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特許7246647BCMAに結合するキメラ抗原受容体(CAR)及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】BCMAに結合するキメラ抗原受容体(CAR)及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230320BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230320BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230320BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230320BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230320BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230320BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230320BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230320BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230320BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230320BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K35/17
A61K38/02
A61K39/395 N
A61P35/00
C07K14/725
C07K16/30
C07K19/00 ZNA
C12N5/078
C12N5/0783
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078000
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2020518469の分割
【原出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2021118736
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201810100549.6
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811228154.0
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520103816
【氏名又は名称】南京馴鹿医療技術有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520103827
【氏名又は名称】信達生物製薬(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 剣峰
(72)【発明者】
【氏名】劉 軍建
(72)【発明者】
【氏名】胡 広
(72)【発明者】
【氏名】楊 永坤
(72)【発明者】
【氏名】孟 広栄
(72)【発明者】
【氏名】高 文静
(72)【発明者】
【氏名】王 玉玉
(72)【発明者】
【氏名】牛 ▲パン▼▲パン▼
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538710(JP,A)
【文献】国際公開第2017/181119(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
A61K 35/17
A61K 38/02
A61K 39/395
A61P 35/00
C07K 14/725
C07K 16/30
C07K 19/00
C12N 5/078
C12N 5/0783
C12N 5/10
C12N 7/01
C12N 15/12
C12N 15/13
C12N 15/63
C12N 15/867
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
前記CARは、ヒトBCMAに特異的に結合する抗体又はその断片を含むBCMA結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、前記抗体は、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)と、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)とを含み、前記HCDR1はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み、及び前記HCDR3はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、並びに、
前記抗体は、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)と、軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)とを含み、前記LCDR1はSEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2はSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含み、及び前記LCDR3はSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列を含み、
前記抗体は単鎖抗体である、
前記CAR。
【請求項2】
前記抗体は、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む請求項1に記載の前記CAR。
【請求項3】
前記抗体は、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む請求項1又は2に記載の前記CAR。
【請求項4】
前記抗体は、SEQ ID NO: 43に示されるアミノ酸配列を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα、β又はζ鎖、CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8a、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154からなる群より選ばれるタンパクに由来する膜貫通ドメインを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項6】
前記膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列を含む請求項1~5のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項7】
前記共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40、及びICOSからなる群より選ばれるタンパクに由来する共刺激ドメインを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項8】
前記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:29又はSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列を含む請求項1~7のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項9】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む請求項1~8のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項10】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列を含む請求項1~9のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項11】
前記CARはさらに前記BCMA結合ドメインと前記膜貫通ドメインを接続するヒンジ領域を含む請求項1~10のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項12】
前記ヒンジ領域は、SEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含む請求項11に記載の前記CAR。
【請求項13】
前記CARはシグナルペプチドも接続する請求項1~12のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項14】
前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含む請求項13に記載の前記CAR。
【請求項15】
前記CARは、切断ペプチドも接続する請求項1~14のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項16】
前記切断ペプチドは、T2Aペプチド由来のアミノ酸配列を含む請求項15に記載の前記CAR。
【請求項17】
前記切断ペプチドは、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含む請求項15又は16に記載の前記CAR。
【請求項18】
SEQ ID NO:49又はSEQ ID NO:51に示されるアミノ酸配列を含む請求項1~17のいずれか一項に記載の前記CAR。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のCARをコードする単離された核酸分子。
【請求項20】
SEQ ID NO:50又はSEQ ID NO:52に示される核酸配列を含むCARをコードする単離された核酸分子。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項22】
前記ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターから選ばれるものである請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項に記載の前記CAR、請求項19又は20に記載の核酸分子、又は請求項21又は22に記載のベクターを含む免疫エフェクター細胞。
【請求項24】
前記免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞から選ばれるものである請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
免疫エフェクター細胞に請求項21又は22に記載のベクターを導入することを含む免疫エフェクター細胞を、インビトロで調製する方法。
【請求項26】
請求項23又は24に記載の免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物。
【請求項27】
請求項1~18のいずれか一項に記載の前記CAR、請求項19又は20に記載の核酸分子、請求項21又は22に記載のベクター、又は請求項23又は24に記載の免疫エフェクター細胞をBCMAの発現に関連する疾患又は病症の治療用医薬品の調製のために使用する方法。
【請求項28】
前記BCMAの発現に関連する疾患又は病症は癌又は悪性腫瘍である請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬分野に関し、具体的には、BCMAタンパクに特異的に結合できるキメラ抗原受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、CD269又はTNFRSF17とも称し、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。研究によれば、BCMAはB細胞活性化因子受容体(BAFF)とB細胞増殖誘導リガンド(APRIL)に結合し、B細胞の様々な発達段階での生存を促進することができる。異常なシグナル伝達は、B細胞の異常増殖を促進し、自己免疫疾患および腫
瘍形成を引き起こす可能性がある(Rickertら、Immunological Reviews,2011,第244卷
:115-133参照)。
キメラ抗原受容体(CAR)は、ヒト白血球抗原-非依存性で細胞表面抗原を認識するように設計された抗原受容体である。CARを発現する遺伝子によって修飾されたT細胞(CAR-T
)を用いてこれらのタイプの患者を治療する試みは、ある程度の成功を収めた(Molecular Therapy,2010,18:4,666-668;Blood,2008,112:2261-2271)。
B細胞悪性腫瘍、特に多発性骨髄腫において治療の標的としてのBCMAの有効性を鑑みて
、BCMAに作用することにより治療の目的を達成するための新しい細胞療法を開発することが当分野で期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、BCMAに特異的に結合できるキメラ抗原受容体及びその応用を提供する。本願が提供するBCMAキメラ抗原受容体は下記の性質の一種又は数種を有する。1)BCMAタンパク
に対して高い親和力を有する。2)前記CARを利用して作成されたCAR-T細胞は前記CARを安定して発現できる。3)前記CARを利用して作成されたCAR-T細胞は高いCAR陽性率を示す。4)前記CARはサイトカインの放出を促進できる。5)BCMAの発現に関連する疾患又は病症
の治療に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願は、BCMAに特異的に結合する抗体又はその断片を含むBCMA結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む。前記抗体は、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)と、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)と、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)とを含み、前記HCDR1のアミノ酸配列はSEQ ID
NO:9に示され、前記HCDR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、且つ前記HCDR3の
アミノ酸配列はSEQ ID NO:11に示される。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)と、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)と、軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)とを含み、前記LCDR1のアミ
