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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】低GI再構成裸麦粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230320BHJP
   A23L 7/143 20160101ALI20230320BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L7/143
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020563527
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2019108121
(87)【国際公開番号】W WO2020224170
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】201910377856.3
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】焦愛権
(72)【発明者】
【氏名】楊月月
(72)【発明者】
【氏名】金征宇
(72)【発明者】
【氏名】田耀旗
(72)【発明者】
【氏名】柏玉香
(72)【発明者】
【氏名】楊国華
(72)【発明者】
【氏名】楊帆
(72)【発明者】
【氏名】楊懿
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104381823(CN,A)
【文献】Naked Barley: The Best Grain,HealthCentral, 2007年,p.1-4,https://www.healthcentral.com/article/naked-barley-the-best-grain, 検索日:2022年1月12日
【文献】EJPAU, 2016年,Vol.19, No.1,p.1-8,www.ejpau.media.pl/volume19/issue1/art-04.html, 検索日:2022年1月12日
【文献】Technical: Extrusion for Sustainable Quality and Nutrition Improvements,AACCI Homepage Back, 2016年,p.1,https://www.cerealsgrains.org/meet ings/Documents/2016Abstracts/aacc2016abs104.htm, 検索日:2022年1月12日
【文献】Nahrung/Food, 2004年,Vol.48, No.1,p.19-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00-7/104
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再構成裸麦粉を原料として、低温で押し出して得られる低GI再構成裸麦粒であって、
低温押出において、二軸押出機を用いて押出造粒を行うこと、前記二軸押出機は5つの温度制御ゾーンを含むこと、第5ゾーンの温度が55℃~70℃であること、残りのゾーンの温度が順次10℃ずつ低下すること、を含む製造方法により製造され、
前記再構成裸麦粉は、裸麦粉、黒ゴマ、他の穀物粉、及び食品添加剤を含み、各成分は、裸麦粉50質量%~70質量%、黒ゴマ5質量%~15質量%、他の穀物粉23質量%~35質量%、食品添加剤7質量%~15質量%であり、
前記食品添加剤はアラビアガムとモグロシドである、ことを特徴とする低GI再構成裸麦粒。
【請求項2】
他の穀物粉はキヌア粉、黒米粉、ハダカエンバク粉、サジー粉、インゲンマメ粉のうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の低GI再構成裸麦粒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の低GI再構成裸麦粒の、食品分野における裸麦製品を製造するための使用。
【請求項4】
構成裸麦粉を原料として、低温で押し出し、切断して成形し、さらに、乾燥させて冷却することによる、低GI再構成裸麦粒の製造方法であって
低温押出では、二軸押出機を用いて押出造粒を行い、前記二軸押出機は5つの温度制御ゾーンを含み、第5ゾーンの温度が55℃~70℃であり、残りのゾーンの温度が順次10℃ずつ低下し
前記再構成裸麦粉は、裸麦粉、黒ゴマ、他の穀物粉、及び食品添加剤を含み、各成分は、裸麦粉50質量%~70質量%、黒ゴマ5質量%~15質量%、他の穀物粉23質量%~35質量%、食品添加剤7質量%~15質量%であり、
前記食品添加剤はアラビアガムとモグロシドである、ことを特徴とする低GI再構成裸麦粒の製造方法。
