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  • 特許-プリント配線板の製造方法及び積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20230320BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H05K3/18 D
H05K3/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019538450
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2018046337
(87)【国際公開番号】W WO2019124307
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2017244121
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】上村 重明
(72)【発明者】
【氏名】今崎 瑛子
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】岡 良雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
(72)【発明者】
【氏名】米澤 隆幸
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505483(JP,A)
【文献】特開昭61-95344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0183027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00―7/42
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
両表面に導電層を有する絶縁基材の両面板を準備する工程、
感光性樹脂層と支持層を有する第1の感光性樹脂フィルムを、前記両面板の第1の表面に、前記感光性樹脂層と前記導電層とが接するように被覆する第1の被覆工程、
厚さが5~100μmである感光性樹脂層と、厚さが10~30μmであり、PET、ポリプロピレンまたはポリオレフィンから形成される支持層を有し、前記感光性樹脂層に対する前記支持層の剥離力が0.2~20N/mである第2の感光性樹脂フィルムを、前記両面板の第2の表面に、前記感光性樹脂層と前記導電層とが接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第1及び第2の被覆工程の後、前記第1の表面を被覆する前記感光性樹脂フィルムを露光する第1の露光工程、及び
前記第1の露光工程の後、前記第2の表面を被覆する前記感光性樹脂フィルムを露光する第2の露光工程を有し、
前記第2の露光工程に用いる、前記第2の感光性樹脂フィルムの最表面の凹部の最大深さが1.0μm未満であるプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の露光工程に用いる、前記第2の感光性樹脂フィルムの最表面の凹部の最大長さが5μm未満である請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程、
前記導電層A1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムC1により、前記感光性樹脂層が導電層A1に接するように被覆する第1の被覆工程、
前記導電層B1の表面を、厚さが5~100μmである感光性樹脂層及びその1表面を被覆し、厚さが10~30μmであり、PET、ポリプロピレンまたはポリオレフィンから形成される支持層からなり、前記感光性樹脂層に対する前記支持層の剥離力が0.2~20N/mである感光性樹脂フィルムD1、ならびに前記支持層の表面を被覆するカバー層からなる積層体により、前記感光性樹脂層が導電層B1に接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第2の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムC1を露光する第1の露光工程、
前記第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離するカバー層剥離工程、ならびに
前記カバー層剥離工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を露光する第2の露光工程を有するプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程、
前記導電層A1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムC1により、前記感光性樹脂層が導電層A1に接するように被覆する第1の被覆工程、
前記導電層B1の表面を、厚さが5~100μmである感光性樹脂層及びその1表面を被覆し、厚さが10~30μmであり、PET、ポリプロピレンまたはポリオレフィンから形成される支持層からなり、前記感光性樹脂層に対する前記支持層の剥離力が0.2~20N/mである感光性樹脂フィルムD1により、前記感光性樹脂層が導電層B1に接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第2の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を構成する支持層の表面をカバー層で被覆する第3の被覆工程、
前記第3の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムC1を露光する第1の露光工程、
