(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】アーク消弧用のチャンバを備えてハウジング内に配設されたホーンギャップを備えた過電圧保護装置
(51)【国際特許分類】
H01T 1/14 20060101AFI20230317BHJP
H01T 1/04 20060101ALI20230317BHJP
H01T 1/16 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01T1/14 C
H01T1/04 C
H01T1/16 Z
(21)【出願番号】P 2021539355
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019081586
(87)【国際公開番号】W WO2020148000
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】102019101212.0
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522067846
【氏名又は名称】デーン エスエー
【氏名又は名称原語表記】DEHN SE
【住所又は居所原語表記】Hans-Dehn-Strasse 1 92318 Neumarkt i.d.OPf. Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エアハルト アルント
(72)【発明者】
【氏名】ブロッケ ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ザールマン ペーター
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0132157(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035529(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/14
H01T 1/04
H01T 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク消弧用のチャンバ(4)を備えてハウジング内に配設されたホーンスパークギャップ(1)を備え、該ホーンスパークギャップ(1)の点火領域にトリガ電極(7)が配設された過電圧保護装置であって、
トリガ回路(2)と前記トリガ電極(7)との間の接続を遮断して前記トリガ電極(7)を断路する断路素子(6)が設けられ、該断路素子(6)は、電源続流の負荷にさらされてこれに反応する評価ユニット(5;51)によってトリップ又は制御されることを特徴とする過電圧保護装置。
【請求項2】
前記トリガ電極(7)は、電圧制限素子又は電圧スイッチング素子を介して前記ホーンスパークギャップ(1)の主電極の一方(30)に接続されており、前記断路素子(6)によってこの接続を遮断することができることを特徴とする請求項1記載の過電圧保護装置。
【請求項3】
前記評価ユニット(5;51)は、ヒュージブルリンク(8;81)として実施されることを特徴とする請求項1又は2記載の過電圧保護装置。
【請求項4】
前記評価ユニット(5)は、前記アーク消弧用のチャンバ(4)の領域に配設又は前記アーク消弧用のチャンバ(4)に接続されていることを特徴とす
る請求項
1から3のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項5】
前記評価ユニット(51)は、前記ホーンスパークギャップ(1)の続流アークのアーク走行領域(13)に配設又は接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項6】
バリスタ又はスパークギャップ等の少なくとも1つのさらなる過電圧保護素子(1,100,200)が設けられ、これは、当該素子又は当該素子の構成要素の断路用(101,201,6)又は短絡用(102)の独立動作する保護手段を有することができ、該さらなる過電圧保護素子(1,100,200)は、前記ホーンスパークギャップ(1)と電気的に直列に接続されることを特徴とす
る請求項
1から5のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項7】
バリスタ又はスパークギャップ等の少なくとも1つのさらなる過電圧保護素子(1,100,200)が設けられ、これは、前記ホーンスパークギャップ(1)と電気的に直列に接続され、自身の負荷を評価するための装置であって、第1のスパークギャップ(1)のトリガ回路のスイッチ状の断路素子(6)に、その評価装置(5,51)とは無関係に作用することができる装置を有することを特徴とす
る請求項
1から6のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項8】
少なくとも1つのさらなる過電圧保護素子(1)が電気的に直列に接続され、当該直列回路のこれらの素子はそれぞれ、少なくとも1つの評価ユニット(5,51)と、トリガ回路(2)と、スイッチ状の断路素子(6)とを有し、直列に接続された該過電圧保護素子の断路素子(6)は、少なくとも1つの任意の評価ユニットが応答したときに作動されることを特徴とす
る請求項
1から7のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項9】
断路装置は、前記チャンバ(4)の領域に配設され、その場で電源続流の負荷に暴露されるヒュージブルリンク(8;81)を備え、該ヒュージブルリンク(8;81)は、好ましくはばね力で支持された断路素子(6)を第1の位置に保持しており、融解すると、この断路素子(6)を、該断路素子(6)が第2の位置を取るように開放し、前記第2の位置に到達すると、前記トリガ電極(7)への電気接続が遮断されて前記トリガ電極(7)が断路されることを特徴とする請求項
1から8のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項10】
前記ヒュージブルリンク(8;81)は、前記チャンバ(4)の間隔を空けて配置された消弧板(9)と接触していることを特徴とする請求項9記載の過電圧保護装置。
【請求項11】
前記ヒュージブルリンク(81)は、前記チャンバ(4;9)の入口領域(13)に配置されることを特徴とする請求項9又は10記載の過電圧保護装置。
【請求項12】
前記断路素子(6)は、前記ホーンスパークギャップ(1)の点火領域の上方の空間(10)に配設されたヒュージブルリンク(8)によってトリップすることもできることを特徴とする請求項9又は10記載の過電圧保護装置。
【請求項13】
前記ヒュージブルリンク(8)は、前記スパークギャップ(1)の走行レール又はホーン電極(30;31)の一方に接続されることを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項14】
スライダ(15)は、前記チャンバ(4)の隣に横方向に配置され、前記断路素子(6)を作動させることを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項15】
