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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】巻き上げ式自動車デッキパネル
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/18 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
B63B25/18 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022519554
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 SE2020050929
(87)【国際公開番号】W WO2021066724
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】1951118-7
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519457649
【氏名又は名称】マクレガー スウェーデン アーベー
【氏名又は名称原語表記】MACGREGOR SWEDEN AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】グスタフ グスタフソン
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-191474(JP,A)
【文献】米国特許第02938638(US,A)
【文献】英国特許出願公開第01556150(GB,A)
【文献】米国特許第02247145(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(1)用のデッキパネル配置(100)であって、前記デッキパネル配置(100)は、
下側位置と上側位置の間で変位するように設けられるデッキパネル(110)と、
ウィンチ配置(120)と、
前記デッキパネル(110)に設けられる複数のデッキパネル側取り付けポイント(130)と、
前記船舶(1)の固定構造体(112)に設けられるように適合される複数の上側取り付けポイント(131)と、
を備え、
前記ウィンチ配置(120)は、
複数のウィンチ拘束具(123)であって、前記ウィンチ拘束具(123)はそれぞれ、前記ウィンチ拘束具(123)を各ドラム(122)に巻き付け及び前記各ドラム(122)から引き出し、それにより前記デッキパネル(110)を前記下側位置と前記上側位置の間で変位させることができるように、前記各ドラム(122)と、1つの割り当てられたデッキパネル側取り付けポイント(130)と1つの割り当てられた上側取り付けポイント(131)の間と、に配置される、前記複数のウィンチ拘束具(123)と、
複数のウィンチ装置(129)であって、前記ウィンチ装置(129)はそれぞれ、駆動ユニット(121)と、前記ドラム(122)と、前記ウィンチ拘束具(123)と、を備え、前記駆動ユニットは、前記各ドラム(122)と駆動接続する、前記複数のウィンチ装置(129)と、
を備える、デッキパネル配置(100)。
【請求項2】
前記ウィンチ拘束具(123)はストラップである、請求項1に記載のデッキパネル配置。
【請求項3】
前記駆動ユニットは電気モータであり、好ましくは同期リラクタンスモータである、請求項1又は2に記載のデッキパネル配置。
【請求項4】
前記電気モータは、マスター/スレーブ形式で制御されるように構成される、請求項3に記載のデッキパネル配置。
【請求項5】
前記ウィンチ配置(120)は、前記デッキパネル(110)の各コーナーに設けられる4つの前記ウィンチ装置(129)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のデッキパネル配置。
【請求項6】
前記取り付けポイント(130、131)のうちの1つがロール(133)であり、前記ウィンチ拘束具は、前記ロール(133)を介して前記取付けポイント(130/131)まで延在し、そして他方の前記取り付けポイント(130/131)に延在して戻る、請求項1~5のいずれか1項に記載のデッキパネル配置。
【請求項7】
