(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】LIDAR測定システムのセンサ素子の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4861 20200101AFI20230317BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20230317BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20230317BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01S7/4863
G01S17/10
(21)【出願番号】P 2020555232
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2019058392
(87)【国際公開番号】W WO2019197241
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】102018205378.2
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520158920
【氏名又は名称】イベオ オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ibeo Automotive Systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボイシェル
(72)【発明者】
【氏名】レイナー キーゼル
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-134042(JP,A)
【文献】特開平07-229967(JP,A)
【文献】特開2018-025449(JP,A)
【文献】特開2017-003391(JP,A)
【文献】特開2012-242218(JP,A)
【文献】特開2004-157044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187721(US,A1)
【文献】米国特許第09784835(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子(28)が測定サイクルの間に活性化および非活性化され、
測定プロセスが複数の測定サイクルを含み、
第1の測定サイクルの終了後に、第2の測定サイクルが開始され、
前記第1の測定サイクルに
関し、前記センサ素子(28)が
第1の測定サイクル内の第1の時間(t
d)に活性化され、その後、前記第2の測定サイクルが開始される前に非活性化さ
れ、
前記第2の測定サイクルに
関し、同じ前記センサ素子(28)が
前記第2の測定サイクル内の第2の時間(t
e)に活性化され、その後、非活性化さ
れ、
前記第1の時間及び前記第2の時間は、前記センサ素子(28)に割り当てられたエミッタ素子による各前記測定サイクルの各光パルスの送信に対応する基準時間に基づいており、
前記第1の時間と前記第2の時間とは異なり、
各前記測定サイクルは少なくとも、レーザー光が最大測定距離にある物体まで往復移動するのに必要な持続時間を有し、
前記第1の時間および前記第2の時間は、指定された時間範囲(66、68)内であり、前記時間範囲は、前記測定サイクルの中で2つの測定範囲間の切り替えが行われる期間を規定する、LIDAR測定システム(10)のセンサ素子(28)を制御する方法。
【請求項2】
センサ素子(28)が測定サイクルの間に活性化および非活性化され、
測定プロセスが複数の測定サイクルを含み、
第1の測定サイクルの終了後に、第2の測定サイクルが開始され、
前記第1の測定サイクルに
関し、前記センサ素子(28)が活性化され、その後、前記第2の測定サイクルが開始される前の
前記第1の測定サイクル内の第1の時間(t
h)に非活性化さ
れ、
前記第2の測定サイクルに
関し、同じ前記センサ素子(28)が活性化され、その後、
前記第2の測定サイクル内の第2の時間(t
i)に非活性化
され、
前記第1の時間及び前記第2の時間は、前記センサ素子(28)に割り当てられたエミッタ素子による各前記測定サイクルの各光パルスの送信に対応する基準時間に基づいており、
前記第1の時間と前記第2の時間とは異なり、
各前記測定サイクルは少なくとも、レーザー光が最大測定距離にある物体まで往復移動するのに必要な持続時間を有し、
前記第1の時間および前記第2の時間は、指定された時間範囲(66、68)内であり、前記時間範囲は、前記測定サイクルの中で2つの測定範囲間の切替えが行われる期間を規定する、LIDAR測定システム(10)のセンサ素子(28)を制御する方法。
【請求項3】
前記第1の時間が前記第2の時間の前または後である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
連続する測定サイクルの前記第1の時間および前記第2の時間は、無作為に選ばれる、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定サイクルにおいて、センサ素子を活性化および/または非活性化するのに既に使用されている時間が、前記測定プロセスの後続の測定サイクルでは除外される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つのセンサ素子(28)の非活性化が別のセンサ素子(28)の活性化に関連する場合、前記センサ素子(28)の活性化と非活性化との間の時間のずれが、前記測定プロセスの全ての測定サイクルに対して同一であるか、または無作為に分散される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
