(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】階層式デジタル紋織物製造システム
(51)【国際特許分類】
D03D 23/00 20060101AFI20230320BHJP
D03C 3/00 20060101ALI20230320BHJP
D03C 19/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
D03D23/00
D03C3/00
D03C19/00 B
(21)【出願番号】P 2019184832
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190426
【氏名又は名称】新井 實
(72)【発明者】
【氏名】新井 實
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-052182(JP,A)
【文献】特開昭64-068541(JP,A)
【文献】特開2014-173219(JP,A)
【文献】特開2006-152520(JP,A)
【文献】特開平03-113043(JP,A)
【文献】特表2013-522483(JP,A)
【文献】登録実用新案第3038392(JP,U)
【文献】米国特許第06185475(US,B1)
【文献】中国実用新案第207267909(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0097723(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第1786308(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108691057(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106917177(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107345331(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C1/00-19/00
D03D1/00-27/18
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層式デジタル紋織物の製造システムにおいて、
前記システムは、デザインの色エリア毎に、位置情報、織組織番号、及び付属織方情報により総合階層情報を生成する手段、及び
階層織方変換表にて階層の高さ位置を決めてから織方データに変換する手段、及び
前記織方データに基づいてデジタル式織組織を創作し、3次元階層意匠図を作製する手段、及び
前記階層意匠図の階層に、平面位置情報、織組織図番号、必要な付属織方情報を持たせて、階想織方変換表で予め階層段数を設定する手段、及び
少なくともメートル作成機能、番号付き織組織、平面位置情報、高さ位置情報、意匠図色彩別情報、緯糸選択導入順情報、紋紙案内鑽孔指示情報、及び付属織方情報を格納する準備メモリー、及び
多段階階層の各段毎に平面階層図をつくり、織組織の原点を同じにして、基本組織の開口点と組織の手を合わせることによって多段階層に、基本組織の2倍、4倍、8倍、16倍の開口点配列を有する織組織の整合性を持たせながら階層段位置を積上げ、前記3次元階層意匠図に統合して立体感を持つ織物を織る手段、
を具備することを特徴とする、階層式デジタル紋織物の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明は紋織物の製造に関する。
【背景技術】
織物の思想 アナログとデジタル
従来からの織物の思想には、「織物の三原組織論」思想があった。「面」単位の織組織が最小単位であった。従来の織物思想はアナログ式であった。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来の織物思想「織物の三原組織論」は、面積の最小単位は「面」であった。平織、斜文織、朱子織の正則又は変則で作られた。基本組織単位は、平織、斜文織、繻子織の正則または変則の織組織である。織機の開口装置からの制約を受けているからである。
【背景技術】
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
特許第1940156号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は「織物の三原組織論」のいうアナログ型思想から脱却したデジタル型思想であり、「絵画織」の基礎となる「織物の点構造織物論」に基づく。
