IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ランダ コーポレイション リミテッドの特許一覧

特許7246496印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段
<>
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図1
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図2A
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図2B
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図3
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図4
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図5
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図6
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図7
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図8A
  • 特許-印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段 図8B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】印刷システムおよび方法に関する摩擦低減手段
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 101
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021543134
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2019058380
(87)【国際公開番号】W WO2020075012
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】62/742,531
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チェチク,ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】リヴァデル,ショハム
(72)【発明者】
【氏名】バー-オン,マタン
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンステイン,ゾハー
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516315(JP,A)
【文献】特開2003-076159(JP,A)
【文献】特開2008-183744(JP,A)
【文献】特開2007-298774(JP,A)
【文献】特開2013-020170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0041515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷システムの中間転写部材(ITM)が前記印刷システムのガイド装置によって前記印刷システムに沿ってガイドされる間、前記ITMと前記ガイド装置との間の摩擦を低減するための摩擦低減システムであって、前記摩擦低減システムは、
-前記印刷システム内に取り付けられた流体貯留器と、
-前記ITMに沿った少なくとも1つの位置に配置された流体堆積装置と、
-前記流体堆積装置から前記ガイド装置または前記ITMの少なくとも一部への流体の堆積を制御するように適合された制御機構と、
を備え、
前記流体の堆積が、前記ITMと前記ガイド装置との間の摩擦を低減し、
前記制御機構は、前記流体が、前記流体堆積装置から前記ガイド装置または前記ITMの少なくとも一部に定期的にまたは間欠的に堆積されるように前記流体堆積装置を制御するように適合され、
前記制御機構は、
前記ITMと前記ガイド装置との間の摩擦の増加の識別、および
前記ITMと前記ガイド装置との間の境界面領域における、前記ITMまたは前記ガイド装置の温度の増加の識別
の少なくとも1つに応答して流体を堆積させるように前記流体堆積装置を制御するように適合される、摩擦低減システム。
【請求項2】
前記制御機構は、前記ITMと前記ガイド装置との間の接触領域における、前記流体堆積装置から前記ITMへの流体の堆積を制御するように適合される、請求項1に記載の摩擦低減システム。
【請求項3】
前記制御機構は、前記流体が、前記ガイド装置または前記ITMの少なくとも一部に連続的に堆積されるように前記流体堆積装置を制御するように適合される、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の摩擦低減システム。
【請求項4】
前記制御機構は、前記流体が、一定の連続流体堆積速度で連続的に堆積されるように前記流体堆積装置を制御するように適合される、請求項3に記載の摩擦低減システム。
【請求項5】
前記流体堆積装置は、前記ガイド装置または前記ITMの少なくとも一部に流体が堆積され得る複数の既定の流体堆積位置を含み、前記制御機構は、前記流体が、前記複数の既定の流体堆積位置の特定の1つにおいて堆積されるように前記流体堆積装置を制御するように適合される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の摩擦低減システム。
【請求項6】
前記ガイド装置または前記ITMの少なくとも一部に堆積される流体は、前記ITMと前記ガイド装置との接触領域を潤滑化することによって摩擦を低減するように適合される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の摩擦低減システム。
【請求項7】
印刷システムの中間転写部材(ITM)が前記印刷システムのガイド装置によって前記印刷システムに沿ってガイドされる間、前記ITMと前記ガイド装置との間の摩擦を低減するための摩擦低減システムであって、前記摩擦低減システムは、
-前記印刷システム内に取り付けられた流体貯留器と、
-前記ITMに沿った少なくとも1つの位置に配置された流体堆積装置と、
-前記流体堆積装置から前記ガイド装置または前記ITMの少なくとも一部への流体の堆積を制御するように適合された制御機構と、
を備え、
前記流体の堆積が、前記ITMと前記ガイド装置との間の摩擦を低減し、
前記流体堆積装置は、前記ガイド装置の第1の側において第1の位置に配置された第1の流体堆積ノズルと、前記ガイド装置の第2の側において第2の位置の上に配置された第2の流体堆積ノズルとを備え、
前記第1の流体堆積ノズルおよび前記第2の流体堆積ノズルは、前記制御機構と機能的に関連しており、前記第2の位置は、前記第1の位置と実質的に平行である、摩擦低減システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体インク液滴が画像形成ステーションにおいて可動ITMに堆積され、インプレッションステーションにおいてITMから印刷基板に転写される印刷システムにおいて用いられる中間転写部材(ITM)に関する。特に、本開示は、ITMと、画像形成ステーションとインプレッションステーションとの間で印刷システムに沿ってITMがガイドされる際に通るガイド装置との間の摩擦を低減するためのシステムおよび方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、いくつかの実施形態において、ITMがガイド装置によって印刷システムに沿ってガイドされる間、印刷システムのITMの摩擦を低減するための摩擦低減システムに関する。
【0003】
本発明は、いくつかの実施形態において、印刷システムのITMと、ITMがガイドされる際に通るガイド装置との間の摩擦を低減するための摩擦低減システムを含む印刷システムに関する。
【0004】
本発明は、いくつかの実施形態において、印刷システムのITMと、ITMが印刷システムに沿ってガイドされる際に通るガイド装置との間の摩擦を低減するための方法に関する。
【0005】
以下で更に詳しく説明するように、本発明に係る摩擦低減システムは、流体貯留器と、流体堆積装置とを含む。流体は、流体堆積装置からガイド装置またはITMへ、典型的にはそれらの間の接触領域において堆積され、それによってITMとガイド装置との間の摩擦を低減する。流体堆積装置による流体の堆積は、流体が定期的に、連続的に、および/または間欠的に堆積されるように制御機構によって制御される。
