(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/17 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
A61B17/17
(21)【出願番号】P 2021557542
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2020052090
(87)【国際公開番号】W WO2020201855
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102019000004739
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルベリッヒ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】パリーシ,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ルッキーニ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】カキック,ルカ
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-000511(JP,A)
【文献】特開2016-067939(JP,A)
【文献】特表2017-524457(JP,A)
【文献】米国特許第04920958(US,A)
【文献】米国特許第05163940(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0071876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16-17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具(100)であって、
中央スロット(102)を備えたスリーブ(102’)と、前記中央スロット(102)の内部に半径方向に突出するガイドピン(101)と、を備えるハンドリング部材(100’)と、
前記スリーブ(102’)の前記中央スロット(102)にスライドさせることができるガイド要素(1)であって、長手方向軸(X)に沿って延びる細長い形状の管状円筒形本体(2)を備え、当該ガイド要素(1)が外面に、ガイドピン(101)にスライド可能に結合されるガイド溝(4)を有し、前記スリーブ(102’)および当該ガイド要素(1)が前記ガイド溝(4)によって規定されるガイド経路に沿って相互に移動可能である、ガイド要素(1)と、を備え、
前記ガイド溝(4)は、第1の直線溝部分(4a)および第2の直線溝部分(4b)を含み、前記第1の直線溝部分(4a)および前記第2の直線溝部分(4b)は、前記長手方向軸(X)の周りに角度的に離間されており、前記第1の直線溝部分(4a)および前記第2の直線溝部分(4b)の間に配置された横方向接続溝部分(4c)によって互いに相互接続されており、
前記ガイド溝(4)は、前記ガイド要素(1)のグリップ領域を規定する第1の端部(5)と、患者の骨(T)と接触して配置されるように構成された、前記第1の端部(5)の反対側の第2の端部(6)との間に延在し、前記第1の直線溝部分(4a)は、前記第1の端部(5)と前記横方向接続溝部分(4c)との間に延在し、前記第2の直線溝部分(4b)は、前記横方向接続溝部分(4c)と前記第2の端部(6)との間に延在し、
前記第1の直線溝部分(4a)および前記第2の直線溝部分(4b)に沿って前記ガイドピン(101)をスライドさせることを許容すべく、前記ガイド要素(1)は、前記長手方向軸(X)と一致するスライド方向(Y)に沿って並進可能であり、
前記横方向接続溝部分(4c)の内部に前記ガイドピン(101)をスライドさせることを可能にするために、前記ガイド要素(1)は、その長手方向軸(X)の周りに少なくとも部分的に回転可能であり、
前記手術器具(100)は、前記中央スロット(102)内の前記スライド方向(Y)に沿った前記ガイド要素(1)のスライドをロックするように構成されたロック手段(103)を含み、前記ロック手段(103)は、前記中央スロット(102)内の前記ガイド要素(1)の動きが防止される作動構成と、前記中央スロット(102)内の前記ガイド要素(1)の動きが自由である非作動構成との間で切り替え可能であり、
前記ガイドピン(101)が前記横方向接続溝部分(4c)内に配置されている場合、前記横方向接続溝部分(4c)は、前記ロック手段(103)の前記非作動構成の間、前記スライド方向(Y)に沿った前記ガイド要素(1)のスライドを防止するように構成されている、手術器具(100)。