【請求項5】
前記再構成裸麦粉を原料とし、具体的には、
前記再構成裸麦粉を混合した後、篩にかけて、次に水を加えて水分含有量を調整する、再構成裸麦粉を調製するステップ(1)と、
二軸押出機を用いて押出造粒を行う、低温押出ステップ(2)と、
低温で押し出した材料を切断して成形する、切断成形ステップ(3)と、
形成された材料を、水分含有量が10質量%未満となるまで乾燥させ、さらに、冷却、包装を行う、乾燥、冷却、包装ステップ(4)と、を含む、ことを特徴とする請求項に記載の低GI再構成裸麦粒の製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)では、篩に掛けた粒子径が0.25mm以下である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(1)では、水分含有量が30%~40%に調整される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(2)では、低温押出条件は、仕込み速度5~10kg/h、二軸押出機のミーリングヘッドの圧力0.6~4.0Mpa、スクリュー速度90~130r/minである、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
切断成形条件として、押し出した材料の長さが6~9mm、押し出した材料の厚さが2~3mmである、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
低温押出では、二軸押出機の5つの温度制御ゾーンの温度はそれぞれ25℃、30℃、35℃、45℃、55℃に設定される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
低温押出では、二軸押出機の5つの温度制御ゾーンの温度はそれぞれ25℃、35℃、45℃、55℃、65℃に設定される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低GI再構成裸麦粒の製造方法に関し、裸麦製品の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
裸麦は、栄養価が高く、優れた医療・健康維持作用があり、中国では古くから、主食として利用されているとともに、薬としても機能する。裸麦には、β-デクストランの含有量が小麦における平均含有量の50倍であり、8.6%と高い。β-デクストランは、特有の効果を有し、血糖を制御して糖尿病を防止することができる。さらに、裸麦は、また、固有のコレステロール抑制因子を含有するので、血液中のコレステロールの合成を抑制できる。裸麦は、栄養が豊富で、血糖降下、コレステロール合成抑制の効果があり、高血糖患者の毎日の主食として好適である。裸麦はそのざらざらした食感のため、消費者に好まれず、食品の色や香りに対する人々の要求を満たすことができず、日常の主食として使用されることは少ない。再構成技術は、食品により良い食感やより多い栄養価を与えることができ、現在の食品業界における新たな技術手段である。低温押出は、裸麦の遅消化性を損なうことなく、糊化度が低い食品を製造することができ、それにより、再構成裸麦のGI値が低くなり、高血糖患者の食用に適するようになる。
【0003】
現在、裸麦の押出は主に高温条件下で行われており、高温は裸麦中の一部の有益成分を破壊し、裸麦の消化性を高め、このため、糖尿病患者の食用に適さないようになったため、本発明では、裸麦中の有益成分を保持するために低温押出方式が使用される。また、裸麦に人体に必須のアミノ酸の1つであるメチオニンの含有量が不足しているため、本発明は複数の穀物を複合する方式を採用し、かつ使用される他の穀物はすべて低GI穀物である。現在、低GIの研究では、ほとんど改質処理が考慮されており、本発明で使用される材料はすべて天然穀物又は天然穀物から抽出されるものであり、それにより、製品は天然であり健康にやさしい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低GI再構成裸麦粒の製造方法を提供し、本来の裸麦のような外観を有し、食感が良好であり、栄養素が豊富で、食後の血糖上昇を効果的に緩和する、裸麦を主成分とする裸麦製品を開発することを目的とする。本発明により製造された再構成裸麦粒は、高血糖患者の日常のスナックとしてそのまま食べることができ、また、牛乳、ヨーグルトに浸して主食とすることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成は裸麦、ほかの食品原料と添加剤を原料として、低温で押し出し、切断して成形し、さらに乾燥させて包装することにより、低GI再構成裸麦粒を製造する、低GI再構成裸麦粒の製造方法である。
【0006】