前記スライダ(15)は、その大部分が前記チャンバ(4)の内部に配置されることを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項16】
前記ヒュージブルリンク(81)は、前記入口領域(9b)又は前記チャンバ(4)に無電位で配置されることを特徴とする請求項9記載の過電圧保護装置。
【請求項17】
前記ヒュージブルリンク(8;81)は、熱を感知する態様で固定されることを特徴とする請求項9から16のいずれか一項に記載の過電圧保護装置。
【請求項18】
前記断路素子(6)の作動のために前記ヒュージブルリンク(8)の一部が前記チャンバ(4)の外に経由されており、外部アークの形成に起因するプラズマのための流入開口又は流入路(18)が形成されていることを特徴とする請求項10記載の過電圧保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された、アーク消弧用のチャンバを備えてハウジング内に配設されたホーンスパークギャップを備え、ホーンスパークギャップの点火領域にトリガ電極が配設されている過電圧保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク消弧用の消イオンチャンバを備えたホーンスパークギャップは、例えば、独国特許出願公開第102011051738(A1)号明細書からすでに知られている。この目的のためのホーンスパークギャップは、ハウジング内に配設されており、サージ電流負荷に反応して生じるアークや電源続流により誘起されるアークの挙動を変えるために内部のガス流を制御する手段を備えている。
【0003】
既知のホーンスパークギャップの点火領域にトリガ電極を配置することができる。このトリガ電極は、スライド部で囲まれた導体素子を備えることができる。隣接するスライド部は同様に絶縁材料又は半導体材料からなることができる。既知のトリガ電極は、点火領域において2つの電極の一方の電極側に挿入されるか、好ましくは点火領域の下部領域において、ホーンスパークギャップの2つの電極の間に配置される。
【0004】
独国特許第19545505(C1)号明細書には、少なくとも1つの電圧依存抵抗器、例えばバリスタと、複数のサーマルスイッチオフデバイスとを備えたサージアレスタが示されている。
【0005】
これらのスイッチオフデバイスは、ヒューズストリップや、共晶可融合金を用いたサーマルトリップからなる。
【0006】
ヒューズストリップ又はサーマルリリースの破損時には、ばね力に補助されて損傷インジケータが作動する。発生する損傷はこのようにして視認することができる。経年劣化の結果としてバリスタに許容範囲外の漏れ電流が生じた際、又は、過度のサージ電流によりバリスタに短絡が引き起こされた際に、発生した故障の表示を簡単な手段で且つ省スペースで確実に行えるように、サージ電流に耐性を有するヒューズストリップを配設するためのハウジングが設けられている。損傷インジケータは、別個の要素であり、ハウジングに取り外し可能に固定されており、ばねが開放されるとヒューズハウジングに対して相対的に移動可能となる。
【0007】
スパークギャップが一体化された複合過電圧保護デバイスは、独国特許第102014215282(B3)号明細書からすでに知られている。スパークギャップは直列に接続された安全ヒューズを備えており、当該直列回路を第1電位とこれと異なる第2電位とで送電グリッドに接続することができる。スパークギャップは、ハウジング内に配設された2つの主電極を備えている。
【0008】
このデバイスにおけるヒュージブルリンクは第1の端子をスパークギャップの第2主電極に接続しているが、安全ヒューズはさらなる接触部も有しており、このさらなる接触部は、第1接触部からもスパークギャップの第2主電極からも絶縁されて配置されている。この過電圧保護デバイスは、プラズマがヒューズワイヤに対してこれを狙って劣化させる態様で作用することができるようにスパークギャップの燃焼チャンバからヒュージブルリンクの近傍につながるプラズマ流路も備えている。結果としてヒューズワイヤが破壊を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した先行技術を基に、本発明は、アーク消弧用のチャンバを備えてハウジング内に配設されたホーンスパークギャップを備えた過電圧保護装置をより発展させた装置であって、スパークギャップが過負荷になった場合に既存のトリガ回路を所定の態様でスイッチオフすることができ、これはスパークギャップがその後の作動において異常な機能を示さないように行うことができる装置の提示を目的とする。この装置では、トリガ回路の断路は、好ましくは、スパークギャップの通常の挙動とは異なる電源続流を伴う負荷に対して行われるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は請求項1に記載の特徴の組み合わせによって達成され、従属請求項は少なくとも好適な構成及びさらなる発展形態である。
【0011】
アーク消弧用のチャンバと点火領域に配設されたトリガ電極とを備えてハウジングに配設されたホーンスパークギャップから構成されるそれ自体は既知である過電圧保護装置を基に、特別な断路装置が設けられる。断路装置は、評価ユニットによって作動される。この評価ユニットは、電源続流存在時の過電圧保護デバイスの負荷を取得して評価する。評価ユニットは、例えば、ヒュージブルリンクとして実施することができる。好ましい一実施形態では、ヒュージブルリンクは、前記チャンバの領域に配設又は前記チャンバに接続され、その場で電源続流の負荷に暴露される。
【0012】
ヒュージブルリンクは、好ましくはばね力で支持された断路素子を第1の位置に保持している。ヒュージブルリンクは、融解すると、断路素子を、該断路素子が第2の位置を取るように開放し、第2の位置に到達すると、トリガ電極への電気接続が遮断されてトリガ電極が断路される。
【0013】
かくして、本発明の基本的アイデアは、アーク走行領域とアーク消弧用の消弧チャンバとを備えたスパークギャップの負荷を評価するために、所定のヒューズ積分値を有するヒュージブルリンクワイヤを用いることである。
【0014】
ヒュージブルリンクは、限界値に達すると、融解して上述の断路装置をトリップし、これにより、スパークギャップのトリガ回路が無効になり、場合によっては、同時にインジケータが作動される。
【0015】
前記限界値は、ワイヤの特性、接触の種類、及びスパークギャップ内のヒュージブルリンクの位置決めによって決定することができる。このようにすることで、スパークギャップの負荷のレベル及び種類に非常に正確に合致させることが可能である。限界値は、好ましくは、電源続流による負荷に関連させるべきである。
【0016】
ワイヤヒュージブルリンクの融解は、例えば、電流負荷又は熱負荷、或いはアーク損失によってもたらされる。本発明の一実施形態では、ヒュージブルリンクは、熱を感知する態様で固定することもできる。
【0017】