【請求項2】
前記ロック手段(103)は、レバー機構(104)によって選択的に作動させることができる、請求項1に記載の手術器具(100)。
【請求項3】
前記第1の直線溝部分(4a)および前記第2の直線溝部分(4b)が前記長手方向軸(X)に平行であり且つ10°から270°の範囲の中心角度だけ互いに角度的に離間している、請求項1または2に記載の手術器具(100)。
【請求項4】
前記横方向接続溝部分(4c)が、前記管状円筒形本体(2)の円周方向の弧を規定するように、前記管状円筒形本体(2)の表面部分に沿って延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の手術器具(100)。
【請求項5】
前記横方向接続溝部分(4c)が、前記第1の直線溝部分(4a)および前記第2の直線溝部分(4b)の展開方向を横切る方向に前記管状円筒形本体(2)の表面部分に沿って延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の手術器具(100)。
【請求項6】
前記第1の直線溝部分(4a)が前記第2の直線溝部分(4b)よりも長い、請求項1から5のいずれか一項に記載の手術器具(100)。
【請求項7】
前記第1の直線溝部分(4a)が、前記横方向接続溝部分(4c)を超えて延び、前記ガイドピン(101)を当接して受け入れるように設計された窪み(7)を規定して、前記ガイドピン(101)の円周方向のスライドを防ぐ、請求項1から6のいずれか一項に記載の手術器具(100)。
【請求項8】
前記ガイド溝(4)が、前記第1の直線溝部分(4a)と前記第2の直線溝部分(4b)との間に配置された単一の横方向接続溝部分(4c)を備える、請求項1から
7のいずれか一項に記載の手術器具(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具に関する。
【0002】
本発明は、整形外科分野において特定の用途を見出す。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、例として、穿孔ガイドを規定する手術器具に言及するが、本発明がそれによって一般性を失うことはない。
【0004】
穿孔ガイドは、(例えば、患者の膝靭帯を再建する処置のために)関節鏡手術で通常使用される手術器具である。
【0005】
この種の手術を行うには、トンネル(脛骨管など)を生成してその内部に置換靭帯を挿入して患者の骨の内側に固定する必要がある。
【0006】
穿孔ガイドを使用すると、外科医は、細い剛性ワイヤ(例えば「Kワイヤ」またはキルシュナワイヤ)を手術対象の骨の内部に部分的に挿入でき、これにより、ワイヤは、その後にトンネルを形成するための基準およびガイドとして機能することができる。
【0007】
トンネルは実際には、挿入された剛性ワイヤの周りに穿孔ビットを配置することによって特定の穿孔器具で骨を穿孔することによって形成される。
【0008】
したがって、穿孔ガイドは、細い剛性ワイヤの位置を決定することを可能にし、外科医が正しい角度で所定の貫通深さで骨を穿孔することを可能にする。
【0009】
既知のタイプの穿孔ガイドは通常、ハンドリング部材とガイド要素で構成されている。さらに、手術器具は、ハンドリング部材を患者の骨に取り付けるための要素を含み得る。
【0010】
特に、ハンドリング部材は、ガイド要素をスムーズに挿入できる中央スロットを備えたスリーブと、中央スロット内のガイド要素のスライドをロックまたはロック解除するために選択的に作動できるロック手段とを備える。
【0011】
したがって、ガイド要素は、ロック手段が解除されたときに、手術対象の骨から離れるようにおよび当該骨に向かうように移動することができる。
【0012】
通常、外科医は、ハンドリング部材をつかんでいない空いている方の手でガイド要素を中央スロットに手動で挿入して移動させることができる。次に、ハンドリング部材をつかんでいるのと同じ手でこれらのロック手段を作動させることにより、ガイド要素を所望の位置に停止状態でロックすることができる。
【0013】
ロックされると、ガイド要素は、ロック手段がガイド要素を再びスライドできるようにロック解除されない限り、決定された挿入位置に留まる。
【0014】
しかしながら、出願人は、典型的にはボタンまたはトリガの形態であるそのようなロック手段が、外科医によって手術中に誤って作動される可能性があることに気付いた。ハンドリング部材を握っている手の指が不注意にトリガを滑らせまたはトリガを強く押し、それによりロック手段を解除し、実質的にガイド要素を中央スロットから解放してその動きを自由にする可能性がある。