本発明の第1の目的は、裸麦粉、黒ゴマ、他の穀物粉、及び食品添加剤を含み、各成分は、裸麦粉50質量%~70質量%、黒ゴマ5質量%~15質量%、他の穀物粉23質量%~35質量%、アラビアガム7質量%~10質量%、モグロシド0質量%~5質量%である再構成裸麦粉を提供することである。
【0007】
本発明の一実施形態において、使用される黒ゴマはセレンリッチな黒ゴマであり、セレン元素が高血糖治療を補助することができ、黒ゴマは再構成裸麦粒に濃厚な香りを付与することができ、黒ゴマ中の油脂は再構成裸麦粒のテクスチャを繊細で柔らかいものにすることができる。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記他の穀物粉は、キヌア粉、黒米粉、ハダカエンバク粉、サジー粉、及びインゲンマメ粉から選択される1種又は複数種である。また、前記インゲンマメ粉、キヌア粉、黒米粉、及びハダカエンバク粉は、いずれも低GI穀物であり、複数の穀物を複合することにより、裸麦の食感を改善すると同時に、再構成裸麦粒の栄養成分を補充することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、使用されるサジー粉は、再構成顆粒の風味を改善し、またグリセミック指数を低下させ、血中コレステロール含有量を低下させることができ、高血糖患者の食用に適している。
【0010】
本発明の一実施形態において、甘味料として使用されるモグロシドは、ノンカロリー添加剤であり、高グリセミック指数を上昇させることなく風味を増すことができ、高血糖患者の食用に適し、身体に負担がなく、そして、砂糖の300倍の甘味度を有する。
【0011】
本発明の一実施形態において、使用されるアラビアガムは、結着性を向上させ、再構成裸麦粒により完全な外観を付与することに加えて、血中コレステロールを低下させる効果を有する可溶性食物繊維でもある。
【0012】
本発明の第2の目的は、裸麦を主原料として、他の食品原料、食品添加剤と混合し、低温で押し出し、切断して成形し、さらに、乾燥させて冷却することにより得られる低GI再構成裸麦粒の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の一実施形態において、具体的には、
上記低GI再構成裸麦粒の組成で原料を混合した後、篩にかけ、次に水を加えて水分含有量を調整する、混合粉を調製するステップ(1)と、
5つの温度制御ゾーンを含み、第5ゾーンの温度が55℃~70℃であり、残りのゾーンの温度が順次10℃減少する二軸押出機を用いて、押出造粒を行う、低温押出ステップ(2)と、
低温で押し出した材料を特製の3孔付きミーリングヘッドに通し、押し出した材料の長さを4mm程度とし、押し出した材料の厚さが2~3mmとなるようにカッターを調整する、切断成形ステップ(3)と、
水分含有量を10質量%以下にするように、熱風流動床又はオーブンを用いて乾燥させ、さらに、冷却して包装することにより、低GI再構成裸麦粒が得られる、乾燥、冷却、包装ステップ(4)と、を含む。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記ステップ(1)では、篩に掛けた穀物粉の粒度については粒子径が0.25mm以下であることが要求され、このような粒子径とすることにより、製造された製品は、より良好なテクスチャ特性や官能特性を有し、穀物粉の粒子径が小さすぎると、製品にべたつきの食感があったり、粒子径が大きすぎると、製品にジャリジャリ感があったりすることはある。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記ステップ(1)では、原料を十分に混合した後、水を加えて水分含有量を25%~50%に調整し、水分含有量が高すぎると、製品が柔らかすぎて、歯ごたえが悪く、水分含有量が低すぎると、成形しにくく、そして食感が劣化する。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記ステップ(2)の低温押出条件は、仕込み速度5~10kg/h、二軸押出機のミーリングヘッド圧力0.6~4.0MPa、スクリュー速度90~130r/minである。
【0017】
本発明の一実施形態において、混合粉を調製するステップ(1)では、穀物粉を60メッシュの篩にかけ、原料を十分に混合した後、水を加えて水分含有量を35%に調整し、低温押出ステップ(2)では、本発明で使用される二軸押出機の5つの温度制御ゾーンの温度はそれぞれ25℃、30℃、35℃、45℃、55℃に設定され、仕込み速度は7kg/hであり、スクリュー速度は100r/minであり、切断成形ステップ(3)では、低温で押し出した材料を特製の3孔付きミーリングヘッドに通し、押し出した材料の長さを7mmとし、押し出した材料の厚さが2mmとなるようにカッターを調整し、(4)温度45℃のオーブンで48h乾燥させ、さらに冷却して包装することにより、低GI再構成裸麦粒が得られる。
【0018】