本発明者が提唱している「織物の点構造組織論」思想は、「織物の三原組織論」に対し、点構造の織組織論である。開口点「1」と閉口点「0」と定義して、「1」と「0」を交錯させて織組織ができる。最小面積は「点」であるので最小であり、この織物思想はデジタル式である。
ジャカード糸把吊袈物を、織幅i杯の経糸、1本毎の独自開口、閉口活動を行う。この開口装置の原理が、本発明者の「織物の点構造組織論」思想の根本であり考案し制作した。「織物の点構造組織論」では開口方式が従来のものと異なる。
新織物思想「織物の点構造組織論」においては、経糸と同数の竪針をもち、ジャカード糸把吊り袈物の竪針運動で、経糸1本ずつを独自に、開口運動を与えることができるので、面積の最小単位は「点」である。「デジタル織組織図」は、経糸が自由に開閉口できる大きさに制限はない。この思想はデジタル式である。この「織物の点構造組織論」思想は、本発明者の考案である。
【発明の概況】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【発明を実施するための形態】
新織物思想「織物の点構造組織論」から、デジタル式織組織を創作し、3次元階層意匠図を作り、デザインの色エリア毎に、位置情報、織組織(番号)、付属織方情報とで、総合階層情報を構成する。「階層織方変換表」にて、階層の高さ位置(段数)を決めてから、「階層式デジタル紋織物製造システム」の織方データに変換し作成する。
以上が「階層式デジタル紋織物製造システム」織方データであり、項目毎の名称を解説しながら、「階層式デジタル紋織物製造システム」の明細を説明する。
通常の2次元(X、Y)意匠図は同色面エリア群で構成されている。階層意匠図の階層は同色面エリア群に、「高さ段数位置」(Z)を加えるため3次元(X、Y、Z)階層意匠図となる。こうして生まれた階層エリアを階層という。
階層意匠図の階層に、平面位置情報、織組織図番号、必要な付属織方情報を持たせて、「階想織方変換表」で、先に「階層段数」を設定する。それで1越一緯糸毎の階層データが最終的に構成される。原材料の緯糸は同デニールで、別色多本数を使う。経糸は、地糸、紋糸或いは色緯糸の綴じに白系を使うか、又は地糸、紋糸、および紋柄のはつりに黒系、の1色使い或いは白黒ヤスラ使いを使う。
準備メモリーの倉庫データ類には[メートル作成機能(織方情報)、番号付き織組織、平面位置情報、高さ位置情報(作者が変換前に指定)、意匠図色彩別情報、緯糸選択導入順情報、紋紙案内鑽孔指示情報、付属織方情報、その他]があり必要分だけを使用する。
階層の段位置の決定は、各階層の組織図の「開口点」の多いものほど、織物の表側に階層の開口点の少ないほど、裏側表面に位置する。この方法で段位置を決める。
この織物の織組織開口点の多少の順で、階層の高さ段位置が決まる。これは、オペレータの仕事である。
階層段数指定済みました後に、デジタル式階層総合データを「階層織方変換表」にて、「階層式デジタル紋織物製造システム」織方データをつくる。データは保管し、電子メモリーにコピーして「階層式デジタル紋織物製造システム」の紋織物が製織できる。
【問題を解決するための手段】
【0006】
階層とは、階層意匠図の主役である。階層意匠図の平面色相管理データである。平面位置データと、付属メモリ-倉庫データは[メートル作成機能(織方情報)、番号付き織組織、平面位置情報、高さ位置情報(作者が変換前に指定)、意匠図色彩別情報、緯糸選択導入順情報、紋紙案内鑽孔指示情報、付属織方情報、その他]なかの、必要なデータを使う。
サブメモリ-倉庫デーデータ類の説明をする。
1)番号付き織組織 番号付き、デジタル織組織、
2)平面位置情報、 (X、Y)存在位置情報、
3)高さ位置情報(作者が変換前に指定) (Y)重ね段数位置情報、
4)意匠図色彩別情報 意匠図の色相使用位置情報(メートル作成)、
5)緯糸選択導入順情報 緯糸を指定色毎使用順に選択、
6)紋紙案内鑽孔指示情報 紋紙に模様針と付属針位置を定め,鑽孔指示、
7)付属織方情報 耳活動、(巻取、送出、機械)稼働停止指令
8)その他 必要が四時多場合、
以上のうち必要な情報である織方情報を、階層にもたせる。また同色エリア階層の開口点の、数の多少で高さ位置(段位置)を決める、1本の緯糸は異なる階層段数位置の階層に連続して組織する。緯糸は上下、様々な高さ位置の、どの階層にも連続的に選べる。
【0007】
階層織組織の整合性
整合性の持つ階層の織組織とは、織組織の原点を同じにして、基本組織(最小組織)の開口点と、組織の手を合わせた織組織をいう。例えば、組織の原点を同じにして、例えば、平織、4枚斜文織、8枚繻子織、16枚繻子織が、整合性ある織組織である。基本組織の2倍、4倍、8倍、16倍の開口点配列を整合性という。
【発明の効果】
【0008】
組織の整合性をもつ階層の高さ位置
総ての使用する緯糸毎に織組織番号で処理した階層を、整合性をもつ織組織階層順に積み上げる。織物表側の最上部階層は柄文様を現す、その階層の段数差は開口数で決め柄文様の高さを決められる。織物裏側の最上部の階層は、裏綴じの表面を現す。