本発明の一構成では、トリガ電極は、電圧制限素子又は電圧スイッチング素子を介してホーンスパークギャップの主電極の一方に接続することができ、断路素子によってこの接続を遮断することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ヒュージブルリンクは、消弧チャンバにおいて、例えば消イオンチャンバの間隔を空けて配置された消弧板と接触している。
【0019】
しかしながら、ヒュージブルリンクは、消弧チャンバへの入口の領域に配置することもできる。具体的には、ヒュージブルリンク又は評価ユニットは、ホーンスパークギャップの続流アークのアーク走行領域に配設又は接続することができる。
【0020】
断路素子は、ホーンスパークギャップの点火領域の上方の空間に配設されたヒュージブルリンクによってトリップすることもできる。
【0021】
しかしながら、ヒュージブルリンクは、スパークギャップの走行レール又はホーン電極の一方に接続することもできる。
【0022】
本発明の一構成では、断路素子は、消イオンチャンバの隣に横方向に配置され、例えば、スライダとして構成される。
【0023】
しかしながら、断路素子は、その大部分を消弧チャンバ内に配置することもできる。続流を消弧するための消弧チャンバとして、絶縁棒チャンバ、蛇行チャンバ、又は、好ましくは、消イオンチャンバを用いることができる。トリガ回路を断路するための素子の導入は、あらゆる消弧チャンバで同様に可能である。例えば続流の検出及び評価に用いることができるヒュージブルリンクは、いかなる消弧チャンバにおいてもアークに直接暴露させることができ、また、チャンバ内の差動電圧に起因する電流の流れのみに直接暴露させることもできる。スイッチング動作に起因するスイッチングチャンバの加熱を熱感知式のトリップに用いることもできる。よく用いられる消イオンチャンバの例を挙げて以下に非制限的な説明を行うが、基本的配置は他の消弧チャンバにも容易に転用することができる。
【0024】
本発明のさらなる発展形態では、ヒュージブルリンクは、アーク走行領域又は消イオンチャンバに無電位で配置される。
【0025】
断路素子の作動のためにヒュージブルリンクの一部を消イオンチャンバの外に引き出す場合、外部アークの形成に起因するプラズマのための流入開口又は流入路を形成することができる。
【0026】
提示した解決策では、消弧又は消イオンチャンバを備えたホーンスパークギャップからのトリガ回路の断路が、断路後のスパークギャップにまだ不可逆的損傷がないように達成される。
【0027】
トリガ回路の断路が断路素子の機械的移動及びこれに関連する遅延時間により遅延して行われる場合、該断路に続けて当該スパークギャップを作動させても誤動作又は過負荷につながることはない。
【0028】
本発明にかかるトリガ回路の断路並びに点火領域におけるスパークギャップの形成により、この場合ほぼ受動的であるスパークギャップの応答電圧を、少なくとも、適用分野において通常の耐サージ容量及び連続絶縁破壊強度のレベルに対応させられる。この場合、特に、保護デバイスが応答するまでのスパークギャップの摩耗を踏まえた空隙及び沿面距離を考慮した設計を行うことができる。
【0029】
本願においては、断路とは、適用分野において通常の耐サージ容量及び連続絶縁破壊強度が実現されるということも含意する。このことは、当然のことながら、本発明にかかるトリガ回路の断路だけでなくスパークギャップの主電極間の分離距離の要件にも関係する。ここでは、スパークギャップの空隙及び沿面距離は、意図した動作における摩耗及び汚染を踏まえて、新品状態のときだけでなく寿命終点においてもスパークギャップの受動応答電圧がこれらの絶縁破壊強度を上回るように設計される。このような寸法設定は、過電圧保護デバイスにとって通常の設定ではなく、スイッチギヤ、ヒューズベース又はヒューズホルダの既知の設計に対して行われる設定である。
【0030】
本発明にかかるトリガ可能なスパークギャップを基にした過電圧保護装置は、単一のスパークギャップとして採用することができ、また、本発明によれば、さらなるスパークギャップ又は過電圧保護デバイスと直列に接続することもできる。
【0031】
ここでは、ヒュージブルリンクの調整及びその位置決めは、スパークギャップ自体の性能又は当該直列回路の性能に基づいて行うことができ、また、直列に接続された過電圧保護素子の性能に基づいて行うこともできる。
【0032】
本発明にかかるトリガ回路の断路装置を備えたトリガ可能なスパークギャップをさらなる過電圧保護デバイスと直列に接続することで、通常の動作、過負荷の評価、及びその後の断路のタスクの分配について様々な選択肢が可能になる。この様々な選択肢について、直列回路の例示的な実施形態を参照しながら以下により詳細に説明する。
【0033】
可能な一実施形態では、例えば、ホーンスパークギャップと電気的に直列に接続されるバリスタ又はスパークギャップ等のさらなる過電圧保護素子を設けることができ、第1及び第2の断路装置が形成され、第1の断路装置は、さらなる過電圧保護素子に接続され、限界負荷に達する又は限界負荷を超過すると、さらなる過電圧保護素子とホーンスパークギャップとの間の直列回路を遮断するデバイスを有効にする。
【0034】
第2の断路装置は評価ユニットを備え、該評価ユニットは、スイッチ状の断路素子を該断路素子が所定の位置を取るようにトリップ又は制御し、この所定の位置に到達すると、トリガ電極への電気接続が遮断されるようにすることも可能である。
【0035】
さらに、直列回路は低い保護レベルを有し、続流消弧の大部分はさらなる過電圧保護素子によって行われるようにし、その結果として、ホーンスパークギャップの負荷は、その最大性能能力を遥かに下回るものとなり、さらなる過電圧保護素子が過負荷になった際もトリガ回路の断路をトリップし、断路時にすでに直列回路を流れている故障電流は、ホーンスパークギャップによって安全に消弧されるようにすることも可能である。これにより、安全なグリッド断路が行われるとともに、ホーンスパークギャップによって定まるトリガ回路断路後の絶縁破壊強度は設置場所における最小絶縁破壊強度に対応するものとなる。
【0036】
ヒュージブルリンクによるトリガ回路のトリップは、好ましくは、電源続流を伴う、通常の挙動とは異なる負荷に対して行われる。このための判断基準として、少なくともスパークギャップの走行領域まで、又は、好ましくは、消弧チャンバ内まで走行する続流の発生そのものを選択する、或いは、これに加えて特定の電流値の超過又は当該続流の比エネルギを選択することができる。
【0037】
バリスタとの直列回路の場合、スパークギャップの走行領域又は消弧チャンバで続流が発生する点から選択を行うことができる。バリスタは、限られたレベル及び継続時間までしかグリッド周波数続流を流すことができない。例えば数十~百アンペアの高い続流の発生は、故障挙動又は過負荷の危険性を示す。
【0038】
しかしながら、バリスタは、低エネルギー(例えば、8/20μs)の非常に高いサージ電流及び高エネルギー(例えば、10/350μs)の中程度のサージ電流を複数回消散することができる。これらの負荷では、スパークギャップの断路装置は作動しない。
【0039】