前記第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離するカバー層剥離工程、ならびに、
前記カバー層剥離工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を露光する第2の露光工程を有するプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記プリント配線板が、フレキシブルプリント配線板である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記プリント配線板の導体パターンが、L/S=50μm/50μm以下の細線パターンを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法に使用される積層体であって、厚さが5~100μmである感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層の前記1表面を覆い、厚さが10~30μmであり、PET、ポリプロピレンまたはポリオレフィンから形成される支持層と、前記支持層の表面を覆うとともに、前記感光性樹脂層の硬化前に除去されるカバー層とを備え、
前記支持層は、前記支持層の表面の凹部の最大深さが1.0μm未満であるように構成され、前記感光性樹脂層に対する前記支持層の剥離力が0.2~20N/mである積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品を搭載する導体パターンを有するプリント配線板の製造方法、及び前記プリント配線板の製造方法に使用される積層体に関する。本出願は、2017年12月20日出願の日本出願第2017-244121号に基づく優先権を主張し、上記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の微小電子部品を搭載する導体パターンを絶縁基材の表面に有するプリント配線板、例えばフレキシブルプリント配線板(FPC)の導体パターンの形成方法として、絶縁基材の表面に積層された導電層を、感光性樹脂層(レジスト層)を有する感光性樹脂フィルム(ドライフィルム、レジストフィルム)を用い、露光して導体パターンを形成する方法が広く用いられている。
例えば、ポリイミドフィルム等の絶縁基材に積層された銅等からなる導電層を、感光性樹脂フィルムで被覆し、さらに配線パターンが描かれたマスク(フォトマスク)を介して所望の配線パターンを露光し、配線パターンに対応した部分を感光した後、現像及び導電層のエッチングを行い導電層の配線の部分のみを残して絶縁基材上に配線を形成する方法(サブトラクティブ工法)が知られている(非特許文献1等)。
【0003】
又、特許文献1には、絶縁樹脂層(絶縁基材の表面)の上に無電解銅めっきにより1μm厚程度の導電層(シード層)を形成し、その表面に感光性樹脂層を形成した後、マスクを介して所望の配線パターンを露光、現像して無電解銅めっき層が部分的に露出する感光性樹脂層のパターンを形成し、その後、無電解銅めっき層へ給電して電解銅めっきを行い、無電解銅めっき層が露出する部分に電解銅めっきをして導体パターンを形成する工法(セミアディティブ工法)が、開示されている。
【0004】
前記サブトラクティブ工法やセミアディティブ工法に用いられる感光性樹脂フィルムは、感光性樹脂層及びその表面に積層された支持層により構成され、感光性樹脂層の反対表面に保護層を積層した状態で出荷される場合が多い。そして、両表面に導体パターンを有するプリント配線板を製造する場合には、導電層が積層された絶縁基材やシード層が形成された絶縁基材の両表面を、感光性樹脂フィルムにより、感光性樹脂層が導電層やシード層に接するように被覆し、一方の表面についてマスクを介して露光した後、他方の表面についてもマスクを介して露光が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-249514号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】http://nikko-materials.com/dry_mecanism、ドライフィルム-メカニズム紹介、ニッコー・マテリアルズ株式会社
【発明の概要】
【0007】
本開示の第1の態様は、
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
両表面に導電層を有する絶縁基材の両面板を準備する工程、
感光性樹脂層と支持層を有する第1の感光性樹脂フィルムを、前記両面板の第1の表面に、前記感光性樹脂層と前記導電層とが接するように被覆する第1の被覆工程、
感光性樹脂層と支持層を有する第2の感光性樹脂フィルムを、前記両面板の第2の表面に、前記感光性樹脂層と前記導電層とが接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第1及び第2の被覆工程の後、前記第1の表面を被覆する前記感光性樹脂フィルムを露光する第1の露光工程、及び
前記第1の露光工程の後、前記第2の表面を被覆する前記感光性樹脂フィルムを露光する第2の露光工程を有し、
前記第2の露光工程に用いる、前記第2の感光性樹脂フィルムの最表面の凹部の最大深さが1.0μm未満であるプリント配線板の製造方法である。
【0008】
本開示の第2の態様は、
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程、
前記導電層A1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムC1により、前記感光性樹脂層が導電層A1に接するように被覆する第1の被覆工程、