前記ウィンチ装置(129)は、前記デッキパネル側取り付けポイント(130)又は前記上側取り付けポイント(131)に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載のデッキパネル配置。
【請求項8】
前記ウィンチ拘束具(123)は平坦なウィンチ拘束具である、請求項1~7のいずれか1項に記載のデッキパネル配置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の複数の前記デッキパネル配置(100)を備える、デッキパネルシステム(200)。
【請求項10】
前記デッキパネル配置(100)は、デッキパネル(110_1~110_4)が同じ高さに持ち上げられたときにデッキ又はデッキの一部のいずれかを形成するように、隣接して配置される、請求項9に記載のデッキパネルシステム(200)。
【請求項11】
前記システム(200)は、複数の前記デッキパネル配置(100)の変位を制御する1つの制御キャビネット(210)を備え、前記制御キャビネット(210)は、どのデッキパネル配置(100、100_1~100_4)を制御するかを選択可能なデッキパネル選択制御ユニット(220)を備える、請求項9又は10に記載のデッキパネルシステム(200)。
【請求項12】
船舶(1)の昇降式デッキパネルを船舶(1)の巻き上げ式デッキパネル配置(100)に改造する方法であって、前記方法は、
・デッキパネル(110)の各コーナーにデッキパネル側取り付けポイント(130)を設けるステップと、
・前記船舶(1)の支持構造体に上側取り付けポイント(131)を固定して設けるステップと、
・前記デッキパネル(110)の2つの対向する縁部に少なくとも2つのウィンチ装置(129)を設けるステップであって、前記ウィンチ装置(129)は、前記デッキパネル(110)と前記船舶(1)の支持構造体のいずれかに割り当てられる、ステップと、
・ウィンチ拘束具(123)を各ドラム(122)に巻き付け及び前記各ドラム122から引き出すことにより、前記デッキパネル(110)を下側位置と上側位置の間で変位可能とするように、前記ウィンチ装置(129)の前記各ドラム(122)と、1つの前記デッキパネル側取り付けポイント(130)及び1つの前記上側取り付けポイント(131)の相互間とに前記ウィンチ拘束具(123)を配置するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
前記方法は、
・前記船舶(1)の支持構造体に制御キャビネット(210)を設けるステップと、
・前記ウィンチ装置(129)を前記制御キャビネット(210)に接続して、前記制御キャビネット(210)により前記ウィンチ装置(129)を電子的に制御可能とするステップと、
をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明は、船舶用の変位可能デッキパネル配置に関し、デッキパネル配置におけるデッキパネルは、下側位置と上側位置の間で変位可能である。さらに、本発明は、デッキパネルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
搭載貨物用の変位可能デッキパネルは、船内の貨物空間において所望の高さで貨物を支持するために使用され、垂直方向に変位可能な複数の貨物用デッキパネルによって形成される。変位可能デッキパネルは所望の位置に変位される。その位置で当該デッキパネルをデッキパネルストッパ上に配置し、かつデッキパネルストッパによって支持することができる。搭載貨物用の変位可能デッキパネルの形式は、主に巻き上げ式デッキパネルと昇降式デッキパネルの二つの形式に分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開第2005-067277号公報
【文献】国際公開第2002-079025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最も単純な変位可能デッキパネルは昇降式デッキパネルであり、これは、デッキパネルを昇降する装置、通常は移動式シザーリフトによって、所望の高さまで変位される。デッキパネルを昇降する装置は、変位可能デッキパネルの下に位置するデッキパネル上で駆動される。昇降式デッキパネルは、単純で費用対効果の高い構造物である。昇降式デッキパネルの例示的な欠点は、デッキパネルの量が多いと再配置するのに非常に時間がかかることであり、また、通常、デッキパネル昇降機は燃焼エンジンによって駆動されるため、貨物空間内で作業する昇降機のオペレータ及び他の人員にとって騒音レベルが高く、全体的に不健康な作業環境をもたらすことである。例示的な昇降式デッキパネルは特許文献1に開示されている。
