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特許7246663情報の長期記憶方法および同方法に用いる記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】情報の長期記憶方法および同方法に用いる記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/0045 20060101AFI20230320BHJP
   G11B 7/0033 20060101ALI20230320BHJP
   G11B 7/24035 20130101ALI20230320BHJP
   G11B 7/24047 20130101ALI20230320BHJP
   G11B 7/243 20130101ALI20230320BHJP
   G11B 7/253 20130101ALI20230320BHJP
【FI】
G11B7/0045 Z
G11B7/0033
G11B7/24035
G11B7/24047
G11B7/243
G11B7/253
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022509114
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019071805
(87)【国際公開番号】W WO2021028035
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522055832
【氏名又は名称】セラミック・データ・ソリューションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CERAMIC DATA SOLUTIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】クンツェ・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】プフラウム・クリスティアン
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-062981(JP,A)
【文献】特開2010-192908(JP,A)
【文献】国際公開第03/088235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/0045
G11B 7/0033
G11B 7/24035
G11B 7/24047
G11B 7/243
G11B 7/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報の長期記憶方法であって、
セラミック基板を準備するステップと、
前記セラミック基板に、前記セラミック基板の材料とは異なる第2材料の層をコーティングするステップであって、前記層の厚さが10μm以下である、ステップと、
コーティングされた前記セラミック基板に対して焼戻しを行い、書き込み可能なプレートを形成するステップと、
レーザおよび/または集束粒子ビームにより前記書き込み可能なプレート上に情報を符号化して、前記書き込み可能なプレートの局所領域を加工するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記セラミック基板が酸化物系セラミックスまたは非酸化物系セラミックスから選択されるセラミック材料を含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記セラミック基板が、Ni、Cr、Co、Fe、W、Moのうちの一種またはそれらの組み合わせから選択される金属を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記セラミック材料および前記金属が、金属基複合材料を構成する、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、前記第2材料が金属またはセラミック材料の少なくとも一種を含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工は、前記局所領域の加熱、分解、酸化、アブレーション、および/もしくは気化を含み、ならびに/または前記第2材料の層が、少なくとも部分的に、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域から除去される、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、コーティングされた前記セラミック基板の焼戻しにより、前記セラミック基板と前記第2材料の層との間に焼結インターフェースが形成される、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において、コーティングされた前記セラミック基板の焼戻しにより、少なくとも前記第2材料の層の最も上側の副層が酸化され、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工により、酸化した前記副層が、少なくとも部分的に、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域から除去される、方法。
【請求項9】
情報の長期記憶に用いる情報記憶媒体であって、
書き込み可能なプレートを備え、
前記書き込み可能なプレートは、第2材料の層でコーティングされたセラミック基板、および前記セラミック基板と前記第2材料の層との間の焼結インターフェースを含み、
