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  • 特許-電子線照射装置および電子線照射方法 図1A
  • 特許-電子線照射装置および電子線照射方法 図1B
  • 特許-電子線照射装置および電子線照射方法 図2A
  • 特許-電子線照射装置および電子線照射方法 図2B
  • 特許-電子線照射装置および電子線照射方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】電子線照射装置および電子線照射方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/08 20060101AFI20230320BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20230320BHJP
   G21K 5/10 20060101ALI20230320BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20230320BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B65B55/08 B
G21K5/04 E
G21K5/10 C
G21K5/04 S
B65B55/04 A
B65B55/04 K
B65B55/04 M
A61L2/08 108
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019147236
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028225
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】星 康久
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋三
(72)【発明者】
【氏名】森本 雅史
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/129397(WO,A2)
【文献】国際公開第2001/023007(WO,A1)
【文献】特開2000-325441(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0014849(KR,A)
【文献】特開2002-211520(JP,A)
【文献】特開平11-248894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/00
G21K 5/00
A61L 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器に向けて電子線を照射する電子線照射装置であって、
前記容器を側面が前記電子線の照射方向と相対するように保持して、上流側から下流側に向けて搬送する搬送路を備える搬送手段と、
前記搬送路を搬送される前記容器に向けて電子を加速して照射する電子線照射部を備える電子線照射手段と、
前記搬送路の側方で前記容器を挟んで前記電子線照射部と対向する位置に配置され、前記電子線照射部より照射された前記電子線を前記容器の底面に反射させる反射面を有する反射板とが備えられており、
前記搬送手段には、回転しながら搬送方向に移動する複数のローラーが、一定間隔をおいて配置されており、隣接する2つの前記ローラー間に配置された前記容器を回転させながら搬送するように構成され、
前記ローラーは、側面の一方の端部に鍔部が設けられており、前記鍔部が設けられた端部を下側にして水平方向に対して1~80°の角度を付けて配置されており、前記側面が重金属製であり、前記容器との非接触部分の少なくとも一部に全周に亘って鏡面加工が施されていることを特徴とする電子線照射装置。
【請求項2】
前記反射板が、冷却可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子線照射装置。
【請求項3】
前記反射板の前記反射面が、鏡面加工されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子線照射装置。
【請求項4】
前記反射板において、少なくとも前記反射面が、金属を用いて形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電子線照射装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子線照射装置を用いて、有底筒状の容器に向けて電子線を照射する電子線照射方法であって、
前記容器を、側面が前記電子線の照射方向と相対するように保持して、上流側から下流側に向けて搬送する搬送工程と、
前記搬送路を搬送される前記容器の側面に向けて電子を加速して照射すると共に、前記電子線照射部より照射され、前記反射板の反射面から反射してきた電子線を前記容器の底面に照射する電子線照射工程とを備えており、