【0006】
したがって、本発明の第1の態様の実施形態によると、中間転写部材(ITM)がガイド装置によって印刷システムに沿ってガイドされる間、印刷システムのITMと印刷システムのガイド装置との間の摩擦を低減するための摩擦低減システムであって、
- 印刷システム内に取り付けられた流体貯留器と、
- ITMに沿った少なくとも1つの位置に配置された流体堆積装置と、
- 流体堆積装置からガイド装置またはITMの少なくとも一部への流体の堆積を制御するように適合された制御機構と
を備え、流体の堆積がITMとガイド装置との間の摩擦を低減する、摩擦低減システムが提供される。
【0007】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ITMとガイド装置との間の接触領域における、流体堆積装置からITMへの流体の堆積を制御するように適合される。
【0008】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、少なくとも1つの流体堆積ノズルを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、ガイド装置は、ITMの側縁部がガイドトラック内に配置され、ガイドトラックに沿ってガイドされるように、ガイドトラックのペアを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に連続的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、一定の連続流体堆積速度で連続的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、一定の連続流体堆積速度は、毎時1ml~50mlの範囲内である。
【0011】
いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、流体堆積装置からガイド装置またはITMの少なくとも一部に定期的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、制御機構は、一定体積の流体が、少なくとも5分ごと、少なくとも10分ごと、少なくとも15分ごと、少なくとも30分ごと、または少なくとも45分ごとに堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、一定堆積は、1ml~50mlの範囲内である。
【0012】
いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、流体堆積装置からガイド装置またはITMの少なくとも一部に間欠的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0013】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ITMとガイド装置との間の摩擦の増加の識別に応答して流体を堆積させるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、制御機構は、印刷システム内の電流の増加を識別し、それによって摩擦の増加を識別するように適合される。
【0014】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ITMとガイド装置との間の境界面領域におけるITMまたはガイド装置の温度の増加の識別に応答して流体を堆積させるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0015】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ユーザインタフェースと機能的に関連し、対応するユーザ命令の受信に応答して流体を堆積させるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0016】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に流体が堆積され得る複数の既定の流体堆積位置を含み、制御機構は、流体が、複数の既定の流体堆積位置の特定の1つにおいて堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0017】
いくつかの実施形態において、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に堆積される流体は、ITMとガイド装置との間の係合領域におけるITMの少なくとも一部またはガイド装置の少なくとも一部の局所温度を少なくとも低減することによって、摩擦を低減するように適合される。いくつかの実施形態において、流体は水である。いくつかの実施形態において、流体は加圧空気である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に堆積される流体は、ITMとガイド装置との接触領域を潤滑化することによって摩擦を低減するように適合される。
【0019】
いくつかの実施形態において、流体は、水性エマルジョンを含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、70%以上の水、75%以上の水、80%以上の水、85%以上の水、90%以上の水、または95%以上の水を含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、最大30%の潤滑剤、最大25%の潤滑剤、最大20%の潤滑剤、最大15%の潤滑剤、最大10%の潤滑剤、または最大5%の潤滑剤を含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、80%の水および10%の潤滑剤を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、純シリコンを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、ITMの印刷品質または特性に悪影響を及ぼすことがない。
【0022】
いくつかの実施形態において、ITMはシームを含み、一定の試験条件下で、72時間の期間にわたる毎時10ccの流体の速度でのITMへの潤滑剤の堆積後、シーム不良が発生する力は、潤滑剤の堆積前にシーム不良が発生する力よりも最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%小さい。
【0023】
いくつかの実施形態において、ITMは、ITMの側縁部に沿って横方向に延びるガイド構造のペアを含み、このガイド構造はガイド装置を通って延びる。いくつかの実施形態において、一定の試験条件下で、72時間の期間にわたる毎時10ccの速度でのITMへの潤滑剤の堆積後、ガイド構造とITMの側縁部との間で不良が発生する剥離力は、潤滑剤の堆積前にそのような不良が発生した剥離力よりも最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%小さい。
【0024】
いくつかの実施形態において、一定の試験条件下で、72時間の期間にわたる毎時10ccの速度でのITMへの潤滑剤の堆積後に測定されたガイド構造のばね定数は、潤滑剤の堆積前に測定されたガイド構造のばね定数と最大15%、最大10%、または最大5%異なる。
【0025】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、ガイド装置を洗浄するために更に適用される。
【0026】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、流体が印刷システム内で貯蔵される温度において化学的に安定する。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、少なくとも摂氏5~40度の範囲内の温度において化学的に安定する。
【0027】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、ガイド装置の第1の側において第1の位置に配置された第1の流体堆積ノズルと、ガイド装置の第2の側において第2の位置の上に配置された第2の流体堆積ノズルとを含み、第1および第2の流体堆積ノズルは、制御機構と機能的に関連している。いくつかの実施形態において、第2の位置は、第1の位置と実質的に平行である。
【0028】
いくつかの実施形態において、摩擦低減システムは、流体貯留器および流体堆積装置と流体流通状態にあるポンプ装置を更に含み、ポンプ装置は、貯留器から流体堆積装置へ流体を汲み上げるように適合される。