【0005】
代替的な変位可能デッキパネルタイプ、すなわち巻き上げ式デッキパネルには、デッキパネルを水平に巻き上げることができるようにするために、通常、中央に配置される1つのアクチュエータと、複雑な構造の内部にありデッキパネルの四隅に出るように配置される巻き上げワイヤが設けられている。巻き上げ式デッキパネルの例示的な欠点は、解決策が複雑で、価格が高く、加えて、ワイヤにグリースを塗る必要があることである。ワイヤにグリースを塗ると、自動車等の繊細な貨物にグリースがこぼれた場合について追加の補修費及びリスクを必要とする。例示的な巻き上げ式デッキパネル配置は特許文献2に開示されている。
【0006】
船舶のための柔軟な解決策は、しばしば、固定デッキパネルと組み合わせたいくつかの高さの変位可能デッキパネルに基づく。したがって、船主がとれる選択肢は、製造及び設置の費用対効果が高いが、デッキパネルを変位させる必要があるときには効果がなく、多数のデッキパネルを再配置する必要がある場合には余計に問題となるデッキパネルか、あるいは、より速く再配置できるが、その代わりに高価で、貨物に損傷を引き起こすリスクが高く、またその場合の補修費が高いデッキパネルである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の目的は、上記の問題を少なくとも部分的に克服することである。すなわち、既存の巻き上げ式デッキパネルよりも費用対効果が高く、かつ昇降式デッキパネルよりも効率的な変位可能デッキパネルを提示することである。本開示の別の目的は、費用対効果の高い変位可能デッキパネルシステムを提示することである。本開示の第3の目的は、既存の昇降式デッキパネル配置を、巻き上げ式デッキパネル配置に改良する方法を提示することである。
【0008】
第1の目的は、船舶用のデッキパネル配置によって解決する。このデッキパネル配置は、下側位置と上側位置の間で変位するように設けられるデッキパネルと、ウィンチ配置と、デッキパネルに設けられる複数のデッキパネル側取り付けポイントと、船舶の固定構造体に設けられるように適合される複数の上側取り付けポイントと、を備える。ウィンチ配置は複数のウィンチ装置を備え、各ウィンチ装置は、駆動ユニットと、ドラムと、ウィンチ拘束具と、を備える。各ウィンチ装置には、1つのデッキパネル側取り付けポイントと1つの上側取り付けポイントが割り当てられ、ウィンチ配置は、デッキパネル側取り付けポイントと上側取り付けポイントの一方に取り付けられ、駆動ユニットはドラムに駆動配置される。ウィンチ拘束具は、ドラムと、デッキパネル側取り付けポイント及び上側取り付けポイントの間とに配置され、ウィンチ拘束具をドラムに巻き付け及びドラムから引き出すことによってデッキパネルを下側位置と上側位置の間で変位可能とする。
【0009】
下側位置と上側位置の間で変位可能であることは、ウィンチ配置によって、デッキパネルを下側位置と上側位置の間の任意の位置に変位できることを意味する。さらに、デッキパネルは下側及び上側の休止位置を有することができ、そのため、例えばデッキパネルを上側の休止位置にあるデッキパネルストッパ上に配置するには、デッキパネルを上側の休止位置よりも高い位置に配置し、上側の休止位置にあるストッパまで下降させる必要がある。デッキパネルの上側位置と下側位置の間に、追加の休止地点を設けることができる。従って、下側位置と上側位置の間で変位可能であるということは、単にデッキパネルを垂直方向に変位させることができることを定義しただけであり、特定の上側位置及び下側位置を、デッキパネルを変位させることができる唯一可能な位置として制限するものではない。
【0010】
デッキパネル側取り付けポイントはデッキパネルにある取り付けポイントであり、このポイントでウィンチ拘束具がデッキパネルと相互作用して、デッキパネルの変位中にデッキパネルに対する持ち上げ力を発生させる。
【0011】
