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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230320BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022131020
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2022050963の分割
【原出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-08-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人防災科学技術研究所、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化/衛星データ等即時共有システムと被災状況解析・予測技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501138231
【氏名又は名称】国立研究開発法人防災科学技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】田口 仁
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平 春
(72)【発明者】
【氏名】六川 修一
(72)【発明者】
【氏名】石丸 公基
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓也
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202587(JP,A)
【文献】特開2003-281664(JP,A)
【文献】特開2004-226388(JP,A)
【文献】特開2009-179141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
第1取得部、第2取得部及び算出部を備え、
前記第1取得部は、観測を要する事象が発生する地域及び時期と、前記事象の観測の優先度とを示すトリガー情報を取得し、前記観測を要する事象は、発生することが予測されている事象であり、前記トリガー情報は、発生までの時間が短い事象ほど、高い優先度を示し、
前記第2取得部は、前記事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得し、前記制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示し、
前記算出部は、取得された前記トリガー情報に基づき、取得された前記制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出し、前記観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲であり、前記観測可能な範囲のうち、前記優先度が高い事象の前記観測可能な範囲を、前記優先度が低い事象の前記観測可能な範囲に比べて高く評価する前記指標を算出する、情報処理システム。
【請求項2】
情報処理システムであって、
第1取得部、第2取得部及び算出部を備え、
前記第1取得部は、観測を要する事象が発生する地域及び時期と、前記事象の観測の優先度とを示すトリガー情報を取得し、前記観測を要する事象は、発生することが予測されている事象であり、前記トリガー情報は、発生期間が短い事象ほど、高い優先度を示し、
前記第2取得部は、前記事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得し、前記制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示し、
前記算出部は、取得された前記トリガー情報に基づき、取得された前記制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出し、前記観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲であり、前記観測可能な範囲のうち、前記優先度が高い事象の前記観測可能な範囲を、前記優先度が低い事象の前記観測可能な範囲に比べて高く評価する前記指標を算出する、情報処理システム。
【請求項3】
情報処理システムであって、
第1取得部、第2取得部及び算出部を備え、
前記第1取得部は、観測を要する事象が発生する地域及び時期と、前記事象の観測の優先度とを示すトリガー情報を取得し、前記トリガー情報は、前記事象が発生した地域の面積が大きい事象ほど、高い優先度を示し、
前記第2取得部は、前記事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得し、前記制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示し、
前記算出部は、取得された前記トリガー情報に基づき、取得された前記制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出し、前記観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲であり、前記観測可能な範囲のうち、前記優先度が高い事象の前記観測可能な範囲を、前記優先度が低い事象の前記観測可能な範囲に比べて高く評価する前記指標を算出する、情報処理システム。
【請求項4】
情報処理システムであって、
第1取得部、第2取得部及び算出部を備え、
前記第1取得部は、観測を要する事象が発生する地域及び時期と、前記事象の観測の優先度とを示すトリガー情報を取得し、前記トリガー情報は、発生地点所定の地域との距離が短いほど高くなる2段階以上の優先度を示し、
前記第2取得部は、前記事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得し、前記制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示し、
前記算出部は、取得された前記トリガー情報に基づき、取得された前記制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出し、前記観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲であり、前記観測可能な範囲のうち、前記優先度が高い事象の前記観測可能な範囲を、前記優先度が低い事象の前記観測可能な範囲に比べて高く評価する前記指標を算出する、情報処理システム。
【請求項5】
情報処理システムであって、
第1取得部、第2取得部及び算出部を備え、
前記第1取得部は、災害に関する事象が発生する地域及び時期と、前記事象の観測の優先度とを示すトリガー情報を取得し、
前記第2取得部は、前記事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得し、前記制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示し、
前記算出部は、取得された前記トリガー情報に基づき、取得された前記制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出し、
前記観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲であり、前記指標は、前記観測可能な範囲のうち、前記事象の観測において優先すべき要素を有する観測手段を用いたものを、当該要素を有しない観測手段を用いたものに比べて高く評価する指標であり、前記要素は、前記観測を要する事象の種類に応じて決まる最適な観測角度と観測手段の観測方向との近さである、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のユーザそれぞれについて、人工衛星を使用する優先度が高いユーザほど大きな値の使用許容量を算出し、複数のユーザそれぞれが使用を要求するリソース量を示す要求量が使用許容量以下である第1のユーザにおける要求量と使用許容量との差分に応じた値を、要求量が使用許容量を超えている第2のユーザの使用許容量に加算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6362529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