ノ酸配列はSEQ ID NO:17に示され、前記LCDR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:18に示され
、前記LCDR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:19に示される。いくつかの実施形態において、前記抗体は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、前記抗体は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:15に示される軽鎖可変領域を
含む。いくつかの実施形態において、前記抗体は単鎖抗体である。いくつかの実施形態において、前記抗体は、SEQ ID NO:43に示されるアミノ酸配列を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα、β又はζ鎖、CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8a、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80
、CD86、CD134、CD137、及びCD154からなる群より選ばれるタンパクに由来する膜貫通ド
メインを含む。いくつかの実施形態において、前記膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、前記CARの共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40、及
びICOSからなる群より選ばれるタンパクに由来する共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態において、前記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:29又はSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記CAR的細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記CARはさらに前記BCMA結合ドメインと前記膜貫通ド
メインを接続するヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、前記ヒンジ領域は、SEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記CARはシグナルペプチドも接続する。いくつかの実
施形態において、前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含む
【0010】
いくつかの実施形態において、前記CARは切断ペプチドも接続する。いくつかの実施形
態において、前記切断ペプチドは、T2Aペプチド由来のアミノ酸配列を含む。いくつかの
実施形態において、前記切断ペプチドは、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記CARはSEQ ID NO:49又はSEQ ID NO:51に示されるア
ミノ酸配列を含む。
【0012】
もう一方、本願は、前記CARをコードする単離された核酸分子をさらに含む。
【0013】
もう一方、本願は、SEQ ID NO:50又はSEQ ID NO:52に示される核酸配列を含む、CARを
コードする単離された核酸分子をさらに含む。
【0014】
もう一方、本願は、前記核酸分子を含むベクターをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターから選ばれるものである。
【0015】
もう一方、本願は、前記CAR、前記核酸分子、又は前記ベクターを含む免疫エフェクタ
ー細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、Tリ
ンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞から選ばれるものである。
【0016】
もう一方、本願は、免疫エフェクター細胞に前記ベクターを導入することを含む免疫エフェクター細胞の調製方法をさらに含む。
【0017】
もう一方、本願は、前記免疫エフェクター細胞を含む組成物をさらに含む。
【0018】
もう一方、本願は、前記CAR、前記核酸分子、前記ベクター、又は前記免疫エフェクタ
ー細胞の、BCMAの発現に関連する疾患又は病症を治療する薬物を調製するための用途をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記BCMAの発現に関連する疾患又は病症は癌又は悪性腫瘍である。
【0019】
当業者は、以下の詳細な説明から本願の他の態様および利点を容易に洞察することができる。以下の詳細な説明では、本願の例示的な実施形態のみを示し、説明する。当業者によって認識されるように、本願の内容により、当業者は、本願にかかる発明の主旨および範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態を変更することができる。同様に、本願の図面及び明細書における説明は例示的なものに過ぎず、制限的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは、本願にかかるCARの構造を示す。図1Bは、GFPシグナルによる本願にかかるCARの発現状況の評価を示す。
図2図2Aは、本願にかかるCARプラスミドによるT細胞の一過性トランスフェクションのプロセス概略図を示す。図2Bは、本願にかかるCARプラスミドによるT細胞の一過性トランスフェクション後のCAR分子の発現状況を示す。
図3図3は、本願にかかるCARプラスミドによるT細胞の一過性トランスフェクション後のCAR分子の発現状況を示す。
図4図4は、レンチウイルスパッケージング後の本願にかかるCARプラスミドのバイオタイターの検出結果を示す。
図5図5は、本願にかかるCAR-T細胞の成長状況を示す。
図6図6は、本願にかかるCAR-T細胞のCAR分子のBCMAタンパクとの結合能力の検出状況を示す。
図7図7は、本願にかかるCAR-T細胞のCD107a脱顆粒実験のフローサイトメトリー結果を示す。
図8図8は、本願にかかるCAR-T細胞を異なる標的細胞とインキュベートした後のCD107a脱顆粒実験結果を示す。
図9図9は、BCMAタンパク競合条件下で本願にかかるCAR-T細胞を異なる標的細胞とインキュベートした後のCD107a脱顆粒実験結果を示す。
図10図10は、本願にかかるCAR-T細胞を標的細胞と共にインキュベートした後のサイトカイン放出の検出結果を示す。
図11図11は、本願にかかる異なるドナーのCAR-T細胞機能測定結果を示す。
図12図12は、本願にかかるCAR-T細胞の標的細胞に対する体外殺傷効果テストを示す。
図13図13は、本願にかかるCAR-T細胞の腫瘍殺傷効果の担癌マウスモデルの実験結果を示す。
図14図14は、本願にかかるCAR-T細胞投与後の担癌マウスモデルにおけるサイトカインの変化を示す。
図15図15は、本願にかかるCAR-T細胞投与後の担癌マウスモデルにおけるサイトカインの変化を示す。
図16図16は、本願にかかるCAR-T細胞投与後の担癌マウスの末梢血におけるCARコピー数の変化を示す。
図17図17は、本願にかかるCAR-T細胞投与後の被験者の体内治療効果の評価を示す。
図18図18は、本願にかかる被験者の体内末梢血におけるCARコピー数の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的な実施例により本願発明の実施形態を説明し、当業者は本願明細書に開示された内容から、本願発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本願にかかるCARはBCMAに特異的に結合でき、前記CARを使用して作成したCAR-T細胞は前記CARを安定して発現でき、前記CARを使用して作成したCAR-T細胞は高いCAR陽性率を有する。さら
に、前記CARはサイトカインの放出を促進でき、BCMAの発現に関連する疾患又は病症の治
療に用いられる。
【0022】
特に明記しない限り、本願の実施は、従来の化学、生物化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の方法を採用する。これら
の方法の説明は、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版,2001);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,1989);Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology(John WileyとSons,2008年7月更新);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.AssociatesとWiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford,1985);Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);HarlowとLane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach、及びW.Strober,eds.,1991);Annual
Review of Immunology;及び定期刊行物や、例えばAdvances in Immunologyのような専
門書を参照できる。
【0023】
特に定義しなければ、本願において用いられるすべての技術や科学用語は、当業者が一般に理解されるものと同じ意味を有する。本願の目的のために、以下の用語を定義する。
【0024】
本願において、用語「キメラ抗原受容体」(Chimeric Antigen Receptor,CAR)とは、一般的に、抗原に結合できる細胞外ドメインと少なくとも一つの細胞内ドメインとを含む融合タンパク質を指す。CARは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)のコアとなる部分であ
り、抗原(例えば、腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen,TAA))結合領域、膜貫
通ドメイン、共刺激ドメイン、及び細胞内シグナルドメインを含むことができる。本願において、前記CARは、抗体の抗原(例えばBCMA)の特異性に基づいて、T細胞受容体の活性化細胞内ドメインと組み合わせることができる。遺伝子操作により発現されたCAR T細胞
は、標的抗原を発現する悪性細胞を特異的に認識して排除することができる。CARとCAR T細胞の説明について、例えば、Sadelain M, Brentjens R, Rivi `ere I. The basic principles of chimeric antigen receptor design. Cancer Discov. 2013;3(4):388-398;Turtle CJ, Hudecek M, Jensen MC, Riddell SR. Engineered T cells for anti-cancer therapy. CurrOpin Immunol. 2012;24(5):633-639;Dotti G, Gottschalk S, Savoldo B, Brenner MK. Design and development of therapies using chimeric antigen receptor-expressing T cells. Immunol Rev. 2014;257(1):107-126;及びWO2013154760、WO2016014789を参照できる。
【0025】
本願において、用語「BCMA」と「B細胞成熟抗原」とは互換して使用でき、一般的にTNFRSF17遺伝子によってコードされるタンパクを指す。BCMAタンパクは腫瘍壊死因子受容体
スーパーファミリーのメンバーである。本願において、前記BCMAはヒトBCMAであってもよく、そのGenBank登録番号はBAB60895.1である。BCMAはタイプIIIの膜貫通型タンパク質であり、細胞外ドメイン(ECD)においてTNFRファミリーメンバーの特徴的なシステインリ
ッチドメイン(CRD)を持ち、該ドメインはリガンド結合モチーフ(ligand binding motif)を形成する。BCMAは、B細胞バイオマーカーとして、腫瘍細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞)で発現するか、または腫瘍細胞(例えば、多発性骨髄腫悪性形質細胞)の表面に存在する。BCMAタンパクは、細胞外ドメイン及びその断片のようなBCMAの断片、例えば、結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメイン及び本願における任意の抗体に結合できる断片を含んでもよい。
【0026】
本願において、用語「BCMA結合ドメイン」とは、一般的に、BCMAタンパクに特異的に結合できるドメインを指す。例えば、前記BCMA結合ドメインは、B細胞で発現されるヒトBCMAポリペプチドに特異的に結合できるキメラ抗原受容体又はその断片、抗BCMA抗体又はそ
の抗原結合断片を含むことができる。本願で用いられる用語「結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異性結合ドメイン」、及び「細胞外抗原特異性結合ドメイン」は互換して使用でき、ターゲットとなる標的抗原(例えばBCMA)に特異的に結合する能力を有するCARのドメイン又は断片を提供する。BCMA結合ドメインは
、天然由来、合成由来、半合成由来、又は組換え由来のものでありうる。
【0027】
本願において、用語「抗体」とは、一般的に、特定の抗原に特異的に認識および/又は
中和できるポリペプチド分子をいう。例えば、抗体は、ジスルフィド結合により互いに接続する少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリンを含むことができ、その抗原結合部分を含む任意の分子を含むことができる。用語「抗体」は、モノクローナル抗体、抗体の断片、又は抗体誘導体を含み、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一ドメイン抗体(例えば、dAb)、単鎖抗体(例えば、scFv)、及び抗原に結合