【0015】
したがって、ガイド要素が自由になっている場合には、ガイド要素が誤って中央スロットから滑り抜けて地面に落ちる可能性がある。
【0016】
したがって、手術器具の位置および使用状態により、ガイド要素がそのスライドシートから意図せずに外れて落下する可能性がある。この場合、ガイド要素が損傷する可能性があり、いずれにしても、もはや無菌ではないため使用できなくなり、したがって、外科的処置を中断する必要がある。
【0017】
外科医が器具を握りながら指でロック手段の作動制御部に楽に到達できることが不可欠であるので、当該作動制御部を操作者の指が容易に到達できない位置に動かすことはできない。したがって、制御部を楽な位置に保つ必要があるが、同時に、ガイド要素を中央スロットから意図せずに外すことを不可能にする必要がある。
【発明の概要】
【0018】
これに関連して、本発明の根底にある技術的課題は、従来技術の上記欠点の1つまたは複数を克服する手術器具を提案することである。
【0019】
特に、本発明の目的は、手術器具自体を使用する際の安全レベルを高める、特にガイド要素の使用中にガイド要素が誤って落下するのを防止する手術器具を提供することである。
【0020】
指定された技術的課題および目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載された技術的特徴を含む手術器具によって実質的に達成される。
【0021】
特に、本発明は、ハンドリング部材であって、中央スロットを有するスリーブと、中央スロットの内部に半径方向に突出するガイドピンと、を含むハンドリング部材を備える手術器具に関する。
【0022】
ガイド要素は、中央スロットにスムーズに挿入することができ、長手方向軸に沿って延びる細長い形状の管状円筒形本体を備える。
【0023】
ガイド要素は、外面に、ガイドピンにスライド可能に結合されるガイド溝を有し、その結果、スリーブとガイド要素は、ガイド溝によって規定されるガイド経路に沿って相互に移動可能である。
【0024】
換言すれば、ガイドピンはスリーブの内側に形成され、ガイド溝で管状円筒形本体を貫通する。
【0025】
ガイド溝は、有利には、長手方向軸の周りに角度的に離間された第1および第2の直線溝部分であって、第1および第2の直線溝部分の間に配置された横方向接続溝部分によって互いに相互接続された第1および第2の直線溝部分を備える。
【0026】
換言すれば、2つの直線溝部分は、長手方向軸に対して互いにオフセットされている。
【0027】
したがって、本発明のおかげで、ガイド経路は、従来技術の器具のように完全に直線ではなく、2つの直線溝を接続するように横方向に配置された接続溝部分によって規定されるずれ(deviation)を有し、接続溝部分は、直線溝部分の一方に沿ったガイドピンの意図しない動きに続く、スリーブからのガイドピンの意図しない取り外しを防止する。
【0028】
接続溝部分は、基本的に、直線溝部分に沿った並進運動の結果としてピンがこの直線溝部分の一端に到達したときにピンが接触する(および停止する)当接壁を規定する。
【0029】
このように、横方向接続溝部分の内部にそれ自体を配置することにより、ガイド溝に沿ったピンの並進を遮断して意図しない(例えば、重力によるガイド要素の落下により生じる)並進を防止することができる。
【0030】
特に、ガイド溝は、ガイド要素のグリップ領域を規定する第1の端部と、患者の骨と接触するように構成された、第1の端部の反対側の第2の端部との間に延びる。
【0031】
第1の直線溝部分は、第1の端部と横方向接続溝部分との間に延在し、第2の直線溝部分は、横方向接続溝部分と第2の端部との間に延在する。
【0032】
言い換えれば、ガイド要素は、管状本体の第1の端部から第2の端部まで延びる連続した線形のガイド経路を規定する連続した線形のガイド溝を有する。
【0033】
ガイド経路は、好ましくは、基本的に、「S」または「Z」の形である。
【0034】
ガイド要素は、有利には、長手方向軸と一致するスライド方向に沿って並進され、ガイドピンが第1および第2の直線溝部分に沿ってスライドすることを可能にする一方、ガイド要素は、その長手方向軸の周りに少なくとも部分的に回転でき、ガイドピンが横方向接続溝部分の内部にスライドすることを可能にする。
【0035】