送信部と、受信部と、該受信部のセンサ素子の時間制御された活性化および非活性化のためのタイミング制御部とを有し、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法を実行する、LIDAR測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIDAR測定システムのセンサ素子を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LIDAR測定システムが特許文献1に記載されている。これは、静的に設計されたものであり、複数のエミッタ素子を含む送信部と、複数のセンサ素子を含む受信部とを備える。エミッタ素子およびセンサ素子は、焦点面アレイの構成で実現され、送信レンズおよび受信レンズそれぞれの焦点に配置される。受信部および送信部に関して、センサ素子および対応するエミッタ素子は特定の立体角に割り当てられる。したがって、センサ素子は特定のエミッタ素子に割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
LIDAR測定システムのより有利な実施形態では、センサ素子はマクロセルの一部であり、複数のセンサ素子を含むマクロセルがエミッタ素子に割り当てられる。これにより、例えば光学素子または視差誤差によって生じることがある、画像欠陥を補償することが可能になる。しかしながら、センサ素子が複数あることによって環境放射線が過度に検出される。通常、反射したレーザー光はセンサ素子の一部分のみに衝突するので、レーザー光が同様に衝突するセンサ素子のみを活性化させるのが有利である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、センサ素子によって検出される環境放射線をできるだけ最小限のレベルに保つ方法を提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1による方法によって達成される。従属請求項は、方法の有利な実施形態の説明を含む。
【0007】
かかる方法は、特に、時間相関単一光子計数(TCSPC)法にしたがって動作する、LIDAR測定システムに適している。このTCSPC法については、以下で、特に図面の説明で更に詳細に説明する。特に、自動車で使用されるLIDAR測定システムのための方法が想到される。
【0008】
この目的に適したLIDAR測定システムは、センサ素子とエミッタ素子とを備える。エミッタ素子は、レーザー光を放射し、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)によって実現される。放射されたレーザー光は、例えば、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)によって形成された、センサ素子によって検出することができる。LIDAR測定システムから物体までの距離は、レーザー光またはレーザーパルスの飛行時間から決定される。
【0009】
エミッタ素子は、好ましくは、送信部の送信チップ上に実装される。センサ素子は、好ましくは、受信部の受信チップ上に実装される。送信部および受信部はそれぞれ、送信レンズおよび受信レンズに割り当てられる。エミッタ素子によって放射された光は、送信レンズによって立体角に割り当てられる。同様に、センサ素子は常に、受信レンズを介して同じ立体角を観察する。したがって、1つのセンサ素子が1つのエミッタ素子に割り当てられるか、または1つのセンサ素子と1つのエミッタ素子の両方が同じ立体角に割り当てられる。放射されたレーザー光は、遠距離で反射した後、常に同じセンサ素子に衝突する。
【0010】
センサ素子およびエミッタ素子は、有利には、焦点面アレイ(FPA)構成で具体化される。これらにおいて、特定のユニットの素子は面内に配置され、例えば、センサ素子はセンサチップの面上にある。この面はそれぞれのレンズの焦点面に配置される、および/または、素子はそれぞれのレンズの焦点に配置される。
【0011】
FPA構成によって、LIDAR測定システムとその送信部および受信部との静的設計が可能になるので、システムは移動部品を何ら含まない。特に、LIDAR測定システムは自動車に静的に配置される。
【0012】
エミッタ素子には、便利には複数のセンサ素子が割り当てられ、それらが合わさって複数のセンサ素子から成るマクロセルを形成する。このマクロセル、つまりマクロセルの全てのセンサ素子が、エミッタ素子に割り当てられる。これにより、レンズによる視差効果もしくは結像誤差など、結像効果または結像欠陥を補償することが可能になる。
【0013】
光学結像の欠陥は静的であるが、視差の効果は物体からLIDAR測定システムまでの距離に応じて変わる。例えば、近くにある物体の場合、マクロセルのセンサ素子は、中距離または長距離範囲にある物体の場合とは違うセンサ素子が照明される。それに加えて、マクロの全てのセンサ素子を恒久的に活性化(activating)させることによって、必要なセンサ素子のみが活性(active)である場合よりもバックグラウンド放射線が強く検出される。
【0014】
したがって、環境放射線の検出を最小限に抑えるために、測定サイクルの間、センサ素子またはセンサ素子の一部分が活性化(作動)(activated)および/または非活性化(停止)(deactivated)される。このセンサ素子の活性化(activation)および非活性化(deactivation)は、測定サイクルの始まりと終わりとの間に、特に測定サイクルに関して、1つもしくは複数のセンサ素子の最初の活性化と最後の非活性化との間に行われる。
【0015】
マクロセルのセンサ素子は、例えば異なる測定範囲に対する、センサ群に分割される。例えば、測定範囲は、近距離範囲、中距離範囲、および遠距離範囲に分割することができ、マクロセルのセンサ素子のうち、それぞれの範囲で異なって選択されたものが活性である。この目的のため、マクロセルのセンサ素子を個別に、または少なくともそれぞれのセンサ群としてまとめて、活性化および/または非活性化することができる。センサ群のセンサ素子は、部分的または完全に重なり合っていてもよく、あるいはマクロセル内で重なっていなくてもよい。つまり、センサ素子は、例えば、中距離および長距離範囲の場合はセンサ群のメンバーであってもよく、または特定の測定範囲だけに割り当てられてもよい。
【0016】
したがって、測定範囲間の移行部分では、全てのセンサ素子を含むセンサ群が非活性化され、別の重なり合わないセンサ群が活性化されてもよい。別の変形例では、センサ素子の一部分が非活性化され、センサ素子のいくつかは活性なままである。必要に応じて、後者の変形例では、それまで非活性であった他のセンサ素子も活性化することができる。
【0017】
活性なセンサ素子はそれぞれ、一部分は環境放射線によって生じるノイズフロアに寄与する。測定プロセス、およびTCSPC法を使用して決定されるヒストグラムに関して、変化する数の活性なセンサ素子により環境放射線が検出されることによって、異なる測定範囲間でステップが生じる。各センサ素子はその活性期間の間、ノイズフロアに寄与する。