【0029】
本発明の第2の態様の実施形態によると、
-無端ベルトとして形成された中間転写部材(ITM)と、
-インク画像を形成するためにITMの外側表面にインク液滴が塗布される画像形成ステーションと、
-インク残渣膜を残すようにインク画像を乾燥するための乾燥ステーションと、
-残渣膜が基板へ転写されるインプレッションステーションと、
-画像形成ステーションから乾燥ステーションを介してインプレッションステーションへITMをガイドするためにITMの側縁部を沿わせてガイドするガイド装置と、
-ITMがガイド装置に沿ってガイドされる間、ITMとガイド装置との間の摩擦を低減するための摩擦低減システムであって、
-印刷システム内に取り付けられた流体貯留器と、
-ITMに沿った少なくとも1つの位置に配置された流体堆積装置と、
-流体堆積装置からガイド装置またはITMの少なくとも一部への流体の堆積を制御するように適合された制御機構と
を含む摩擦低減システムと
を含む印刷システムが更に提供される。
【0030】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ITMとガイド装置との間の接触領域における、流体堆積装置からITMへの流体の堆積を制御するように適合される。
【0031】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、少なくとも1つの流体堆積ノズルを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、ガイド装置は、ITMの側縁部がガイドトラック内に配置され、ガイドトラックに沿ってガイドされるように、ガイドトラックのペアを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に連続的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、一定の連続流体堆積速度で連続的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、一定の連続流体堆積速度は、毎時1ml~50mlの範囲内である。
【0034】
いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、流体堆積装置からガイド装置またはITMの少なくとも一部に定期的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、制御機構は、一定体積の流体が、少なくとも5分ごと、少なくとも10分ごと、少なくとも15分ごと、少なくとも30分ごと、または少なくとも45分ごとに堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、一定体積は、1ml~50mlの範囲内である。
【0035】
いくつかの実施形態において、制御機構は、流体が、流体堆積装置からガイド装置またはITMの少なくとも一部に間欠的に堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0036】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ITMとガイド装置との間の摩擦の増加の識別に応答して流体を堆積させるように流体堆積装置を制御するように適合される。いくつかの実施形態において、制御機構は、印刷システム内の電流の増加を識別し、それによって摩擦の増加を識別するように適合される。
【0037】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ITMとガイド装置との間の境界面領域におけるITMまたはガイド装置の温度の増加の識別に応答して流体を堆積させるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0038】
いくつかの実施形態において、制御機構は、ユーザインタフェースと機能的に関連し、対応するユーザ命令の受信に応答して流体を堆積させるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0039】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に流体が堆積され得る複数の既定の流体堆積位置を含み、制御機構は、流体が、複数の既定の流体堆積位置の特定の1つにおいて堆積されるように流体堆積装置を制御するように適合される。
【0040】
いくつかの実施形態において、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に堆積される流体は、ITMとガイド装置との間の係合領域におけるITMの少なくとも一部またはガイド装置の少なくとも一部の局所温度を少なくとも低減することによって、摩擦を低減するように適合される。いくつかの実施形態において、流体は水である。いくつかの実施形態において、流体は加圧空気である。
【0041】
いくつかの実施形態において、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に堆積される流体は、ITMとガイド装置との接触領域を潤滑化することによって摩擦を低減するように適合される。
【0042】
いくつかの実施形態において、流体は、水性エマルジョンを含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、70%以上の水、75%以上の水、80%以上の水、85%以上の水、90%以上の水、または95%以上の水を含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、最大30%の潤滑剤、最大25%の潤滑剤、最大20%の潤滑剤、最大15%の潤滑剤、最大10%の潤滑剤、または最大5%の潤滑剤を含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、80%の水および10%の潤滑剤を含む。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、純シリコンを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、ITMの印刷品質または特性に悪影響を及ぼすことがない。
【0044】
いくつかの実施形態において、ITMはシームを含み、一定の試験条件下で、72時間の期間にわたる毎時10ccの流体の速度でのITMへの潤滑剤の堆積後、シーム不良が発生する力は、潤滑剤の堆積前にシーム不良が発生する力よりも最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%小さい。
【0045】
いくつかの実施形態において、ITMは、ITMの側縁部に沿って横方向に延びるガイド構造のペアを含み、このガイド構造はガイド装置を通って延びる。
【0046】
いくつかの実施形態において、一定の試験条件下で、72時間の期間にわたる毎時10ccの速度でのITMへの潤滑剤の堆積後、ガイド構造とITMの側縁部との間で不良が発生する剥離力は、潤滑剤の堆積前にそのような不良が発生した剥離力よりも最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%小さい。
【0047】
いくつかの実施形態において、一定の試験条件下で、72時間の期間にわたる毎時10ccの速度でのITMへの潤滑剤の堆積後に測定されたガイド構造のばね定数は、潤滑剤の堆積前に測定されたガイド構造のばね定数と最大15%、最大10%、または最大5%異なる。
【0048】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、ガイド装置を洗浄するために更に適用される。
【0049】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、流体が印刷システム内で貯蔵される温度において化学的に安定する。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、少なくとも摂氏5~40度の範囲内の温度において化学的に安定する。
【0050】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、ガイド装置の第1の側において第1の位置に配置された第1の流体堆積ノズルと、ガイド装置の第2の側において第2の位置に配置された第2の流体堆積ノズルとを含み、第1および第2の流体堆積ノズルは、制御機構と機能的に関連している。いくつかの実施形態において、第2の位置は、第1の位置と実質的に平行である。
