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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】配管または配線の敷設方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/08 20060101AFI20230320BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
E02D27/08
E02D27/01 A
E02D27/01 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021042813
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142590
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595106969
【氏名又は名称】大東建託株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一利
(72)【発明者】
【氏名】川上 剛史
(72)【発明者】
【氏名】阿野 夏希
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 光
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240326(JP,A)
【文献】実開昭61-040446(JP,U)
【文献】特開2002-054203(JP,A)
【文献】特開2012-052328(JP,A)
【文献】特開2016-008445(JP,A)
【文献】特開平08-296791(JP,A)
【文献】特開2002-186155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の底盤及び該底盤から立ち上がる立ち上がり壁部を有する建物の基礎に配管または配線を敷設する配管または配線の敷設方法において、
前記底盤における前記立ち上がり壁部との界面に配設される粘着材と、該粘着材の上面に固着され、前記立ち上がり壁部を厚み方向に貫通する貫通孔を形成する筒状部材とを備え、該筒状部材が、前記界面に沿って平坦に延びるように形成された板状部と、該板状部の幅方向両端部からそれぞれ上方へ延びるとともに上側部分が互いに接近する方向に湾曲した第1及び第2側板部と、該第1側板部の上端部から該第2側板部の上端部まで延びる上板部とを有するとともに、前記板状部の幅方向の寸法が前記第1及び第2側板部の高さ方向の寸法よりも長く設定され、前記配管または前記配線を前記幅方向に複数本並べて挿通可能に構成された基礎貫通部材を用意し
前記底盤を構成するコンクリートの打設後、当該コンクリートが固化しないうちに、前記基礎貫通部材を、前記幅方向が前記壁部の厚み方向と直交する水平方向に向くように、当該コンクリートに設置し、
その後、前記立ち上がり壁部を構成するコンクリートを打設して前記基礎貫通部材を埋設し、
次いで、複数本の前記配管または前記配線を前記貫通孔に通して前記板状部の幅方向に並べることを特徴とする配管または配線の敷設方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配管または配線の敷設方法において、
前記筒状部材を、当該筒状部材の軸芯が略水平に延びるように配設することを特徴とする配管または配線の敷設方法。
【請求項3】
請求項1また2に記載の配管または配線の敷設方法において、
給排水管、給湯管、追炊管、電線管、電線及びガス管の少なくとも1つを前記貫通孔に通すことを特徴とする配管または配線の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管または配線の敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅や商業施設等のコンクリート製の基礎の立ち上がり壁部には人通口が形成されることがある(例えば特許文献1、2参照)。人通口は、床下の点検時などに作業者が通る床下通路を確保するためのものである。例えば図10に示すようにベタ基礎100を上方から見たとき、底盤101の周縁部を囲むように外側立ち上がり壁部102が形成されるとともに、外側立ち上がり壁部102の内方に縦方向及び横方向に延びる内側立ち上がり壁部103が形成されている場合、各内側立ち上がり壁部103には、上記人通口104がそれぞれ形成されており、作業者が人通口104を通って各区画へ行くことができるようになっている。