【0018】
測定プロセスは複数の測定サイクルを含む。ヒストグラムは測定プロセスの結果である。測定サイクルは少なくとも、レーザー光が最大測定距離にある物体まで往復移動するのに必要な持続時間を有する。ヒストグラムは、測定サイクルの測定周期をビンとも呼ばれる時間セグメントに分割する。ビンは、測定周期全体の特定の持続時間に対応する。
【0019】
センサ素子が入ってくる光子によって始動した場合、レーザーパルスの放射から始まる相対飛行時間に対応するビンは値1が増分される。測定プロセスの間、測定サイクルは複数回実行されるので、環境放射線によって基本的にビンが均一にフィルされる。しかしながら、レーザー光を反射する物体によって、各測定サイクルで、LIDAR測定システムからの物体の距離に対応する特定のビンがフィルされることが確保される。複数の測定サイクルによって、物体が位置するところのノイズフロアレベルを超えてビンがフィルされる。TCSPC法については、図面の説明において更に詳細に説明する。
【0020】
それぞれのセンサ群が常に、測定プロセスの全ての測定サイクルにおける別の測定範囲の始まりに対して測定サイクルの同じ時にオンにされる場合、ヒストグラムにステップが生じる。物体およびLIDAR測定システムからの物体の距離の決定は、有利には、立ち上がりエッジおよび/または極大値を検出することによって実施される。ステップは単にそのような急な立ち上がりエッジを表すが、この場合、1つのセンサ群から別のセンサ群への切替えのみが行われる。
【0021】
第1の測定サイクルでセンサ素子が第1の時間に活性化され、第2の測定サイクルで同じセンサ素子が第2の時間に活性化されることが提案される。これは時間差とも呼ばれる。
【0022】
第1の時間および第2の時間は異なる。センサ素子は、特に、1つの測定範囲から別の測定範囲への切替え時に活性化される。あるいは、1つのセンサ素子の代わりに、それぞれのセンサ群の複数のセンサ素子を活性化させることもできる。測定サイクルごとに時間をずらしてセンサ素子を活性化することによって、ステップが平らになって上昇線となる。図面の説明も参照のこと。これに関して、物体の検出は大幅に単純化される。時間は、好ましくは基準時間に、特に光の放射時間に基づく。
【0023】
一例として、測定プロセスはX個の測定サイクルを含む。第1の測定サイクルで、関連するセンサ素子またはセンサ群がビン100で活性化され、第2の測定サイクルではビン101で、第3の測定サイクルではビン102で、と続く。最後の測定サイクルでは、ビン100+X-1で活性化が行われる。特に、ノイズフロアはゆっくり均一に増加する。ビンの時間間隔は、ここでは一例として、時間の間での均一な増分と同様に選択される。特に、センサ素子またはセンサ群の活性化に関する2つの測定サイクル間の時間差は、自由に選択することができ、測定プロセスの間に変更することもできる。時間差は正ならびに負であることができ、即ち、第2のタイミングポイントは第1のタイミングポイントの前または後であることができる。特に、時間は無作為にまたは決定論的に決定される。
【0024】
目的はまた、請求項2による方法によって達成される。従属請求項は、有利な実施形態の説明を含む。
【0025】
請求項1に関する記述は請求項2にも当てはまる。センサ素子を活性化する方法は、センサ素子を非活性化するのに使用される方法と同じであるが、必要な変更は加えられる。
【0026】
このように、ノイズフロアの立ち下がりエッジまたはステップを防ぐことができ、代わりにバックグラウンドノイズの均一な減少を達成することができる。
【0027】
記載した時間差は、有利には、活性化されるセンサ群と、実質的に同時に非活性化されるセンサ群とに使用される。この結果、異なる測定範囲のノイズレベル間の移行部分が滑らかになる。
【0028】
以下、有利な実施形態について説明する。
【0029】
第1の時間は第2の時間の前または後であることが提案される。
【0030】
第1の時間および第2の時間は指定の時間範囲内に位置することが有利である。
【0031】
この時間範囲は、2つの測定範囲間での切替えが行われる、測定サイクル中の時間周期を規定する。時間範囲全体が複数のタイミングポイントによって均等かつ完全にカバーされる場合、幅はノイズフロアの立ち上がりまたは立ち下がりの傾斜をもたらす。ノイズフロアの階段状の増加はこの時間周期全体にわたり、それによってより平らな増加が確保される。上述の例における時間範囲の幅は、例えば、x個のビンの幅に対応する。
【0032】
連続する測定サイクルの第1の時間および第2の時間は、好ましくは無作為に選ばれる。
【0033】
全ての測定サイクルに対するタイミングポイントのこの無作為のまたは統計的な選択は、システムの統計的挙動によって可能である。概して、これによってノイズフロアが滑らかに増加する。特に、無作為の選択は指定された時間範囲によって限定される。これにより、ノイズフロアが増加する範囲を限定することができる。あるいは、連続する測定サイクルにおける2つの連続する時間の間の時間差は、上述の例のように、測定プロセスに関して、例えばビンに関して同一である。
【0034】
更なる実施形態では、連続する測定サイクルの第1の時間および第2の時間は決定論的に選ばれる。
【0035】
これは、例えば、モジュロカウンタによって実施され、それに基づいてカウンタの増加とともに時間が選択される。例えば、10個のビンが移行部分に提供されるので、カウンタと相関する、特に時間の増加と相関するビンに対して、活性化または非活性化でビンがフィルされるように時間が選択される。必要に応じて、ビンを2回以上フィルすることもでき、その場合、カウンタは値10の後に再び1から始まる。あるいは、第1のビンを2回以上フィルし、その後に次のビンを複数回フィルすることなどもできる。
【0036】
上述したように、同じタイミングポイントを多数の連続する測定サイクルに使用することができる。これは、直接連続して、または多数の測定サイクルを間に挟んで実施することができる。これにより、時間範囲の幅が低減される。
【0037】
測定サイクルでセンサ素子を活性化および/または非活性化するのに既に使用されている時間が、測定プロセスの後続の測定サイクルでは排除されることが有利である。
【0038】