前記第2材料は、前記セラミック基板の材料とは異なり、
前記焼結インターフェースは、前記基板の材料および前記第2材料の両方からの少なくとも一種の元素を含み、
前記第2材料の層の厚さは10μm以下である、
情報記憶媒体。
【請求項10】
請求項9に記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板が、A1、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、VO3のうちの一種またはその組み合わせを、少なくとも90重量%含む、情報記憶媒体。
【請求項11】
請求項9に記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板が、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、および金属ケイ化物のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%含む、情報記憶媒体。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の情報記憶媒体において、前記第2材料が、少なくとも一種の金属またはセラミック材料を含む、情報記憶媒体。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の情報記憶媒体において、
さらに、前記第2材料の層の上部に酸化物層を含み、
前記酸化物層が、前記第2材料の一種以上の酸化物を含む、情報記憶媒体。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一項に記載の情報記憶媒体において、前記情報記憶媒体が、さらに、前記書き込み可能なプレート上に、前記第2材料の局所領域および/または前記酸化物の形態で符号化された情報を含む、情報記憶媒体。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一項に記載の情報記憶媒体において、前記書き込み可能なプレートの領域が、1cm当たり少なくとも1キロバイトの情報を含む、情報記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の長期記憶方法および長期記憶用の情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、さまざまな種類の情報記憶オプションが存在し、それらのオプションから選択することができる。デジタル時代の到来に伴い、安価で効率のよい情報記憶システムに対するニーズが高まるとともに、数多くの新たなテクノロジーが出現した。しかし、情報記憶メカニズムの急増は、予期しない特定の結果をもたらした。今日の情報記憶システムは、極めて脆弱であり損傷による影響を受けやすい。ハードドライブや光学ディスクなどの記憶媒体の寿命は、ほんの数十年しかなく、それも記憶媒体が適切に保存され管理された場合のみである。紙やマイクロフィルムなどといった、より従来的な技術でも、寿命は最も良好な条件下で数世紀に過ぎない。これらの情報記憶技術はいずれも、熱や、水分、酸などに弱く、容易に劣化して情報を失ってしまう可能性がある。
【0003】
データ記憶の必要性が急激に高まるにつれて、データ記憶に用いられる方法は、より破壊されやすく、時間の経過による影響を受けやすいものになってきた。しかし、これから先の世代のために、多様な情報を自然劣化に抗して保存し情報を確実に存続させる必要がある。例えば、太陽による強力な電磁放射などの自然災害の場合には、膨大な量のデータが損傷し、または破壊される可能性がある。したがって、環境の悪化に耐え、かつ、それにより長期間にわたって情報を記憶できるようにした情報記憶技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、長期間の情報記憶のための方法および媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、独立請求項の構成により達成される。従属請求項には、好適な実施形態が記載されている。
【0006】
本発明は、第1の態様によると、情報の長期記憶方法に関する。前記方法は、セラミック基板を準備するステップと、前記セラミック基板に、厚さ10μm以下の第2材料の層をコーティングするステップと、コーティングされた前記セラミック基板に対して焼戻しを行い、書き込み可能なプレートを形成するステップと、例えば、レーザまたは集束粒子ビーム(例えば、集束イオンビームや集束電子ビームなど)を用いて前記書き込み可能なプレート上に情報を符号化して、前記書き込み可能なプレートの局所領域を加工するステップとを含む。
【0007】
前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工には、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加熱、分解、酸化、アブレーション、および/または気化が含まれてもよい。レーザが使用される場合、前記レーザは、通常、レーザビームの照射領域を加熱することで、当該照射領域内または当該領域付近の材料の分解、酸化、アブレーション、および/または気化を生じさせ得る。集束粒子ビームの場合、他のメカニズムが関係し得る。例えば、集束イオンビームの照射は、照射領域からの原子のアブレーションを直接引き起こし得る。
【0008】