本発明の一実施形態において、混合粉を調製するステップ(1)では、穀物粉を60メッシュの篩にかけ、原料を十分に混合した後、水を加えて水分含有量を40%に調整し、低温押出ステップ(2)では、本発明で使用される二軸押出機の5つの温度制御ゾーンの温度はそれぞれ25℃、35℃、45℃、55℃、65℃に設定され、仕込み速度は7kg/hであり、スクリュー速度は100r/minであり、切断成形ステップ(3)では、低温で押し出した材料を特製の3孔付きミーリングヘッドに通し、押し出した材料の長さを7mmとし、押し出した材料の厚さが2mmとなるようにカッターを調整し、(4)温度55℃のオーブンで48h乾燥させ、さらに冷却して包装することにより、低GI再構成裸麦粒が得られる。
【0019】
本発明の第3の目的は、再構成裸麦粉を原料として、低温で押し出し、切断して成形し、さらに、乾燥させて冷却することにより、低GI再構成裸麦粒が得られる、低GI再構成裸麦粒の製造方法を提供することであり、この再構成裸麦粉は、裸麦粉、黒ゴマ、他の穀物粉、及び食品添加剤を含み、各成分は、裸麦粉45質量%~55質量%、黒ゴマ5質量%、他の穀物粉25質量%~35質量%、食品添加剤15質量%であり、
前記食品添加剤はアラビアガムとモグロシドであり、前記低温押出は5つの温度制御ゾーンを含み、第5ゾーンの温度は55℃~70℃であり、残りのゾーンの温度は順次10℃減少する。
【0020】
本発明の第4の目的は、上記方法で製造された再構成裸麦粒を提供することである。
【0021】
本発明の第5の目的は、上記再構成裸麦粉の、食品分野における裸麦製品の製造における使用を提供することであり、前記裸麦製品は、饅頭、蘇、麺の製品を含む。
【0022】
有利な効果
本発明では、裸麦を主原料とし、黒ゴマ、他の穀物粉と食品添加剤を添加し、低温で押し出し、切断して成形し、さらに乾燥させて包装することにより、糊化度40%~60%、GI値40以下、水分10%未満、製品の官能スコア85点を超える再構成裸麦製品を得る。本発明は、従来の裸麦製品と比較して、主に以下の利点を有する。(1)製品のGI値が40以下であるので、高血糖の人の食用に適している。(2)本発明は、裸麦を主原料とし、多種の食品原料を補助材料とすることで、裸麦粒のざらざらした食感を改善し、栄養がバランスよく且つ豊富である。(3)本発明は、低温押出技術を利用することで裸麦中のデンプンの遅消化性を保持することができ、しかも製品の糊化度が低く、食後の血糖上昇を効果的に緩和することができる。(4)本発明により製造された製品は、本来の裸麦粒のような外観を有し、市場で容易に受け取られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】再構成裸麦粒の実物図である。
図2】本来の裸麦粒の実物図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下は本発明の実施例であり、使用する方法は上記の発明について詳細に記載されており、以下の実施例は、本発明の実施可能性を説明するための例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとはみなされない。
【0025】
本発明では、製品の食感及び品質を確保するために、官能評価、糊化度、テクスチャ特性、GI値を指標として評価を行い、本発明で選択した指標の測定方法は次の通りである。
【0026】
1、糊化度測定:
サンプルを60メッシュの篩に通し、サンプル0.2gを蒸留水98mlに懸濁させ、10mol/L KOH溶液2mlを加え、5min磁気撹拌後、3500r/minで20min遠心分離した。上澄みを0.2ml取り、0.2mol/L HCl溶液0.2mlを加え、次に、蒸留水15mlを加え、最後に、ヨウ素溶液0.2mlを加え、600nm紫外分光光度計で吸光度を測定したところ、吸光度A1が得られた。
別のサンプル02gを蒸留水95mLに懸濁させ、10mol/LのKOH溶液5mLを加え、5min磁気撹拌後、3500r/minで20min遠心分離した。上澄み液を0.2mL取り、HCl溶液0.5mLを加えて中和し、次に蒸留水15mLを加え、最後に、ヨウ素溶液0.2mLを加え、600nm紫外分光光度計で吸光度を測定したところ、吸光度が得られ、糊化度は次のように計算された。
【0027】
2、テクスチャ特性測定:
TA-XTplusテクスチャアナライザーを使用して、TPAモードで蒸煮後の製品のテクスチャを解析した。機器のプローブはP/36R型番であり、TPA測定のプログラムのパラメータは、測定前の速度1.00mm/s、測定速度2.00mm/s、測定後の速度1.00mm/s、トリガー力の値5.0g、圧縮の程度(Strain)50.0%、2回の圧縮間隔5.00sに設定した。処理済みのサンプルを同じ容量の容器に迅速かつ均一に充填し、上面を平坦にし、内部の緻密さを一致させ、レンズクリーニングペーパーでプローブをきれいに拭いた後、測定操作を繰り返した。6回の測定の平均測定結果を取った。