前記導電層B1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムD1、ならびに前記支持層の表面を被覆するカバー層からなる積層体により、前記感光性樹脂層が導電層B1に接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第2の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムC1を露光する第1の露光工程、
前記第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離するカバー層剥離工程、ならびに
前記カバー層剥離工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を露光する第2の露光工程を有するプリント配線板の製造方法である。
【0009】
本開示の第3の態様は、
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程、
前記導電層A1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムC1により、前記感光性樹脂層が導電層A1に接するように被覆する第1の被覆工程、
前記導電層B1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムD1により、前記感光性樹脂層が導電層B1に接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第2の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を構成する支持層の表面をカバー層で被覆する第3の被覆工程、
前記第3の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムC1を露光する第1の露光工程、
前記第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離するカバー層剥離工程、ならびに、
前記カバー層剥離工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を露光する第2の露光工程を有するプリント配線板の製造方法である。
【0010】
本開示の第4の態様は、
プリント配線板の製造方法に使用される積層体であって、感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層の1表面を覆う支持層と、前記支持層の表面を覆うカバー層とを備える積層体である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第4の態様の積層体の1実施の形態の構成を模式的に示す断面図である。
図2A】本開示のプリント配線板の製造方法に使用される感光性樹脂フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2B】本開示のプリント配線板の製造方法に使用される市販の感光性樹脂フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図3A】第2の態様の1実施の形態に係るプリント配線板の製造方法における被覆工程の手順を模式的に示す図である。
図3B】第3の態様の1実施の形態に係るプリント配線板の製造方法における被覆工程の手順を模式的に示す図である。
図4】第2の態様及び第3の態様の1実施の形態に係るプリント配線板の製造方法における第1の露光工程の手順を模式的に示す図である。
図5】第2の態様及び第3の態様の1実施の形態に係るプリント配線板の製造方法における第2の露光工程の手順を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示が解決しようとする課題]
しかしながら、特許文献1に記載のように一方の表面について露光した後、他方の表面についての露光をして両表面に導体パターンを形成する場合、当該他方の面について、サブトラクティブ工法では、形成された導体パターンに断線(欠陥)が発生しやすく、セミアディティブ工法では、形成された導体パターンにショート不良が発生しやすく、形状、寸法が高精度の導体パターンを形成できないとの問題があった。
特に、L/S(ライン/スペース)=50/50μm以下であるようなファインピッチの導体パターンを形成する場合、この問題が大きかった。
【0013】
本開示は上記の問題に鑑みなされたものであり、両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、一方の表面について所望の配線パターンを露光した後、他方の表面について所望の配線パターンの露光を行う場合であっても、当該他方の面について、サブトラクティブ工法の場合における断線の発生や、セミアディティブ工法の場合におけるショート不良の発生が抑制され、形状、寸法が高精度の導体パターンを形成できるプリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
本開示はさらに、前記プリント配線板の製造方法に使用される積層体の提供を課題とする。
【0014】
本発明者は検討の結果、支持層の表面に、最大深さが数μm以上であるような凹部が存在する感光性樹脂フィルムを用いた場合、現像後の感光性樹脂層に例えば糸状の傷等の欠陥が生じ、この傷(欠陥)により、サブトラクティブ工法においては導体パターンの断線、セミアディティブ工法では導体パターンのショート不良等の不具合が発生すること、
前記の不具合の発生確率は、支持層表面の凹部の最大深さが深くなればなるほど高くなる傾向にあること、
そして、支持層の表面に存在する凹部の最大深さが1μm未満の場合には、前記の不具合が発生する可能性は非常に低くなり、導体パターンの断線やショート不良等の不具合の発生が抑制されることを見出した。
本発明者は、又、絶縁基材の一方の面について露光までの工程を行う際に、絶縁基材の他方の面を被覆する感光性樹脂フィルムの支持層の表面に、被露光体を搬送するローラ等との接触により最大深さが1μm以上であるような凹部を有する傷が形成され、この傷により前記の不具合が発生すること、
