(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】医薬品としての3,5-ビス(フェニル)-1H-ヘテロアリール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6518 20060101AFI20230317BHJP
C07F 9/6503 20060101ALI20230317BHJP
A61K 31/66 20060101ALI20230317BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20230317BHJP
A61K 50/00 20060101ALI20230317BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230317BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C07F9/6518 CSP
C07F9/6503
A61K31/66
A61K33/26
A61K50/00 200
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2021573819
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 CZ2020050045
(87)【国際公開番号】W WO2020253895
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521543532
【氏名又は名称】インスティテュート オブ バイオテクノロジー シーエーエス,ヴィ.ヴィ.アイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】515296840
【氏名又は名称】スマート ブレイン エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】トルクサ,ヤロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥルサ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ブラシュコヴァー,クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】サンドヴァル アクーニャ,クリスティアン エイドリアン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505090(JP,A)
【文献】国際公開第2016/155679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
Zは
、6~16個の炭素原
子を含
むアルキレ
ンから選択される直鎖状ヒドロカルビル鎖であり、
ここで、
-前記ヒドロカルビル鎖中の1個以上の炭素原子(典型的には、-CH
2-基)は、任意で、1つ以上
のフェニレン、トリアゾリレンまたはピリジレンによって置き換えられていてもよく、および/または
-前記ヒドロカルビル鎖中の1個以上の炭素原子(典型的には、-CH
2-基)は、任意で、1つ以上のヘテロ原子、またはO、S、
及びN
Hから選択される部分を含むヘテロ原子-によって置き換えられていてもよく、および/または
-前記ヒドロカルビル鎖原子は
、=O、及び=Sからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基によって置換されていなくてもよく、置換されていてもよく;
R
1
、R
2
、R
3
のそれぞれは、独立して
、C6~C12アリール、及びC3~C8シクロアルキルから選択さ
れ;
R
4
、R
5
およびR
6
のそれぞれは、CHおよびNから選択され、R
4
、R
5
およびR
6
のうち少なくとも2つは、Nであり;
X
-は、薬学的に許容可能なアニオンであり;
Yは、独立して、OH、
及びS
Hからなる群から選択されるそれぞれの事象である、化合物。
【請求項2】
Zの前記アルキレンは、6~14個の炭素原子、8~12個の炭素原子、または10~15個の炭素原子を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zは、アルキレン
;1個の炭素原子が、フェニレン、トリアゾリレンまたはピリジレンによって置き換えられているアルキレン;1個の炭素原子が、NHによって置き換えられているアルキレン;1個の炭素原子が、フェニレン、トリアゾリレンまたはピリジレンによって置き換えられ、1個の炭素原子が、NHによって置き換えられ、1個の炭素原子が、=Oによって置き換えられており、従っ
て-(ヘテロ)-アリール-C(=O)-NH-構造を形成するアルキレン;であ
る、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
6
は、Nであり、R
4
およびR
5
のうち少なくとも1つもまた、Nである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
医薬品として使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
癌の治療の方法において使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、GIT癌、肝臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、中皮腫、肺癌および白血病から選択される癌の治療の方法において使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
少なくとも1つの請求項1~4のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物と
、担体、溶媒、フィラー、バインダ、崩壊剤、被覆剤、グリダント、潤滑剤、防腐剤、香料、
及び着色料
からなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む薬学的組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの請求項1~4のいずれか1項に記載の一般式Iの化合物と
、遷移金属および周期表のIIIAおよびIVA族の金属から選択される金属と、を含
む、薬学的組成物。
【請求項10】
前記金属は、鉄である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
診断用の造影剤として使用するための
、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
インビボでの癌を視覚化する方法において使用するための、請求項9に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、新規な3,5-ビス(フェニル)-1H-ヘテロアリール誘導体、およびその医薬品としての使用、特に癌の治療のための使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
癌は、異常な細胞増殖に関する疾患である。癌の治療は、費用がかかる上、癌がかなりの頻度で標準的な化学療法による治療に耐性を示すために、常に成功するものではない。抗癌薬物療法が作用し得る作用メカニズムは多数存在する。これらのメカニズムには、抗増殖活性、アポトーシス誘導(または細胞死誘導)活性、鉄キレート活性、および抗遊走活性、ならびに活性酸素種(ROS)の過剰産生が含まれる。
【0003】
細胞のDNA合成、代謝、成長、および増殖のために、全ての細胞が鉄を必要とする。鉄は、デオキシリボヌクレオチドの合成のためのリボヌクレオチドレダクターゼの触媒活性等の多くの酵素反応のために必要とされる、不可欠な微量元素である。鉄は、電子を授受して電子伝達系に関与することによって、ミトコンドリア内膜中に電気化学勾配を発生させるという能力のために、ミトコンドリアの呼吸にとっても不可欠である。癌細胞は、その増殖性および改変された代謝要求のために、鉄をより多く必要とするので、腫瘍増殖および進行において、鉄が重要な役割を担うことが予測される。近年、腫瘍始原細胞での鉄代謝における著しい変化および特定の鉄代謝に関する遺伝子シグネチャーが報告され、癌幹細胞様細胞における鉄の重要な役割が実証されている((Rychtarcikova et al. (2017) Tumor-initiating cells of breast and prostate origin show alterations in the expression of genes related to iron metabolism. Oncotarget 8, 6376-6398)。