災害に関する事象を観測する観測手段は、例えば観測用の人工衛星のように、観測可能な期間や地域などが制限されていることがあり、有効に利用されることが望ましい。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、事象の観測手段の有効利用を支援することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、第1取得部、第2取得部及び算出部を備える。第1取得部は、観測を要する事象が発生する地域及び時期を示すトリガー情報を取得する。第2取得部は、事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得し、制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示す。算出部は、取得されたトリガー情報に基づき、取得された制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出し、観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲である。
【0007】
このような態様によれば、事象の観測手段の有効利用を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】事象観測システム1の全体構成を示す図である。
図2】トリガー情報生成サーバ10のハードウェア構成を示す図である。
図3】ユーザ端末30のハードウェア構成を示す図である。
図4】各装置の制御部の機能構成を示す図である。
図5】観測依頼処理の一例を示すアクティビティ図である。
図6】生成されたトリガー情報の一例を示す図である。
図7】取得された制約情報の一例を示す図である。
図8】ポイントテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、本実施形態に係る事象観測システムのハードウェア構成について説明する。
【0014】
図1は、事象観測システム1の全体構成を示す図である。事象観測システム1は、災害に関する事象を観測する機能を提供するシステムであり、「情報処理システム」の一例である。事象観測システム1は、通信回線2と、複数の観測衛星3(観測衛星3-1及び3-2のみ図示されている)と、複数の衛星コントロールシステム4(衛星コントロールシステム4-1及び4-2のみ図示されている)と、トリガー情報生成サーバ10と、セレクタマネジメントシステムサーバ20と、ユーザ端末30とを備える。
【0015】
通信回線2は、インターネット等を含み、自回線に接続する装置同士のデータのやり取りを仲介する。通信回線2には、トリガー情報生成サーバ10、セレクタマネジメントシステムサーバ20、ユーザ端末30及び衛星コントロールシステム4が接続されている。観測衛星3は、所定の事象を観測するためのセンサを搭載した人工衛星である。所定の事象は、例えば、台風、大雨、土砂崩れ、洪水、河川増水、噴火、降灰、地震、津波等である。衛星コントロールシステム4は、観測衛星3の動作を制御するとともに、観測衛星3から観測データを受け取るシステムである。
【0016】
トリガー情報生成サーバ10は、観測情報B1及び予測情報C1を取得して、トリガー情報を生成する。トリガー情報とは、例えば、観測を要する事象が発生する地域及び時期を示す情報である。観測情報B1及び予測情報C1は、所定の事象を観測する機能を有する機関から提供される。そのような観測機関としては、例えば、気象庁、国土交通省及び防災科学技術研究所等がある。なお、観測機関は、公共の機関に限らず、民間の機関であってもよい。トリガー情報生成サーバ10は、生成したトリガー情報をセレクタマネジメントシステムサーバ20に供給する。
【0017】
セレクタマネジメントシステムサーバ20は、トリガー情報生成サーバ10から供給されたトリガー情報と、制約情報D1とに基づいて、観測に用いる観測衛星3を選択するための処理を実行する。制約情報D1は、所定の事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す情報である。観測上の制約とは、例えば、地理的及び時間的な制約である。ユーザ端末30は、事象観測システム1を利用するユーザが操作する端末である。
【0018】
図2は、トリガー情報生成サーバ10のハードウェア構成を示す図である。トリガー情報生成サーバ10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、バス14とを備える。バス14は、トリガー情報生成サーバ10が備える各部を電気的に接続する。
【0019】
(制御部11)
制御部11は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部11は、記憶部12に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、事象観測システム1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部12に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部11によって具体的に実現されることで、制御部11に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、制御部11は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部11を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0020】
(記憶部12)
記憶部12は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部11によって実行される事象観測システム1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部12は、制御部11によって実行される事象観測システム1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0021】
(通信部13)
通信部13は、トリガー情報生成サーバ10から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部13は、外部の構成要素からトリガー情報生成サーバ10への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部13がネットワーク通信機能を有し、これにより通信回線2を介して、トリガー情報生成サーバ10と外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。
【0022】
セレクタマネジメントシステムサーバ20は、トリガー情報生成サーバ10と同様のハードウェア構成を備える。なお、セレクタマネジメントシステムサーバ20の制御部は、トリガー情報生成サーバ10の制御部11と区別するため、制御部21という符号を付して説明する。
【0023】
図3は、ユーザ端末30のハードウェア構成を示す図である。ユーザ端末30は、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、入力部34と、出力部35と、バス36とを備える。バス36は、ユーザ端末30が備える各部を電気的に接続する。
【0024】
(入力部34)
入力部34は、キー、ボタン、タッチスクリーン及びマウス等を有し、ユーザによる入力を受け付ける。
(出力部35)
出力部35は、ディスプレイ及びスピーカ等を有し、表示面に画像を表示し、音声を含む音を出力する。
