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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】切断位置制御装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/126 20060101AFI20230317BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20230317BHJP
   B21B 1/00 20060101ALI20230317BHJP
   B21B 1/46 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B22D11/126 K
B22D11/16 104Q
B21B1/00 B
B21B1/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022524833
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020295
(87)【国際公開番号】W WO2021234944
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】宝珠山 和博
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 寛蔵
(72)【発明者】
【氏名】延岡 清之
(72)【発明者】
【氏名】朝田 匡敏
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-509938(JP,A)
【文献】特開平10-029004(JP,A)
【文献】特開2000-225458(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106595549(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
B21B 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産スケジュールおよび生産する材の材料情報に関する情報を含む第1データを入力し、
前記第1データにもとづいて、連続鋳造設備によって鋳造された第1スラブの第1切断機による第1切断位置を計算し、
プロセス制御装置に導入された制御プログラムのために、前記第1切断位置を設定するための第1パラメータを生成し、
前記第1スラブの先端から前記第1切断位置までの設定された第1長さと、前記第1パラメータにもとづいて前記第1スラブから切断された第2スラブの第2長さと、を比較して、前記第2スラブを、前記第1切断機よりも下流に設けられた第2切断機によってさらに切断するか否かを判定する
演算処理回路
を備え、
前記演算処理回路は、
前記第2長さが前記第1長さに等しいか前記第1長さよりも短い場合には、前記第2スラブを前記第2切断機によって切断せずに次の工程に搬送するように設定し、
前記第2長さが前記第1長さよりも長い場合には、前記第2スラブを前記第2切断機によってさらに切断する切断位置を設定するための第2パラメータを生成する切断位置制御装置。
【請求項2】
前記演算処理回路は、
前記第2長さが前記第1長さよりも長い場合には、前記第2スラブを、前記第1切断位置において前記第2スラブの先行材および前記先行材に後続する後行材に分割した後に、前記後行材を巻き取り可能か否かを判定し、
前記後行材を巻き取り可能と判定したときには、
前記第2スラブを前記第1切断位置で切断するように前記第2パラメータを生成し、
前記後行材を巻き取りできないと判定したときには、
前記第2スラブを、前記第2切断機によって切断せずに次工程に搬送する請求項1記載の切断位置制御装置。
【請求項3】
前記演算処理回路は、
前記後行材が巻き取りできないと判定した場合には、前記第2スラブを巻き取り可能であるか否かを判定し、
前記第2スラブを巻き取り可能と判定したときには、前記第2スラブを、前記第2切断機によって切断せずに次工程に搬送し、
前記第2スラブが巻き取りできないと判定したときには、前記第2スラブを前記第2切断機によってさらに切断するための第3パラメータを生成し、
前記第3パラメータは、前記第2スラブが切断された2つの材の両方を巻き取り可能な長さとなるように切断位置を設定するように生成される請求項2記載の切断位置制御装置。
【請求項4】
前記演算処理回路は、前記第2切断機を通過した後に、計測された前記第2スラブの第3長さまたは前記先行材の第4長さにもとづいて、生産スケジュールおよび生産する材の材料情報を含む生産管理データベースを管理する上位システムに前記生産管理データベースを更新するための第2データを送信する請求項記載の切断位置制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、連続鋳造設備連結型圧延システムのための切断位置制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブの鋳造から圧延、巻き取りまでを連続的に行う連続鋳造設備連結型の圧延システムが実用化されている。連続鋳造設備連結型圧延システムは、コンピュータによる生産管理システムの導入により、材料の投入から製品までを一体で管理することができ、生産性の向上に寄与している。
【0003】
