(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物及びそれを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230317BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230317BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230317BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/86
A61K8/81
A61K8/44
A61K8/85
A61K8/25
A61K8/365
A61K8/88
A61K8/06
A61Q1/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021506408
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2019099657
(87)【国際公開番号】W WO2020030012
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】201810896276.0
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】周偉東
(72)【発明者】
【氏名】陳露瑩
(72)【発明者】
【氏名】西島 義人
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-067024(JP,A)
【文献】特開2010-265268(JP,A)
【文献】特開2017-061549(JP,A)
【文献】特開2005-036001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、
前記水相に分散させた油相粒子と、を含み、
前記水相は水性増粘剤を含み、かつ、前記水相の30℃で測定した降伏応力が1.0Pa以下であり、
前記
水性増粘剤が、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、及びポリアクリル酸ナトリウムから選択される少なくとも一種であり、
前記油相粒子の平均粒子径が50μm~10mmであり、
前記油相粒子は油性成分及び油性増粘剤を含み、かつ油性増粘剤の配合量が、前記油性成分全量に対して0.02質量%~10質量%であり、
前記油性増粘剤が、ジブチルラウロイルグルタミン、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミン、(ベヘン酸/エイコサン酸)グリセリル、ジメチルシリル化シリカ、12-ヒドロキシステアリン酸、及びポリアミド-8から選択される少なくとも一種であることを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項2】
HLB値が10以上の界面活性剤を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記油相粒子と前記水相との比重の差が-0.01~0.1g/cm
3であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤の配合量が前記組成物の量に対して0.002質量%~0.1質量%であることを特徴とする、請求項2又は請求項3(ただし、請求項2を引用する場合に限る)に記載の組成物。
【請求項5】
前記油性成分は固体油性成分及び液体油性成分を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの一項に記載の組成物を含むことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料分野に関する。より詳細には、水中油型乳化組成物をベースにした化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化組成物は化粧料分野で広く利用されている。通常、水中油型乳化組成物において、油相は分散相として粒子状又はビーズ状の形態で、水相から形成される連続相に存在する。このような油相粒子は増粘剤、界面活性剤等の補助添加剤の作用下で水相において様々な所望の形態を形成する。
【0003】
油相の存在状態も油相粒子又は油滴の粒子径に関係しており、例えば、数十~数百nm又は数μm程度の油相粒子が形成されることができる。一部の製品では、これら粒子は製造時に安定して存在し、且つ安定して保存することが望まれている。
【0004】
さらに、50μm~10mmの平均粒子径を有する大きい油性粒子が水相に分散している水中油型乳化組成物を含む化粧料も知られている。このような大きい油性粒子を含む水中油型化粧料は、油性粒子が外部から見えるように水相に分散できるため、視覚的に斬新で美しいばかりでなく、皮膚に適用した際にユーザーに新鮮さをもたらすこともできる。さらに、時間が経過してもしっとり感をもたらすことができる。このような性能は従来にないものである。したがって、比較的大きい油相粒子を含む乳化組成物の使用は、触感等、従来にない様々な新しい使用感を得ることができる。
【0005】
