(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】純水製造システム及び純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230317BHJP
B01D 61/48 20060101ALI20230317BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230317BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20230317BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20230317BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/48
B01D61/58
C02F1/469
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2020539312
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031658
(87)【国際公開番号】W WO2020045061
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2018159570
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯山 真充
(72)【発明者】
【氏名】木本 洋
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-279967(JP,A)
【文献】特開平11-244853(JP,A)
【文献】特開2006-051423(JP,A)
【文献】特開2001-259376(JP,A)
【文献】米国特許第6365023(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
C02F 1/46- 1/48
C02F 1/32
C02F 9/00- 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、電気式脱イオン装置と、これらの装置を上流側からその順に接続する処理水管を備える純水製造システムであって、
前記電気式脱イオン装置は、交互に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に交互に形成された濃縮室及び脱塩室と、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に配置される1対の電極室と、を備えており、
前記処理水管は前記紫外線酸化装置で処理された処理水を前記電気式脱イオン装置の少なくとも脱塩室に供給するように前記電気式脱イオン装置に接続されるとともに、
前記純水製造システムは、前記逆浸透膜装置の透過水を前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の電極室に供給する第1のバイパス管を具備することを特徴とする純水製造システム。
【請求項2】
前記逆浸透膜装置の透過水を、前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の濃縮室に供給する第2のバイパス管をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の純水製造システム。
【請求項3】
前記電気式脱イオン装置は、前記電気式脱イオン装置の、濃縮室及び電極室に通じる共通入口ノズルを有し、
前記第1のバイパス管及び前記第2のバイパス管はいずれも前記共通入口ノズルに接続されることを特徴とする請求項2に記載の純水製造システム。
【請求項4】
前記電気式脱イオン装置は、前記電気式脱イオン装置の、濃縮室に通じる濃縮室入口ノズルと電極室に通じる電極室入口ノズルとを有し、
前記第1のバイパス管は前記電極室入口ノズルに接続され、
前記第2のバイパス管は前記濃縮室入口ノズルに接続されることを特徴とする
請求項2に記載の純水製造システム。
【請求項5】
前記電極室内及び前記濃縮室内にイオン交換体を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の純水製造システム。
【請求項6】
前記紫外線酸化装置で処理された処理水の過酸化水素濃度が100μg/L以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の純水製造システム。
【請求項7】
原水を、逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、電気式脱イオン装置とで順に処理する純水製造方法であって、
前記電気式脱イオン装置は、交互に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に交互に形成された濃縮室及び脱塩室と、
前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に配置される1対の電極室と、を備えており、
前記紫外線酸化装置で処理された処理水を、前記電気式脱イオン装置の少なくとも脱塩室に供給し、
前記逆浸透膜装置の透過水を、前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の電極室に供給することを特徴とする純水製造方法。
【請求項8】
前記逆浸透膜装置の透過水を、前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の濃縮室に供給することを特徴とする請求項7に記載の純水製造方法。
【請求項9】