このような連続鋳造設備連結型圧延システムにおいて、製品の歩留りを改善して、さらに生産性を向上させたいとの要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-267709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態では、製品の歩留りを改善した連続鋳造設備連結型圧延システムを可能にする切断位置制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る切断位置制御装置は、演算処理回路を備える。前記演算処理回路は、生産スケジュールおよび生産する材の材料情報に関する情報を含む第1データを入力し、前記第1データにもとづいて、連続鋳造設備によって鋳造された第1スラブの第1切断機による第1切断位置を計算し、プロセス制御装置に導入された制御プログラムのために、前記第1切断位置を設定するための第1パラメータを生成し、前記第1スラブの先端から前記第1切断位置までの設定された第1長さと、前記第1パラメータにもとづいて前記第1スラブから切断された第2スラブの第2長さと、を比較して、前記第2スラブを、前記第1切断機よりも下流に設けられた第2切断機によってさらに切断するか否かを判定する。前記演算処理回路は、前記第2長さが前記第1長さに等しいか前記第1長さよりも短い場合には、前記第2スラブを前記第2切断機によって切断せずに次の工程に搬送するように設定し、前記第2長さが前記第1長さよりも長い場合には、前記第2スラブを前記第2切断機によってさらに切断する切断位置を設定するための第2パラメータを生成する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、製品の歩留りを改善した連続鋳造設備連結型圧延システムを可能にする切断位置制御装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】連続鋳造設備が連結された圧延システムを例示する模式図である。
図2】実施形態の切断位置制御装置を例示するブロック図である。
図3】実施形態の切断位置制御装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図4図4(a)および図4(b)は、スラブの切断位置を説明するための模式図である。
図5】実施形態の切断位置制御装置の動作を説明するフローチャートの例である。
図6】比較例の圧延システムを例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
圧延システムの構成について説明する。
図1は、連続鋳造設備が連結された圧延システムを例示する模式図である。
図1では、説明の便宜上、スラブ1~3は、互いに近接して搬送されているように描かれているが、実際の圧延システムにおいては、スラブ1~3は、適切な間隔をもって搬送される。また、実際には、スラブが圧延機を通過するごとに、スラブの厚さは薄くなるが、図1では、図示の煩雑さを排除するために、スラブはほぼ同じ厚さで示されている。
図1に示すように、圧延システム20は、連続鋳造設備21と、連続鋳造設備21に連結された圧延設備と、を含んでいる。圧延設備は、この例では、粗圧延機22、仕上圧延機23および巻取機24を含んでいる。この例は、熱間圧延システムの構成例を示しており、仕上圧延の後工程は、ランアウトテーブル28を含んでいる。ランアウトテーブル28は、仕上圧延後の材を冷却する。
【0011】
圧延システム20は、複数の切断機を含んでいる。この例では、3つの切断機が用いられる。複数の切断機は、3つに限らず、2つ以上あればよい。1つ目の切断機は、上流切断機81である。上流切断機81は、連続鋳造設備21と粗圧延機22との間に設けられている。2つ目の切断機は、中間切断機82である。中間切断機82は、粗圧延機22と仕上圧延機23との間に設けられている。3つ目の切断機は、下流切断機83である。下流切断機83は、仕上圧延機23と巻取機24との間に設けられている。
【0012】
この例においては、上流切断機81は、連続鋳造設備21から搬出されるスラブ1を切断して、製品の長さに応じた長さに切断する。切断されたスラブ2は、粗圧延機22に搬入される。
【0013】
中間切断機82は、粗圧延されたスラブ3の先端および尾端のクロップを切断する。クロップが切断されたスラブ3は、仕上圧延機23を通過後、下流切断機83に搬入される。
【0014】
下流切断機83は、生産スケジュールにしたがって設定されたスラブの長さと、上流切断機81によって切断されたスラブの長さとの差にもとづいて、スラブをさらに切断する。切断されたスラブは、巻取機24によって巻き取られる。巻き取られたスラブは、コイルを形成する。下流切断機83は、上流切断機81によって切断された長さによっては、スラブを切断しないこともある。切断されなかったスラブは、たとえばそのまま巻取機24によって巻き取られる。
【0015】
以下の構成や動作の説明では、切断位置制御装置は、上流切断機81によって切断されたスラブ2を下流切断機83でさらに切断するか否かを判定し、下流切断機83で切断する場合に、スラブの切断位置を設定することについて詳細に説明する。この例では、中間切断機82は、先端および尾端のクロップを切断するために用いられるので、上流切断機81および下流切断機83による切断位置の判定や切断位置の補正動作とは直接関係しない。そのため、中間切断機82についての詳細な説明は省略する。なお、この場合の中間切断機82の切断制御については、圧延システムの分野において周知の搬送距離計測技術を用いることによって、容易に実現される。
【0016】
圧延システム20には、搬送されるスラブ1~3の位置や搬送される距離を検出するために、複数のセンサが設けられている。複数のセンサは、この例では、HMD84,85,87,89およびPLG86,88,90である。HMD84,85,87,89は、熱線を検出する検出器(Hot Metal Detector、HMD)である。熱線検出型の検出器に代えて、可視光や赤外線検出用のカメラ等を利用してもよい。
【0017】
PLG86,88,90は、移動距離を計測する検出器である。PLG86,88,90は、たとえば、パルスジェネレータ式カウンタ等である。PLG86,90は、テーブルロール等に設けられており、テーブルロールの回転数に応じてパルスを出力し、出力されたパルスをカウントすることによって、テーブルロール上を搬送されるスラブの移動距離を計算する。PLG87は、仕上圧延機23の最終段のミルの圧延ロールに設けられている。最終段ミルの圧延ロールは、圧延されたスラブ3を排出しつつ、PLG87によって、圧延されたスラブの移動距離を計算する。スラブの移動距離を計測することができれば、パルスジェネレータ式カウンタ以外の方法を利用してもよい。
