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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】食品生地の分割装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 5/02 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A21C5/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021210296
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516245139
【氏名又は名称】株式会社工揮
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】川上 信行
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第04408023(DE,A1)
【文献】特開2021-147212(JP,A)
【文献】特開2000-120917(JP,A)
【文献】特開平09-119126(JP,A)
【文献】特開平07-001430(JP,A)
【文献】特開昭63-060809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0258819(US,A1)
【文献】鎌谷 徹,パンの分割機,食品と科学,第36巻第4号,日本,株式会社食品と科学社,1994年03月10日,第114-118ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記装置本体上に設けられて食品生地を収容するホッパーと、
前記装置本体に設けられて前記ホッパーの下端に設けられた生地導入口を介して当該ホッパーから前記食品生地を受け入れるシリンダと、
前記装置本体の一端に配置されると共に前記シリンダから食品生地を同時に受け入れる複数の分割ポケットを有し、前記シリンダから前記分割ポケットに食品生地を受け入れる第一位置と前記分割ポケットから食品生地を排出する第二位置との間を上下動自在なスライドヘッドと、
前記シリンダ内を往復運動し、当該シリンダ内に受け入れられた食品生地を前記第一位置に設定されたスライドヘッドの分割ポケットに押し込む主ラムと、
を備える分割装置であって、更に、
前記装置本体と前記スライドヘッドとの対向面に設けられた合成樹脂製の第一摺動プレートと、
前記装置本体に取り付けられると共に前記装置本体に対して前記スライドヘッドを上下動自在に案内するための案内溝を形成する合成樹脂製の支持部材と、
前記案内溝の溝幅を変更することができる調節機構と、
を備えることを特徴とする分割装置。
【請求項2】
前記装置本体には、前記シリンダの内面を覆って当該シリンダ内における前記主ラムの進退を案内する合成樹脂製の第二摺動プレートが設けられていることを特徴とする請求項1記載の分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば混錬されたパン生地等の食品生地をホッパーから受け入れ、それを所定量に分割して供給する分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製パン工程においては、混錬された大量のパン生地を所定量の生地玉に小分けした後、焼成工程前の中間発酵へと工程を進めており、パン生地から複数の生地玉を大量に生産するために分割装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の分割装置では、装置本体の上部に設けられたホッパーからパン生地が投入される。投入されたパン生地は、ホッパーの下部に設けられた生地導入口から前記装置本体に設けられたシリンダ内に自重で垂下する。シリンダ内に垂下したパン生地は当該シリンダ内を移動するナイフによってホッパー内のパン生地と分断される。また、前記シリンダ内に導入されたパン生地は当該シリンダ内を進退する主ラムによって当該シリンダから押し出される。前記装置本体には前記シリンダの開口端を塞ぐようにしてスライドヘッドが配置されており、前記シリンダから押し出されたパン生地は前記スライドヘッドに設けられた複数の分割ポケットに対して押し込まれる。これにより、パン生地は各分割ポケットの容量に応じた大きさの複数の生地玉に分割される。
【0004】
前記スライドヘッドは前記装置本体に対して上下方向へ摺動可能に設けられており、摺動範囲の上端に位置において前記分割ポケットが前記シリンダと連通する一方、下端位置において前記分割ポケットが開放され、生地玉を前記分割ポケットから排出することが可能となっている。従って、前記スライドヘッドは上端位置においてシリンダから分割ポケット内にパン生地を受け入れた後、下端の排出位置へと移動する。前記スライドヘッドが排出位置へ移動すると、前記分割ポケットの背面側に設けられたピストンによって各分割ポケットから生地玉が押し出されると共に、押し出された生地玉はフリッカーによってベルトコンベア上に掻き落される。このようにして小分けされた生地玉は前記ベルトコンベアによって搬送され、生地玉の丸め工程を担う丸め機に送り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-149950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、このような分割装置のスライドヘッドや装置本体は鋳造によって製造されるのが一般的であった。前記スライドヘッドは前記装置本体に対して上下に摺動しており、また、前記スライドヘッドは前記装置本体に密着させる必要があることから、スライドヘッドと前記装置本体には滑り接触の摺接面を形成する必要があり、鋳造後のきさげ加工によって前記摺接面を形成していた。