そして、ローラ等との接触がされる支持層の表面に、さらにその表面を保護するフィルムを積層した積層体を用いることにより、又は支持層の表面にその表面を保護するフィルムを積層することにより、支持層の表面でのローラ等との接触による最大深さが1μm以上の凹部の発生を防ぐことができ、その結果、前記の不具合、すなわち導体パターンの断線やショート不良の発生を抑制できることを見出し、本開示を完成した。
【0015】
[本開示の効果]
前記第1の態様によれば、両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、一方の表面について配線パターンを露光した後、他方の表面について配線パターンの露光をする場合であっても、当該他方の面について、導体パターンの断線やショート不良の発生が抑制されて、形状、寸法が高精度の導体パターンを形成できるプリント配線板の製造方法が提供される。
【0016】
前記第2の態様及び第3の態様によれば、両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、一方の表面について所望の配線パターンを露光した後、他方の表面について所望の配線パターンの露光を行う場合、一方の面について露光までの工程を行う際に、他方の面について、被露光体を搬送するローラ等との接触による最大深さが1μm以上の凹部の発生を防ぐことができ、その結果、導体パターンの断線やショート不良の発生が抑制されて、形状、寸法が高精度の導体パターンを形成できるプリント配線板の製造方法が提供される。
【0017】
前記第4の態様によれば、前記第2の態様に使用される積層体が提供される。
【0018】
[本開示の実施形態の説明]
以下、本開示を実施するための形態について具体的に説明する。なお、本開示は下記の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲内及び請求の範囲と均等の意味、範囲内での全ての変更が含まれる。
【0019】
(1)第1の態様
本開示の第1の態様は、
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
両表面に導電層を有する絶縁基材の両面板を準備する工程、
感光性樹脂層と支持層を有する第1の感光性樹脂フィルムを、前記両面板の第1の表面に、前記感光性樹脂層と前記導電層とが接するように被覆する第1の被覆工程、
感光性樹脂層と支持層を有する第2の感光性樹脂フィルムを、前記両面板の第2の表面に、前記感光性樹脂層と前記導電層とが接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第1及び第2の被覆工程の後、前記第1の表面を被覆する前記感光性樹脂フィルムを露光する第1の露光工程、及び
前記第1の露光工程の後、前記第2の表面を被覆する前記感光性樹脂フィルムを露光する第2の露光工程を有し、
前記第2の露光工程に用いる、前記第2の感光性樹脂フィルムの最表面の凹部の最大深さが1.0μm未満であるプリント配線板の製造方法である。
【0020】
本態様のプリント配線板の製造方法は、この方法に用いられる前記の第2の感光性樹脂フィルムの支持層の表面に在る凹部の最大深さが、1.0μm未満であることを特徴とする。
L/S=50/50μm以下であるようなファインピッチの導体パターンを形成する場合、導体パターンの断線(サブトラクティブ工法の場合)やショート不良(セミアディティブ工法の場合)等の不具合が発生しやすいが、
本発明者は、感光性樹脂フィルムの支持層の表面にある凹凸等の欠陥、特に最大深さが1μm以上であるような凹部が存在する場合、この凹凸により光が散乱し、凹凸部の下にある感光性樹脂層の感光が不十分となり、露光の際に露光欠陥となり、現像後に感光性樹脂からなる配線パターンに糸状の傷が発生すること、そしてこの糸状の傷等の欠陥により、前記の不具合が発生することを見出すとともに、感光性樹脂フィルムの支持層の表面にある凹部の最大深さが1μm未満の場合は、導体パターンの断線(サブトラクティブ工法の場合)やショート不良(セミアディティブ工法の場合)等の不具合の発生が抑制され、ほとんど発生しないことを見出した。
【0021】
支持層は、通常、紫外線を透過する樹脂からなるフィルムである。プリント配線板を製造する際の露光工程において、ローラ等の設備と支持層とが接触すると支持層の表面に凹凸が発生する。このような凹凸の発生を抑制し、支持層の表面にある凹部の深さを小さくすることにより前記の不具合の発生を減少させることができ、特に凹部の最大深さを1μm未満とすることにより、前記の不具合の発生を抑制できる。
【0022】
又、前記の不具合の発生は、第2の感光性樹脂フィルムの支持層の表面にある凹部の長さを小さくすることによっても減少する。特に、第2の感光性樹脂フィルムの支持層の表面にある凹部の最大深さが1μm未満であって、かつ凹部の最大長さが5.0μm未満の場合、より確実に導体パターンの断線(サブトラクティブ工法の場合)やショート不良(セミアディティブ工法の場合)等の不具合の発生を抑制できるので好ましい。
【0023】
次に、本態様の製造方法の各構成について説明する。
【0024】
(プリント配線板)
プリント配線板とは、電気回路の配線を絶縁体からなる板やフィルム(絶縁基材)の表面や内部にプリントした基板である。本態様により製造されるプリント配線板は、導体パターンを絶縁基材の両表面に有するものである。又、サブトラクティブ工法により配線が形成されるプリント配線板及びセミアディティブ工法により配線が形成されるプリント配線板のいずれもが含まれる。本態様により製造されるプリント配線板としては、例えば、フレキシブルプリント配線板を挙げることができる。
絶縁基材としては、ポリイミド(PI)フィルムが、耐熱性に優れるため好ましく用いられる。また他の耐熱性樹脂からなるフィルムやガラスエポキシ基板等を用いることもできる。