【0025】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、各装置の記憶部に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部によって具体的に実現されることで、制御部に含まれる各機能部が実行されうる。
【0026】
図4は、各装置の制御部の機能構成を示す図である。トリガー情報生成サーバ10の制御部11は、観測情報取得部111と、予測情報取得部112と、トリガー情報生成部113と、トリガー情報出力部114とを備える。セレクタマネジメントシステムサーバ20の制御部21は、トリガー情報取得部211と、制約情報取得部212と、指標算出部213と、指標出力部214と、観測手段決定部215と、観測依頼部216とを備える。ユーザ端末30の制御部31は、指標表示部311と、決定受付部312と、結果通知部313とを備える。
【0027】
観測情報取得部111は、所定の事象に関して、既に観測された情報である観測情報を取得する。観測情報は、例えば、降水量(単位時間、積算)、風速(最大、平均)、河川水位及び震度等である。予測情報取得部112は、所定の事象に関して、外部の機関又はシステムによって予測された情報である予測情報を取得する。予測情報は、例えば、降水量の予報、風速の予報、台風の進路予報、台風の暴風域に入る確率、河川流量予測、洪水予報及び津波予報等である。
【0028】
トリガー情報生成部113は、取得された観測情報B1及び予測情報C1に基づいて、上述したトリガー情報、すなわち、観測を要する事象が発生する地域及び時期を示す情報を生成する。トリガー情報の生成方法の詳細は後ほど説明する。トリガー情報出力部114は、生成されたトリガー情報を、セレクタマネジメントシステムサーバ20に対して出力する。
【0029】
トリガー情報取得部211は、トリガー情報生成サーバ10から出力されてきたトリガー情報を取得する。トリガー情報取得部211は本発明の「第1取得部」の一例である。制約情報取得部212は、制約情報D1を取得する。制約情報D1は、観測衛星3の観測における少なくとも地理的及び時間的な制約を示す。制約情報取得部212は本発明の「第2取得部」の一例である。制約情報D1の詳細は後ほど説明する。
【0030】
指標算出部213は、観測衛星3により観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標(以下「評価指標」と言う)を算出する。ここでいう観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲である。指標算出部213は、詳細には、トリガー情報取得部211により取得されたトリガー情報に基づき、制約情報取得部212により取得された制約情報D1が示す制約のもと観測可能な範囲における評価指標を算出する。指標算出部213は本発明の「算出部」の一例である。評価指標の算出方法の詳細は後ほど説明する。
【0031】
指標出力部214は、算出された評価指標を出力する。指標出力部214は、第1出力先又は第2出力先に評価指標を出力する。第1出力先は、観測手段決定部215である。観測手段決定部215は、出力されてきた評価指標に基づいて、観測に用いる観測手段(本実施形態では観測衛星3)を決定する。観測手段決定部215は、決定した観測手段を観測依頼部216に通知する。観測依頼部216は、通知された観測手段に観測を行うよう依頼する。観測依頼部216は、観測の依頼を示す依頼データを衛星コントロールシステム4に送信することで、観測の依頼を行う。
【0032】
第2出力先は、ユーザ端末30である。ユーザ端末30の指標表示部311は、出力されてきた評価指標を表示する。決定受付部312は、表示された評価指標を見たユーザが観測に用いる観測手段を決定する操作を受け付ける。結果通知部313は、ユーザによる観測手段の決定結果を示す結果データをセレクタマネジメントシステムサーバ20に送信する。観測依頼部216は、送信されてきた結果データが示す観測手段に観測を行うよう依頼する。以上のとおり、事象観測システム1においては、事象観測システム1自身が観測手段を決定することもできるし、ユーザが観測手段を決定することもできるようになっている。
【0033】
3.情報処理
本節では、本実施形態の情報処理について説明する。事象観測システム1は、観測手段に対して観測の依頼を行う観測依頼処理を実行する。
【0034】
図5は、観測依頼処理の一例を示すアクティビティ図である。観測依頼処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し実行される。所定の時間間隔としては、例えば、1日毎や半日毎、数時間毎など、観測すべき事象の状況に変化が生じた場合にその変化に対応して依頼を変更することができる程度の間隔が定められる。
【0035】
まず、トリガー情報生成サーバ10が、A11において、観測情報取得部111により観測情報B1を取得し、予測情報取得部112により予測情報C1を取得する。次に、トリガー情報生成サーバ10は、A12において、トリガー情報生成部113により、取得された観測情報B1及び予測情報C1に基づいてトリガー情報を生成する。トリガー情報生成部113は、本実施形態では、観測を要する事象が発生する地域及び時期に加え、その事象の観測の優先度を示す情報を、トリガー情報として生成する。
【0036】
図6は、生成されたトリガー情報の一例を示す図である。図6では、観測を要する事象を河川氾濫による洪水とした場合のトリガー情報E101が示されている。近年では、河川の水位や氾濫面積等を予測する手法が開発されている。予測情報取得部112は、そのような予測を行う事業者から、河川の水位や氾濫面積等を示す予測情報C1を取得する。トリガー情報生成部113は、取得された予測情報C1に基づいて、観測を要する事象が発生すると予測されている地域(以下「予測地域」と言う)と、その事象の発生が予測されている時間帯(以下「予測時間帯」と言う。図6の例では予測時間帯T01)とを示す情報をトリガー情報E101として生成する。
【0037】
トリガー情報生成部113は、図6に示すように、各予測地域の地理的な範囲と、それらの予測地域の観測の優先度とを地図上に示す情報をトリガー情報E101として生成する。トリガー情報E101においては、観測の優先度が第1位の予測地域である第1優先地域F1(図6では実線で囲まれている)と、観測の優先度が第2位の予測地域である第2優先地域F2(図6では破線で囲まれている)と、観測の優先度が第3位の予測地域である第3優先地域F3(図6では二点鎖線で囲まれている)とが示されている。以下、これらを区別しない場合は「観測優先地域F」と言う。
【0038】
第1優先地域F1には、第1優先地域F11、F12、F13、F14、F15、F16が含まれている。第2優先地域F2には、第2優先地域F21、F22、F23が含まれている。第3優先地域F3には、第3優先地域F31、F32、F33、F34が含まれている。第1優先地域F1は、北関東から東北地方南部にかけて点在する地域である。第2優先地域F2は、群馬、埼玉、山梨、静岡に渡って広がる地域である。第3優先地域F3は、北信越地方と、岩手、秋田とに広がる地域である。
【0039】
各優先地域は、緯線に沿った境界線と経線に沿った境界線で囲まれた、概ね長方形の形状をした領域である。各優先地域は、詳細には、緯線に沿った境界線と経線に沿った境界線で囲まれた概ね正方形の形状をした領域を縦及び横に並べた領域である。この正方形の領域のことを以下では「単位領域」と言う。事象観測システム1においては、観測の対象となる地域(例えば日本)に存在する単位領域の位置及び識別情報が対応付けて定められており、この単位領域に基づいて、領域同士の位置関係や面積などの判断が行われる。
【0040】
トリガー情報生成部113は、例えば、観測情報B1が示す河川水位と、予測情報C1が示す洪水予報とに基づいて、予測時間帯T01において洪水の危険が高い地域を特定する。トリガー情報生成部113は、例えば、観測対象となる領域(本実施形態では日本全国)を流れる河川を1以上の領域に分割する。そして、トリガー情報生成部113は、分割された領域毎に、例えば、平常時の河川水位に対する現在の河川水位の割合と、洪水予報が示す洪水発生の危険性とにそれぞれ係数を乗じた値の合計値を洪水危険度として算出する。
【0041】