また、油相粒子において分解性のある油溶性成分を維持する必要がある場合、油相粒子の寸法が大きければ、これら分解しやすい物質を良好に隔てて保護できるため、当該油溶性成分の分解を抑制する効果も発揮する。
【0006】
このような水中油型乳化組成物は、外観及び使用感の観点から、油相粒子の粒度を保持することが重要である。特に、現在の販売では、多くの化粧料が長距離の輸送及び複数回の搬送を要するため、輸送又は搬送中に程度は異なるが振動したり、不規則なせん断力が発生したりする。このような条件下で、乳化組成物における油相粒子の寸法安定性及び完全性を維持することも必要である。例えば、通常、振動過程では、乳化組成物における油相粒子同士の間に不規則な衝突が発生する。このような衝突は頻繁すぎる又は強すぎると、油相粒子が破損する結果、乳化組成物が濁る可能性がある。また、油相粒子に内包されている分解性のある物質が上記の破損により析出する場合もある。この場合、これら成分も望ましくない分解が生じる。最終的に、このような乳化組成物を含む化粧料製品は、消費者に届けられる時又はその前に外観が劣化したり、使用効果が低下したりする。
【0007】
また、乳化組成物における油性成分として、一部の製品では、複数の使用効果を実現するために、複数種の油性成分を使用して混合する場合がある。このような場合、油相粒子全体の粒子寸法安定性を維持することが重要である。例えば、複数種の油成分を混合して形成した油相粒子を連続相に分散させ、様々な油性成分が可能な限り長期間分離せず保持されることが望ましい。つまり、油相粒子は、乳化組成物の外観の劣化又は使用感の低下を引き起こさないように、製造、貯蔵及び使用中に異なる油相成分が相溶性の違いにより分離又は偏析することを回避すべきである。
【0008】
したがって、水中油型乳化組成物をベースとする化粧料の製造では、特に油相粒子が大きい粒子の形態で存在する場合、今までの研究の大部分では、製品の静的状態下での分散均一性又は経時安定性は改良されたが、輸送、貯蔵などで起こる振動による油相粒子の破砕又は異なる油相の相溶性による相分離もさらに検討される必要がある。
【0009】
特許文献1には、ベヘニルアルコール等の室温で固体である両親媒性物質を含む油性成分が100μm以上の平均粒子径を有する油性カプセルの形態で水性溶媒に分散しているカプセル含有組成物が記載されている。しかし、100μm以上の油性粒子(カプセル)を水相に分散させるために、水相増粘剤が配合される。特許文献1の実施例では、水溶性増粘剤としてカルボキシビニルポリマーが配合されている。
【0010】
特許文献2には、特許文献1で配合されるカルボキシビニルポリマーによる肌なじみの低下等を改善するために、さらにポリオキシエチレン系会合性増粘剤が配合された皮膚外用剤が記載されている。
【0011】
上記の先行技術においては、より大きな粒子径を有する油性粒子を安定化させるために水性増粘剤を使用しており、これら増粘剤の使用は水相の稠度を高めることで水相に分散している油相粒子の安定性を向上できる(粒子は均一に分布しているが、自由に移動する能力が制限される)が、場合によっては、組成物がゲル化しているように見えることがある。これも油相粒子の水相中での移動性をさらに制限し、特に油相粒子の移動により視覚的効果を向上させる必要がある場合、製品の美しい外観を低下させるとともに、視覚的なべたつき感が生じて、製品の購入意欲が低下することにつながる。したがって、増粘剤の使用についてはさらに議論される余地がある。
【0012】
しかも、上記のように、従来の化粧料製品では、安定的で長期間にわたる視覚的効果を得るように、粒子径の大きい油相粒子が存在している水中油型乳化組成物は、通常、これら粒子が組成物において比較的安定して存在していることが望ましく、又はこれら油相粒子が組成物において制限付きで移動することが望ましい。しかし、視覚的効果について、場合によって、特別な効果を発揮させるために、例えば油相粒子が沈降を繰り返すことも許される。したがって、粒子径の大きい油相粒子が存在している水中油型乳化組成物の外観の多様化について、さらなる開発が求められている。
【0013】
また、上記文献は、油性粒子自体において相溶性の異なる油性成分の相分離の問題があったことに触れていないため、この問題への改善は十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第4798899号公報
【文献】特開2012-67024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題の1つは、粒子径の大きい油相粒子が存在している水中油型乳化組成物を提供することである。当該組成物において、油相粒子が自由に移動し、又は沈降を繰り返すことができ、また、製造、輸送又は貯蔵時に油相粒子が衝突により破砕することもない。
【0016】
また、本発明が解決しようとする別の課題は、粒子径の大きい油相粒子が存在している水中油型乳化組成物における油相粒子の安定性を確保し、つまり、このような油相において異なる油性成分が存在する場合にも製造、輸送又は貯蔵中に油相粒子において相分離を発生させないことである。
【0017】
また、本発明が解決しようとする更に別の課題は、水中油型乳化組成物における油相粒子が自由に移動し、かつ沈降を繰り返すことができるように制御することで、斬新で美しい外観を有する水中油型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