前記書き込み可能なプレートの前記局所領域を加工することにより、前記書き込み可能なプレート上に情報を符号化する。当該符号化は、様々な物理的および/または化学的な処理に基づいて行うことができる。好ましくは、前記加工により、前記局所領域が周囲の材料から区別可能となる。いくつかの用途では、これには、光学的に区別可能であることが含まれ得る。ただし、その他の場合(特に、符号化された構造体が小さすぎる場合)、前記局所領域は、例えば、走査電子顕微鏡を用いることでしか、または他の物理的パラメータ(磁気特性、誘電特性、または導電特性など)の変化を測定することでしか、周囲の材料から区別できないこともある。
【0009】
「光学的に区別可能」という用語は、色および/または明暗および/または反射のコントラストにより肉眼で区別可能であることに関係し得る。ただし、この用語には、赤外線および/または紫外線スペクトルなど、可視スペクトルの範囲外の光学スペクトルにおいて光学的な差異がある場合も含まれる。その場合、前記局所領域は、スペクトルのそれぞれの部分において感度を有する光学的なリーダまたはスキャナにより、光学的に区別可能であり得る。光学的な区別可能性は、ウェーバーコントラストを用いて測定してもよく、前記書き込み可能なプレート上に符号化された情報のウェーバーコントラスト比は、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%、さらに好ましくは少なくとも5%である。高集束粒子ビームなどにより形成された200nm未満の構造体については、紫外線スペクトルでも十分な結果が得られないこともあり得る。これらの場合、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、ナノメートルレベルで符号化された情報をスキャンしてもよい。その場合、復号のために、光学パラメータ以外のパラメータ(磁気特性、誘電特性、または導電特性など)が測定され、ウェーバーコントラストが同様に適用され得る。例えば、物理的パラメータpを符号化に用いることが好ましい。その場合、前記書き込み可能なプレート全体に対するパラメータpの最小値および最大値をそれぞれpminおよびpmaxとしたとき、1-pmin/pmaxが少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%、さらに好ましくは少なくとも5%であることが好ましい。
【0010】
前記第2材料の層は、好ましくは、焼戻し中に、前記セラミック基板と前記第2材料の層との間に強固な結合が実現されるように、前記セラミック基板に直接コーティングされ、つまり、中間層が設けられることなくコーティングされている。ただし、焼戻しにより、前記セラミック基板と前記第2材料の層との間に焼結インターフェースが形成されてもよい。前記焼結インターフェースは、前記基板の材料および前記第2材料の両方から少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。これは、2つの隣接する層の一方からの一種以上の元素が、2つの隣接する層の他方へと拡散し得るからである。前記焼結インターフェースが存在することにより、前記セラミック基板と前記第2材料の層との間の結合がさらに強化され得る。
【0011】
前記第2材料の層は、好ましくは連続層であり、好ましくは、前記セラミック基板の大部分(例えば、少なくとも80%、または少なくとも90%)にわたって延びており、より好ましくは前記セラミック基板全体にわたって延びている。これにより、前記局所領域と前記基板の大部分または全体との間の光学的コントラストを一様にすることができる。好ましくは、前記第2材料は、前記セラミック基板の材料とは異なる。すなわち、前記第2材料は、前記セラミック基板の材料とは異なる元素組成を有していてもよく、前記第2材料と前記セラミック基板は、その微細構造(結晶化状態など)において異なる。ただし、本発明は、前記局所領域の加工後において光学的コントラストがあることを要求しているに過ぎない。したがって、加工後の材料が、周囲の材料から光学的に区別可能であれば十分であり得る。ただし、場合によっては、前記光学的コントラストは、前記局所領域の材料を除去することで生じさせてもよい。当業者であれば、前記コントラストは、上記のような他の物理的パラメータによっても実現され得るということを理解できるであろう。
【0012】
焼戻しは、セラミックスや金属などの特定の材料に対して行われ、その材料の基本的な物理的性質または化学的性質を変化させることで耐久性を向上させることができる処理である。前記焼戻し処理は、前記第2材料を前記セラミック基板に恒久的に固定することに寄与し得る。場合によっては、前記第2材料の層の一部が、下層のセラミック基板と化学結合(例えば、金属間結合やセラミック間結合など)を形成し得る。焼戻しは、基板と第2材料との間の密着性を向上させ、前記第2材料の層の硬度を少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%向上させ得る。さらに、焼戻しにより、上述のとおり、焼結インターフェースを形成し得る。
【0013】
酸素を含む大気下で焼戻しを行う場合、前記第2材料の層のうち、酸素に曝される表面または最も上側の副層が、少なくとも部分的に、酸化されてもよい。このようにして、前記第2材料の層の上部に、金属酸化物層が形成されてもよい。これにより、硬度および/または融点および/または腐食環境への耐性をさらに向上させ得る。
【0014】