トリガー情報生成部113は、例えば、算出した洪水危険度が閾値Th1以上且つ閾値Th2未満となる河川の流域を含む単位領域を特定し、特定した単位領域に外接する長方形の地域を第3優先地域F3として特定する。トリガー情報生成部113は、同様に、洪水危険度が閾値Th2以上且つ閾値Th3未満の地域を第2優先地域F2として特定し、洪水危険度が閾値Th3以上と最も高い地域を第1優先地域F1として特定する。
【0042】
トリガー情報生成部113は、上述した観測優先地域Fの特定を、観測すべき事象の発生から収束までの期間に含まれる複数の予測時間帯について行う。トリガー情報生成部113は、こうして特定した観測優先地域Fと、その観測優先地域Fが特定された予測時間帯とを対応付けた情報をトリガー情報として生成する。図6に示すトリガー情報E101は、予測時間帯T01に対応付けられた情報である。トリガー情報生成部113は、トリガー情報E101に加え、その他の観測時間帯に対応付けられたトリガー情報も含めたトリガー情報E1を生成する。
【0043】
上記の例では、観測を要する事象は、洪水という、発生することが予測されている事象である。そして、トリガー情報生成部113は、発生確率が高い事象ほど高い優先度を示す情報を、トリガー情報として生成する。例えば、第1優先地域F1における洪水の発生確率は、第2優先地域F2における洪水の発生確率よりも高く、第2優先地域F2における洪水の発生確率は、第3優先地域F3における洪水の発生確率よりも高いので、第1優先地域F1の優先度を第1位とし、第2優先地域F2の優先度を第2位とし、第3優先地域F3の優先度を第3位とするトリガー情報が生成される。
【0044】
トリガー情報生成サーバ10は、A13において、トリガー情報出力部114により、生成されたトリガー情報E1をセレクタマネジメントシステムサーバ20に対して出力する。セレクタマネジメントシステムサーバ20は、A21において、トリガー情報取得部211により、出力されてきたトリガー情報E1を取得する。このように、トリガー情報取得部211は、事象の観測の優先度を示す情報をトリガー情報として取得する。より詳細には、トリガー情報取得部211は、上記のとおり発生確率が高い事象ほど高い優先度を示す情報を、トリガー情報として取得する。
【0045】
次に、セレクタマネジメントシステムサーバ20は、A22において、制約情報取得部212により、上述した制約情報D1を取得する。
【0046】
図7は、取得された制約情報の一例を示す図である。図7では、日本地図J1に重ねて、図1に示す観測衛星3-1が観測可能な複数の観測可能地域G001~観測可能地域G122(以下、それぞれを区別しない場合は「観測可能地域G」と言う)が示されている。観測可能地域Gは、いずれも、前述した単位領域を縦及び横に同じ数だけ並べた、概ね正方形の形状をした領域として表されている。
【0047】
観測衛星3-1は、図中の矢印で示す移動経路K1の上空を北西に向けて移動しながら観測する。そのため、南側の観測可能地域Gほど、早い時刻に観測が可能である。図7の例では、観測衛星3-1は、時刻t01から時刻t18にかけて観測を行う。時刻t01から時刻t18は、いずれも予測時間帯T01に含まれる時刻であるものとする。例えば、最も南に位置する観測可能地域G118~G122は、観測衛星3-1が時刻t01に観測可能な地域である。なお、同一時刻に観測可能な観測可能地域Gは1つであるものとする。例えば、時刻t01において観測可能な地域は、観測可能地域G118~G122のうちのいずれか1つである。
【0048】
また、図7の例において、観測可能地域G083~G092は、時刻t05に観測可能な地域である。観測可能地域G050~G053は、時刻t10に観測可能な地域である。観測可能地域G008~G015は、時刻t15に観測可能な地域である。そして、最も北に位置する観測可能地域G001又はG002は、時刻t18に観測可能な地域である。このように、制約情報D1は、観測衛星3が地球の周辺を周回しながら観測を行うために生じる時間的な制約を示す。
【0049】
また、観測衛星3-1が備えるセンサは、測定可能な方向及び距離が制限されており、図7の例では、観測可能地域G1及び観測可能地域G2を観測可能である。観測衛星3-1は、移動経路K1の上空を移動するが、鉛直下向きの一定の角度の先に存在する領域H1については観測することができない。また、観測衛星3-1は、一定の距離以上離れた領域H2についても観測することができない。このように、制約情報D1は、観測衛星3が地球の周辺を周回しながら観測を行うために生じる地理的な制約を示す。
【0050】
図7に示す制約情報D1は、観測衛星3-1が日本の上空を一度通過する際に観測可能な領域を示すものであり、次に通過する際には、観測可能な時刻及び領域が変化するので、別の制約情報D1によって時間的及び地理的な制約が示される。このように、観測衛星3-1は、複数の制約情報D1によって、観測の時間的及び地理的な制約が示される。
【0051】
本実施形態では、各観測衛星3の観測の制約を示す複数の制約情報D1が、例えば、セレクタマネジメントシステムサーバ20の記憶手段に予め記憶されているものとする。なお、制約情報D1は、不変の情報ではなく、観測衛星3の追加、除外又は運用変更等があった場合に、事象観測システム1の運用者によって更新される。なお、制約情報D1は、自動で更新されてもよい。その場合、例えば、制約情報取得部212が、定期的に観測衛星3の軌道情報を計算して制約情報を更新し、更新した制約情報を取得する。制約情報取得部212は、各観測衛星3の最新の制約情報D1を、自装置の記憶手段から読み出して取得する。
【0052】
続いて、セレクタマネジメントシステムサーバ20は、A23において、指標算出部213により、上述した評価指標を算出する。評価指標は、上述したように、観測衛星3により観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標である。評価指標は、例えば、数値で表され、数値が大きいほど、観測の目的に対して有用な観測結果が得られる可能性が高いことを示すものとする。観測の目的とは、例えば、災害対応の初動対応に必要な広域な被害状況把握である。
【0053】
指標算出部213は、トリガー情報E1が示す観測優先地域F及び予測時間帯と、観測衛星3との組み合わせ毎に評価指標を算出する。例えば、指標算出部213は、観測衛星3が予測時間帯T01に第1優先地域F11を観測する場合の評価指標を算出する。例えば、予測時間帯がN1個あり、各予測時間帯における観測優先地域Fの平均個数がN2個であり、予測時間帯に観測優先地域Fを観測可能な観測衛星3の平均台数がN3台である場合、おおよそN1*N2*N3通りの評価指標が算出される。
【0054】
本実施形態では、指標算出部213は、観測衛星3によって観測可能な範囲のうち、優先度が高い事象の観測可能な範囲を、優先度が低い事象の観測可能な範囲に比べて高く評価する指標を評価指標として算出する。また、指標算出部213は、観測衛星3によって観測可能な範囲のうち、事象の観測において優先すべき要素(以下「優先要素」と言う)を有する観測手段を用いたものを、その優先要素を有しない観測手段を用いたものに比べて高く評価する指標を評価指標として算出する。優先要素は、例えば、観測を要する地域のうち観測可能な範囲を示すカバー率の高さである。
【0055】
指標算出部213は、例えば、観測優先地域F及び観測衛星3の組み合わせ毎に、観測優先地域Fの観測の優先度を示す優先度ポイントと、観測優先地域Fに対する観測衛星3によるカバー率を示すカバー率ポイントとを算出し、優先度ポイント及びカバー率ポイントの合計を評価指標として算出する。優先度ポイントは、例えば、上述した洪水危険度に所定の係数を乗じた値である。なお、優先度ポイントは、第1優先地域F1、第2優先地域F2及び第3優先地域F3でそれぞれ固定の値であってもよい。
【0056】
カバー率ポイントは、例えば、観測優先地域Fに含まれる単位領域のうち、観測衛星3が予測時間帯に観測可能な単位領域の個数の割合に所定の係数を乗じた値である。言い換えると、カバー率ポイントは、観測優先地域Fの面積のうち、観測衛星3が予測時間帯に観測可能な面積の割合に応じた値である。指標算出部213は、こうして算出した優先度ポイント及びカバー率ポイントを合計することで、上記のとおり優先度及びカバー率に応じた評価指標を算出する。