【0004】
重要なことには、癌細胞は、ROSの基底レベルが元来高いこと、および抗酸化防御メカニズムがほぼ飽和状態であることから、ROS産生化合物に対してより敏感に反応すると思われる。従って、抗酸化防御を増加させる能力が非常に限られている癌細胞にとって、ROSの増加はいずれも有害であり、このアプローチが、抗癌療法を設計するために使用されている(Kim et al. (2016). ROS homeostasis and metabolism: a critical liaison for cancer therapy. Exp Mol Med 48, e269; Truksa et al. (2015). Mitochondrially targeted vitamin e succinate modulates expression of mitochondrial DNA transcripts and mitochondrial biogenesis. Antioxid Redox Signal 22, 883-900)。
【0005】
さらに、ヘムとFeSとのクラスターを補因子として必要とする全てのタンパク質にとって、ミトコンドリアは、ヘムとFeSとのクラスターの産生における代表的で重要な細胞小器官であることから((Paul and Lill (2015). Biogenesis of cytosolic and nuclear iron-sulfur proteins and their role in genome stability. Biochim Biophys Acta 1853, 1528-1539)、ミトコンドリアの機構への障害のいずれも、代謝活性、呼吸およびDNA修復能力の低下をもたらし、それによって、細胞周期を停止させ、細胞がアポトーシスを行わず、生存している場合でも、増殖することを不可能にする。
【0006】
さらに、鉄と、マイトファジー(mitophagy)と呼ばれるプロセスを介したミトコンドリアの再利用と、の関連が引き起こされ、適応免疫系の活性化につながることから、鉄ハンドリングおよびマイトファジーが、発癌性プロセスを緩和し得ることが示唆される(Ziegler et al. (2018). Mitophagy in Intestinal Epithelial Cells Triggers Adaptive Immunity during Tumorigenesis. Cell 174, 88-101 e116)。
【0007】
近年、Novartisが、deferasirox(DFX、Exjade、Desirox、Defrijet、Desifer、RasiroxpineおよびJadenuとして市販される)として知られる、新規のキレート剤を発表しており、これは2005年に米国のFDAによって承認されている(Tyagi et al. (2005). Deferasirox (ICL670; Exjade(R)), a Novel Orally Available Iron Chelator for Correction of Transfusion-Associated Iron Overload. Support Cancer Ther 2, 208-211)。DFXは、抗癌活性を有することが示されており、この抗癌活性はインビトロならびにインビボにおいて実証されている(Tury et al. (2018). The iron chelator deferasirox synergises with chemotherapy to treat triple-negative breast cancers. J Pathol 246, 103-114)。
【0008】
本発明の目的は、望ましくない全身的な効果を示すことなく、非常に低いレベル(nM)での細胞静止作用と、より高い濃度(μM)での細胞傷害効果と、を有する化合物を提供することである。本化合物の効果は、多様な作用機序に基づくべきである。
【0009】
〔本発明の開示〕
本発明は、一般式Iの新規の化合物を提供し、
【0010】
【0011】
式中、
Zは、2~20個の炭素原子、好ましくは6~16個の炭素原子、より好ましくは6~14個の炭素原子、さらにより好ましくは8~12個の炭素原子、もっとも好ましくは10個の炭素原子、または好ましくは8~16個もしくは10~15個の炭素を含む、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンから選択される、直鎖状のヒドロカルビル鎖であり、
ここで、
-ヒドロカルビル鎖中の1個以上の炭素原子(典型的には-CH2-基)は、任意で、1つ以上の5員または6員の、芳香環またはヘテロ原子O、Sおよび/またはNを含むヘテロ芳香環、によって置き換えられてもよく、前記芳香環またはヘテロ芳香環は、好ましくはフェニレン、トリアゾリレンまたはピリジレンから選択され、および/または
-ヒドロカルビル鎖中の1個以上の炭素原子(典型的には-CH2-基)は、任意で、
1つ以上のヘテロ原子、またはO、S、NH、N-OHから選択される部分を含むヘテロ原子-、によって置き換えられていてもよく、および/または
-ヒドロカルビル鎖の原子は、C1~C4アルキル、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルチオ、C1~C4アシルオキシ、N(HまたはC1~C4アルキル)2(ここでアルキルは同じかまたは異なる)、フェニル、ベンジル、OH、=O、SH、=S、=N-OH、F、Cl、Br、Iを含む群から独立して選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、置換されていなくてもよく;
R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、C1~C10アルキル、C6~C12アリール、C6~C12-アリール-C1~C2-アルキル、C5~C12ヘテロアリール、C3~C8シクロアルキルを含む群から選択され、ここで、R1、R2、R3のそれぞれは、任意で、(および他から独立して)、C1~C4アルキル;C1~C4アルコキシ;C1~C4アルキルチオ;N(HまたはC1~C4アルキル)2(ここでアルキルは同じかまたは異なる);OH;=O;SH;=S;=N-OH;F;Cl;Br;Iを含む群から独立して選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよく;
R4、R5およびR6のそれぞれは、CHおよびNから選択され、R4、R5、およびR6のうち少なくとも2つは、Nであり;
X-は、薬学的に許容可能なアニオンであり;
Yは、独立して、OH、SH、NH2、F、Cl、Br、IおよびHを含む群から選択されるそれぞれの事象である。
【0012】
式Iの定義は、任意の、塩、溶媒和物、異性体および異性体の混合物を含むことを意図する。
【0013】
X-は、典型的には、無機酸または有機酸のアニオンから選択され、特に、Cl-、Br-、I-、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホナート、安息香酸塩、ベシレート、重酒石酸塩、カンシラート、クエン酸塩、デカン酸塩、エデト酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘキサノエート、ヒドロキシナフトエート、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオネート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデレート、メシレート、メチル硫酸塩、ムケート(mucate)、ナプシラート、オクタノエート、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモエート, パントテン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、テオクラート、トシラートが適しているが、任意の薬学的に許容可能な酸のアニオンが使用され得る。