十分なパワーのレーザまたは集束粒子ビーム(例えば、集束イオンビームや集束電子ビーム)を用いて、前記第2材料(および任意で、前記金属酸化物層)の局所領域を、好ましくは、周囲の材料部分から区別可能となるように変化させることが可能である。前記第2材料に用いる具体的な材料に応じて、前記局所領域を、照射されるレーザ光または粒子ビームにより、加熱、分解、酸化、アブレート、および/または気化させてもよい。このように、厚さ10μm未満の第2材料の層であることにより、これらの局所領域を、レーザ光または粒子ビームによって容易かつ速やかに変化させることが可能である。実験において、厚さ10μmを超える層を用いた場合、情報を精密に符号化することがかなり難しくなることが判明した。ただし、本発明の他の態様によると、前記第2材料の層の厚さは10μmを超える。
【0015】
本明細書に記載されるように、書き込み可能なプレートに、第2材料の層がコーティングされた焼戻しセラミック基板を設けたことにより、当該書き込み可能なプレート上への情報記憶が、水分、電場/磁場、酸性物質、腐食性物質などに対して高い耐性を有するようにすることができ、それにより、符号化が行われた前記書き込み可能なプレートが、一般的に用いられる他の情報記憶媒体では得られない耐久性を提供することができる。
【0016】
好ましくは、前記情報の長期記憶方法における前記セラミック基板は、酸化物系セラミックスを含み、より好ましくは、前記セラミック基板が、Al、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、V、もしくは任意の他の酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含む。これらの材料は、様々な状況下で特に耐久性が高く、かつ/または環境の悪化に耐え得るとして知られている。よって、これらの材料は、様々な条件下での長期記憶に特に適している。特に好適には、前記セラミック基板が、Al、ZrO、ThO、および/またはMgOのうちの一種またはそれらの組み合わせを含む。
【0017】
好ましくは、前記セラミック基板が、非酸化物系セラミックスを含み、より好ましくは、前記セラミック基板が、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属炭化物;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;およびTiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物、もしくは任意の他の非酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含む。これらの材料は、様々な状況下で特に耐久性が高く、かつ/または環境の悪化に耐え得るとして知られている。よって、これらの材料は、様々な条件下での長期記憶に特に適している。特に好適には、前記セラミック基板が、BN、CrSi、SiC、および/またはSiBのうちの一種またはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
好ましくは、前記セラミック基板が、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、もしくは融点が1,400℃を超える他の金属のうちの一種またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記セラミック材料および前記金属が、金属基複合材料を構成しており、前記セラミック材料が、前記金属または金属合金中で分散している。好ましくは、前記金属が、前記セラミック基板(つまり、金属基複合材料)の5~30重量%であり、好ましくは10~20重量%である。特に好適な金属基複合材料としては、WC/Co-Ni-Mo、BN/Co-Ni-Mo、TiN/Co-Ni-Mo、および/またはSiC/Co-Ni-Moである。
【0019】
好ましくは、前記第2材料が、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、Vなどの金属;または、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属炭化物;A1、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、Vなどの金属酸化物;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物などのセラミック材料、または任意の他のセラミック材料のうちの少なくとも一種を含み、好ましくは、前記第2材料が、CrNおよび/またはCrAlNを含む。これらの材料は、十分な硬度と、環境の悪化への耐性を与える。さらに、これらの材料は、下層のセラミック基板に対して十分な視覚的コントラストを与えることができる。また、実験により、これらの材料は、焼戻しが行われると、上記の基板に強く結合することが示された。このようにして、前記層と前記基板との間に、耐久性が高く恒久的な結合を実現し得る。特に好適には、前記第2材料が、Co、Ni、BC、HfC、Cr、ZrB、CrB、SiB、Si、ThN、CrN、および/またはCrAlNのうちの一種またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
本発明においては、様々な材料特性が、重要な役割を果たし得る。その一つとして、前記基板および前記コーティング層の材料はいずれも、十分に丈夫で、安定かつ耐久性を有するものであることが必要である。また、前記コーティング層と前記基板の材料との間に、強固な結合または接合が求められる。加えて、前記第2材料の層は、本明細書で述べた1つ以上の手法を用いた加工に適している必要がある。そして、2つの材料を用いて十分なコントラストが得られると好都合である。これらの制約を全て考慮すると、特に好適な材料の組み合わせは、Al/CrN、Al/Co、ZrO/ZrB、A1/SiC、SiB/Cr、SiC/HfC、BN/ZrB、BN/ZrB、BN/BC、BN/ThNおよびCrSi/Siである。