【0018】
HMD84は、連続鋳造設備21から搬出されたスラブ1の熱線を検出する。HMD84は、連続鋳造設備21の搬出側であって、上流切断機81の手前に設けられている。HMD84は、連続鋳造設備21で鋳造されたスラブ1の先端の位置を検出する。HMD84は、信号TP1を生成し、出力する。HMD84は、スラブ1の先端を検出すると、出力している信号TP1をアクティブに遷移させる。信号をアクティブにするとは、たとえば、スラブ1の先端を検出する前にHMD84が信号TP1=“0”を出力しており、スラブ1を検出したときに、信号TP1を“1”に遷移させることをいう。信号が“0”から“1”に遷移したタイミングが、スラブ1の先端を検出したタイミングである。上述に代えて、信号“1”から“0”に遷移したタイミングをスラブ1の先端を検出したタイミングとしてもよく、その場合には、アクティブな信号の論理は、“0”である。
【0019】
HMD85は、上流切断機81によって切断されたスラブ2の熱線を検出する。HMD85は、上流切断機81と粗圧延機22との間に設けられている。HMD85は、信号TP2を出力する。HMD85は、スラブ2の先端を検出すると、信号TP2をアクティブに遷移させ、スラブ2の尾端の通過を検出すると、信号TP2を非アクティブに遷移させる。
【0020】
PLG86は、上流切断機81によって切断されたスラブ2の移動距離を計測するパルスジェネレータ式カウンタである。PLG86は、上流切断機81と粗圧延機22との間に設けられている。PLG86は、この例では、パスラインに沿って設けられているテーブルロールの1つに設けられている。PLG86が設けられたテーブルロールは、上流切断機81と粗圧延機22との間に設けられている。PLG86は、テーブルロールの回転速度に応じてパルス信号PC2を出力する。出力されたパルス信号PC2は、プロセス制御装置に送信され、積算、計数されてスラブ2の搬送距離が計算される。PLG86で計測されるスラブ2の搬送距離は、スラブ2の長さを判定するのに用いられる。スラブ2の長さの判定については後に詳述するが、切断位置制御装置は、スラブ2の切断位置が当初の設定のとおりであるか否かを判定する。
【0021】
HMD87は、仕上圧延機23と下流切断機83との間に設けられている。この例では、ランアウトテーブル28が仕上圧延機23と下流切断機83との間に設けられているので、HMD87は、仕上圧延機23とランアウトテーブル28との間に設けられている。HMD87は、スラブ3の熱線を検出することによって、仕上圧延機23によって圧延されたスラブ3の先端および尾端を検出する。HMD87は、スラブ3の先端を検出すると、信号TP3をアクティブに遷移させ、スラブの尾端の通過を検出すると、信号TP3を非アクティブに遷移させる。
【0022】
PLG88は、仕上圧延機23によって圧延されたスラブ3の移動距離を計測する。PLG88は、この例では、仕上圧延機23の最終段ミルの圧延ロールに設けられている。PLG88は、仕上圧延機23の搬出側のテーブルロールに設けられてもよい。PLG88は、圧延ロールの回転に応じてパルス信号PC3を出力する。パルス信号PC3は、プロセス制御装置に送信され、積算、計数されてスラブ3の搬送距離が計算される。
【0023】
HMD89およびPLG90は、下流切断機83と巻取機24との間に設けられている。HMD89は、下流切断機83を通過したスラブ3の先端および尾端を検出する。HMD89は、スラブ3を検出している間には、アクティブな信号TP4を出力する。
【0024】
PLG90は、PLG90が設けられたテーブルロールの回転数に応じてパルス信号PC4を生成する。信号TP4およびパルス信号PC4は、プロセス制御装置に送信され、下流切断機83を通過したスラブ3の長さが計測される。
【0025】
このように、HMD84,85,87,89から出力された信号TP1~TP4およびPLG86,88,90から出力されたパルス信号PC2~PC4は、プロセス制御装置に設定されたプログラムに応じて、処理される。
【0026】
センサの配置や種類の選定等は、上述に限らない。センサは、上流切断機81で切断されたスラブ2の長さを圧延工程中のいずれかで計測し、下流切断機83で切断する位置を圧延工程中のいずれかで計測できるような配置や種類を選定等すればよい。
【0027】
切断位置制御装置の構成について説明する。
図2は、実施形態の切断位置制御装置を例示するブロック図である。
図2には、切断位置制御装置60の構成とともに、圧延システム20を制御するための制御システム100が示されている。
図2に示すように、制御システム100は、上位システム50と、切断位置制御装置60と、プロセス制御装置70と、を含む。切断位置制御装置60は、通信ネットワーク102を介して、上位システム50に接続されている。通信ネットワーク102は、汎用の通信ネットワークであり、たとえばイーサネット(登録商標)等である。
【0028】
上位システム50は、生産管理や品質管理等のためのデータベースが格納され、これらを管理する。生産管理のためのデータベースは、製品ごとの生産スケジュールや、製品ごとの材料情報等を格納している。品質管理のためのデータベースは、製造した製品ごとの寸法のデータや重量のデータ等を格納している。上位システム50は、通信ネットワーク102を介して、生産管理のためのデータベースから所望のデータを抽出して、切断位置制御装置60に送信する。
【0029】
上位システム50は、たとえばデータサーバ等の大容量高速の情報処理装置である。上位システム50は、単一のデータサーバに限らず、複数のデータサーバであってもよい。たとえば、1台のデータサーバに生産管理のためのデータベースおよびその運用ソフトウェア等を搭載し、他の1台のデータサーバに品質管理のためのデータベースおよびその運用ソフトウェア等を搭載するようにしてもよい。
【0030】