このことはセンサ群にも当てはまる。換言すれば、同じセンサ素子の活性化または非活性化に使用される時間は1回だけ使用することができる。これは、便利には時間範囲と組み合わされる。このことにより、選択が無作為であるのにかかわらず、任意の時点が使用されるのを保証することが可能になる。
【0039】
別の変形例では、2回以上の測定サイクルに時間を使用することができる。特に、統計的選択の場合、時間は、特定の使用回数後に使い果たされる。決定論的選択の場合、任意の時点が使用される回数は既に予め決定されている。
【0040】
各時間またはビンに関して、時間が使い果たされるまで、異なる使用回数が選択されてもよい。
【0041】
例えば、25ns周期で200回の測定サイクルが選択された場合、1ns当たり4つのビンが100個のビンに対応する。したがって、開始時間として各ビンが2回使用される。
【0042】
30ns周期で200回の測定サイクルの別の例では、1ns当たり4つのビンでちょうど120個のビンが利用可能である。1、2、2、1、2、2、1、2、2、…の決定論的パターンの場合、開始時間として、40個のビンが1回使用され、120個のビンが2回使用される。
【0043】
更に、1つのセンサ素子の非活性化が別のセンサ素子の活性化に関連する場合、センサ素子の活性化と非活性化との間の時間遅延が同一であるか、または測定プロセスの全ての測定サイクルに対して無作為に分散されることが提案される。
【0044】
関連するというのは、この場合、1つの測定範囲から別の測定範囲への移行部分を指し、特に、1つの測定範囲から別の測定範囲への移行部分に関して、1つのセンサ群が活性化され、別のセンサ群が非活性化されるときを指す。したがって、これは、測定範囲全体の中の全ての物体を検出するために、測定範囲が有利にはギャップなしに互いに接続されるので、時間的関係である。
【0045】
つまり、活性化されるべきセンサ素子の活性化は、測定サイクル同士の時間差による。非活性化されるセンサ素子にも、測定サイクル同士の時間差が与えられる。時間のずれは、連続する測定範囲のセンサ素子の活性化と非活性化との間の時間間隔に対応する。時間のずれは、正、ゼロ、または負のいずれかであることができる。活性化されるセンサ素子の時間差および非活性化されるセンサ素子の時間間隔が、2つの連続する測定サイクルに関して同一である場合、これら2つの測定サイクルの時間のずれも同じままである。時間間隔が異なる場合、時間のずれは測定サイクルごとに変化する。
【0046】
したがって、時間のずれは、2つ、3つ以上、または全ての測定サイクルで同一のままであることができるか、あるいは、時間差の無作為のばらつきにより、測定サイクルごとに変動してもよく、特に決定論的もしくは無作為に変動してもよい。
【0047】
有利には、異なるセンサ群の時間範囲は、重なり合わないか、部分的に重なり合うか、または完全に重なり合う。
【0048】
この重なり合いがないと、測定区画の移行領域で、特に正確な測定が実施されることが確保される。重なり合いがない場合、好ましくは2つのセンサ群が同時に活性である。
【0049】
測定プロセスの間にセンサ素子が活性化される時間の時間範囲は、好ましくは、センサ素子が非活性化される時間の時間範囲と同じサイズである。特に、時間範囲は同一であるかまたは異なることができる。また、時間範囲を互いに対してシフトさせることも可能である。
【0050】
時間範囲が完全に重なり合う場合、即ち、1つの時間範囲が別の時間範囲に完全に収まる場合、またはそれらが同一である場合、ノイズフロア、および傾斜内に存在する任意の有用な信号は、一方の測定範囲から他方の測定範囲へとゆっくり均等に伝達され、その際、ヒストグラムの所与の物体に関する情報の一部は、部分的には2つのセンサ群によって提供される。
【0051】
目的はまた、請求項8によるLIDAR測定システムによって達成される。
【0052】
LIDAR測定システムは、好ましくは、上述の実施形態の1つにしたがって設計される。特に、LIDAR測定システムは、送信部と、受信部と、受信部のセンサ素子の時間制御された活性化および非活性化のための制御部とを備える。
【0053】
制御部は電子部品の一部である。特に、制御部はタイミング制御部を含む。例えば、タイミング制御部は、タイミングコントローラによって形成されるかまたはそれを含む。特に、タイミング制御部は、測定システムの個々の素子、特にセンサ素子およびエミッタ素子の、活性化および非活性化を制御する。
【0054】
特に、タイミング制御部は、上述の実施形態に記載したような方法を実施することができるように設計される。特に、タイミング制御部は、例えば光パルスの送信に対応する、基準時間に応じて、センサ素子の活性化および非活性化を制御する。この時間は、センサによって検出することができ、またはタイミング制御部によって内部で決定することができるが、それは例えば、タイミング制御部がレーザーパルスの送信も制御するためである。
【0055】
便利には、タイミング制御部は、上述の変形例にしたがって、各測定サイクルに対してセンサ素子を活性化および非活性化する時間を指定する。
【0056】
以下、方法およびLIDAR測定システムについて、いくつかの図面に基づいて改めて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】LIDAR測定システムを示す概略図である。
【
図2】
図1によるLIDAR測定システムの送信部および受信部を示す正面図である。
【
図3】測定サイクルのタイミング図および対応するヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、LIDAR測定システム10の構造を概略的に示している。かかる測定システム10は自動車で使用するためのものである。特に、測定システム10は自動車に静的に配置され、それに加えて、便利には、それ自体が静的に設計される。つまり、測定システム10、ならびにその構成要素およびモジュールは、互いに対して何ら相対的に移動することができないか、または移動しない。
【0059】
測定システム10は、LIDAR送信部12と、LIDAR受信部14と、送信レンズ16と、受信レンズ18と、電子部品20とを備える。
【0060】