【0021】
一般に、薄い皮膜を実現するのに適した任意の手法を用いて、前記セラミック基板に前記第2材料の層をコーティングすることができ、任意の手法としては、例えば、物理蒸着、スパッタリング、化学蒸着、または任意の他の薄膜コーティング法が挙げられる。好ましくは、物理蒸着により、前記セラミック基板に前記第2材料の層をコーティングする。これにより、特に、符号化された情報として誤って解され得る欠陥を生じさせることなく、前記基板を連続的に覆う極めて薄いコーティング層を確実に得ることが可能である。上記の材料のうちのいくつかに対しては、PVDを用いることが難しい場合もあるので、物理蒸着時に、前記セラミック基板が、前記第2材料の原料と導電性プレートおよび/または線材格子との中間に配置されることが好ましい。前記セラミック基板の後ろに配置されるプレートまたは格子は、第2材料の蒸気を案内して、(非導電性の)セラミック基板に付着させることを促進する。
【0022】
好ましくは、前記第2材料の層の厚さが、10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。
【0023】
薄い第2材料の層を設けることで、レーザまたは粒子ビームによる前記第2材料の局所領域の除去を、より速やか且つ効果的に行い得る。また、前記第2材料の層が薄いほど、はるかにより小さな局所領域をより正確に変化させ得る。このようにして、面積当たりの情報量を向上させ得る。
【0024】
好ましくは、コーティングされた前記セラミック基板の焼戻しは、コーティングされた前記セラミック基板を200℃~4,000℃の範囲、より好ましくは1,000℃~2,000℃の範囲内の温度まで加熱することを含む。前記焼戻し処理は、少なくとも10K/時間で温度を上昇させる加熱フェーズと、ピーク温度を少なくとも1分の間持続させる安定フェーズと、そして、少なくとも10K/時間で温度を低下させる冷却フェーズとを含んでいてもよい。前記焼戻し処理は、前記セラミック基板を硬化させること、および/または前記第2材料を前記セラミック基板に恒久的に固定することに寄与し得る。
【0025】
好ましくは、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域は、前記第2材料の前記局所領域が、少なくとも3,000℃、さらに好ましくは少なくとも3,200℃、最も好ましくは少なくとも3,500℃、最も好ましくは少なくとも4,000℃まで加熱されるように、少なくとも前記第2材料の融点まで加熱される。書き込み可能なテーブルの局所領域をレーザまたは粒子ビームによりアブレートすることにより、下層のセラミック基板が現れ、加工された領域が、前記書き込み可能なプレートの残り部分に対して(光学的に)区別可能なコントラストを有し得る。
【0026】
好ましくは、前記レーザが、10nm~30μmの範囲、好ましくは100nm~2,000nmの範囲、より好ましくは200nm~1,500nmの範囲の波長を有するレーザ光を生成するように構成されている。
【0027】
好ましくは、前記レーザが発する前記レーザ光の最小焦点径が、50μm以下であり、より好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下である。焦点径が小さいことにより、前記書き込み可能なプレート上に高密度で情報を符号化することが可能である。
【0028】
好ましくは、情報の符号化に、超短パルスレーザ(フェムト秒またはアット秒パルス)が用いられる。これにより、最小焦点径を10μm以下とし、構造体の幅を5μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下とすることが可能である。
【0029】
好ましくは、前記集束粒子ビーム装置が発する粒子ビームの最小焦点径は、5μm以下であり、より好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下である。極めて小さい焦点径により、前記書き込み可能なプレート上に極めて高い密度で情報を符号化することが可能である。
【0030】
好ましくは、前記方法は、さらに、前記書き込み可能なプレート上に符号化された情報を読み取るステップを含み、より好ましくは、デジタルスキャナ、レーザ走査顕微鏡、または走査電子顕微鏡を用いて、前記書き込み可能なプレート上に符号化された情報を読み取るステップを含む。
【0031】
好ましくは、前記情報が、アナログ形式で符号化され、より好ましくは人間が読み取れる形式で、最も好ましくは文字、シンボル、写真、図形、画像、グラフィックス、および/または他の形態を用いて符号化される。人間が読み取れる情報であることにより、科学技術によらずとも利用できるという効果が得られる。
【0032】
好ましくは、情報が、コンピュータ読み取り可能な形式で符号化され、より好ましくは、前記情報が、デジタル形式で符号化され、さらに好ましくは、前記情報が、QRコード(登録商標)および/またはiQRコード(登録商標)として、かつ/または任意の他のデジタルコード化および暗号化方法を用いて符号化される。コンピュータ読み取り可能な情報であることで、より小さい領域内に、より大量のデータを記憶するという効果が得られ、かつ、現代または未来の技術と適合可能である。
【0033】
