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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】自然免疫活性化剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/715 20060101AFI20230320BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20230320BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230320BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230320BHJP
【FI】
A61K31/715
A61K36/31
A61P37/04
A23L33/105
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018074970
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019182776
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501481492
【氏名又は名称】株式会社ゲノム創薬研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関水 和久
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030995(JP,A)
【文献】特開2018-024737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/715
A61K 36/31
A61P 37/04
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有する自然免疫活性化剤の製造方法であって、
少なくとも、ブロッコリーの花芽又は花蕾を熱水抽出する工程、及び、中性多糖類を回収する工程を含み、
該中性多糖類を回収する工程が、陰イオン交換体への未吸着画分を回収する工程であることを特徴とする自然免疫活性化剤の製造方法。
【請求項2】
前記陰イオン交換体が、DEAEセルロース担体である請求項1に記載の自然免疫活性化剤の製造方法。
【請求項3】
前記熱水抽出した後に、エタノール沈殿をする工程を含む請求項1又は請求項2に記載の自然免疫活性化剤の製造方法。
【請求項4】
前記熱水抽出する前に、前記ブロッコリーを粉砕、細断又はすりおろしする工程を含む請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の自然免疫活性化剤の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕、細断又はすりおろしする工程を10℃以下で行う請求項4に記載の自然免疫活性化剤の製造方法。
【請求項6】
前記熱水抽出の温度が80℃以上160℃以下であり、該熱水抽出の時間が1分以上60分以下である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の自然免疫活性化剤の製造方法。
【請求項7】
ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有し、請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の自然免疫活性化剤の製造方法で得られるものであることを特徴とする自然免疫活性化剤。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の自然免疫活性化剤の製造方法を用いることを特徴とする自然免疫活性化飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有する自然免疫活性化剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然免疫とは、抗体に依らず、生体内の異物(細菌・真菌・ウイルス・癌細胞)を速やかに排除する防御機構であり、昆虫から哺乳動物に至るまで共通して有する機構である。
これまでに本発明者は、自然免疫の活性化に伴いカイコの筋収縮が起こることを発見している(非特許文献1及び2)。また、本発明者はこの成果を基に食品中の自然免疫活性化物質を同定する方法を確立している(特許文献1、非特許文献3及び4)。
【0003】
本発明者は更に、上記方法を用いて、ブロッコリーの抽出物から自然免疫活性化作用を有する化合物の抽出を試みている(特許文献2及び3、非特許文献5)。
しかしながら、これまでブロッコリー抽出物から得られた化合物の比活性はあまり高くなく、より高い比活性を有する化合物の探索が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/126905号
【文献】特開2010-030995号公報
【文献】国際公開第2009/157409号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Ishii K, Hamamoto H, Kamimura M. and Sekimizu K. (2008) Activation of the silkworm cytokine by bacterial and fungal cell wall components via a reactive oxygen species-mechanism, J. Biol. Chem., 283, 2185-2191.
【文献】Ishii K, Hamamoto H, Kamimura M, Nakamura Y, Noda H, Imamura K, Mita K and Sekimizu K. (2010) Insect cytokine paralytic peptide (PP) induces cellular and humoral immune responses in the silkworm Bombyx mori, J. Biol. Chem., 285, 28635-28642.
【文献】Dhital S, Hamamoto H, Urai M, Ishii K, Sekimizu K. (2011) Purification of innate immunostimulant from green tea using a silkworm muscle contraction assay. Drug Discov Ther. 5,18-25.
【文献】Fujiyuki T, Hamamoto H, Ishii K, Urai M, Kataoka K. Takeda T, Shibata S, Sekimizu K. (2012) Evaluation of innate immune stimulating activity of polysaccharides using a silkworm (Bombyx mori) muscle contraction assay. Drug Discov Ther. 6, 88-93.