【0028】
3、GI値測定:
サンプル100mgを遠心管50mLに秤量し、水2mLを加え、沸騰水浴で10min糊化し、さらにpH5.2の0.2mol/Lの酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液13mLを加え、37℃の恒温水浴で10min平衡化し、次に混合酵素液(ブタ膵α-アミラーゼ290U/mL、グルコアミラーゼ15U/mL)0.2mLを加え、37℃の恒温水浴で振とう(回転数150r/min)させ、正確に計時した。振とう反応0min、30min、60min、90min、120min、180min後、それぞれ上澄み0.1mLを無水エタノール2mLに加えて酵素を不活性化し、GOPODグルコースキットを用いて510nmでグルコース含有量を比色測定し、サンプルごとに平行に測定して3回の平均値を取り、デンプンの加水分解曲線をプロットした。非糊化再構成米の加水分解曲線を対照群とした。再構成米の加水分解率曲線に対して一次速度論的フィッティングを行い、その方程式は
である。Originソフトウェアを用いてモデルフィッティング製図を行い、加水分解平衡定数Kを算出した。加水分解曲線下の面積(AUC)は、次の式で求められる。
式中、Ct-t時間におけるサンプル中のデンプンの加水分解率
-180分間反応後のデンプンの加水分解率
-最終反応時間(180min)
-最初の反応時間(0min)
K-速度定数。
加水分解指数(HI)は、次式から得られる。
HI=サンプルの消化曲線下の面積(0~180min)/白パンの消化曲線下の面積(0~180min)×100
白パンを標準物とし、そのグリセミック指数(GI)を100とし、HIからGIを予測する計算式は次の通りである。
【0029】
4、速消化性デンプン、遅消化性デンプン、難消化性デンプンの測定:
サンプル200mgを50mLの遠心管に正確に計量し、pH5.0酢酸ナトリウム緩衝液10mLを加え、ミキサーで均一に混合した後、α-アミラーゼ(290U/mL)とグルコアミラーゼ(15U/mL)の混合液10mLを加え、37℃の恒温水浴振とう箱にて回転数160r/minの条件で酵素分解を開始し、正確に計時し、各加水分解時間(0、20、120min)に反応液1mLを取り、無水エタノール4mLで反応を迅速に停止し、次に、グルコースオキシダーゼ法(グルコース測定キット)により510nmの条件下でマイクロプレートリーダーを用いて、産生したグルコースの含有量を測定してデンプンの含有量を算出し、具体的な計算式は次の通りである。
式中
20-20min加水分解後のグルコース含有量(mg)
FG-サンプル中の遊離グルコース含有量(mg)
120-120min加水分解後のグルコース含有量(mg)
TS-サンプル中の全デンプン含有量(mg)。
実施例では、具体的な条件が記載されていない場合は、通常の条件又は製造業者が提案する条件に従う。使用する原料又は器具に製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販により入手できる通常の製品である。
【0030】
実施例1:
混合粉の処方:裸麦粉450g、キヌア粉100g、ハダカエンバク粉100g、カラーインゲンマメ粉50g、黒ゴマ50g、サジー粉50g、アラビアゴム70g、モグロシド80g。穀物粉を60メッシュの篩にかけ、原料を十分に混合した後、水分を加えて水分含有量を35%に調整した。
低温押出:本発明に用いる二軸押出機の5つの温度制御ゾーンの温度はそれぞれ25℃、30℃、35℃、45℃、55℃に設定され、仕込み速度は7kg/hであり、スクリュー回転数は100r/minであった。
切断成形:低温で押し出した材料を特製の3孔付きミーリングヘッドに通し、押し出した材料の長さを7mmとし、押し出した材料の厚さが2mmとなるようにカッターを調整した。温度45℃のオーブンで48時間乾燥させ、冷却して包装して、製品を製造した。
得られた製品の形状は、図1に示すように、本来の裸麦(図2)そのものに形状が近い。得られた製品は、糊化度が41.3%、水分含有量が9.3%、製品のGI値が33であり、官能測定により、外観が充実しており、自然な色があり、ゴマの香りが強く、不快臭がなく、歯ごたえがあり、適度な甘酸っぱさがあり、製品のスコアは92点であった。
【0031】
実施例2:
混合粉の処方:裸麦粉550g、キヌア粉100g、カラーインゲンマメ粉50g、黒米粉50g、黒ゴマ50g、サジー粉50g、モグロシド80g、アラビアガム70g。穀物粉を60メッシュの篩にかけ、原料を十分に混合した後、水を加えて水分含有量を40%に調整した。
低温押出:本発明に用いる二軸押出機の5つの温度制御ゾーンの温度はそれぞれ25℃、35℃、45℃、55℃、65℃に設定され、仕込み速度は7kg/hであり、スクリュー回転数は100r/minであった。