換言すれば、横方向接続溝部分は2つの直線溝部分の間に配置されて、基本的にガイド経路の中間部分を規定するので、ガイドピンが最初から最後までガイド溝に沿って走ることができるためには、ガイド要素がその長手方向軸に沿ってまず最初に並進されなければならず、その結果、ガイドピンは、中間接続溝部分に当接するまで直線溝部分に沿ってスライドすることができ、スライド方向に沿ったそれ以上の並進を防ぐ。次に、ガイドピンが横方向接続溝部分の内部で移動できるようにするために、ガイド要素はその長手方向軸の周りに回転されなければならない。最後に、ガイド要素は、その長手方向軸に沿って再び並進されなければならず、その結果、ガイドピンは、他方の直線溝部分に沿ってスライドすることができる。
【0036】
したがって、ガイドピンがガイド経路全体に沿って移動できるようにするには、ガイド要素をそれ自体の軸を中心に意図的に回転させる必要がある。実際、重力によりピンが直線溝部分に沿って意図せずに並進する可能性がある場合、(安全のために、2つの直線溝部分の間に配置された)横方向接続部分に沿ったピンの並進は、意図せずに発生することはなく、外科医の意図的な介入、つまりガイド要素の回転による介入が必要である。
【0037】
このようにして、ガイドピンは、その取り外しおよび落下のリスクなしに、制御された態様で一方の直線溝部分から他方の直線溝部分に移動することができる。
【0038】
さらに、手術器具は、有利には、中央スロットの内部でスライド方向に沿ったガイド要素のスライドをロックするように構成されたロック手段であって、中央スロット内のガイド要素の移動が防止される作動構成と、中央スロット内のガイド要素の移動が自由である非作動構成との間で切り替え可能であるロック手段を備える。
【0039】
このようにして、外科医は、ガイド要素が配置されたら、ロック手段を作動させて管状本体の位置をロックして細い剛性ワイヤを骨組織に挿入することができる。
【0040】
特に、横方向接続溝部分は、ガイドピンが横方向接続溝部分の内側に配置されている場合に、ロック手段の非作動構成の間、前記スライド方向に沿ったガイド要素のスライドを防止するように構成される。
【0041】
言い換えれば、横方向接続溝部分は、ロック手段が意図せずにロック解除された場合に、ガイドピンが一方の直線溝部分と他方の直線溝部分との間でスライドするのを防止する安全システムを規定する。
【0042】
ロック手段は、好ましくは、レバー機構によって選択的に作動させることができる。
【0043】
2つの直線溝部分は、好ましくは、10°から270°の範囲の中心角度だけ、角度的に離れて配置されている。
【0044】
特に、中心角度は、少なくともピンの展開部をカバーするようでなければならず、中心角度が大きいほど、接続溝部分の長さが長くなる。
【0045】
1つの可能な実施形態によれば、横方向接続溝部分は、好ましくは、管状本体の長手方向軸に垂直な横たわり平面(a lying plane)上にある管状本体の表面部分に沿って延びる。
【0046】
言い換えれば、この場合の横方向接続溝部分は、管状本体の円周方向の弧を規定する。
【0047】
したがって、一方の直線溝部分と他方の直線溝部分との間を通過するには、ガイドピンを円周方向の弧に沿って並進させる必要がある。この動作は、有利なことに、ピンの意図しない並進がピンをガイド経路全体に沿ってスライドさせることを防止する。
【0048】
有利なことに、外科医は、ガイドピンを横方向接続溝部分から他の直線溝部分の内側に並進させるのに十分な角度だけガイド要素をその長手方向軸の周りに単に回転させることによって、ガイド要素を意図的に回転させなければならない。
【0049】
追加の実施形態によれば、横方向接続溝部分は、好ましくは、第1および第2の直線溝部分に対して傾斜した平面上にある管状本体の表面部分に沿って延びる。
【0050】
したがって、有利には、この場合、ガイド要素を回転並進させて、ガイドピンを一方の直線溝部分から横方向接続溝部分に沿って他方の直線溝部分に並進させる必要がある。
【0051】
したがって、直線溝部分と横方向接続溝部分との間のガイド経路に沿って規定された屈曲部は、ガイド要素によって提供される安全レベルを高める。
【0052】
第1の直線溝部分は、好ましくは、第2の直線溝部分よりも長い。
【0053】
有利なことに、これにより、ガイドピンの意図しない並進の結果としての、ガイド経路に沿ったガイドピンの並進を最小限に抑えることが可能になる。
【0054】
好ましくは、第1の直線溝部分は、横方向接続溝部分を超えて延び、前記ガイドピンの円周方向のスライドを防止するためにガイドピンを当接して受け入れるように設計された窪みを規定する。
【0055】
有利なことに、この窪みの存在は、ガイド要素の安全レベルをさらに高める。
【0056】
実際、ガイドピンが意図せずにこの窪みの内側に到達した場合、その後のガイド要素の偶発的な/意図的でない回転は、いかなる場合でも、ガイドピンが横方向接続溝部分に沿って並進することを引き起こさず、したがって、ガイドピンが他方の直線溝部分に沿って走るために当該他方の直線溝部分に到達して誤ってガイド溝全体から滑り落ちることが防止される。