前記紫外線酸化装置で処理された処理水の過酸化水素濃度が100μg/L以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造システム及び純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶ディスプレイの製造工程で用いられる洗浄用水や医薬用水等に適用される純水の製造において、電気式脱イオン装置(EDI)が用いられている。電気式脱イオン装置は、装置内のイオン交換体を電気的に再生しながら、原水の脱イオン処理を行う。そのため、電気式脱イオン装置では、イオン交換樹脂塔のように薬剤による再生を必要とせず、連続採水が可能である。
【0003】
電気式脱イオン装置は、カチオン(陽イオン)のみを透過させるカチオン交換膜とアニオン(陰イオン)のみを透過させるアニオン交換膜との間にイオン交換体を充填して脱塩室を構成し、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に濃縮室を配置した構成である。そして、脱塩室から見てアニオン交換膜側に電極室(陽極室)を介して陽極を、カチオン交換膜側に電極室(陰極室)を介して陰極を配置する。陽極と陰極との間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水すると、被処理水中のイオン成分は脱塩室内のイオン交換体に捕捉されるとともに、水の解離反応によって生成する水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)によって、イオン交換体の再生が行われる。
【0004】
このようにして、電気式脱イオン装置において被処理水は脱塩室を通過することで脱イオンされ精製される。一方、濃縮室および電極室にも、例えば、被処理水が通水される。濃縮室および電極室を通水する被処理水中には脱塩室から移動したイオン成分が濃縮されて、濃縮水となって電気式脱イオン装置の外に排出される。
【0005】
この電気式脱イオン装置を用いた純水製造システムとして、逆浸透膜装置(RO)で脱イオン水を得て、紫外線酸化装置(TOC-UV)でこの脱イオン水中の有機物成分を分解したのち、紫外線酸化装置で生じた低分子量の有機酸などのイオン成分を電気式脱イオン装置で処理するシステムがある。このような電気式脱イオン装置を設けたシステムとして、電気式脱イオン装置を2段で設け、脱塩室処理水の一部を濃縮室に通水するシステムや(例えば、特許文献1参照。)、紫外線酸化装置で発生する酸化成分によるイオン交換体の劣化を防止する目的で、紫外線酸化装置と電気式脱イオン装置の間に紫外線酸化装置よりも長波長の紫外線を照射する紫外線殺菌装置を設けるシステムも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
近年、大規模集積回路(LSI)の超高集積化に伴い、半導体製造用の超純水のさらなる高水質化の要望が高まっている。特に、水中のシリカやホウ素などの微量不純物を著しく低濃度化した超純水が求められている。しかしながら、微量不純物の除去率を向上させようとすると、従来の電気脱イオン装置を2段で設ける方法では、電気脱イオン装置における水回収率や電流効率が低下するという問題がある。紫外線ランプを2段設ける装置では、使用する装置の数が増えることで、システムが複雑化したりコストが増大したりする問題がある。そのため、高水質の純水を長期間効率よく製造することのできる方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-51423号公報
【文献】特開2011-45824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、高水質の純水を長期間安定的に製造することのできる純水製造システム及び純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の純水製造システムは、逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、電気式脱イオン装置と、これらの装置を上流側からその順に接続する処理水管を備える純水製造システムであって、前記電気式脱イオン装置は、交互に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に交互に形成された濃縮室及び脱塩室と、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に配置される1対の電極室と、を備えており、前記処理水管は前記紫外線酸化装置で処理された処理水を前記電気式脱イオン装置の少なくとも脱塩室に供給するように前記電気式脱イオン装置に接続されるとともに、前記純水製造システムは、前記逆浸透膜装置の透過水を前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の電極室に供給する第1のバイパス管を具備することを特徴とする
【0010】
本発明の純水製造システムは、前記逆浸透膜装置の透過水を、前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の濃縮室に供給する第2のバイパス管をさらに具備することが好ましい。
【0011】
本発明の純水製造システムにおいて、前記電気式脱イオン装置は、前記電気式脱イオン装置の、濃縮室及び電極室に通じる共通入口ノズルを有し、前記第1のバイパス管及び前記第2のバイパス管はいずれも前記共通入口ノズルに接続されることが好ましい。
【0012】
本発明の純水製造システムにおいて、前記電気式脱イオン装置は、前記電気式脱イオン装置の、濃縮室に通じる濃縮室入口ノズルと電極室に通じる電極室入口ノズルとを有し、前記第1のバイパス管は前記電極室入口ノズルに接続され、前記第2のバイパス管は前記濃縮室入口ノズルに接続されることが好ましい。