鋭意研究を重ねた結果、本発明は上記の課題を解決するために下記の解決策を提示する。
【0019】
まず、本発明は、
水相と、
前記水相に分散している油相粒子と、を含み、
前記水相は水性増粘剤を含み、かつ、前記水相の30℃で測定した降伏応力が1.0Pa以下であり、
前記油相粒子の平均粒子径が50μm~10mmである、水中油型乳化組成物を提供する。
【0020】
さらに、HLB値が10以上である界面活性剤を含む前記の組成物を提供する。
【0021】
上記の組成物において、前記油相粒子と前記水相との比重の差(油相粒子の比重-水相の比重)は、-0.01~0.1g/cm3であるのが好ましい。
【0022】
上記の組成物において、前記界面活性剤の量が前記組成物の全量に対して0.002質量%~0.1質量%であるのが好ましい。
【0023】
上記の組成物において、前記油相粒子は油性成分及び油性増粘剤を含み、かつ、前記油性成分は固体油性成分及び液状油性成分を含むのが好ましい。
【0024】
上記の組成物において、前記油相粒子における前記油性増粘剤の含有量が前記油性成分全量に対して0.02質量%~10質量%であるのが好ましい。
【0025】
また、本発明はさらに、上述したいずれかの組成物を含む化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0026】
上記の発明によれば、本発明で提供される粒子径の大きい油相粒子を含む水中油型乳化組成物は以下の利点を有する。
【0027】
本発明では、油相粒子が乳化組成物において自由に移動し、沈降を繰り返すことが許されるため、雪や雨が降るような外観的効果をもたらすことができる。これは従来にないものであり、より多くの使用ニーズに応え、ユーザーに特別な美的感覚を与えることができる。
【0028】
上記の効果に加え、本発明は、粒子径の比較的大きい油相粒子を安定した粒子径寸法で水中油型乳化組成物に存在させ維持することができるため、輸送、貯蔵及び使用中に起こる振動による上記粒子径の比較的大きい油相粒子同士が衝突して破損することを防止できるのみならず、油相粒子が前記水中油型乳化組成物において自由に移動及び沈降することを過剰に抑制することにより乳化組成物の外観効果が劣化することもない。
また、本発明において好ましい発明は、粒子径の比較的大きい油相粒子について、油相粒子に複数種の異なる油性成分が存在していても、これら成分が油相粒子の形成後の貯蔵又は使用中に相分離する傾向を抑制し、油相粒子の寸法安定性をさらに維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態を説明する。なお、特に断りがない限り、本発明において使用する単位はすべて国際標準単位である。また、本発明における数値、数値範囲はすべて、工業的生産時に不可避的系統誤差を含むものと理解されるべきである。
【0030】
<水中油型乳化組成物>
本発明における「水中油型乳化組成物」とは、分散補助手段により、分散相である油相を連続相である水相に分散させて形成される乳化組成物である。分散相である油相は寸法の比較的大きな粒子の形態で存在する。なお、本発明で使用される「粒子」は、いくつかの実施の形態において、ビーズ状又はビーズ状に近い形態で存在しうる。
【0031】
さらに、いくつかの実施形態において、乳化組成物における油相粒子は、水相に懸濁することができ、また、任意の外力の作用により乳化組成物中を移動することができる。別のいくつかの実施形態において、任意の外力及び重力の作用により、油相粒子は乳化組成物中で沈降運動することができる。別のいくつかの実施形態において、特別な外観的効果を発揮できるように、油相粒子は沈降により乳化組成物の底部に濃縮され、その後に振とう又は他の外力の作用により再度乳化組成物の他の部分に移動することにより沈降を繰り返すことができる。さらに、上記の場合、油相粒子は粒子径又は寸法の安定性を維持することができる。前記粒子径又は寸法の安定性とは、主に油相粒子同士の衝突による油相粒子の破損、又は、異なる油性成分の相分離等による油相粒子自体の分解等に起因する構造安定性の問題を意味する。
【0032】
本発明に係る水中油型乳化組成物では、水相及び油相粒子の組成として、組成物の全質量に対して、油相粒子が0.05~40質量%であり、好ましくは1~35質量%であり、又は1.5~20質量%であってもよい。
【0033】
水相
本発明では、水相は乳化組成物の連続相として使用され、その組成は主に水である。水相を構成する水の配合量は特に限定されないが、通常、水相の全質量に対して50~99質量%であり、好ましくは60~98質量%であり、より好ましくは70%~95質量%である。
【0034】
さらに、本発明の好ましい実施形態において、水相と油相粒子の比重は、以下の関係を満たす。
-0.01≦油相粒子の比重-水相の比重≦0.1(g/cm3)
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、油相粒子の比重が水相よりやや小さく、又は実質上同一であるように制御する。この場合、静的状態では、油相粒子は安定した寸法で乳化組成物に存在することができる。また、外部振とう等の外力が存在する場合、油相粒子は乳化組成物中を自由に移動することができる。
【0036】