【0057】
好ましくは、第2の直線溝部分は、ガイドピンとガイド溝との結合を容易にするために、第2の端部に引込面取り溝(a lead-in chamfer)を有する。さらにより好ましくは、引込面取り溝は、第2の端部につながる。
【0058】
参考のために本明細書に含まれる従属請求項は、本発明の異なる実施形態に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明の追加の特徴および利点は、添付の図面に示されるように、手術器具の好ましいが排他的ではない実施形態の暗示的、したがって非限定的な説明からより明確になるであろう。
【
図1】使用構成における本発明による手術器具の概略斜視図である。
【
図2】本発明による手術器具のガイド要素の概略斜視図である。
【
図3-5】それぞれの動作構成における
図2のガイド要素の部分断面概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
添付の図に関して、参照番号100は、手術器具全体を示しており、これ以降、単に器具100と記す。
【0061】
器具100は、ガイド要素1およびハンドリング部材100’を備える。
【0062】
ハンドリング部材100’は、中央スロット102を備えたスリーブ102’を備え、中央スロット102の内部にガイドピン101が延び、ガイドピン101は中央スロット102の内部に半径方向に突出する。
【0063】
図2を参照すると、ガイド要素1は、長手方向軸Xに沿って延びる細長い形状の管状円筒形本体2を備える。特に、管状本体2は、図示されていない細い剛性ワイヤを受け入れるように構成された貫通穴3を有する。
【0064】
管状本体2は、外面に、ガイドピン101にスライド可能に結合するように設計されたガイド溝4を有し、その結果、ガイド要素1およびハンドリング部材100’のスリーブ102’は、ガイド溝4によって規定されるガイド経路に沿って相互に移動可能である。
【0065】
ガイドピン101は、好ましくは円筒形の先の尖った細長い突起物(prong)である。しかしながら、代替的に、ガイドピン101およびガイド溝4は、ガイドピン101がガイド経路に垂直な方向にスライドすることができるが引き抜かれないように、したがってガイドピン101はガイド経路の最初と最後でのみ挿入および引き抜くことができるように、逆形状にすることができる。
【0066】
図2Aを参照すると、ガイド溝4は、有利には、第1の直線溝部分4aおよび第2の直線溝部分4bを備え、第1の直線溝部分4aおよび第2の直線溝部分4bは、長手方向軸X周りに角度的に離間され、2つの直線溝部分4a、4bの間に配置された横方向接続溝部分4cによって互いに相互接続されている。
【0067】
ガイド溝4は、好ましくは、2つの直線溝部分4a、4bおよび横方向接続溝部分4cのみを備える。
【0068】
2つの直線溝部分4a、4bは、好ましくは長手方向軸Xに平行であり、10°から270°の範囲、好ましくは20°から180°の範囲、さらにより好ましくは60°に等しい中心角度だけ、角度的に離れて配置されている。
【0069】
換言すれば、参照される中心角度は、長手方向軸Xおよび第1の直線溝部分4aの第1の展開方向を通過する第1の平面と、長手方向軸Xおよび第2の直線溝部分4bの第2の展開方向を通過する第2の平面との間の範囲の角度である。
【0070】
添付の図に示すガイド要素1の実施形態によれば、横方向接続溝部分4cは、好ましくは、管状本体2の長手方向軸Xに垂直な横たわり平面上にある管状本体2の表面部分に沿って延びる。
【0071】
換言すれば、横方向接続溝部分4cは、それ自体の展開方向に沿って延び、ガイド要素1の外面の円周方向の弧を規定する。
【0072】
添付の図には示されていないガイド要素1の代替実施形態によれば、横方向接続溝部分4cは、2つの直線溝部分4a、4bに対して傾斜した平面上にある管状本体2の表面部分に沿って延びる。
【0073】
管状本体2は、ガイド要素1のグリップ領域を規定する第1の端部5であって、当該グリップ領域を介して外科医が手動でガイド要素1に作用することができる第1の端部5と、患者の骨(例えば
図1に示すように脛骨T)と接触するように構成された、第1の端部5の反対側の第2の端部6とを備える。
【0074】
さらに、第1の端部5は、細い剛性ワイヤを挿入するための入口シートを規定する。
【0075】
特に、ガイド溝4は、第1の端部5と第2の端部6との間に延びる。
【0076】