切断位置制御装置60は、通信ネットワーク104を介して、プロセス制御装置70に接続されている。通信ネットワーク104は、たとえば、FL-net等の制御系の通信ネットワークである。切断位置制御装置60は、通信ネットワーク104を介して、上位システム50から受信した生産スケジュールのデータおよび材料情報のデータにしたがって、プロセス制御装置70のためのプログラムおよびプログラムに設定するパラメータを生成する。プロセス制御装置70のためのプログラムおよびパラメータは、これから生産する製品の長さのデータが含まれる。これから生産する製品のタイミングや材料データを含む諸元は、生産スケジュールおよび材料情報のデータによって提供される。
【0031】
切断位置制御装置60は、プロセス制御装置70が上流切断機81によってスラブ1を切断するタイミングで切断指令を生成するように、スラブ1の切断位置に関するパラメータ(第1パラメータ)を生成する。切断位置制御装置60は、プロセス制御装置70が下流切断機83によってスラブ2をさらに切断するタイミングで切断指令を生成するように、スラブ2の切断位置に関するパラメータ(第2パラメータ)を生成する。
【0032】
切断位置制御装置60は、下流切断機83による切断位置に関するパラメータを生成する場合には、上流切断機81によるスラブ1の切断位置が設定されたとおりであるか否かを判定する。切断位置制御装置60は、スラブ1の切断位置の判定には、スラブ1を切断した得られたスラブ2の長さの計測値を用いる。切断位置制御装置60は、スラブ2の長さの計測値にもとづいて、下流切断機83による切断位置に関するパラメータを生成する。なお、切断位置制御装置60は、中間切断機82による切断位置に関するパラメータも生成する。
【0033】
切断位置制御装置60は、演算処理回路62を有する。演算処理回路62は、たとえば論理演算処理回路であり、CPU(Central Processing Unit)を含む。切断位置制御装置60は、たとえば高速演算処理が可能なコンピュータ装置等の情報処理装置である。切断位置制御装置60は、後述するフローチャートの各ステップを含むプログラムにしたがって動作するCPUを含むコンピュータ装置である。後述するフローチャートの説明において、実行主体が切断位置制御装置60の場合には、演算処理回路62の動作によってフローチャートの各ステップが実行される。
【0034】
切断位置制御装置60は、たとえば、圧延制御や冷却水制御等に関する他のプログラムが動作する計算機システム内の1つの機能として実現される。なお、切断位置制御装置60を含む計算機システムは、単一の情報処理装置の場合に限らず、複数の情報処理装置を含んでもよい。たとえば、1つの情報処理装置に切断位置制御装置60のためのプログラムを導入して、切断位置制御装置60とし、他の1つ情報処理装置に圧延制御に関するプログラムを導入してもよい。
【0035】
プロセス制御装置70は、切断位置制御装置60によって生成されたプログラムおよびパラメータを通信ネットワーク104を介して、切断位置制御装置60から受信し、設定する。プロセス制御装置70は、設定されたプログラムおよびパラメータにもとづいて、スラブ1の搬送距離が上流切断機81による切断位置に到達するタイミングで切断指令を生成し、上流切断機81に送信する。
【0036】
プロセス制御装置70は、上流切断機81によって切断された切断位置を補正する場合には、下流切断機83による切断位置を設定するパラメータも設定する。
【0037】
プロセス制御装置70は、通信ネットワーク106を介して、各種センサやアクチュエータ等の入出力装置80に接続されている。入出力装置80は、上流切断機81,中間切断機82および下流切断機83を含んでいる。入出力装置80は、HMD84,85,87,89およびPLG86,88,90を含んでいる。プロセス制御装置70は、切断位置制御装置60によって設定された制御プログラム、設定されたパラメータ、HMD84,85,87およびPLG86,88の出力にしたがって、スラブ1,2の切断位置を設定し、上流切断機81、中間切断機82および下流切断機83に、設定されたタイミングで切断指令を送信する。
【0038】
プロセス制御装置70は、切断位置制御装置60によって設定された制御プログラム、設定されたパラメータ、HMD89およびPLG90の出力にしたがって、下流切断機83を通過したスラブ3の長さを計測して、計測されたデータを切断位置制御装置60に送信する。
【0039】
プロセス制御装置70は、たとえば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)のCPUおよびI/Oモジュール等である。プロセス制御装置70は、以下説明する動作を実現するために、あるいは、圧延システム20の全体を制御するために、単一のPLCである場合に限らず、複数のPLCを含んでいてもよい。
【0040】
制御システム100においては、上位システム50は、必ずしも必須ではない。生産スケジュール等のデータを切断位置制御装置60に直接手動等で入力し、作成されたコイルデータを切断位置制御装置60において管理するようにしてもよい。
【0041】
実施形態の切断位置制御装置60の動作についてフローチャートを参照しながら説明する。
図3は、実施形態の切断位置制御装置の動作を説明するフローチャートの例である。
図3には、制御システム100の全体で実行されるフローチャートが示されている。制御システム100は、複数の階層化されたレベルを含んでいる。最上位のレベルL3は、上位システム50を含むレベルである。レベルL3は、複数の上位システムを含んでもよい。複数の上位システムは、たとえば、複数の圧延プラントのためのシステムを含む場合等がある。第2のレベルL2は、計算機システムのレベルである。計算システムのレベルL2は、切断位置制御装置60を含むレベルである。その他、図示しないが、レベルL2は、圧延制御や水冷制御等に関する制御プログラム等を生成する制御装置を含んでもよい。第1のレベルL1は、プロセス制御装置70を含むレベルである。最下層のレベルL0は、実際の圧延システム20中に設けられたセンサやアクチュエータを含んでいる。
【0042】