本発明の別のいくつかの実施形態において、油相粒子が一定期間静置した後、又は静置開始時に水相中で自由に沈降できるように、油相粒子の比重が水相に対して、0を超え、かつ0.1g/cm3以下(例えば、0.01~0.05g/cm3又は0.05~0.1g/cm3の範囲内)であるように制御する。また、この場合の沈降速度は速すぎて視覚的効果に悪影響を与えることはなく適切なものである。さらに、乳化組成物に振動又はさらに力を加えると、沈降後の油相粒子は改めて水相の各部分に分散することができ、また、再度静置した後にも自由に沈降することができる。
【0037】
このような効果は、粒子径の大きい油相粒子を含む乳化組成物に基づいて斬新な視覚的効果を開発することには重要である。
【0038】
さらに、上記の外観効果を実現させ、かつ水中油型乳化組成物中の油相粒子が外力の作用下で運動又は沈降を繰り返すことに起因する過剰な衝突による油相粒子の破損を抑制するために、本発明では、水相に水性増粘剤を使用し、かつ水相の30℃で測定した降伏応力を1.0Pa以下、好ましくは0.6Pa以下、又は0.2Pa以下とする。
【0039】
本発明における降伏応力は以下のように定義される。
材料を引張る又は圧縮する際に、応力が一定の数値に達すると、応力は微増するが歪みは急激に増大する現象を降伏現象と呼び、材料が降伏する際の正応力が材料の降伏応力である。流体の降伏応力とは、一部の非ニュートン流体を対象とするものであり、加えられるせん断応力が小さい場合に流体は流動せず変形するだけであるが、せん断応力が一定の数値まで増加すると、流体が流動し始める。この場合のせん断応力が当該流体の降伏応力と呼ばれる。
【0040】
水相の降伏応力が1.0Paを超えると、水相の稠度(粘度)が高すぎるため、上記の沈降、分散、再沈降が難しくなる。例えば、油相粒子の水相での懸濁が過剰に安定する傾向になるか、或いは油相粒子が自由に移動し又は沈降する速度が遅くなりすぎる結果、所望の視覚的効果が得られない場合がある。
【0041】
降伏応力の測定方法は特に限定されず、当業界で通常の測定条件及び装置を採用することができる。例えば、本発明に係る降伏応力は下記の装置及び条件を採用して測定される。
測定装置:アントンパール(Anton Paar)回転式レオメーターMCR302;ローター:CP50~1;測定温度:30℃。
測定方法:サンプルを入れた後に、サンプルの1S-1~100S-1の間の粘度を測定する。Cassonモデルでデータをあてはめ、システムによりサンプルの降伏応力を計算する。
【0042】
本発明では、上記の効果を達成するために、水相に水性増粘剤を使用することが必要で重要である。水性増粘剤の使用により水相の降伏応力を上記特定の範囲に制御することで、油相粒子の沈降効果に影響を与えることなく油相粒子同士の衝突を抑制することができる。
【0043】
水溶性増粘剤の種類は特に制限されず、アラビアゴム、トラガカント、キサンタンガム、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、マルメロ種子(パパイヤ)、アルギン(フコキサンチン)等の植物系高分子;デキストラン、サクシノグリカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、硫酸ナトリウムセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶性セルロース、セルロース粉末等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、アルミニウムマグネシウムシリケート、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機水溶性高分子を含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、水性増粘剤は、好ましくはキサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0045】
水相に増粘剤を使用することにより乳化組成物の粘度又は稠度を向上できることは当業界公知のことであるが、上記のとおり、先行技術では通常、増粘剤の使用は分散相の空間的安定性のみに着目されていた(増粘剤の使用により分散相の移動又は運動が制限される)。これに対して、本発明では、水性増粘剤の使用により水相の降伏応力が上記の条件(1.0Pa以下)を満たしている。その効果として、粒子径の大きい油相粒子の自由移動又は自由沈降を顕著に妨げることなく、上記の運動中の油相粒子同士の過度又は頻繁すぎる衝突を低減することができる。これは従来には考慮されなかったことである。
【0046】
さらに、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、水相に界面活性剤を使用してもよい。当該界面活性剤は、例えば、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウリルグリコールカルボン酸Na、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンNa、PEG-60水添ヒマシ油、ポリ四級アンモニウム塩、ポリエチレングリコールグリセロールイソステアレート等のHLB値が10以上の界面活性剤を含む。
【0047】
これら界面活性剤は、1種又は2種以上の任意の組み合わせを使用することができる。
【0048】