送信部12は送信チップ22を形成する。この送信チップ22は複数のエミッタ素子24を有するが、明瞭に提示するため、それらの素子は概略的に四角で示している。反対側には、受信部14が受信チップ26によって形成される。受信チップ26は複数のセンサ素子28を含む。センサ素子28は概略的に三角で示されている。しかしながら、エミッタ素子24およびセンサ素子28の実際の形状は概略図とは異なる場合がある。エミッタ素子24は、好ましくは、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)によって形成される。センサ素子28は、好ましくは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)によって形成される。
【0061】
送信部12および受信部14は、焦点面アレイ(FPA)構成で設計される。つまり、チップおよびそれに関連する素子は面上に、特に平面上に配置される。それぞれの面はまた、光学素子16、18の焦点に、または焦点面内に配置される。同様に、エミッタ素子24は、送信チップ22の面上に配置され、また送信レンズ16の焦点面内で測定システム10上に位置する。同じことが、受信レンズ18に対する受信チップ26のセンサ素子28に当てはまる。
【0062】
送信レンズ16は送信部12に割り当てられ、受信レンズ18は受信部14に割り当てられる。エミッタ素子24によって放射されたレーザー光、またはセンサ素子28に入射する光は、それぞれの光学素子16、18を通過する。送信レンズ16は、特定の立体角を各エミッタ素子24に割り当てる。同様に、受信レンズ18は、特定の立体角を各センサ素子28に割り当てる。
【0063】
それぞれのエミッタ素子24によって放射されたレーザー光は、常に、送信レンズ16によって同じ立体角へと照射される。受信レンズ18により、センサ素子28も常に同じ立体角を観察する。したがって、センサ素子28は常に同じエミッタ素子24に割り当てられる。特に、センサ素子28およびエミッタ素子24は同じ立体角を観察する。
図1は概略図を示しているので、
図1の立体角は正確に示されていない。特に、測定システムから物体までの距離は、測定システム自体の寸法の何倍もある。
【0064】
このLIDAR測定システム10では、複数のセンサ素子28が単一のエミッタ素子24に割り当てられる。
図2を参照のこと。共通のエミッタ素子24に割り当てられるセンサ素子28は、マクロセル36の一部であり、マクロセル36はエミッタ素子24に割り当てられる。
【0065】
エミッタ素子24は、測定サイクルの始まりに、レーザーパルス30の形態でレーザー光30を放射する。このレーザーパルス30は、送信レンズ16を通過し、エミッタ素子24に割り当てられた立体角で放射される。物体32がこの立体角内に位置する場合、レーザー光30の少なくとも一部がそこから反射される。反射したレーザーパルス30は対応する立体角から来て、受信レンズ18によって、関連するセンサ素子28またはマクロセル36に属するセンサ素子28によって方向付けられる。センサ素子28は、入射レーザーパルス30を検出し、センサ素子28の始動が時間デジタル変換器(TDC)38によって読み出され、ヒストグラムに書き込まれる。飛行時間方法を使用して、物体32から測定システム10までの距離を、レーザーパルス30の移動時間から決定することができる。物体32およびそれらの距離は、有利には、時間相関単一光子計数(TCSPC)法を使用して決定される。TCSPC法については、以下に更に詳細に記載する。
【0066】
かかる測定サイクルのシーケンスは、少なくともセンサ素子28を読み出すことができる、電子部品20によって制御される。電子部品20はまた、特にデータ交換のため、接続部34を介して、自動車の他の電子構成部品に接続されるか、またはそれらに接続することができる。電子部品20は、ここでは概略的な構造単位として示されている。しかしながら、これについての更なる詳細な説明は提供しない。電子部品20は、測定システム10の複数の構成要素またはアセンブリにわたって分配できることに注目すべきである。この場合、例えば、電子部品20の一部は受信部14上に実装される。
【0067】
図2は、送信チップ22および受信チップ26を概略的に正面図で示している。一部の詳細のみを示しており、更なる範囲は図示したものと本質的に同一である。送信チップ22は上述したエミッタ素子24を含み、それらは行および列で配置される。しかしながら、この行および列の配置は単に一例として選ばれたものである。列は大文字のローマ数字で、行は大文字のアルファベットで示している。
【0068】
受信チップ26は複数のセンサ素子28を含む。センサ素子28の数はエミッタ素子24の数よりも多い。センサ素子28も行および列の配置で実装される。この行および列の配置はやはり単に一例として選択されている。列は小文字のローマ数字で、行は小文字のアルファベットで示している。しかしながら、受信チップ26の行または列は、個々のセンサ素子28にではなく、複数のセンサ素子28を有するマクロセル36に関連する。より明瞭に示すため、マクロセル36は破線によって互いから分離されている。マクロセル36のセンサ素子28は全て単一のエミッタ素子24に割り当てられる。例えば、マクロセルi,aは、エミッタ素子I,Aに割り当てられる。エミッタ素子24によって放射されたレーザー光30は、関連するマクロセル36のセンサ素子28の少なくとも一部の上に写像する。
【0069】
センサ素子28は、個別にまたは少なくとも群単位で活性化および非活性化することができる。結果として、マクロセル36の関連するセンサ素子28を活性化することができ、関連がないものを非活性化することができる。これによって結像誤差を補償することができる。かかる結像誤差は、例えば、光学素子16、18の結像誤差または他の視差誤差などの静的誤差であり得る。その一例を以下の項で説明する。
【0070】
例えば、視差により、近距離範囲で、即ち物体32から短い距離で放射されたレーザー光30は、
図2の上部に配置されたマクロセル36のセンサ素子28上に結像される。しかしながら、物体が測定システム10から更に遠い場合、反射されたレーザー光30はマクロセル36の下側領域に、したがって下側のセンサ素子28に衝突する。視差による入射レーザー光の変位は、特に、ユニットの配置および測定システム10の物理的設計に応じて変わる。
【0071】
したがって、マクロセル36のセンサ素子28は、測定サイクルの間、照明されていないセンサ素子が非活性化されるようにして、活性化および非活性化される。活性なセンサ素子はそれぞれ環境放射線をノイズフロアとして検出するので、照明されていないセンサ素子を使用不能にすることによって、測定のノイズフロアが最小限に保たれる。一例として、
図2では、3つのセンサ群が受信チップ26上に描かれている。
【0072】