【0057】
続いて、セレクタマネジメントシステムサーバ20は、A24において、指標出力部214により、算出された評価指標を出力する。指標出力部214は、例えば、上述した第1出力先である観測手段決定部215に評価指標を出力する。その場合、セレクタマネジメントシステムサーバ20は、A25において、観測手段決定部215により、出力されてきた評価指標に基づいて観測に用いる観測手段を決定する。
【0058】
観測手段決定部215は、観測時間帯毎に観測手段を決定する。観測手段決定部215は、例えば、各観測衛星3のうち、各観測優先地域Fについて算出された予測時間帯T01における評価指標の合計が最も大きいものを、予測時間帯T01において観測に用いる第1観測手段として決定する。観測手段決定部215は、第1観測手段だけでは全ての観測優先地域Fの観測ができない場合には、第1観測手段が観測する観測優先地域Fを除いた各観測優先地域Fについて算出された予測時間帯T01における評価指標の合計が最も大きいものを、観測に用いる第2観測手段として決定する。
【0059】
観測手段決定部215は、同様に、全ての観測優先地域Fが観測されるようになるか、残った観測優先地域Fを観測可能な観測衛星3がなくなるまで、第N観測手段(Nは自然数)を決定する。観測手段決定部215は、観測優先地域Fと、その観測優先地域Fを観測する観測手段として決定した観測手段とを予測時間帯毎に示す決定データを観測依頼部216に供給する。
【0060】
また、指標出力部214は、上述した第2出力先であるユーザ端末30に評価指標を出力してもよい。その場合、ユーザ端末30は、A31において、指標表示部311により、出力されてきた評価指標を予測時間帯毎に表示する。次に、ユーザ端末30は、A32において、決定受付部312により、各観測優先地域Fを観測する観測手段を予測時間帯毎に決定するユーザによる操作を受け付ける。そして、ユーザ端末30は、A33において、結果通知部313により、観測優先地域Fと、その観測優先地域Fを観測する観測手段としてユーザにより決定された観測手段とを予測時間帯毎に示す決定データをセレクタマネジメントシステムサーバ20に送信する。セレクタマネジメントシステムサーバ20は、受信した決定データを観測依頼部216に供給する。
【0061】
A25又はA33のあとは、セレクタマネジメントシステムサーバ20は、A41において、観測依頼部216により、供給された決定データが示す観測衛星3に対する観測の依頼データを生成する。具体的には、観測依頼部216は、同じく供給された決定データが示す観測優先地域F、すなわち、その観測衛星3が予測時間帯に観測すべき観測優先地域Fの観測を依頼する依頼データを生成する。観測依頼部216は、各観測衛星3を管理する衛星コントロールシステム4を予め記憶しており、依頼データが示す観測衛星3を管理する衛星コントロールシステム4に対してその依頼データを送信する。
【0062】
衛星コントロールシステム4は、依頼データを受信すると、A42において、受信した依頼データが示す観測衛星3に対して、受信した依頼データが示す予測時間帯に観測優先地域Fを観測するよう指示する指示処理を実行する。衛星コントロールシステム4により観測を指示された観測衛星3は、指示された観測優先地域Fを、指示された予測時間帯においてその観測優先地域Fの観測が可能な時刻に観測する。こうして観測衛星3が観測した結果を示す観測データは衛星コントロールシステム4を介して収集され、防災等に活用される。
【0063】
上記のように観測の優先度が高い事象の観測可能な範囲が高く評価されることで、優先度が高い事象が優先的に観測されるようになる。その結果、観測の優先度を考慮しない場合に比べて、例えば全ての観測優先地域Fを観測するには観測手段の数が足りないという状況になった場合でも、観測の優先度が高い事象が観測されないという事態が生じにくいようにすることができる。また、発生確率が高い事象ほど優先度を高くすることで、優先度を考慮しない場合に比べて、未来に発生する事象(この例では発生確率が高い事象)を観測しやすくすることができる。
【0064】
また、上記のように観測を要する地域のカバー率の高い観測手段による観測可能な範囲を高く評価することで、カバー率を考慮しない場合に比べて、観測を要する地域をより多くカバーする観測を支援することができ、より適切な観測手段を選択することができる。また、以上のとおり算出された評価指標により、観測のためにより有用な観測手段を定量的に示すことができ、事象の観測手段の有効利用を支援することができる。
【0065】
<その他の実施形態>
【0066】
(1)優先要素
(1-1)観測可能範囲
優先要素(事象の観測において優先すべき要素)は、上述したカバー率に限らない。優先要素は、例えば、観測衛星3が観測可能な範囲の広さであってもよい。観測衛星3が観測可能な範囲の広さは、例えば、図7に示すように、制約情報が示す観測可能地域G(観測可能地域G001~観測可能地域G122)の面積の合計によって表される。この場合、指標算出部213は、上記のカバー率ポイントの代わりに、例えば、観測範囲ポイントを算出する。
【0067】
指標算出部213は、例えば、制約情報が示す観測可能地域Gの面積の合計に所定の係数を乗じた値を観測範囲ポイントとして算出する。そして、指標算出部213は、上述した優先度ポイント及び観測範囲ポイントの合計を評価指標として算出する。このように評価指標が算出されることで、観測可能な範囲が広い観測衛星3ほど、観測に用いる観測手段として決定されやすくなる。
【0068】
また、指標算出部213は、観測を要する事象の範囲が広いほど優先要素に重みを付与して評価指標を算出してもよい。図6の例であれば、第1優先地域F11は、例えば、観測優先地域Fに含まれる単位領域の個数=重み係数として観測範囲ポイントに乗じて評価指標を算出する。これにより、観測優先地域Fが広いほど、観測可能な範囲が広い観測衛星3についての評価指標が高くなる。このような態様によれば、発生場所が広範囲に広がっている事象をなるべく少ない観測衛星3で効率よく観測することができる。
【0069】
(1-2)観測コスト
また、優先要素は、観測衛星3による実測範囲の候補の観測に要するコストの低さであってもよい。観測衛星3を使用して観測を行う際は、観測衛星3の管理及び運用を行っている運用団体に支払う使用料がコストとして発生する場合がある。観測衛星3の使用料は、予め結ばれた使用契約に基づいて、例えば、観測の実績に応じた従量課金又は定額等の形態で発生する。この場合、指標算出部213は、上記のカバー率ポイントの代わりに、例えば、コストポイントを算出する。
【0070】
指標算出部213は、例えば、基準ポイントを定めておき、その基準ポイントを観測衛星3による観測が行われた場合に生じるコストで除した値をコストポイントとして算出する。こうして算出されたコストポイントは、観測に要するコストが低い観測衛星3ほど大きくなる。そして、指標算出部213は、上述した優先度ポイント及びコストポイントの合計を評価指標として算出する。このように評価指標が算出されることで、観測に要するコストを考慮しない場合に比べて、コストを抑えた観測を支援することができる。
【0071】
(1-3)観測リードタイム
図6に示すトリガー情報E101は、観測を要する事象である洪水が発生すると予測されている地域が示されていた。つまり、実施形態では、観測を要する事象は、未来に発生することが予測されている事象であった。また、観測衛星3は、前述したように、しかるべき運用団体によって運用されている。その場合、優先要素は、運用団体への観測の要求を発したときから、その運用団体が運用する観測衛星3による事象の観測までに要するリードタイムの長さであってもよい。
【0072】
観測に要するリードタイムは、例えば、運用団体が観測の要求を受け付ける間隔によって変化する。例えば、観測要求の即時受け付けが可能な運用団体のリードタイムは、定期的(例えば毎日決まった時刻)に観測要求を受け付ける運用団体のリードタイムよりも短くなりやすい。また、要求を受け付けてから観測の許可が下りるまでの承認プロセスに要する時間が短い運用団体ほどリードタイムが短くなりやすい。
【0073】