【0051】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、画像形成ステーションに隣接して配置される。
【0052】
いくつかの実施形態において、摩擦低減システムは、流体貯留器および流体堆積装置と流体流通状態にあるポンプ装置を更に含み、ポンプ装置は、貯留器から流体堆積装置へ流体を汲み上げるように適合される。
【0053】
本発明の第3の態様の実施形態によると、印刷システムの中間転写部材(ITM)と、ITMが印刷システムに沿ってガイドされる際に通るガイド装置との間の摩擦を低減する方法であって、
-流体堆積システムからの流体を、ガイド装置とITMとの間の接触領域において、または隣接して、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に堆積させすることにより、ITMとガイド装置との間の摩擦を低減すること
を含む方法が更に提供される。
【0054】
いくつかの実施形態において、堆積させることは、流体を連続的に堆積させることを含む。いくつかの実施形態において、連続的に堆積させることは、一定の連続流体堆積速度で流体を連続的に堆積させることを含む。いくつかの実施形態において、連続流体堆積速度は、毎時1ml~50mlの範囲内である。
【0055】
いくつかの実施形態において、堆積させることは、流体を定期的に堆積させることを含む。いくつかの実施形態において、定期的に堆積させることは、少なくとも5分ごと、少なくとも10分ごと、少なくとも15分ごと、少なくとも30分ごと、または少なくとも45分ごとに一定体積の流体を堆積させることを含む。いくつかの実施形態において、一定体積は、1ml~50mlの範囲内である。
【0056】
いくつかの実施形態において、堆積させることは、流体を間欠的に堆積させることを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、間欠的に堆積させることは、ITMとガイド装置との間の摩擦の増加を識別し、摩擦の増加の識別に応答して、ある体積の流体を堆積させることを含む。いくつかの実施形態において、摩擦の増加を識別することは、印刷システム内の電流の増加を識別することを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、間欠的に堆積させることは、接触領域におけるITMまたはガイド装置の少なくとも局所的な温度増加を識別し、温度増加の識別に応答して、ある体積の流体を堆積させることを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、体積は、1ml~50mlの範囲内である。
【0060】
いくつかの実施形態において、間欠的に堆積させることは、印刷システムのユーザインタフェースを介してユーザ命令を受信し、ユーザ命令の受信に応答して、ある体積の流体を堆積させることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、ガイド装置またはITMの少なくとも一部に流体が堆積され得る複数の既定の流体堆積位置を含み、流体を堆積させることは、複数の既定の流体堆積位置の特定の1つにおいて流体を堆積させるように流体堆積装置を制御することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、流体を堆積させることは、接触領域におけるITMの少なくとも一部またはガイド装置の少なくとも一部の局所温度を少なくとも低減することを含む。いくつかの実施形態において、流体は水である。いくつかの実施形態において、流体は加圧空気である。
【0063】
いくつかの実施形態において、流体を堆積させることは、ITMとガイド装置との接触領域を潤滑化することを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、流体は、水性エマルジョンを含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、70%以上の水、75%以上の水、80%以上の水、85%以上の水、90%以上の水、または95%以上の水を含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、最大30%の潤滑剤、最大25%の潤滑剤、最大20%の潤滑剤、最大15%の潤滑剤、最大10%の潤滑剤、または最大5%の潤滑剤を含む。いくつかの実施形態において、このエマルジョンは、80%の水および10%の潤滑剤を含む。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、純シリコンを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、流体を堆積させることは、ガイド装置を洗浄することを更に含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、潤滑剤は、流体が印刷システム内で貯蔵される温度において化学的に安定する。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、少なくとも摂氏5~40度の範囲内の温度において化学的に安定する。
【0067】
本発明の第4の態様の実施形態によると、印刷ステーションとインプレッションステーションとの間でガイド装置によってガイドされる中間転写部材(ITM)を含む印刷システムにおいて基板に画像を印刷する方法であって、
-ITMの表面に画像をインクジェット印刷することと、
-画像を印刷ステーションからインプレッションステーションへ移動するためにITMを回転させることと、
-画像をITMの表面から基板に転写することと、
-印刷、回転、および転写の少なくとも1つの間、本明細書で説明される方法に従って、ITMとガイド装置との間の摩擦を低減することと
を含む方法が更に提供される。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書において、添付図面を参照して説明される。本説明は、図面とともに、当業者に対し、本発明のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかを明らかにするものである。図面は、例示的な論述を目的としており、本発明の基本的な理解のために必要な程度を超えて詳しく実施形態の構造的細部を示すことは意図されていない。明確性のために、図面に示されるいくつかの事物は、一定の比率に拡大縮小されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】印刷システムの概略図である。
図2A-2B】それぞれ、図1の印刷システムの一部を形成し得る、ITMの典型的な部分の上面図および対応する典型的なガイド装置の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る摩擦低減システムの概略ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る流体堆積装置の一部を形成する、流体堆積ノズルの斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る摩擦低減システムの一部を形成する流体堆積装置の位置の斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る摩擦低減システムの一部を形成する制御機構の一部の斜視図である。
図7】本発明のシステムおよび方法を用いて、ガイド装置にエマルジョンが堆積される時のITMとガイド装置との間の摩擦への影響を示すグラフである。
図8A-8B】それぞれ、堆積流体としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)エマルジョンが用いられたガイドチャネル、および堆積流体としてシリコンエマルジョンが用いられたガイドチャネルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、いくつかの実施形態において、ITMがガイド装置によって印刷システムに沿ってガイドされる間、印刷システムのITMの摩擦を低減するための摩擦低減システムに関する。
【0071】
本発明は、いくつかの実施形態において、印刷システムのITMと、ITMがガイドされる際に通るガイド装置との間の摩擦を低減するための摩擦低減システムを含む印刷システムに関する。
【0072】
本発明は、いくつかの実施形態において、印刷システム内のITMと、ITMが印刷システムに沿ってガイドされる際に通るガイド装置との間の摩擦を低減するための方法に関する。
【0073】