導体パターンの材料としては、通常、銅(Cu)が用いられるが、他の導電性金属、例えば銀、銅合金、ステンレス、アルミニウム等を用いることもできる。
【0025】
(両面板の準備)
本態様の方法では、先ず、両表面に導電層を有する絶縁基材の両面板を準備する工程が行われる。
サブトラクティブ工法により配線が形成されるプリント配線板の製造の場合には、導電層として銅(Cu)箔などが用いられる。例えば、絶縁基材の両表面に銅箔が積層された両面基板を準備する。導電層の形成は、例えば、銅箔などの金属箔を基材の両表面に接着する方法、薄い導電層を形成した後電気メッキする方法により行われる。
セミアディティブ工法により配線が形成されるプリント配線板の製造の場合には、導電層は、配線を形成する電気メッキの通電を行うための導電層(シード層)である。この場合、例えば、絶縁基材の両表面に、無電解メッキにより薄い銅の層を形成する方法により両面板が準備される。無電解メッキの代わりに絶縁基材の両表面へのスパッタリングにより導電層(シード層)を形成してもよい。
両面板が準備された後、絶縁基材の両表面にある導電層のそれぞれについて、感光性樹脂フィルムによる被覆、配線パターンの露光、現像の工程が行われる。
【0026】
(感光性樹脂フィルムによる被覆)
前記のようにして準備された両面板の両表面にある導電層上に、感光性樹脂フィルムが積層され、導電層を被覆する。
本態様に使用される感光性樹脂フィルムは、感光性の樹脂からなる感光性樹脂層と、感光性樹脂層を支持し保護するためにその1表面に積層された支持層からなる。感光性樹脂層の反対表面に保護層を有していても良い。この場合、保護層を剥がしてから使用する。導電層上への積層は、感光性樹脂層が導電層に接するように行われ、絶縁基材、導電層、感光性樹脂層、支持層の順で積層される。
市販されている感光性樹脂フィルムの多くは、感光性樹脂層の表面に支持層が、別の表面に保護層が積層されている。例えばニッコーマテリアルズ社製のドライフィルムフォトレジストとして市販されている感光性樹脂フィルムは、レジスト層の両表面にフィルムがそれぞれ積層されている。このような感光性樹脂フィルムを本態様に使用する場合は、一方の表面にある保護層を剥離し感光性樹脂層を露出して使用する。
【0027】
(感光性樹脂フィルム)
次に本態様に使用される感光性樹脂フィルムを構成する各要素について説明する。
感光性樹脂層(レジスト層)を形成する材料としては、公知の紫外線(UV)硬化性樹脂等を用いることができる。具体的には、アクリル系等を挙げることができる。感光性樹脂層の厚みは、特に限定されないが、一般的には5~100μm程度である。
【0028】
支持層は、感光性樹脂層を保護する皮膜を形成でき、かつ感光性樹脂層からの剥離が可能な材料から形成される。この材料には、露光がUV照射により行われる場合は、UVの透過率が高いこと、平坦な皮膜を形成できること(平坦性)等が望まれる。そこで、この材料としてはPET、ポリプロピレン、ポリオレフィン等を挙げることができ、中でもUV透過性、平坦性の点からPETを主体とする樹脂が好ましく用いられる。ここで、「主体とする」とは、PETのみからなる場合及びPETを最大の組成とするが発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分を含有する場合のいずれをも含む意味である。
支持層の厚さは、感光性樹脂層を保護できる厚さであれば特に限定されないが、通常5~200μmが好ましく、UV透過性や取扱いの点から10~30μmがより好ましい。また感光性樹脂層に対する支持層の剥離力は0.2~20N/m有するのが望ましい。
【0029】
本態様に使用される感光性樹脂フィルムは、支持層をPET等から作製した後、その1表面上に感光性樹脂の溶液を所定の厚みにコーティングし、乾燥して感光性樹脂層を形成する方法等により製造することができる。
【0030】
(露光)
感光性樹脂フィルムによる被覆がされた後、配線パターンの露光が行われる。
露光方法としては、感光性樹脂フィルムがネガ型の場合は、感光性樹脂フィルムの支持層の表面に配線パターンが描かれたマスクを配置し、マスク上からUVを照射し、配線パターンの配線部分のみをUV照射して硬化する方法が挙げられる。この場合、露光の後、支持層を取り除き、現像液に浸漬すると、硬化されていない部分が除去され、硬化した部分だけが残され感光性樹脂層の配線パターンが形成される。又、UVの代わりに他の高エネルギー電磁波や電子線等の粒子線を用いる方法も考えられる。
さらに、感光性樹脂フィルムがポジ型の場合、すなわち照射された部分が現像液に可溶となる感光性樹脂からなる感光性樹脂層を有する感光性樹脂フィルムを用い、配線部分以外の部分を照射して、現像液に可溶化する方法も考えられる。
なお、露光の方式としては、マスクと基板間にレンズを配置して、マスク上のパターンを基板状の感光性樹脂に結像させて露光する投影露光方式、マスクを用いないレーザー光を用いたダイレクト露光方式、マスクを基板に接触させて露光するコンタクト露光方式、マスクと基板間に数μmから数十μm程度の隙間を設定して露光するプロキシミティ露光方式などがあり いずれの方式でも良い。特に、マスクと基板間にレンズを配置して、マスク上のパターンを基板状の感光性樹脂に結像させて露光する投影露光方式、マスクを用いないレーザー光を用いたダイレクト露光方式は、高精細な回路形成に用いられる。
【0031】
(支持層の剥離及び現像)
配線パターンの露光の後、支持層が剥離され、その後現像が行われる。現像により、配線パターン以外の部分の感光性樹脂層は現像液に溶解されて除去され、配線パターンの部分のみが残り、感光性樹脂層の配線パターンが形成される。現像は、感光性樹脂層の硬化されていない部分又は照射により可溶となった部分を溶解する現像液に露光後の積層体を浸漬する方法により行うことができる。現像液としては、感光性樹脂層がアルカリ可溶性の樹脂で形成されているときは、例えば炭酸ナトリウム水溶液(NaCO/HO)等のアルカリ性の液が用いられる。