本発明では、HLB値が10以上である界面活性剤は、水相において比較的良好な水溶性を有しながら、水相の比較的透明な外観を維持できることを見出した。これら界面活性剤が水相に存在する場合、振動又は外部せん断力を受けると発泡する可能性がある。このような場合、組成物における油相粒子同士の衝突を緩和することができる。したがって、輸送、貯蔵中の油相粒子の衝突を遅くするには有利である。
【0049】
界面活性剤の量は、水中油型乳化組成物の全質量に対して0.002~0.1%であり、好ましくは0.02~0.07%であってよい。界面活性剤の量が上記の範囲の下限より少ないと、油相粒子の衝突への緩和効果は顕著ででない。界面活性剤の量が上記の範囲を超えると、油相粒子の衝突への緩和効果の増加はわずかであり、かつ水中油型乳化組成物が濁る傾向が高まる。
【0050】
水相における他の成分は制限されず、本発明の上記の効果を損なわない限り、当業界で一般的に用いられている化粧料成分を使用できる。
【0051】
油相粒子
本発明における油相粒子は油性成分を分散させて形成されるものである。本発明の油性成分は1種の油性成分又は複数種の油性成分の混合物である。本発明のいくつかの実施形態において、油性成分は、常温下で共に液状である2種又は複数種の液状油性成分を混合してなるもの、又は常温下で共に固体又は半固体である2種又は複数種の固体油性成分を混合してなるものであってもよい。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記油性成分は、少なくとも固体油性成分及び液状油性成分を含む。
【0052】
本発明に係る「固体油性成分」とは、常温(25℃)において固体又は半固体状態にある油性成分を指す。本発明で使用する固体油性成分は特に限定されないが、例えば融点が40℃以上、50℃以上、60℃以上、又は70℃以上である固体油性成分を使用することができる。
【0053】
本発明における固体油性成分の具体例として、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、ミツロウ、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、高級アルコール(例えば、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等)、バチルアルコール、カルナウバワックス、蜜蝋ワックス、キャンデリラワックス、ホホバワックス、ラノリン、シェラックワックス、鯨蝋、モクロウ、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等)、エステル油(例えば、ミリスチン酸ミリスチン酸エステル等)、カカオバター、水添ヒマシ油、水添油、水添パーム油、パーム油、水添ココナッツ油、ポリエチレン、ペトロラタム、各種水添植物油、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等を含むが、これらに限定されない。
【0054】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、好ましくは融点が65℃以上85℃未満の固体油性成分を使用する。このような固体油性成分は、水添ホホバ油(融点:68℃)、ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(融点:66℃)、ステアリルアルコール等のアルコール(融点:52~62℃)及びベヘニルアルコール(融点:68℃)等の炭素数が16以上、好ましくは18以上の高級アルコール、マイクロクリスタリンワックス(融点:80℃)、オゾケライト(融点:68~75℃)、ポリエチレンワックス(融点:80℃)、バチルアルコール(融点:70℃)、カルナウバワックス(融点:83℃)、キャンデリラワックス(融点:71℃)、水添ヒマシ油(融点:84℃)、ステアリン酸(融点):58~63℃)、ベヘン酸(融点:69~80℃)等を含むが、これらに限定されない。
【0055】
これら固体油性成分は単独で使用してもよく2種又は複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本発明における油相粒子において、使用できる上記固体油性成分の量は、油相粒子における油性成分の全質量に対して、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。固体油性成分の配合量が油性成分の5質量%未満の場合、形成される油性粒子における組成物の安定性が低下する傾向があり、50質量%を超えると、油性粒子が硬くなりすぎ、使用性及び肌なじみが劣化する傾向がある。
【0057】
本発明における「液状油性成分」とは、常温(25℃)において液体状態にある油性成分を指す。本発明で使用できる液状油性成分の具体例として、下記を含むが、これらに限定されない。
アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、菜種油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ぬか油、綿実油、大豆油、ピーナッツ油、茶実油、月見草油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂;
液体パラフィン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、ワセリン等の炭化水素油;