する抗体の断片(例えば、Fab、Fab’および(Fab)2断片)を含むが、これらに限定されない。用語「抗体」は、さらに抗体のすべての組換え形態、例えば、原核細胞で発現される抗体、非グリコシル化抗体、及び前記の任意の抗原に結合する抗体の断片及びその誘導体も含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域から構成されてもよい。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域から構成されてもよい。VHとVL領域は、さらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に区分され、それらはフレームワーク領域(FR)と
呼ばれるより保守的な領域に散在している。各VHとVLは、3つのCDRと4つのFR領域によ
って構成され、それらはアミノ基側からカルボキシル基側まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置できる。重鎖と軽鎖の可変領域は、抗原と相互に作用する結合ドメインを有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結
合を媒介できる。
【0028】
本願において、用語「抗原結合分子」とは、一般的に、標的抗原に結合できる抗原結合領域又は抗原結合部を有する分子を指す。例えば、抗原結合分子はタンパク質又はポリペプチドとすることができる。本願において、標的抗原がB細胞成熟抗原(BCMA)である場
合、BCMAに結合する抗原結合分子はBCMA結合分子とも称する。抗原結合分子は、例えば、抗体及びその抗原結合断片、単鎖scFv抗体、scFvに基づいて構築された様々な融合体と複合体、例えばscFv-Fc抗体、免疫複合体、抗体薬物複合体(ADC)、多重/二重特異性抗体
、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。当業者には明らかであるように、抗体の抗原結合部
は一般的に「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基を含む。場合によっては
、文脈に応じて、「BCMA結合分子」と「本願抗体」又は「抗BCMA抗体」は互換して使用できる。
【0029】
本願において、用語「単鎖抗体」とは、前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域が連結ペプチドによって連結された抗体であってもよい。
【0030】
本願において、用語「膜貫通ドメイン」(Transmembrane Domain)とは、一般的に、CARの中で細胞膜を貫通するドメインを指し、細胞内シグナル伝達ドメインと連結し、シグ
ナルを伝達する役割を果たす。
【0031】
本願において、用語「共刺激ドメイン」とは、一般的に、抗原に対するリンパ球の効果的な応答に必要な細胞表面分子である免疫共刺激分子を提供できる細胞内ドメインを指す。前記共刺激ドメインはCD28の共刺激ドメインを含むことができ、TNF受容体ファミリー
の共刺激ドメイン、例えばOX40と4-1BBの共刺激ドメインを含むことができる。
【0032】
本願において、用語「ヒンジ領域」とは、一般的に、抗原結合領域と免疫細胞Fc受容体(FcR)結合領域との間の連結領域を指す。
【0033】
本願において、用語「HA-タグ」とは、一般的に、ヒトインフルエンザ血球凝集素(Human influenza hemagglutinin)抗原に基づくタンパク質タグを指し、その化学的本質はヒトインフルエンザ血球凝集素98-106号アミノ酸に由来する短いアミノ酸配列である。分子生物学的手段により、HA-タグ配列を目標タンパクの一端に接合させると、抗HA-タグの特異性抗体を用いて該組換えタンパクを結合でき、免疫組織化学(IHC)、Western Blotting等の実験の実施に有利である(Schembri, Lauraら The HA tag is cleaved and loses immunoreactivity during apoptosis. Nature Methods. February 2007,4 (2): 107-108
参照)。
【0034】
本願において、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、一般的に、細胞内部にあるシグナルを伝達できるドメインを指す。本願において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、シグナルを細胞内まで伝達できる。例えば、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、前記キメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達ドメインである。例えば、いくつかの実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメ
イン、CD28細胞内ドメイン、4-1BB細胞内ドメイン、及びOX40細胞内ドメインから選んだ
ものであっても良い。
本願において、用語「シグナルペプチド」(Signal peptide)とは、一般的に、タンパク質の移行を指示するペプチド鎖を指す。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは短いペプチド鎖であってもよく、その長さは5~30個のアミノ酸であってもよい。
【0035】
本願において、用語「切断ペプチド」とは、タンパクを切断する機能を実現できるポリペプチドを指す。例えば、前記切断ペプチドは、プロテアーゼによる加水分解ではなく、リボソームジャンプによりタンパク質切断を達成できる。例えば、前記切断ペプチドは、切断2Aペプチドであってもよく、T2A、F2A、P2A等を含んでもよい。
【0036】
本願において、用語「標識検出シグナル」とは、一般的に、既知の機能又は配列の特異的標識として機能し、検出可能なシグナルを発する遺伝子、タンパク質、又は他の分子を指す。前記標識検出シグナルは、例えば、GFP、RFP、YFP等の蛍光タンパク質であっても
よい。前記標識検出シグナルはEGFRtであってもよい。
【0037】
本願において、用語「EGFRt」とは、一般的に、切断されたヒト上皮成長因子受容体ポ
リペプチドをコードする遺伝子を指す。 EGFRtは、遠位の膜EGF結合ドメインと細胞質シ
グナル伝達テールを欠いているが、抗EGFR抗体によって認識される細胞外エピトープを保持している。EGFRtは、細胞を遺伝、修飾する機能を有する非免疫原性選択ツール及び追
跡標識として使用できる。本願において、前記EGFRtはCAR-T細胞のマーカーとして使用できる。前記EGFRtは、必要に応じて、体内のCAR-T細胞セツキシマブ媒介ADCC経路(cetuximab mediated ADCC pathway)をクリアできる(US8802374B2を参照)。
【0038】
本願において、用語「Kozak配列」とは、一般的に、真核生物のmRNAに共通する(gcc)gccRccAUGG配列を指す。翻訳プロセスの開始に重要な役割を果たし、リボソームによって翻訳開始サイトとして認識される(De Angioletti Mら a novel silent beta-thalassaemia
mutation, the first in the Kozak sequence. Br J Haematol. 2004, 124 (2): 224-31.を参照)。
【0039】
本願において、用語「単離された」とは、一般的に、抗体をその自然環境における成分から単離されたものを指す。いくつかの実施形態において、抗体を95%又は99%を超える純
度まで精製し、前記純度は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)、又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により特定される。抗体純度を評価する方法に関する総説はFlatman,S.ら、J.Chrom.B 848(2007)79-87を参照できる。
【0040】
本願において、用語「核酸分子」とは、一般的に、任意の長さの単離された形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチド、或いはそれらに類する物を指す。いくつかの実施形態において、本願にかかる核酸分子は自然環境から単離されたものであってもよい。いくつかの実施形態において、本願の核酸分子は以下の方法により生成又は合成されてもよい。(i)体外で増幅された。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により生成された。(ii)クローン組換えにより生成された。(iii)精製され
た。例えば、酵素切断やゲル電気泳動により分級分離された。又は(iv)合成された。例えば、化学合成された。いくつかの実施形態において、前記単離された核酸は、DNA組換
え技術により調製された核酸分子である。本願において、当該分野における従来の複数の方法で前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を調製することができる。これらの方法は、制限性断片の操作かまたは合成型オリゴヌクレオチドを用いるオーバーラップ伸長法によるPCRを含むが、これらに限定されない。具体的な操作はSambrookら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, N.Y.,1989;及びAusubeらCurrent Protocols in Molecular Biology,Greene
Publishing and Wiley-Interscience,New York N.Y., 1993を参照できる。
【0041】
本願において、前記「ベクター」とは、一般的に、適切な宿主で自己複製できる核酸分子を指し、挿入された核酸分子を宿主細胞中および/又は宿主細胞の間に移すのに用いら
れる。前記ベクターは、主にDNA又はRNAを細胞に挿入するためのベクターを含み、主にDNA又はRNAを複製するためのベクター、及び主にDNA又はRNAの転写および/又は翻訳の発現
に用いられるベクターを含むことができる。前記ベクターは、複数の前記機能を有するベクターも含む。前記ベクターは、適切な宿主細胞に導入されるときに転写されてポリペプチドに翻訳できるポリヌクレオチドであってもよい。通常、前記ベクターを含む適切な宿主細胞を培養することで、前記ベクターは所望の発現産物を産生できる。本願において、前記ベクターは一種又は複数の前記核酸分子を含んでもよい。さらに、前記ベクターは、他の遺伝子、例えば、適切な宿主細胞において適切な条件の下で該ベクターを選択することを可能にする標識遺伝子を含んでもよい。さらに、前記ベクターは、コード領域を適切な宿主において正確に発現することを可能にする発現制御要素を含んでもよい。このような制御要素は当業者に熟知され、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写又はmRNA翻訳を調節する他の制御要素などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、発現制御配列は調整可能な要素である。前記発現制御配列の具体的な構造は物の種類又は細胞型の機能によって変わるが、一般的に、転写と翻訳開始にそれぞれ関与する5’非転写配列及び5’と3’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャップ
配列、CAAT配列などを含む。例えば、5’非転写発現制御配列はプロモーター領域を含ん
でもよく、プロモーター領域は機能的に連結された核酸を転写制御するためのプロモーター配列を含んでもよい。本願にかかるベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターから選んでもよい。本願にかかるプラスミド、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターはCARを含んでもよい。
【0042】
本願において、用語「プラスミド」は、一般的に、細菌、酵母菌などの生物における染色体又は核様体以外のDNA分子を指す。プラスミドは細胞質に存在でき、自己複製能力を
有することで、子孫細胞で一定のコピー数を維持し、持っている遺伝情報を発現することができる。プラスミドは遺伝子工学研究で遺伝子のベクターとして使用される。
【0043】
本願において、用語「レトロウイルスベクター」とは、一般的に、外因性遺伝子をクロ
ーンして発現できるが、増殖能力を有するように自己パッケージングできないウイルス粒子を指す。このようなウイルスは逆転写酵素を有することが多い。逆転写ウイルスは、ウイルスの中心と構造を形成するタンパク質を含む遺伝子gag、逆転写酵素を含む遺伝子pol、及びウイルス外被を形成する遺伝子envの三種類の遺伝子を少なくとも有する。レトロ
ウイルスのトランスフェクションにより、レトロウイルスベクターは自身のゲノム及びその外因性遺伝子をランダムかつ安定に宿主細胞ゲノムに、例えば、CAR分子を宿主細胞に
組み込むことができる。
【0044】
本願において、用語「レンチウイルスベクター」とは、一般的に、レトロウイルスに属する2倍体RNAウイルスベクターを指す。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスの
ゲノムをベースにして、生物学的に安全性を持たせるためにウイルス活性と関連する複数の配列構造を除去し、そしてこのゲノム骨格に実験に必要な標的遺伝子の配列と発現構造を導入して調製されたベクターである。レンチウイルスベクターのトランスフェクションにより、レトロウイルスベクターは自身のゲノム及びその持っている外源遺伝子をランダムかつ安定的に宿主細胞ゲノムに、例えば、CAR分子を宿主細胞に組み込むことができる
【0045】
本願において、用語「トランスポゾン」とは、一般的に、トランスポザーゼ遺伝子を含む離散のDNA断片を指す。フランキングは、トランスポザーゼ結合部位を含む末端逆方向
反復配列(terminal inverted repeat,TIR)である。トランスポザーゼはTIRに結合してトランスポゾンを新しい部位に転移することができる。本願にかかるトランスポゾンは、CAR(トランスポゾン)を組み込んだプラスミドと別のトランスポザーゼを組み込んだプ
ラスミドからなる2成分系である。前記トランスポゾンは、電気形質導入などの方法で標
的細胞に導入することができる。例えば、まず、二種類の成分が末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell,PBMC)にエレクトロポレーションされ、発現されたトラ
ンスポザーゼはCARの両側の末端逆方向反復配列(TIR)に作用し、CAR(トランスポゾン
)を切断してから標的細胞(例えば、T細胞)のゲノムのTAジヌクレオチド配列に組み込
まれる。トランスポゾンが安定なゲノムの組み込みの完了後、CARタンパクは標的細胞の
表面で発現することができる(Cheng Zhang, Jun Liu, Jiang F Zhong, et al. Engineering CAR-T cells. Biomarker Research. 2017,5:22 を参照できる)。
【0046】