【0032】
(現像後の工程-サブトラクティブ工法の場合)
プリント配線板をサブトラクティブ工法により製造する場合は、現像後、導電層のエッチングが行われる。現像により感光性樹脂層が除去された部分は導電層が露出するが、エッチングにより、この露出された部分の導電層が除去されて、配線パターンの部分のみ感光性樹脂層に被覆された導電層が残存する。導電層のエッチングは、例えば、塩化鉄、塩化銅水溶液等のエッチング液を用いて化学エッチングより行うことができる。
エッチング後、剥離液で処理して、感光性樹脂層を導電層から剥離させる。剥離により、導電層を被覆する感光性樹脂層が取り除かれて、導体パターンが形成される。剥離液には、例えば水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。
【0033】
(現像後の工程-セミアディティブ工法の場合)
プリント配線板をセミアディティブ工法により製造する場合は、現像後、導電層(シード層:無電解メッキにより形成された薄い銅層等)に通電し、配線を形成する材料、例えば銅の電気めっき(電解銅めっき)を行う。電気めっきにより、現像により感光性樹脂層が除去された部分、すなわち導電層が露出する部分に、配線を形成する材料がめっきされて積層され配線が形成される。その後、感光性樹脂層を、サブトラクティブ工法の場合と同様にして導電層から剥離させ除去する。感光性樹脂層を取り除くことにより導電層が露出するが、露出した導電層をエッチング(クイックエッチング)により取り除くことにより導体パターンが形成される。
【0034】
(2)第2の態様、第3の態様
本開示の第2の態様は、
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程、
前記導電層A1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムC1により、前記感光性樹脂層が導電層A1に接するように被覆する第1の被覆工程、
前記導電層B1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムD1、ならびに前記支持層の表面を被覆するカバー層からなる積層体により、前記感光性樹脂層が導電層B1に接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第2の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムC1を露光する第1の露光工程、
前記第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離するカバー層剥離工程、ならびに
前記カバー層剥離工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を露光する第2の露光工程を有するプリント配線板の製造方法である。
【0035】
本開示の第3の態様は、
絶縁基材の両表面に導体パターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程、
前記導電層A1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムC1により、前記感光性樹脂層が導電層A1に接するように被覆する第1の被覆工程、
前記導電層B1の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムD1により、前記感光性樹脂層が導電層B1に接するように被覆する第2の被覆工程、
前記第2の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を構成する支持層の表面をカバー層で被覆する第3の被覆工程、
前記第3の被覆工程の後、前記感光性樹脂フィルムC1を露光する第1の露光工程、
前記第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離するカバー層剥離工程、ならびに、
前記カバー層剥離工程の後、前記感光性樹脂フィルムD1を露光する第2の露光工程、を有するプリント配線板の製造方法である。
【0036】
第2の態様及び第3の態様のプリント配線板の製造方法は、
前記絶縁基材、及びその両表面に積層された導電層を有する積層体を準備した後、両表面の前記導電層のそれぞれについて、
導電層の表面を感光性樹脂フィルムにより被覆し、
前記感光性樹脂フィルムに配線パターンを露光する工程を有する点は、前記第1の態様のプリント配線板の製造方法と同じである。その後、感光性樹脂フィルムの支持層を剥離した後、現像して導体パターンを形成する点も前記第1の態様のプリント配線板の製造方法の場合と同じである。
【0037】
第2の態様のプリント配線板の製造方法は
1表面の導電層(導電層B1)の表面を、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムD1、ならびに前記支持層の表面を被覆するカバー層からなる積層体により被覆すること、そして
他の表面(導電層A1側)についての配線パターンを露光(第1の露光工程)後、前記カバー層を剥離して取り去り、その後導電層B1側の表面について配線パターンの露光(第2の露光工程)をすることを特徴とする。
又、第3の態様のプリント配線板の製造方法は、導電層A1側についての配線パターンを露光する(第1の露光工程)前に、感光性樹脂フィルムD1の支持層の表面をカバー層で被覆する第3の被覆工程を有すること、そして
第1の露光工程の後、前記カバー層を剥離して取り去り、その後導電層B1側の表面について配線パターンの露光(第2の露光工程)をすることを特徴とする。
【0038】