【文献】Urai M, Kataoka K, Nishida S, Sekimizu K. (2017) Structural analysis of an innate immunostimulant from broccoli, Brassica oleracea var. italica. Drug Discov Ther. 11, 230-237.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、高い自然免疫活性化作用を有する新規物質の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ブロッコリー抽出物から得られた中性多糖類を、本発明者によって確立されたカイコ筋収縮活性測定法を用いて自然免疫活性化作用を測定した結果、既に報告されている多糖等に比べて約10倍以上と著しく高い比活性を示すことを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有することを特徴とする自然免疫活性化剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有する自然免疫活性化剤の製造方法であって、
少なくとも、ブロッコリーを熱水抽出する工程、及び、中性多糖類を回収する工程を含むことを特徴とする自然免疫活性化剤の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有し、上記の自然免疫活性化剤の製造方法で得られるようなものであることを特徴とする自然免疫活性化剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記自然免疫活性化剤の製造方法を用いることを特徴とする自然免疫活性化飲食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、これまでに知られなかった高い比活性を有する、すなわち極めて高い自然免疫活性化作用を有する自然免疫活性化剤を提供することができる。また、極めて高い自然免疫活性化作用を有する飲食品を提供することができる。
【0013】
また、本発明における中性多糖類、及び、該中性多糖類を有効成分として含有する本発明の自然免疫活性化剤は、極めて安全で副作用もないものである。また、各種剤形にすることが容易であり、飲食品に添加することも容易なので、安全な自然免疫活性化剤や機能性食品として、極めて効果的に自然免疫を活性化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0015】
本発明の自然免疫活性化剤は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有するものである。
更には、本発明の自然免疫活性化剤は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有し、後述する「自然免疫活性化剤の製造方法」で得られるようなものである。
【0016】
本発明の自然免疫活性化剤の製造方法は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有する自然免疫活性化剤の製造方法であって、
少なくとも、ブロッコリーを熱水抽出する工程、及び、中性多糖類を回収する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の製造方法で得られる、ブロッコリーに含まれる「自然免疫活性化剤の有効成分」は、例えば、後述の実施例で示すように、ブロッコリーを熱水抽出し、エタノール沈殿画分をDEAEセルロースクロマトグラフィーに供し、カラム未吸着画分として得られたことにより、該自然免疫活性化成分は中性多糖類である。
【0018】
上述のとおり、本発明の自然免疫活性化剤は、ブロッコリーに含まれる中性多糖類を有効成分として含有し、後述する「自然免疫活性化剤の製造方法」で得られるようなものである。
該自然免疫活性化剤の有効成分である中性多糖類は例えば人工的に合成することができる可能性もあり、後述する「自然免疫活性化剤の製造方法」以外の製造方法を用いても、該中性多糖類として類似したものを得ることができる可能性もある。
しかしながら、「後述する製造方法で特定された中性多糖類」を、「物として他の中性多糖類」と区別して、単に、中性多糖類の化学構造、組成、各含有濃度、不純物濃度、物性パラメーター等の「物を直接特定する要件」のみで表すことはできない。
【0019】
したがって、上記中性多糖類に含まれる全物質の同定及びその濃度を特定することは、莫大な時間や労力がかかり、実際的ではなく、「本発明の自然免疫活性化剤に有効成分として含まれる中性多糖類」は製造方法によってしか特定できない。
【0020】
上記熱水抽出において、ブロッコリーの何れの組織を用いていてもよく、ブロッコリーの花芽、花蕾、花茎等を用いる。また、ブロッコリーの複数の組織を使用してもよいし、各組織に分けることなくブロッコリー全体を使用してもよい。
優れた自然免疫活性化作用を得られるという点等で、花芽及び/又は花蕾から抽出することが好ましい。
【0021】
上記熱水抽出方法は特に限定されないが、例えば、オートクレーブ装置中に水等の溶媒を加えて該装置を加熱することにより、熱水抽出物を得ることができる。
オートクレーブ装置を使用するときの溶媒は特に制限はないが、実施例に示すように、水を用いることが好ましい。
【0022】
熱水抽出条件は、高い比活性の自然免疫活性化成分が得られるという点等で、熱水抽出の温度は80℃以上160℃以下が好ましく、90℃以上150℃以下がより好ましく、100℃以上140℃以下が特に好ましい。
また、熱水抽出時間は1分以上60分以下が好ましく、5分以上50分以下がより好ましく、10分以上40分以下が特に好ましい。
【0023】
また、本発明の製造方法において、熱水抽出する前に、ブロッコリーを粉砕、細断又はすりおろしすると、高い比活性である自然免疫活性化成分を得ることができる点で好ましい。
粉砕、細断又はすりおろしする手段は、植物組織が破壊されたり、表面積が大きくなったりして自然免疫活性化成分が抽出し易くなれば、それらの手段には特に限定はなく、公知の手段を使用することができる。粉砕、細断又はすりおろしする装置としては特に限定はないが、ホモジナイザー等の粉砕機等が挙げられる。
【0024】