【0013】
本発明の純水製造システムにおいて、前記濃縮室及び前記電極室内にイオン交換体を有することが好ましい。
【0014】
本発明の純水製造システムにおいて、紫外線酸化装置で処理された処理水の過酸化水素濃度が100μg/L以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の純水製造方法は、原水を、逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、電気式脱イオン装置とで順に処理する純水製造方法であって、前記電気式脱イオン装置は、交互に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に交互に形成された濃縮室及び脱塩室と、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に配置される1対の電極室と、を備えており、前記紫外線酸化装置で処理された処理水を、前記電気式脱イオン装置の少なくとも脱塩室に供給し、前記逆浸透膜装置の透過水を、前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の電極室に供給することを特徴とする。
【0016】
本発明の純水製造方法において、前記逆浸透膜装置の透過水を、前記紫外線酸化装置を介さずに前記電気式脱イオン装置の濃縮室に供給することが好ましい。
【0017】
本発明の純水製造方法において、紫外線酸化装置で処理された処理水の過酸化水素濃度が100μg/L以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の純水製造システム及び純水製造方法によれば、高水質の純水を長期間安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の純水製造システムの一例を概略的に表すブロック図である。
【
図2A】
図1に示す純水製造システムで使用される電気式脱イオン装置の一例を概略的に示す図である。
【
図2B】
図1に示す純水製造システムで使用される電気式脱イオン装置の別の一例を概略的に示す図である。
【
図3】実施形態の純水製造システムの別の一例を概略的に表すブロック図である。
【
図4】実施形態の純水製造システムのさらに別の一例を概略的に表すブロック図である。
【
図5】実施例で使用した純水製造システムを概略的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。また、以下の複数の図面において同一の構成には同一の符号を付して、重複する動作については説明を省略する。
【0021】
図1に示す実施形態の純水製造システム1は、逆浸透膜装置10と、紫外線酸化装置(TOC-UV)11と、電気式脱イオン装置(EDI)12と、これらの装置を上流側からその順に接続する処理水管133を備える。純水製造システム1は、被処理水供給部20から供給される被処理水を処理して純水を製造し、得られた純水を使用場所であるユースポイント(POU)14に供給するシステムである。
【0022】
純水製造システム1において、処理水管133は被処理水供給部20から被処理水を逆浸透膜装置10に供給する第1の処理水管133aと、逆浸透膜装置10の透過水を紫外線酸化装置11に供給する第2の処理水管133bと、紫外線酸化装置11で処理された処理水を電気式脱イオン装置12に供給する第3の処理水管133cと、電気式脱イオン装置12の透過水を純水の使用場所であるユースポイント14に送液する第4の処理水管133dとからなる。
【0023】
純水製造システム1は、逆浸透膜装置10の透過水を紫外線酸化装置11に供給する第2の処理水管133bから分岐して、逆浸透膜装置10の透過水を電気式脱イオン装置12に供給する第1のバイパス管131を有する。逆浸透膜装置10には濃縮水を排出する排出管135が接続されている。
【0024】
電気式脱イオン装置12は、以下に例示するように、交互に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらのカチオン交換膜及びアニオン交換膜の間に交互に形成された濃縮室及び脱塩室を有している。また、電気式脱イオン装置12は、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に配置される1対の電極室を備えている。
【0025】
純水製造システム1において、電気式脱イオン装置12には給水管として、第3の処理水管133cおよび第1のバイパス管131が接続されている。紫外線酸化装置11から第3の処理水管133cを経て電気式脱イオン装置12に供給される紫外線酸化装置11で処理された処理水は、電気式脱イオン装置12の少なくとも脱塩室に供給される。また、純水製造システム1において、逆浸透膜装置10から第1のバイパス管131を経て電気式脱イオン装置12に供給される逆浸透膜装置10の透過水は、電気式脱イオン装置12の電極室に供給される。また、電気式脱イオン装置12には排水管として、脱イオン水である透過水を排出する第4の処理水管133dおよび濃縮水を排出する濃縮水排出管136が接続されている。
【0026】
図2Aおよび
図2Bに、純水製造システム1で使用する電気式脱イオン装置12の一例をおよび別の一例をそれぞれ概略的に示す。
図2Aに、紫外線酸化装置11で処理された処理水が脱塩室と濃縮室に供給され、逆浸透膜装置10の透過水が電極室に供給される場合の電気式脱イオン装置12の例を示す。
図2Bに、紫外線酸化装置11で処理された処理水が脱塩室に供給され、逆浸透膜装置10の透過水が電極室と濃縮室に供給される場合の電気式脱イオン装置12の例を示す。なお、電気式脱イオン装置12において、脱塩室、濃縮室、電極室の通水方向は、