前記搬送工程において、隣接する2つの前記ローラー間に配置された前記容器を回転させながら搬送することを特徴とする電子線照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線照射装置および電子線照射方法に関し、詳しくは、後方散乱を利用した電子線照射装置および電子線照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品および飲料などの包装容器に対しては、内容物を充填する前に容器を滅菌して無菌状態にし、その後、無菌室内で内容物を充填して密封するように義務付けられている。
【0003】
具体的な滅菌方法としては、高温高圧水蒸気を用いる高圧蒸気滅菌、エチレンオキシドガス(EOG)を用いるEOG滅菌、γ線や電子線等の放射線を用いる放射線照射滅菌等が知られている。
【0004】
これらの内、高圧蒸気滅菌は、高温高圧水蒸気を用いるため、高圧のチャンバーを必要とし、また、対象物が高温高圧に耐える必要がある。このため、高圧蒸気滅菌は、近年広く用いられているプラスチック製の容器に適した滅菌方法とは言えない。
【0005】
また、EOG滅菌は、低温での滅菌が可能であるが、滅菌処理及び残留ガス除去に要する時間が比較的大きい。また、EOGが発がん性を有することから、規制の強化が求められている。
【0006】
このため、近年は、放射線照射滅菌が広く採用されるようになっているが、その内でも、放射性物質を使用する必要がない電子線照射滅菌の採用が増えてきている。そして、このような電子線照射滅菌では、容器の外面を滅菌するだけでなく、容器の材質、肉厚の大きさによっては容器の内面を滅菌することもできる。
【0007】
従来の電子線照射滅菌は、容器を梱包した状態で、梱包の外側から透過力の高い高エネルギーの電子線を照射して電子線を梱包及び容器肉厚等を透過させることにより容器全面を滅菌している(特許文献1、2参照)。この方法は、容器を梱包しているため、滅菌した後、ユーザーの下に搬送することが可能である。
【0008】
しかし、上記の方法を採用した場合には、梱包を開封したときから内容物を充填するまでの間に、容器の外面が汚染されるリスクがある。このため、内容物の充填ラインにおいて、滅菌と内容物の充填とを連続して行うことができるインラインタイプの電子線照射技術が求められている。または高エネルギー電子線で梱包した状態で滅菌した後に梱包を開放する際の再汚染を防ぐために2重梱包にすることや、内容物を充填するまでの間に容器の外面を滅菌する技術が求められている。
【0009】
このようなインラインでの電子線照射を行うためには、装置が小型であることが求められるが、上記した従来の高エネルギー電子線照射装置では装置規模が大きく、また、発生するX線を遮蔽するためには、コンクリートシールドなどの大型のシールド設備を必要とする。このため、高エネルギー電子線照射装置は、インラインでの電子線照射に適した設備とは言えない。
【0010】
一方、低エネルギーおよび中エネルギーの電子線照射装置は、装置規模が小さく、シールド設備としても、鉛シールドを用いた小型の自己シールドでよいため(特許文献3参照)、インラインでの電子線照射に適した設備と言うことができる。
【0011】
しかしながら、滅菌の対象となる容器は、一般的に有底筒状の形状を有している。このため、透過力の小さい低エネルギーおよび中エネルギーの電子線を、容器の一方向、例えば、側面側から照射したのでは、背面側や底面には電子線を照射することができず、照射のムラを生じてしまう。
【0012】
そこで、このような照射ムラの発生をなくす方法として、例えば、筒状の容器の側面を支持して搬送しながら底面部側から電子線を照射する第1電子線加速器と、筒状の容器を底面部側から支持して自転させながら側面部側から電子線を照射する第2電子線加速器とを配置して、第1電子線加速器による照射と第2電子線加速器による照射とを連続して行う連続滅菌装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0013】
しかしながら、このような連続滅菌装置は、容器の底面および側面の全周に亘って電子線を照射することはできるものの、容器の搬送手段および電子線加速器をそれぞれ2台必要とするため、設備の大型化が避けられない。また、電子線の照射を2回に分けて行う必要があるため、効率的な処理とは言えず、生産性の向上を図る上で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平11-130172号公報
【文献】特開2018-95257号公報
【文献】実開平5-62900号公報
【文献】国際公開WO2013/062006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記した従来の電子線照射滅菌における諸問題に鑑みて、低エネルギーまたは中エネルギーの電子線を用いながらも、1台の電子線照射装置で、さらに、1回の照射で、有底筒状の容器の外面全体に電子線を照射することができる電子線照射技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
請求項1に記載の発明は、
有底筒状の容器に向けて電子線を照射する電子線照射装置であって、
前記容器を側面が前記電子線の照射方向と相対するように保持して、上流側から下流側に向けて搬送する搬送路を備える搬送手段と、
前記搬送路を搬送される前記容器に向けて電子を加速して照射する電子線照射部を備える電子線照射手段と、