一方、トリガ可能なスパークギャップでは、電源続流が発生しても、まだバリスタの負荷容量を下回っている小さいサージ電流であってもアークが発現する。
【0040】
スパークギャップに用いられるヒュージブルリンクは、言わば、軽負荷と故障負荷とを区別することができるものである。ヒュージブルリンクワイヤがサージ負荷時でもアークの直接作用を受ける場合は、負荷容量の区別を調整することができる。
【0041】
本発明の教示は、特に、続流負荷の結果としてトリガ装置をスイッチオフすることを目的としている。トリガ回路は、当然のことながら、例えばサージ負荷に基づく他の判断基準に応じて断路されるように構成することもできる。
【0042】
点火領域、アーク走行領域及び消弧チャンバ、特に消イオンチャンバ、を備えた本発明にかかるさらに発展させたホーンスパークギャップから、続流負荷の場合のアークの走行挙動は、サージ負荷と大きく異なることが確立された。このアークの異なる走行挙動を用いて断路素子をトリップする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
以下に、本発明について、次の図面を使って例示的な実施形態を基により詳細に説明する。
【0044】
【
図1】ホーンスパークギャップ、トリガ回路、アーク走行領域及び消弧又は消イオンチャンバ、並びにヒュージブルリンクを基にした本発明にかかる評価ユニットを備えた例示的な装置を示した図である。
【
図2a】消イオンチャンバへの入口領域にヒュージブルリンクを備えるとともにさらなるヒュージブルリンクを点火領域の上方の空間に備えた、
図1に図示した解決策の発展形態を示した図である。
【
図2b】
図2aと同様のスパークギャップの断面図である。
【
図3a-b】ホーン電極の一方に遮断部又は絶縁部を備えるとともにこれにヒュージブルリンクが接続された例示的な実施形態の図である。
【
図4】消イオンチャンバ及び消弧板を備え、ヒュージブルリンクが2枚の隣り合う消弧板間に直接接続されたホーンスパークギャップの原理図である。
【
図5】消イオンチャンバの消弧板及び側方にばね張力下のスライダとして消弧板の隣に設置された断路素子の平面図とともに示したホーンスパークギャップの例示図である。
【
図6】ヒュージブルリンク及び断路装置を備え、機械的プリストレスを受けたスライダが設けられ、ヒュージブルリンクが該プリストレスを受けたスライダを固定しており、外部アーク形成の際に生じるプラズマが消弧板間の領域に進入するように、該プラズマのための流入開口又は流入路が形成されたスパークギャップの配置を示した図である。
【
図7】チャンバ内でのアーク形成を促進するためにヒュージブルリンク又は補助ヒュージブルリンクが貫通する開口部を有する例示的な消弧板又は消イオン板を示した図である。
【
図8】略同一に構成された2つのホーンスパークギャップの直列回路であって、それぞれ評価ユニットを備え、故障続流を検知すると、断路装置又はスイッチング装置が対応するトリガ回路を作動させてこれを断路する回路の例示図である。
【
図9】2つのホーンスパークギャップの直列回路のさらなる例であって、それぞれに設けられた評価ユニットが、断路素子に、即ち、左側の第1のホーンスパークギャップのスイッチング装置に作用する例を示した図である。
【
図10】両スパークギャップのトリガ回路を断路するために各断路素子に作用する共通の評価ユニットを備えた2つのホーンスパークギャップの直列回路を示した図である。
【
図11】ホーンスパークギャップと、自身の断路装置、例えばサーマル断路装置を有するバリスタとの直列回路を示した図である。
【
図12】トリガ回路を遮断するための評価ユニット及び断路素子を備えたホーンスパークギャップの直列回路であって、バリスタが過負荷になったときに断路素子を作動させることができる回路を示した図である。
【
図13】本発明にかかるタイプのホーンスパークギャップと、該ホーンスパークギャップとは無関係に作用する短絡装置を有するバリスタとの直列回路を示した図である。
【
図14】本発明にかかるホーンスパークギャップと、ホーンスパークギャップとは異なる機能原理、例えばハードガス放出を用いる機能原理に基づくスパークギャップとの直列回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1の過電圧保護装置は、トリガ回路2を有するスパークギャップ1を前提としている。スパークギャップは、様式化して図示した2つの弓状のホーン電極30,31を有しており、該ホーン電極30,31は、アーク走行領域3の周囲を囲んでいる。ホーン電極30,31の基部領域に点火電極又は補助電極7が配設されており、該電極7はトリガ回路2に接続されている。
【0046】
例えばスイッチとして構成された断路素子6は、点火電極又は補助電極7とトリガ回路2との間の接続を遮断することができる。
【0047】
消イオンチャンバ又は消弧チャンバ4は、アーク走行領域3に隣接しており、複数の消イオン板又は消弧板(図示せず)を収容している。
【0048】
消イオンチャンバ4の領域に評価ユニット5が配設されている。
【0049】
この評価ユニット5は、ワイヤ状のヒュージブルリンクから構成される。ヒュージブルリンクが過負荷になった場合、図に矢印で表したように、トリガ回路を遮断するための断路素子又はスイッチ6の作動が起こる。
【0050】
図1には図示していないが、評価ユニット5の重要な構成要素であるヒュージブルリンクは、好ましくはスパークギャップ1の消イオンチャンバ4内に配置される。
【0051】
スパークギャップ1は、ここでは、短いサージ電流が消イオンチャンバ4に進入しないように、且つ、長いサージ電流の場合の進入は、特定の条件下でのみ又は電流次第で可能であるように実施される。
【0052】
続流は、10A未満の非常に低い電流値であっても、例えばコンセントレータ・プレート(図示せず)を通じて、自身の磁界の補助により、数ミリ秒以内に消イオンチャンバ4に到達する。
【0053】
図2は、
図1に関連して説明した原理に基づくヒュージブルリンク8;81の配置の発展形態を示した図である。
【0054】
この図によれば、同じくホーン電極30;31を備えたスパークギャップ1を前提としており、スイッチ装置6によって断路することができる既述のトリガ回路2は、外部電気接続部と点火電極7との間に存在する。
【0055】
リリースワイヤであるヒュージブルリンク81は消イオンチャンバ4の内部に配設されており(
図1参照)、消イオンチャンバは、入口領域9b及び出口領域9aを有する消弧板9を備えている。
【0056】
サージアークを通常有する空間を参照符号10で示す。続流アークのアーク走行領域を参照符号13で示す。
【0057】
電極30及び31は末広がりとなっており、前記空間10は点火領域の上方に配設されており、該空間では、サージアークにより、より強力なイオン化がなされるとともにスパークギャップに熱応力が生じる。
【0058】
ヒュージブルリンク8をこの容積部に配置する場合、定格範囲内の複数回のサージ電流を受けてトリップしてしまうことがない寸法設定が必要である。トリップは、定格範囲を超えるサージ電流で又は電源続流によって、その時のみ行われるようにすべきである。ヒュージブルリンク8は、例えば、