【0007】
しかし、きさげ加工による金属摺接面の形成には熟練した手作業が必要であり、近年ではスライドヘッドや装置本体を鋳造によって製造することが次第に困難となってきている。また、きさげ加工によって平滑性の高い金属摺接面を形成したとしても、分割装置の運転開始の初期段階では当該摺接面から微細な金属摩耗粉が発生してしまうことから、金属摩耗粉の発生が終息するまでは慣らし運転を行う必要があり、製パン工程に導入した分割装置を直ちに使用開始することができなかった。
【0008】
また、実際に分割装置を運転する際には前記摺接面に対して油膜を形成する必要があることから、当該摺接面に対して潤滑油を断続的にあるいは継続的に供給する必要があり、分割装置の運転に関してランニングコストが嵩むといった課題もあった。
【0009】
更に、前記スライドヘッドと前記装置本体が金属摺接面の油膜を介して滑り接触する従来の分割装置では、当該金属摺接面の破損を防止するために前記スライドヘッドと装置本体を圧接させることは出来なかった。このため、装置本体のシリンダからスライドヘッドの分割ポケットに対してパン生地を押し込む際に、これら装置本体とスライドヘッドとの間に油膜厚さ以上の隙間が発生し、この隙間にパン生地が入り込んで漏れ出す所謂生地漏れを防ぐことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、製造コスト及びランニングコストを低減化することができ、装置稼働中における生地漏れを低減化することが可能な食品生地の分割装置を提供することにある。
【0011】
すなわち、本発明は、装置本体と、前記装置本体上に設けられて食品生地を収容するホッパーと、前記装置本体に設けられて前記ホッパーの下端に設けられた生地導入口を介して当該ホッパーから前記食品生地を受け入れるシリンダと、前記装置本体の一端に配置されると共に前記シリンダから食品生地を同時に受け入れる複数の分割ポケットを有し、前記シリンダから前記分割ポケットに食品生地を受け入れる第一位置と前記分割ポケットから食品生地を排出する第二位置との間を上下動自在なスライドヘッドと、前記シリンダ内を往復運動し、当該シリンダ内に受け入れられた食品生地を前記第一位置に設定されたスライドヘッドの分割ポケットに押し込む主ラムと、を備える分割装置であって、更に、前記装置本体の前記スライドヘッドとの対向面に設けられた合成樹脂製の第一摺動プレートと、前記装置本体に取り付けられて前記第一摺動プレートとの間に前記スライドヘッドを挟み込み、前記装置本体に対して当該スライドヘッドを上下動自在に案内する合成樹脂製の支持部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分割装置よれば、装置本体に設けられた合成樹脂製の第一摺動プレート及び支持部材によってスライドヘッドは挟み込まれており、当該スライドヘッドは樹脂摺接面によって前記装置本体に対して上下動自在に保持されている。このため、きさげ加工による金属摺接面を備えた従来の分割装置に比べて、安価に製造することが可能となる他、前記スライドヘッドの摺接面に対する潤滑油の供給量を減少させることができ、スライドヘッドの製造コスト及びランニングコストを低減化することが可能となる。
【0013】
また、前記スライドヘッドは樹脂摺接面に案内されて装置本体に対して上下動を繰り返すので、この分割装置の運転開始の初期段階において前記スライドヘッドの摺接面から金属摩耗粉が発生する懸念がなく、慣らし運転を行うことなく、工場への導入当初から使用を開始することが可能である。
【0014】
更に、本発明の分割装置では、スライドヘッドを合成樹脂製の第一摺動プレートと支持部材によって挟み込み、それによって当該スライドヘッドを装置本体に対して上下動自在に案内しているので、装置本体とスライドヘッドとの隙間を可及的に小さく設定することが可能であり、装置本体のシリンダ内の食品生地をスライドヘッドの分割ポケットに押し込む際に発生する生地漏れを最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる分割装置を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる分割装置の側面を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる装置本体とスライドヘッドとの装着関係を示す図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる分割装置の動作部分を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる分割装置の装置本体をスライドヘッド側からみた状態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる装置本体とスライドヘッドとの装着関係を上方からみたときの模式図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる支持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の食品生地の分割装置を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用した分割装置100の実施形態の一例を示す斜視図である。