指標算出部213は、上記のカバー率ポイントの代わりに、例えば、リードタイムポイントを算出する。指標算出部213は、例えば、観測衛星3の運用団体の実際の観測におけるリードタイムの実績値を取得し、取得した実績値の平均値で基準ポイントを除した値をリードタイムポイントとして算出する。また、指標算出部213は、観測衛星3の運用団体の観測要求の受け付け態様を示す情報(即時又は定期的)と、承認プロセスを示す情報(例えば承認者の人数)とを取得し、各情報に応じた値の合計で基準ポイントを除した値をリードタイムポイントとして算出してもよい。これらは、いずれも、リードタイムが短いほど、リードタイムポイントが大きくなる第1算出方法である。
【0074】
そして、指標算出部213は、上述した優先度ポイント及びリードタイムポイントの合計を評価指標として算出する。上記の第1算出方法により評価指標が算出されることで、観測要求から実際の観測までのリードタイムが短い観測衛星3ほど、観測に用いる観測手段として決定されやすくなる。このような態様によれば、観測に要するリードタイムを考慮しない場合に比べて、観測を要する事象の予測に変化があった場合でも観測の要求が間に合う観測衛星3を見つけやすくすることができる。
【0075】
なお、指標算出部213は、リードタイムが長いほど、リードタイムポイントが大きくなる第2算出方法を用いてもよい。その場合、観測要求から実際の観測までのリードタイムが長い観測衛星3ほど、観測に用いる観測手段として決定されやすくなる。リードタイムが長いほど、実際の観測よりも早い時期に観測の要求を行わなければならないが、その分、観測衛星3の観測の予定が空いている可能性が高い。従って、第2算出方法を用いることで、観測に要するリードタイムを考慮しない場合に比べて、観測の予定が空いている観測衛星3を見つけやすくすることができる。第1算出方法及び第2算出方法のいずれを用いる場合も、観測のニーズに合った観測衛星3を見つけやすくすることができる。
【0076】
(1-4)センサ種類
観測衛星3が有するセンサには、可視光線及び近赤外線を検出する可視光センサ、熱赤外線を検出する赤外線センサ及びマイクロ波を検出するマイクロ波センサ(レーダーセンサとも言う)等の様々な種類がある。可視光センサは、地表面に存在する物質を識別しやすい観測結果を出力する。赤外線センサは、夜間でも観測可能であり、地表の温度を示す観測結果を出力する。マイクロ波センサは、夜間だけでなく、雲の影響を受けにくいので雨天でも観測可能である。どのセンサでも各々の特性に応じた観測結果を得ることはできるが、事象の種類によって、より有用な観測結果を得られる可能性が高いセンサの種類が異なる。
【0077】
例えば、事象の種類が水害である場合、通常は雨天で発生する事象であるため、雲に邪魔されずに観測可能なマイクロ波センサによる観測結果がより有用である。また、事象の種類が土砂災害である場合、地表が植物で覆われているのか地面が露出しているのかを識別したいので、地表の物質を識別しやすい可視光センサによる観測結果がより有用である。また、事象の種類が山火事である場合、地表の温度を示す赤外線センサによる観測結果がより有用である。
【0078】
以上のことを考慮して、優先要素として、観測を要する事象の種類に応じて定められる特定の種類のセンサが用いられてもよい。その場合、指標算出部213は、上記のカバー率ポイントの代わりに、例えば、センサ種類ポイントを算出する。指標算出部213は、例えば、事象の種類とセンサの種類とセンサ種類ポイントとを対応付けたポイントテーブルを記憶しておく。
【0079】
図8は、ポイントテーブルの一例を示す図である。図8の例では、事象の種類が「水害」である場合、可視光センサ、赤外線センサ及びマイクロ波センサという3種類のセンサに対して、「5」、「5」及び「10」というセンサ種類ポイントがそれぞれ対応付けられている。また、事象の種類が「土砂災害」である場合は、同じ3種類のセンサに対して、「10」、「5」及び「5」というセンサ種類ポイントがそれぞれ対応付けられている。また、事象の種類が「津波」である場合は、同じ3種類のセンサに対して、「5」、「10」及び「5」というセンサ種類ポイントがそれぞれ対応付けられている。
【0080】
トリガー情報は、観測を要する事象の種類を示すものとする。例えば図6の例であれば、トリガー情報E101は、観測を要する事象の種類が洪水であることを示す。指標算出部213は、トリガー情報が示す観測を要する事象の種類と観測衛星3が有するセンサの種類とにポイントテーブルにおいて対応付けられているセンサ種類ポイントを用いて、その観測衛星3についての評価指標を算出する。
【0081】
指標算出部213は、例えば、事象の種類が「水害」である場合、「可視光センサ」及び「赤外線センサ」を有する観測衛星3についてはセンサ種類ポイントを「5」と算出し、「マイクロ波センサ」を有する観測衛星3についてはセンサ種類ポイントを「10」と算出する。また、指標算出部213は、事象の種類が「土砂災害」である場合、「赤外線センサ」及び「マイクロ波センサ」を有する観測衛星3についてはセンサ種類ポイントを「5」と算出し、「可視光センサ」を有する観測衛星3についてはセンサ種類ポイントを「10」と算出する。
【0082】
こうして算出されたセンサ種類ポイントは、観測を要する事象の種類(例えば図6の例では水害)に応じて定められる特定の種類のセンサ(水害の場合はマイクロ波センサ)を有する観測衛星3の場合に、他の観測衛星3の場合に比べて大きくなる。そして、指標算出部213は、上述した優先度ポイント及びセンサ種類ポイントの合計を評価指標として算出する。このように評価指標が算出されることで、観測衛星3が有するセンサの種類を考慮しない場合に比べて、より有用な観測結果を得ることができるので、観測結果から把握される事象の状況の精度を向上させることができる。
【0083】
(1-5)観測角度
観測結果の精度は、観測角度の影響を受ける。観測角度とは、観測地点における水平面と、観測衛星3と観測地点とを結ぶ線とが成す角度である。観測結果の精度は、観測角度が垂直に近いほど高くなるとは限らず、垂直よりも一定の角度だけ傾いていたほうが、高くなりやすい場合もある。観測結果の精度が最も高くなりやすい観測角度、すなわち、観測に最適となる観測角度は、様々な条件によって変化する。
【0084】
様々な条件には、例えば、事象の種類が含まれる。例えば、事象の種類が水害である場合は、観測に最適となる観測角度が垂直に近くなり、事象の種類が土砂災害である場合は、観測に最適となる観測角度が垂直よりも傾いた角度になりやすい。
【0085】
観測衛星3は、観測用のセンサを有するが、全方位センサを除く通常のセンサは、特定の方向(以下「観測方向」と言う)を中心に一定の範囲を観測する。観測方向は、例えば、可視光センサであれば光軸の方向であり、マイクロ波センサであればマイクロ波を照射する方向である。観測方向は、観測衛星3の姿勢によって変化し、観測衛星3は、通常の飛行時は観測方向を一定の方向に向けるように姿勢を制御されている。
【0086】
以上のことを考慮して、優先要素は、観測を要する事象の種類に応じて決まる最適な観測角度と観測衛星3の観測方向との近さであってもよい。この場合、指標算出部213は、事象の種類に応じて、最適な観測角度を算出する。そして、指標算出部213は、上記のカバー率ポイントの代わりに、例えば、観測角度ポイントを算出する。
【0087】
指標算出部213は、例えば、基準ポイントを定めておき、その基準ポイントをセンサの観測方向と最適な観測角度とが成す角度で除した値を観測角度ポイントとして算出する。こうして算出された観測角度ポイントは、観測方向が観測に最適な観測角度に近いほど大きくなる。そして、指標算出部213は、上述した優先度ポイント及び観測角度ポイントの合計を評価指標として算出する。このように評価指標が算出されることで、観測角度を考慮しない場合に比べて、観測結果に基づいて事象の状況をより正確に把握することができる。
【0088】
(2)優先度と優先要素
指標算出部213は、実施形態では、優先度及び優先要素の両方に基づいて評価指標を算出したが、いずれか一方にだけ基づいて評価指標を算出してもよい。また、指標算出部213は、優先要素として、カバー率、観測可能な範囲の広さ、観測に要するコストの低さ、観測までに要するリードタイムの長さ、特定の種類のセンサ及び最適な観測角度で観測する能力の高さのいずれか1つを用いたが、これらのうちの2以上を優先要素として用いてもよい。
