1.3mm、極めて好適には0.4mmないし0.7mmの丸み半径を有するようにすることが好適である。
【0055】
本発明によれば、湾曲面の湾曲半径が各基本要素の大きさの5ないし50%、特に15ないし20%であることが好適である。
【0056】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明に係る多色ミルブランクの一実施形態を示す部分的に切開された側面図である。
【
図2】
図1のミルブランクを下方から見て立体的に示した説明図である。
【
図2a】
図1aの詳細部を拡大して示した平面図である。
【
図3】上記各図面に係るミルブランクの移行部幾何学形状に関する3個の基本要素を示した概略説明図である。
【
図4】
図3の詳細構造を別の視野で示した説明図である。
【
図5】本発明に係るミルブランクから製造される歯科補綴物の一部を示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1および
図2に示されたミルブランク10は周知の方式で円盤型であり、約100mmの直径を有する。ミルブランク10の高さは20mmである。
【0059】
同様に周知の方式で周回式の隆起した縁部12を備え、それが対応するフライス盤のホルダ内に固定されるように機能する。
【0060】
図示された実施形態においてミルブランクが3つの層を備え、すなわちエナメル質層14と中間層16と象牙質層18である。
【0061】
3つの層14ないし18の間にそれぞれ移行領域が存在し、すなわちエナメル質層14と中間層16の間の移行領域20と中間層16と象牙質層18の間の移行領域22である。
【0062】
各移行領域20および22が本発明に係る独自の移行部幾何学形状を有し、それが三次元に延在するとともに本発明に従って両方の延伸方向を指向する湾曲面30を備えるが、それに関しては
図1aを参照しながら以下に詳細に記述する。
【0063】
ここでは、延伸方向24がX方向で、図の平面に直交する方向がY方向26である。
【0064】
移行部幾何学形状内において両方の移行領域20および22は同様であるが、実施例に応じて異なった移行部幾何学形状、例えば異なったグリッド寸法に形成可能であることも理解される。
【0065】
山32および谷34上に湾曲面30が形成される。山32と谷34の間には、両方の延伸方向24および26に向かって斜めに延在するがそれでもなお両方の延伸方向24および26を指向する斜面36が形成される。
【0066】
山32は一種の頂上として形成され、従ってそれぞれ実質的に円形の断面を有するノブを形成する。
【0067】
一方谷34は山32の周りで相互に結合され、従って同様に円形に山32の周りを延在する。
【0068】
斜面36は、中央でもっと大きくなるとともに山32の頂点を起点にして谷34で緩やかに終了する斜度を有する。
【0069】
従って谷34の湾曲半径が山32の湾曲半径より幾らか大きくなる。
【0070】
図示された実施例において山32と谷34がグリッド状に延在し、山32とそれに対応して周回する谷34の各組み合わせが対応する移行部幾何学形状44あるいは42の基本要素40を形成する。
【0071】
図示された実施例において、グリッド寸法は隣接する山32の頂点間の距離として2.5mmを有する。高さ、すなわち山32と谷34の間の垂直距離はグリッド寸法の約半分となる。
【0072】
加えて、図示された実施例において下記のように層の配分が成される:
エナメル質層14の高さ: 8mm
中間層16の高さ: 3mm
象牙質層18の高さ: 9mm
【0073】
図2には、ミルブランク10の下面が構造化され、例えばノブ構造45を有することが示されている。
【0074】
その種の構造は例えば六角形の基礎構造を有し;その基礎構造が移行部幾何学形状32および34の可能な構成に相当し、それが
図2aの平面図に示されている。それに代えてその他の任意の、特に多角形の基礎構造も可能であることが理解される。
【0075】
図示された実施例において移行部幾何学形状44および42は合同であり、従って移行部幾何学形状44において山32が存在する位置には移行部幾何学形状42においても同じものが存在する。
【0076】
それと異なった隆起の配分も可能である。例えば環状の隆起の配分も可能であり、例えば中央の起点を設け、それを囲繞して漸増する隆起の数を有するリングを設けることも可能である。それに代えて、場合によって反射の削減に関して有利であるオフセットも可能であることが理解される。
【0077】
図3には、基本要素40をどのように形成することができるかが示されている。明確化のために3個の基本要素40a,40bおよび40cが、前述した実施例において相互に交接するような方式で示されている。
【0078】
図3の視界は
図2aの断面図に相当するが、基本的に斜め下からの方向である。従って
図3において山32は下方で谷34が上方に存在する。
【0079】
谷34はそれぞれ下方に向かってノブ形状の山32を囲繞する。
【0080】
相互に隣接する基本要素40において山32と谷34の間の斜面36が相互に交差し、従って一部は傾斜しまた一部は垂直な面法線を有する複数の湾曲面30に対して緩やかな移行部が存在する。
【0081】
斜面36は延伸方向24および26において斜めに指向する。斜面傾斜は山32を始点にして最初は増加し、転換点48から各谷34の中央で斜度0になるまで再び下降する。
【0082】
転換点48上の斜度は約35°になるが、その斜度は必要に応じて広範囲に調節可能であることが理解される。
【0083】
図4には、本発明に係る基本要素40aおよび40bの別の切開された立体図が示されている。山32は、それを囲繞している谷34から丸み付けられた円錐形状に突立する。移行位置50上、すなわち想定される山32間の中央で谷の切込みの深さが幾らか小さくなる。
【0084】
図5には歯科補綴物の中間層16が示されており、象牙質層18に対して本発明に係る移行部幾何学形状42を有する。咬合方向52において図示されていないエナメル質層が延在する。
【0085】
図示されているように、この実施形態においては山32が咬合方向52を指向し、一方谷34は山32の向かい側で咬合面52から偏位される。
【0086】
それに代えて、山32と谷34の順序を入れ替えた別の構成形態も可能であることが理解される。
【0087】
図6には、それぞれ基本要素40を形成する山32と谷34の構造が拡大して示されている。
【0088】
基本要素40の基礎構造が六角形であり、また基本要素40は相互に対称に延在することが示されている。