分割装置100は、製パン工程において、食品生地であるパン生地を所定量の生地玉に分割する際に用いられる自動化機械である。当該分割装置100により、パン生地から複数の生地玉に小分けした後に、焼成工程前の中間発酵へと工程を進める。分割装置100は、受け入れたパン生地に対して所定の処理を行った後に、ベルトコンベア110から生地玉を順次排出する。生地玉の重量や時間当たりの生産個数は操作パネル120から装置制御部(図示せず)に対して入力することができる。なお、本実施形態では、食品生地としてパン生地を例に説明するが、食品生地としては、クッキー、麺類等の生地、揚げ物等、用途に応じて変更可能である。
【0018】
図2は、分割装置100の側面を示す図である。分割装置100は、装置フレーム130と、前記装置フレーム130内に収容された装置本体200と、前記装置本体200の上部に設けられたホッパー140と、前記装置本体200に設けられ、当該ホッパー140からパン生地を受け入れるシリンダ210と、当該シリンダ210内を往復運動する主ラム220と、当該主ラム220と平行にシリンダ210内を往復運動するナイフ230と、装置本体200の一端に配置されるスライドヘッド240とから構成される。
【0019】
図3は、装置本体200とスライドヘッド240との装着関係を示す図である。スライドヘッド240は、装置本体200の一端に設けられた一対の支持部材410により当該装置本体に対して上下動自在に保持されている。尚、この図3において前記ホッパー140は省略されている。
【0020】
ホッパー140は混錬されたパン生地の投入口であって、前記ホッパー140の下端に設けられた生地導入口141を介して、シリンダ210と連通している。ホッパー140内に投入されたパン生地は、生地導入口141を介してシリンダ210内に自重で垂下する。
【0021】
スライドヘッド240は、前記シリンダ210からパン生地600を受け入れる複数の分割ポケット710を有している。前記複数の分割ポケット710は当該スライドヘッド240に対して横一列に配列されており、各分割ポケット710の間は分割板711により区画されている。
【0022】
図4は、前記装置本体200に設けられたシリンダ210と、当該シリンダ210内に設けられた主ラム220と、前記主ラム220と共にシリンダ210内に配置されたナイフ230と、前記スライドヘッド240との関係を示す概略図である。前記シリンダ210内の上部にはシリンダ210内を長手方向に沿って往復運動するナイフ230が設けられている。前記ナイフ230はシリンダ210内での往復動に伴い、ホッパー140の下端に設けられた生地導入口141をシリンダ210に対して閉塞又は開放する。ナイフ230の先端辺は尖塔状の刃となっており、当該ナイフ230が前記生地導入口141を閉塞する際には、当該生地導入口141からシリンダ210内に垂下したパン生地600を切断する。一方、ナイフ230がシリンダ210内を後退して前記生地導入口141が開放されると、ホッパー140内のパン生地が、生地導入口141を介してシリンダ210内に自重で垂下してくるようになっている。
【0023】
前記主ラム220はシリンダ210内を長手方向に沿って往復運動する。主ラム220がシリンダ210内を前記スライドヘッド240に向かって前進すると、シリンダ210内に存在するパン生地600が前記スライドヘッド240に設けられた複数の分割ポケット710に向けて押圧される。また、前記シリンダ210内にホッパー140からパン生地を受け入れる際には、前記主ラム220は前記ナイフ230に同期したタイミングで前記シリンダ210内を後退する。
【0024】
前記スライドヘッド240は、前記分割ポケット710が前記シリンダ210に対向する第一位置と、前記分割ポケット710が前記装置本体200の下方で露出する第二位置との間を上下動する。図4中において、実線で示されたスライドヘッド240の位置が第一位置、破線で示されたスライドヘッド240の位置が第二位置である。
【0025】
前記スライドヘッド240が第一位置に設定されている状態で前記主ラム220がシリンダ210内を前進すると、当該主ラム220によって押圧されたパン生地600がスライドヘッド240の複数の分割ポケット701に対して押し込まれる。この押し込み動作に伴い、パン生地600は各分割ポケット710を区画する分割板711によって分断され、各分割ポケット710に生地玉601として収容される。
【0026】
各分割ポケット710には生地玉を当該分割ポケット710から排出するピストン(図示せず)が挿入されている。これらピストンは前記スライドヘッド240の裏側から前記主ラム220と対向するように分割ポケット710に挿入されており、前記主ラム220がパン生地600を各分割ポケット710に押し込むのに合わせて当該分割ポケット710内を後退し、生地玉601を分割ポケット710から排出する際に前進する。前記ピストンの最後退位置は任意に設定できるようになっており、これによって分割ポケット710に充填されるパン生地600の容量が調整できるようになっている。すなわち、操作パネル120で生地玉601の目標重量を設定すると、図示外のアクチュエータが動作して前記ピストンの最後退位置が変更される。