図3のフローチャートを用いて動作説明するにあたり、プロセス制御装置70では、上流切断機81、中間切断機82および下流切断機83を制御するための制御プログラムがあらかじめ設定されているものとする。スラブの切断位置は、切断位置制御装置60によって生成されたパラメータを、制御プログラムに設定することによって設定される。プロセス制御装置70に設定される制御プログラムは、たとえば、切断位置制御装置60から送信される。切断位置制御装置60は、たとえば、生産スケジュールデータベースのデータおよび材料情報データベースのデータにもとづいて、切断機の制御プログラムを生成し、生成された制御プログラムをプロセス制御装置70に送信する。なお、上述したとおり、中間切断機82の動作の説明については省略する。
【0043】
図3に示すようにステップS51,S52において、上位システム50は、生産スケジュールデータベースおよび材料情報データベースから生産すべき製品の仕様および生産のタイミング等のデータを切断位置制御装置60に送信する。
【0044】
この例では、ステップS53において、上位システム50は、オペレーターによって入力されたデータを、生産スケジュールデータベースのデータに代えて、あるいは生産スケジュールデータベースのデータに加えて、送信するようにしてもよい。
【0045】
ステップS61において、切断位置制御装置60は、上位システム50から送信された生産スケジュールデータベースのデータおよび材料情報データベースのデータにもとづいて、上流切断機81によるスラブ1の切断位置を計算する。
【0046】
ステップS62において、切断位置制御装置60は、計算した切断位置を上流切断機81によるスラブ1の切断位置として設定し、対応するパラメータ(第1パラメータ)を生成し、生成されたパラメータをプロセス制御装置70に送信する。
【0047】
ステップS71において、プロセス制御装置70は、切断位置制御装置60によって生成されたスラブ1の切断位置に関するパラメータを制御プログラムに設定する。
【0048】
プロセス制御装置70は、HMD84からのアクティブな信号TP1を受信して、連続鋳造設備21から出力されたスラブ1の先端がHMD84を通過したか否かを判定する。連続鋳造設備21から出力されるスラブ1の搬送速度は、一定値となるように制御される。プロセス制御装置70に設定されたプログラムには、たとえば、スラブ1の搬送速度は、一定値を有するパラメータとして設定される。
【0049】
プロセス制御装置70は、スラブ1の先端位置を検出したタイミングで、タイマを起動する。プロセス制御装置70は、タイマが出力する時間およびスラブの搬送速度のデータを用いて、スラブ1の搬送距離を計算する。プロセス制御装置70は、計算される搬送距離を用いて、上流切断機81による切断位置にスラブ1が到達したか否かを判定する。プロセス制御装置70は、スラブ1が上流切断機81による切断位置に到達したときに、上流切断機81に対して切断指令を送信する。
【0050】
ステップS81において、上流切断機81は、プロセス制御装置70から切断指令を受信する。上流切断機81は、切断指令にもとづいて、切断位置制御装置60から送信されたパラメータによって設定された位置でスラブ1を切断するようにアクチュエータを駆動する。
【0051】
ステップS82において、HMD85は、上流切断機81によって切断されたスラブ2の先端を検出すると、信号TP2をアクティブに遷移させる。プロセス制御装置70は、アクティブな信号TP2をHMD85から受信したタイミングで、PLG86を初期化する。PLG86は、スラブ2を搬送するテーブルロールの回転速度に応じて、パルス信号PC2を生成し、プロセス制御装置70に送信する。
【0052】
HMD85は、スラブ2の尾端を検出すると、信号TP2を非アクティブに遷移させる。
【0053】
ステップS72において、プロセス制御装置70は、HMD85がアクティブの期間において、PLG86から受信したパルス信号PC2を積算し、スラブ2の搬送距離を計算する。スラブ2の搬送距離は、スラブ2の先端から尾端までの長さであり、したがって、スラブ2の長さである。プロセス制御装置70は、計算されたスラブ2の長さのデータを切断位置制御装置60に送信する。
【0054】
ステップS63において、切断位置制御装置60は、計算されたスラブ2の長さのデータと、生産スケジュールにもとづいて設定されたスラブの長さのデータとを比較する。切断位置制御装置60は、これらの長さのデータの比較結果にもとづいて、下流切断機83によって切断位置を補正するか否かを判定する。切断位置の補正要否の判定および切断位置の補正時の切断位置決定方法の詳細については後述する。
【0055】
ステップS64において、切断位置制御装置60は、ステップS63でスラブ2の切断位置の補正が必要と判断した場合には、下流切断機83による切断位置を計算する。
【0056】
ステップS65において、切断位置制御装置60は、計算された切断位置に関するパラメータ(第2パラメータ)を生成する。切断位置制御装置60は、生成されたパラメータをプロセス制御装置70に送信する。
【0057】
ステップS73において、プロセス制御装置70は、切断位置制御装置60によって設定された切断位置のパラメータを制御プログラムに設定する。
【0058】
プロセス制御装置70は、HMD87からの信号TP3を受信することによって、仕上圧延機23から出力されたスラブ3の先端が通過したか否かを検出する。プロセス制御装置70は、信号TP3が非アクティブに遷移することによって、スラブの尾端がHMD87を通過したこと検出する。
【0059】
プロセス制御装置70は、スラブ3の先端を検出すると、PLG88を初期化し、パルス信号PC3の積算を開始する。プロセス制御装置70は、HMD87からの信号TP3が非アクティブになるまでパルス信号PC3の積算を継続する。プロセス制御装置70は、パルス信号PC3の積算結果にもとづいて、スラブ3の搬送距離を計算する。スラブ3の搬送距離は、スラブ3の長さである。プロセス制御装置70は、スラブ3の搬送距離が設定したパラメータに対応する長さとなったときに、下流切断機83に対する切断指令を生成し、生成された切断指令を下流切断機83に送信する。
【0060】
ステップS83において、下流切断機83は、プロセス制御装置70から切断指令を受信し、受信した切断指令にしたがって、スラブ3を切断する。