【0014】
好ましい実施形態において、R6はNであり、R4およびR5のうち少なくとも1つもまた、Nである。
【0015】
好ましい実施形態において、Zは、アルキレン:1個の炭素原子が5員または6員の、芳香環またはヘテロ原子O、Sおよび/またはNを含むヘテロ芳香環、によって置き換えられているアルキレン;1個の炭素原子が、フェニレン、トリアゾリレンまたはピリジレンによって置き換えられているアルキレン;1個の炭素原子が、NHによって置き換えられているアルキレン;1個の炭素原子が、フェニレン、トリアゾリレンまたはピリジレンによって置き換えられ、1個の炭素原子が、NHによって置き換えられ、かつ1個の炭素原子が、=Oによって置換されている、従って好ましくは-(ヘテロ)アリール-C(=O)-NH-構造を形成しているアルキレン、から選択される。この好ましい実施形態において、Zは、任意でさらに置換されていてもよい。
【0016】
好ましい実施形態において、YはH、OH、FまたはSHである。最も好ましくは、YはOHである。
【0017】
さらに、本発明は、医薬品として使用するための、特に、癌の治療に使用するための、化合物を提供する。癌とは、例えば、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、GIT癌、肝臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、中皮腫、肺癌および白血病を含み得る。
【0018】
本発明の化合物は、いくつかの独立したメカニズムによって作用する。これにより、化合物が、耐性を示す癌を含む多様なタイプの癌の治療に適するようになる。式Iの化合物の作用のメカニズムは、抗増殖活性、アポトーシス誘導(または細胞死誘導)活性、金属キレート活性、特に鉄キレート活性、および抗遊走活性を含む。これらの活性は、悪性細胞に対して選択性を有する。耐性を示す癌は、典型的には、特定の作用のメカニズムを介して作用する医薬品に対して耐性を示す。複数の作用の様式を有する本発明の化合物は、癌細胞が敏感に反応する異なる作用の様式を介して作用することで、これらの耐性を克服し得る。
【0019】
構造上部分的に類似する物質である、deferasiroxと比較して、本発明の代表的な化合物は、deferasiroxのIC50よりも3~4桁小さい、悪性細胞に対するIC50を示す。構造上類似する化合物である、タモキシフェンのトリフェニルホスホニウムデシル誘導体(mitoTAX、WO2014/173374)と比較して、本発明の代表的な化合物は、mitoTAXの悪性細胞に対するIC50よりも1~2桁小さい、悪性細胞に対するIC50を示す。
【0020】
本発明の目的はまた、少なくとも1つの一般式Iの化合物と、担体、溶媒、フィラー、バインダ、崩壊剤、被覆剤、グリダント(glidant)、潤滑剤、防腐剤、香料、着色料等の少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む薬学的組成物である。
【0021】
さらに、本発明は、少なくとも1つの式Iの化合物と、金属と、を含む薬学的に許容可能な組成物を含む。前記金属は、好ましくは、遷移金属(周期表のB族、ランタニド、アクチニド)並びに周期表のIIIAおよびIVA族の金属から選択される。前記金属は、放射性核種または例えば放射線療法、バイオセンシング、バイオイメージング、薬物送達、遺伝子送達、光線力学療法のための、診断用薬剤または治療用薬剤としての使用に適した金属(特に、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、鉄、ガリウム、銅等の金属)であり得る。製剤中に存在する金属の総量の少なくとも一部分と、式Iの化合物の総量の少なくとも一部分とが、キレート錯体を形成し得る。
【0022】
よって、本発明の目的は、医薬品としての使用、特に癌の治療方法における使用のための、一般式Iの化合物、または少なくとも1つの式Iの化合物と金属(好ましくはガリウム)とを含む医薬製剤、である。
【0023】
本発明のさらなる目的は、癌の治療のための医薬品を製造するための、一般式Iの化合物の使用、または少なくとも1つの式Iの化合物と金属(好ましくはガリウム)とを含む医薬製剤の使用である。
【0024】
さらに、本発明の目的は、癌を患う対象に1つ以上の一般式Iの化合物を投与する、ヒトを含む哺乳類の治療方法である。
【0025】
本発明の目的はまた、診断に使用される造影剤として使用するための、特に、癌をインビボで視覚化する方法において使用するための、少なくとも1つの式Iの化合物と金属(好ましくはガリウム)とを含む、薬学的組成物である。このような製剤は、例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)によって視覚化され得る。
【0026】
〔本発明を実施するための実施例〕
[実施例1]
=(10-(4-(3,5-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ベンズアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムクロライド(化合物1)=
ジメチルホルムアミド(DMF)(3ml)中で、Deferasirox(114mg、0.31mmol)を、10-アミノデシルホスホニウムクロライドハイドロクロライド(150mg、0.31mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドハイドロクロライド(EDC)(88mg、0.46mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.32ml、1.86mmol)と溶解させ、反応物を72時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、混合物をメタノール(MeOH)中に溶解し、クエン酸(5%)、ブラインおよびジクロロメタン(DCM)を用いて抽出した。カラムクロマトグラフィ(2%MeOH/CHCl3)によって、淡黄色の発泡体として、2つの回転異性体として単離された式1の純粋な生成物を得た(25mg、10%)。
【0027】
【0028】
1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 10.96 (bs, OH, 1H), 10.16 (bs, OH, 1H), 8.40 (bs, NH, 1H), 8.12 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 7.79 - 7.68 (m, 6H), 7.65 (s, 7H), 7.42 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.33 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.25 (dd, J = 26.3, 7.7 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.00 (m, 2H), 6.74 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 3.46 (m, 4H), 1.79 - 1.48 (m, 6H), 1.26 (m, 10H)。
13C NMR (126 MHz, クロロホルム-d) δ 166.48, 159.61, 157.18, 156.65, 152.14, 139.81, 135.84, 135.10, 133.52 (d, J = 9.9 Hz), 132.60, 131.39, 130.52 (d, J = 12.4 Hz), 129.14, 128.79, 127.31, 124.61, 119.65, 19.24, 118.15 (d, J = 85.74 Hz), 117.95, 117.05, 113.65, 111.91, 40.17, 30.19, 30.06, 29.69, 29.00, 28.59, 28.50, 28.46, 26.61, 22.83, 22.51, 22.47。