上側取り付けポイントは、デッキパネルを持ち上げる持ち上げ力の支持体として機能するために、固定構造体に設けられるように適合される取り付けポイントである。固定構造体は、船舶構造体若しくは船体の一部であり、又はそれらに固定して接続される。
【0012】
開示されるデッキパネル配置の例示的な効果は、ウィンチ装置を、例えば固定構造体上に、デッキパネル上に、又はデッキパネルの中若しくは下にさえ配置できることであり、また、ウィンチ装置はすべての拘束具支持ポイントの割り当てを単純なまま保つことができるという融通性があることである。
【0013】
ウィンチ拘束具の例示的な単純な割り当ては、定められたある平面内で各ウィンチ拘束具が、ドラムと、デッキパネル側取り付けポイントと、上側取り付けポイントと、の相互間で延在することである。取り付けポイントが複数あることで、ウィンチ拘束具の全ての平面は互いに平行に配置され、これにより、デッキパネル上の力配分が単純になる。また、全ての平面がデッキパネルの縁部と平行になるようにウィンチ装置を配置することもできる。
【0014】
ある例示的実施形態は、1つの上側取り付けポイントが、1つの各デッキパネル側取り付けポイントと、デッキパネル平面に垂直方向において実質的に位置合わせするように配置されるように適合されると規定する。この実施形態の例示的な効果は、デッキパネル配置の変位中に、実質的に垂直方向の力のみが取り付けポイントに作用し、それにより配置全体に生じる圧力が少なくなるように、ウィンチ拘束具を配置できることである。
【0015】
ある例示的実施形態は、駆動ユニット及びドラムの回転軸が同軸であると規定する。その実施形態のある例示的な効果は、構成が容易であり、半径方向の設置空間がコンパクトになることである。
【0016】
デッキパネル配置のある例示的実施形態によれば、ウィンチ拘束具はストラップである。ストラップは、特にスリング、ウェブストラップ、ベルト、バンドと呼ぶこともできるが、この開示ではストラップが使用される。ストラップとは、ある平面において別々の延在部を有するウィンチ拘束具、すなわち、平坦なウィンチ拘束具として定義される。例示的なストラップは、ポリマー織物、天然繊維織物及び複合織物、すなわちポリマー類、天然繊維及び/又は金属繊維から作製される。ウィンチ拘束具としてストラップを有することの例示的な効果は、グリースを必要とせず、それにより貨物を損傷するリスクを減少させることができることと、ストラップの平坦な側の柔軟性が高いため、直径の短いドラムを使用でき、それにより装置全体をよりコンパクトにできることである。
【0017】
デッキパネル配置のある例示的実施形態によれば、駆動ユニットは電動モータである。ある例示的実施形態では、駆動ユニットが同期リラクタンスモータである。駆動ユニットとして電気モータを有することの例示的な効果は、電気モータをコンパクトにでき、正確な制御を容易にできることである。
【0018】
駆動ユニットとして同期リラクタンスモータを有することのさらなる例示的な効果は、同期リラクタンスモータをマスター/スレーブ形式で制御されるように構成することができ、それにより、追加のセンサなしに、正確な制御の維持が達成されることである。このような構成により、制御が必要なモータは1台で済むため、すべての駆動装置の制御が簡単に実現される。
【0019】
デッキパネル配置のある例示的実施形態によれば、ウィンチ配置は2つのウィンチ装置を備え、各ウィンチ装置はデッキパネルの対向する縁部に設けられる。そのため、各ウィンチ装置は、ウィンチ拘束具をそれぞれ有する2つのドラムを備える。
【0020】
デッキパネル配置のある例示的実施形態によれば、ウィンチ配置は4つのウィンチ装置を備え、各ウィンチ装置は、デッキパネルの各コーナーの例えば各デッキパネル側取り付けポイントに、又は、例えば、デッキパネル側取り付けポイント、上側取り付けポイント及び駆動ユニットがデッキパネルの縁部と平行な1つの平面内に配置されるように、対向するデッキパネルの縁部に沿う任意の場所にある2対の取り付けポイントに設けられる。
【0021】
4つのウィンチ装置を有することの例示的な効果は、各コーナーに1つのウィンチ装置を割り当てることにより融通性が高くなることと、比較的小さな駆動ユニットを使用できることによりウィンチ配置を割り当てる場所の融通性が高くなることである。
【0022】
デッキパネル配置のある例示的実施形態は、4つ以上のウィンチ装置が設けられ、それにより、ウィンチ装置の融通性及び小型性が維持されたまま、持ち上げ能力が増加すると規定する。例示的で非限定的な実施形態は、6個、8個、又は10個のウィンチ装置を備える。