【0003】
一方、ベタ基礎100の底盤101には、給排水管、給湯管、追炊管、電線管、電線、ガス管等の配管200を屋外から屋内へ引き込む引き込み部100aと、上記配管200を屋内から屋外へ引き出す引き出し部100bとが設けられている。従来の人通口104を有するベタ基礎100の場合には、引き込み部100aから引き込まれた配管200を引き出し部100bまで通す際に、複数の人通口104を経由させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-186824号公報
【文献】特開2018-184705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、人通口は、点検作業時の作業者が通るルートを確保することを優先して設けているので、配管200の取り回し経路は考慮されていない。また、引き込み部100a及び引き出し部100bの位置は、外部との接続等を優先して決定される。したがって、図10に示す平面視で、引き込み部100aから引き込まれた配管200は、人通口104が存在する方へ大きく屈曲するように敷設され、その後、引き出し部100bに達するように再び大きく屈曲させて敷設されることがある。このように配管200を屈曲させると、配管長が長くなるので材料費が高くなる。さらに、敷設時に配管200を何度も曲げなければならず、施工時の手間が増える。
【0006】
そこで、図11図13に示すように、内側立ち上がり壁部103を貫通するスリーブ管120を人通口104とは別に設置し、このスリーブ管120内に配管200を通すことが考えられる。これにより、平面視では配管200が直線状になるように敷設することが可能になる。
【0007】
ところが、スリーブ管120は、図11に示すようにコンクリートの打設前に、主筋110に固定される配筋111に対してスリーブホルダー112を介して固定しておく必要がある。そのとき、スリーブホルダー112の下部を番線等で縛ることにより、コンクリートの流動圧によるスリーブ管120の脱落や位置ずれを抑制する必要がある。このため、図12に示すように、コンクリートの打設後、スリーブ管120が底盤101から上方へ離れた状態で固定されるので、図13に示すように配管200を上へ曲げてスリーブ管120に通した後、下へ曲げる必要があり、これをスリーブ管120の数だけ繰り返すことになるので、結局、配管長が長くなって材料費が高くなるとともに、施工時の手間が増える。また、配管を曲げると当該配管に負荷がかかるので、配管を敷設する際にはできるだけ曲げたくないという要求もある。電線等の配線の場合も同様である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建物の基礎に敷設される配管や配線の長さを短くするとともに、敷設時の手間を減らし、さらに配管や配線にかかる負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、コンクリート製の底盤及び該底盤から立ち上がる立ち上がり壁部を有する建物の基礎に敷設する配管及び配線の少なくとも一方を通す貫通孔を形成するための基礎貫通部材において、前記底盤における前記立ち上がり壁部との界面に配設される粘着材と、該粘着材の上面に固着され、前記立ち上がり壁部を厚み方向に貫通するとともに前記貫通孔を形成する筒状部材とを備えているものである。
【0010】
この構成によれば、粘着材と筒状部材とを備えた基礎貫通部材となる。そして、基礎を構成している底盤のコンクリート打設後、立ち上がり壁部のコンクリートを打設する前に、底盤における立ち上がり壁部との界面に粘着材を配設すると、筒状部材が底盤の界面に対して粘着材によって固定される。このとき、人通口とは別の部位、例えば配管や配線を平面視で直線状に敷設可能な位置に筒状部材を配置しておくことができる。
【0011】
その後、立ち上がり壁部のコンクリートを打設すると、筒状部材が粘着材によって底盤の界面に固定されているので、コンクリートの流動圧による筒状部材の位置ずれが抑制され、筒状部材が粘着材と共にコンクリートに埋設される。コンクリートが固化すると、立ち上がり壁部の所望の部位であってかつ底盤に近い部位に、当該立ち上がり壁部を厚み方向に貫通する貫通孔が筒状部材によって形成される。筒状部材は底盤の界面に固定しているので、配管や配線を上下に曲げることなく、直線状に近い形状のままで貫通孔に通すことができる。
【0012】
本開示の第2の側面では、前記筒状部材は、当該筒状部材の軸芯が略水平に延びるように配設されるものである。
【0013】