図2Aおよび
図2Bの向きに限定されない。例えば、脱塩室の通水方向と、濃縮室および電極室の通水方向を逆向きにすることもできる。
【0027】
図2Aに示す電気式脱イオン装置12は、交互に配置されたカチオン交換膜21とアニオン交換膜22とを備えており、カチオン交換膜21及びアニオン交換膜22の間に濃縮室23と脱塩室24とが交互に形成されている。また、カチオン交換膜21及びアニオン交換膜22の外側には、陽極室25aと陰極室25bからなる1対の電極室が配置されている。また、電気式脱イオン装置12は、陽極室25aに隣接した陽極26aと、陰極室25bに隣接した陰極26bを備えており、陽極26aと陰極26b(以下、「電極26a、26b」ともいう)は直流電圧を印加する電源27に接続される。
【0028】
図2Aに示す電気式脱イオン装置12は、第3の処理水管133cから供給される紫外線酸化装置11で処理された処理水を、濃縮室23及び脱塩室24にそれぞれ供給する濃縮室給水管123及び脱塩室給水管124を有する。また、第1のバイパス管131から供給される逆浸透膜装置10の透過水を、陽極室25aと陰極室25b(以下、「電極室25a、25b」ともいう)に供給する電極室給水管125を有する。
【0029】
図2Aに示す電気式脱イオン装置12は、脱塩室24で脱イオン処理された脱イオン水(透過水)を第4の処理水管133dに移送する脱塩室排水管224を有する。また、濃縮室23及び電極室25a、25bから排出されるイオン成分が濃縮された濃縮水を濃縮水排出管136に移送する濃縮室排水管223及び電極室排水管225を有する。
【0030】
図2Bに示す電気式脱イオン装置12は、濃縮室給水管123の上流側の接続先が第1のバイパス管131である以外は、
図2Aに示す電気式脱イオン装置12と同じ構成である。
【0031】
このように、純水製造システム1においては、逆浸透膜装置10の透過水を、紫外線酸化装置11で処理した後、第3の処理水管133cを介して電気式脱イオン装置12の少なくとも脱塩室24に供給するとともに、逆浸透膜装置10の透過水を、紫外線酸化装置11をバイパスして第1のバイパス管131を介して電気式脱イオン装置12の少なくとも電極室25a、25bに供給する。濃縮室23には、紫外線酸化装置11で処理された処理水が供給されてもよく、逆浸透膜装置10の透過水が供給されてもよい。ただし、濃縮室23にイオン交換体が充填されている場合などには、逆浸透膜装置10の透過水が供給されるのが好ましい。
【0032】
上に説明した構成により、実施形態の純水製造システムにおいては、従来の純水製造システムと比べて、例えば、次のような効果が得られる。
【0033】
紫外線酸化装置において過剰の紫外線照射が行われた場合、有機物の酸化分解に寄与しないOHラジカル同士が反応して過酸化水素が発生する。この発生した過酸化水素は、下流の電気式脱イオン装置が有する電極やイオン交換体を劣化させることがある。例えば、紫外線酸化装置の処理水を電気式脱イオン装置の脱塩室、電極室及び濃縮室に供給していた従来の純水製造システムでは、電気式脱イオン装置に電圧が印加された状態で、電極室に、紫外線酸化装置の処理水として過酸化水素含有水が供給される。その結果、電圧のエネルギーによって、過酸化水素による電極の腐食が促進され、脱塩室から排出される電気式脱イオン装置の透過水の水質の低下を招きやすくなる。
【0034】
また、濃縮室にイオン交換体が充填されている場合には、このイオン交換体の劣化も促進され、電気式脱イオン装置の透過水の水質の低下を招きやすくなる。電気式脱イオン装置に、シリカやホウ素などの微量不純物の除去率を向上させるために、その許容上限付近での電圧が印加されることがあるが、このような場合は特に、電極やイオン交換体の腐食の進行による透過水の水質の低下が一層進みやすくなると考えられる。
【0035】
これに対して、実施形態の純水製造システム1では、電気式脱イオン装置12の少なくとも脱塩室24には紫外線酸化装置11で処理した処理水を供給しながら、電極室25a、25b、又は電極室25a、25bと濃縮室23には、紫外線酸化装置11を経ていない逆浸透膜装置10の透過水を導入することとした。これによれば、例えば、逆浸透膜装置10の透過水を、紫外線酸化装置を経由して電気式脱イオン装置の脱塩室、電極室及び濃縮室に供給していた従来の純水製造システムにおける配管及びその接続箇所を変更することのみで、処理装置の数を増やすことなく、紫外線酸化装置で発生する過酸化水素による電気式脱イオン装置への悪影響を抑制することができる。
【0036】
また、従来の方法では上記した電極やイオン交換体の腐食の進行を防ぐために、ユースポイントの直前段に配置される二次純水システムから、電気式脱イオン装置に水を供給することもあったが、実施形態の純水製造システム1ではこのような必要もない。また、純水製造システム1では、逆浸透膜装置10の透過水が電気式脱イオン装置12の電極室25a、25b、又は電極室25a、25bと濃縮室23の両方に供給されるため、電極室25a、25b、又は電極室25a、25bと濃縮室23における硬度スケールが起きにくく、また、電気式脱イオン装置12の処理水のホウ素やシリカの水質悪化も軽減される。
【0037】
実施形態の純水製造システムは、必要に応じて、逆浸透膜装置、紫外線酸化装置、電気式脱イオン装置とともに、これら以外のその他の水処理装置を有してもよい。このようなその他の水処理装置として、例えば、脱気膜装置、真空脱気装置、イオン交換樹脂塔、硬度除去装置(ソフナー)、活性炭充填塔、凝集沈殿槽、ろ過装置等が挙げられ、脱気膜装置が好ましく用いられる。実施形態の純水製造システムがその他の水処理装置を有する場合、その配置箇所は逆浸透膜装置の前段であっても、上記各必須の水処理装置の間であっても、電気式脱イオン装置の後段であってもよい。
【0038】