本願において、用語「ゲノム編集」とは、一般的に、ゲノムの部位特異的修飾技術を指す。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nucleases,ZFNs)、転写活性化因子
様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator like effector nucleases,TALENs)、クラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し(clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR-associated(Cas9),CRISPR/Cas9)などに基づく技術を含んでもよい。ゲノムを効果的にターゲッティング修飾で
き、ゲノムの特定位置への追加、遺伝物質の除去、又は改変することにより修飾を行う。本願にかかるゲノム編集は、ゲノム編集の技術(例えばCRISPR-Cas9)により、CAR分子を受容体細胞のゲノムに導入することを含んでもよい。
【0047】
本願において、用語「免疫エフェクター細胞」とは、一般的に、免疫応答において異物抗原の除去とエフェクター機能の行使に関与する免疫細胞を指す。例えば、いくつかの実施形態において、前記免疫エフェクター細胞は、形質細胞、細胞傷害性T細胞、NK細胞、APSC多能性細胞、マスト細胞などであってもよい。
【0048】
本願において、用語「薬学的に許容されるアジュバント」とは、一般的に、薬学的に許容される製剤担体、溶液、又は製剤の特性を強化するための添加剤を指す。このような添加剤は当業者にて熟知のものである。
【0049】
本願において、用語「癌」とは、一般的に、細胞増殖を制御するメカニズムの異常によって引き起こされる疾患を指す。本願において、癌と呼ばれる過剰増殖性疾患は、固形腫瘍、例えば、乳腺、気道、脳、生殖器官、消化管、尿道、目、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺に発生する癌、及びそれらの遠位転移を含むが、これらに限定されない。このような疾患はさらにリンパ腫、肉腫、及び白血病を含む。乳癌の実例は、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌、および非浸潤性小葉癌を含むが、これらに限定されない。呼吸器癌の実例は、小細胞肺癌と非小細胞肺癌、及び気管支腺腫と胸膜肺芽腫を含むが、これらに限定されない。脳癌の実例は、脳幹と視床下部ケラチノーマ、小脳と大脳星細胞腫瘍、骨髄芽腫、上衣腫瘍、及び神経外胚葉と松果体腫瘍を含むが、これらに限定されない。男性生殖器腫瘍は、前立腺癌と精巣癌を含むが、これらに限定されない。女性生殖器腫瘍は、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣と外陰癌、及び子宮腫瘍を含むが、これらに限定されない。消化管腫瘍は、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸、及び唾液腺癌を含むが、これらに限定されない。尿道腫瘍は、膀胱、陰茎、腎臓、腎、尿管、尿道癌を含むが、これらに限定されない。眼腫瘍は、眼内黒色腫及び網膜芽細胞腫を含むが、これらに限定されない。肝癌の実例は、肝細胞癌(線維性層状変化を伴うまたは伴わない肝細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、及び混合肝細胞胆管細胞癌を含むが、これらに限定されない。皮膚癌は、扁平上皮がん、カポジ(Kaposi’s)肉腫、悪性
黒色腫、Merkel細胞皮膚癌、及び非黒色腫型皮膚癌を含むが、これらに限定されない。頭頸部癌は、喉頭/下咽頭/上咽頭/中咽頭癌、及び唇と口腔癌を含むが、これらに限定され
ない。リンパ腫は、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジ
キン病、及び中枢神経系リンパ腫癌を含むが、これらに限定されない。肉腫は、軟部組織肉腫、骨肉腫、悪性線維組織細胞腫、リンパ肉腫、及び横紋筋肉腫を含むが、これらに限定されない。白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び有毛細胞白血病を含むが、これらに限定されない。
【0050】
用語「および/又は」は、選択肢のいずれか一方又は選択肢の両方を意味するものと理
解されるべきである。
【0051】
本願で用いられるように、用語「含む」又は「含有する」は、列挙された要素、整数、又はステップを含むことを意味するが、任意の他の要素、整数、又はステップを排除するものではない。本願において、用語「含む」又は「含有する」が使用される場合、特に明記しない限り、言及された要素、整数、又はステップから構成される場合を含む。例えば、ある具体的な配列を「含む」抗体可変領域に言及する場合は、該具体的な配列から構成される抗体可変領域も含むことを意味する。
【0052】
本願において、用語「約」は、一般的に、所定の数値の0.5%-10%以上又は以下の範囲内で変動し、例えば、所定の数値の0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%以上又は以下の範囲内で変動
する。
【0053】
キメラ抗原受容体
本願において、前記CARは、BCMAに特異的に結合する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン
、胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。本願において、前記CARの細胞外ドメインは、本願にかかる単鎖抗体(scFv)を含んでも
よい。例えば、前記単鎖抗体は、CD8ヒンジのようなヒンジ領域を介して膜貫通ドメイン
と連結してもよい。本願において、前記CARは、免疫エフェクター細胞(例えばT細胞)を形質導入して細胞表面で発現するのに用いられてもよい。したがって、本願は、前記キメラ抗原受容体を発現するT細胞、及びB細胞関連疾患を治療する医薬品を調製するための該T細胞及び/又は前記CARの使用を提供することもできる。
【0054】
本願において、前記キメラ抗原受容体(CAR)は、BCMA結合ドメイン、膜貫通ドメイン
、共刺激ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
【0055】
本願において、前記BCMA結合ドメインは、BCMAに特異的に結合する抗体断片を含んでもよく、前記抗体は、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含んでもよく、前記HCDR1-3はそれぞれ順にSEQ ID NO:9-11に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。前記抗体は、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、前記LCDR1-3はそれぞれ順にSEQ ID NO:17-19に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本願に
おいて、前記抗体は、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含んでもよい重鎖可変領域
を含んでもよい。本願において、前記抗体は、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含んでもよい軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0056】
本願において、前記抗体は単鎖抗体であってもよい。いくつかの実施形態において、前記抗体はSEQ ID NO:43に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、前記単鎖抗体は、配列がSEQ ID NO:43に示されるscFv0026を含んでもよい。
【0057】
例えば、本願にかかる単鎖抗体は、配列がSEQ ID NO:43に示されるscFv0026であってもよい。単鎖抗体scFv0026のLCDR1-3のアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19に示され、VLのアミノ酸配列はSEQ ID NO:15に示され、HCDR1-3のアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11に示され、VHのアミノ酸配
列はSEQ ID NO:7に示される。
【0058】
本願にかかるCARは膜貫通ドメインを含んでもよく、前記膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα、β又はζ鎖、CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8a、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154からなる群より選ばれるタンパクに由来する膜貫通ドメインを含んでもよい。本願において、前記膜貫通ドメインはSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本願の膜貫通ドメインは、配列がSEQ
ID NO: 27に示されるCD8aの膜貫通ドメインを含んでもよい。
【0059】
本願において、前記共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX40、及びICOSからなる群より
選ばれるタンパクに由来する共刺激ドメインを含んでもよい。本願において、前記共刺激ドメインはSEQ ID NO:29又はSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0060】
本願にかかるCARは細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよく、前記細胞内シグナル
伝達ドメインはCD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含んでもよい。本願において、前記
細胞内シグナル伝達ドメインはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0061】
本願にかかるCARは、前記抗体と前記膜貫通ドメインを接続できるヒンジ領域を含んで
もよい。本願において、前記ヒンジ領域はSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0062】
本願にかかるCARはさらに前記CARのN末端に位置してもよいHA-タグを含んでもよい。本願において、前記HA-タグはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、抗HA抗体を利用して特異的に結合することにより、本願にかかるCARの発現を検
出し、リッチCAR-T細胞に用いて、機能性研究を行う。
【0063】
本願にかかるCARは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含んでもよいシグナルペプチドと接続してもよい。例えば、前記シグナルペプチドは配列がSEQ ID NO:3に示されるCD8aシグナルペプチドであってもよい。例えば、CAR0037、CAR0085、CAR0087は、前記CD8a
シグナルペプチドと接続してもよい。
【0064】
本願において、前記CARはさらに切断ペプチドと接続してもよい。本願において、前記
切断ペプチドはT2Aペプチド由来のアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、前記切
断ペプチドはSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、前記切断ペプチドは、配列がSEQ ID NO:35に示されるT2Aであってもよい。例えば、CAR0037、CAR0087は前記切断ペプチドT2Aと接続してもよい。
【0065】
本願において、前記CARはさらに、前記CARのC末端に位置してもよい標識検出シグナル
と接続してもよい。本願において、前記標識検出シグナルは、GFP、RFP、及びYFPからな
る群より選んでもよい蛍光タンパクであってもよい。本願において、GFPのシグナルを検
出することでCAR分子の発現状況を間接的に評価してもよい。例えば、前記CARは標識検出シグナル配列がSEQ ID NO:37に示されるCAR0037を含んでもよい。本願において、前記標
識検出シグナルはEGFRtであってもよい。例えば、CAR0087は、配列がSEQ ID NO:39に示される標識検出シグナルと接続してもよい。
【0066】
本願において、前記CARは、配列がSEQ ID NO:1に示されるKozak配列と接続してもよい
。本願において、前記CARは、配列が前記CARのN末端に位置してもよいKozak配列と接続してもよい。例えば、CAR0037、CAR0085又はCAR0087は配列がSEQ ID NO:1に示されるKozak
配列と接続してもよい。
【0067】
本願において、前記CARは、SEQ ID NO: 49又はSEQ ID NO: 51に示されるアミノ酸配列
を含んでもよい。例えば、前記CARは配列がSEQ ID NO:49に示されるCAR0037から選んでもよい。別の例として、前記CARは、配列がSEQ ID NO:51に示されるCAR0085から選んでもよく、前記CARは、配列がSEQ ID NO: 51に示されるCAR0087から選んでもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、本願にかかるCARはN末端から順にBCMA結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。前記CARは配列がSEQ ID NO: 43に示されるBCMA結合ドメインを含んでもよい。前記BCMA結合ドメインは、配列がそれぞれ順にSEQ ID NO:9-11に示されるHCDR1-3を含んでもよい。且つ
、BCMA結合ドメインは、配列がそれぞれ順にSEQ ID NO:17-19に示されるLCDR1-3を含んでもよい。例えば、前記CARは、CAR0037又はそれと同じLCDR1-3とHCDR1-3を有する本願のCARを含んでもよい。前記BCMA結合ドメインは、配列がSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域を含んでもよい。且つ、前記BCMA結合ドメインはさらに配列がSEQ ID NO:15に示される軽鎖可変領域を含んでもよい。例えば、前記CARはCAR0037又はそれと同じ軽鎖可変領域と重鎖可変領域を有する本願のCARを含んでもよい。前記軽鎖可変領域と前記重鎖可変領域の
間に、配列がSEQ ID NO:23に示されるリンカーペプチドを含んでもよい。例えば、前記CARはCAR0037又はそれと同じリンカーペプチドを有する本願のCARを含んでもよい。前記膜