【0089】
(3)経過時間
観測を要する事象には、時間の経過とともに状況が変化するものがある。例えば、大雨であれば、時間の経過とともに地盤が緩んで土砂災害の危険性が高い状況になったり、洪水の危険が高い状況になったりする。このように状況が変化すると、事象を観測する目的(例えば災害の防止)を達成するために、観測の優先要素を重視すべき度合いも変化する場合がある。
【0090】
例えば、雨の降り始めはより広い地域を観測して地域全体の状況を把握することが重要なので、観測可能な範囲の広さが優先要素として重視される。また、雨が蓄積されてくると、災害が懸念される特定の地域をより詳しく観測することが重要なので、カバー率が優先要素として重視される。このような場合に、指標算出部213は、観測を要する事象の発生からの経過時間に応じた重みを優先要素に付与して評価指標を算出してもよい。
【0091】
上記の例であれば、指標算出部213は、観測可能な範囲の広さを優先要素として用いる場合は、事象発生からの経過時間が長くなるほど減少させた重みを優先要素に付与して評価指標を算出する。また、指標算出部213は、カバー率を優先要素として用いる場合は、事象発生からの経過時間が長くなるほど増加させた重みを優先要素に付与して評価指標を算出する。
【0092】
上記の例に限らず、観測に要するコストの低さ、観測までに要するリードタイムの長さ、特定の種類のセンサ及び最適な観測角度で観測する能力の高さのいずれかが優先要素として用いられる場合も、観測目的の達成のために必要であれば、経過時間に応じた重みが付与されてもよい。以上のとおり重みを付与することで、経過時間を考慮しない場合に比べて、事象の変化に応じて必要な状況を把握しやいようにすることができる。
【0093】
(4)トリガー情報(その1)
(4-1)事象発生までの時間
トリガー情報は、実施形態では、発生確率が高い事象ほど高い優先度を示す情報であったが、これに限らない。トリガー情報は、例えば、事象の発生時期が予測されている場合に、発生までの時間が短い事象ほど高い優先度を示す情報であってもよい。その場合、トリガー情報生成部113は、例えば、実施形態と同様に予測情報C1(河川の流域毎に洪水の発生が予測される日時を示す情報)に基づいて、現在時刻から予測された洪水の発生日時までの時間が閾値Th11未満という条件を満たす地域(条件を満たす単位領域の集まり)を第1優先地域F1として特定する。
【0094】
また、トリガー情報生成部113は、現在時刻から予測された洪水の発生日時までの時間が閾値Th11以上Th12未満という条件を満たす地域を第2優先地域F2として特定し、その時間が閾値Th12以上という条件を満たす地域を第3優先地域F3として特定する。トリガー情報生成部113は、こうして特定した観測優先地域Fと、その観測優先地域Fが特定された予測時間帯とを対応付けた情報をトリガー情報として生成する。
【0095】
セレクタマネジメントシステムサーバ20の指標算出部213は、実施形態と同様に、観測衛星3によって観測可能な範囲のうち、優先度が高い事象の観測可能な範囲を、優先度が低い事象の観測可能な範囲に比べて高く評価する指標を評価指標として算出する。発生までの時間が短い事象は、観測手段を優先的に割り当てないと、初期の状況を観測しそこなう場合がある。そこで、このように優先度を高くすることで、優先度を考慮しない場合に比べて、未来に発生する事象(この例では発生までの時間が短い事象)をより確実に観測することができる。
【0096】
(4-2)事象発生期間
トリガー情報は、発生期間が短い事象ほど高い優先度を示す情報であってもよい。その場合、トリガー情報生成部113は、例えば、予測情報C1に基づいて、洪水の発生から収束まで時間が閾値Th21未満という条件を満たす地域を第1優先地域F1として特定する。また、トリガー情報生成部113は、洪水の発生から収束まで時間が閾値Th21以上閾値Th22未満という条件を満たす地域を第2優先地域F2として特定し、その時間が閾値Th22以上という条件を満たす地域を第3優先地域F3として特定する。
【0097】
発生期間が短い事象は、タイミングを逃すと観測することができなくなるので、このように優先度を高くすることで、優先度を考慮しない場合に比べて、未来に発生する事象(この例では発生期間が短い事象)をより確実に観測することができる。
【0098】
(5)トリガー情報(その2)
(5-1)事象の規模
トリガー情報は、規模が大きい事象ほど高い優先度を示す情報であってもよい。その場合、トリガー情報生成部113は、例えば、観測情報B1又は予測情報C1に基づいて、洪水が発生した地域の面積又は洪水が発生すると予測される地域の面積が閾値Th31未満という条件を満たす地域を第3優先地域F3として特定する。また、トリガー情報生成部113は、それらの面積が閾値Th31以上閾値Th32未満という条件を満たす地域を第2優先地域F2として特定し、それらの面積が閾値Th32以上という条件を満たす地域を第1優先地域F1として特定する。
【0099】
(5-2)事象の発生地点
トリガー情報は、発生地点が所定の地域に近い事象ほど高い優先度を示す情報であってもよい。所定の地域としては、例えば、家屋及び商業施設等が密集する市街地、交通の要所である駅や空港、インフラの重要な拠点である電力施設や水道施設、鉄道施設、道路施設など、住民の生活に重要な影響がある地域が定められる。それらの所定の地域は、事象観測システム1の運用者等によって定められ、地図上で所定の地域を含む単位領域を示す情報が、トリガー情報生成サーバ10に予め記憶される。
【0100】
そして、トリガー情報生成部113は、観測情報B1又は予測情報C1に基づいて、洪水が発生した地域又は洪水が発生すると予測される地域と所定の地域を含む単位領域との距離が閾値Th41未満という条件を満たす地域を第1優先地域F1として特定する。また、トリガー情報生成部113は、それらの距離が閾値Th41以上閾値Th42未満という条件を満たす地域を第2優先地域F2として特定し、それらの距離が閾値Th42以上という条件を満たす地域を第3優先地域F3として特定する。
【0101】
(5-3)平均値との差異
トリガー情報は、過去の平均的な観測値との差異が大きい事象ほど高い優先度を示す情報であってもよい。例えば、大雨の事象が観測される場合、トリガー情報生成部113は、地域毎の月の平均降水量を予め記憶しておく。そして、トリガー情報生成部113は、観測情報B1又は予測情報C1に基づいて、現時点を含む月に降った降水量又はその月に予測される降水量が閾値Th51未満となる地域を第3優先地域F3として特定する。また、トリガー情報生成部113は、それらの降水量が閾値Th51以上閾値Th52未満となる地域を第2優先地域F2として特定し、それらの降水量が閾値Th52以上となる地域を第1優先地域F1として特定する。
【0102】
上記の例では、規模が大きい事象、発生地点が所定の地域に近い事象及び過去の平均的な観測値との差異が大きい事象という、社会環境に影響を与える可能性が高い事象が観測される。これらの事象の優先度を高くすることで、これらの事象の観測がより確実に行われるようにして、優先度を用いない場合に比べて、住民生活に影響を与える可能性が高い事象の状況をより詳しく把握可能とすることができる。
【0103】
(6)観測を要する事象
実施形態では、指標算出部213は、観測を要する事象として、未来に発生することが予測されている事象、言い換えると、まだ発生していない事象を対象として評価指標を算出したが、これに限らない。指標算出部213は、評価指標を算出する時点で既に発生している事象を対象として、評価指標を算出してもよい。
【0104】
その場合、トリガー情報生成部113は、図6に示す予測地域(観測を要する事象が発生すると予測されている地域)にかえて、予測時間帯において、既に発生している事象(洪水等)が継続すると予測されている地域、又は、既に発生している事象(土砂崩れ等)と同じ事象が継続して発生し続けると予測されている地域を予測地域として示すトリガー情報を生成する。この場合のトリガー情報も、実施形態と同様に、観測を要する事象が発生する地域及び時期を示す情報である。
【0105】