図3に示す、実施形態の純水製造システム1Aは、その他の水処理装置として脱気膜装置を電気式脱イオン装置の後段に有する例である。
図3に示す純水製造システム1Aは、逆浸透膜装置10と、紫外線酸化装置11と、電気式脱イオン装置12Aと、脱気膜装置(MGD)13とこれらの装置を上流側からその順に接続する処理水管133を備える。具体的には、逆浸透膜装置10、紫外線酸化装置11、電気式脱イオン装置12A及び脱気膜装置13は第2の処理水管133b~第4処理水管133dにより接続されている。逆浸透膜装置10には、第1の処理水管133aを介して被処理水が供給される。脱気膜装置13の透過水は第5の処理水管133eによって純水の使用場所であるユースポイント(POU)14に送液される。
【0039】
純水製造システム1Aは、第2の処理水管133bから分岐して電気式脱イオン装置12Aまで延びる第1のバイパス管131および第2のバイパス管132を備える。
【0040】
電気式脱イオン装置12Aは、例えば、濃縮室給水管123の接続先を除いて
図2Bに示すのと同様の構成の電気式脱イオン装置とすることができる。電気式脱イオン装置12Aは、電気式脱イオン装置内部の濃縮室23に通じる濃縮室入口ノズル23cと、脱塩室24に通じる脱塩室入口ノズル24cと、電極室25a、25bに通じる電極室入口ノズル25cとを備えている。
【0041】
図3に示す純水製造システム1Aにおいては、第3の処理水管133cは、電気式脱イオン装置12Aの脱塩室入口ノズル24cに接続されており、逆浸透膜装置10と、紫外線酸化装置11とで順に処理された処理水が電気式脱イオン装置12Aの脱塩室24に供給される。
【0042】
第2の処理水管133bから分岐して設けられた第1のバイパス管131は、電気式脱イオン装置12Aの電極室入口ノズル25cに接続されている。また、第2の処理水管133bから分岐して設けられた第2のバイパス管132は、電気式脱イオン装置12Aの濃縮室入口ノズル23cに接続されている。第1のバイパス管131は、逆浸透膜装置10の透過水を、紫外線酸化装置11を介さずに電気式脱イオン装置12Aの電極室25a、25bに供給する。第2のバイパス管132は、逆浸透膜装置10の透過水を、紫外線酸化装置11を介さずに電気式脱イオン装置12Aの濃縮室23に供給する。
【0043】
なお、
図3に示す純水製造システム1Aにおいて、第2のバイパス管132を第2の処理水管133bから分岐させる代わりに、第3の処理水管133cから分岐させることも可能である。その場合、電気式脱イオン装置12Aの濃縮室23には、紫外線酸化装置11で処理された処理水が供給される。
【0044】
図3に示す純水製造システム1Aにおいて、電極室入口ノズル25cと濃縮室入口ノズル23cをそれぞれ独立して有する電気式脱イオン装置12Aを使用する例について説明した。実施形態の純水製造システムにおいては、例えば、電極室入口ノズルと濃縮室入口ノズルを兼ねた共通入口ノズルを有する電気式脱イオン装置を用いてもよい。
【0045】
図4に示す純水製造システム1Bは、電気式脱イオン装置12Aを電気式脱イオン装置12Bに代えた以外は
図3に示す純水製造システム1Aと同様の構成の純水製造システムである。電気式脱イオン装置12Bは、電極室入口ノズル25cと濃縮室入口ノズル23cを、これら2つのノズルを兼ねた共通入口ノズル31cに代えた以外は電気式脱イオン装置12Aと同様の構成を有する。純水製造システム1Bでは、第1のバイパス管131及び第2のバイパス管132の両方が電気式脱イオン装置12Bの共通入口ノズル31cに接続されている。
【0046】
電気式脱イオン装置12Bでは、紫外線酸化装置11で処理された処理水が脱塩室24に供給され、逆浸透膜装置10の透過水が電極室25a、25bと濃縮室23に供給される。
【0047】
なお、
図4に示す純水製造システム1Bにおいては、第2のバイパス管132を配設せずに、第1のバイパス管131に第2のバイパス管の機能を併せもたせるようにしてもよい。
【0048】
次に、
図3に示す純水製造システム1Aを用いた純水製造方法を例にして実施形態の純水製造方法について説明する。また、併せて、実施形態の純水製造システムに用いる逆浸透膜装置、紫外線酸化装置、及び電気式脱イオン装置を詳細に説明する。
【0049】
純水製造システム1Aで処理される被処理水は、例えば、原水または前処理部により前処理された原水である。原水は必要に応じて前処理部によって前処理されて、逆浸透膜装置10に供給される。原水としては、市水、井水、地下水、工業用水、半導体製造工場などで使用され、回収されて前処理された水(回収水)などが使用される。前処理部は、原水中の懸濁物質を除去して、前処理水を生成する。前処理部は例えば、原水中の懸濁物質を除去するための砂ろ過装置、精密ろ過装置等を適宜選択して構成され、さらに必要に応じて前処理水の温度調節を行う熱交換器等を備えて構成される。なお、原水の水質によっては、前処理部は省略してもよい。
【0050】
逆浸透膜装置10では、被処理水を逆浸透膜ろ過して被処理水中の塩類やイオン性の有機物、コロイド性の有機物等を除去する。逆浸透膜装置10が有する逆浸透膜としては、例えば、三酢酸セルロース系非対称膜や、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系又はポリスルホン系の複合膜等が挙げられる。膜形状は、シート平膜、スパイラル膜、管状膜、中空糸膜等であるが、これらに限定されない。なかでも、阻止率が高い点で、ポリアミド系の複合膜であることが好ましく、架橋全芳香族ポリアミド系の複合膜であることがより好ましい。膜形状は、スパイラル膜であることが好ましい。
【0051】