2つの直線溝部分4a、4bのうちの第1の直線溝部分4aは、第1の端部5と横方向接続溝部分4cとの間に延在し、2つの直線溝部分4a、4bのうちの第2の直線溝部分4bは、横方向接続溝部分4cと第2の端部6との間に延在する。
【0077】
好ましくは、添付の図の実施形態のように、第1の直線溝部分4aは、第2の直線溝部分4bよりも長い。
【0078】
図2Aに明確に見られるように、好ましくは、第1の直線溝部分4aは、横方向接続溝部分4cを超えて延び、ガイドピン101の偶発的な円周方向のスライドを防ぐためにガイドピン101を当接して受け入れるのに適した窪み7を規定する。
【0079】
第2の直線溝部分4bは、好ましくは、第2の端部6に引込面取り溝8を有し、好ましくは、引込面取り溝8は第2の端部6に通じている。
【0080】
添付の図に示す実施形態のように、ガイド溝4は、好ましくは、第1の直線溝部分4aと第2の直線溝部分4bとの間に配置された単一の横方向接続溝4cを備える。これにより、ハンドリング部材100’とガイド要素1とを相互にスライドさせることが容易になる。
【0081】
有利には、スリーブ102’のガイドピン101は、ガイド要素1のガイド溝4にスムーズに挿入することができ、ガイド要素1は、管状本体2の長手方向軸Xと一致するスライド方向Yに沿って中央スロット102の内部でスライドするのに適している。
【0082】
有利には、ガイド要素1は、スライド方向Yに沿って並進されて、ガイドピン101が直線溝部分4a、4bに沿ってスライドすることを可能にし、矢印Rによって示されるように、その長手方向軸Xの周りに少なくとも部分的に回転することができ、ガイドピン101が横方向接続溝部分4cの内部にスライドすることを可能にする。
【0083】
有利には、手術器具100は、中央スロット102の内部でスライド方向Yに沿ったガイド要素1のスライドをロックするように構成されたロック手段103であって、中央スロット102内のガイド要素1の動きが防止される作動構成と、中央スロット102内のガイド要素1の動きが自由である非作動構成との間で切り替え可能であるロック手段103を備える。
【0084】
特に、横方向接続溝部分4cは、ガイドピン101が横方向接続溝部分4cの内側に配置されている場合に、ロック手段103の非作動構成の間、前記スライド方向Yに沿ったガイド要素1のスライドを防止するように構成される。
【0085】
ロック手段103は、好ましくは、レバー機構104によって選択的に作動させることができる。
【0086】
図3は、スリーブ102’のガイドピン101が第1の直線溝部分4aの内側に配置されている第1の動作構成中に中央スロット102の内部でスライド方向Yに沿ってスライド可能に移動する
図1のガイド要素1を示している。
【0087】
図4は、ガイドピン101が横方向接続溝部分4cに対して配置されている第2の動作構成における
図1のガイド要素1を示しており、第1の直線溝部分4aに沿ったストロークが完了している。この位置で、ガイド要素1は、ガイドピン101が横方向接続溝部分4cに沿って移動し、第2の直線溝部分4bに到達し、
図5に示す第3の動作構成に到達できるように、長手方向軸Xを中心に(矢印Rのように時計回りに)回転されなければならない。
【0088】
これは逆の動作にも当てはまる。すなわち、第3の構成から第2の構成に切り替えるには、ガイド要素1を回転させる必要がある(矢印Rのように反時計回りに)。
【0089】
したがって、
図1に示す器具100の使用位置に関して、ガイドピン101が第2の直線溝部分4bの内側にある場合に、外科医がレバー機構104を指で押してロック手段103を誤ってロック解除したとき、ガイド要素1は、重力により、中央スロット102内で下向きに滑り、ピン101は、ガイド溝4の内側で下向きにスライドして横方向接続溝部分4cに到達し、そこで停止し、中央スロット102の内部のガイド要素1を効果的にロックする。
【0090】
したがって、横方向接続溝部分4cは、有利なことに、ガイド要素1が誤って落下するのを防ぐことができる、要素1のための安全保持システムとして構成される。
【0091】
この場合、ロック手段103の意図的または非意図的な作動は、いずれの場合でも、ガイド要素1が中央スロット102から取り外されることを可能にするために外科医の意図的な介入を必要とすることになる。
【0092】
本発明は、従来技術において不満を述べられている欠点を克服することによって、且つ、構築が容易であるガイド要素1を備え、ガイド要素1がハンドリング部材100’から意図せずに分離するのを防ぐことができる安全システムを生み出すことを可能にする手術器具100をユーザに提供することによって、提案された目的を達成する。