例として、単に方法について説明するため、センサ群α、β、およびγがここで示されている。原則として、センサ群も別に選ぶことができる。センサ群αは単一のセンサ素子28を含み、それによって近距離範囲が測定サイクルの始まりに検出される。センサ群βは、中程度の測定距離で活性である複数のセンサ素子28を含む。センサ群γは、遠距離範囲で活性である複数のセンサ素子28を含む。センサ群βのセンサ素子28の数が最も多く、次がセンサ群γである。
【0073】
センサ群α、β、およびγのセンサ素子28の選択は、単に一例として選ばれており、応用例では、センサ素子28の設計およびエミッタ素子24に対する配置と同様に、図示されるものとは異なることができる。
【0074】
近距離範囲では、通常は少数のセンサ素子28のみが活性である。例えば、これらのセンサ素子28も、近距離範囲に対する特定の要件を満たすため、他のセンサ素子28とは異なる設計であることができる。
【0075】
センサ群γは、センサ群βからの部分詳細であるが、センサ群γだけの2つのセンサ素子28も含む。例えば、異なるセンサ群は、完全に重なり合うことも、即ち多数の共通のセンサ素子28を有することもできる。しかしながら、全てのセンサ素子28がこのセンサ群だけに割り当てられることもあり得る。また、センサ素子28の一部分のみが1つのセンサ群だけのものであり、残りのセンサ素子28が2つ以上のセンサ群の一部であることもある。
【0076】
第1の測定範囲から第2の測定範囲へ、例えば中距離範囲から遠距離範囲への移行部分で、例えば、既に活性であるセンサ群のセンサ素子のいくつかのみが次に非活性化され、センサ素子のいくつかは活性化されたままであり、更なるいくつかのセンサ素子28が活性化されてもよい。
【0077】
センサ素子28は、時間デジタル変換器(TDC)38に接続される。このTDC38は電子部品20の一部である。TDC38は、各マクロセル36の受信部上に実装され、マクロセル36の全てのセンサ素子28に接続される。しかしながら、このTDC38に関する設計の変形例は単なる一例である。
【0078】
同時に活性であるSPADとして実現されたセンサ素子28は、入射光子によって始動させることができる。この始動はTDC38によって読み出される。次に、TDC38は、この検出を測定プロセスのヒストグラムに入力する。このヒストグラムについては、以下で更に詳細に説明する。検出後、最初に、必要なバイアス電圧をSPADにおいて再確立しなければならない。この周期内では、SPADは無効であり、入射光子によって始動することができない。このチャージに要する時間はむだ時間としても知られている。この文脈では、非活性なSPADが動作電圧を蓄積するには特定の時間量がかかることにも注目すべきである。
【0079】
測定システム10のエミッタ素子24は、それらの光パルスを連続して、例えばラインごとまたは行ごとに放射する。これにより、エミッタ素子24の行または列が、マクロセル36の隣接する行または列のセンサ素子28を始動させることがなくなる。特に、活性であるマクロセル36のセンサ素子28のみに、対応するエミッタ素子24がレーザー光30を放射する。
【0080】
上述したように、物体の距離を決定するためにTCSPC法が提供される。これについては
図3に基づいて説明する。TCSPCでは、存在するあらゆる物体およびそれらの測定システム10からの距離を決定するため、測定プロセスが実施される。測定プロセスは、複数の本質的に類似した測定サイクルを含み、それらが同じように繰り返されてヒストグラムを作成する。
【0081】
次に、このヒストグラムを評価して、あらゆる物体およびそれらの距離が特定される。
図3は、多数の部分図a、b、c、d、e、f、gを含み、それらはそれぞれ自身のY軸を有するが、時間がプロットされる共通のX軸を共有している。
図3a~3fは、単一の測定サイクルを示し、
図3gは測定プロセス全体の結果を示している。測定プロセスは、時間t
startで始まり、時間t
endeで終わる。
【0082】
図3aは、測定サイクルにわたるエミッタ素子46の活性を示している。エミッタ素子は、時間t
2に活性化され、しばらくして時間t
2*に非活性化されて、レーザーパルスを放射させる。
【0083】
図b、c、およびdは、測定サイクル内におけるセンサ群α、β、およびγのセンサ素子28の活性段階を示している。センサ群αのセンサ素子は、時間t0におけるレーザーパルスの放射前に既に荷電(チャージ)されており、時間t1で既に活性である。時間t1およびt2は、時間的に一致することができ、または互いに対してずらすことができる。したがって、センサ群αは、遅くてもレーザーパルス30が放射されるときには活性である。これは近距離範囲に対応する。
【0084】
センサ群βのセンサ素子は、時間t3でセンサ群αが非活性化される直前に荷電され、センサ群αが非活性化される時間t4では活性である。中距離範囲をカバーするセンサ群βは、遠距離範囲への移行時にオフにされるまで、より長期間にわたって活性なままである。
【0085】
センサ群γのセンサ素子28の活性は
図3dに示されている。センサ群γは部分的にはβの下位群なので、重なり合うセンサ素子28は時間t
7で活性なままであるが、センサ群βの他のセンサ素子28は非活性化される。センサ群γの残りのセンサ素子28は、時間t
6で前もって既に荷電されている。センサ群γも、時間t
8で非活性化されるまで、より長期間にわたって活性なままである。時間t
8はまた、時間t
endeにおける測定サイクルの終わりに対応する。しかしながら、他の例示的実施形態では、測定サイクルの終わりは最後の活性センサ群の非活性化とちょうど同じである必要はない。測定サイクル42の始まりは時間t
startによって規定され、測定サイクル44の終わりは時間t
endeによって規定される。
【0086】
このように、測定サイクルは、レーザーパルス46の放射と、センサ群間での切替えと、近距離範囲48、中距離範囲50、および遠距離範囲52における入射光の検出とを含む。
【0087】
図3eは、中距離範囲に置かれている物体32の一例を示している。図は物体32の反射面に対応する。物体32で反射したレーザーパルス30は、時間t
5で、センサ群βの活性なセンサ素子28によって検出することができる。
【0088】