貫通ドメインは、配列がSEQ ID NO:27に示されうるCD8a由来の膜貫通ドメインを含んでもよい。例えば、前記CARは、CAR0037又はそれと同じ膜貫通ドメインを有する本願のCARを
含んでもよい。前記共刺激ドメインは、配列がSEQ ID NO:29に示されうるCD28由来の共刺激構造を含んでもよい。例えば、前記CARは、CAR0037又はそれと同じ共刺激ドメインを有する本願のCARを含んでもよい。前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列がSEQ ID NO:33に示されるCD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含んでもよい。例えば、前記CARは、CAR0037又はそれと同じ細胞内シグナル伝達ドメインを有する本願のCARを含んでもよい。
【0069】
前記CARはさらに配列がSEQ ID NO:25に示されるヒンジ領域を含んでもよく、前記ヒン
ジ領域は、前記BCMA結合ドメインのC末端且つ前記膜貫通ドメインのN末端に位置してもよい。例えば、前記CARは、CAR0037又はそれと同じヒンジ領域を有する本願のCARを含んで
もよい。
【0070】
前記CARはさらに、配列がSEQ ID NO:5に示される、前記BCMA結合ドメインのN端に位置
してもよいHA-タグと接続してもよい。例えば、前記CARは、CAR0037又はそれと同じHA-タグを有する本願のCARを含んでもよい。
【0071】
前記CARはさらに、配列がSEQ ID NO:3に示される、前記CARのN末端に位置してもよいシグナルペプチドと接続してもよい。
【0072】
前記CARはさらに、T2Aのような切断ペプチドと接続してもよい。前記切断ペプチドは、前記細胞内シグナル伝達領域のC末端に位置してもよく、その配列がSEQ ID NO:35に示さ
れうる。前記CARはさらに、前記CAR(又は前記切断ペプチド)のC末端に位置してもよい
標識検出シグナルと接続してもよい。前記標識検出シグナルは、配列がSEQ ID NO:37に示されるGFP、RFP、YFPからなる群より選んでもよい。
【0073】
例えば、本願のCARはCAR0037であってもよく、そのLCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19に示され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:15
に示され、HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10とSEQ ID NO:11に示され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:7に示され、VHとVLの間のリンカーペプチドの
配列がSEQ ID NO: 23に示され、そのヒンジ領域がSEQ ID NO: 25に示され、その膜貫通ドメインがSEQ ID NO: 27に示され、その共刺激ドメインがCD28共刺激ドメインであり、SEQ
ID NO:29に示され、そのCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインがSEQ ID NO:33に示され、前記CAR0043はさらにSEQ ID NO:35に示される切断ペプチド、及びSEQ ID NO: 37に示されるGFP標識検出シグナルを含んでもよい。前記CAR0037はさらにSEQ ID NO:1に示されるKOZAK配列、SEQ ID NO: 3に示されるCD8aシグナルペプチド、SEQ ID NO:5に示されるHA-タグを含んでもよい。
【0074】
例えば、本願のCARはCAR0085であってもよく、そのLCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19に示され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:15
に示され、HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11に示され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:7に示され、VHとVLの間のリンカーペプチドの
配列がSEQ ID NO: 23に示され、そのヒンジ領域がSEQ ID NO: 25に示され、その膜貫通ドメインがSEQ ID NO: 27に示され、その共刺激ドメインが4-1BB共刺激ドメインであり、SEQ ID NO:31に示され、そのCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインがSEQ ID NO:33に示され、
前記CAR0085はさらにSEQ ID NO:1に示されるKOZAK配列、SEQ ID NO: 3に示されるCD8aシ
グナルペプチドを含んでもよい。
【0075】
例えば、本願のCARはCAR0087であってもよく、そのLCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19に示され、VLのアミノ酸配列がSEQ ID NO:15
に示され、HCDR1-3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11に示され、VHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:7に示され、VHとVLの間のリンカーペプチドの
配列がSEQ ID NO: 23に示され、そのヒンジ領域がSEQ ID NO: 25に示され、その膜貫通ドメインがSEQ ID NO: 27に示され、その共刺激ドメインが4-1BB共刺激ドメインであり、SEQ ID NO:31に示され、そのCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインがSEQ ID NO:33に示され、
前記CAR0085はさらにSEQ ID NO:35に示される切断ペプチド、及びSEQ ID NO: 39に示されるEGFRt標識検出シグナルを含んでもよく、前記CAR0087はさらにSEQ ID NO:1に示されるKOZAK配列、SEQ ID NO: 3に示されるCD8aシグナルペプチドを含んでもよい。
【0076】
本願にかかるタンパク質、ポリペプチドおよび/又はアミノ酸配列は、少なくとも前記
タンパク質又はポリペプチドと同じ又は類似の機能を有する機能的変異体又は相同体を含むと理解されるべきである。
【0077】
本願において、前記機能的変異体は、前記タンパク質および/又は前記ポリペプチド(
例えば、BCMAに特異的に結合する抗体又はその断片)のアミノ酸配列に1つ又は複数のアミノ酸を置換、欠失又は付加したタンパク質又はポリペプチドであってもよい。例えば、前記機能的変異体は、少なくとも1つ、例えば1~30、1~20又は1~10、また例えば1、2、3、4又は5個のアミノ酸の置換、欠失および/又は挿入によりアミノ酸変異を有するタンパク質又はポリペプチドを含んでもよい。前記機能的変異体は、変化(例えば置換、欠失又は付加)する前の前記タンパク質又は前記ポリペプチドの生物学的特性を実質的に維持できる。例えば、前記機能的変異体は、変化する前の前記タンパク質又は前記ポリペプチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、又は100%の生物学的活性(例えば、抗原結合能力)を維持できる。例えば、前記置換は保守的な置換であってもよい。
【0078】
本願において、前記相同体は、前記タンパク質および/又は前記ポリペプチド(例えば
、BCMAに特異的に結合する抗体又はその断片)のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例え
ば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上)の配列相同性を有するタンパク質又はポリペプチドであっても
よい。
【0079】
本願において、前記相同体性は、一般的に、2つ以上の配列間の類似性又は関連性を指す。以下の方法により「配列相同性百分率」を計算することができる。2つの比較しようとする配列を比較ウィンドウで比較し、2つの配列に同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、Met)が存在する位置の数を決定
して一致する位置の数を取得し、一致する位置の数を比較ウィンドウ中の総位置数(即ち、ウィンドウの大きさ)で除算し、結果に100を掛け、配列相同性百分率が得られる。配
列相同体性百分率を決定するために行う比較は、当該分野における既知の方法により実現でき、例えば、一般に公開され入手可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使う。当業者は、配列を比較するための適切なパラメーターを決定でき、比較される全長配列の範囲内又は目標配列の領域内で最大の比較を実現するために必要な任意の計算方法も含む。前記相同体性は、FASTA
やBLASTの方法で測定することもできる。FASTA計算方法の説明は、W.R.Pearson、D.J
.Lipmanの「Improved tools for biological sequence comparison、生物学的配列の比
較のための改良されたツール」,米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)
,85:2444-2448,1988、及びD.J.Lipman、W.R.Pearsonの「高速敏感なタンパク質類似性検索」,Science,227:1435-1441,1989を参照できる。BLAST計算方法の説明は、S
.Altschul、W.Gish、W.Miller、E.W.Myers、D.Lipmanの「基本的な局所アライメント検索ツール」,分子生物学雑誌,215:403-410,1990を参照できる。
【0080】
核酸、ベクター、細胞、調製方法、及び組成物
また、本願は、本願のCARをコードできる単離された核酸分子を提供する。本願にかか
るCARをコードする単離された核酸分子は、SEQ ID NO:50又はSEQ ID NO:52に示される核
酸配列又はその機能的変異体を含んでもよい。本願の核酸分子は単離されたものであってもよい。例えば、以下の方法により生成又は合成されてもよい。(i)体外で増幅された
。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により生成された。(ii)クローン組換え
により生成された。(iii)精製された。例えば、酵素切断やゲル電気泳動により分級分
離された。又は(iv)合成された。例えば、化学合成された。いくつかの実施形態において、前記単離された核酸は、DNA組換え技術により調製された核酸分子である。
【0081】
また、本願は、前記核酸分子を含んでもよいベクターを提供する。本願において、前記ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターの一種又は
数種から選んでもよい。本願にかかるレンチウイルスベクターはCARを含んでもよい。例
えば、本願にかかるレンチウイルスベクターはSEQ ID NO:50および/又はSEQ ID NO:52に
示される核酸配列又はその機能的変異体を含んでもよい。さらに、前記ベクターは、他の遺伝子、例えば、適切な宿主細胞において適切な条件の下で該ベクターを選択することを可能にする標識遺伝子を含んでもよい。さらに、前記ベクターは、コード領域を適切な宿主において正確に発現することを可能にする発現制御要素を含んでもよい。このような制御要素は当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写又はmRNA翻訳を調節する他の制御要素などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、発現制御配列は調整可能な要素である。前記発現制御配列の具体的な構造は物の種類又は細胞型の機能によって変化できるが、一般的に、転写と翻訳開始にそれぞれ関与する5’非転写配列及び5’と3’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッ
プ配列、CAAT配列などを含む。例えば、5’非転写発現制御配列はプロモーター領域を含
んでもよく、プロモーター領域は機能的に連結された核酸を転写制御するためのプロモーター配列を含んでもよい。本願にかかるベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターから選んでもよい。本願にかかるプラスミド、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターはCARを含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記ウイルスに含まれるベクターはレンチウイルスベクターであってもよく、ベクターscFvプラスミドおよび/又はCARプラスミドを含んでもよい。例えば、前記ウイルスはレンチウイルスLV0002であってもよく、核酸scFv0008分子を含んでもよいベクターscFvプラスミドPXL0008、および/又は核酸CAR0009分子を含んでもよ
いCARプラスミドPXL0009を含んでもよい。例えば、前記ウイルスはレンチウイルスLV0011であってもよく、核酸scFv0008分子を含んでもよいベクターscFvプラスミドPXL0008、お
よび/又は核酸CAR0041分子を含んでもよいCARプラスミドPXL0041を含んでもよい。例えば、前記ウイルスはレンチウイルスLV0007であってもよく、核酸scFv0026を含んでもよいベクターscFvプラスミドPXL0026、および/又は核酸CAR0037を含んでもよいCARプラスミドPXL0037を含んでもよい。例えば、前記ウイルスはレンチウイルスLV0020であってもよく、
核酸scFv0026を含んでもよいベクターscFvプラスミドPXL0026、および/又は核酸CAR0085
を含んでもよいCARプラスミドPXL0085を含んでもよい。例えば、前記ウイルスはレンチウイルスLV0021であってもよく、核酸scFv0026を含んでもよいベクターscFvプラスミドPXL0026、および/又は核酸CAR0087を含んでもよいCARプラスミドPXL0087を含んでもよい。い
くつかの実施形態において、前記ウイルスに含まれるベクターはさらに、前記scFvプラスミドおよび/又はCARプラスミドを含んでもよいレトロウイルスベクターを含んでもよい。
【0083】
また、本願は、本願のCAR、前記核酸分子、又は前記ベクターを含んでもよい免疫エフ
ェクター細胞を提供する。本願において、前記免疫エフェクター細胞は哺乳類動物細胞であってもよい。本願において、免疫エフェクター細胞はTリンパ球及びナチュラルキラー
(NK)細胞から選んでもよい。
本願において、前記Tリンパ球は、胸腺細胞、天然Tリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含んでもよい。前記T細胞は、ヘル
パーT細胞(Th)、例えばヘルパーT細胞1(Th1)又はヘルパーT細胞2(Th2)細胞であっ