コハク酸ジエトキシエチル等のコハク酸エステル、オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等セバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油。本発明のいくつかの好ましい実施の形態において、液状油性成分は、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジイソプロピルの1種又は複数種であることが特に好ましい。
ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーン油)、メチルフェニルポリシロキサン(フェニルメチルシリコーン油)等のフェニル基含有シリコーン油、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等の変性シリコーン油を含むシリコーン油。フェニル基含有シリコーン油及びフッ素変性シリコーン油が特に好ましい。
【0058】
これら液状油性成分は、単独で使用してもよく、2種又は複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
液状油性成分の量について、液状油性成分の配合量は、油相粒子における油性成分の全質量に対して、好ましくは50~95質量%であり、より好ましくは60~90質量%である。油性成分における液状油性成分の配合量が50質量%未満であると、油性粒子が硬くなりすぎ、また使用性及び肌なじみが悪くなる傾向がある。95質量%を超えると、組成物の安定性が低下する傾向がある。
【0060】
油相粒子において2種以上の油性成分を使用する場合、例えば50~90℃等比較的高い温度では、安定して完全に溶解した均質系が形成される傾向にある。しかし、他の場合、例えば室温又は室温より低い場合、またユーザーが居住している場所の冬季温度がマイナス10℃になる可能性もあることを考慮すれば、このような低い温度では、水中油型乳化組成物の製造、貯蔵中に、異なる油性成分は相溶性の低下により相分離又は偏析が生じる傾向にある。例えば、固体油性成分と液状油性成分が共に油性成分として使用される場合、製造開始時に得られた乳化組成物では、油性成分から形成された油相粒子は相の均一性を維持できるが、放置時間の経過とともに、又は外部振とうの増加に伴い、液状油性成分と固体油性成分は相分離が生じ、即ち個体油性成分が偏析し、且つ油相粒子から分離し、油相粒子の構造が破壊される可能性がある。また、液状油性成分の溶出により乳化組成物の外観が劣化する可能性もある。
【0061】
本発明では、上記の課題を解決するために、本発明のいくつかのさらに好ましい実施形態において、油相粒子の組成として、油性成分に加えて油性増粘剤を配合してもよい。
【0062】
本明細書に記載の油性増粘剤は油溶性増粘剤であり、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、金属石鹸、親油性ベントナイト、アミノ酸誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトールのベンジリデン誘導体等から選択されることができる。
【0063】
デキストリン脂肪酸エステルとして、例えば、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン等が挙げられる。
【0064】
金属石鹸として、例えば、ヒドロキシル基が残存しているステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛等が挙げられる。
【0065】
親油性ベントナイトとして、例えば、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイト、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイト等が挙げられる。
【0066】
アミノ酸誘導体の実例として、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、α,γ-ジ-n-ブチルアミン等が挙げられる。
【0067】
ショ糖脂肪酸エステルは、例えば、8個のヒドロキシル基のうち、3個以下が高級脂肪酸でエステル化されたショ糖脂肪酸エステルであり、高級脂肪酸はステアリン酸及びパルミチン酸である。
【0068】
ソルビトールのベンジリデン誘導体として、例えば、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0069】
また、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、油性増粘剤は油溶性ガム系増粘剤、シリコーン油変性シリカ等を含み、典型的には、例えばジブチルラウロイルグルタミン、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミン、(ベヘン酸/エイコサン酸)グリセリル、ジメチルシリル化シリカ、12-ヒドロキシステアリン酸、ポリアミド-8等の増粘剤を含む。
【0070】
本発明では、異なる油性成分から構成される油相粒子の相分離を抑制する観点から、前記油性増粘剤の量は、前記油相粒子における油性成分に対して0.02~10質量%であり、好ましくは0.04~8質量%である。10質量%を超えると、油相成分の製造時に組成物がゲル化する傾向にあり、0.02質量%未満であると、安定化効果が得られない。