指標算出部213は、こうして生成されたトリガー情報に基づいて、上述した各実施形態と同様に評価指標を算出する。既に発生済みの事象であっても、事象の状況は時間の経過とともに変化するので、未来に予測される状況における評価指標が算出されることで、実施形態と同様に、事象の観測手段の有効利用を支援することができる。
【0106】
(7)観測手段
実施形態では、観測手段として観測衛星が用いられたが、これに限らない。例えば、観測用のセンサを備える航空機又はドローン等が観測手段として用いられてもよい。これらの観測手段は、いずれも、飛行する物体から観測するため、観測範囲に時間的な制約が生じるものになりやすい。事象観測システム1においては、そのような観測手段の有効利用も支援することができる。
【0107】
(8)構成のバリエーション
図1に示す全体構成は一例であり、これに限られない。例えば、トリガー情報生成サーバ10及びセレクタマネジメントシステムサーバ20は、1台のサーバ装置に統合されてもよい。その場合、トリガー情報取得部211は、トリガー情報生成部113が生成したトリガー情報を装置の内部処理で取得することができる。また、トリガー情報生成サーバ10及びセレクタマネジメントシステムサーバ20は、それぞれ2台以上の装置に分散させてもよいし、クラウドコンピューティングシステムに代替されてもよい。
【0108】
図4に示す機能構成も一例であり、これに限られない。例えば、トリガー情報生成サーバ10及びセレクタマネジメントシステムサーバ20の各機能がそれぞれ2台以上の装置に分散して実現されてもよい。また、例えば、観測情報取得部111及び予測情報取得部112や指標算出部213及び指標出力部214などの2以上の機能をそれぞれ1つの機能に統合してもよい。また、指標算出部213が行う動作(優先度ポイントの算出、優先要素に関するポイントの算出、評価指標の算出)を2以上の機能が分散して行ってもよい。要するに、事象観測システム1の全体で図4に示す各機能が行う動作が実現されていれば、それらの動作を行う機能及び装置はどのような構成であってもよい。
【0109】
(9)発明のカテゴリ
上述した実施形態の態様は、情報処理方法であってもよい。その情報処理方法は、事象観測システム1のような情報処理システムの各部を備える。また、上述した実施形態の態様は、プログラムであってもよい。そのプログラムは、コンピュータに、同様の情報処理システムの各ステップを実行させる。
【0110】
<付記>
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0111】
(2)前記情報処理システムにおいて、前記第1取得部は、前記事象の観測の優先度を示す情報を前記トリガー情報として取得し、前記算出部は、前記観測可能な範囲のうち、前記優先度が高い事象の前記観測可能な範囲を、前記優先度が低い事象の前記観測可能な範囲に比べて高く評価する前記指標を算出する、情報処理システム。
【0112】
このような態様によれば、観測の優先度が高い事象をより確実に観測させることができる。
【0113】
(3)前記情報処理システムにおいて、前記第1取得部は、規模が大きい事象ほど、発生地点が所定の地域に近い事象ほど、又は、過去の平均的な観測値との差異が大きい事象ほど、高い優先度を示す情報を前記トリガー情報として取得する、情報処理システム。
【0114】
このような態様によれば、住民生活に影響を与える可能性が高い事象をより確実に観測させることができる。
【0115】
(4)前記情報処理システムにおいて、前記観測を要する事象は、発生することが予測されている事象であり、前記第1取得部は、発生までの時間が短い事象ほど、発生期間が短い事象ほど、又は、発生確率が高い事象ほど、高い優先度を示す情報を前記トリガー情報として取得する、情報処理システム。
【0116】
このような態様によれば、未来に発生する事象をより確実に観測させることができる。
【0117】
(5)前記情報処理システムにおいて、前記算出部は、前記観測可能な範囲のうち、前記事象の観測において優先すべき要素を有する観測手段を用いたものを、当該要素を有しない観測手段を用いたものに比べて高く評価する指標を算出する、情報処理システム。
【0118】
このような態様によれば、より適切な観測手段が選択されるようにすることができる。
【0119】
(6)前記情報処理システムにおいて、前記要素は、観測を要する地域のうち観測可能な範囲を示すカバー率の高さである、情報処理システム。
【0120】
このような態様によれば、観測の漏れを抑制することができる。
【0121】
(7)前記情報処理システムにおいて、前記要素は、観測可能な範囲の広さである、前記算出部は、前記観測を要する事象の範囲が広いほど前記要素に重みを付与して前記指標を算出する、情報処理システム。
【0122】
このような態様によれば、発生場所が広範囲に広がっている事象を効率よく観測させることができる。
【0123】
(8)前記情報処理システムにおいて、前記要素は、前記実測範囲の候補の観測に要するコストの低さである、情報処理システム。
【0124】
このような態様によれば、コストを抑えた観測を支援することができる。
【0125】
(9)前記情報処理システムにおいて、前記観測を要する事象は、未来に発生することが予測されている事象であり、前記観測手段は、運用団体によって運用されており、前記要素は、前記運用団体への要求を発したときから、前記運用団体が運用する観測手段による事象の観測までに要するリードタイムの長さである、情報処理システム。
【0126】
このような態様によれば、観測のニーズに合った観測手段が見つかりやすいようにすることができる。
【0127】
(10)前記情報処理システムにおいて、前記算出部は、前記観測を要する事象の発生からの経過時間に応じた重みを前記要素に付与して前記指標を算出する、情報処理システム。
【0128】
このような態様によれば、事象の変化に応じて必要な状況を把握させることができる。
【0129】
(11)前記情報処理システムにおいて、前記要素は、前記観測を要する事象の種類に応じて定められる特定の種類のセンサである、情報処理システム。
【0130】
このような態様によれば、事象の状況をより高い精度で把握させることができる。
【0131】
(12)前記情報処理システムにおいて、前記要素は、前記観測を要する事象の種類に応じて決まる最適な観測角度と観測手段の観測方向との近さである、情報処理システム。
【0132】
このような態様によれば、事象の状況がより正確に把握されるようにすることができる。
もちろん、この限りではない。
また、上述した実施形態及び変形例を任意に組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0133】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0134】
1 :事象観測システム
2 :通信回線
3 :観測衛星
4 :衛星コントロールシステム
10 :トリガー情報生成サーバ
20 :セレクタマネジメントシステムサーバ
30 :ユーザ端末
111 :観測情報取得部
112 :予測情報取得部
113 :トリガー情報生成部
114 :トリガー情報出力部
211 :トリガー情報取得部
212 :制約情報取得部
213 :指標算出部
214 :指標出力部
215 :観測手段決定部
216 :観測依頼部
311 :指標表示部
312 :決定受付部
313 :結果通知部
【要約】      (修正有)
【課題】事象の観測手段を有効利用する情報処理システムを提供する。
【解決手段】事象観測システム1において、第1取得部と、第2取得部とを備えるトリガー情報生成サーバ及び算出部を備えるセレクタマネジメントシステムサーバを含む。第1取得部は、観測を要する事象が発生する地域及び時期を示すトリガー情報を取得する。第2取得部は、事象を観測可能な観測手段の観測上の制約を示す制約情報を取得する。制約情報は、少なくとも地理的及び時間的な制約を示す。算出部は、取得されたトリガー情報に基づき、取得された制約情報が示す制約のもと観測可能な範囲のうち実際の観測で用いる実測範囲の候補の評価を示す指標を算出する。観測可能な範囲は、地理的な範囲及び時間的な範囲である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8