C49H50O3N4P+についてのHRMS:計算値773.36150、実測値773.36128。
【0029】
[実施例2]
=(10-(3,5-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロマイド(化合物2)=
(10-ブロモデシル)トリフェニルホスホニウムブロマイド(750mg、1.334mmol)を、ヒドラジン(6ml)と共に、2時間加熱した。反応混合物を、実験室の温度まで冷却し、H2O(50ml)で希釈し、DCMで2回抽出し、MgSO4上で乾燥した。粗物質を、濃縮し、真空下で乾燥し、エタノール(6ml)で希釈した。2-(2-ヒドロキシフェニル)-4H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-4-オン(377mg、1.576mmol)を添加し、反応混合物を1.5時間還流した。反応混合物を真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(トルエン:メタノール、勾配100:5~100:15)によって精製して、淡黄色の発泡体として、式2の生成物を得た(330mg、30%)。
【0030】
【0031】
1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 10.55 (s, 1H), 8.06 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.83 - 7.70 (m, 9H), 7.65 (td, J = 8.0, 3.4 Hz, 6H), 7.48 - 7.43 (m, 2H), 7.35 (ddd, J = 8.5, 7.2, 1.6 Hz, 1H), 7.31 - 7.25 (m, 2H), 7.22 - 7.16 (m, 1H), 6.99 (ddd, J = 7.3, 6.5, 1.0 Hz, 2H), 6.95 (td, J = 7.5, 1.1 Hz, 1H), 4.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.64 (td, J = 12.6, 5.1 Hz, 2H), 1.96 (p, J = 7.5 Hz, 2H), 1.61 - 1.50 (m, 4H), 1.35 - 1.28 (m, 2H), 1.28 - 1.10 (m, 8H)。
13C NMR (151 MHz, クロロホルム-d) δ 159.10, 156.71, 156.55, 152.15, 134.96 (d, J = 3.0 Hz), 133.58 (d, J = 10.7 Hz), 132.20, 130.85, 130.43 (d, J = 12.5 Hz), 128.23, 126.93, 119.48, 119.40, 118.27 (d, J = 85.8 Hz), 117.97, 116.90, 114.28, 112.61, 50.23, 30.12 (d, J = 15.8 Hz), 29.28, 28.73 (オーバーラップ), 28.68 (d, J = 1.1 Hz), 26.18, 22.80, 22.51, 22.48 (オーバーラップ), 22.47。
C42H45O2N3P+についてのHRMS:計算値654.32439、実測値654.32443。
【0032】
[実施例3]
=2,2’-(1-(9-ヒドロキシノニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3,5-ジイル)ジフェノール(化合物3)=
10-ブロモー1-ノナノール(117mg、0.524mmol)を、ヒドラジン(2ml)と混合し、80℃で2時間、勢いよく撹拌した。反応物を、実験室の温度まで冷却し、水(20ml)を加えた。混合物を、DCM(15ml)で3回抽出した。粗物質を、真空下で濃縮し、エタノール(4ml)で希釈して、2-(2-ヒドロキシフェニル)-4H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-4-オン(187mg、0.782mmol)を加えた。反応混合物を、80℃で3時間加熱した。粗生成物を、真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(クロロホルム:メタノール、勾配100:0~100:1)によって精製して、淡黄色の発泡体として、式3の生成物を得た(70mg、24%)。
【0033】
【0034】
1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 11.18 (s, 1H), 9.89 (s, 1H), 8.10 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.57 (dd, J = 7.9, 1.6 Hz, 1H), 7.46 (ddd, J = 8.3, 7.3, 1.6 Hz, 1H), 7.37 (ddd, J = 8.3, 7.2, 1.7 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H), 7.09 (dd, J = 8.3, 1.1 Hz, 1H), 7.04 (qd, J = 7.9, 1.1 Hz, 2H), 4.47 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.66 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.11 - 1.99 (m, 2H), 1.61 - 1.54 (m, 2H), 1.47 - 1.41 (m, 2H), 1.40 - 1.28 (m, 8H)。
13C NMR (151 MHz, クロロホルム-d) δ 158.47, 157.54, 156.30, 151.80, 132.53, 131.33, 127.29, 126.67, 119.76, 119.46, 118.33, 116.94, 113.72, 110.93, 62.97, 50.81, 32.65, 29.51, 29.24, 29.16, 28.87, 26.38, 25.60。
C23H30O3N3+についてのHRMS:計算値396.22817、実測値396.22771。
【0035】
[実施例4]
=(10-(3,5-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)デシル)トリシクロヘキシルホスホニウムブロマイド=
化合物3(40mg、0.101mmol)をDCM(1ml)中に溶解し、0~4℃まで冷却して、トリフェニルホスフィンジブロマイド(171mg、0.404mmol)を一度に加えた。反応混合物を実験室の温度まで温め、DIPEA(0.2ml)を加えた。混合物を、室温で一晩撹拌した。反応物を、H2O(0.2ml)でクエンチし、DMF(2ml)を加えた。H2OおよびDIPEAを、真空下で部分的に除去し、トリシクロヘキシルホスフィン(1g、3.566mmol)を加えた。反応混合物を、真空下、90℃で1時間加熱し、次いで不活性雰囲気下で、一晩加熱し続けた。反応混合物を、実験室の温度まで冷却し、冷却した混合物を、低温(4℃)のジエチルエーテル(200ml)に滴下して加えた。白色の沈殿物が形成された。溶媒をデカントし、粗生成物をカラムクロマトグラフィで精製して、式4の生成物を得た(30mg、40%)。
【0036】
【0037】
1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 10.80 (s, 1H), 8.09 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.58 - 7.52 (m, 1H), 7.44 (dd, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.42 - 7.32 (m, 2H), 7.30 (ddd, J = 8.7, 7.2, 1.7 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 8.3, 1.1 Hz, 1H), 7.00 - 6.97 (m, 1H), 6.96 (dd, J = 7.5, 1.1 Hz, 1H), 4.26 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.55 - 2.44 (m, 3H), 2.39 (dt, J = 19.3, 6.4 Hz, 2H), 2.02 - 1.90 (m, 8H), 1.90 - 1.83 (m, 6H), 1.81 - 1.69 (m, 4H), 1.57 - 1.16 (m, 27H)。