図3fは、複数の測定サイクルの例示的なフィルを表すヒストグラム54を示している。ヒストグラムは、測定サイクル全体を個々の時間セグメントに分割する。ヒストグラム54のかかる時間セグメントはビン56とも呼ばれる。TDC38は、ヒストグラム54を追加し、センサ素子28を読み出す。活性のセンサ素子28のみが検出をTDC38に送信することができる。SPADが光子によって始動された場合、TDC38は、メモリによって表されるヒストグラムに、例えばデジタル1または検出58をフィルする。TDCは、この検出58を現在時間と関連付け、ヒストグラム54の対応するビン56にデジタル値をフィルする。
【0089】
中距離範囲には単一の物体32しかないので、この1つの物体32のみを検出することができる。それでも、測定サイクル全体にわたってヒストグラムには検出58がフィルされる。これらの検出58はバックグラウンド放射線によって生成される。バックグラウンド光線の光子はSPADを始動させることができる。したがって、結果として生じるノイズフロアのレベルは、活性なSPADの数、即ち、センサ群のセンサ素子28の数に応じて決まる。
【0090】
近距離範囲48では、2つのビン56のみにそれぞれ1つの検出58がフィルされ、第3のビンは空のままであることが分かる。これは検出されたバックグラウンド放射線に対応する。単一のSPADのみが活性なので、検出の数は非常に少ない。
【0091】
続く中距離範囲50では、複数の活性なセンサ素子28を有するセンサ群βが活性である。したがって、検出されたバックグラウンド放射線も大きいので、1つのビンに平均3つの検出58が、場合によっては4つまたは2つの検出58がフィルされる。物体32の反射面が測定サイクルの時間t5に位置する領域32では、検出58の数は著しく多い。この場合、7つまたは8つの検出58がヒストグラム54に記録される。
【0092】
遠距離範囲52には検出できる物体はない。ここでは、ビン1つ当たり平均1つ~2つの検出58で、バックグラウンド放射線のみが表される。したがって、SPADの数も少ないので、ノイズフロアの平均値は中距離範囲50よりも低い。しかしながら、センサ群αを含む近距離範囲48はセンサ群γのセンサ素子28の数の一部しか示していないので、検出58の平均値は近距離範囲48よりも多い。
【0093】
上述したように、図示されるヒストグラムのフィルは例示にすぎない。ビンの数およびそのフィルレベルは、実際の測定サイクルでは大幅に異なる場合がある。通常、単一の測定サイクルまたは少数の測定サイクルからは、物体32はまだ検出できない。したがって、TCSPC法を用いて、複数の測定サイクルが連続して実施される。各測定サイクルは同じヒストグラムを追加する。複数の測定サイクルがフィルされている、かかるヒストグラムが
図3gに示されている。
【0094】
図3gのヒストグラムも、デジタル的にフィルされたビンによって形成されている。しかしながら、より明確な図にするため、この図では各ビンの表示を省略してあり、その代わりにビンのフィルレベルに対応する線のみを描写している。
【0095】
低いノイズフロアが近距離範囲48で得られ、またここでほとんどのセンサ素子も活性なので、最も高いノイズフロアが中距離範囲50で得られる。遠距離範囲52では、決定されるノイズフロアは近距離範囲48と中距離範囲50との間である。それに加えて、中距離範囲50で物体32によって反射したレーザー光30の検出は、ピーク33の形態で見ることができる。検出されたバックグラウンド放射線は、統計的に均一に分配されるので、活性なセンサ素子の数に応じてほぼ直線が得られる。しかしながら、物体およびその反射面は常に同じ面にあり、測定サイクルの合計にわたって、ピーク33はノイズフロアを卓越する。
【0096】
図3gによるヒストグラムの決定において、
図3の測定サイクルは多くの回数にわたって同じように繰り返された。特に、記載した全ての動作は常に同じ時間t
0~t
8で実施される。
【0097】
次に、
図3gのヒストグラムを評価して、物体を特定しそれらの距離を決定する。検出に関して、通常、上昇、即ちヒストグラム形状の急激な立ち上がりエッジが評価される。物体32が配置される時間間隔から、光の速度によって物体までの距離を計算することができる。
図3gによるヒストグラムでは、物体が近距離範囲と中距離範囲との切替え範囲に対応する距離、および中距離範囲と長距離範囲との間に位置する場合に、問題が起こる。
【0098】
次に、潜在的な物体の評価が切替え時間に行われないと規定された場合、システムはこれらの移行領域において無効となる。他方で、この規定が行われない場合、物体がなかったとしても静的物体が切替え時間に常に検出されるか、または実際の信号を切替え時間のエッジと区別することができない。この問題は、センサ素子を制御する以下の設計によって解決される。この方法について、
図4を参照して更に詳細に記載する。
【0099】
測定サイクルの基本シーケンスは
図3bに示されるものと違わない。しかしながら、測定プロセスの各測定サイクルは、他の測定サイクルとわずかに異なる。
図4a、b、c、d、eは、
図3a、b、c、dと同じプロセスを示しているが、3つの異なる測定サイクルに関するものである。例えば、測定プロセスの第1の測定サイクルは実線60によって、測定プロセスの最終測定サイクルは破線64によって、測定プロセスの中間測定サイクルは点線62によって表される。部分図a、b、c、dに関して、それぞれの線は添字b、c、dによって補足される。
【0100】
以下、センサ群およびそのセンサ素子が活性化および非活性化される時間についてのみ記載する。これらの素子がSPADである場合、荷電もしなければならない。しかしながら、単純にするため、この荷電段階については記載しない。測定サイクルおよび測定プロセスに関連する
図3における上述の説明は、それらと矛盾しない限りにおいて、以下の説明にも当てはまる。
【0101】
時間taで、測定サイクル60、62、および64の間にセンサ群αが活性化される。この時間taは、測定プロセスの全ての測定サイクルに対して不変のままである。
【0102】
エミッタ素子24は、時間tbに活性化され、時間tcに非活性化されて、レーザーパルス30を放射させる。時間taは時間tbの前であるか、あるいは両方同時である。
【0103】
第1のセンサ群αは、時間t
dにおいて測定サイクル60の間に非活性化され、その時間にセンサ群βは活性化される。しかしながら、同じ測定プロセスの後者の測定サイクル62では、後の時間t
eまで第1のセンサ群αは非活性化されない。同様に、測定サイクル62の間、センサ群βは時間t
eでしか活性化されない。また、同じく後者に続く測定サイクルに関して、センサ群αおよびセンサ群βは時間t