てもよい。前記Tリンパ球は、CD4+ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)、細胞傷害性T細胞
(CTL;CD8+ T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL;CD8+T細胞)、CD4+/CD8+T細胞、CD4-/CD8-T細胞、又は他のTリンパ球サブタイプであってもよい。いくつかの実施形態に
おいて、前記Tリンパ球は、初代T細胞(TN細胞)であってもよい。いくつかの実施形態において、前記Tリンパ球はセントラルメモリーT細胞(TCM)であってもよい。いくつかの
実施形態において、前記Tリンパ球はエフェクターT細胞(TEM細胞)であってもよい。い
くつかの実施形態において、前記Tリンパ球はNKT細胞であってもよい。本願において、前記Tリンパ球は末梢血細胞、臍帯血細胞および/又は白細胞に由来するものであってもよい。
【0084】
本願において、前記Tリンパ球はCD45RO+/CD62L+の特徴を持つTCM細胞であってもよい。前記Tリンパ球はCD45RO+/CD62L-の特徴を持つTEM細胞であってもよい。前記Tリンパ球はCD45RO-/CD62L+の特徴を持つTN細胞であってもよい。前記Tリンパ球は、NK1.1+及びNK1.1-、CD4+、CD4-、CD8+及びCD8-に分画されうるNKT細胞であってもよい。活性化後、NKT細胞は大量のインターフェロン-γ、IL-4(インターロイキン4)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)を生じうる。さらに、NKT細胞は、サイトカインとケモカイン(例えばIL-2、IL-13、IL-17、IL-21、腫瘍壊死因子-α)も生じうる。
【0085】
もう一方、本願は、免疫エフェクター細胞に本願のベクターを導入することを含む免疫エフェクター細胞の調製方法を提供する。例えば、本願のベクターを前記免疫エフェクター細胞、例えばTリンパ球又はナチュラルキラー(NK)細胞に導入することができる。い
くつかの実施形態において、各細胞又は各種の細胞は、一つの又は一種類の本願のベクターを含んでもよい。いくつかの実施形態において、各細胞又は各種の細胞は、複数(例えば、2つ以上)の又は複数種(例えば、二種類以上)の本願のベクターを含んでもよい。
本願において、免疫エフェクター細胞への前記ベクターの導入は、従来の方法により本願のベクターを前記細胞に導入することができる。例えば、レトロウイルスベクターを利用して免疫エフェクター細胞をトランスフェクトし、CAR分子を持つウイルスゲノムを宿主
ゲノムに組み込むことで、目標遺伝子の長期的かつ安定的な発現を確保できる。別の例として、トランスポゾンを利用し、CAR(トランスポゾン)を持つプラスミド及びトランス
ポザーゼを持つプラスミドにより標的細胞に導入する。別の例として、ゲノム編集の方法(例えばCRISPR/Cas9)によりCAR分子をゲノムに組み込むことができる。本願において、従来の方法、例えば、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション(lipofectamine2000,Invitrogen)などにより本願のCAR分子を持つベクターを前記細胞に導入することができる。
【0086】
また、本願は、前記免疫エフェクター細胞と薬学的に許容されるアジュバントを含んでもよい組成物を提供する。
【0087】
前記薬学的に許容されるアジュバントは、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、糖、キレート剤、対イオン、金属複合物、および/又は非イオン性界面活性剤などを含んでもよい。
【0088】
本願において、前記組成物は、経口投与、静脈内投与(例えば、静脈注射、I.V.)、筋肉内投与(例えば、筋肉注射、I.M.)、腫瘍部位でのin situ投与、吸入、直腸投与、膣
投与、経皮投与、又は皮下デポを介して投与するように調製されてもよい。
【0089】
本願の組成物は、治療有效量の前記抗体又はその抗原結合断片を含んでもよい。前記治療有效量は、発症のある又は発症のリスクのある被験者の病症(例えば、癌)および/又
はその合併症を予防および/又は治療(少なくとも部分的に治療)するのに必要な投与量
である。
【0090】
医薬品の用途
また、本願は、前記CAR、前記核酸分子、前記ベクター、又は前記免疫エフェクター細
胞の、BCMAの発現に関連する疾患又は病症を治療する医薬品を調製するための用途を提供する。
【0091】
本願において、前記BCMAの発現に関連する疾患又は病症は、癌又は悪性腫瘍であってもよい。いくつかの実施形態において、前記癌又は悪性腫瘍は、多発性骨髄腫のような形質
細胞悪性腫瘍から選択されてもよく、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫のようなB細胞悪性腫瘍から選択されてもよい。
【0092】
また、本願は、BCMAの発現に関連する疾患又は病症を治療する前記CAR、前記核酸分子
、前記ベクター、又は前記免疫エフェクター細胞を提供する。
【0093】
また、本願は、患者に前記CAR、前記核酸分子,前記ベクター、又は前記免疫エフェク
ター細胞を投与することを含む、BCMAの発現に関連する疾患又は病症を治療する方法を提供する。
【0094】
いかなる理論に縛られることを意図するものではないが、以下の実施例は、単に本願のキメラ抗原受容体、ベクター、細胞、組成物の作用方法を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0095】
実施例
実施例1 組換えレンチウイルスベクターの構築
まず、以下のヌクレオチド配列を人工的に合成した。KOZAK(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:2)、CD8aシグナルペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:4)、HA-タグ(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:6)、scFv0026(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:44)、ヒンジ領域
(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:26)、膜貫通領域(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:28)、CD28共刺激因子(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:30)、4-1BB共刺激ドメイン(ヌクレ
オチド配列がSEQ ID NO:32)、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:34)、T2A切断ペプチド(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:36)、GFP(ヌクレオ
チド配列がSEQ ID NO:38)、EGFRt(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:40)。
【0096】
同時に、scFv0008分子を対照として構築し、scFv0008分子のアミノ酸配列がSEQ ID NO:
41に示される(US9034324, SEQ ID NO: 3とSEQ ID NO: 4参照)。
【0097】
ただし、HA-タグがCAR分子のN末端に位置し、CD8aシグナルペプチドと直接つながって
いる。CAR分子が細胞表面で発現する場合、HA-tagはタグとして、CAR分子又はリッチCAR-T細胞の検出に用いられる。さらに、GFPがCAR分子の最もC末端に位置し、T2A切断ペプチ
ドと直接つながっている。T2A切断後に等量のCAR分子とGFPタンパクが形成される(Szymczakらcorrection of multi-gene deficiency in vivo using a single self-cleaving 2A
peptide-based retroviral vector. Nature Biotechnology, 2004. 22: p. 589参照)。したがって、GFPのシグナルを検出することで、CAR分子の発現状況を間接的に評価する(図1Bに示される)ことができる。図1Bは、その検出過程は具体的に、レンチウイルス粒子(1)が細胞膜融合(2)により細胞に侵入、パッケージング除去(3)、逆転写(4)、統合(5)、転写(6)、翻訳(7)、T2A切断ペプチドによる切断(8)であることを示す。
その形質導入効率はGFPの発現により評価する(9)ことができ、scFvとBCMAタンパクの結合効率はBCMA-Fcにより研究する(10)ことができ、抗HA抗体はCARの発現を検出し、リッチCAR-T細胞に用いて、機能性分析を行う(11)。
GFPタンパクを検出する以外、CAR分子の発現は他の方法により行うこともできる。例えば、適量のビオチン化(biotinylated)BCMAとPEストレプトアビジン(streptavidin)でCAR分子を標識し、そしてPEシグナルによりCAR分子の発現を反映することができる。別の例として、適量のビオチン化抗HAモノクローナル抗体(biotinylated anti-HA mAb)とPEストレプトアビジン(streptavidin)でCAR分子を標識して検出に用いることができる。
【0098】
本願において、用いられたscFv分子を含むプラスミド、CAR分子を含むプラスミド、お
よび対応するレンチウイルスは表1に示される。
【0099】
【表1】
【0100】
以下のCARプラスミドを調製した(図1A参照)。
レンチウイルスベクターPLVX-EF1alpha-IRES-PuroをNotIとMluIでダブルダイジェスト
し、ベクター断片を回収した。候補のscFvプラスミドPXL0026(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO: 44)をPCRで増幅し、伸長PCRで5’末端にNotI酵素切断部位(保護塩基を含む)、CD8aシグナルペプチド、HA-タグ;ヒンジ領域、膜貫通領域、CD28共刺激因子、CD3ζ細胞
内シグナル伝達ドメインを順に付加して遺伝子合成を行い、PCRで増幅した;T2A切断ペプチドとeGFPがプラスミドpMy-BirA-T2A-eGFP PCRから増幅し、3’末端にMluI酵素切断部位及び保護塩基を付加した;そしてoverlap PCRにより、5’末端にNotI酵素切断部位を持ち、3’末端にMluI部位を持つPCR断片を取得し、この断片をNotI及びMluIでダブルダイジェストし、回収した。T4接続構築により、番号がPXL0037であるCARプラスミド(CAR0037の
ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:50に示される)が得られた。
【0101】
類似の方法により、番号がPXL0085であるCARプラスミドを取得し、レンチウイルスベクターPLVX-EF1alpha-IRES-PuroをNotIとMluIでダブルダイジェストし、ベクター断片を回
収した。候補のscFvプラスミドPXL0026をPCRで増幅し、伸長PCRで5’末端にNotI酵素切断部位(保護塩基を含む)、CD8aシグナルペプチド、ヒンジ領域、膜貫通領域、4-1BB共刺
激因子(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:32)、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを順に
付加して遺伝子合成を行い、PCRで増幅した;そしてoverlap PCRで5’末端にNotI酵素切
断部位を持ち、3’末端にMluI部位を持つPCR断片を取得し、この断片をNotI及びMluIでダブルダイジェストし、回収した。T4接続構築により、番号がPXL0085であるCARプラスミド(CAR0085のCAR分子部分のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:52に示される)が得られた。
【0102】
類似の方法により、番号がPXL0087であるCARプラスミドを取得し、レンチウイルスベクターPLVX-EF1alpha-IRES-PuroをNotIとMluIでダブルダイジェストし、ベクター断片を回
収した。候補のscFvプラスミドPXL0026をPCRで増幅し、伸長PCRで5’末端にNotI酵素切断部位(保護塩基を含む)、CD8aシグナルペプチド、ヒンジ領域、膜貫通領域、4-1BB共刺
激因子(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:32)、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、T2A切断ペプチド、EGFRt(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:40)を順に付加して遺伝子合成を行
い、PCRで増幅した;そしてoverlap PCRで5’末端にNotI酵素切断部位を持ち、3’末端にMluI部位を持つPCR断片を取得し、この断片をNotI及びMluIでダブルダイジェストし、回
収した。T4接続構築により、番号がPXL0087であるCARプラスミド(CAR0087のCAR分子部分
のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:52に示される)が得られた。
【0103】
同時に、scFvプラスミドPXL0008を含むCARプラスミドを対照として構築した。
【0104】
その後、同じ方法で、番号がPXL0041であるCARプラスミド(CAR0041のCAR分子部分のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:48に示される)を得た。レンチウイルスベクターPLVX-EF1alpha-IRES-PuroをNotIとMluIでダブルダイジェストし、ベクター断片を回収した。候補のscFvプラスミドPXL0008(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:42)をPCRで増幅し、伸長PCRで5
’末端にNotI酵素切断部位(保護塩基を含む)、CD8aシグナルペプチド、HA-タグ、ヒン
ジ領域、膜貫通領域、CD28共刺激因子、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを順に付加し
て遺伝子合成を行い、PCRで増幅した;T2A切断ペプチドとGFPがプラスミドpMy-BirA-T2A-eGFP PCRから増幅し、3’末端にMluI酵素切断部位及び保護塩基を付加した;そしてoverlap PCRで5’末端にNotI酵素切断部位を持ち、3’末端にMluI部位を持つPCR断片を取得し