前記搬送路の側方で前記容器を挟んで前記電子線照射部と対向する位置に配置され、前記電子線照射部より照射された前記電子線を前記容器の底面に反射させる反射面を有する反射板とが備えられており、
前記搬送手段には、回転しながら搬送方向に移動する複数のローラーが、一定間隔をおいて配置されており、隣接する2つの前記ローラー間に配置された前記容器を回転させながら搬送するように構成され、
前記ローラーは、側面の一方の端部に鍔部が設けられており、前記鍔部が設けられた端部を下側にして水平方向に対して1~80°の角度を付けて配置されており、前記側面が重金属製であり、前記容器との非接触部分の少なくとも一部に全周に亘って鏡面加工が施されていることを特徴とする電子線照射装置である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、
前記反射板が、冷却可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子線照射装置である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、
前記反射板の前記反射面が、鏡面加工されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子線照射装置である。
【0020】
請求項4に記載の発明は、
前記反射板において、少なくとも前記反射面が、金属を用いて形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電子線照射装置である。
【0021】
請求項5に記載の発明は、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子線照射装置を用いて、有底筒状の容器に向けて電子線を照射する電子線照射方法であって、
前記容器を、側面が前記電子線の照射方向と相対するように保持して、上流側から下流側に向けて搬送する搬送工程と、
前記搬送路を搬送される前記容器の側面に向けて電子を加速して照射すると共に、前記電子線照射部より照射され、前記反射板の反射面から反射してきた電子線を前記容器の底面に照射する電子線照射工程とを備えており、
前記搬送工程において、隣接する2つの前記ローラー間に配置された前記容器を回転させながら搬送することを特徴とする電子線照射方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低エネルギーまたは中エネルギーの電子線を用いながらも、1台の電子線照射装置で、さらに、1回の照射で、有底筒状の容器の外面全体に電子線を照射することができる電子線照射技術を提供することができる。
【0023】
また、反射板から反射してきた電子線を利用して、容器の底面における電子線の照射不足を補うことで、底面と側面の照射の偏りを改善することができるため、放射線劣化しやすい容器でも1台で滅菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の一実施の形態に係る電子線照射装置の基本的な態様を示す模式図である。
図1B図1AのA-A矢視図である。
図2A】本発明の一実施の形態に係る電子線照射装置の反射板の構成を示す模式図である。
図2B図2Aの反射板を背面から見た模式図である。
図3】電子線照射中における容器の回転機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0026】
[1]電子線照射装置
1.基本的な態様
はじめに、本実施の形態の電子線照射装置の基本的な態様について説明する。図1Aは、本実施の形態に係る電子線照射装置の基本的な態様を示す模式図であり、図1Bは、図1AのA-A矢視図である。
【0027】
図1A図1Bにおいて、1はインラインに設けられた電子線照射装置であり、電子線を容器Cに向けて放射して照射する電子線照射部11が、搬送路12の上方に、容器Cと相対するように配置されている。なお、本実施の形態において、電子線照射部11は、例えば、加速電圧1MV以下の低エネルギーまたは中エネルギーで電子を加速する。そして、13は反射板であり、搬送路12の側方で容器Cを挟んで電子線照射部11と対向する位置に傾斜して配置されている。また、容器Cは、図1Bに示すように、回転する複数のローラー21の隣接する2つのローラー間に配置されて、ローラー21の回転に合わせて回転している。
【0028】
このような構成とすることにより、横向きに載置された容器Cの側面に向けて放射電子線11aを照射した場合、回転する容器Cの側面では、放射電子線11aが十分に照射されるため、十分な滅菌を行うことができる。
【0029】
しかし、容器Cの底面については、図1Aに示すように、放射電子線11aは容器Cの底面に平行に通過するため、照射不足を招いて十分な滅菌ができない恐れがある。このため、本実施の形態においては、容器Cに照射されなかった放射電子線11aの一部を反射板13の反射面13aにおいて反射させることにより、後方散乱電子線11bを、容器Cの底面Bに向けて照射することができるようにされている。
【0030】