13C NMR (151 MHz, クロロホルム-d) δ 159.32, 156.63, 156.55, 152.31, 132.12, 130.78, 128.52, 126.82, 119.46, 119.34, 117.85, 116.91, 114.37, 113.01, 49.96, 30.68 (d, J = 13.8 Hz), 29.90 (d, J = 40.4 Hz), 29.07, 28.36 (d, J = 17.2 Hz), 27.95, 27.17, 27.14, 26.50, 26.42, 25.76, 25.40, 22.50 (d, J = 5.4 Hz), 15.73 (d, J = 42.6 Hz)。
C41H61O2N3P+についてのHRMS:計算値658.44959、実測値658.44945。
【0038】
[実施例5]
=4-(2-(tert-ブトキシカルボニル)ヒドラジンイル)安息香酸(化合物5)=
4-ヒドラジノ安息香酸(4-hydrazinobenzoic acid)(500mg、3.286mmol)およびBoc無水物(720mg、3.299mmol、Boc=ジ(tert-ブチル)ジカーボネート)を、DMF(4ml)中に溶解し、DIPEA(1ml)を加えて、反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物を、濃縮し、真空下で乾燥した。粗物質を、カラムクロマトグラフィ(クロロホルム:メタノール、100:10)上で精製して、黄色みがかった発泡体の状態の式5の生成物を得た(690mg、79%)。
【0039】
【0040】
1H NMR (600 MHz, メタノール-d4) δ 7.88 - 7.76 (m, 2H), 6.78 - 6.65 (m, 2H), 1.46 (s, 6H)。
13C NMR (151 MHz, メタノール-d4) δ 170.37, 158.67, 154.93, 132.45, 121.78, 112.01, 81.54, 28.63。
C12H17O4N2+についてのHRMS:計算値253.11828、実測値253.11779。
【0041】
[実施例6]
=(10-アンモニオデシル)トリフェニルホスホニウムクロライドハイドロクロライド(化合物6)=
(10-ブロモデシル)トリフェニルホスホニウムブロマイド(9.26g、16.448mmol)を、メタノール中の7Mのアンモニア溶液(60ml)中に溶解し、反応混合物を50℃で撹拌した。6時間後、メタノール中のアンモニア(40ml)をさらに加えて、反応混合物を、50℃でさらに24時間加熱した。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物をシリカゲル(200ml)カラムクロマトグラフィ(クロロホルム/メタノール メタノールの勾配0~10%)を用いて精製した。生成物をHCl(36%、5ml)で酸性化し、クロライド形態のDowex 1×8(50g)を介して濾過して、所望の式6の(10-アミノデシル)トリフェニルホスホニウムクロライドハイドロクロライドを得た(5.135g、63%)。
【0042】
【0043】
1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ 7.92 - 7.85 (m, 3H), 7.85 - 7.68 (m, 12H), 3.46 - 3.37 (m, 2H), 2.90 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.72 - 1.60 (m, 4H), 1.56 (p, J = 7.5 Hz, 2H), 1.43 -1.20 (m, 12H)
13C NMR (126 MHz, メタノール-d4) δ 136.23 (d, J = 3.0 Hz), 134.79 (d, J = 9.9 Hz), 131.51 (d, J = 12.5 Hz), 120.00 (d, J = 86.3 Hz), 40.76, 31.59 (d, J = 16.2 5 Hz), 30.29 (2C), 30.12, 29.89, 28.53, 27.42, 23.57 (d, J = 4.4 Hz), 22.68 (d, J = 51.1 Hz)。
IR (KBrペレット): ν = 3051, 3007, 2927, 2854, 2006, 1825, 1601, 1587, 1485, 1465, 1438,
1402, 1337, 1318, 1189, 1161, 1113, 996, 751, 723, 691。
C28H37NP+についてのHRMS:計算値418.26581、実測値418.26567。
【0044】
[実施例7]
=(10-(2,4-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)デシル)トリフェニルホスホニウムクロライド(化合物7)=
化合物5(100mg、0.397mmol)、化合物6(389mg、0.793mmol)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)(255mg、0.794mmol)およびトリエチルアミン(Et3N)(0.55ml、3.9mmol)を、DMF(1ml)中に溶解し、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物を、氷冷したジエチルエーテル(Et2O)(50ml)に滴下して加え、氷浴中で撹拌すると、フラスコの壁上に油状の沈殿物が形成された。溶媒をデカントし、沈殿物をメタノール(3mL)中に溶解させ、NH4Clの半飽和溶液(10mL)で希釈した。得られた乳白色の溶液を、DCM(3×15mL)抽出した。複合有機層をMgSO4上で乾燥し、真空下で濃縮した。同一の抽出手順(3mLのメタノール、10mL NH4Cl、3×15mL DCM)を2回以上繰り返した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(クロロホルム/メタノール メタノールの勾配0~10%)によって精製して、黄色みがかった発泡体として、式7の生成物を得た(170mg、62%)。
【0045】
【0046】
1H NMR (600 MHz, メタノール-d4) δ 7.93 - 7.74 (m, 15H), 7.69 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.81 - 6.75 (m, 2H), 3.44 - 3.37 (m, 2H), 1.67 (h, J = 8.2 Hz, 2H), 1.59 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.55 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.51 (s, 6H), 1.33 (d, J = 24.7 Hz, 12H)。
13C NMR (151 MHz, メタノール-d4) δ 168.69, 157.33, 152.31, 134.85, 133.39 (d, J = 10.0 Hz), 130.09 (d, J = 12.6 Hz), 128.20, 124.42, 118.88, 118.31, 110.92, 39.39, 30.11 (d, J = 16.1 Hz), 29.14, 28.93, 28.81 (d, J = 7.1 Hz), 28.34, 27.23, 26.54, 22.13 - 21.97 (m), 21.32, 20.99。
C40H51O3N3P+についてのHRMS:計算値652.36626、実測値652.36596。
【0047】
[実施例8]
=2-(3,5-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)安息香酸(化合物8)=