【0023】
デッキパネル配置のある例示的実施形態によれば、取り付けポイントの1つはロールであり、ウィンチ拘束具は、ロールを介して他の取り付けポイントの間で延在し、この他の取り付けポイントに延在して戻る。この実施形態のある例示的な効果は、持ち上げ力がより高いことである。
【0024】
デッキパネル配置のある例示的実施形態によれば、ウィンチ装置は、デッキパネル側取り付けポイント又は上側取り付けポイントに配置される。この実施形態のある例示的な効果は、デッキパネル配置の融通性が高いことである。
【0025】
本開示の一態様はデッキパネルシステムに関し、このデッキパネルシステムは、本明細書に開示する任意の例示的実施形態による複数のデッキパネル配置を含む。
【0026】
デッキパネルシステムのある例示的実施形態によれば、デッキパネル配置は、デッキパネルが同じ高さまで持ち上げられたときにデッキ又はデッキの一部のうちのいずれか1つを形成するように、隣接して配置される。
【0027】
ある例示的なデッキパネルシステムは、複数のデッキパネル配置の変位を制御する1つの制御キャビネットを備え、制御キャビネットは、どのデッキパネル配置を制御するかを選択するためのデッキパネル選択制御ユニットを備える。
【0028】
本開示の一態様は、船舶の昇降式デッキパネルを船舶の巻き上げ式デッキパネルに改造する方法に関する。この方法は、デッキパネルの各コーナーにデッキパネル側取り付けポイントを設けるステップと、船舶の支持構造体に上側取り付けポイントを設けるステップと、デッキパネルの2つの対向する縁部に少なくとも2つのウィンチ装置を設けるステップであって、ウィンチ装置は、デッキパネルと船舶の支持構造体のいずれかに割り当てられる、ステップと、ウィンチ拘束具を各ドラムに巻き付け及び各ドラムから引き出すことで、デッキパネルを下側位置と上側位置の間で変位させることができるように、ウィンチ装置の各ドラムと、1つのデッキパネル側取り付けポイントと、1つの上側取り付けポイントと、の相互間にウィンチ拘束具を配置するステップと、を備える。
【0029】
本方法のある例示的な効果は、船舶の昇降式デッキパネルを、より融通性の高い巻き上げ式デッキパネルに、迅速かつ低コストで、さらに依然としてデッキパネルが船内の位置にある状態で、改造できることである。
【0030】
本方法の例示的実施形態は、船舶の支持構造に制御キャビネットを設けるステップと、制御キャビネットがウィンチ装置を電子的に制御できるように、ウィンチ装置を制御キャビネットに接続するステップと、をさらに備える。
【0031】
次に、添付の概略図を参照して、例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、船舶の概略図である。
図2図2a~2cは、デッキパネルの変位の概略図である。
図3図3a及び3bは、例示的なデッキパネル配置の概略図である。
図4図4は、例示的なデッキパネルシステムの概略図である。
図5図5a及び5bは、デッキパネル配置におけるウィンチ装置の例示的な構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
当業者は、本明細書で開示される様々な特徴を修正できること、及び、開示及び/又は主張される様々な実施形態を、本開示の範囲から逸脱することなく組み合わせることができることを、容易に理解するであろう。
【0034】
以下では、デッキパネル配置、ウィンチ装置及びデッキパネルシステムの例示的実施形態の詳細を開示する。示される実施形態は、例としてのみ使用され、かつ本開示の範囲を限定することを決して意図しないことが強調されるべきである。
【0035】
図1は、デッキパネル配置100を設けることができる船舶1の概略図を開示する。変位可能デッキパネル配置100は、典型的にはRORO舶に設けられる。
【0036】