切断成形:低温で押し出した材料を特製の3孔付きミーリングヘッドに通し、押し出した材料の長さを7mmとし、押し出した材料の厚さが2mmとなるようにカッターを調整した。温度55℃のオーブンで48時間乾燥させ、冷却して包装して、製品を製造した。
得られた製品の指標は、製品の糊化度47.83%、水分8.7%、製品のGI値37であり、製品の官能測定により、外観が充実しており、自然な色があり、濃厚な香りをしており、不快臭がなく、歯ごたえがあり、適度な甘酸っぱさがあり、製品のスコアは93点であった。
【0032】
実施例3:各水分含有量による押し出した再構成裸麦粒のテクスチャ特性への影響
原料を十分に混合した後に水を加えて水分含有量を25%、30%、40%、45%、50%に調整した以外、実施例1の方法に従って、混合、低温押出、及び切断成形を行った。また、次の表から、水添加量の増加に伴い、再構成顆粒は、硬さが小さくなり、咀嚼度が低下し、凝集性が上昇する傾向にあるが、再構成顆粒の弾性にはほとんど変化がないことが分かった。本発明の目的は、歯ごたえがあり、適度な硬さがある再構成裸麦粒を得ることであるため、水添加量が少なすぎると、裸麦粒の硬さが大きくなり、水添加量が少なすぎると、裸麦粒の成形効果が悪く、硬さが少なすぎ、歯ごたえがなく、このため、再構成裸麦粒に適度な硬さ、良好な歯ごたえを付与するほどの水添加量とする必要がある。官能実験と合わせて、最適水添加量の範囲は30~40%であることが分かった。
【0033】
実施例4:各押出温度による裸麦粒の糊化度への影響
第5ゾーンの温度を40℃、50℃、60℃、65℃、70℃、80℃に調整した以外、実施例1の方法に従って、混合、低温押出、切断成形を行った。次の表から、押出し温度の上昇に伴って、再構成裸麦粒の糊化度は上昇する傾向を示し、押出し温度が80℃になると、再構成裸麦粒の糊化度は83.9%に達した。押出し温度が低すぎると、再構成裸麦粒の糊化度が低くなり、その結果、再構成裸麦粒の風味が悪くなり、食感が劣化した。温度が高すぎると、押出造粒が困難になり、製品の尾引き現象(テーリング)が深刻になり、外観性が劣化したことが分かった。生のデンプンが消化されにくく、一定の糊化が発生した後、部分的に糊化され、デンプンの消化特性を改善することができると同時に、ゲル化デンプンの光透過率が高く、製品に透き通った色を付与し、製品の外観性を改善した。本発明は、外観性が良好であり、裸麦の遅消化性が保持されている再構成裸麦粒を提供することを目的とするので、最適な押出温度は55~70℃であった。
表1と表2のデータから分かるように、押出し温度が55℃のとき、難消化性デンプンは急激に減少し、一方、遅消化性デンプンと速消化性デンプンは急激に増加し、その原因として、デンプンが55℃で糊化し、糊化の過程で、デンプン鎖が吸水して膨潤し、デンプン鎖の一部が開き、また押出機の高い剪断作用により、デンプン鎖の切断が多くなり、露出した酵素結合部位が多くなり、デンプンが消化しやすくなり、再構成裸麦粒のGI値が上昇することが考えられる。温度が高くなるにつれて、この現象は徐々に緩やかになり、GI値は安定する傾向にあった。本発明は、低GI特性を有しながら、良好な官能特性を有する再構成裸麦粒を発明することを目的とし、総合的に考えると、好ましい水分含有量は30~40%であり、第5ゾーンの温度は55~70℃であった。
【0034】
比較例1
原料が裸麦粉であった以外、実施例1の方法に従って、混合、低温押出、切断成形を行った。
【0035】
比較例2
実施例1の黒ゴマを省略した以外、実施例1の方法に従って、混合、低温押出、切断成形を行った。
【0036】
表3~5のデータから分かるように、複数種の穀物を複合した再構成裸麦粒の官能スコアは、単一の裸麦粉で作られた押し出し裸麦粒より明らかに高く、これは主に、複数種の穀物は再構成裸麦粒に豊かな風味特性を与えるためであり、その中でも、黒ゴマは再構成裸麦粒にゴマの香りを与え、キヌアなどの他の穀物は、再構成裸麦粒の食感をよりきめ細かくし、また、押し出しは再構成裸麦粒中の可溶性糖の含有量を増加させ、再構成裸麦粒に一定の甘味を付与し、黒ゴマの特殊な香りと複数の穀物中の豊富な風味物質が、低温押出によるいくつかの欠陥、例えば、渋味アミノ酸による渋味を解消できる。複数種の穀物は、再構成裸麦粒のテクスチャ特性と官能特性を実現でき、大量の実験データから、押出機の最高温度範囲が55~70℃、水分含有量が30~40%の場合、再構成裸麦粒のテクスチャ特性と官能特性は良好であり、GI値は40以下であり、高血糖患者の食用に適していることが分かった。
【0037】
本発明について、好適な実施例をもって上記のように開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができるので、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲によって定義されるものに従うべきである。
図1
図2