この結果、底面Bにおける電子線の照射不足を補って、十分な照射を行うことができ、低エネルギーまたは中エネルギーの電子線を用いながらも、1台の電子線照射装置で、さらに、1回の照射で、有底筒状の容器の外面全体に電子線を照射して滅菌することができる。また、底面Bにおける電子線の照射不足を補うことで、底面と側面の照射の偏りを改善することができるため、放射線劣化しやすい容器でも1台で滅菌することができる。
【0031】
そして、加速電圧が1MV以下のような電子線照射部11は小型であるため、電子線照射装置1全体も小型化でき、インラインに設ける滅菌設備として好ましい。
【0032】
なお、本実施の形態においては、必要に応じて、電子線照射前に予め内容物が充填された容器に対して、低エネルギーの電子線を利用することで内容物に電子線を照射せずに容器の外面だけを照射することもできる。
【0033】
2.電子線照射装置の特徴部
次に、本実施の形態の電子線照射装置の具体的な態様の内、特徴部である反射板、ローラーについて説明する。
【0034】
(1)反射板
前記したように、容器Cの底面Bについては、放射電子線11aは容器Cの底面に平行に通過するため、側面に比べて照射不足を招く恐れがある。しかしながら、本実施の形態においては、搬送路12の側方で容器Cを挟んで電子線照射部11と対向する位置に反射板13が配置されており、放射電子線11aを反射板13の反射面13aで後方散乱させることにより、後方散乱電子線11bが容器Cの底面Bに照射されるように構成されている。このため、容器Cの底面Bに対して効率良く電子線を照射することができ、1台の電子線照射装置を用いて1回の照射でありながら、容器Cの全面に対して十分な滅菌を行うことができる。また、底面Bにおける電子線の照射不足を補うことで、底面と側面の照射の偏りを改善することができるため、放射線劣化しやすい容器でも1台で滅菌することができる。
【0035】
図2Aは、本実施の形態に係る電子線照射装置の反射板13の構成を示す模式図であり、図2Bは、反射板13を背面から見た模式図である。図2A、2Bにおいて、14は、反射板13を支持する支持装置である。なお、θは傾斜角度であり、cは冷媒である。
【0036】
反射板13の放射電子線11aの放射方向に対する傾斜角度θが変更できるように支持装置14で支持することにより、放射電子線11aから後方散乱電子線11bへの反射角度を任意に調整することができる。この結果、後方散乱電子線11bを、容器Cの底面Bの所望する位置に合わせて確実に照射することができる。
【0037】
本実施の形態において、反射板13は、支持装置14に冷却装置が設けられて、冷却可能とされていることが好ましい。
【0038】
反射板13を冷却することにより、長時間継続して放射電子線11aが反射板13に向けて照射された場合における反射板13の温度上昇を防止することができる。具体的な冷却方法としては、例えば、図2Bに示すように、反射板13の裏側に固着された配管30に、冷却水や冷却効果の高いLLCクーラント液等の冷媒cを通過させる方法も可能である。
【0039】
反射面13aは、さらに、鏡面加工されていることが好ましい。これにより、放射電子線11aをより効率的に後方散乱させることができるため、放射電子線11aをより効率的に利用して、後方散乱電子線11bの線量を増大させることができる
【0040】
また、反射板13は、少なくとも反射面13aが、電子線に対する後方散乱の機能に優れる金属を用いて形成されていることが好ましい。
【0041】
具体的な金属としては、例えば、タングステン(W)や金(Au)等の重金属が挙げられる。これらの金属は、反射板13の内部まで、所謂バルク状態で使用してもよいが、反射面13aに表面被覆して薄膜を形成させる等、後方散乱に関与する表面部分のみに使用してもよい。
【0042】
(2)ローラー
図1に示すように、本実施の形態において、搬送路12には、回転しながら搬送方向に移動する複数のローラー21が、一定間隔をおいて配置されている。そして、容器Cは、隣接する2つのローラー21の間に配置されている。このため、容器Cがローラー21の回転に合わせて回転して、放射電子線11aが照射される側面が絶えず変化し、容器Cの側周面全面に対して十分な量の放射電子線11aが照射されることになる。この結果、容器Cの側面を十分に滅菌することができる。なお、21cは容器Cを底面B側から支持するためにローラー21の側面の端部に設けられた鍔部である。
【0043】
また、図1Bに示すように、水平に配置された2つのローラー21間に容器Cを配置した場合には、容器Cをチャックなどで保持する必要がないため、影ができず、容器Cの側面の全面に放射電子線11aを照射することができる。
【0044】
なお、ローラー21が完全に水平の角度で配置されていると、ローラー21の回転に伴って回転する容器Cが、ローラー21上で移動してしまう恐れがあるため、ローラー21は所定の角度、好ましくは1~80°の角度をつけて配置されていることが好ましい。これにより、容器Cが鍔部によって支えられながら回転するため、ローラー21上での移動を防止することができる。
【0045】
(3)回転機構
図3は、電子線照射中における容器の回転機構を示す模式図である。図3において、22aは固定部材、22bは支持部材、22cはローラー保持部材、22dは支点である。そして、ローラー21の回転軸は、ローラー保持部材22cの両側に突出部を有しており、一端にローラー21が取り付けられ、他端にピニオン24aが取り付けられている。また、24bはラックであり、搬送路に沿って平行に配置されている。