【0027】
これらピストンは、スライドヘッド240に連動して動作し、前記スライドヘッド240が第二位置へ下降する際に分割ポケット710内を前進し、当該分割ポケット710から生地玉601を外部へ排出する。これにより、分割ポケット710の容量に応じた大きさの生地玉601が各分割ポケット710から排出される。図4に示すように、排出された生地玉601は、先端にスクレーパーを装着したフリッカー610によってスライドヘッド240から掻き落とされ、ベルトコンベア110上に落下する。これにより、スライドヘッド240の一回の上下動に対応して、前記分割ポケット710の個数分の生地玉601がベルトコンベア110上に成形される。ベルトコンベア110は、生地玉の丸め工程を担う丸め機に向かって、当該生地玉601を搬送する。
【0028】
図5は、装置本体200をスライドヘッド240側からみたときの図である。装置本体200は、図5の紙面前後方向に向かって長尺に形成されており、内部にシリンダ210を有する。装置本体200の一端(図3の手前側)には、スライドヘッド240が配置され(図3には示さず)、前記スライドヘッド240は、装置本体200に対して上下動する。そして、前記装置本体200と前記スライドヘッド240との対向面310には、図5のハッチングで示した第一摺動プレート320が設けられている。第一摺動プレート320は、図4に示すように、装置本体200とスライドヘッド240との間に挟まれるようにして存在している。前記第一摺動プレート320は、耐摩耗性が高く且つ摩擦係数の小さい合成樹脂から形成されており、例えばPEEK材を利用可能である。すなわち前記第一摺動プレート320は前記スライドヘッド240が滑り接触する樹脂摺接面を構成しており、装置本体200とスライドヘッド240は当該第一摺動プレート320を介して接触している。尚、本実施形態では、装置本体200に第一摺動プレート320が設けられているが、スライドヘッド240に対して第一摺動プレート320が設けられていてもよい。
【0029】
前述のとおり、シリンダ210は装置本体200に設けられており、ホッパー140に投入されたパン生地が生地導入口141を介して前記シリンダ210内に進入する。シリンダ210は、長手方向の一端(図5の手前側)に開口を有しており、外部に対して開放されている。当該開口は、装置本体200の一端に配置されたスライドヘッド240によって塞がれている。
【0030】
前記シリンダ210の内面は、後述する主ラム220及びナイフ230が当該シリンダ210内を往復運動する際に、主ラム220及びナイフ230と接触する摺動面であって、当該摺動面には第二摺動プレート330が設けられている。図5に示す本実施形態では、シリンダ210の断面が略矩形状に形成されているため、当該シリンダ210の内側四面に対して第二摺動プレート330が設けられている。第二摺動プレート330は、前記第一摺動プレート320と同様に、耐摩耗性が高く且つ摩擦係数の小さい合成樹脂から形成されている。すなわち、前記第二摺動プレート330は前記主ラム220及びナイフ230の往復等を案内する樹脂摺接面を構成している。
【0031】
図6は装置本体200の一端を上方からみたときの模式図である。装置本体200の一端には、スライドヘッド240を摺動可能に支持する一対の支持部材410が取り付けられている。図4及び図5に示すように、前記支持部材410は、L字状に形成されており、互いに向き合った状態で前記装置本体に固定されている。これら一対の支持部材410を装置本体に固定することで、装置本体に対してスライドヘッド240の上下動を案内する案内溝が形成され、前記スライドヘッド240は一部が当該案内溝に遊嵌した状態で装置本体に保持されている。前記支持部材410は、前記第一摺動プレート320及び第二摺動プレート330と同様に、耐摩耗性が高く且つ摩擦係数の小さい合成樹脂から形成されており、例えばPEEK材を利用可能である。尚、本実施形態において、前記支持部材410はL字状に形成されているが、前記スライドヘッド240の一部を抱え込んで装置本体に対して上下動自在に保持すものであれば、断面略C字状等、適宜形状の変更が可能である。
【0032】
図7に示すように、各支持部材410はこれを貫通する固定ボルト510によって装置本体200に締結される。合成樹脂製の支持部材を破損することが無いよう、前記支持部材410の表面には金属製の保護プレート420が設けられている。前記固定ボルト510は前記支持部材410を装置本体200に対して固定する機能に加え、当該装置本体200とスライドヘッド240との隙間を微調整するための調節機構としても機能している。すなわち、前記固定ボルト510を装置本体200に対して強く締結すると、前記スライドヘッドを移動自在に保持している案内溝の溝幅が狭くなり、前記スライドヘッド240と装置本体200との隙間が小さくなって、第一摺動プレート320に対する前記スライドヘッド240の密着度を高めることができる。一方、前記固定ボルト510の締結を緩めると、案内溝の溝幅は大きくなり、装置本体200とスライドヘッド240との隙間は拡大するので、第一摺動プレート320に対する前記スライドヘッド240の密着度は低下する。