現在用いられている多くの印刷システムにおいて、ITMは、ガイド装置を通ってガイドされる。システムが印刷している間、ITMの温度は上昇し、その結果、ITMとガイド装置との間の摩擦も増加し、これが更なる温度の上昇をもたらす。温度およびITMとガイド装置との間の摩擦の増加は、印刷システムに過剰な負担をかけることがあり、場合によっては、ITMから基板への画像転写の品質にも影響を及ぼし、その結果、印刷品質に影響を及ぼし得る。
【0074】
本発明は、画像剥離または印刷品質に悪影響を及ぼすことなく、印刷システムの稼働中、ITMとガイド装置との間の摩擦を低減する摩擦低減システムを提供することによって、従来技術の欠点を解決する。
【0075】
本明細書における教示の原理、使用法、および実装は、添付の説明および図面を参照して、より深く理解され得る。本明細書に提示する説明および図面を閲読すると、当業者は、過度な努力および実験をすることなく本発明を実装することができる。図面において、同様の参照番号が全体を通して同様の部品を指す。
【0076】
少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は必ずしも、その応用において、本明細書に記載される構成要素および/または方法の構成および配置の細部に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態であること、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。本明細書で使用される表現および用語は、説明目的のものであり、限定的なものとみなされてはならない。
【0077】
本発明の追加の目的、特徴、および利点は、以下に続く詳細な説明において記載され、その一部は、本説明から当業者に容易に明らかとなり、または、本明細書および特許請求の範囲、ならびに添付図面において説明されるような本発明を実施することによって認識される。本発明の実施形態の様々な特徴および部分的組み合わせは、他の特徴および部分的組み合わせを参照することなく用いられ得る。
【0078】
理解すべき点として、材料、方法、および例を含む、上述した概要および以下の詳細な説明の両方は、本発明の単なる典型例であり、特許請求の範囲に記載されるところの本発明の性質および特徴を理解する上での概観または枠組みを提供することが意図されており、必ずしも限定的であることは意図されていない。
【0079】
本明細書における説明および特許請求の範囲の文脈において、「シーム」、「ベルトシーム」、および「ブランケットシーム」という用語は、相互置換的に用いられてよく、細長ベルトの第1および第2の自由端を連結することにより、ITMとして使用可能な連続ループ、または無端ベルトを形成するために用いられる材料または物質に関する。
【0080】
本明細書における説明および特許請求の範囲の文脈において、「ブランケット」および「ベルト」という用語は、相互置換的に用いられてよく、たとえばITMとして使用するためなど、印刷システムにおける印刷表面として使用するために適した表面に関する。
【0081】
本明細書における説明および特許請求の範囲の文脈において、「定期的に」という用語は、たとえば10分に1回、30分に1回、1時間に1回、3時間に1回、6時間に1回、12時間に1回、毎日1回、1週間に1回、または1カ月に1回など、規則的な間隔または実質的に規則的な間隔で実行される動作に関する。
【0082】
本明細書における説明および特許請求の範囲の文脈において、「間欠的に」という用語は、任意の2つの隣接した動作の発生の間に任意の明確または規則的な期間が存在せずに、様々な時間に実行される動作に関する。
【0083】
本明細書における説明および特許請求の範囲の文脈において、「化学的に安定する」という用語は、特定の条件下で、相分離を伴わず、かつその環境内の他の物質との副化学反応を起こすことなく、熱力学的に安定した材料に関する。
【0084】
本明細書における説明および特許請求の範囲の文脈において、「実質的に」という用語は、特定の値または配置からの最大10%、最大8%、または最大5%の逸脱に関する。
【0085】
ここで、間接印刷システムを実装する印刷システム10の概略図である図1が参照される。
【0086】
システム10は、複数のガイドローラ232、240、250、251、253、および242の上に載置された可撓性無端ベルトを備えるITM(ITM)210を備える。
【0087】
本明細書において、ITMは、無端ベルトとして、または連続ループベルトとしてシームによって連結された端部を有する細長ベルトとも称され得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、ITM210のベルトは、最大20メートルの長さ、典型的には、5~20、5~15、5~12、または7~12メートルの範囲内の長さを有する。いくつかの実施形態において、ITM210のベルトは、最大2.0メートル、典型的には、0.3~2.0、0.75~2.0、0.75~1.5、または0.75~1.25メートルの範囲内の幅を有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、ITM210のベルトは、3000μm、典型的には、200~3000、200~1500、300~1000、300~800、300~700、100~3000、50~3000、または100~600μmの範囲内の厚さを有する。
【0090】
図1の例において、ITM210(すなわちそのベルト)は、時計回りの方向に移動する。ベルトの移動方向は、上流および下流方向を定める。ローラ242、240はそれぞれ、画像形成ステーション212の上流および下流に位置するので、ローラ242は「上流ローラ」と称され、ローラ240は「下流ローラ」と称され得る。
【0091】
図1のシステムは、以下を含む。
【0092】
(a)ITM210の表面に(たとえば、乾燥処理膜への液滴堆積によって)インク画像(不図示)を形成するように構成された(たとえば、各々がインクジェットヘッド(複数も可)を備える印刷バー222A~222Dを備える)画像形成ステーション212。
【0093】
(b)インク画像を乾燥するための乾燥ステーション214。
【0094】
(c)インク画像がITM210の表面からシートまたはウェブ基板へ転写されるインプレッションステーション216。図1の特定の非限定的な例において、インプレッションステーション216は、インプレッションシリンダ220、および圧縮性ブランケットまたはベルト219を搬送するブランケットシリンダ218を備える。いくつかの実施形態において、基板(たとえばシート基板またはウェブ基板)への転送を容易にするためにインク膜を粘着質にすることを補助するために、画像転送ステーションの2つのシリンダ218と220との間のニップの直前にヒータ231が提供され得る。基板供給が概略的に示される。
(d)ITM210が洗浄される洗浄ステーション258。
(e)ITM表面上の液体処理組成物(たとえば水性処理組成物)の(たとえば均一な厚さの)層が形成され得る処理ステーション260(すなわち、図1においてブロックとして概略的に図示)。
【0095】
当業者は、図1に示す全ての構成要素が必要なわけではないことを理解する。
【0096】
印刷システムの典型的な説明は、出願者のPCT公開第WO2013/132418号および第WO2017/208152号において開示される。
【0097】
ベルトの主目的は、インクジェットヘッドからインク画像を受け取り、インプレッションステーション216において、乱されることなく乾燥された画像を基板へ転写することである。図には示されないが、ITMを形成するベルトは、転写部材に所望の特性を加えるために複数の層を有してよい。具体的には、ベルトは、インク画像を受け取り、適当な剥離特性を有する外側層である剥離層を含んでよい。
【0098】
剥離層およびITMの非限定的な例は、出願者のPCT公開第WO2013/132432号、第WO2013/132438号、および第WO2017/208144号において開示される。
【0099】
いくつかの印刷システムにおいて、ITMは、相溶性インクとITMとの相互作用を更に増加させるため、または乾燥インク画像の基板への剥離を更に容易にするため、または所望の印刷効果を提供するために、処理ステーション260において任意選択的に処理され得る。
【0100】
処理流体の典型的な説明は、出願者のPCT出願公開第WO2017/208246号において開示される。
【0101】
図には示されないが、基板は連続ウェブであってよく、その場合、入力および出力スタックは、供給ローラおよび排出ローラと置き換えられる。それに応じて、基板搬送システムは、たとえば、ウェブをインプレッションステーションと正確に位置合わせするためにウェブのたるみを取るガイドローラおよびダンサを用いることによって適合される必要がある。