この構成によれば、筒状部材の軸芯が略水平になるので、立ち上がり壁部に形成される貫通孔も略水平に延びることになる。これにより、配管や配線を略水平に通すことができるので、配管や配線を曲げる作業が不要になる。
【0014】
本開示の第3の側面では、前記筒状部材の下部は、略水平に延びる板状部で構成されている。
【0015】
すなわち、底盤における立ち上がり壁部との界面は略水平であるため、筒状部材の下部を略水平な板状部で構成しておくことで、筒状部材を底盤に設置する際に、当該筒状部材を安定させることができる。
【0016】
本開示の第4の側面では、前記筒状部材の軸芯に直交する水平方向の寸法は、前記筒状部材の高さ方向の寸法よりも長く設定されているものである。
【0017】
この構成によれば、例えば複数本の配管や配線を筒状部材に通す場合に、水平方向に並べて通すことができる。これにより、配管や配線を上下方向に曲げずに済む。
【0018】
本開示の第5の側面では、前記筒状部材は、筒状に成形された樹脂材で構成されている。
【0019】
本開示の第6の側面では、前記筒状部材は、1種若しくは2種以上の樹脂を混合した樹脂材で構成されている。
【0020】
本開示の第7の側面では、前記筒状部材は、同じ樹脂材を2以上積層した部材で構成されている。
【0021】
本開示の第8の側面では、前記筒状部材は、筒状に成形された鋼製材を備えている。
【0022】
本開示の第9の側面では、前記筒状部材は、前記鋼製材を被覆する被覆部を備えており、前記被覆部は、1種若しくは2種以上の樹脂を混合した樹脂材、または、1種若しくは2種以上のゴムを混合したゴム材料である。
【0023】
この構成によれば、筒状部材が鋼製材を備えているので、筒状部材の強度及び剛性が高まり、コンクリートの流動圧や重量による筒状部材の変形を抑制できる。また、鋼製材が樹脂またはゴム材料で被覆されているので、鋼製材の腐食を抑制できる。
【0024】
本開示の第10の側面では、前記筒状部材は、給排水管、給湯管、追炊管、電線管、電線及びガス管の少なくとも1つを通す前記貫通孔を前記立ち上がり壁部に形成する部材である。
【0025】
すなわち、住宅は商業施設等の建物の基礎には、給排水管、給湯管、追炊管、電線管、電線、ガス管等が敷設されることがあり、これら配管や配線はいずれも複数の立ち上がり壁部を貫通させて取り回す必要がある。本構成では、複数の立ち上がり壁部に筒状部材を埋設することで、上記各配管や配線の敷設ルートを直線状に確保することができるので、上記各配管や配線を殆ど曲げることなく、複数の立ち上がり壁部を貫通させて取り回すことができる。
【0026】
本開示の第11の側面では、前記粘着材は、コンクリートへの接着能を有するブチルゴム製である。
【0027】
この構成によれば、粘着材が粘弾性を持つので、底盤の不陸を粘着材の変形によって吸収することができる。また、粘着材がコンクリートへの接着能を有するので、筒状部材を底盤に強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、底盤における立ち上がり壁部との界面に配設される粘着材の上面に筒状部材を固着しておき、この筒状部材をコンクリートに埋設することで、立ち上がり壁部の所望の部位で、かつ、底盤に近い部位に貫通孔を形成することができる。これにより、建物の基礎に敷設される配管や配線を直線に近くなるように取り回すことができるので、配管や配線の長さを短くすることができるとともに、施工時の手間を減らすことができ、さらに配管や配線にかかる負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る基礎貫通部材の斜視図である。
図2】基礎貫通部材を使用して配管の敷設ルートを形成した基礎の平面図である。
図3】一般的なベタ基礎の平面図である。
図4】ベタ基礎の底盤を構成するコンクリートを打設した状態を示す縦断面図である。
図5】底盤に基礎貫通部材を設置した状態を示す図4相当図である。
図6】立ち上がり壁部を構成するコンクリートを打設した状態を示す図4相当図である。
図7】配管を貫通孔に挿通した状態を示す図4相当図である。
図8図7におけるVIII-VIII線に相当する断面図である。
図9】配管を貫通孔に挿通した状態を示す立ち上がり壁部の平面図である。
図10】人通口を利用して配管を敷設した従来例を示すベタ基礎の平面図である。
図11】従来例に係るスリーブ管を配筋に固定した状態を示す縦断面図である。
図12】従来例に係るスリーブ管を埋設した状態を示す図11相当図である。