絶縁基材の両表面に配線を有するプリント配線板の製造において、支持層の表面が露出している感光性樹脂フィルムを用いると、絶縁基材及びその両表面に積層された導電層を有する両面板の一方の表面について露光をする工程において、両面板の搬送のためのローラ等の設備との接触により、露光面と反対側の表面にある支持層の表面に凹部の最大深さが1.0μm以上となるような凹凸が生じ、その結果、サブトラクティブ工法の場合における断線や、セミアディティブ工法の場合におけるショート不良等の不具合が発生する。 しかし、第2の態様、第3の態様によれば、ローラ等の設備とはカバー層が接触し支持層の表面はローラ等と直接接触しないので、カバー層の表面が搬送用のローラ等により傷付いても、支持層の表面が傷付き、最大深さが1.0μm以上となるような凹部が生じることはない。従って、露光の前にカバー層を剥離して取り去れば、傷のない支持層が積層された状態で露光がされるため、断線やショート不良等の不具合が生じることはない。
【0039】
次に、第2の態様、第3の態様の製造方法の各構成について説明する。
第2の態様、第3の態様により製造される、絶縁基材の両表面に配線を有するプリント配線板は、第1の態様の場合と同じプリント配線板である。
そして、第2の態様については、導電層B1の表面を被覆する積層体が、感光性樹脂層及びその1表面を被覆する支持層からなる感光性樹脂フィルムD1ならびに前記支持層の表面を被覆するカバー層からなること、及び
第1の露光工程の後、カバー層を剥離するカバー層剥離工程を有している点以外は、第1の態様の各工程と同様にして行うことができる。
又、第3の態様については、導電層A1側についての第1の露光工程の前に、導電層B1に積層された感光性樹脂フィルムD1の支持層の表面をカバー層で被覆すること、及び 第1の露光工程の後、カバー層を剥離するカバー層剥離工程を有している点以外は、第1の態様の各工程と同様にして行うことができる。
【0040】
すなわち、第2の態様、第3の態様については、
感光性樹脂フィルムC1、D1としては、第1の態様に用いられる感光性樹脂フィルムと同様なものを用いることができ、
絶縁基材、その1表面に積層された導電層A1及び前記絶縁基材の他方の表面に積層された導電層B1を有する両面板を準備する工程は、第1の態様の積層体の準備と同様にして行うことができ、
第1の被覆工程及び第2の被覆工程は、第1の態様における、感光性樹脂フィルムにより、感光性樹脂層が導電層に接するように被覆する工程と同様にして行うことができ、
第1の露光工程及び第2の露光工程は、第1の態様における配線パターンを露光する工程と同様にして行うことができる。
露光工程後の工程、すなわち支持層の剥離、現像して配線パターンの形成、サブトラクティブ工法やセミアディティブ工法等による配線の形成方法も第1の態様の場合と同様にして行うことができる。
【0041】
(カバー層)
本開示の第2の態様や第3の態様で使用されるカバー層及び第4の態様の積層体を構成するカバー層は、皮膜を形成でき、かつ支持層からの剥離が可能な材料から形成される。カバー層剥離工程は、感光性樹脂フィルムの支持層を剥離する前に行われるので、カバー層は、支持層の感光性樹脂からの剥離より小さい力で支持層から剥離可能である必要がある。しかしカバー層剥離工程より前の剥離は防ぐ必要がある。そこで、熱膨張係数が支持層と近い材質からなるものが好ましく、支持層と同じ材質からなるフィルムが好ましく用いられる。
カバー層には、製造工程中にローラ等と接触したとき、支持層の傷の発生を防ぐことができる厚さが望まれる。
(3)第4の態様
本開示の第4の態様は、プリント配線板の製造方法に使用される積層体であって、感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層の1表面を覆う支持層と、前記支持層の表面を覆うカバー層とを備える積層体である。この積層体は、前記第2の態様のプリント配線板の製造方法に使用される。前記第2の態様は、この第4の態様の積層体を用いること(及びカバー層を剥離する工程を有すること)を特徴としているので、第4の態様の積層体を用いることにより、前記第2の態様の効果を達成することができる。
【0042】
次に本開示の実施形態の例を、より具体的に図を参照しながら説明する。なお、図1図5は、説明のために模式的に示す図であり、各層の厚さの比等を表すものではない。
【0043】
図1は第4の態様の積層体、すなわち第2の態様の第2の被覆工程で用いられる感光性樹脂層1と支持層2を含む感光性樹脂フィルムD1とカバー層3からなる積層体の1例の構成を模式的に示す断面図である。図2Aは、第2の態様及び第3の態様に用いられる感光性樹脂フィルムC1及びD1の構成を模式的に示す断面図である。
【0044】
図2Aに示す感光性樹脂フィルムは、感光性樹脂層1を備え、感光性樹脂層1を支持し保護するため、感光性樹脂層1の1表面に支持層2が剥離可能に積層されている。図1に示す積層体、すなわち第4の態様の積層体や第2の態様の第2の被覆工程で用いられる積層体では、支持層2の1表面には、さらに、カバー層3が剥離可能に積層されている。
【0045】
図2Bは、市販されている感光性樹脂フィルムの例を模式的に示す断面図である。
市販されている感光性樹脂フィルムは、通常、図2Bに示すように、感光性樹脂層1を備え、その両表面に、感光性樹脂層1を支持し保護するため支持層2及び保護層21が剥離可能に積層されている。この保護層21は、感光性樹脂側に平滑性が有り、柔軟性があるポリエチレンなどが用いられる。
図2Aに示す感光性樹脂フィルムは、図2Bに示すような市販されている感光性樹脂フィルムの1面側にある保護層21を剥離して準備することができる。
図1に示す積層体は、図2Bに示すような感光性樹脂フィルムの1面側にある支持層2にカバー層3を積層し、保護層21を剥離する方法、支持層2とカバー層3を予め積層した状態で感光性樹脂を塗布し、他面側に保護層21を積層した後、基板に貼りつける際に保護層21を剥離する方法、又は、図2Bに示すような感光性樹脂フィルムの1面側にある保護層21を剥離するとともに、他面側にある支持層2にカバー層3を積層することにより準備する方法とすることができる。
【0046】