【0102】
図1の非限定的な例において、印刷システムは、両面印刷を実現することができないが、基板シートを裏返し、同じニップに2回目の通過をさせる両面印刷システムを提供することが可能である。更なる代替例として、印刷システムは、基板の反対側面にインク画像を転写するための第2のインプレッションステーションを備えてよい。
【0103】
ここで、両側部に側方構造272が形成された、たとえば図1のITM210などのITMを形成するために適したベルト270の一部を示す図2Aが参照される。側方構造272は、たとえばITM210(図1)などのITMの無端ベルトを形成するために、たとえば印刷システム10(図1)などの印刷システムにベルト270を通すため、および印刷プロセス中、印刷システムに沿ってガイド装置の対応する横方向チャネルを通るITMをガイドするために用いられ得る。
【0104】
側方構造272は、たとえば、図2Aの実施形態に示すように、ベルト270の各側縁部に縫い付けられ、または他の方法で取り付けられたジップファスナの半分の歯などの離間した突起であってよい。そのような側方構造は、規則的に離間する必要はない。
【0105】
あるいは、側方構造は、ベルト270よりも大きな厚さの連続可撓性ビーズであってよい。側方構造272は、ベルト270の縁部に直接取り付けられてよく、または、特に印刷システムの画像形成ステーション212(図1)においてITM210を平坦に維持しながら、図2Bを参照して以下で説明および例示されるガイド装置の対応する横方向チャネルにおいて側方構造と係合するために適した弾性を任意選択的に提供し得る中間ストリップを通して取り付けられ得る。
【0106】
側方構造272は、ITMの迅速な動きを含む印刷システムの動作状態を維持することができる任意の材料で作られ得る。適当な材料は、約50℃~250℃の範囲内の上昇温度に耐えることができる。有利な点として、そのような材料は、ベルトの動作寿命にわたり、ベルトの運動に悪影響を及ぼすサイズおよび/または量の破片を生み出すことがない。たとえば、側方構造272は、二硫化モリブデンで補強されたポリアミドで作られ得る。
【0107】
本発明に係る典型的なベルト側方構造に関する更なる細部は、PCT公開第WO2013/136220号および第WO2013/132418号において開示される。
【0108】
ここで、たとえば図1の印刷システム10などの印刷システムの一部を形成し得る典型的なガイド装置280の斜視図である図2Bが参照される。
【0109】
ガイド装置280は、連続側方トラックのペアを備え、その各々は、ベルトの通しおよび使用中に幅方向でのベルトの緊張を維持するために、図2Aに示すように、ベルトの側縁部の1つにおいて側方構造272と係合し得るガイドチャネル282を画定する。ガイドチャネル282は、ベルト側方構造272を受容および保持し、ベルトの緊張を維持するために適した任意の断面を有してよい。
【0110】
典型的なベルト側方構造およびそのような側方構造を受容するために適したガイドチャネルに関する更なる細部は、PCT公開第WO2013/136220号および第WO2013/132418号において開示される。
【0111】
ここで、本発明の実施形態に係る、たとえば図1の印刷システム10などの印刷システムにおいて使用可能な摩擦低減システム300の概略ブロック図である図3が参照される。
【0112】
摩擦低減システム300は、印刷システム10内の任意の適当な位置に取り付けられた流体貯留器304と流体流通状態にある流体堆積装置302を含む。図4を参照して以下で更に詳しく説明するように、流体堆積装置は、印刷システム10内に配置され、それによって、たとえば図2Bのガイドチャネル282などのITMをガイドするガイド装置に、またはたとえば側方構造272(図2A)などのITM210の一部またはガイド装置と接触するITM210の他の任意の部分に、流体が堆積され得る。
【0113】
流体は、印刷システム内の任意の適当な位置に配置され得るポンプ装置306によって、流体貯留器304から流体堆積装置302へ汲み上げられ得る。流体貯留器304は、印刷システムの動作を中断しないこと、および流体が流体堆積装置302へ効果的に汲み上げられ得ることを前提として、印刷システム10内の任意の適当な位置または場所に配置され得る。
【0114】
制御機構308は、ガイド装置またはITMへの流体の堆積を制御するために、流体堆積装置302およびポンプ装置306の動作を制御するように適合される。以下で更に詳しく説明するように、その接触領域におけるガイド装置またはITMへの流体の堆積は、ガイド装置とITMとの摩擦の低減をもたらす。
【0115】
ここで、流体堆積装置302の一部を形成する流体堆積ノズル310の斜視図である図4、および流体堆積装置302の場所の斜視図である図5がさらに参照される。
【0116】
図4に示すように、いくつかの実施形態において、流体堆積装置302は、各々が流体貯留器304と流体流通状態にあり、そこから流体を堆積させるために適した、1または複数の流体堆積ノズル310を含んでよい。いくつかの実施形態において、流体堆積装置は、ガイドチャネル282の各々に隣接して、および/またはITM210の2つの側縁部の各々に隣接して1つが配置された、少なくとも2つの流体堆積ノズル310を含んでよい。
【0117】
各流体堆積ノズル310は、印刷システム10にノズルを係留するための係留装置312、ITMおよび/またはガイド装置に流体を堆積させるためのサイズおよび寸法の孔316を有する滴下先端314、および流体貯留器304と流体流通状態にある入口部分318を含む。
【0118】
孔316の寸法は、ノズル310から堆積される流体の特定の種類、または堆積速度に合わせられ得る。たとえば、孔316は、堆積される流体が高粘性エマルジョンである場合、大きく、堆積される流体が水である場合、小さくなり得る。いくつかの実施形態において、孔316は、0.75mm~1.25mmの範囲内の径、好適には1mmの径を有する。
【0119】
図5に示すように、いくつかの実施形態において、流体堆積装置302、具体的には流体堆積ノズル310は、チャネル282またはガイドチャネル282と接触する領域でITM210に流体を堆積させるために、横方向ガイドチャネル282の各々に隣接して、またはその上に位置してよい。いくつかの実施形態において、ITM210の両側にある2つのノズルの位置は、図5において矢印319で示すように、互いに実質的に平行である。
【0120】
いくつかの実施形態において、流体堆積装置302または流体堆積ノズル310は、印刷システムの画像形成ステーション(たとえば図1の画像形成ステーション212)に隣接した位置にある。そのような流体堆積ノズル310の配置は、印刷システムの、150℃であり得る、高い運転温度により、インプレッションステーション(たとえば図1のインプレッションステーション216)に到着する前に堆積流体の水成分が蒸発するので、流体が印刷画像の品質を落とすことがないという事実により有利である。インプレッションステーションに到着する前に堆積流体の水成分の蒸発を可能にする、ノズル310の他の任意の位置が同様に有利であることが理解される。
【0121】
いくつかの実施形態において、ノズル310は、他の位置、または追加の位置に位置してよい。たとえば、堆積流体が急速に蒸発する場合、または、印刷システム10内のITM210の経路に沿った単一の点での流体の堆積が、ITMとガイドチャネル282との摩擦の増加を防ぐために不十分である場合、追加のノズルが必要とされ得る。
【0122】
ここで、本発明の実施形態に係る、摩擦低減システム300の制御機構308の一部の斜視図である図6が参照される。図6に示すように、制御機構308は、印刷システム10の全般制御パネルまたは論理パネルの一部を形成してよく、印刷回路基板の一部であってよい論理回路320、および流体堆積装置302からの流体の流れを制御するための流量計322を含んでよい。図6に示すように、ポンプ装置306の一部を形成し得る1または複数のポンプ324もまた、制御機構308に、またはシステム10の制御パネル326に取り付けられ得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、制御機構308は、専用プロセッサ(CPU)を含んでよい。他の実施形態において、制御機構308は、印刷システム10の中央プロセッサを用いて動作してよい。いくつかの実施形態において、制御機構308は、プロセッサによって実行される命令を格納する専用メモリ要素を含んでよい。他の実施形態において、制御機構308のプロセッサによって実行される命令は、印刷システム10の中央メモリ要素に格納され得る。制御機構308に関連する印刷回路基板は、たとえば図6に示す位置など、任意の適当な位置に配置され得る。