、この断片をNotI及びMluIでダブルダイジェストし、回収した。T4接続構築により、番号がPXL0041であるCARプラスミド(CAR0041のCAR分子部分のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:48に示される)が得られた。
【0105】
類似の方法により、番号がPXL0009であるCARプラスミドを取得し、レンチウイルスベクターPLVX-EF1alpha-IRES-PuroをNotIとMluIでダブルダイジェストし、ベクター断片を回
収した。候補scFvプラスミドPXL0008をPCRで増幅し、伸長PCRで5’末端にNotI酵素切断部位(保護塩基を含む)、CD8aシグナルペプチド;ヒンジ領域、膜貫通領域、CD28共刺激因子、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを付加して遺伝子合成を行い、PCR増幅した;そしてoverlap PCRで5’末端にNotI酵素切断部位を持ち、3’末端にMluI部位を持つPCR断片を取得し、この断片をNotI及びMluIでダブルダイジェストし、回収した。T4接続構築により、番号がPXL0009であるCARプラスミド(CAR0009のCAR分子部分のヌクレオチド配列がSEQ ID NO:46に示される)が得られた。
【0106】
実施例2 一過性トランスフェクションされた293T細胞サンプルでのCAR分子の発現
図2Aに示されるように、PEIをトランスフェクション試薬として用い、実施例1で調製されたPXL0009、PXL0041、PXL0037のCARプラスミドを293T細胞に一過性トランスフェクトして、それぞれPXL0009-293T細胞、PXL0041-293T細胞、PXL0037-293T細胞を得た。一過性トランスフェクションの72時間後のPXL0009-293T細胞、PXL0041-293T細胞、PXL0037-293T細胞は、候補CAR分子の発現能力の評価に用いられた。図2Aにおいて、1はプラスミドとトランスフェクション試薬を表し、2は一過性トランスフェクションを表し、3は発現とT2A切
断ペプチドの切断を表す。
【0107】
実施例1に記載されている方法によりCAR分子の発現を検出した。具体的に、過剰かつ所定濃度のPEストレプトアビジン(PE streptavidin)が存在する状態で、勾配希釈により
ビオチン化BCMA(biotinylated BCMA)の用量を変化させ、PEシグナルの変化(図2Bに示さ
れる)を得た。その中で、X軸は細胞で発現されるGFPタンパクのシグナルであり、Y軸は
勾配希釈したビオチン化BCMA(biotinylated BCMA)と所定量のPEストレプトアビジン(PE-streptavidin)でCAR分子を標識して得られたPEシグナルである。
【0108】
勾配希釈したビオチン化BCMA(biotinylated BCMA)タンパク(295.86nM~3.79pM)を
使用して、候補CARプラスミドで一過性トランスフェクトされた293T細胞のPEシグナル変
化曲線(図3に示される)を検出した。カーブフィッティングから計算されたBCMAタンパ
クと細胞表面のCAR分子が結合するEC50値は表2に示される。
【0109】
【表2】
【0110】
同様に、一過性トランスフェクションの72時間後の293T細胞サンプルでは、ビオチン化抗HAモノクローナル抗体(anti-HA mAb)とPEストレプトアビジン(PE streptavidin)でCAR分子を標識し、フローサイトメトリーで得られたGFP陽性率(GFP%)、CAR陽性率(CAR%)、及び両者の比率の結果は表3に示される。
【0111】
【表3】
【0112】
PXL0009は既知のCAR分子を正常に発現できる参照プラスミドであり、GFPタンパクとHA
タグをコードする遺伝子を含まず、配列がSEQ ID NO:45に示される。細胞サンプルではGFPシグナルが検出されず、CARがビオチン化抗HAモノクローナル抗体(biotinylatedanti-HA mAb)と結合するPEシグナルもないはずである。したがって、PXL0009-293T細胞サンプ
ルはフローサイトメトリーの対照サンプルとして使用できる。PXL0009とは異なり、参照
プラスミドとしてのPXL0041とPXL0037はGFPタンパクとHAタグをコードするため、PXL0041-293T細胞サンプルではGFPシグナルが検出され、CARとビオチン化BCMA(biotinylated BCMA)タンパク又はビオチン化抗HAモノクローナル抗体(biotinylatedanti-HA mAb)との
結合(PEシグナル)もそれぞれ検出でき、陽性対照として使用できる。
【0113】
結果として、PXL0037-293T細胞サンプルではGFPシグナルが検出され、CARとビオチン化BCMA(biotinylated BCMA)タンパク又はビオチン化抗HAモノクローナル抗体(biotinylatedanti-HA mAb)との結合(PEシグナル)も検出され、PXL0037プラスミドでコードされ
たCAR分子は細胞上で発現でき、且つBCMAタンパクと正常に結合できることを示している
【0114】
実施例3 レンチウイルス形質導入した293T細胞サンプルでのCAR分子の発現
3.1 レンチウイルスのパッケージング
実施例1で調製された番号がPXL0009、PXL0041、PXL0037であるCARプラスミドは、293T
細胞をシャトルプラスミドおよび他のパッケージングプラスミドで同時トランスフェクトし、細胞内でレンチウイルスのパッケージングを行う必要がある。具体的な手順は以下の通りである。
【0115】
10cmのシャーレにおけるレンチウイルスのパッケージングを例として、293T細胞を6
×104個/cm2の密度で、10% FBSを含有するDMEM培地に接種し、37℃、5% CO2、飽和湿度の環境で培養し、接種の3日後にトランスフェクションを行った。トランスフェクションの
前に2本のEP管を取り、それぞれ500μlopti-MEMを加え、一方の管にレンチウイルスヘルパーベクター3μg PSPAX2、2 pMD2.G及び実施例1で調製されたベクター(番号がPXL0009
、PXL0041、又はPXL0037であるCARプラスミド)5μgを加え、均一に混合し、プラスミド
を含む管を得た。他方の管に濃度1mg/mlの PEI 30μlを加え、十分に混合した。その後、上記の他方の管におけるPEIを加えた溶液を、前記プラスミド含有管に滴下し、加えなが
ら均一に混合し、室温で30min静置した後、前述293T細胞に均一に滴下した。トランスフ
ェクション後の24時間に6mlの10% FBSを含有するDMEM培地を交換した。
【0116】
72時間後、上清を遠心管に集め、3000gを4℃で10min遠心分離し、上清を0.45μmのフィルターで濾過した後、純化する準備をした。
【0117】
上清を超遠心機で遠心分離し、27000gを4℃で4時間遠心分離した。上清を捨て、100μl予冷したPBSで沈殿を再懸濁し、粒子がなくなった後に4℃で一晩再懸濁した。一晩後、ウイルス懸濁液を取り出して分別した。LV0002(PXL0009に対応するCARプラスミド)、LV0011(PXL0041に対応するCARプラスミド)、LV0007(PXL0037に対応するCARプラスミド)レンチウイルスをそれぞれ得た。
【0118】
3.2レンチウイルスのパッケージング効率の評価
レンチウイルスパッケージングの過程で収集した上清における形質導入活性を有するウイルスタイター(バイオタイター)を検出することにより、レンチウイルスのパッケージング効率を評価することができる。具体的な検出手順は以下の通りである。
【0119】
293T細胞を1×105/ウェルの量で6ウェルプレートに接種し、37℃、5% CO2、飽和湿度の環境で、500μlの10% FBSを含有するDMEM培地で培養した。細胞培養24時間後、レンチウ
イルス形質導入を行い、それぞれ100μl、50μl、25μl、12.5μlの上記上清を6ウェルプレートに加えた(各サンプル量を2つのウェルに設置した)。その後、37℃、5% CO2、飽
和湿度の環境で続けて細胞を培養した。レンチウイルス形質導入の72時間後、293T細胞を消化して再懸濁後にフローサイトメトリーに用いた。
【0120】
LV0007はCAR分子とGFPタンパクをコードする遺伝子を両方持っているため、LV0007により形質導入された293T細胞はCAR分子とGFPタンパクの両方を発現できる。293T細胞でのGFP蛍光シグナルをフローサイトメトリーで検出することにより、上清におけるレンチウイ
ルスバイオタイター(GFPタイターと呼ばれる)を計算することができる。
【0121】
バイオタイター(TU/ml)=(GFP陽性率×293T細胞数)/ウイルスサンプル体積
又は、LV0007により形質導入された293T細胞をビオチン化BCMA(biotinylated BCMA)
とPEストレプトアビジン(PE-streptavidin)で標識し、CAR陽性率(CARタイターと呼ば
れる)をフローサイトメトリーで検出した。
バイオタイター(TU/ml)=(CAR陽性率×293T細胞数)/ウイルスサンプル体積
上述したパッケージング過程で収集された上清のバイオタイターの検出結果は図4と表4に示される。
【0122】
表4は、レンチウイルスパッケージング上清のバイオタイターのデータを示す。「GFPタイター」とは、一般的に、GFPシグナルによりウイルス形質導入された293T細胞におけるGFP陽性率を検出し、計算により得られたタイターである。「CARタイター」とは、一般的
に、ビオチン化BCMAとPEストレプトアビジン(PE-streptavidin)によりウイルス形質導
入された293T細胞におけるCAR陽性率を検出し、計算により得られたタイターである。
【0123】
【表4】
【0124】
実施例4 CAR-T細胞の調製
初日に、約65 mlの健康なドナーの末梢血を採取し、得られたPBMCをFicollで分離し、
さらに得られたT細胞をCD3 MicroBeadsで分別した。分別した後のT細胞はCD3/CD28 Dynabeadsで活性化した。約24時間活性化した後(2日目)、実施例3で調製されたLV0007とLV0011のレンチウイルス形質導入(MOI = 4)を加え、形質導入するとき、T cells密度が約1.5×106細胞/mlであった。3日目に、形質導入した後のT細胞に対して培地交換を行った。
その後、毎日カウントし、細胞密度を(0.6~2.0)×106細胞/mlの間に維持し、細胞の成長曲線をプロットした。
【0125】
細胞を6日目まで培養すると、フローサイトメトリーによりCAR陽性率(CAR%)、GFP陽
性率(GFP%)、CD4/CD8比率を検出した。10日目に、CAR-T細胞の体外機能評価を行った。
【0126】
上記のプロセスに従って、LV0007-CAR-TとLV0011-CAR-T細胞が得られ、ドナーのT細胞
を対照とした。表5に上記のCAR-T細胞の調製プロセスをまとめた。
【表5】
【0127】
LV0007-CAR-T細胞、LV0011-CAR-T細胞、およびT細胞対照組の成長曲線は図5に示される。細胞を6日目まで培養すると、フローサイトメトリーにより得られたCAR陽性率などのデータは表6に示される。
【表6】
【0128】
実施例5 CAR分子とBCMAタンパクとの結合データ
さらに、所定濃度且つ過剰のPEストレプトアビジン(PE streptavidin)の条件下で、
勾配希釈したビオチン化BCMA(biotinylatedBCMA)タンパクでCAR分子を標識する方法(
実施例2の方法と同じ)により、実施例4で調製されたCAR-Tで発現されるCAR分子とBCMAタンパクとの結合能力を検出し、結果は図6と表7に示される。
【0129】
【表7】
以上のデータによれば、T細胞で発現された候補CAR分子はBCMAタンパクに正常に結合できる。但し、異なるバッチで調製された細胞サンプルで測定したEC50値には大きな差異がある。このような差異は、細胞の種類、サンプルの調製方法、及びバッチが異なるため、細胞表面のCAR分子発現密度が異なることによる可能性がある。
【0130】
実施例6 CD107a脱顆粒実験
6.1 CD107a脱顆粒実験
CD107a脱顆粒実験によりCAR-T細胞の体外生物学的有効性の評価を行った。CD107aは細
胞内微小胞のマーカーであり、グランザイムを担持した微小胞が細胞膜と融合すると、細胞膜上のCD107aが増加し、モネンシン(monesin、BioLegendから購入)で回収を阻害するとき、微小胞放出の強度を定量的に反映できる。CAR-Tが標的細胞上の標的抗原に刺激さ
れると、グランザイム放出の引き起こし、CD107aの増加をフローサイトメトリーにより検出することでT細胞の活性化を判断することができる。
【0131】
まず、実施例4で得られたCAR-T細胞(LV0007-CAR-T細胞又はLV0011-CAR-T細胞)を、標的細胞U266、モネンシン、及びCD107a抗体とともに3~6時間インキュベートし、CAR-T細
胞と標的細胞の細胞密度がいずれも5×105細胞/mlであった。その後、CD8、PD1抗体でサ
ンプル標識した後、フローサイトメトリーを行った。候補CAR-T細胞におけるCAR陽性細胞はGFPの共発現により検出され、対照としてのLV0011-CAR-T細胞はビオチン化BCMA-FcとPEストレプトアビジンによりCAR陽性細胞を標識した。実験の陰性対照はK562細胞とCAR-T細胞を共インキュベートし、陽性対照は標的細胞の代わりに混合物(cocktail)でCAR-T細
胞を活性化した。
【0132】
LV0007-CAR-T細胞を例として、フローサイトメトリーの結果は図7に示される。
【0133】
LV0007-CAR-TとU266を共インキュベートした細胞サンプルに対し、FSC:SSCドットプロット図においてP1ゲートを選択し、左下隅の細胞破片を除去する。P1ゲートにおける細胞に対して、さらにCD8:PD1を分析し、CD8+/PD1-細胞集団(Q3)が得られる。CD8+/PD1-細胞集団の中で、さらにGFP:CD107aを分析し、CD8+/PD1-/CAR+細胞集団(共発現GFPシグナルでCAR陽性細胞を標識する)及びCD8+/PD1-/CAR-細胞集団の中で、CD107aを発現する割
合がそれぞれ得られる。
【0134】
LV0007-CAR-TとK562を共インキュベートした細胞サンプルに対し、FSC:SSCドットプロット図において細胞をP1とP2の2組に分け、P2組における細胞はほとんどCD8を発現しないため、K562細胞である可能性がある。P1ゲートにおける細胞は、さらにCD8:PD1を分析できる。CD8+/PD1-細胞集団(Q3)において、さらにGFP:CD107aを分析し、CD8+/PD1-/CAR+及びCD8+/PD1-/CAR-細胞集団の中で、CD107aを発現する割合も得られる。
【0135】
6.2 CD107a脱顆粒実験データ
本実施例のセクション6.1の実験操作に従って、CAR-T細胞サンプル(LV0007-CAR-TとLV0011-CAR-T細胞)を、それぞれ標的細胞U266(BCMA陽性)又はK562(BCMA陰性)と3時間
共インキュベートした後、フローサイトメトリーを行った。細胞サンプルのCD107a脱顆粒実験データの結果は表8と図8に示され、表8と図8はいずれもCD8+/PD1-/CAR+及びCD8+/PD1-/CAR-の2つのサブグループ細胞における発現CD107a陽性細胞比率を示す。