2-ヒドラジノ安息香酸ハイドロクロライド(200mg、1.060mmol)および2-(2-ヒドロキシフェニル)-4H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-4-オン(231mg、0.966mmol)を、EtOH(10ml)中に溶解し、反応混合物を70℃で加熱した。Et3N(0.28ml、2.001mmol)を滴下して加えた。反応混合物を、4時間撹拌して、次いで水(5ml)を加えた。EtOHを蒸発させ、6MのHCl(3ml)を加えた。粗生成物が、淡黄色の固体として沈殿した。シリカゲル(30ml)カラムクロマトグラフィ(クロロホルム/メタノール、メタノールの勾配0~5%)を用いて、淡黄色の発泡体として、式8の純粋な生成物を得た(333mg、92%)。
【0048】
【0049】
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 8.00 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 7.7, 1.6 Hz, 1H), 7.73 (td, J = 7.7, 1.6 Hz, 1H), 7.66 - 7.60 (m, 2H), 7.36 (ddd, J = 8.3, 7.2, 1.7 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 8.3, 7.3, 1.8 Hz, 1H), 7.20 (dd, J = 7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 8.3, 1.1 Hz, 1H), 6.99 (td, J = 7.5, 1.2 Hz, 1H), 6.87 (dd, J = 8.3, 1.0 Hz, 1H), 6.82 (td, J = 7.6, 1.1 Hz, 1H)。
13C NMR (151 MHz, DMSO-d6) δ 166.28, 159.63, 156.72, 156.20, 153.33, 136.99, 132.57, 131.63, 131.04 (d, J = 23.5 Hz), 130.46, 128.77, 127.10, 120.03, 119.40, 117.41, 116.71, 114.37, 113.95。
C21H16O4N3+についてのHRMS:計算値374.11353、実測値374.11324。
【0050】
[実施例9]
=(10-(2-(3,5-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ベンズアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムクロライド(化合物9)=
化合物8(120mg、0.322mmol)、化合物6(320mg、0.642mmol)、EDC(123mg、0.642mmol)およびEt3N(0.22ml、1.6mmol)を、DMF(5ml)中に溶解し、反応物を2時間撹拌した。反応混合物を氷冷したEt2O(150mL)中に滴下して加えることで、粗生成物が沈殿した。粗生成物を、MeOH(3mL)およびクエン酸(5%、3mL)および半飽和NH4Cl水溶液(10mL)中で溶解し、DCM(3×30mL)で抽出した。カラムクロマトグラフィ(トルエン/メタノール、勾配100:5~100:20)によって、淡黄色の発泡体として、式9の純粋な生成物を得た(34mg、13%)。
【0051】
【0052】
1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 10.55 (s, 1H), 8.14 (dd, J = 7.8, 1.7 Hz, 1H), 7.80 (ddd, J = 19.6, 14.1, 8.1 Hz, 9H), 7.69 (td, J = 7.7, 3.3 Hz, 6H), 7.53 - 7.48 (m, 1H), 7.46 - 7.29 (m, 7H), 7.24 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.19 - 7.11 (m, 1H), 7.09 (dd, J = 7.9, 1.1 Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 8.2, 1.1 Hz, 1H), 6.94 (ddd, J = 8.1, 7.3, 1.1 Hz, 1H), 6.81 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 3.60 (m, 2H), 3.19 (q, J = 6.6 Hz, 2H), 1.90 - 1.61 (m, 2H), 1.60 - 1.48 (m, 2H), 1.46 - 1.06 (m, 12H)。
13C NMR (151 MHz, クロロホルム-d) δ 166.54, 160.31 , 156.76 , 156.47 , 153.04 , 135.03 (d, J = 2.9 Hz), 134.96 , 134.22 , 133.51 (d, J = 9.9 Hz), 132.01 , 131.06 , 130.43 (d, J = 12.5 Hz), 128.96 , 128.56 , 127.36 , 126.26 , 119.43 , 119.11 , 118.30 (d, J = 85.8 Hz), 117.69 , 116.94 , 113.88 , 112.87 , 39.77 , 29.69 , 29.52 (d, J = 16.0 Hz), 28.33 , 28.04 , 28.03 , 27.92 , 27.66 , 25.93 , 22.15 (d, J = 33.7 Hz)。
C49H50O3N4P+についてのHRMS:計算値773.36150、実測値773.36134。
【0053】
[実施例10]
=(10-(2,4-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-イミダゾール-1-イル)デシル)トリフェニルホスホニウムクロライド(化合物10)=
2-ブロモ-2’-ヒドロキシアセトフェノン(108mg、0.5mmol)のDMF溶液(2mL)に、化合物6(138mg、0.303mmol)を一度に加えた。混合物を、90℃で3時間加熱した。次いで、サリチルアルデヒド(122mg、1.0mmol)および酢酸アンモニウム(77mg、1.0mol)を加えた。混合物を、一晩、(90℃)で加熱した。TLC分析(CHCl3/MeOH/CH3COOH 100:10:1)は、複合反応混合物の形成を示した。ここでは、5%のFeCl3溶液によって、生成物を視覚化することができる。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、ジエチルエーテル(20mL)で希釈した。反応槽の璧上に、褐色の沈殿物が形成された。溶媒をデカントし、沈殿物を、メタノール(3ml)中に溶解した。粗生成物のメタノール溶液に、塩化アンモニウムの半飽和溶液(15ml)を添加すると、乳白色のエマルジョンが形成された。エマルジョンを、ジクロロメタン(3×50ml)によって抽出し、複合有機層を、MgSO4上で乾燥した。次いで、有機層を真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(10mlのシリカ、トルエン/メタノール100:5~100:20)に供した。黄色の油の形態の式10の生成物の複合画分を得た(23mg、11%)。
【0054】
【0055】
1H NMR (600 MHz, クロロホルム-d) δ 11.67 (s, 1H), 8.12 (dd, J = 7.7, 1.6 Hz, 1H), 7.83 - 7.70 (m, 10H), 7.55 (td, J = 8.2, 3.6 Hz, 6H), 7.54 - 7.39 (m, 2H), 7.30 (ddd, J = 8.4, 7.3, 1.8 Hz, 1H), 7.30 - 7.20 (m, 2H), 7.20 - 7.16 (m, 1H), 6.83 (ddd, J = 7.1, 6.4, ≒1.0 Hz, 2H), 6.85 (td, J = 7.4, ≒1.1 Hz, 1H), 4.15 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.60 (td, J = 11.9, 5.5 Hz, 2H), 1.99 (p, J = 7.5 Hz, 2H), 1.65 - 1.45 (m, 4H), 1.38 - 1.27 (m, 2H), 1.25 - 1.10 (m, 8H)。