【0061】
ステップS84において、HMD89は、下流切断機83を通過したスラブ3の先端を検出して、アクティブな信号TP4を出力する。PLG90は、スラブ3の搬送に応じてパルス信号PC4を出力する。HMD89は、スラブ3の尾端が通過すると、信号TP4を非アクティブに遷移させる。信号TP4およびパルス信号PC4は、プロセス制御装置70に送信される。
【0062】
ステップS74において、プロセス制御装置70は、信号TP4がアクティブな期間のパルス信号PC4の積算結果にもとづいて、下流切断機83を通過したスラブ3の搬送距離を計算する。スラブ3の搬送距離は、巻取機24によって巻き取られる製品5の長さである。プロセス制御装置70は、レベルL0の他のセンサ等によって収集された製品5の長さ以外のデータを収集し、切断位置制御装置60に収集されたデータを送信する。
【0063】
ステップS66において、切断位置制御装置60は、プロセス制御装置70から受信したデータをコイルデータに紐づける。コイルデータは、たとえば、生産スケジュールデータベース上で、その製品を識別する識別番号が付与されており、コイルデータは、その識別番号に紐づけられている。コイルデータは、巻取機24によって巻き取られた製品5の長さのほか製品5の重量等のデータを含むようにしてもよい。コイルデータには、他の制御装置等によって取得されたデータ等も紐づけられることができる。たとえば、製品の表面状態のデータ等をコイルデータに紐づけるようにしてもよい。切断位置制御装置60は、作成したコイルデータを上位システム50に送信する。
【0064】
ステップS54において、上位システム50は、受信したコイルデータを品質管理データベースに格納して、品質管理データベースを更新する。
【0065】
ステップS55において、上位システム50は、受信したコイルデータを用いて、生産スケジュールデータベースを更新する。生産スケジュールデータベースの更新には、たとえば以下の処理を含むことができる。
【0066】
作成したコイルデータが生産スケジュールで設定された製品の仕様に合致する場合には、生産スケジュールデータベースの該当のデータに、処理完了した旨のフラグが設定される。
【0067】
コイルデータのうち製品の長さのデータが、生産スケジュールで設定された製品の仕様に合致しない場合には、たとえば、上位システム50は、他の製品で合致するものが生産スケジュールデータベース上にないか探索する。生産スケジュールデータベース上に、該当する製品の生産スケジュールがある場合には、上位システム50は、その生産スケジュールのデータに処理完了した旨のフラグを設定する。
【0068】
生産スケジュールデータベース上に、該当する製品の生産スケジュールがない場合には、上位システム50は、新たに生産スケジュールを組む可能性を想定して、処理保留とする旨のフラグを設定する。処理保留とされた製品は、他のコイルと組み合わせて出荷できる場合には、組み合わせるコイルの製品シリアル番号に、処理保留とされた製品のシリアル番号を紐づける等の処理がされる。
【0069】
このように、実施形態の切断位置制御装置60は、上流切断機81によって切断されたスラブの切断位置が所望の位置であるか否かを判定する。切断位置制御装置60は、スラブの切断位置が所望の位置でない場合であっても、下流切断機83によって、さらに切断し、あるいは切断せずに、活用可能性のあるスラブとするように制御することができる。活用可能性のあるスラブは、レベルL3の上位システム50において、生産スケジュールの再スケジューリングに利用することができる。
【0070】
図3におけるステップS63の切断位置の補正の要否の判定の方法について、より詳細に説明する。
図4(a)および図4(b)は、スラブの切断位置を説明するための模式図である。
図4(a)および図4(b)は、連続鋳造設備21から搬出されたスラブ1の切断位置を示している。各図の矢印は、スラブ1の搬送方向を表している。
図4(a)は、上流切断機81が切断位置C0でスラブ1を切断した場合の例を示している。切断位置C0は、当初の生産スケジュールデータベースのデータによって設定された位置と一致している。スラブ1は、切断位置C0で先行材2aおよび後行材2bに分割されている。
図4(b)は、上流切断機81が、切断位置C1でスラブ1を切断した場合の例を示している。切断位置C1は、当初の生産スケジュールデータベースのデータによって設定された切断位置からずれている。スラブ1は、切断位置C1で先行材2a1および後行材2b2に分割されている。
【0071】
当初設定された切断位置とは、図3のステップS61,S62において計算され設定された切断位置である。
【0072】
図4(a)に示すように、スラブ1は、連続鋳造設備21によって鋳造され、上流切断機81によって切断されて、スラブ2aとスラブ2bとに分割される。スラブ2aは、先行材である。スラブ2bは、スラブ2aに後続する後行材である。上流切断機81による切断位置C0は、スラブ2aの先端から長さLの位置である。ここで、スラブ2aの長さLは、生産スケジュールデータベースのデータにもとづいて、切断位置制御装置60によって計算された長さL0に等しい。したがって、切断位置制御装置60は、先行材2aの切断位置を、当初設定された切断位置C0であると判定する。
【0073】
図4(b)に示すように、上流切断機81は、図4(a)の切断位置C0とは異なる切断位置C1で、スラブ1を切断している。切断位置C1は、スラブ1の先端から長さL=L0+L1の位置である。スラブ1は、先行材2a1と後行材2b2とに分割されている。したがって、先行材2a1の長さは、L=L0+L1である。切断位置制御装置60は、先行材2a1の切断位置C1を、当初設定された切断位置C0からずれていると判定する。
【0074】
切断位置制御装置60は、設定された長さL0と実測された長さLとを比較する。切断位置制御装置60は、長さLが長さL0よりも長いと判定した場合には、長さLから長さL0を差し引いた長さL1が、スラブを巻き取ってコイルを形成するのに十分な長さであるか否かをさらに判定する。切断位置制御装置60は、長さL1が巻取機24によって巻き取るのに十分な長さであると判定した場合には、下流切断機83によって、切断位置C0で切断するように、制御プログラムのためのパラメータを生成する。