【0033】
すなわち、調節機構としての前記固定ボルト510の締結量を変更することにより、装置本体200とスライドヘッド240との隙間を調節し、スライドヘッド240と前記第一摺動プレート320との密着度合いを変更することが可能となっている。これにより、前記のスライドヘッド240の動作の滑らかさや取り扱うパン生地の固さ等、当該分割装置の使用環境に応じて前記スライドヘッド240と前記第一摺動プレート320との密着度合いを変更し、装置本体とスライドヘッドとの隙間を最適化することが可能となる。
【0034】
尚、本実施形態の分割装置では前記支持部材410を装置本体200に対して固定する固定ボルト510を隙間調整のための調節機構として用いているが、装置本体200とスライドヘッド240との隙間を微調整可能な機構であれば、前記支持部材410の装置本体200への固定とは関係なく調節機構を設けても差し支えない。
【0035】
以上説明してきたように、本実施形態の分割装置100では、前記分割ポケット710を有するスライドヘッド240が装置本体200に設けられた合成樹脂製の第一摺動プレート320及び支持部材410によって挟みこまれており、これら第一摺動プレート320及び支持部材410に備えられた樹脂摺接面を介して上下動自在に保持されている。
【0036】
これにより、前記スライドヘッド240を装置本体に対して上下動させながら連続的に生地玉を生産するに際し、金属摺接面を備えた従来の分割装置に比べて、前記スライドヘッドと装置本体との摺接面に対して供給する潤滑油の量を可及的に減少させることができ、分割装置の可動に必要なランニングコストの低減化を図ることが可能となる。
【0037】
また、同様にして、前記主ラム220及びナイフ230の進退運動を案内する前記シリンダ210の内面を合成樹脂製の第二摺動プレート330で覆うことにより、これら主ラム220及びナイフ230の摺接面に関しても潤滑油の供給量を可及的に減少させることができ、シリンダ210に対する摺動性を確保することができ、この点においても分割装置の可動に必要なランニングコストの低減化を図ることが可能となる。
【0038】
更に、装置本体200に対するスライドヘッド240の上下動を合成樹脂製の第一摺動プレート320及び支持部材410によって案内することにより、これらスライドヘッド240や装置本体200は鋳造ではなく、ステンレス等の金属プレートの組み立てによって製作することが可能となり、分割装置100の製造コストの低減化を図ることが可能となる。
【0039】
また更に、前記スライドヘッド240は第一摺動プレート320及び支持部材410に備えられた樹脂摺接面に案内されて装置本体に対する上下動を繰り返すので、この分割装置の運転開始当初に当該スライドヘッドの摺接面から金属摩耗粉が発生する懸念はない。このため、この分割装置100は慣らし運転を行うことなく、工場への導入当初から製パン工程に投入して使用を開始することが可能であり、この点においてもランニングコストの低減化を図ることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の分割装置では、スライドヘッド240が樹脂摺接面を備えた合成樹脂製の第一摺動プレート320と支持部材410によって抱え込まれ、それによって前記装置本体200に対して上下動自在に保持されているので、金属摺接面に対して多量の潤滑油で油膜を形成していた従来の分割装置と比較して、装置本体200とスライドヘッド240との隙間を可及的に小さく設定することが可能である。このため、装置本体200のシリンダ210内に存在するパン生地600をスライドヘッド240の分割ポケット710に押し込む際に、かかるパン生地が装置本体200とスライドヘッド240の隙間に漏れ出す所謂生地漏れの発生を最小限に抑えることができ、製パン工程において無駄な原材料の消費を抑えて、生産コストの低減化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
100…分割装置、110…ベルトコンベア、200…装置本体、210…シリンダ、220…主ラム、230…ナイフ、240…スライドヘッド、320…第一摺動プレート、330…第二摺動プレート、410…支持部材、510…ボルト、600…パン生地、601…生地玉、710…分割ポケット
【要約】
【課題】
製造コスト及びランニングコストを低減化することができ、装置稼働中における生地漏れを低減化することが可能な食品生地の分割装置を提供する。
【解決手段】
装置本体上に設けられて食品生地を収容するホッパーと、前記ホッパーから前記食品生地を受け入れるシリンダと、前記装置本体の一端に配置されると共に前記シリンダから食品生地を同時に受け入れる複数の分割ポケットを有し、前記シリンダから前記分割ポケットに食品生地を受け入れる位置と前記分割ポケットから食品生地を排出する位置との間を上下動自在なスライドヘッドと、前記シリンダ内の食品生地をスライドヘッドの分割ポケットに押し込む主ラムと、前記スライドヘッドとの対向面に設けられた合成樹脂製の第一摺動プレートと、前記装置本体に取り付けられて前記第一摺動プレートとの間に前記スライドヘッドを挟み込み、当該スライドヘッドを案内する合成樹脂製の支持部材と、を備えている。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7