【0124】
使用中、上記ITMと上記ガイド装置との間の摩擦を低減するため、流体は、流体堆積装置302からガイドチャネル282(または他のガイド装置)またはITM210の一部、たとえばガイド装置と接触する部分に堆積される。。
【0125】
いくつかの実施形態において、制御機構308は、流体がITM210および/またはガイド装置280に連続的に堆積されるように流体堆積装置302を制御してよい。いくつかの実施形態において、流体は、たとえば毎時1ml~50mlの範囲内であってよい一定の連続流体堆積速度で連続的に堆積される。理解されるように、一定の流体堆積速度は、たとえば様々な粘性によって、流体の様々な種類に関して様々であってよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、制御機構308は、流体がITM210および/またはガイド装置280に定期的に堆積されるように流体堆積装置302を制御してよい。いくつかの実施形態において、一定体積の流体が一定間隔で、たとえば少なくとも5分に1回、少なくとも10分に1回、少なくとも15分に1回、少なくとも30分に1回、または少なくとも45分に1回、堆積される。
【0127】
いくつかのそのような実施形態において、一定体積は、1ml~50mlの範囲内であってよい。理解されるように、一定体積および/または一定時間間隔は、たとえば様々な粘性または様々な潤滑特性によって、流体の様々な種類に関して様々であってよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、制御機構308は、流体がITM210および/またはガイド装置280に間欠的に堆積されるように流体堆積装置302を制御してよい。
【0129】
たとえば、制御機構308は、ITM210とガイド装置280との間の摩擦の増加、たとえばそのような摩擦が既定の摩擦閾値を超えることなどを識別してよい。それに応じて、制御機構は、摩擦を摩擦閾値未満まで低減するために、ある体積の流体をITMおよび/またはガイド装置内に堆積させるように流体堆積装置302を制御してよい。ITMとガイド装置との間の摩擦の程度は、任意の適当な方法または技術を用いて追跡または監視され得る。いくつかの実施形態において、摩擦の程度は、印刷システム内の電流を監視することによって監視され、この場合、例1を参照して後述するように、電流の増加は摩擦の増加に対応する。
【0130】
他の例として、制御機構308は、ITM210および/またはガイド装置280の温度の増加を識別してよく、それに応じて、ガイド装置および/またはITMにある体積の流体を堆積させるように流体堆積装置302を制御してよい。いくつかの実施形態において、流体の堆積をトリガするために、温度の増加(すなわち、過去の測定値と現在の測定値との温度差)は、既定の増加閾値を超える必要がある。いくつかの実施形態において、流体の堆積をトリガするために、ITMまたはガイド装置の温度は、既定の温度閾値を超える必要がある。いくつかの実施形態において、温度測定または温度増加測定は、たとえばガイド装置と接触するITMの一部、またはITMと接触するガイド装置の一部であってよい特定の温度測定領域において行われる。
【0131】
いくつかの実施形態において、制御機構は、既定の期間に関するITMおよび/またはガイド装置の温度の連続的増加の識別のみに従って流体を堆積させるように流体堆積装置302をトリガしてよい。
【0132】
更なる例として、制御機構308は、印刷システム10のユーザインタフェース(明確に図示されず)と機能的に関連してよく、ユーザインタフェースから、ガイド装置および/またはITMにある体積の流体を堆積させるように制御機構に流体堆積装置302を制御させるユーザ命令を受信してよい。
【0133】
そのような間欠的な堆積の発生の各々において流体堆積装置302によって堆積される流体の体積は一定であってよく、または、異なる堆積発生の間で変動してよい。たとえば、温度または摩擦における増加の識別に応答してではなく、ユーザ命令の受信に応答して様々な体積の流体が用いられ得る。他の例として、堆積される流体の体積は、制御機構308によって識別された温度または摩擦における増加の程度と相関付けられてよく、温度または摩擦におけるより大きな増加の識別が、より大きな体積の流体の堆積をもたらす。いくつかの実施形態において、各流体堆積発生において堆積される流体の体積は、1ml~50mlの範囲内である。
【0134】
図4および図5を参照して以下で説明するように、いくつかの実施形態において、流体堆積装置302は、ガイド装置に沿った様々な位置に配置された、複数の流体堆積位置、または流体堆積ノズルを含んでよい。いくつかのそのような実施形態において、流体がITM210および/またはガイド装置280に堆積される時、制御機構308は、流体堆積位置の特定の1つに流体を堆積させるように流体堆積装置302を制御する。その結果、流体は、全ての流体堆積位置に同時に堆積され、または、任意の特定の時間に流体堆積位置のサブセットのみに堆積され得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、堆積流体は、ITM210および/またはガイド装置280を潤滑化し、その結果、それらの間の摩擦の低減をもたらす。
【0136】
いくつかの実施形態において、ITM210および/またはガイド装置280への流体の堆積の結果、ITMの少なくとも一部および/またはガイド装置の少なくとも一部の局所温度が少なくとも低下する。以下で説明するように、温度の低下は、システム内の摩擦の対応する低減をもたらす。この文脈において、「局所温度」という用語は、ITMの一部と、ITMの一部が位置するガイド装置の一部との接触点における温度に関する。いくつかのそのような実施形態において、ITMの一部および/またはガイド装置の一部は、ガイド装置とITMとが互いに係合する部分であってよい。
【0137】
堆積流体は、任意の適当な流体であってよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、堆積流体は水である。いくつかの実施形態において、堆積流体は加圧空気である。そのような実施形態において、流体の堆積は、上述したように温度の低下をもたらし、その結果、摩擦の低減をもたらす。水および/または加圧空気は温度の低減によって機能するという事実、およびそのような温度の低減は長期間持続せず、および/または流体が直接堆積されなかった領域において実質的に発生しないという事実により、これらの種類の流体を用いる場合、流体の継続的な堆積が、より適切かつ効果的である。
【0139】
いくつかの実施形態において、流体は、ITMとガイド装置との間の摩擦を低減するためにそれらの間の接触領域を潤滑化する潤滑流体である。たとえば、潤滑流体は、水性エマルジョンを備えてよい。そのような実施形態において、エマルジョンの潤滑成分は、堆積発生の間にガイド装置に残り、ITMおよびガイド装置に沿って、それが直接堆積されなかった領域にも広がるので、流体の定期的な堆積が適切である。
【0140】
エマルジョンは、潤滑成分と水性成分との任意の適当な比率を有してよい。いくつかの実施形態において、エマルジョンは、70%以上の水、75%以上の水、80%以上の水、85%以上の水、90%以上の水、または95%以上の水を備える。いくつかの実施形態において、エマルジョンは、最大30%の潤滑剤、最大25%の潤滑剤、最大20%の潤滑剤、最大15%の潤滑剤、最大10%の潤滑剤、または最大5%の潤滑剤を備える。いくつかの実施形態において、エマルジョンは、90%の水および10%の潤滑剤を備える。
【0141】
いくつかの実施形態において、エマルジョンに含まれる潤滑剤は、純シリコンである。
【0142】
いくつかの実施形態において、堆積流体は、ガイド装置を洗浄するためにも機能する。以下の例2に示すように、純シリコンを含むエマルジョンは、ガイドチャネル282を洗浄する機能を果たしながら、ガイドチャネルを潤滑化し、ガイドチャネルとITMとの間の摩擦を低減する。
【0143】
印刷システム10内の摩擦を低減するために用いられる流体は、特に潤滑剤も含まれるエマルジョンの場合、印刷システムの機能性に適している必要がある。
【0144】
よって、選択された流体は、摂氏5~40度の範囲内の温度である、印刷システム10内で流体が貯蔵される温度において化学的に安定する。
【0145】
いくつかの実施形態において、選択された流体は、印刷品質またはITMの表面から基板への画像転写に悪影響を及ぼすことはない。具体的には、選択された流体、またはそこに含まれる潤滑剤は、印刷インクの濡れ性、またはITMからのインクの剥離および画像転写中の粘着性に影響を及ぼすことはない。