逆浸透膜装置10の脱塩率は、96~99.8%であることが好ましい。脱塩率は、25℃、pH=7、NaCl濃度0.2質量%の給水を水回収率15%、給水圧力は標準圧力(例えば、低圧逆浸透膜装置なら1.5MPa、超低圧逆浸透膜装置なら0.75MPa)で逆浸透膜に通水した際のナトリウムイオンの除去率として計測することができる。逆浸透膜装置10の水回収率は、塩類やイオン性の有機物を効率的に除去する点で、60~98%が好ましく、80~95%がより好ましい。
【0052】
逆浸透膜装置10は、超低圧型、低圧型、高圧型の逆浸透膜装置のいずれであってもよく、超純水の製造効率の点から、超低圧型又は低圧型の逆浸透膜装置であることが好ましい。また、逆浸透膜装置10の前段には、被処理水を所定の圧力に加圧して逆浸透膜装置10に供給する給水ポンプが備えられることが好ましい。また、逆浸透膜装置10の給水には、必要に応じて、スケール防止剤、制菌剤、pH調整剤等が添加されてもよい。
【0053】
ここで、超低圧型の逆浸透膜は、運転圧力が、0.4MPa~0.8MPaであり、好ましくは0.6MPa~0.7MPaである。低圧型の逆浸透膜は、運転圧力が0.8MPaを超え2.5MPa未満であり、好ましくは1MPa~1.6MPaである。高圧型の逆浸透膜は、運転圧力が2MPaを超え8MPa以下であり、好ましくは5MPaを超え6MPa以下である。なお、上記超低圧型、低圧型、高圧型は、各逆浸透膜の製造時の設計圧力(標準圧力)で区別したものであるが、実際には、上記範囲以外の圧力で運転されることもある。
【0054】
逆浸透膜装置10は、2基の逆浸透膜装置を直列に接続した2段逆浸透膜装置で構成してもよい。この場合、塩類やイオン性の有機物を効率的に除去する点で、水回収率は、第1段の逆浸透膜装置では60~98%が好ましく、80~95%がより好ましい。第2段の逆浸透膜装置では、80~95%が好ましく、85~95%がより好ましい。
【0055】
逆浸透膜装置10の市販品としては、東レ社製のTM820K-400、TM720-400、TM720D-400、SUL-G20、DOW社製のBW30-400、BW30-400FR、日東電工社製のCPA5、CPA5-LD等を使用することができる。
【0056】
逆浸透膜装置10の透過水は、次いで、紫外線酸化装置11に導入される。紫外線酸化装置11は、逆浸透膜装置10の透過水に紫外線を照射して、水中の有機物成分(TOC)を分解除去する。紫外線酸化装置11は例えば、紫外線ランプを有し、波長185nm付近の紫外線を発生する装置である。紫外線酸化装置11は、さらに波長254nm付近の紫外線を発生してもよい。紫外線酸化装置11内で水に紫外線が照射されると紫外線が水を分解してOHラジカルを生成し、このOHラジカルが、水中の有機物を酸化分解する。
【0057】
紫外線酸化装置11において過剰の紫外線照射が行われた場合、有機物の酸化分解に寄与しないOHラジカル同士が反応して過酸化水素が発生する。この発生した過酸化水素は、下流の電気式脱イオン装置12Aが有する電極26a、26bやイオン交換体を劣化させることがある。紫外線酸化装置11から流出する過酸化水素を低減して、下流の電気式脱イオン装置12Aが有する電極26a、26bやイオン交換体の劣化を抑制するために、紫外線酸化装置11における紫外線照射量は、0.02~0.5kWh/m3であることが好ましい。紫外線酸化装置11で処理された処理水中の過酸化水素濃度は、100μg/L以下であることが好ましく、より好ましくは、10μg/L~40μg/L程度である。
【0058】
紫外線酸化装置11の処理水は、第3の処理水管133cを介して、電気式脱イオン装置12Aの脱塩室入口ノズル24cから、脱塩室24内に供給される。電気式脱イオン装置12Aの濃縮室23と電極室25a、25bには、それぞれ第2のバイパス管132及び第1のバイパス管131を介して、逆浸透膜装置10の透過水が供給される。
【0059】
なお、電気式脱イオン装置12Aを用いた
図3に示す純水製造システム1Aにおいて、第2のバイパス管132を第2の処理水管133bから分岐させる代わりに、第3の処理水管133cから分岐させて、紫外線酸化装置11の処理水を電気式脱イオン装置12Aの脱塩室24と濃縮室23に、逆浸透膜装置10の透過水を電極室25a、25bに供給させてもよい。このように、実施形態の純水製造方法においては、紫外線酸化装置の処理水を電気式脱イオン装置の少なくとも脱塩室に供給し、逆浸透膜装置の透過水を電気式脱イオン装置の少なくとも電極室に供給するものである。
【0060】
電気式脱イオン装置12Aの構成は上記のとおりである。電気式脱イオン装置12Aにおいて、脱塩室24には、イオン交換体が充填されている。濃縮室23、電極室25a、25b内は空洞であってもよいし、イオン交換体、活性炭、又は金属等からなる電気導電体が充填されていてもよい。
【0061】
このとき、電気式脱イオン装置12Aの脱塩室24内に供給される水の量と、電気式脱イオン装置12Aの濃縮室23内及び電極室25a、25b内に供給される水の合計量の比は、(脱塩室24内に供給される水)/(濃縮室23内及び電極室25a、25b内に供給される水の合計)で表わされる比の値で6~20であることが好ましい。これにより、電気式脱イオン装置12Aの劣化抑制効果と、処理水質向上効果を向上させやすくなる。
【0062】
電気式脱イオン装置12Aにおいて、脱塩室24と接して陽極26a側に配置されるイオン交換膜はアニオン交換膜22であり、脱塩室24と接して陰極26b側に配置されるイオン交換膜はカチオン交換膜21である。また、電気式脱イオン装置12Aは、陽極26aと陰極26bとの間に複数の脱塩室24と濃縮室23を交互に有することで、複数のセルが並置されるように構成されてもよい。
【0063】
カチオン交換膜21及びアニオン交換膜22としては、膜の構造から不均質膜、半均質膜、均質膜があるが、均質膜であることが、イオン成分の除去効率の点、また、電気式脱イオン装置における抵抗増大の抑制の点で好ましい。
【0064】