【0046】
図3に示すように、ローラー支持装置が搬送路に搬入されたときピニオン24aがラック24bと噛み合い、ローラー支持装置が搬送方向に移動することでローラー21が回転する。これにより、容器Cを回転させながら電子線を照射することができる。
【0047】
このように、ピニオン24aとラック24bを組み合わせることにより、回転機構を簡素な構成にすることができ、また故障のリスクが低減される。また、ローラー21の回転数は、ピニオン24aとラック24bの歯数の比によって決まるため、搬送スピードが変動してもローラー21の回転数が変動することがない。このため、例えば照射線量を調整するため、搬送スピードを変えた場合でも回転数を一定に保つことができる。
【0048】
3.より好ましい態様
(1)反射板の反射面の傾斜角度
反射板13は、反射面13aの傾斜角度θが変更できるように支持されていることが好ましい。具体的には、図2Bにおいて、例えば、配管30により反射板の幅方向の中央を中心として反射板13の傾きを自在に変えられるように支持する。これにより、サイズ、形態が多様な容器に対しても所望の位置に後方散乱電子線11bを照射することができる。
【0049】
(2)ローラーの表面形状および材質
ローラー21は、容器Cと接触する部分21aの少なくとも一部の側面が、全周に亘って、ローレット加工または梨地加工が施されていることが好ましい。このような加工を施すことにより、容器Cとローラー21の側面との間の摩擦力が高められるため、容器Cがローラー21に対して滑りにくくなり、回転するローラー21に合わせて、確実に、容器Cを回転させることができる。
【0050】
なお、具体的なローレット加工の形態としては、アヤ目加工やローラー21の軸方向に沿って目が形成されたヒラ目加工を挙げることができる。また、梨地加工の形態としては、エッチング、サンドブラスト、ホーニングなど公知の表面処理加工を挙げることができる。ローレット加工の目の大きさおよび梨地における粗度は、容器の材質、側面の曲率の大きさ、表面粗度等に応じて適宜決定される。
【0051】
また、ローラー21の容器Cと接触しない部分21bの少なくとも一部の側面では、全周に亘って、鏡面加工が施されていることが好ましい。具体的には、図1Aに示すように、ローラー21の長さを容器Cの高さより大きくし、容器Cと接触しない部分21bの一部の側面に鏡面加工が施されていることが好ましい。
【0052】
これにより、鏡面加工が施されている部分では、放射電子線11aが反射されて、容器Cに向けて後方散乱するため、放射電子線11aの照射線量が少ない容器Cの頂部Tの蓋部などについても、ローラー21の鏡面加工された側面から後方散乱された電子線を照射して、滅菌することができる。
【0053】
そして、このような効果を得るためには、反射板の場合と同様に、ローラー21の少なくとも側面部分は、金属を用いて形成されていることが好ましい。
【0054】
(3)ローラーの姿勢変更
電子線の照射は、容器を水平、横向きに配置して行われる。一方、容器への内容物の充填は、通常、容器を立設させて行われるため、電子線照射後に容器を立設させる姿勢変更を行うことが好ましい。
【0055】
[2]電子線照射方法
次に、上記した電子線照射装置を用いて、有底筒状の容器に向けて電子線を照射する電子線照射方法について説明する。
【0056】
本実施の形態においては、上記した電子線照射装置を用いて、以下の2つの工程を経ることにより、容器に電子線を照射して滅菌を行うことができる。
【0057】
即ち、容器を、側面が電子線の照射方向と相対するように保持して、上流側から下流側に向けて搬送する搬送工程と、搬送路を搬送される容器の側面に向けて電子を加速して照射すると共に、電子線照射部より照射され、反射板の反射面から反射してきた電子線を容器の底面に照射する電子線照射工程との2つの工程である。
【0058】
そして、このような工程を経て、有底筒状の容器に向けて電子線を照射することにより、上記した電子線照射装置の説明において記載したように、容器の側面だけでなく、底面や頂部に対しても十分に電子線を照射することができる。この結果、加速電圧1MV以下の低エネルギーまたは中エネルギーで電子を加速して照射する小型の電子線照射部を用いながらも、1回の照射で筒状の容器の外面全体に電子線を効率良く照射することができる。
【0059】
また、底面における電子線の照射不足を補うことで、底面と側面の照射の偏りを改善することができるため、放射線劣化しやすい容器でも1台で滅菌することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 電子線照射装置
11 電子線照射部
11a 放射電子線
11b 後方散乱電子線
12 搬送路
13 反射板
13a 反射面
14 支持装置
21 ローラー
21a 容器と接触する部分
21b 容器と接触しない部分
21c 鍔部
22a 固定部材
22b 支持部材
22c ローラー保持部材
22d 支点
24 回転機構
24a ピニオン
24b ラック
30 配管
B 底面
C 容器
T 頂部
c 冷媒
θ 傾斜角度
図1A
図1B
図2A
図2B
図3