図13図12におけるXIII-XIII線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る基礎貫通部材1の斜視図である。基礎貫通部材1は、建物のベタ基礎100(図2に示す)に敷設する配管200や配線(図示せず)を通す貫通孔10を形成するための部材である。1つの貫通孔10に通す配管200や配線の数は、1本であってもよいし、2本以上であってもよい。また、貫通孔10に通す配管200や配線としては、例えば給排水管、給湯管、追炊管、電線管、電線及びガス管の少なくとも1つを挙げることができる。また、1つの貫通孔10には、種類の異なる複数の配管200や配線を通すこともできる。
【0032】
この実施形態の説明では、基礎貫通部材1の構造を説明する前にベタ基礎100の構成について説明する。図3は、基礎貫通部材1を設けていないベタ基礎100の平面図である。一方、図2は、基礎貫通部材1を設けたベタ基礎100の平面図であり、この基礎貫通部材1を設けたベタ基礎100を基礎構造、基礎貫通構造等と呼ぶこともできる。
【0033】
ベタ基礎100の上に構築される建物は、例えば住宅、商業施設、事務所、店舗、工場等を挙げることができ、どのような建物であってもよい。また、建物の構造や床面積も特に限定されるものではない。
【0034】
ベタ基礎100は、コンクリート製の底盤101と、該底盤101の周縁部から立ち上がるコンクリート製の外側立ち上がり壁部102と、外側立ち上がり壁部102の内側において該底盤101の上面から立ち上がる内側立ち上がり壁部103とを備えている。図4に示すように、底盤101は水平方向に延びており、当該底盤101には、鉛直方向に延びる複数の主筋110の下側部分が埋設されている。複数の主筋110は、立ち上がり壁部102、103に対応する部分に埋設されており、水平方向に互いに間隔をあけて配置されている。主筋110の上側部分が立ち上がり壁部102、103に埋設されるようになっている。底盤101の上面は、当該底盤101における立ち上がり壁部102、103との界面101aである。
【0035】
図3に一例を示すように、外側立ち上がり壁部102は、平面視で枠状に形成することができるが、外側立ち上がり壁部102の形状は特に限定されるものではなく、建物の形状や構造に合わせて変更できる。内側立ち上がり壁部103は、複数設けることができ、例えば図3の左右方向に延びる内側立ち上がり壁部103と、図3の上下方向に延びる内側立ち上がり壁部103とを設けることができる。内側立ち上がり壁部103と外側立ち上がり壁部102とは一体化されている。図10に示すように、内側立ち上がり壁部103には、人通口104が設けられていてもよい。立ち上がり壁部102、103には、図8に示すように主筋110に結合される配筋111が埋設されている。配筋111は、底盤101の界面101aから上方に間隔をあけて配置され、水平方向に延びている。内側立ち上がり壁部103の数や形状も建物の形状や構造に合わせて変更できる。この例では、図3の上下方向に延びる内側立ち上がり壁部103を1つ設け、図3の左右方向に延びる内側立ち上がり壁部103を2つ設けている。
【0036】
図2に示すように、ベタ基礎100には、床下の配管200や配線が敷設される場合があり、この場合、底盤101には、配管200や配線を屋外から屋内へ引き込む引き込み部100aと、上記配管200や配線を屋内から屋外へ引き出す引き出し部100bとが設けられている。この例では、図2の上側に引き込み部100aが設けられ、図2の下側の引き出し部100bが設けられており、引き込み部100aと引き出し部100bとの間には、複数の内側立ち上がり壁部103が設けられている。引き込み部100a及び引き出し部100bは、屋外に連通する孔や管等で構成されている。引き込み部100aから引き込まれた配管200や配線は、底盤101の上面に敷設される。
【0037】
次に、基礎貫通部材1の構造について説明する。図1に示すように、基礎貫通部材1は、筒状部材2と、粘着材3とを備えており、図6に示すように内側立ち上がり壁部103の所望の部位に埋設される。筒状部材2は、内側立ち上がり壁部103を厚み方向に貫通するとともに、配管200を通すための貫通孔10を形成するための部材である。筒状部材2は、例えば鋼製材、樹脂等で構成されている。筒状部材2を構成する樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよく、硬質塩化ビニル、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等を挙げることができる。また、筒状部材2は、硬質塩化ビニル、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のうち、任意の1種若しくは任意の2種以上の樹脂を混合した樹脂材で構成されていてもよい。また、筒状部材2は、同じ樹脂材を2以上積層した部材で構成されていてもよい。筒状部材2の剛性及び強度は、後述するコンクリートの打設時の流動圧やコンクリートの重量によって変形しない程度であればよく、鋼製材や樹脂の種類の選定、厚みの設定によってそのような剛性及び強度を確保することができる。