上記「ブロッコリーを粉砕、細断又はすりおろしする工程」は、高い比活性である自然免疫活性化成分を得ることができる点で等で、10℃以下で行うことが好ましい。例えば、ホモジナイザー等の粉砕機を用いて「ブロッコリーを粉砕、細断又はすりおろしする工程」を行う場合、氷上で行うことができる。
【0025】
上記「ブロッコリーを粉砕、細断又はすりおろしする工程」の前工程及び/又は後工程として他の工程を加えることも可能である。「他の工程」としては、細胞組織破壊、凍結、乾燥、加熱、保存、薬品処理、酵素処理等が挙げられる。これらは、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させやすくしたり、自然免疫活性化成分を溶出させ易くしたりするために行われる。「他の工程」では、少なくとも自然免疫活性化成分を実質的に溶出させない又は系外に出さないことが好ましい。
【0026】
ブロッコリー熱水抽出物から中性多糖類を回収する方法は特に限定されず、公知の手段を使用することができる。例えば、実施例に記載のように、ブロッコリー熱水抽出物からエタノール沈殿により糖類を回収後、該糖をクロマトグラフィーによって分離して目的の中性多糖類を回収することができる。
本発明の自然免疫活性化剤の製造方法は、上記熱水抽出した後に、エタノール沈殿する工程を含むことが好ましい。
【0027】
また、本発明の自然免疫活性化剤の製造方法において、上記中性多糖類を回収する工程が、陰イオン交換体への未吸着画分を回収する工程であることが好ましい。
更に、該陰イオン交換体がDEAEセルロース担体であることが好ましい。
【0028】
非特許文献5等に示すように、本発明者はこれまでに、ブロッコリー熱水抽出物から糖類を回収し、DEAEセルロースグラフィーに供することによって得られるカラム吸着画分(酸性多糖類)に自然免疫活性化作用があることを報告している。
一方、本願の実施例により見出された自然免疫活性化成分は中性多糖類であり、非特許文献5に記載の成分とは構造が異なる。また、非特許文献5に記載の成分の比活性は130units/mgであり、本願の実施例で見出した中性多糖類の方が約10倍以上高く、非特許文献5等に記載の成分とは明らかに異なる。
【0029】
また、特許文献2及び3に示すように、本発明者はこれまでに、マイクロ波照射により加熱したブロッコリーを、0~40℃の流水で水洗することによって、自然免疫活性化成分以外の成分を溶出させてから、自然免疫活性化成分を回収(抽出)する方法が掲載されている。
しかしながら、本願の実施例により見出された自然免疫活性化成分は、陰イオン交換体を担体としたDEAEセルロースクロマトグラフィーに供し、未吸着成分だけを回収しているので、特許文献2及び3に記載の成分とは明らかに異なる。また、特許文献2及び3に記載の成分よりも比活性が約10倍以上高く、その点からも特許文献2及び3に記載の成分とは明らかに異なる。
【0030】
本発明の製造方法によって製造される自然免疫活性化剤中の有効成分である中性多糖類の、自然免疫活性化剤全体に対する含有量は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができる。自然免疫活性化剤全体を100質量部としたときに、多糖類の合計量として、0.01~100質量部の含有量が好ましく、より好ましくは0.1~99質量部、特に好ましくは1~95質量部、更に好ましくは10~90質量部の含有量である。
【0031】
本発明の自然免疫活性化剤は、有効成分である上記多糖類に加えて、「その他の成分」を含有することができる。
該「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬学的に許容し得る担体等が挙げられる。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば後述する剤形等に応じて適宜選択することができる。また、該自然免疫活性化剤中の該「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
本発明の自然免疫活性化剤の剤形としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶剤、懸濁剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散布剤等が挙げられる。
【0033】
上記自然免疫活性化剤としては、例えば、上記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
【0034】
上記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
上記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
上記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
上記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
上記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0035】
上記経口液剤としては、例えば、上記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤、食用(加工)油、動植物油等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
【0036】
上記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。上記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。上記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0037】
上記注射剤としては、例えば、上記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
上記pH調節剤及び該緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。上記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。上記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。上記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