【0071】
本発明の他のいくつかの実施形態において、油相粒子は上記の油性成分に加え、固体粉末を含むことができる。
【0072】
固体粉末を油相に加えることにより、形成される油相粒子の粒度及び形状の均一性が改善される。本発明では、「固体粉末」は特に限定されず、例えば化粧料等の皮膚外用剤に混合できるものであればよく、無機固体粉末でも有機固体粉末でもよい。
【0073】
粉末の実例として、タルク、マイカ、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、金属タングステン酸塩、マグネシウム、球状シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼成石膏)、リン酸カルシウム、フルオロアパタイト、ヒドロキシルアパタイト、セラミック粉末、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等の無機粉末;ポリアミド球状樹脂粉末(ナイロン球状粉末)、球状ポリエチレン、架橋ポリメチル(メタ)アクリレート球状樹脂粉末、球状ポリエステル、架橋ポリスチレン球状樹脂粉末、スチレンとアクリル酸のコポリマー球状樹脂粉末、ベンゾグアナミン球状樹脂粉末、球状テトラフルオロエチレン粉末、球状セルロース等の球状有機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色顔料;γ‐酸化鉄等の無機褐色顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低級酸化チタン等の無機黒色顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料;酸化クロム、水酸化クロム及びチタン酸コバルト等の無機緑色顔料;群青、紺青等の無機青色顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、ホウケイ酸塩(Ca/Al)、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、銅パウダー等の金属粉末顔料;赤色、黄色、だいだい色、黄色、緑色及び青色等の着色材料、又はこれらをジルコニウム、バリウム又はアルミニウム等でレーキ化した着色材料(有機顔料);クロロフィル、β‐カロテン等の天然色素等を含む。
【0074】
上記の固体粉末は1種又は複数種から形成される混合粉末を使用することができる。本発明のいくつかの実施形態において、固体粉末は特に好ましくはタルクである。
【0075】
また、本発明における上記固体粉末は、表面処理が施されても施されなくてもよく、粉末の形状も特に限定されない。粉末の平均粒子径は特に限定されないが、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、粒子径が約1~100μm、好ましくは20~60μmである粉末を使用することが好ましい。
【0076】
上記固体粉末の量に関して、本発明に記載の油性成分の全質量に対して、固体粉末の量は好ましくは0.12~30質量%であり、より好ましくは0.15質量%~15質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%~9質量%である。
【0077】
油相粒子において、油性成分の全質量に対して、粉末の配合量が0.1質量%未満であると、油相粒子の分散性が低下し、塊になりやすくなる。一方、配合量が油性成分の30質量%を超えると、粒子径や分散度が大きくなる傾向にある。
【0078】
また、特に限定されないが、本発明における油相粒子に様々な活性成分、薬用成分、栄養成分、香料、他の界面活性剤等の補助剤を使用することができる。本発明のいくつかの実施形態において、これら補助剤成分の含有量は油性粒子の全質量に対して10質量%以下であってよい。
【0079】
なお、本発明では、油相粒子の油性成分に上記特定配合量の増粘剤を使用しているため、油相粒子に上記の固体粉末及び様々な活性成分又は補助剤を使用しても、油相粒子における油性成分の相分離傾向を抑制することができる。
【0080】
本発明における油相粒子は、平均粒子径が50μm~10mmであり、好ましくは100μm~5mmであり、より好ましくは200μm~3mmであり、さらに好ましくは500μm~1mmである。粒子径が50μm未満であると、油相粒子の寸法が小さすぎ、使用時の外観が損なわれ、且つ沈降効果が低下する傾向にある。粒子径が大きすぎると、油滴が破損する傾向にあり、且つ油相粒子の乳化組成物における沈降速度が速すぎて事実上の二相分離が生じる傾向にある。
【0081】
<製造方法>
本発明では、水中油型乳化組成物は油相を水相に分散させて得られるものであり、かつ、油相が互いに独立した油相粒子の形態で存在する。
【0082】
本発明に係る乳化組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、油相を直接的に水相に分散させることにより、一定の粒子径を有する油相粒子が水相に分散している系を形成する等の、当業界で一般的に用いられている二相混合法を使用することができる。
【0083】
また、特に制限されることなく、攪拌、加熱等の補助混合手段を使用することができる。
【0084】