図3Aは、第2の態様のプリント配線板の製造方法の第1の被覆工程及び第2の被覆工程を模式的に示す断面図である。
図中の積層体は、絶縁基材4の両表面に導電層5(導電層A1及び導電層B1)が積層されたものである。
図3Aに示すように導電層A1には、感光性樹脂層1及び支持層2からなる感光性樹脂フィルムC1が、感光性樹脂層1が導電層A1に接するように被覆され、導電層B1には、感光性樹脂層1及び支持層2からなる感光性樹脂フィルムD1ならびにカバー層3からなる積層体が、感光性樹脂層1が導電層B1に接するように被覆されて、図3Aの右側の図に示す積層体が形成される。
【0047】
図3Bは、第3の態様のプリント配線板の製造方法の第1の被覆工程、第2の被覆工程及び第3の被覆工程を模式的に示す断面図である。
図中の積層体は、絶縁基材4の両表面に導電層5(導電層A1及び導電層B1)が積層されたものである。
図に示すように導電層A1及びB1には、感光性樹脂層1及び支持層2からなる感光性樹脂フィルムC1及びD1が、それぞれ、感光性樹脂層1が導電層A1又はB1に接するように被覆され、図3Bの中央の図に示す積層体が形成される。
その後図3(b)に示すように、形成された積層体の1方の表面にある支持層2(感光性樹脂フィルムD1の支持層)には、カバー層3が被覆され(第3の被覆工程)、図3Bの右側の図に示す積層体(図3Aの右側の図に示す積層体と同じである)が形成される。
【0048】
図4は、第2の態様及び第3の態様の第1の露光工程で行う露光を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、図3A又は図3Bの右側の図に示す積層体の1表面側の支持層2(感光性樹脂フィルムC1の支持層)の表面に配線パターンが描かれたマスク61が被せられ、UV等がマスク61上から照射されて露光が行われる(図4の下向き矢印)。この工程で、積層体の搬送に使用されるローラとの接触等により積層体の他方の表面にあるカバー層3の表面に傷が発生している(図4の波線部分:ローラによる傷)。しかし、支持層2(感光性樹脂フィルムD1の支持層)は、カバー層3により保護されローラとは接触しないため、その表面が傷付くことはない。
【0049】
図5は、第2の態様及び第3の態様の第2の露光工程で行う露光を模式的に示す断面図である。
図5の左側の図に示すようにカバー層3の表面にはローラとの接触による傷が発生しているが、カバー層3は剥離され、傷のない支持層2の表面が露出する。そして、その表面に配線パターンが描かれたマスク62が被せられ、露光が行われる(図5の下向き矢印)。従って、現像後の導電層B側の感光性樹脂層1に線状の傷等の欠陥の発生は抑制され、導体パターンに断線やショート不良等が発生することを抑制できる。
【実施例
【0050】
(比較例1)
厚さ25μmのポリイミド基板(絶縁基材)の表面に厚さ40nmのNiCr層、厚さ0.4μmのCu層(導電層:シード層)を有するスパッタ基板を準備した。このスパッタ基板の表面に、厚さ19μmの感光性樹脂層と支持層からなり、支持層の凹部の最大深さが1.2μmのネガ型ドライフィルムレジスト(感光性樹脂フィルム)を、感光性樹脂層がCu層に接するように積層した。
このドライフィルムレジストの表面上に、L/S=10/10μmの配線パターンが描かれたマスクを被せ、投影露光機によりパターン露光した。
露光後に、支持層の剥離及び現像を行って、ドライフィルムレジストのパターンを形成した。その後、電解銅めっき、ドライフィルムレジストの剥離、剥離により露出したCu層及びNiCr層の除去を順に行った。
上記の工程では、支持層の凹部に相当する部分において、感光性樹脂に未露光部分が発生し、現像で未露光部の感光性樹脂が溶解し、電解銅めっきの時にその部分がめっきされ、結果としてショート不良が発生した。
【0051】
(比較例2)
厚さ12μmのCu層(導電層)をその表面に有する厚さ60μmのガラエポ基板(絶縁基材)を準備した。ガラエポ基板の表面に、厚さ15μmの感光性樹脂層と支持層からなり、支持層の凹部の最大深さが1.8μmのネガ型ドライフィルムレジスト(感光性樹脂フィルム)を、感光性樹脂層がCu層に接するように積層した。
このドライフィルムレジストの表面上に、L/S=30/30μmの配線パターンが描かれたマスクを被せ、投影露光機によりパターン露光した。
露光後に、支持層の剥離及び現像を行って、ドライフィルムレジストのパターンを形成した後エッチングを行った。
上記の工程では、支持層凹部に相当する部分において、感光性樹脂に未露光部分が発生し、現像で未露光の感光性樹脂が溶解して、エッチング時にその部分の銅が除去され、結果として断線が発生した。
【0052】
(実施例1)
感光性樹脂フィルムとして、支持層の凹部の最大深さ0.6μmのネガ型ドライフィルムレジストを用いた以外は、前記比較例1と同様にして露光、現像、電解銅めっき、Cu層及びNiCr層の除去を行った。
上記の工程では、支持層の凹部に相当する部分においても、感光性樹脂に未露光部分は発生せず、ショート不良は発生しなかった。
【0053】
(実施例2)
感光性樹脂フィルムとして、支持層の凹部の最大深さ0.8μmのネガ型ドライフィルムレジストを用いた以外は、前記比較例2と同様にして露光、現像、エッチングを行った。
上記の工程では、支持層の凹部に相当する部分においても、感光性樹脂に未露光部分は発生せず、断線は発生しなかった。
【0054】
上記の比較例、実施例の結果より、感光性樹脂フィルムとして、支持層の凹部の最大深さが1.0μm以上のものを用いた場合は、ショート不良や断線が発生するが、最大深さが1.0μm未満のものを用いた場合は、ショート不良や断線の発生が抑制されることが示されている。
【符号の説明】
【0055】
1 感光性樹脂層
2 支持層
21 保護層
3 カバー層
4 絶縁基材
5 導電層
61、62 マスク
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5