図2a~2cはデッキパネル配置100を開示しており、変位可能デッキパネル110が、図2aでは上側位置に、図2bでは中間位置に、そして図2cでは下側位置にある。変位可能デッキパネル110は、デッキパネル110と船舶1の固定構造体112との間で持ち上げ力を働かせるように構成されるウィンチ配置120を作動させることによって、下側位置と上側位置の間で変位させることができる。デッキパネル110が静止位置同士の間にある場合、すなわちストッパ111同士の間にある場合、持ち上げ力はデッキパネルを支持する。デッキパネル110の上側位置及び下側位置において、デッキパネル110はストッパ111上に配置され、その結果、デッキパネル100が上側位置又は下側位置に配置されるとウィンチ配置120が解放される。ウィンチ配置120はウィンチ拘束具123を備え、ウィンチ拘束具123は船舶1の固定構造体112とデッキパネル110の間で持ち上げ力を伝達する。
【0037】
デッキパネル配置100は図5の制御キャビネット210から制御され、この制御キャビネットは、少なくともデッキパネル110の上方変位及び下方変位を制御するコントローラを備える。したがって、制御キャビネット210は、各デッキパネル110のウィンチ配置120との電子通信手段211を備える。電子通信手段211は、有線でも無線でもよい。
【0038】
デッキパネル110の変位は、ウィンチ配置120によって行われる。ウィンチ配置120は、図3図4及び図5と合わせてより詳細に開示される。
【0039】
図3a及び3bは、デッキパネル配置100の2つの例示的実施形態を開示する。図3aのデッキパネル配置100には、2つの駆動ユニット121を備えるウィンチ配置120が設けられ、図3bのデッキパネル配置100には、4つの駆動ユニット121を備えるウィンチ配置120が設けられる。いずれの例示的実施形態においても、デッキパネル配置100は、デッキパネル110、ウィンチ配置120、デッキパネル110に設けられる複数のデッキパネル側取り付けポイント130及び複数の上側取り付けポイント131を備える。上側取り付けポイント131は、船舶1の固定構造体112に配置される。
【0040】
ウィンチ配置120は、複数のウィンチ装置129を備える。各ウィンチ装置129は、少なくとも1つのウィンチ拘束具と、ウィンチ拘束具に対して割り当てられるドラム122を備える。図3aに開示する例示的実施形態では、各ウィンチ装置129は、2つのドラム122を駆動する1つの駆動ユニット121を備え、各ドラムは、それぞれ1つのウィンチ拘束具123に割り当てられる。駆動ユニットは、デッキパネル110の裏側の中央に設けられ、これにより、ウィンチ拘束具123は、デッキパネルの縁部に沿ってデッキパネル側取り付けポイントに向かって延在する。駆動ユニット121、ドラム122、及びドラム122とデッキパネル側取り付けポイント130の間にあるウィンチ拘束具123の延在部は、デッキパネル表面の下に配置されることが好ましい。
【0041】
図3bに開示され例示的実施形態において、各ウィンチ装置129は、1つのドラム122を駆動する1つの駆動ユニット121を備え、各ドラム122は、それぞれ1つのウィンチ拘束具123に割り当てられる。
【0042】
図3a及び図3bに開示されるいずれの例示的実施形態においても、駆動ユニット121はデッキパネル120に配置されるが、代替的な配置では、駆動ユニット121又は駆動ユニットのうちいくつかを、船舶1の固定構造体112に配置することができる。
【0043】
図3a及び3bに開示されるデッキパネル配置100のいずれの例示的実施形態においても、ウィンチ拘束具は、デッキパネル側取り付けポイント130と上側取り付けポイント131の間に延在する。さらに、ウィンチ拘束具は、ウィンチ装置129の駆動ユニット121に駆動接続して設けられる各ドラム122に取り付けられる。ウィンチ拘束具123は、本開示の範囲から逸脱することなく、デッキパネル側取り付けポイント130と上側取り付けポイント131の間で1回又は数回延在するように構成することができる。
【0044】
図4では、デッキパネル配置100の例示的なシステム200を開示している。システム200は、4つのデッキパネル110_1、110_2、110_3、110_4を備え、これらは制御キャビネット210から個別に制御することができる。制御キャビネット210は、各デッキパネル110_1~110_4のウィンチ配置120に電子制御接続される。制御キャビネット210はデッキパネル選択制御ユニット220を備え、このユニットは、どのデッキパネル110_1~110_4を制御すべきか選択することができる。さらに、制御キャビネット210は、少なくとも上方変位ボタン230及び下方変位ボタン240を備え、これらのボタンを作動させることで、デッキパネル110_1~110_4の上下移動を制御する。デッキパネル110_1~110_4の上下移動は、デッキパネル選択制御ユニット220によって選択される。好ましくは、制御キャビネットは、船舶1の固定構造体112に配置される。