【0075】
先行材2a1は、下流切断機83によって切断され、スラブ2aおよびスラブ2b1にさらに分割される。スラブ2aおよびスラブ2b1は、巻取機24でそれぞれ巻き取られる。巻き取られたスラブ2a,2b1は、2個のコイルとされる。
【0076】
切断位置制御装置60は、長さL1が巻取機24によって巻き取るのに十分な長さではないと判定した場合には、先行材2a1を切断位置C0で切断せずに、そのまま巻き取るか、切断位置C0とは異なる切断位置で切断するかを判定する。切断位置C0とは異なる切断位置は、たとえば、分割後のスラブのそれぞれの長さが(1/2)×Lとなる位置である。
【0077】
上述の一連の動作を、フローチャートを参照してより詳細に説明する。
図5は、実施形態の切断位置制御装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図5に示すように、ステップS631において、切断位置制御装置60は、HMD85およびPLG86によって計測された先行材2aの長さLを、設定された長さL0と比較する。切断位置制御装置60は、長さLが長さL0に等しい場合には、上流切断機81による切断位置は、当初設定された切断位置であると判定して、ステップS632に処理を遷移させる。
【0078】
ステップS632において、切断位置制御装置60は、先行材2aについては、下流切断機83の切断指令を生成することなくプログラムの処理を終了する。
【0079】
ステップS631で、先行材2aの長さLが設定された長さL0よりも短いと判定された場合についても、切断位置制御装置60は、ステップS632に処理を遷移させて、プログラムの処理を終了する。この場合には、当初の生産スケジュールデータベースのデータとは相違する製品となる。そのため、上位システム50上、たとえば別の製品シリアル番号を付与して、コイルデータに紐づけてデータベースに格納し、最終的な処理を保留状態等とする。保留状態とされた製品は、たとえば、その製品のコイルデータと同一の製品の生産スケジュールがある場合には、その生産スケジュールデータベース上でデータを置き換えて、生産スケジュールの再スケジューリングに用いられる。
【0080】
ステップS631で、切断位置制御装置60によって長さLが長さL0よりも長いと判定した場合には、切断位置制御装置60は、処理をステップS633に遷移させる。
【0081】
ステップS633において、切断位置制御装置60は、スラブ2b1が巻き取るのに十分な長さを有するか否かを判定する。スラブ2b1の長さは、L1であり、先行材2a1の長さLから当初設定された長さL0を減算して計算される。巻取機24によって巻き取るのに十分長さは、あらかじめ設定されている。
【0082】
切断位置制御装置60は、長さL1が巻取機24によって巻き取るのに十分長さであると判定した場合には、処理をステップS634に遷移させる。
【0083】
ステップS634において、切断位置制御装置60は、スラブ2a1に対する切断位置を設定するパラメータを生成し、生成されたパラメータをプロセス制御装置70に送信する。プロセス制御装置70は、受信したパラメータを制御プログラムに設定して、下流切断機83に対する切断指令を生成する。この場合の切断位置は、図4(b)の切断位置C0である。
【0084】
ステップS633で、長さL1が巻き取るのに十分でない長さであると判定された場合には、切断位置制御装置60は、処理をステップS635に遷移させる。
【0085】
ステップS635において、切断位置制御装置60は、長さLの先行材2a1を巻き取ることができるか否かを判定する。先行材2a1を巻き取り可能であるとは、先行材2a1を巻取機24によって形成されたコイルの重量が搬送可能な値を超えないことである。そこで、このステップ以降では、切断位置制御装置60は、スラブの重量にもとづいて、適切な重量のコイルを形成することができるか否かを判定する。スラブの重量は、スラブの長さ、幅、厚さおよび材質にもとづいて計算される。
【0086】
ステップS635で、先行材2a1がコイルを形成することができる重量であると判定された場合には、切断位置制御装置60は、処理をステップS636に遷移させる。
【0087】
ステップS636において、切断位置制御装置60は、下流切断機83に対して切断位置を設定するためのパラメータを生成しない。仕上圧延機23に入力された先行材2a1は、仕上圧延されてランアウトテーブル28を通過し、下流切断機83によって切断されることなく、巻取機24によって巻き取られる。
【0088】
ステップS635でスラブ2a1がコイルを形成することができる重量ではないと判定された場合には、切断位置制御装置60は、処理をステップS637に遷移させる。
【0089】
ステップS637において、切断位置制御装置60は、下流切断機83に対する切断位置を設定するパラメータを生成する。生成されたパラメータは、プロセス制御装置70に送信されて、プロセス制御装置70は、制御プログラムにパラメータを設定する。プロセス制御装置70は、設定されたパラメータにもとづくタイミングで切断指令を下流切断機83に送信する。このときの下流切断機83による切断位置は、たとえば、先行材2a1の長さLの1/2となる位置である。
【0090】
ステップS637では、下流切断機83による切断位置をスラブ2a1の1/2としたが、切断されたスラブが、重量制限以下となるように巻取機24によって巻き取れる長さとなる位置を切断位置とすればよい。
【0091】
このようにして、上流切断機81で切断されたスラブの切断位置が当初計算されたスラブの長さにもとづいて設定される位置からずれた場合であっても、下流切断機83を用いることによって、スクラップの発生を抑制することができる。
【0092】
実施形態の切断位置制御装置60の効果について比較例と比較しつつ説明する。
図6は、比較例の圧延システムを例示する模式図である。
図6には、バッチ圧延方式の圧延システム120の例が示されている。