従って立体感のある模様表現織が出来る。整合性の組織図は、2倍数の正則、変則が良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
織方表による立体織方データ変換
多段階階層の各段毎に平面階層図をつくり、多段階層は織組織の整合性を持たせて階層段位置を積上げ、3次元階層図に統合して、立体感を持つ織物を織る。
【発明が実施するための形態】
【0010】
【図面の簡単な説明】
【
図1】 絵画織異組織多段階階層織の織物組織図 一段目は三枚斜文系、二段目は八枚繻子系、三段目は五枚繻子系の正組織系又は異組織系を緯糸多段階層織で混在させられる技法である。
【
図2】 多段階層織の階層織方表 二次元意匠図を垂直方向 の「Z」位置を読み取る織方表である。
【
図3】 デジタル紋織物製造システム(異組織多段階階層織)の階層配置図 階層のX軸、Y軸、Z軸の三次元座標を確定し、織組織番号、緯糸選択順、付属活動らを変換する、Z位置の位置は織組織の開口点の量で決まる。開口点の最も多い量は、表側の柄表現となる、裏側は開口量の最も少ない階層で裏綴じを決める。任意に垂直段数を調整し変化を付けることができる。
【
図4】 階層の段数の変化例表 階層段数により織物の柄文様の立体感の変化をつくる。緯多重織に使う緯糸数と同じ又は異なる、階層段数を任意の色緯糸に指定できる。これらは織方表で認識し、織物データに変換する。zyは基本組織8枚繻子の階層模型図である。
階層表裏位置 表裏階層段数 組織名開口運動 開口点比率 表側最高階層(表4段) 16枚繻子重口 15/1 表側 高階層(表3段) 8枚繻子重口 7/1 表側 中階層(表2段) 82繻子重口 6/2 表側 低階層(表1段) 81繻子重口 5/3 表裏中心芯階層(中*0段) 2/2平織 2/2 裏側 低階層(裏-1段) 81繻子軽口 3/5 裏側 中階層(裏-2段) 82繻子軽口 2/6 裏側 高階層(裏-3段) 8枚繻子軽口 1/7 裏側最高階層(裏-4段) 16枚繻子軽口 1/15
【符合の説明】
【0011】
【符号の説明】
図1 整合性ある織組織 2枚斜文系、8乃繻子系、5枚繻子系
絵画織整合組織多段階階層織の織物組織系列図(織裏製織の場合)
A,表側の3枚斜文織系組織図、正即基点、模様糸を織、黒色は開口点
B,裏側の3枚斜文織系組織図、浮き緯綴じ、白色は閉口点、
C,表側の8枚繻子織系組織図、模様糸を織、黒色は開口点
D、裏側の8枚繻子織系組織図、浮き緯綴じ、白色は閉口点、
C,表側の5枚繻子織系組織図、模様糸を織、黒色は開口点
D、裏側の5枚繻子織系組織図、浮き緯綴じ、白色は閉口点、
図2 多段階層織の立体階層変換織方図 (織裏製織の場合)
A、意匠図の項
B,意匠図の色(a~o)
C,階層の垂直位置 表側1~4)、裏側(-1~-4)、芯(0)
D,階層の特徴 表裏の階層を自由に選べる、組織も選択出来る。
(1~8)、緯糸の選択順序
(あ~く)、緯糸の色
(▲1▼~▲8▼)、織組織番号
図3 異組織多段階階層織の階層配置図(織裏製織の場合)
A 階層欄
B,階層段数
C,階層項
D,階層Z位置
a~e 緯糸の選択順と色
▲4▼~▲1▼、0 -▲1▼~-▲4▼ 階層の垂直段位置(Z軸)
1~8、織組織番号
図4 階層積み立てず図(平織系8枚繻子)(織裏製織の場合)
織物の表裏
A 織物 B 表側 C 芯 D 裏側階層の位置
▲1▼ 第4階層 ▲2▼ 第3階層 ▲3▼ 第2階層 ▲4▼第1階層 ▲5▼ 第芯階層 ▲6▼ 第-1階層 ▲7▼ 第-2階層 ▲8▼ 第-3階層 ▲9▼ 第-4階層
階層の織組織
a 32枚繻子重口 b 16枚繻子重口 c 9枚繻子重口 d 4枚斜文重口 e 平織 f 4枚斜文軽口 g 8枚繻子軽口 i 16枚繻子軽口 j 32枚繻子軽口
階層積み立て条件
あ 組織の原点は、意匠酢の原点と同じ
い 整合性のある組織は、その組織系の最小組織の2倍数、異なる組織は、平織、3枚斜文(錦地)、5枚繻子
表示は製織場で、織物の表側は機上の裏で織られる。
【0012】
【発明の効果】
未だ克って織ることが出来なかった、1本の緯糸が、異なる織組織を同時に混在させた階層に織ることができる様になり、絵画織で解決した。
また、緯糸多重織の平面織組織型多重織意匠図を階層織方変換表により立体緯糸多重多段階層意匠図データに変換することにより、ジャカードに入力し、階層式デジタル紋織物製造システムで絵画織立体階層織及び同組織系又は異組織系の織組織混在織物を織ることが可能になった。
「織物の点構造織物論」の思想を活用し、階層式デジタル紋織物製造システム、及び同組織系又は異組織系の織組織混在織を開発したのが修正した絵画織である。例えば、儀絽地口に絵画織の絵模様織を使った1本の帯が、クールビズ夏帯である。