【0045】
異なる実施形態では、デッキパネルシステム200が任意の数のデッキパネル配置100を備えることができる。ある実施形態では、デッキパネル110_1、110_2、110_3、110_4が、同じ高さに持ち上げられたときにデッキを形成するように配置される。別の実施形態では、デッキパネル110_1、110_2、110_3、110_4が、同じ高さに持ち上げられたときにデッキの一部を形成するように配置される。更に別の実施形態では、デッキパネルの第1のセットが並んで配置され、第2セット以降の任意の数のセットが船舶1の延在方向に配置されて、これらのデッキパネルのセットが同じ高さに持ち上げられたときにデッキを形成する。
【0046】
図5a及び5bはデッキパネル110の部分図を開示しており、ここではウィンチ装置129の例示的な構成を示している。ウィンチ装置129は、駆動ユニット121及びドラム122を備える。駆動ユニット121はドラム122を駆動し、ドラム122は、開示する実施形態では駆動ユニット121と同軸上に配置される。ドラム122は、駆動ユニット121を作動するとウィンチ拘束具123をドラム122に巻き付け及びドラム122から引き出すことができるように、ウィンチ配置120のウィンチ拘束具123に取り付けられる。ウィンチ配置120は、複数のウィンチ装置129及び複数のウィンチ拘束具123を備える。そのため、図5a及び5bでは、それぞれ1つのウィンチ配置120と1つのウィンチ拘束具123のみ示す。
【0047】
図5aにおいて、ウィンチ装置129の駆動ユニット121は、船舶の固定構造体112の上側取り付けポイント131に配置される。ウィンチ拘束具123は、ドラム122からデッキパネル側取り付けポイント130まで下方向に延在し、そして上側取り付けポイント131まで上方向に延在して戻る。デッキパネル側取り付けポイント130にはロール133が配置され、ウィンチ拘束具123はロール133の周りで方向転換して上側取り付けポイント131まで戻る。上側取り付けポイント131では、ウィンチ拘束具123がドラム122に巻き付けられるとデッキパネル110がウィンチ拘束具123によって持ち上げられるように、ウィンチ拘束具が固定されて取り付けられる。
【0048】
図5bの実施形態では、代わりに、ウィンチ配置129がデッキパネル側取り付けポイント130に配置される。これにより、ロールは上側取り付けポイントに配置され、ウィンチ拘束具123はロールの周りで方向転換できる。
【0049】
図5a及び5bに開示する2つの例示的実施形態は、開示するデッキパネル構成100の融通性を示す。この融通性により、既存の昇降式デッキパネルを本開示によるデッキパネル構成100に改造する場合に、一般的な船舶の構成に基づいてウィンチ配置129の位置を選択することができる。同一の船舶1内において又は同一のデッキパネルにおいてでさえ、各対の取り付けポイントで利用可能な空間に応じて、ウィンチ配置129をデッキパネル側取り付けポイント130と上側取り付けポイント131のいずれか又は両方に配置することができる。
【0050】
ウィンチ配置129は、ドラム122と駆動ユニット121の間にギアボックス124を備えることができる。
【0051】
開示したデッキパネル構成の特徴の固有の組合せによって、高い融通性が実現される。
【0052】
すなわち、まず、複数のウィンチ装置129を使用する場合には、駆動ユニット121をより小型化することができ、デッキパネル及び/又は船舶1の固定構造体112の異なる位置に駆動ユニット121を配置することができる。
【0053】
各コーナーに1つの駆動ユニットを有する場合には、さらなる融通性及びさらに小型の駆動ユニットが実現される。
【0054】
融通性及びコンパクト性を向上させる別の例示的な実施形態では、ウィンチ拘束具123がストラップである。ストラップは、延在面に対して垂直方向における柔軟性が高いため、ドラム122を小径化することができる。これにより、必要とする設置空間がより少ないコンパクトなウィンチ装置を実現することが可能である。
図1
図2a-2b】
図2c
図3a
図3b
図4
図5a
図5b