【0136】
【表8】
【0137】
表8と図8に示されるように、U266細胞とインキュベートしたCAR-Tサンプルにおいて、CD8+/PD1-/CAR+サブグループ細胞上のCD107a数値は、CAR-T細胞が特異的に活性化された状況を反映できる。一方、K562細胞とインキュベートしたCAR-Tサンプルにおいて、CD8+/PD1-/CAR+サブグループ細胞上のCD107a数値は、CAR-T細胞が非特異的に活性化された状況を反映できる。U266とインキュベートする場合のCD8+/PD1-/CAR+サブグループ細胞上のCD107a数値を比較すると、LV0007-CAR-T細胞のCD8+/PD1-/CAR+サブグループがBCMA陽性細胞(U266)により特異的に活性化でき、且つLV0007-CAR-T細胞の活性化状況は対照としてのLV0011-CAR-T細胞より強いことがわかる。
【0138】
6.3 BCMAタンパク競合条件下でのCD107a脱顆粒実験データ
さらに、多発性骨髄腫(MM)細胞の表面で発現するBCMAタンパクの細胞外部分はγ-セ
クレターゼ(γ-secretase)によって切断でき、可溶性BCMA(sBCMA)を形成する。可溶
性BCMAはMM患者の血清で上昇し、且つ濃度が腫瘍の悪性度と正の相関がある。したがって、CAR-T細胞を標的細胞と共インキュベートするとき、培地に1μg/ml BCMAタンパクを加
えて、可溶性BCMAのCAR-T細胞活性化に対する影響を評価した。
【0139】
CAR-T細胞サンプルについて、BCMAタンパク競合条件下でのCD107a脱離実験検出結果は
表9と図9に示される。図9に示されるように、LV0007形質導入細胞サンプルについて、U266細胞のCAR-T細胞に対する活性化はBCMAタンパクの競合性によって阻害されなかったが、対照としてのLV0011-CAR-T細胞サンプルの活性化は明らかに阻害された。
【0140】
【表9】
【0141】
実施例7 サイトカイン放出測定
サイトカイン放出測定実験は、測定されるCAR-T細胞(5×105細胞、100μl)と標的細
胞(5×105細胞、100μl)をRPMI-1640培地で24時間共インキュベートした後、細胞培養
上清を収集し、そしてCBA法によりIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-17A、TNF-α、及びIFN-γなどの因子の分泌状況を測定した。
【0142】
CAR-T細胞サンプルをそれぞれ標的細胞と共インキュベートした後のサイトカイン放出
の検出結果は表10と図10に示される。図10に示されるサイトカイン放出量はサンプルで検出される最大値に対する百分率である。表10と図10に示されるように、BCMA陽性の標的細胞U266に刺激された後(+U226)、LV0007-CAR-T細胞から分泌するTNF-α、IFN-γ、及びIL-2はいずれも大幅に増加した。BCMA陰性のK562に刺激される場合(+K562)、LV0007-CAR-TはTNF-α、IFN-γ、及びIL-2の分泌増加を示しなかった。
【0143】
【表10】
【0144】
実施例8 異なるドナーのCAR-T細胞機能
実施例4に類似する実験方法により、実施例3で調製されたレンチウイルスLV0002とLV0021を形質導入することにより、LV0002-CAR-T細胞とLV0021-CAR-T細胞を調製し、LV0021ウイルス(PXL0087プラスミドによってコードされるCAR分子に対応し、その共刺激因子が4-
1BBである)とLV0002ウイルス(PXL0009プラスミドによってコードされるCAR分子に対応
し、その共刺激因子がCD28である)を用いて、異なるドナーのT細胞を形質導入し、CAR-T細胞を作成した。ただし、LV0002ウイルスでドナー1のT細胞を形質導入したものをLV0002-D01-CAR-T細胞と命名し、LV0002ウイルスでドナー1のT細胞を形質導入したものをLV0002-D02-CAR-T細胞と命名し、LV0002ウイルスでドナー3のT細胞を形質導入したものをLV0002-D03-CAR-T細胞と命名し、LV0021ウイルスでドナー1のT細胞を形質導入したものをLV0021-D01-CAR-T細胞と命名し、LV0021ウイルスでドナー2のT細胞を形質導入したものをLV0021-D01-CAR-T細胞と命名し、LV0021ウイルスでドナー3のT細胞を形質導入したものをLV0021-D03-CAR-T細胞と命名した。ドナー自身のT細胞を対照とした。ドナー1からのT細胞をT細胞-D01と命名し、ドナー2からのT細胞をT細胞-D02と命名し、ドナー3からのT細胞をT細胞-D03と命名した。これらのCAR-T細胞の機能も実施例6におけるCD107a脱顆粒実験で検出し、結果は表11と図11に示される。
【0145】
結果として、2人の異なるドナーのLV0021-CAR-T細胞の結果が近く、いずれもBCMA陽性のU266細胞によって特異的に刺激されてCD107aを生じ、BCMA陰性のK562細胞に刺激される場合、生じたCD107aの数値は刺激されていない数値と似ている(空白)。対照としてのLV0002-CAR-T細胞は、U266細胞に刺激される場合、より高いCD107aを生じ、これは両者のscFvと共刺激因子がいずれも異なることによる可能性がある。また、LV0002-CAR-T細胞が刺激されない(空白)およびK562細胞に刺激される条件で、いずれも高いCD107a値がある。さらに、LV0021-CAR-TのCD107aを生じる能力は遊離BCMAタンパクに弱く影響されるが、LV0002-CAR-TのCD107aを生じる能力は遊離BCMAタンパクに強く影響される。
【0146】
【表11】
【0147】
実施例9 CAR-Tによる標的細胞の体外殺傷実験
実施例8で調製されたCAR-T細胞LV0021-D02-CAR-Tを用いて体外殺傷機能を検出し、具体的にカルセイン蛍光法により検出できる。その検出手順は以下の通りである。BCMA陽性のU266細胞とBCMA陰性のK562細胞をそれぞれ5×105個取り、PBS+4%FBS溶液中で1×106個/mlの細胞懸濁液に再懸濁させた。そして、カルセイン(Calcein-AM)25μMでU266とK562細
胞をそれぞれ標識した。標識された後のU266とK562細胞を各ウェル5000細胞の量でそれぞれU底96ウェルプレートに接種した。その後、対応するウェルに、それぞれエフェクター
細胞と標的細胞の比(E:T値)が50:1、25:1、5:1である割合で、測定されるCAR-T細胞又
は対照としてのT細胞を添加し、各ウェルの溶液体積が200μlであった。また、エフェク
ター細胞の代わりに、PBS溶液をU266又はK562細胞に加え、検出する陰性対照とした。エ
フェクター細胞の代わりに、細胞分解液溶液をU266又はK562細胞に加え、検出する陽性対照とした。その後、U底96ウェルプレートを遮光して37℃で3時間インキュベートし、そして各ウェルから上清溶液を抽出して(細胞を抽出しないように)蛍光検出した(励起光波
長485/20nm、発光波長530/25nm)。標的細胞(U266又はK562)がエフェクター細胞によって殺され分解されてカルセインを放出する相対的な割合は下記の式で計算できる。
【数1】
ただし、Ftestは標的細胞と測定対照のT/CAR-T細胞を含有するダブルウェル間の平均蛍光値であり、Fspont.は標的細胞とPBSを含有するダブルウェル間の平均蛍光値であり、Fmax.は標的細胞と分解液を含有するダブルウェル間の平均蛍光値である。
【0148】
LV0021-D02-CAR-Tサンプルを例として、CAR-T細胞による標的細胞の体外殺傷効果は図12に示され、CAR-T細胞はBCMA陽性のU266細胞に対して強い殺傷効果を有し、且つ殺傷効果はE:T値の増大に伴って強くなり、より大きい割合のU266細胞が分解されてカルセインを
放出するように表現される。対照として、CAR-T細胞はBCMA陰性のK562細胞に対して殺傷
効果が弱い。また、T細胞はU266細胞に対して一定の非特異的殺傷効果を有し、且つ非特
異性殺傷はE:T値の増大に伴って変化しない。したがって、CAR-T細胞は、明らかなBCMAに対する特異性殺傷効果を有する。
【0149】
実施例10 担癌動物モデル体内腫瘍の阻害検出
実施例8で調製されたドナー2からのCAR-T細胞(LV0021-D02-CAR-T)を用いて動物モデル
実験を実施した。前記LV0021-CAR-T細胞をXL103-07と命名した。一方、ドナー2からのT細胞(T細胞-D02)を対照T細胞とした。各マウス2×106細胞の量で、増幅中のU266細胞を皮下注射により免疫不全NSGマウスに接種し、U266皮下担癌モデルを作った。腫瘍のサイズが100-150 mm3に達すると、表12に示されるように、担癌マウスを5組に分け、それぞれCAR-T細胞(XL103-07)、対照T細胞(T細胞-D02)、PBS、又は細胞凍結保存液(7.5%のDMSO、23%のヒトアルブミン、32.5%の複合電解質液、35%のブドウ糖注射液、および2%の生理食塩水を含む)を注射した。組み分け及び投与方法は表12に示される。
【0150】
【表12】
【0151】
マウスを連続に飼育し、腫瘍体積、マウス体重、及びマウス生存状態を記録した。結果は図13に示される。マウスモデル実験の結果として、CAR-T細胞を一回注射した後、高投
与量組でも低投与量組でも良好な腫瘍殺傷効果を有し、腫瘍は注射の19日後に完全になくなった。対照T細胞、PBS、又は細胞凍結保存液を注射したマウス体内の腫瘍はいずれも続けて成長した。
【0152】
実施例11 担癌動物モデル体内のサイトカイン検出
実施例10と同じCAR-T細胞XL103-07を、フロービーズアレイ法(cytometric beads array, CBA)法(具体的な方法はBDTM CBA Flex Set Reagents及びBD FACSArrayTM Bioanalyzer
参照)により投与した後、マウス末梢血プラズマ中のサイトカイン(IFNγ、IL2、IL10、IL7、IL6、TNF-α)の変化を検出した。担癌マウスを、対照T細胞組、XL103-07高投与量
組、XL103-07低投与量組の三組に分け、各組5匹であった。その中で、XL103-07-Hは高投
与量組を表し、投与量が10×106細胞(XL103-07細胞)/動物であった。XL103-07-Lは低投与量組を表し、投与量が2×106細胞(XL103-07細胞)/動物であった。
【0153】
IFNγとIL2結果は図14に示される。結果として、低投与量組マウス体内のIFNγとIL2のピーク値はそれぞれ10日目と7日目にある。高投与量組のIFNγとIL2のピーク値はそれぞれ3~7日目と3日目にある。ピーク値は低投与量組より早く現れる。対照T細胞組のレベルは非常に低く、明らかな変化傾向はない。
【0154】
IL10、IL7、IL6、TNF-αの結果は図15に示される。図15の結果より、サイトカインレベルはいずれも低く、対照T細胞組に比べて明らかな変化傾向はない。
【0155】
実施例12 担癌動物モデル体内のCAR分子コピー数の変化検出
定量PCR法により、実施例10の動物モデル担癌マウスの末梢血細胞ゲノムDNAにおけるXL103-07のCAR分子のDNAコピー数の変化を検出し、マウス体内でのCAR-T細胞の増幅状況を
分析し、結果は図16に示される。類似的に、担癌マウスを、対照T細胞組、XL103-07高投
与量組、XL103-07低投与量組の三組に分け、各組5匹であった。その中で、XL103-07-Hは
高投与量組を表し、投与量が10×106細胞(XL103-07細胞)/動物であった。XL103-07-Lは低投与量組を表し、投与量が2×106細胞(XL103-07細胞)/動物であった。
【0156】
結果として、対照T細胞組に比べて、高投与量組のCARコピー数は三日目に上昇し、10日目後にピーク値に達した後、15日目まで持続した。一方、Mock-T及び他の対照組は増幅しなかった。CAR-T細胞は腫瘍を殺す過程で大量に増幅することを示す。
【0157】
実施例13 探索的臨床研究
薬学研究を通じて、安定なPXL0085プラスミド、LV0020レンチウイルスベクター、及びCART細胞の生産プロセスを取得した後、探索的臨床研究を行い、その安全性、忍容性、お
よび初歩的な有効性を考察しながら、PK/PDの特徴を探索した。この研究は、試験サンプ
ルの調製、研究者と研究機構、試験方法、倫理審査、及びインフォームドコンセント、被験者の登録選択と診断治療、副反応の報告と処理、試験データの集計と統計分析などの面ではGCP原則に従った。
【0158】
臨床研究では、計5人の複発/難治性多発性骨髄腫の被験者(番号はそれぞれ001、002、004、005、007である)を登録して治療した。国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)2016バージョンで推薦した多発性骨髄腫治療効果標準で治療効果を評価した。5人の被験者の最高治療効果の全体的な応答率が100%に達した。そのうち3人が完全奏効(CR)、1人が部分奏効(PR)、1人が軽度の奏効(MR)、PRとMR被験者の治療効果が深まり続けた(図17
)。
【0159】
実施例14 被験者体内CARのDNAコピー数の検出
液滴デジタルPCR法(Bio-Rad QX200説明書参照)により、実施例13の5人の被験者の末
梢血におけるCARのDNAコピー数を検出し、CAR-T細胞の薬物動態特性を評価した。結果は
図18に示される。投与後、製品が体内で迅速に増幅し、60日目でも検出可能であった。ほとんどの被験者体内のCAR-Tのピークまでの時間は10日程度であるが、001番被験者のピークまでの時間は17日であった。
【0160】
実施例15 被験者体内の薬物動態分析
R 3.5.0ソフトNonCompartパックで、実施例14のCARのDNAコピー数変化をさらに分析し
、薬物動態の関連パラメーターを計算し、結果は表13に示される。表13において、T0は最初に非ゼロ濃度が観測された時間を表し、ピーク薬物濃度(Cmax)は薬品濃度が達する最大ピーク値を表し、ピークまでの時間(Tmax)はピーク薬物濃度に達するのに必要な時間を表し、AUC(0-28)は0から28日の曲線下の積分面積を表し、AUC(0-CLST)は0から最後の観察時間までの曲線下の積分面積を表す。
【0161】
【表13】
【0162】
結果として、第一投与量組の平均Cmaxが(98644±5000)コピー数/μg DNAであり、平
均AUC(0-28)が(1306653.3±100000)であり、第二投与量組の平均Cmaxが(32487.5±2000)コピー数/μg DNAであり、平均AUC(0-28)が(317816.95±150000)である。
【0163】
前述の詳細な説明は、説明および例示的なものであり、特許請求の範囲を制限するものではない。本願に列挙された実施形態に対する様々な変更は、当業者にとって自明であり、添付の特許請求の範囲およびその均等の範囲内に入る。
図1
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【配列表】
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