13C NMR (151 MHz, クロロホルム-d) δ 157.20, 154.88, 153.75, 142.61, 135.72 (d, J = 3.1 Hz), 132.33 (d, J = 11.5 Hz), 133.54, 131.62, 129.12 (d, J = 12.5 Hz), 127.47, 126.8, 119.48, 117.40, 117.16 (d, J = 87.1 Hz), 116.90, 116.22, 114.28, 113.66, 48.49, 30.69 (d, J = 16.3 Hz), オーバーラップ (28.12, 28.11, 28.05), 26.00, 23.00, 22.38, 22.28 (オーバーラップ), 21.12。
【0056】
[実施例11]
=(10-(4-(3,5-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)ベンズアミド)デシル)トリフェニルホスホニウム(化合物1)=
化合物6(50mg、0.073mmol)を、乾燥DCM(1ml)中に溶解し、TFA(1ml)を滴下して加えた。反応混合物を2.5時間撹拌し、次いで、溶媒を蒸発させて、残渣を、エタノール(2ml)中に溶解した。反応混合物に、2-(2-ヒドロキシフェニル)-4H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン-4-オン(35mg、0.146mmol)をゆっくりと加え、Et3N(0.02ml、0.15mmol)を滴下して加えた。反応混合物を70℃に加熱し、2時間撹拌した。溶媒を蒸発させた。混合物を、MeOH中に溶解し、NH4Cl飽和水およびDCMで3回抽出した。シリカゲル(12ml)カラムクロマトグラフィ(トルエン/メタノール、メタノールの勾配0~10%)によって、淡黄色の発泡体として、純粋な生成物を得た(34mg、57%)。
【0057】
【0058】
[実施例12]
化合物1および比較用化合物deferasirox(DFX)の、エストロゲン依存性乳癌を代表する悪性乳癌MCF7細胞を殺傷する/増殖を抑制する効力について試験した。簡潔には、ある日、96ウェルプレート中、ウェルあたり10.000個の細胞を播種し、翌日、試験される化合物を添加して、48時間、細胞と共にインキュベートした。次いで、細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.05%クリスタルバイオレットで染色し、PBSで洗浄し、1%SDS中に可溶化させた。次いで、プレートの595nmでの吸光度を測定し、生存細胞数を定量化した。結果は、化合物1が、deferasiroxと比較して非常に効果的であり、化合物1が、10μMのdeferasiroxと比較して8nMと低い濃度で、増殖を50%に抑制する細胞静止作用(IC50)を示したこと、従って4桁小さい濃度で同じ効果を示すこと、を示している。比較を、表1に示す。
【0059】
【0060】
[実施例13]
化合物1および比較用化合物deferasiroxの、治療が困難であるトリプルネガティブ(triple negative)乳癌を代表する悪性MDA-MB-231癌細胞を殺傷する/悪性MDA-MB-231癌細胞の増殖を抑制する効力について試験した。手順は、実施例12の手順と同一である。結果は、化合物1が、deferasiroxと比較して非常に効果的であり、化合物1が、deferasiroxの70μMと比較して、131nMのIC50値を示したこと、従って、ほぼ3桁異なること、を示している。比較を、表2に示す。
【0061】
【0062】
[実施例14]
化合物1、2および比較用化合物deferasiroxの、乳、膵臓および卵巣由来のいくつかの悪性細胞株(MCF7、MDA-MB-231、BxPC3およびOVCAR3)の増殖を抑制する/殺傷する効力について試験した。手順は、実施例12の手順と同一である。表3に実証されるように、結果は、選択性が有意に向上したことを示す。
【0063】
【0064】
実施例12で行われた、DFXまたは化合物1または化合物2で処理された細胞のクリスタルバイオレット染色(抗増殖効果および細胞死誘導効果が組み合わされた測定)を描写する表3に実証されるように、化合物1は、試験される全ての癌細胞の成長を抑制する能力を示した。重要なことには、新規で合成された化合物1のインビトロでのIC50値は、親DFXと比較してほぼ3桁小さく、他のミトコンドリア標的キレート剤よりも1~2桁小さい。これは、化合物1が、高い活性を有する化合物であり(表1、2)、他のミトコンドリア標的誘導体(例えば、mitoTAX、WO2014/173374)においてみられるような、DFXのミトコンドリア標的化が親薬物の効果を2桁高めることに基づいて予測され得る効果と比較して、高い効力を達成することを示唆する。さらに、化合物2は、100nMの範囲内でIC50値を示す。これは、化合物1よりも高いが、依然として非常に有力である。
【0065】
[実施例15]
上記の表からわかるように、化合物1は、10~100nMの範囲内で、癌細胞株に対して非常に高い効力を示す。この効果は、主に化合物1の細胞静止作用に基づくと考えられる。細胞を殺傷する能力を定義するために、DFXおよび化合物1の細胞死誘導効能(細胞傷害効力)を、アポトーシス/壊死の細胞死の指標として一般的に使用されるV/PI染色によって試験した。簡潔には、12ウェルプレート中に、細胞を、ウェルあたり100,000個で播種し、選択された化合物と共に、48時間インキュベートした。次いで、浮遊細胞をスピンし、接着細胞をトリプシン処理して同様にスピンし、その後、アネキシンV-FITCおよびPIプローブで染色した。次いで、細胞を、PBSで洗浄し、蛍光活性化ソーターによって測定した。アネキシンVおよび/またはPI陽性を示す細胞は、死細胞と考える。表4に示されるように、化合物1は、全ての悪性乳癌細胞において、DFXと比較して著しく高い、細胞死を誘導する能力を示す。重要なことには、非悪性HFP1細胞が、化合物1の効果に対して有意に敏感に反応せず、5μMよりも高い濃度でのみ、試験された癌細胞の全てにおいて死細胞の深刻な割合を示す傷害効果を検知することができた(表4)。
【0066】
本発明の化合物の生物学的効果について試験し、公知の化合物-deferasiroxと比較した。本発明の最も活性を有する化合物は、deferasiroxの効果よりもほぼ3桁大きい効果で癌細胞を殺した。これは、前例がなく、極めて予測できない。化合物2は、100nMの範囲内でIC50値を示し、優位により高い細胞傷害活性を示し、これは、類似の化学基の他の化合物が類似の効果を示すことを示唆しており、本発明は、deferasirox誘導体のみに制限されない。
【0067】
本発明の化合物が非悪性細胞に対して低い傷害効果を示し、かつインビボにおいて大いに許容されるために、癌細胞を殺傷することにおいてより選択性を有することは、重要な発見である。
【0068】
【0069】
[実施例16]
化合物1の癌細胞の増殖を抑制する能力を、細胞分析器Juli FLを用いたリアルタイムモニタリングによる異なるアプローチによって試験した。簡潔には、6ウェルプレート中に、MCF7細胞を播種し、翌日に約5%の集団に到達した。翌日、約5%の集密を有する特定の領域に器具のカメラの焦点を合わせ、細胞を連続してモニタリングし、48時間、30分ごとに集団および外観を記録した。次いで、実験の終点の単純な集団、または定められた期間の集団を代表する株のスロープ(slope)の値を表した(表5)。収集されたデータから、化合物1が30nMの濃度で細胞増殖を有意に阻害することがわかることは明らかである。
【0070】
【0071】
[実施例17]
Seahorse器具を使用したOCR測定によって実証されるように、化合物1の適用は、細胞呼吸の著しい阻害をもたらす(表6)。Seahorse分析について、96ウェルプレート中に20.000個の細胞を播種し、化合物1を測定前に直ちに加えるか(添加、表6)、または化合物1と共に1時間インキュベートした(プレインキュベート、表7)。その後、Seahorse XFe96 analyzer(Agilent)を用いて、3分間の混合の後、3分間を、3サイクルで、混合酸素消費速度(OCR)を測定した。結果は、3サイクルの平均値を表す。データは、両方の条件で、OCRが有意に抑制されることを示す。