【0038】
筒状部材2は、筒状に成形された鋼製材と、当該鋼製材を被覆する1種若しくは2種以上の樹脂、ゴム材料、エラストマー等からなる被覆部とを備えていてもよい。被覆部を構成する樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよく、塩化ビニル、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等を挙げることができる。被覆部は、硬質塩化ビニル、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン等のうち、任意の1種若しくは任意の2種以上の樹脂を混合した樹脂材で構成されていてもよい。被覆部は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPT)等のゴム材料で構成されていてもよい。また、被覆部は、任意の任意の1種若しくは任意の2種以上のゴムを混合したゴム材で構成されていてもよい。また、被覆部は、任意の任意の1種若しくは任意の2種以上のエラストマーを混合した材料で構成されていてもよい。被覆部は、鋼製材の内面と外面との一方のみまたは両方を被覆するように設けることができる。
【0039】
筒状部材2は、コンクリートへ埋設された状態で当該筒状部材2の軸芯A(図1図6及び図8に示す)が略水平に延びるように底盤101の界面101aに配設される。また、筒状部材2の下部は、底盤101の界面101aに沿う方向、即ち、略水平方向に延びる平坦な板状部2aで構成されている。板状部2aの幅方向は、軸芯Aと直交する水平方向であり、板状部2aの長さ方向は、軸芯A方向(軸芯Aの延びる方向)である。板状部2aは、平坦でなくてもよく、例えば下へ湾曲していてもよい。
【0040】
筒状部材2は、板状部2aの幅方向両端部からそれぞれ上方へ延びるとともに、軸芯Aに沿う方向に延びる第1側板部2b及び第2側板部2cと、第1側板部2bの上端部から第2側板部2cの上端部まで延びる上板部2dとを備えている。第1側板部2b及び第2側板部2cの間隔は、当該第1側板部2b及び第2側板部2cの上下方向の寸法よりも長くなっている。これにより、図6に示すように、筒状部材2の軸芯Aに直交する水平方向(幅方向)の寸法Bは、筒状部材2の高さ方向の寸法Cよりも長く設定されることになる。寸法B、寸法Cは、それぞれ筒状部材2の内寸である。寸法Cは、配管200の直径よりも若干長めに設定されており、配管200の挿通作業が容易に行えるようになっている。一方、寸法Bは、配管200の2本分の直径を合わせた寸法よりも若干長めに設定されており、2本の配管200を水平方向に並べた状態で挿通することが可能になっている。尚、寸法Bは、配管200の3本分または4本分の直径を合わせた寸法よりも若干長めに設定されていてもよく、この場合は、3本または4本の配管200を水平方向に並べた状態で挿通することが可能になっている。これにより、複数本の配管200を筒状部材2に通す際に、各配管200を上下方向に曲げなくて済む。複数本の配管200を筒状部材2に通す場合、配管200の直径は互いに異なっていてもよい。この場合、筒状部材2の高さ方向の寸法Cは、最も大きな外径を有する配管200の直径に対応させればよい。
【0041】
このように、寸法Bは、配管200の複数本分の直径を合わせた寸法よりも長めに設定されているのが好ましいが、寸法Bと寸法Cとが同程度であってもよい。寸法Bと寸法Cとが同程度の場合には、1本の配管200を筒状部材2に通すことができる。
【0042】
筒状部材2の第1側板部2b及び第2側板部2cの上側部分は、互いに接近する方向に湾曲している。これにより、筒状部材2の内寸は、上へ行くほど短くなるが、配管200は一般的に円形断面を有しているので、配管200の挿通作業性が悪化することはない。つまり、第1側板部2b及び第2側板部2cの上側部分の形状を配管200の外形状に沿うような形状にすることができるので、筒状部材2内のデッドスペースを削減できる。尚、筒状部材2の形状は上記した形状に限られるものではなく、例えば円筒状、角筒状等であってもよい。
【0043】