fでしか非活性化または活性化されない。特に、時間t
fは時間t
eの後であり、それは時間t
dの後である。近距離範囲48の長さおよび中距離範囲50の長さ、ならびにそれらの終わりまたは始まりは、測定サイクルの数にわたって時間シフトされる。これにより、急激な立ち上がりステップが平らになる。
図4fも参照のこと。個々の測定サイクルの時間の間の時間差が同一である場合、均一な増加が得られる。例えば、かかる時間差はビンの持続時間に等しいものであり得る。原則的に、時間差は測定サイクルごとに異なることができるが、時間差の均一な分布が好ましい。
【0104】
2つの測定サイクルにおける単一のタイミングポイントに関する時間間隔が、時間差と呼ばれる。
【0105】
ノイズフロアの平らな立ち上がりまたは立ち下がりは、センサ群βの成分が測定サイクル60における時間tdからのノイズフロアに寄与することによる。しかしながら、測定サイクル62の間、ノイズフロアの成分は時間teのみから、測定サイクル64では時間tfのみから導入される。したがって、ノイズフロアはゆっくり安定的に増加する。ヒストグラムは測定サイクルの測定周期をビンに分割するので、増加は本質的に階段状であり続ける。しかしながら、ステップは小さいので、ヒストグラムの評価において問題とならない。特に、傾斜は、光パルスの持続時間よりも、特に光パルスの複数の持続時間よりも長い持続時間に延長される。
【0106】
続いてヒストグラムを評価する際、異なる測定範囲間の移行部分にある物体は簡単に検出することができる。更に、これによって誤検出も防ぐことができる。
【0107】
レーザーパルスは常に同じ時間に放射され、そのときにセンサ群αは既に活性なので、センサ群αの活性化にはかかる時間差を要しない。
【0108】
センサ群βからセンサ群γへの移行部分は、センサ群αからセンサ群βへの移行部分と同じように挙動する。測定サイクル60の場合、これは時間thであり、測定サイクル62の場合は時間ti、測定サイクル64の場合は時間tkである。したがって、ヒストグラムにおける、中距離範囲50のノイズフロアから遠距離範囲52のノイズフロアへの減少は、より平らで均等である。
【0109】
任意に、遠距離範囲52は、時間差によって時間をずらした、時間tl、tm、およびtnで非活性化することもできる。
【0110】
時間は、測定サイクルごとに無作為に選択することができる。特に、時間差は測定サイクルごとに無作為に選択される。それにより、結果として得られる統計的平均は均一に増加するノイズフロアである。tdからtfまでの時間範囲66が指定され、そこから時間が無作為に選択される。更なる時間範囲68はthからtkまでである。
【0111】
あるいは、時間は、例えば所定のパターンを用いて、決定論的に選ぶこともできる。好ましくは、決定論的に選ぶことによって時間の分布が均一になる。
【0112】
任意に、センサ群を活性化または非活性化するのに既に使用されている時間範囲66、68内の時間は、更なる測定サイクルにはもう選択することができない。例えば、時間teが第1の測定サイクルで選択された場合、この時間はもう後の測定サイクルには利用できない。これにより、無作為な選択を行うことが可能になり、所定の時間セットを依然として使用することができる。特に、かかる統計的選択によって特定の誤差源を排除することができる。
【0113】
図4cおよび4dによれば、センサ群βは、センサ群γが活性化されるのと同じ時間に非活性化される。したがって、センサ群βのセンサ素子の非活性化とセンサ群γのセンサ素子の活性化との間で、時間のずれはゼロである。この時間のずれは、全ての測定サイクル60、62、および64で同一であり、測定プロセス全体にわたって変化しない。
【0114】
時間のずれは、単一の測定サイクル内で、センサ群が非活性化される時間とセンサ群が活性化される時間との間の時間差である。
【0115】
代替実施形態では、この時間のずれは非ゼロであり得る。例えば、センサ群γが活性化され、センサ群βは時間のずれが経過するまで非活性化されない。これは反対方向でも可能である。2つのセンサ群の間で切り替える際のかかる同一の時間のずれは、センサ群が重なり合うセンサ素子を有する場合に有利である。これにより、ノイズフロアの均一な増加または減少が確保される。
【0116】
しかしながら、時間のずれは測定サイクルごとに変更することもできる。これは、例えば、連続するセンサ群の間でセンサ素子の重なり合いがない場合に可能である。
【0117】
例えば、センサ群βを非活性化する時間、およびセンサ群γを活性化する時間が無作為に、互いに独立して選択される場合、無作為な選択が有用である。しかしながら、上述したように、決定論的選択も可能である。
【0118】
方法を実施するため、測定システムの電子部品20はタイミング制御部を有する。このタイミング制御部は、測定システムの時間を規定し、また素子の時間的順序を制御する。特に、ヒストグラムの時間を指定し、個々のセンサ素子およびエミッタ素子の活性化および非活性化を制御する。それに加えて、タイミング制御部によってヒストグラムを正確に追加することができる。タイミング制御部はまた、個々の素子が活性化および非活性化される、各測定サイクルの時間を指定する。
【符号の説明】
【0119】
10 LIDAR測定システム
12 LIDAR送信部
14 LIDAR受信部
16 送信レンズ
18 受信レンズ
20 電子部品
22 送信チップ
24 エミッタ素子
26 受信チップ
28 センサ素子
30 レーザー光/レーザーパルス
32 物体
33 ピーク
34 接続
36 マクロセル
38 TDC
40 x軸(時間)
42 測定サイクルの始まり
44 測定サイクルの終わり
46 レーザーパルスの放射
48 近距離範囲の検出
50 中距離範囲の検出
52 遠距離範囲の検出
54 ヒストグラム
56 ビン
58 検出
60b、c、d 実線
62b、c、d 破線
64b、c、d 点線
66 時間範囲
68 時間範囲
α、β、γ センサ群
I、II、… 送信チップの列
i、ii、… 受信チップの列
A、B、… 送信チップの行
a、b、… 受信チップの行
tstart 時間
tende 時間
t0 時間
t1 時間
t2 時間
t2* 時間
t3 時間
t4 時間
t5 時間
t6 時間
t7 時間
t8 時間
ta 時間
tb 時間
tc 時間
td 時間
te 時間
tf 時間
tg 時間
th 時間
ti 時間
tk 時間
tl 時間
tm 時間
tn 時間