脱塩室24に充填されるイオン交換体としては、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合したイオン交換体を使用することができる。このカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合比は、体積比で、アニオン交換樹脂比率を20~80%であることがイオン成分の除去効率の点、また、電気式脱イオン装置12Aにおける抵抗増大の抑制の点で好ましい。イオン交換体としては、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を流路方向に積層したイオン交換体を使用することも可能である。電極(陽極26aと陰極26b)は、例えば、陽極は白金族元素又は白金族元素を被覆した金属材料で、陰極はステンレスで構成される。
【0065】
電気式脱イオン装置12Aにおいては、濃縮室23又は電極室25a、25bにイオン交換体としてイオン交換樹脂が充填されていることが好ましい。濃縮室23又は電極室25a、25bにイオン交換樹脂が充填されている場合、本発明の方法を用いると、濃縮室23又は電極室25a、25bのイオン交換樹脂の劣化が抑制されるため、電気式脱イオン装置12Aの劣化が抑制され、高品質の水質の処理水を継続的に得ることができる。なお、イオン交換樹脂は、濃縮室23又は電極室25a、25bのいずれかに充填されていれば、本発明の効果が顕著に得られ、濃縮室23と電極室25a、25bの両方に充填されていれば、本発明の効果がさらに顕著に得られる。
【0066】
なお、
図2Aに示す電気式脱イオン装置12のように、逆浸透膜装置10の透過水が電極室25a、25bのみに供給される場合は、イオン交換樹脂が電極室25a、25bに充填されている場合に、本発明の効果が顕著である。
【0067】
電気式脱イオン装置12Aにおいては、被処理水は脱塩室24の一端から供給されて、脱塩室24の他端から流出する。この過程で、被処理水中のイオン成分が脱塩室24内のイオン交換体に吸着される。また、このときに、陽極26a及び陰極26b間に整流された直流電流が供給される。当該電流は、脱塩室24内の被処理水の流れと直交する方向に流れる。この電流により水が水素イオンと水酸化物イオンに解離して、この解離した水素イオンと水酸化物イオンがそれぞれイオン交換体に吸着されたイオン成分と交換する。交換されたイオン成分は、濃縮室23、陽極室25a及び陰極室25bに移動し、これらを経て電気式脱イオン装置12Aから濃縮水排出管136を介して流出される。
【0068】
電気式脱イオン装置12Aにおける水回収率は90~96%が好ましく、電気式脱イオン装置12Aにおける電流密度は、300~3000mA/dm2であることが好ましく、1500~2500mA/dm2であることがより好ましい。電流密度が300mA/dm2以上になると通常過酸化水素による電極腐食が起こり易いが、実施形態の純水製造システムでは、電気式脱イオン装置の少なくとも電極室に、好ましくは電極室と濃縮室に、紫外線酸化装置を経ていない水を供給するため、これを抑制することができるためである。また、電流密度をより好ましい範囲とすることにより、ホウ素等の弱電解質の除去率を長期間安定させることができる。
【0069】
電気式脱イオン装置12Aとしては、市販の電気式脱イオン装置が使用可能である。電気式脱イオン装置12Aの市販品としては、例えば、VNX50、VNX55、VNX-55EX(以上、Evoqua社製)、EDI-50(IONICS社製)などが使用可能である。
【0070】
電源27は、例えば交流電源から供給される交流(AC)電流を直流(DC)電流に変換する、AC-DC変換器である。電源27は、電圧リップルが小さく、高水質の処理水を早期に得やすいことから、スイッチング方式によるAC-DC変換器又は全波整流方式によるAC-DC変換器が好適である。
【0071】
電気式脱イオン装置12Aを経た透過水の水質は、1台を単段で用いてもホウ素濃度が例えば、1μg/L(as B、以下同じ。)以下、比抵抗が17.5MΩ・cm以上を得ることができる。電気式脱イオン装置12Aは、1台を単段で用いてもよく、2台以上を直列に接続して複数段として用いてもよい。電気式脱イオン装置12Aを経た透過水は次いで、脱気膜装置13に供給される。
【0072】
脱気膜装置13は、紫外線酸化装置11で有機物成分が分解されて生じた炭酸ガスを主に除去する。脱気膜装置13は、気体透過性の膜(脱気膜)の一次側に被処理水を通水しながら、膜の2次側を必要に応じて減圧することで被処理水中の溶存気体のみを2次側に移行させて除去する装置である。この膜の減圧側(二次側)には窒素等の不活性ガス源を接続し、脱気性能を向上させてもよい。脱気膜は、酸素、窒素、蒸気等のガスは通過するが水は透過しない膜であれば良く、例えば、シリコンゴム系、ポリテトラフルオロエチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等の膜がある。
【0073】
以上説明した実施形態の純水製造システムによれば、電気式脱イオン装置における電極やイオン交換体の劣化を抑制できるので、長期にわたって高水質の純水を得ることができる。また、逆浸透膜装置の透過水を少なくとも電極室に、好ましくは電極室と濃縮室に導入するため、シリカスケールを抑制することができるとともに、シリカやホウ素などの微量不純物の除去率向上や除去率低下の抑制の効果も得やすい。
【実施例】
【0074】
次に実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0075】
(実施例1及び比較例1)
図5は、実施例1及び比較例1に用いた純水製造システム50の構成を示した図である。純水製造システム50において、実施例1では、電気式脱イオン装置53が使用され、比較例1では電気式脱イオン装置54が使用される。それ以外は、純水製造システム50が有する装置が、実施例1及び比較例1で共通して使用される。