【0072】
【0073】
【0074】
[実施例18]
主にミトコンドリアのスーパーオキシドを測定し、結合すると蛍光を発する、特定のミトコンドリア標的プローブmitoSOX(ThermoFisher Scientific)を用いて、MCF7細胞およびMDA-MB-231細胞におけるミトコンドリアの活性酸素種(ROS)の生成に対する化合物1の効果を評価した。化合物1を用いて、記載された時間処理された細胞を、プローブで染色し、次いでフローサイトメトリーを介して分析した。データは、化合物1がミトコンドリアのROSを誘導することができることを示す。
【0075】
【0076】
[実施例19]
化合物1は、鉄キレート剤であるため、化合物1と鉄とを2:1の比率でプレローディングし、次いで化合物1を細胞に適用する効果を、適用後に実施例4と同様にアネキシンV/PI染色を用いて測定することによって評価した。このような前処理は、このキレート剤によって細胞死の拡大を目に見えて低減し、このことは、鉄キレート特性が細胞死の誘導における鉄キレート剤の作用に対して部分的に責任を担っているが、おそらく他のメカニズムも同様に細胞死誘導効果に関与していることを確証する(表9)。
【0077】
【0078】
[実施例20]
化合物1が耐性を有する癌細胞に対して活性があるかを試験するために、タモキシフェン耐性MCF7、T47Dを使用した。実施例12と同様に行ったクリスタルバイオレットアッセイで、IC50値を再び測定した。細胞静止作用および細胞傷害効果を誘導する化合物1の能力において、タモキシフェンに感受性の親細胞とタモキシフェンの存在下においても成長する耐性を有する細胞との間で、有意な差異がある上に(表11)、IC50値は、依然としてnMの範囲内であって、このことは、化合物1が非常に効果的であることを実証した。この観察は、MBA-MB-231等のトリプルネガティブ(triple negative)乳癌細胞株においても化合物1が効果的であることを示すデータと併せると、化合物1が治療困難な特殊型の癌においても活性を有することを示す。
【0079】
【0080】
[実施例21]
他の耐性癌細胞タイプの生存率および増殖に対する化合物1の効果を試験するために、インビトロで培養可能な癌幹細胞様細胞、いわゆるマンモスフィア(mammosphere)のモデルを使用した。当該細胞は、3Dの微小腫瘍(microtumor)として成長し、多くの公知の化学療法用薬物に耐性を示す。このアッセイにおいて、MCF7スフィア(sphere)を単一の細胞/小スフィアに解離し、Mammocult培地(幹細胞技術)中で接着しない特別な細胞培養プラスチック上に、ウェルあたり10,000個の細胞を播種し、化合物1および化合物2を1μMで加えた。これは、細胞傷害性を示さない濃度を代表する。細胞を静置して、140時間、成長させてスフィアを生成させた。次いで、Cell TiterGlo 3D試薬(Promega)によって、細胞量を測定した。Cell TiterGlo 3D試薬は、3D培養細胞の細胞計数を、化学発光アッセイによって決定される3D培養細胞のATP含有量の関数として決定する。明らかに、両方の化合物は、腫瘍スフィアの形成および成長を阻害する能力を有しており、これらの化合物は癌幹細胞様細胞に対して活性を有することが示唆される。
【0081】
【0082】
[実施例22]
細胞レベルに対する効果を定義するために、薬物が細胞傷害性を示さない濃度(1μM)での化合物1および化合物2の細胞周期に対する効果を詳細に調べた。細胞を、化合物と共に24時間および48時間培養し、次いでDNAと結合するVybrant DyeCycle VioletReady Flow試薬(ThermoFisher Scientific)で染色し、フローサイトメトリーおよびKaluzaプログラムによって分析して、細胞周期のG1、SおよびG2/M相の割合を定義した。細胞周期が後期の時点でより顕著である場合、両方の化合物が、G1相の細胞の蓄積をもたらすことは明白である(表12、13)。これは、化合物が細胞周期に対する有力な阻害物質であることを示し、化合物の細胞静止活性の分子的メカニズムを説明している。
【0083】
【0084】
【0085】
[実施例23]
NOD/SCIDガンママウスに注射されたトリプルネガティブ(triple negative)乳癌細胞(MDA-MB-231)の異種移植片モデルにおいて、インビボでの腫瘍の成長に対する化合物1の効果を評価した。1×106個の細胞を、それぞれのマウスに皮下注射した。腫瘍の体積が約10mm3になった時に、動物を2つの群に無作為に分け、化合物1(コーンオイル中、2mg/kg)またはビヒクル(コーンオイル中、2.5%DMSO)のいずれかを、21日間、1週間に2回、腹膜内に注射した。Vevo 3100 前臨床撮像システム(VisualSonics)を用いて、超音波によって腫瘍の大きさを決定した。表14に示されるデータは、化合物1が、腫瘍の成長を有意に遅らせることを示す。
【0086】
【0087】
[実施例24]
いくつかの活性種を測定し、酸化すると蛍光を示す細胞浸透性ROSプローブ2’,7’-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCF-DA;Sigma-Aldrich)を用いて、MCF7細胞およびMDA-MB-231細胞における、細胞の活性酸素種(ROS)の生成に対する化合物1の効果を、評価した。化合物1または化合物2(5μM)で、記載された時間処理した細胞を、プローブで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。表15のデータは、化合物1および化合物2が、細胞のROSレベルを有意に高めることを示す。
【0088】
【0089】
[実施例25]
レポータータンパク質KEIMAを用いて、MCF7細胞およびMDA-MB-231細胞における、マイトファジーの誘導に対する化合物1および化合物2の効果を評価した。KEIMAの励起スペクトルは、ミトコンドリアのpHに応じて変化し、pH>6のとき440nmで、pH<5のとき586で励起ピークを有し、第2の励起ピークは、620nmで一定のままである。従って、440nm/586nmの蛍光比率の低下は、ミトコンドリアの酸性化を示す。KEIMAで安定してトランスフェクションされたMCF7細胞およびMDA-MB-231細胞を、化合物1と24時間培養して、両方の励起波長におけるそれらの蛍光を、フローサイトメトリーによって測定した。表16のデータは、化合物1が、マイトファジー誘導の明確なマーカであるミトコンドリアの酸性化を誘導することを示す。
【0090】
【0091】
[実施例26]
化合物1および比較用化合物deferasirox(DFFX)の、いくつかの白血病細胞を殺傷する/いくつかの白血病細胞の増殖を抑制する効力について試験した。簡潔には、ある日、96ウェルプレート中に、ウェルあたり10.000個の細胞を播種し、翌日に、試験される化合物を加えて、細胞と共に48時間インキュベートした。細胞生存率は、プローブalamarBlue(商標)細胞生存率試薬を低減する能力として決定された。結果は、化合物1が、deferasiroxと比較して非常に効果的であり、増殖を50%に抑制する細胞静止作用(IC50)を、deferasiroxの5~80μMと比較して、20~200nMの濃度で示したこと、従って、40~4000倍の少ない濃度で同様の効果を示すこと、を示す。比較を表17に示す。
【0092】
【0093】
[実施例27]
上記の表からわかるように、白血病細胞株に対して、化合物1は、20~200nMの範囲内で非常に高い効力を示す。この効果は、主に、化合物1の細胞静止作用に基づくと考えられる。細胞を殺傷する能力を定義するために、アポトーシス/壊死の細胞死の測定として一般的に使用されるアネキシンV/PI染色によって、DFXおよび化合物1の細胞死誘導効能(細胞傷害性効力)を試験した(実施例15、参照)。表18に示されるように、白血病癌細胞の全てにおいて、化合物1は、DFXと比較して顕著に高い細胞死を誘導する能力を示す。化合物1は、deferasiroxの効果よりもほぼ3桁大きい効果で癌細胞を殺傷した。このような結果は、前例がなく、極めて予測できない。
【0094】