粘着材3は、底盤101の界面101aに配設される部材であり、コンクリートへの接着能を有するブチルゴム製である。粘着材3の材料としては、例えばブチル再生ゴムを用いた非加硫型粘着塑性体(粘弾性体)を適用でき、より具体的には、早川ゴム株式会社製のスパンシール(登録商標)を適用できる。このスパンシールは、セメント中に含まれる金属酸化物(CaO)と、スパンシールの有する活性基(カルボキシル基)がイオン反応して化学的に結合することにより、コンクリートへの接着能を示すものである。尚、粘着材3の材料は、上記スパンシールに限られるものではなく、筒状部材2への接着能と、コンクリートへの接着能とを示す材料であればよい。
【0044】
この実施形態では、粘着材3は、シート状または板状に成形されており、その上面が筒状部材2の板状部2aの下面に接着されている。言い換えると、筒状部材2の板状部2aが粘着材3の上面に固着された状態になっている。粘着材3は、筒状部材2の板状部2aの下面に沿っており、板状部2aの下面の大部分が粘着材3によって覆われている。
【0045】
粘着材3の厚みは、例えば1mm以上10mm以下の範囲で設定することができる。このような厚みを有していることで、底盤101の界面101aの不陸(凹凸)を粘着材3の変形によって吸収することができる。また、粘着材3は1枚であってもよいし、複数枚であってもよい。
【0046】
(施工要領)
次に、基礎貫通部材1を用いて内側立ち上がり壁部103に貫通孔10を形成する場合の施工要領について説明する。図4に示すように、ベタ基礎100の底盤101を構成するコンクリートを打設する。底盤101を構成するコンクリートの打設後、そのコンクリートが完全に固化しないうちに、図5に示すように基礎貫通部材1を設置する。このとき、基礎貫通部材1を主筋110、110の間に配置し、粘着材3を底盤101の界面101aに配設する。これにより、基礎貫通部材1を粘着材3の粘着力によって底盤101に固定しておくことができる。また、図示しないが型枠も設置しておく。
【0047】
基礎貫通部材1は人通口104のような大きな開口を形成するものではないので、人通口104を形成する場合よりも断面欠損が小さくて済む。よって、基礎貫通部材1を設置する際の位置設定の自由度は、人通口104を形成する場合に比べて高い。この実施形態では、平面視で配管200が引き込み部100aから引き出し部100bまで直線状に敷設されるように複数の基礎貫通部材1の位置が設定されている。
【0048】
その後、図6に示すように、内側立ち上がり壁部103を構成するコンクリートの打設をする。コンクリートは、基礎貫通部材1の上面や側面を流動していき、このとき、基礎貫通部材1が粘着材3の粘着力によって底盤101に固定されているので、基礎貫通部材1の位置ずれが抑制される。また、基礎貫通部材1の剛性及び強度が上述したように設定されているので、基礎貫通部材1の変形も抑制される。コンクリートが固化して型枠を除去すると、基礎貫通部材1が埋設された内側立ち上がり壁部103が得られる。
【0049】
次いで、図7図9に示すように配管200を貫通孔10に通す。このとき、配管200の敷設ルートが直線状でかつ最短ルートとなるように、引き込み部100a及び引き出し部100bに対する複数の基礎貫通部材1の位置が設定されているので、配管200を敷設する際には左右方向に殆ど曲げる必要がない。また、底盤101に近い部位に貫通孔10を形成できるので、配管200を上下方向に殆ど曲げずに済む。したがって、配管長を短くすることができるとともに、配管200の敷設作業が容易になる。
【0050】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る基礎貫通部材1は、底盤101の界面101aに配設される粘着材3と、該粘着材2の上面に固着され、立ち上がり壁部103を厚み方向に貫通する貫通孔10を形成する筒状部材2とを備えている。これにより、立ち上がり壁部103の所望の部位で、かつ、底盤101に近い部位に貫通孔10を形成することができるので、配管200を直線に近くなるように取り回して配管長を短くすることができるとともに、施工時の手間を減らすことができ、さらに配管にかかる負荷を軽減できる。
【0051】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明に係る基礎貫通部材は、各種建物の基礎に配管や配線を敷設する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 基礎貫通部材
2 筒状部材
3 粘着材
100 基礎
101 底盤
103 立ち上がり壁部
200 配管
A 軸芯
図1
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