上記水中油型乳化組成物の製造で使用される装置は、本発明では特に制限されず、当業界で上記の方法を実現できる任意の装置を使用することができる。
【0085】
<化粧料>
本発明は上記水中油型乳化組成物に加え、当該組成物を含む化粧料を更に提供する。
【0086】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の化粧料は基本的に上記水中油型乳化組成物からなる。
【0087】
また、外観及び使用感触の効果を得るために、これら化粧料に他の機能性成分を使用してもよい。本発明の効果が失われない限り、これら機能性成分の種類は限定されることがない。
【実施例】
【0088】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。なお、下記の実施例は本発明の具体的な実施形態を例示するものに過ぎず、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0089】
<水中油型乳化組成物の製造>
1)固体油性成分及び液状油性成分を含む油相、保湿剤、防腐剤等の補助剤及び精製水を準備した。
2)下表に示す組成で油相を水相に分散させ、水中油型乳化組成物を得た。
【0090】
<測定方法>
降伏応力
測定装置:アントンパール(AntonPaar)回転式レオメーターMCR302;ローター:CP50~1;測定温度:30℃。
測定方法:サンプルを入れた後に、サンプルの1S-1~100S-1の間の粘度を測定し、Cassonモデルでデータをあてはめ、システムによりサンプルの降伏応力を計算した。振とう試験:
測定装置:アズワン(AS-ONE)振とう器AS-1N;
測定方法:100mlのサンプルを取り、110mlのスクリュートップボトルに注入した。サンプルが入っているスクリュートップボトルを振とう器に固定し、上下振とうとし、回転速度を300rpm、測定時間を5minとした。測定終了後に、スクリュートップボトルを取り外し、静置し、安定した後に評価した。
【0091】
実施例1~2、比較例1
実施例1及び比較例1は、上記の方法及び下記の組成に従って配合した。表1に示す。
【0092】
データを比較すれば、本発明の請求項1の構成を全て充足する場合、振とうされたとしても、油相粒子の寸法安定性を維持でき、且つ油相粒子の沈降効果が損なわれなかったことが分かる。
【0093】
実施例1は、実施例2に一定量のHLB値が10より高い界面活性剤を用いたものである。したがって、実施例1は、振とう試験では、油相粒子の寸法安定性維持において実施例2より優れた効果が得られた。
【0094】
比較例1は、水性増粘剤を配合していなかったため、振とう測定時に、油相粒子同士の衝突への抑制が不十分となり油相粒子が破損した。
【0095】
実施例3~6
実施例3~6は上記の製造方法に従って製造し、その組成を表2に示す。水相に異なる種類の水性増粘剤を用いた(水相の降伏応力は全て1.0Pa以下である)。測定の結果として、振とう試験に合格し、組成物における油相粒子には明らかな破損が見られず、また油相粒子の沈降も顕著に損なわれなかった。
【0096】
実施例7~10、比較例2
実施例7~10、比較例2は上記の製造方法に従って製造し、その組成を表3に示す。実施例7~10と比較例2では、水相の降伏応力を調整するために、それぞれ異なる配合量及び/又は種類の水性増粘剤を用いた。測定結果によれば、水性増粘剤の使用により水相の降伏応力が1.0Pa以下である場合、油相粒子の沈降は顕著に損なわれなかった。
【0097】
実施例11~15、比較例3~4
実施例11~15、比較例3~4は上記の製造方法に従って製造し、その組成を表4に示す。比較例3~4で用いられた水相における界面活性剤はHLB値が10以上の範囲ではないため、組成物が濁る傾向にあった。
【0098】
実施例16~20、比較例5~6
実施例16~20、比較例5~6は上記の製造方法に従って製造し、その組成を表5に示す。水相に界面活性剤を過剰に使用すると、油相と水相との間に濁りが生じやすい。界面活性剤の量が少ないと、本発明の効果が損なわれるほどではないが、油相粒子同士の衝突低減効果が低下する傾向がある(実施例20)。
【0099】
参考例1
表6に示す参考例1によれば、油相粒子における油性成分が常温下で相分離する傾向にある場合、本発明的の好ましい実施形態において、油性増粘剤を補助剤として使用できる。
【0100】
参考例2~7
参考例2~7は上記の製造方法に従って製造し、その組成を表7に示す。参考例4~5では、油相粒子における油性増粘剤の量が本発明の好ましい範囲でないため、油相に相溶性が大いに異なる油性成分を混合する場合、高温ゲル化又は油相の相分離が生じる傾向にある。また、他の参考例では、本発明の好ましい量の範囲で油性増粘剤を使用した結果、相溶性の悪い複数種の油性成分から形成された油相粒子であったとしても、本発明の好ましい実施形態では油相の相分離現象を抑制できたと分かる。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【表7】
高温ゲル化:本発明では、特に高温油相の温度が100℃付近(水相の沸点付近)に下がった際にゲル化が生じた現象を指す。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明で提供される水中油型乳化組成物は工業的に製造することができ、且つ化粧料又はその原料として有用である。