図2のように、スパークギャップ1の走行レール又はホーン電極30,31間に延設され、少なくとも一方の側に絶縁部11が設けられている。ヒュージブルリンク又はリリースワイヤ8の機械的プリストレスは、アーク領域の外に配設されたばね12によって付与されている。
【0059】
この範囲のヒュージブルリンクのトリップは、特に、バリスタとの併用で発生する低エネルギーのサージで可能である。単一のスパークギャップにおいて動作時に高エネルギーのサージ電流及び電源続流が発生する場合は、設計がより難しく、ワイヤを保護するための付加的な手段を設けざるを得ない場合もある。したがって、ヒュージブルリンクを参照符号81に従って位置決めする方が好ましい。
【0060】
ホーン電極30;31間において、スパークギャップ1内の領域13は領域10に隣接している。走行レール即ち電極に沿って移動するアークのみがスパークギャップのこの領域内に到達する。上記の説明によれば、電源続流の場合のみアークが領域13に進入する。
【0061】
アークが領域9bに進入すると、ヒュージブルリンク81がアークに捉えられ、その結果、ヒュージブルリンク81が融解して断路素子又はスイッチ6を作動させる。
【0062】
ヒュージブルリンク81を流れる電流の流れがリンクの過負荷を補助しようとすることもあるが、これは本質に関わることではない。
【0063】
図2a又は
図2bに図示した配置は、蛇行型又は絶縁棒型の消弧チャンバとともに用いることもできる。
【0064】
図2a及び
図2bにおける領域10内のアーク40及び領域13内のアーク50の位置は一例として示したものである。
【0065】
図2bの消イオン板9は、空間13内から始まる入口領域9bを有している。
【0066】
ここでは、ヒューズワイヤ81は、走行レールにおいて絶縁された状態で保持されており、ばね12によるプリストレスを受けている。
【0067】
走行レールに対するヒュージブルリンク81の絶縁は、短絡回避の他に、電圧スイッチング素子としての役割も果たすことができ、その結果、安全機能が得られる。例えば印加電圧がアレスタの選定された保護レベルを超えた場合に、スイッチオフをトリップすることができる。
【0068】
或いは、ヒュージブルリンク8;81をホーン電極30,31に対して両端で絶縁して固定するという選択肢もある。この場合のヒュージブルリンクは、アークが進入すると、該アークの熱的影響を受ける。
図2bでは、ワイヤ81は、例えば、スパークギャップ1の走行レール又は電極の間において消イオンチャンバの入口領域9bに接近させているだけである。
【0069】
図2bは、領域10及び13並びに消イオンチャンバの消弧板9を備えたホーンスパークギャップの断面図である。ここでは、
図2bは、ヒュージブルリンク8又は81を、アーク走行領域の境界壁60への横方向接続及び機械的プリテンション12によって、消イオンチャンバを横切るように位置決めした状態を示している。
【0070】
図2a及び
図2bに関する説明によれば、ヒュージブルリンク8;81又はその部品は、アークに、少なくとも続流アークに常に直接暴露される。これは、続流とサージ電流とを区別するという目的にとっては危険なことではない。しかしながら、続流負荷が複数回ある場合は、経年劣化を考慮しなくてはならない。基本的にヒュージブルリンクを流れる電流の流れを介してのみ過負荷となり、アークの影響では過負荷とならないようにヒュージブルリンクを配置することが可能である。
【0071】
走行領域13又は消イオンチャンバへの入口領域におけるワイヤ81の直接接触の他に、走行レール又はホーン電極における遮断部又は絶縁して導入される接触部を用いて、続流及び一定の走行距離が生じたときだけヒュージブルリンクが負荷を受けるようにすることもできる。
【0072】
原理上このタイプである装置を一例として
図3a/3bに示す。
【0073】
この目的のために、遮断部14又は絶縁部がホーン電極30に挿入される。しかしながら、絶縁された接触部をホーン電極に設けることも可能である。この接触部の領域は、容積部10の上方、つまり領域13内に存在するか(
図2a参照)、或いは、消イオンチャンバ4の近傍に存在する。
【0074】
領域又は空間13において、発生する続流はごくわずかしか減少せず、これは好都合なことである。
【0075】
図3a及び
図3bに示したスライダ15は、スプリングプリテンションによってヒュージブルリンク8に固定され、スライド装置16によって送られる。このスライダ15は、スイッチ6のトリップ時に開いて、スパークギャップ1のトリガ装置2を遮断する。
【0076】
図3bの側面図は、スライダ15のワイヤ8への例示的な固定を示している。
【0077】
スイッチの作動は、撃針等の解放によって行うこともできる。スイッチ6をロックすることもできる。
【0078】
トリガ回路を消イオンチャンバ側に配置すると、所要空間が小さく、部品数が少ないという利点があり、力の変更又は実効方向の変更は必要でない。これに関しては、ヒュージブルリンクを適切に経由させなくてはならない。
【0079】
ヒュージブルリンクの好ましくない負荷状態は、解放挙動の調整の選択により解消することができる。
【0080】
一構成として、ヒュージブルリンクを、消イオンチャンバ4内で消弧板に直接接触させるとともに少なくとも2枚の消弧板に架け渡し、アークと当該消弧板とが接触すると、少なくとも部分電流又は全ての電流がヒュージブルリンクを流れるようにすることができる。
【0081】
【0082】
スイッチとして構成された、トリガ回路の断路装置6は、例えば、ヒュージブルリンク8のトリップ時に、ばね力12下のスライダ15によって遮断されるクランプ接触として構成することができる。
【0083】
ここでは、スライダ15は、スイッチ6の接触部の接触力を解消するのに十分な初期応力下にある。
【0084】
スライダ15はスライド態様で案内されて絶縁片として接触領域に入り込み、トリガ回路のスイッチ6が開くことで、スパークギャップ横の印加場における必要最小絶縁破壊強度も維持される。
【0085】
図4には、例えば、サージ負荷のトリガ判定基準又は直列に接続された要素の負荷に反応することができるさらなるスライダ17も示している。
【0086】
このスライダ17は、ヒューズワイヤ8の状態とは無関係にトリガ回路を遮断することができる。
【0087】
ヒューズワイヤ8は、電流負荷の他に、熱負荷又は圧力負荷に反応することができ、よって、スパークギャップの負荷又はトリガ電極の断路のために直列に接続されたデバイスの負荷の様々な判定基準を採用することができる。
【0088】
図5は、スライダ15のヒュージブルリンク8への例示的な横方向固定、及び消イオンチャンバの消イオン板におけるその経路及び接触を示した図である。
【0089】
この図の場合、4枚の板の間で接触が行われており、よって、アークが消弧チャンバで分散された場合、ヒュージブルリンクが約60Vの電圧の負荷を受け、その結果、抵抗に応じてヒュージブルリンクに対して電流負荷が生じる。
【0090】