【0146】
いくつかの実施形態において、選択された流体は、ITMの特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0147】
たとえば、ITMが、ITMを形成する細長可撓性ブランケットの対向端部を連結するシームを含むいくつかの実施形態において、選択された流体は、シームの強度に悪影響を及ぼすことはない。本願の目的に関して、同じ試験状況下で、72時間の期間にわたり毎時間1回10ccの流体がITMに堆積される速度での流体の使用後、シーム不良が発生する力が、流体の適用より前にシーム不良が発生した力よりも最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%小さい場合、流体は、シームの強度に悪影響を及ぼさないと考えられる。
【0148】
他の例として、図2Aに関して上述したように、ITMが側方構造272を含むいくつかの実施形態において、選択された流体は、側方構造とITMの側縁部との間の連結強度に悪影響を及ぼすことはない。本願の目的に関して、同じ試験状況下で、72時間の期間にわたり毎時間1回10ccの流体がITMに堆積される速度での流体の使用後、側方構造とITMの側縁部との間で不良が発生する剥離力が、流体の適用前にそのような不良が発生した剥離力よりも最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、または最大5%小さい場合、流体は、側方構造とITMの側縁部との間の連結強度に悪影響を及ぼすと考えられる。
【0149】
更なる例として、図2Aに関して上述したように、ITMが側方構造272を含むいくつかの実施形態において、選択された流体は、側方構造のばね定数に悪影響を及ぼすことはない。本願の目的に関して、同じ試験状況下で、72時間の期間にわたり毎時間1回10ccの流体がITMに堆積される速度での流体の使用後に測定された側方構造のばね定数が、流体の適用前に測定されたばね定数と最大15%、最大10%、または最大5%異なる場合、流体は、側方構造のばね定数に悪影響を及ぼすと考えられる。
【0150】
また他の例として、図2Aに関して上述したように、ITMが側方構造272を含むいくつかの実施形態において、選択された流体は、側方構造を実質的に変色させることはない。印刷システムが基板への画像の印刷に用いられている時、印刷ステーション212(図1)において、画像は、ITM210の表面にインクジェット印刷される。ITMはその後、印刷ステーションからインプレッションステーション216(図1)へ印刷画像を移動するために回転する。インプレッションステーションにおいて、この画像は、上述したように、ITMの表面から基板に転写される。画像の印刷、ITMの回転、および画像の転写の動作の1または複数の間、ITM210とガイド装置240(図2B)との間の摩擦は、上述したように、ITMまたはガイド装置への流体の堆積によって低減される。
【0151】
ここで、上記説明とともに、非限定的な形式で本発明を例示する以下の例が参照される。
例1
エマルジョンの適用がシステム内の電流を低下させる
【0152】
印刷システムは、システムのITMの両側において約2~3分に1回システム内の電流を追跡しながら、画像を印刷するために動作した。約30分の動作後、ITMに隣接した、印刷システムのガイドトラックの各々に10ccのエマルジョンが堆積された。このエマルジョンは、水を80%、および米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Corning社が販売するPMX200形式の液体シリコンを10%含む水性エマルジョンであった。エマルジョンの堆積後、エマルジョンまたは他の任意の流体の追加の適用なしで、ITMの両側における電流が約3時間の追加の期間にわたり測定された。システム内で測定された電流は図7に示され、ここで、ITMの一方の側で測定された電流は紫色で示され、ITMの他方の側で測定された電流は緑色で示される。
【0153】
図7において、x軸は時間を表し、y軸はトルクを表しており、y軸に沿った絶対値が低いほど、システム内のより低い電流を示し、絶対値が高いほど、システム内のより高い電流を示す。
【0154】
示されるように、システムの最初の40分の動作中、電流は、紫色グラフにおいて増加し、緑色グラフにおいて平均して一定に保たれる。エマルジョンを堆積させると、システム内の電流は、ほぼ瞬間的に約400Nm減少し、その結果、ITMとガイドチャネルとの間の摩擦の著しい減少が示される。示されるように、エマルジョンの堆積およびシステム内の電流の減少後、実験の残り時間に関して電流は実質的に一定に保たれる。
【0155】
よって、図7のグラフは、少量のエマルジョンを使用しながら、長期間にわたる、ITMとガイドトラックとの間の摩擦の低減における液体シリコンの効果を明確に論証する。
例2
洗剤としての摩擦低減用エマルジョン
【0156】
印刷システム内のITMのための汚れたガイドトラックは、本発明に係る潤滑流体としても用いられ得るエマルジョンを用いて洗浄された。ガイドトラックの第1のセグメントは、水を80%、および米国ミシガン州ミッドランド所在のDow Corning社が販売するPMX200形式の液体シリコンを10%含むエマルジョンを用いて洗浄された。第1のセグメントは、図8Aの写真において楕円801で囲まれて示される。ガイドトラックの第2のセグメントは、米国デラウェア州ウィルミントン所在のThe Chemours Company社製のテフロン(登録商標)スプレーとして市販されるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)スプレーを用いて洗浄された。第2のセグメントは、図8Bの写真において楕円802で囲まれて示される。
【0157】
図8A図8Bとの比較から分かるように、PMX200を含むエマルジョンは、テフロン(登録商標)を含むスプレーよりも大幅に効果的なガイドトラックの洗剤である。例1に示すように、PMX200を含むエマルジョンは、ガイドトラックおよびITMの効果的な潤滑剤であるため、システムの動作中のトラックの洗浄は、堆積流体としてPMX200を含む水性エマルジョンを用いる場合に生じ得る追加の利益である。
【0158】
明確性のために個別の実施形態の文脈で説明された本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈で説明された本発明の様々な特徴は、個別に、または任意の適当な部分的組み合わせで、または本発明の他の任意の説明された実施形態において適宜、提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明された特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは実施不可能でない限り、それらの実施形態の不可欠な特徴とみなされてはならない。
【0159】
本開示は、例示のためにのみ、本発明の提示された様々な特定の実施形態に関して説明されたが、そのように具体的に開示された実施形態は、限定的なものとみなされてはならない。本明細書における出願者の開示に基づいて、当業者は、そのような実施形態の他の多くの代替例、修正例、および変形例に思い至る。したがって、本開示は、そのような代替例、修正例、および変形例の全てを包括すること、および、添付の特許請求の範囲の主旨および範囲、およびそれらの意味および等価性の範囲内に収まる任意の変更によってのみ範囲が定められることが意図される。
【0160】
本開示の説明および特許請求の範囲において、「備える」、「含む」、および「有する」という動詞の各々およびそれらの活用語は、その動詞の1または複数の目的語が、必ずしもその動詞の1または複数の主語の特徴、部材、ステップ、構成要素、要素、または部品の完全な羅列ではないことを示すために用いられる。
【0161】
本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に例外を示さない限り、複数形を含み、「少なくとも1つの」または「1または複数の」を意味する。
【0162】
特に記載されない限り、選択のための選択肢の羅列の最後の2つの要素間の「および/または」という表現の使用は、羅列された選択肢の1または複数の選択が適当であり、なされ得ることを示す。
【0163】
特に記載されない限り、本技術の実施形態の1または複数の特徴の状態または関係性の特徴を修飾する「実質的」および「約」などの形容詞は、その状態または特徴が、それが意図される応用に関する実施形態の動作のために許容可能な許容値の範囲内であると定義される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B