【0076】
純水製造システム50は逆浸透膜装置51(東レ(株)、TM820K-400)と、紫外線酸化装置52(日本フォトサイエンス(株)、AUV-8000TOC、紫外線照射量0.3kWh/m3)を順に備えており、紫外線酸化装置52の後段に、濃縮室と電極室にイオン交換樹脂が充填されている電気式脱イオン装置53、54(EVOQUA社、VNX-55EX、処理水量10m3/h、水回収率95%)が並列に配置されている。
【0077】
純水製造システム50には、逆浸透膜装置51に被処理水を供給する補給水ライン55a、逆浸透膜装置51と紫外線酸化装置52を接続する補給水ライン55b、紫外線酸化装置52と電気式脱イオン装置53、54の各脱塩室入口を接続する補給水ライン55c、電気式脱イオン装置53、54の透過水をそれぞれ排出する処理水ライン55dが設けられている。上記において補給水ライン55bには逆浸透膜装置51の透過水が流通する。逆浸透膜装置51の濃縮水は排水管57により排出される。電気式脱イオン装置53、54の濃縮水は排水管56により排出される。
【0078】
さらに、実施例1に用いる電気式脱イオン装置53には、逆浸透膜装置51の透過水を、紫外線酸化装置52を介さずに、電気式脱イオン装置の電極室及び濃縮室入口へ供給するバイパス補給水ライン53aが接続されている。また、比較例1に用いる電気式脱イオン装置54には、紫外線酸化装置52の処理水を、電極室及び濃縮室に供給する補給水ライン54aが接続されている。
【0079】
実施例1及び比較例1では、水道水を活性炭に通水して塩素を除去した被処理水を、補給水ライン55aより純水製造システム50に供給し、24時間の連続運転を行って、純水を製造した。この際、電気式脱イオン装置53、54では、電気式脱イオン装置の劣化による性能の低下を評価しやすくするため、直流電流を180Vの定電圧モードにて印加した。電流密度は通水初期時で1810mA/dm2であった。
【0080】
運転開始直後(通水初期)及び運転開始後300日を経過した時点で、各ポイント(逆浸透膜装置51の透過水出口(補給水ライン55bの逆浸透膜装置51との接続点付近)、紫外線酸化装置52の処理水出口(補給水ライン55cの紫外線酸化装置52との接続点付近)、電気式脱イオン装置53、54の透過水出口(各処理水ライン55dの電気式脱イオン装置53、54との接続点付近))における水質(導電率[μS/cm])を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
表1より、実施例1の純水製造システムにおいて、電気式脱イオン装置53の透過水出口から排出される処理水の導電率は運転開始後300日経過後も通水初期の値と変わらず、また、比較例1の純水製造システムにおける電気式脱イオン装置54の透過水出口から排出される処理水の導電率と比較しても処理水の水質が向上していることがわかる。
【0083】
(実施例2及び比較例2)
図5のシステムにおいて、濃縮室と電極室にイオン交換樹脂が充填されていない電気式脱イオン装置53、54(IONICS社、EDI-50、処理水量10m
3/h、濃縮水循環水量15m
3/h、水回収率95%)を用い、実施例1及び比較例1と同じ試験を行った。なお、EDI-50は通常、濃縮水の循環と濃縮水への塩化ナトリウムの注入を必要とし、実施例2及び比較例2においても実施したが、図面では省略する。また、この際、電気式脱イオン装置53、54では、直流電流を580Vの定電圧モードにて印加した。電流密度は通水初期時で314mA/dm
2であった。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
表2より、浸透膜装置の透過水を、紫外線酸化装置を介さずに電気式脱イオン装置の濃縮室及び電極室に供給する方法は、実施例2の純水製造システムのように濃縮室と電極室にイオン交換樹脂が充填されていない電気式脱イオン装置を用いた場合にも効果があることがわかる。しかしながら、実施例2の純水製造システムと比較例2の純水製造システムとの300日後の処理水の水質の差は、上記実施例1と比較例1のように濃縮室と電極室にイオン交換樹脂が充填されている電気式脱イオン装置を用いた場合の処理水の水質の差よりも小さい。これは、濃縮室と電極室にイオン交換樹脂が充填されていない分、過酸化水素による影響を受ける箇所が少ないためと考えられる。
【0086】
以上のように、逆浸透膜装置51の透過水を電気式脱イオン装置53の電極室入口への補給水として使用する実施例1、2の純水製造システムでは、紫外線酸化装置52の出口の水を電気式脱イオン装置54の脱塩室入口及び電極室入口への補給水として使用する比較例1、2の純水製造システムに比べて、長期にわたって導電率の低い処理水を供給できることが確認された。
【0087】
以上、詳述したように、本発明による純水製造システムによれば、電気式脱イオン装置の電極室入口への補給水として、紫外線酸化装置の副生成物である過酸化水素を含まない逆浸透膜装置の透過水を用いることで、電極の腐食なく、長期にわたって高純度の処理水を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B…純水製造システム、10…逆浸透膜装置、11…紫外線酸化装置(TOC-UV)、12,12A,12B…電気式脱イオン装置(EDI)、13…脱気膜装置(MDG)、14…ユースポイント(POU)、23c…濃縮室入口ノズル、24c…脱塩室入口ノズル、25c…電極室入口ノズル、31c…共通入口ノズル、131…第1のバイパス管、132…第2のバイパス管、133…処理水管、21…カチオン交換膜、22…アニオン交換膜、23…濃縮室、24…脱塩室、25a…陽極室、25b…陰極室、26a…陽極、26b…陰極、27…電源。