低い値では、電流全体をワイヤで全て流すことができるが、高い電流値では、アークが進入して分断された後に電流が分断される。このとき、この過程にはアーク電圧の一定の上昇が必要であるため、部分アークへの分断の前に非常に短時間だけワイヤにおいて最も高い電流負荷が生じることになる。絶縁棒チャンバ又は蛇行チャンバの場合は、当然のことながら、このアーク電圧の短時間の上昇は発生しないため、ヒュージブルリンクの設計においてこのことについても考慮する必要はない。
【0091】
図示の装置を多数続流負荷に対応する寸法とする場合は、ヒューズワイヤがこの分断段階ですでに過負荷になってしまわず、例えば、アークが消弧チャンバ内に長時間残り、これに関連してヒュージブルリンクに電流が分流されるとともに消弧板が加熱されたときにのみ過負荷になるようにしなければならない。
【0092】
ヒュージブルリンクワイヤの抵抗が約100mΩである場合、1kAを大きく下回る電流ですでに電流の分断が行われ、その結果、消イオンチャンバの消弧容量はほとんど損なわれない。
【0093】
このとき、電流又は部分電流がヒュージブルリンクの融解又は変形をもたらし、その結果、トリガ回路を断路するためのスイッチのトリップが可能になる。
【0094】
消弧板又は消イオン板と直接接触させる他に、アークが消弧チャンバ内の特定の位置に到達した後にのみヒュージブルリンクが負荷を受ける配置も可能である。
【0095】
この目的のために、接触部の下方で少なくとも1枚の消弧板を遮断することが可能である。同様に、少なくとも1つのヒュージブルリンクワイヤ端部を2枚の消イオン板の間に電位プローブのように挿入することができる。ヒュージブルリンクをさらに消イオン板から最小限絶縁させることができる。
【0096】
上述の変化形態は、当該領域での十分なイオン化又は直接接触があるときだけ電流の流れを許可する。このタイプの実施形態は、特に、このようにすることで、消イオン板に至るまでの空間をすでにイオン化することができる大きいサージ電流の場合も電流の流れを回避することができるため、アーク点弧領域と消イオン板との間の距離が小さい場合に有利である。
【0097】
図5の図によれば、ヒュージブルリンク8を横方向に経由させ、これに応じて消弧板に接触させる方が好ましいが、原理上、プリテンションの軸方向選択も可能である。
【0098】
したがって、スパークギャップのトリガ回路は、多くの場合、当該スパークギャップの隣に横方向に配置されてアクティブ方向に配設されるため、半径方向に負荷がかかることに加えてヒュージブルリンクが横方向に経由されていることは、特に有利である。
【0099】
直接接触させて消弧板間に架け渡す場合、ヒュージブルリンクワイヤの抵抗が低いと、特に低電流では、ヒュージブルリンクでの電圧降下が小さすぎるため、状況によっては、かけ渡された消弧板の間ではアークを形成できない場合があることに留意しなくてはならない。このように、ヒュージブルリンクが電流制限を低減させることがある。この理由から、架け渡す消弧板の数は少なく抑えるべきである。
【0100】
例えばスライダとして構成されたスプリングテンションを受けた断路素子に対する機械的固定機能を実現するためにヒュージブルリンクの一部を消イオンチャンバの外に出す場合、電流がヒュージブルリンクに完全に転流されると、アーク燃焼チャンバ又は消イオンチャンバの外でアークが生じることがあり、これは特にヒュージブルリンクの機械的負荷の領域で起こることがあることに留意しなくてはならない。
【0101】
アークチャンバ外のアークによりチャンバの損傷又は橋絡が生じないように、特に消イオンチャンバの場合、付加的な手段によって、架け渡された板の間での部分アークの点弧を促進することができる。この目的のために、ヒュージブルリンクが消弧板間を経由する領域の外にガス流路を引き出し、外部アーク形成の際にはプラズマが消弧板間に進入できるようにすることができる。
【0102】
【0103】
進入開口又は流入路18は
図6の図のように存在する。同図に示したスライダの機械的固定の領域において、ヒューズワイヤ8は、消イオンチャンバ4の外で固定されており、その経路に対して半径方向のばね力12によって応力が加えられるとともにガイド片19で固定されている。非断熱負荷の場合、状況によっては、これを、拡張部20の領域においてアークの形成をもたらす機械的拡張部まで通じるようにすることができる。この領域20をカバー片21で仕切ることができ、その結果、生じるプラズマを開口18から消イオン板9間に案内することができる。これにより、低い電流であってもこの領域でのアーク形成が補助される。
【0104】
さらに、ヒュージブルリンクワイヤ8の各部品の設計及びその板間経路を、アークの形成が板9間で直接起こるようなものとする選択肢もある。これは、例えば、ヒュージブルリンクの狭小部位によって、又は、消イオン板9の穴又はスロット状の開口部にヒュージブルリンクワイヤ又はこれに続いて融解するさらなる補助的なワイヤ22を経由させることで可能となる。
【0105】
消イオン板9に例示的な開口部23及び24を備えたこのタイプの発展形態を
図7に示す。
【0106】
アークチャンバの外でヒューズワイヤにおいてアークが形成される場合、最初の被接触消イオン板と相対的に近い方のホーン電極との間でアークが再点弧し、掛け渡された板の領域の該アークが再びチャンバに進入するという点でも、消イオンチャンバでのアークの点弧が起こるようにすることができる。これは、特に、結果として再点弧によってアーク電圧がごくわずかしか又はごく短時間しか低下しないため、チャンバの縁部において板に架け渡されている場合に可能である。
【0107】
電流の分流の調整に加えて、アークチャンバの少なくとも部分領域のバイパスのインピーダンスにより、必要アーク電圧及びインピーダンスにおける電圧降下による電圧制御もある。これは、インピーダンス自体と同様に電流に依存する。
【0108】
ワイヤ材料によるインピーダンスの調整、ワイヤ即ちヒュージブルリンクの接触及び形状、並びに架け渡される板の数による電圧負荷に関する説明は、単なる例示的な説明と見なされるべきものである。繰り返しになるが、当然のことながら、線形又は非線形の挙動を有する別の要素を負荷のレベル又は時間を制御するための補助として用いることもできる。架け渡す消弧板の数を変えることで、本発明の基本的な考え方を変更することなく、電圧タップの代わりに電圧制限素子又は電圧スイッチング素子をヒューズワイヤ負荷の制御に同様に用いることができる。
【0109】
図4から
図7にかかる各装置は、特に、持続時間及びレベル並びにヒューズ積分の観点から、幹線電流挙動の評価に適している。したがって、これらの実施形態は、個別にトリガ可能なスパークギャップに、また、その直列接続に特に適している。
【0110】
比較的低いレベルの続流の発生だけで故障判定基準として十分である場合、
図2及び
図3にかかる実装形態を用いることができる。
【0111】
これは、例えば、バリスタとトリガ可能なスパークギャップとの直列接続から構成される装置が当てはまる。この場合、電源続流の消弧チャンバへの進入、即ち、サージ電流との差異をすでに適切なトリップ判定基準として用いることができ、よって、ヒュージブルリンクのI2t値を非常に小さく抑えることができる。
【0112】