図6に示すように、圧延システム120は、加熱炉111と、粗圧延機122と、仕上圧延機123と、ランアウトテーブル128と、を含んでいる。連続鋳造設備等によって別途形成されたスラブは、加熱炉111に搬入されて、所定の温度に加熱される。
【0093】
加熱炉111に搬入され、加熱炉111からパスラインに投入されるスラブ201は、巻取機24によって巻き取られる製品の長さに応じた長さに設定されたものが用いられる。
【0094】
たとえば、粗圧延機122の搬出側に切断機181が設けられており、粗圧延機122によって圧延されたスラブ202の先端および尾端のクロップが切断される。クロップが切断されたスラブ203は、仕上圧延機123に搬入され、仕上圧延されてランアウトテーブル128で冷却した後、巻取機24によって巻き取られる。
【0095】
このようなバッチ圧延方式では、スラブの搬入が圧延ラインとはオフラインとされているので、スラブの搬送を行う必要がある上に、スラブの圧延ラインへの投入待ちのために、加熱炉111によって再度加熱する必要がある。そのため、生産効率をさらに向上させるのが困難であり、加熱炉111によるエネルギ消費が必要となり、省エネルギ化への障害となっている場合がある。
【0096】
そこで、近年では、連続鋳造設備を圧延設備に連結させて、生産性の向上をはかる取り組みがなされている。バッチ圧延方式では、クロップの切断によって、必要な長さの製品の歩留りが低下する問題が生じることがある。そのため、連続鋳造設備連結型圧延システムでは、スラブを巻き取るまで切断しないエンドレス圧延方式がとられることが多い。
【0097】
一方で、生産する鋼材の仕様によっては、エンドレス圧延方式での生産が困難で、バッチ圧延方式で生産する必要がある場合がある。
【0098】
実施形態の切断位置制御装置60は、連続鋳造設備連結型圧延システムにおいて、上流切断機81の切断位置を設定できるとともに、上流切断機81による切断位置に応じて、下流切断機83の切断位置を設定することができる。より具体的には、切断位置制御装置60は、上流切断機81によって切断されたスラブ2の切断位置にずれが生じて、スラブ2の長さが所望の長さよりも長くなった場合に、下流切断機83でさらに切断するか否かを判定することができる。その上で、切断位置制御装置60は、切断位置がずれて長くなったスラブをさらに切断することによって、切断されたスラブも製品として利用することができる。
【0099】
プロセス制御装置70では、圧延ライン中のセンサで計測された値を用いてスラブの長さや厚さ等を制御するように動作するが、制御プログラムに用いられるモデルの精度等によって、製品の品質にばらつきが生じることを避けるのは困難である。また、圧延機のミルの摩耗度合い等の経年的な変化も生じ得るので、モデルによる計算通りに製品を製造することは困難である。
【0100】
実施形態の切断位置制御装置60は、スラブが下流切断機83に到達するまでに上流切断機81によって切断されたスラブの長さを直接計測することができるので、下流切断機83によって、適切な長さとなるように補正することができる。
【0101】
また、上流切断機81によって切断された後に圧延ライン上に何らかの障害が生じた場合であっても、上流切断機81によって切断されたスラブの長さを直接計測することによって、適切な長さのスラブに補正することができる。
【0102】
このように、上流切断機81による切断位置にずれが生じても、下流切断機83によって発生した切断位置のずれを補正することができるので、製品の歩留りを向上させることができる。
【0103】
実施形態の切断位置制御装置60は、仕上圧延機23を通過したスラブ3の長さや重量等を測定して、コイルデータを作成することができる。切断位置制御装置60は、作成したコイルデータを上位システム50に送信し、上位システム50では、受信したコイルデータにもとづいて、生産スケジュールを再スケジューリングすることができる。生産スケジュールの再スケジューリングによって、当初の生産スケジュールでは、仕様外の製品が生産されても、生産された製品を他の製品と置き換えたり、生産された製品と他の製品を組み合わせたりすることによって、仕様外であった製品を活用することが可能になり、歩留りの向上に寄与することができる。
【0104】
各切断機を制御する制御プログラムのパラメータは、容易に生成し、変更等することができる。制御プログラムのパラメータを、上流切断機81および中間切断機82には送信せず、下流切断機83に対して適切なタイミングで送信することが容易にできる。このような修正を行うことによって、上述のバッチ圧延方式の圧延システムからエンドレス圧延方式の圧延システムに容易に切り替えることができる。
【0105】
上述では、上流切断機81によって切断されたスラブ2を下流切断機83によって切断位置を補正するように切断する場合について説明した。上流切断機81は、連続鋳造設備21から搬出されるスラブ1を切断する位置に設けられおり、下流切断機83は、仕上圧延機23から搬出されるスラブ3を切断する位置に設けられている。下流切断機83は、上流切断機81よりも圧延ラインの下流に設けられていればよく、たとえば、中間切断機82によって、上流切断機81の切断位置を補正するようにしてもよい。その場合には、仕上圧延機の搬出側に設けた切断機でクロップ切断をしてもよいし、仕上圧延機の搬出側に切断機を設けず、中間切断機82でクロップ切断するようにしてもよい。
【0106】
このようにして、製品の歩留りを改善した連続鋳造設備連結型圧延システムを可能にする切断位置制御装置が実現される。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1,2,3…スラブ、20…圧延システム、21…連続鋳造設備、22…粗圧延機、23…仕上圧延機、24…巻取機、28…ランアウトテーブル、50…上位システム、60…切断位置制御装置、62…演算処理回路、70…プロセス制御装置、80…入出力装置、81…上流切断機、82…中間切断機、83…下流切断機、84,85,87,89…HMD、86,88,90…PLG、100…制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6