【0038】
上記軟膏剤としては、例えば、上記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
上記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。上記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0039】
上記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に上記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。上記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シート等が挙げられる。
【0040】
本発明の自然免疫活性化剤は、例えば、自然免疫機構の活性化を必要とする個体(例えば、健康維持や疲労回復を必要とする個体;癌や生活習慣病の予防や治療を必要とする個体;細菌、真菌、ウイルス等に感染した個体;等)に投与することにより使用することができる。
【0041】
本発明の自然免疫活性化剤の投与対象動物としては、特に制限はないが、例えば、ヒト;マウス、ラット等の実験動物;サル;ウマ;ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ等の家畜;ネコ、イヌ等のペット;等が挙げられる。
【0042】
また、上記自然免疫活性化剤の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、上記した剤形等に応じ、適宜選択することができ、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入等が挙げられる。
【0043】
また、上記自然免疫活性化剤の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与量は、有効成分である上記中性多糖類全体の量として、1mg~30gが好ましく、10mg~10gがより好ましく、100mg~3gが特に好ましい。
また、該自然免疫活性化剤の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
【0044】
また、本発明の自然免疫活性化飲食品の製造方法は、上記自然免疫活性化剤の製造方法を用いることを特徴とする。
つまり、該自然免疫活性化飲食品には、上記中性多糖類または自然免疫活性化剤が含まれる。
【0045】
上記自然免疫活性化飲食品中の、中性多糖類又は自然免疫活性化剤の含有量は、特に制限がなく、目的や飲食品の態様(種類)に応じて、適宜選択することができるが、飲食品全体を100質量部としたときに、上記自然免疫活性化剤の合計量で、0.001~100質量部で含有することが好ましく、より好ましくは0.01~100質量部、特に好ましくは0.1~100質量部の含量である。
【0046】
また、中性多糖類又は自然免疫活性化剤の何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の、上記飲食品中の各々の物質の含有量比には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
上記自然免疫活性化飲食品は、上記中性多糖類又は上記本発明の自然免疫活性化剤に加えて、更に、「その他の成分」を含有することができる。
かかる自然免疫活性化作用を有する自然免疫活性化飲食品における、上記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種食品原料等が挙げられる。また、「その他の成分」の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
上記自然免疫活性化飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼリー、キャンディー、チョコレート、ビスケット等の菓子類;緑茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料;発酵乳、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品;野菜飲料、果実飲料、ジャム類等の野菜・果実加工品;スープ等の液体食品;パン類、麺類等の穀物加工品;各種調味料;等が挙げられる。
これらの飲食品の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、通常の各種飲食品の製造方法に応じて、適宜製造することができる。
【0049】
また、上記自然免疫活性化飲食品は、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口固形剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口液剤として製造されたものであってもよい。上記経口固形剤、経口液剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した薬剤の経口固形剤、経口液剤の製造方法にならい、製造することができる。
【0050】
上記飲食品は、自然免疫機構の活性化を目的とした、機能性食品、健康食品等として、特に有用であると考えられる。
【0051】
本発明の自然免疫活性化飲食品の製造方法において、当業者に周知の工程を行うことができる。当業者であれば、本発明の中性多糖類を他の成分と混合する工程、成形工程、殺菌工程、発酵工程、焼成工程、乾燥工程、冷却工程、造粒工程、包装工程等を適宜組み合わせ、目的の飲食品を作ることが可能である。
【0052】
<作用・原理>
既に特許文献2及び3に記載されているような「マイクロ波照射により加熱したブロッコリーを、0~40℃の流水で水洗してから成分を抽出する方法では、自然免疫活性化成分以外の成分が多く混入していたと考えられる。
本願の実施例により見出された自然免疫活性化成分は、DEAEセルロースクロマトグラフィーによって、「吸着成分である酸性多糖類等」を排除して「中性多糖類」としているので、特許文献2及び3に記載の成分よりも、自然免疫活性化の比活性が約10倍以上も高くなったと考えられる。
【実施例
【0053】
以下、実施例及び検討例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。以下、「%」と言う記載は、それが質量に関するものについては「質量%」を意味する。