スパークギャップの直列接続又は単一のスパークギャップで過負荷の危険性を検出する場合、故障続流挙動と確かな動作又は電力範囲における通常機能下の続流挙動とを区別する必要がある。
【0113】
続流を伴う通常の消弧挙動については、スパークギャップは、一般的にグリッドの最大許容動作電圧及び最大許容予想短絡電流で発生する最大発生消弧積分を有する。この既知の値は、とりわけ、縦方向の分岐における最小プリヒューズに対する選択性の指定に用いられる。一般的に、上記2つ値に付加的な安全係数が考慮される。
【0114】
上記の値に達する或いはこれを超過してしまう危険性がある場合、スパークギャップを断路する必要がある。したがって、ヒュージブルリンクの負荷は、アレスタの電流制限積分を超えるとトリップが起こるような寸法とされる。
【0115】
尚、この限界値はスパークギャップの性能と等しい値に設定してはならない。スパークギャップは、原理上、このような負荷及びより高い負荷でも複数回確実に消弧することができるものである。例えば、消イオンチャンバの消弧板は、当該値のおよそ2倍又は3倍の積分でのみ、板の温度が隣接するハウジング又はその他の支持体の絶縁材料の融解温度に短時間で達するような寸法とされる。
【0116】
ヒュージブルリンクの所望のトリップ挙動に対して、断面の抵抗値などの点で材料によって影響を与えることができる。高い固有抵抗では、又は、電流負荷の抵抗を上昇させると、ワイヤを流れる電流を駆動する電圧が、正の温度勾配の抵抗上昇により当該電流が非臨界値まで減少することがないように一定のレベルを有するので有利である。
【0117】
2枚の消イオン板間の電圧は、ある一定の範囲においては、材料、電流及び冷却に依存する。好ましくない場合としては、この電圧が20Vを下回ることがある。このような状況下で確実にヒュージブルリンクに対する過負荷を誘発するために、数枚の消イオン板間を接触することが可能であり、これにより、駆動電圧を数倍のレベルまで上昇させることができる。
【0118】
しかしながら、抵抗値の点で温度依存度が低い又は負の温度勾配の材料を採用することもできる。
【0119】
ヒュージブルリンクワイヤ自体を板にクランプ、溶接又ははんだ付けして接触させることができる。
【0120】
各接触部は付加的にサーマルトリップが可能であり、これをスパークギャップの全体負荷に結合することができる。
【0121】
このようなサーマルトリップは、例えば伸張又は短縮といったヒュージブルリンク6の状態変化によってもたらすことができる。
【0122】
電流の流れによって過負荷になる又はサーマルトリップすることができるヒューブルリンクワイヤを用いる他に、形状が変化する材料を用いることもできる。形状記憶合金を基にした材料は、例えばワイヤのように断熱的に過負荷にすることもできるが、例えば、小さい電流でも十分な引張力を生じさせることができるという利点がある。ヒュージブルリンクワイヤは、軸方向にも半径方向にも機械的プリストレスを加えることができる。直径が200μm以下のワイヤは、数ニュートンの引張力を永続的に維持することができ、これを断路装置又はスイッチを作動させるのに用いることができる。
【0123】
以下に説明する
図8から
図14において、別途説明がない場合は、
図1から
図7に関連する説明で導入・採用されたものと同じ技術的手段及び要素には同じ参照符号を用いる。
【0124】
図8から
図14を使って、トリガ回路の断路に評価ユニットを用いるという本発明の原理を使ってどのようにさらなるアレスタとの直列接続を実施することができるかについての説明を行う。ここでは、基本的に、直列回路又はトリガ可能なスパークギャップのさらなる過電圧保護素子が過負荷になったとき、少なくともスパークギャップのトリガ回路を無効にすることが可能である。
【0125】
トリガ可能なスパークギャップとさらなる過電圧保護素子との直列接続は、例えば275V-1.5kVの電源電圧において、低い保護レベルを有する。必要な続流抑制又は続流消弧は、好ましくは、さらなる過電圧保護素子によって独占的に又は主に実現される。直列回路の通常機能時のトリガ可能なスパークギャップの負荷は、その性能能力を大きく下回る。
図11から
図14の実施形態にかかる直列回路は、主に、続流抑制においてこの「シングルエンド式」のタスク分配に対応する。
【0126】
トリガ回路の断路は、例えば、経年劣化又は一時的な過電圧の結果として、或いは、通常の負荷とは異なる負荷が生じた際に、さらなる過電圧保護素子の熱的過負荷又は動的過負荷で行われる。
【0127】
断路時にすでに直列回路を流れている場合がある故障電流は、さらなる過電圧保護素子の状態とは無関係に、もはやトリガ可能ではないスパークギャップによって安全に遮断される。言わば、この最後の遮断後、当該装置は高い最小絶縁破壊強度でグリッドから安全に断路された状態にある。
【0128】
スパークギャップのトリガ回路の断路後、スパークギャップは、設置場所に対応する最小絶縁破壊強度に対応する絶縁破壊強度、例えば、2.5、4又は6kVの絶縁破壊強度を有する。ここでは、汚染又は電極のバーンオフの影響を受けない適切な沿面距離及び空隙が実現される。
【0129】
一方、
図8は、スイッチ状の断路素子6と、トリガ回路2と、ホーン電極30及び31と、トリガ電極7と、アーク消弧用のチャンバ4の領域に配置された第1評価ユニット50と、アーク走行領域におけるエネルギー過程に応答する第2評価ユニット51とを備えた本発明にかかる2つのホーンスパークギャップの直列接続を示した図である。
【0130】
故障続流を感知すると、当該トリガ回路2のスイッチ6が作動し、該トリガ回路2はトリガ電極7から断路される。評価ユニットは、
図2、
図3又は
図4についてすでに説明したものに対応するものとすることができ、好ましくは、続流の発生又は続流のレベル又はエネルギーに独占的に応答して当該続流を評価するように実施される。
【0131】
断路素子6は、既述の単一スライダ態様或いはダブルスライダ態様で実現することができる。スライダ又は断路素子6のトリップは、圧力又は温度に応じて、或いは、融解積分に関連して、「及び/又は」組み合わせ理論に従って起こるようにすることもできる。
【0132】
当然のことながら、対応する断路装置を備えた本発明にかかる2つの同等のスパークギャップを直列接続も可能である。しかしながら、ここでは、続流の際も含めてスパークギャップの等しい負荷が発生し、そして、経年劣化も等しい。スパークギャップの負荷限界に到達すると、その評価ユニット5又は51が作動し、直列回路の断路が実現される。第2のスパークギャップの断路装置の強制作動はなされない。かくして、いずれの場合も、第1のスパークギャップが応答するだけで所望の断路機能に関する要求が満たされる。このような直列回路のスパークギャップでは、一方のスパークギャップがその続流挙動又は性能能力に関して大きめの寸法とされることから、原理上、一方の評価ユニット及び一方の断路装置を省くことが可能である。この場合、その性能に関連してより重い負荷を受けるスパークギャップの方のみに評価及び断路が必要である。
【0133】
図9も2つのホーンスパークギャップ1の直列接続を示した図であるが、ここでは、第2のスパークギャップ(右側)の評価ユニット5;51は、第1のスパークギャップ(左側)のトリガ回路2の断路素子6に作用する。