【0054】
実施例1
<ブロッコリー抽出物からの中性多糖類(イムノコリ)の調製>
氷上でブロッコリーの花芽15gをハサミで切り取り、精製水30mLを加え、ポリトロンホモジナイザーを使用してホモジナイズ処理した。サンプルをオートクレーブ処理(121℃、20分)後遠心分離し(8,000rpm、10分)、上澄みを熱水抽出液とした。
次に、エタノール沈殿を行い、沈殿物を回収した。得られた沈殿物を10mMTris-HCl緩衝液(pH7.9)に溶解し、DEAEセルロースカラムクロマトグラフィーに供して未吸着画分を回収した。
DEAEセルロースカラムクロマトグラフィーに吸着しなかったことより、該未吸着画分は中性多糖類であると示唆された。以下、該中性多糖類を「イムノコリ」と言う場合がある。
次に、イムノコリの抽出条件に付いて、検討例1~4で検討した。
【0055】
以下の検討例において、比活性はHamamoto H. et al., J. Biol. Chem. Jan. 25; 283(4):2185-91(2008)に記載されている方法を用いて、カイコ筋肉収縮活性を計算した。
具体的には、5齢カイコの断頭筋肉標本に、試料0.05mLを血液内投与し、カイコ幼虫の筋肉収縮の程度を、Contraction value(C値)により評価した。C値が最大になったときに体長を測定し、「『試料注射前のカイコの体長(cm)』-『試料注射後のカイコの体長(cm)』」を、「試料注射前のカイコの体長(cm)」で割った値である。
また、上記試料を0.9%生理食塩水で1/1、1/4、1/16、1/64、1/256に系列段階希釈した液で、それぞれC値を測定し、C値が0.15のときの緩行性筋収縮活性を1unitと定義し、比活性(単位質量当たりのユニット数)を求めた。
【0056】
検討例1
<エタノール沈殿物を溶媒に溶解させるときの条件検討>
ブロッコリーをオートクレーブ処理(熱水抽出)後、エタノール沈殿して得られた沈殿物を緩衝液(Tris-HCl(pH7.9))に溶解させるときの温度と時間を検討した。検討結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、エタノール沈殿物を緩衝液に溶解させるときに加熱すると比活性が減少してしまうことがわかった。
以下の検討例において、エタノール沈殿物を緩衝液に溶解させるときは室温で行うことにした。
【0059】
検討例2
<ホモジナイズ処理の条件検討>
次に、ポリトロンホモジナイザーを使用して、ブロッコリーをホモジナイズ処理するときの温度について検討した。検討結果を表2に示す。
また、上記エタノール沈殿物をDEAEセルロースクロマトグラフィーに供する前に乾燥処理及び/又はオートクレーブ処理したときの比活性への影響も検討した。表2中、「+」は処理を行ったことを示し、「-」は処理を行わなかったことを示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示すように、氷上でホモジナイズ処理を行い、エタノール沈殿画分を乾燥及びオートクレーブ処理しないときに高い比活性を得られることが分かった。
【0062】
検討例3
<熱水抽出時に使用する抽出溶媒の検討>
次に、熱水抽出に用いる溶媒について検討した。検討結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示すように、Tris-HCl(pH7.9)又はリン酸ナトリウム(Na-リン酸、pH6.0)緩衝液を用いて抽出した試料は、水で抽出したときに比べて比活性が低下した。
したがって、目的の中性多糖類を熱水抽出するときは、溶媒として水を使用した方が良いことが分かった。
【0065】
検討例4
<ホモジナイズ処理後の37℃処理の効果>
ブロッコリーを氷上でホモジナイズ処理後、37℃で1時間処理したときにDEAEセルロース未吸着画分の活性に影響があるかどうかを検討した。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
表4に示すように、ホモジナイズ処理物(ホモジネート)を37℃で処理すると、未処理のものと比べて比活性が約1/10に低下した。これは、ホモジナイズ処理物中に存在する分解酵素により、自然免疫活性化成分が分解されたことが考えられる。
【0068】
検討例5
<熱水抽出時の温度及び抽出時間の検討>
ブロッコリーを氷上でホモジナイズ処理後の、熱水抽出の温度と時間について検討した。検討結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5に示すように、抽出温度を比較すると、121℃の方が比活性は高かった。また、抽出時間を比較すると、20分以上抽出を行うと、比活性が高くなることが分かった。
【0071】
検討例6
<DEAEセルロース未吸着画分の乾燥重量当たりの比活性の測定>
実施例1で得られたイムノコリについて、糖1mg当たりの比活性が3,000units/mg(糖)付近であったサンプルについて、乾燥重量当たりの比活性を算出した。結果を表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
<実施例のまとめ>
表7には、非特許文献4に掲載されている、各多糖の自然免疫活性の比活性を示す。これらの比活性は上記検討例に記載されている手法と同様の手法によって測定されたものである。
【0074】
【表7】
【0075】
表7に示すように、βグルカン等の多糖類が本発明者によって構築されたカイコ筋肉収縮活性アッセイによって自然免疫活性を有することが報告されている。しかしながら、その中で最も高い比活性を示すカードランの比活性は100units/mgである。また、健康食品として広く利用されている酵母βグルカンは、20~33units/mgである。したがって、本発明の製造方法によって得られた中性多糖類であるイムノコリの比活性は既に報告された多糖類の活性に比べて、顕著に高い値である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、自然免疫機能を活性化する効果が高い中性多糖類が得られるので、各種の飲食品、錠剤、顆粒、チュアブルタブレット等に、広く利用することができる。また、本発明の製造方法で得られる中性多糖類は、生体内で自然免疫機能活性化作用を有する機能性食品、特定保健用食品、免疫機能低下が問題となる病人食や介護食等の素材として特に好適に利用することができる。更に、医薬品の原材料としても広く利用することが可能である。