【0134】
断路素子を備えていない第2のスパークギャップの評価ユニットが第1のスパークギャップの断路素子に作用する場合も、一方の断路素子を省くことができ、また、第2のスパークギャップを大きめの寸法とする又は第2のスパークギャップの続流挙動を変更する必要はない。これにより、スパークギャップを続流の消弧に等しく参加させることが可能になり、当該装置の通常動作時の性能が高められる。かくして、性能を変更するための第2のスパークギャップの部品に対する追加の変更を省略することができる。
【0135】
図10も共通の評価ユニット5;51を備えた2つのホーンスパークギャップ1の直接列続を示した図であるが、この評価ユニット5;51は、各スパークギャップ1の断路素子6に作用する。
【0136】
このような設計は、特に、スパークギャップの作業配分が等しい場合、つまり、両スパークギャップがともに続流を消弧し、両スパークギャップが直列接続としてトリガ回路断路後の所望の絶縁破壊強度又は絶縁強度を確保する場合に有用である。
【0137】
この直列接続の2つのスパークギャップの両断路装置を強制的に作動させることは、続流スイッチオフ時のスパークギャップ間での負荷の分配を可能にするだけでなく、断路装置に対する必要な絶縁破壊強度の要件及び「受動的な」スパークギャップの寸法設定の分配も可能にする。
【0138】
このような装置では、例えば、作動判定基準の導出のためにいわゆるブリッジ回路を用いることもでき、これにより、続流を消弧するための各スパークギャップの所望の比例電圧上昇間の長いスキュー負荷を特定する。この目的のために、所望の電流分配又は電圧分配を適切なセンサにより直接制御することもできる。
【0139】
このような変形形態を直接使用する他に、間接的に使用するために電子捕捉ユニットを採用することもできる。直列に接続されたサージアレスタの評価のための例示的なブリッジ回路は当業者に知られており、これを対応する適用に容易に適応させることができる。
【0140】
図11は、ホーンスパークギャップ1と、例えばサーマル断路装置101を有するバリスタ100との直接接続を示した図である。
【0141】
この単純な直列回路では、非常に小さい続流であってもスパークギャップの断路装置を作動させるのに用いることができ、よって、評価ユニット5又は51の要件は非常に小さい。バリスタの損傷、過負荷又は破壊の際には、これが「即時の」続流につながり、したがって、スパークギャップの断路装置の作動が確保される。しかしながら、単純なサーマル断路装置には、単純な直列回路では考慮しなくてはならない欠点もある。サーマル断路装置の遅れがかなりのものとなるときがある。バリスタを強力に加熱するにもかかわらず、続流の増加に即時につながらない負荷の場合、続流が発生しないためにトリガ回路の断路装置6を作動させることができずにサーマル断路装置101をトリップすることができる。このような場合でも直列回路が所望の高い絶縁破壊強度に関する要求を満たすように、バリスタの断路装置101を、少なくとも開く際にアークが形成されないようにこれらの要求を満足することができるように設計しなくてはならない。この目的のために、適切な空隙及び沿面距離が設けられる。これらの要件は、適切な長さのストローク距離でも断路スライダでも満たすことがきる。
【0142】
はんだ付け部を用いる場合、はんだテール等の形成については回避又は考慮される。
【0143】
このような特別な断路装置にはかなりの追加費用又は所要空間を要する場合があることから、バリスタの独立した断路装置は完全に回避する方が有利となり得る。
【0144】
図12は、ホーンスパークギャップ1とバリスタ100との直列接続を示した図であり、様々な負荷判定基準は、バリスタ独自の別個の断路装置に作用するのではなく、断路装置6を直接作動させる。これは、例えば、既述のスライダを用いた例示的な実施形態に従って可能である。
【0145】
図13は、ホーンスパークギャップ1と、該スパークギャップ1とは無関係に作用する短絡装置102を有するバリスタ100との直列回路に関する図である。
【0146】
この装置は、バリスタ100が過負荷になったときに所定の短絡電流を必要とするものであり、低出力のグリッドでもホーンスパークギャップ1における故障続流の評価が安全に行うことができる。
【0147】
生じるアークが原因でバリスタ100にさらなる損傷が生じることも考えられるが、これも制限される。バリスタ100の短絡装置102は、非常に高出力のグリッドでは、予想短絡電流が小さくなるグリッドの大幅な制限を引き起こすことなく短絡電流を減少させるインピーダンスを有することができる。
【0148】
図14は、ホーンスパークギャップ1と、異なる機能原理、例えば、アークを抑制するためにハードガスを放出するという原理に基づくさらなるスパークギャップ200との直列回路に関する図である。
【0149】
このタイプのスパークギャップ200は、続流制限が非常に強力であり、定格条件の続流がほとんど或いは全く存在しない場合がある。
【0150】
図14にかかる機能は、バリスタを備えて図示した直列回路と同様である。
【0151】
ホーンスパークギャップ1は、適切な状態にあるとき、電源続流の消弧に参加しないか、或いは、ごくわずかだけ参加する。
【0152】
重大な続流は、直列接続されたスパークギャップ200の寿命終点の直前にだけスパークギャップ1に発生し、これらは、該スパークギャップ1で評価ユニット5;51によって感知され、過負荷電流と評価される場合もある。
【0153】
スパークギャップ1のトリガ回路2を断路するための断路素子は、自身の評価ユニットの他に、代わりに第2のスパークギャップ200の評価ユニットによって駆動することもできる。
【0154】
図示のように直列に接続されたスパークギャップ200にトリガ回路202を設ける場合、このトリガ回路202が過負荷を示したことを使ってスパークギャップ1の断路素子6を駆動することが可能である。この目的のために、例えば、スパークギャップ200のトリガ回路202のヒューズ201の撃針を直接又は間接的に用いることができる。
【0155】
図14の直列回路において、スパークギャップ200は、ホーンスパークギャップのトリガ回路2に直列連結されたトリガ回路によって作動させることもできる。スパークギャップ200を、高度に簡略化されたトリガ回路だけを有するようにする、或いは、純粋に「受動的」な態様で実施するという選択肢もある。これらの各スパークギャップは、低い過電圧であっても或いはグリッド電圧であっても点火する。このような簡略化されたトリガ回路又は「受動的に」点火するスパークギャップは、一般的に、例えばポリマーやセラミックといった導電材料又は半導体材料からなる要素を使用しており、とりわけ、先行技術の直列回路において知られている。しかしながら、
図14の直列回路におけるこのような「受動的に」点火するスパークギャップ200は、絶縁破壊強度に寄与することはできず、したがって、本発明にかかるスパークギャップ1自体が、トリガ回路2の断路素子6の場合もスパークギャップ1の場合も、単独で所望の絶縁破壊強度及び絶縁強度を提供しなくてはならないことの意義は大きい。