好ましくは、前記書き込み可能なプレートの領域が、1cm当たり少なくとも1キロバイトの情報、より好ましくは1cm当たり少なくとも10キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも100キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも1メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも10メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも100メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも1ギガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも10ギガバイトの情報を含む。情報記憶密度が高められたことにより、大量の情報を記憶することが可能である。
【0034】
本発明は、第2の態様によると、情報の長期記憶方法であって、タングステン基板を準備するステップと、前記タングステン基板に、厚さ10μm以下の第2材料の層をコーティングするステップと、コーティングされた前記基板に対して焼戻しを行い、書き込み可能なプレートを形成するステップと、例えば、レーザまたは集束粒子ビーム(例えば、集束イオンビームや集束電子ビームなど)を用いて前記書き込み可能なプレート上に情報を符号化して、前記書き込み可能なプレートの局所領域を加工するステップとを含む方法に関する。
【0035】
Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、または1,400℃を超える高融点を有する他の金属の合金は極めて耐久性の高い材料であるので、基板材料としてNi、Cr、Co、Fe、W、Mo、または1,400℃を超える高融点を有する他の金属の合金を用いることによっても、前記セラミック基板について上述した効果を達成し得る。第1の態様に係るセラミック基板を用いた方法について上述した構成はいずれも、本発明の第2の態様においても、単に前記セラミック基板に代えて、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、または融点が1,400℃を超える他の金属の合金を基板とするだけで採用し得る。
【0036】
本発明は、第3の態様によると、情報の長期記憶に用いる情報記憶媒体であって、書き込み可能なプレートを備え、前記書き込み可能なプレートは、第2材料の層でコーティングされたセラミック基板、および前記セラミック基板と前記第2材料の層との間の焼結インターフェースを含み、前記第2材料は、前記セラミック基板の材料とは異なり、前記焼結インターフェースは、前記基板の材料および前記第2材料の両方から少なくとも一種の元素を含み、前記第2材料の層の厚さは10μm以下である、情報記憶媒体に関する。
【0037】
好ましくは、前記情報記憶媒体の前記セラミック基板が、酸化物系セラミックスを含み、より好ましくは、前記セラミック基板が、A1、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、V、もしくは任意の他の酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%含む。
【0038】
好ましくは、前記情報記憶媒体の前記セラミック基板が、非酸化物系セラミックスを含み、より好ましくは、前記セラミック基板が、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属炭化物;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物、もしくは任意の他の非酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%を含む。
【0039】
特に好適には、前記セラミック基板が、BN、CrSi、SiC、および/またはSiBのうちの一種またはそれらの組み合わせを含む。
【0040】
好ましくは、前記セラミック基板が、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、もしくは融点が1,400℃を超える他の金属のうちの一種またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記セラミック材料および前記金属が、金属基複合材料を構成しており、前記セラミック材料が、前記金属または金属合金中で分散している。好ましくは、前記金属が、前記セラミック基板(つまり、金属基複合材料)の5~30重量%であり、好ましくは10~20重量%である。特に好適な金属基複合材料としては、WC/Co-Ni-Mo、BN/Co-Ni-Mo、TiN/Co-Ni-Mo、および/またはSiC/Co-Ni-Moである。
【0041】
好ましくは、前記情報記憶媒体の前記第2材料が、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、Vなどの金属;または、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属炭化物;A1、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、Vなどの金属酸化物;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物、または任意の他のセラミック材料のうちの少なくとも一種を含み、好ましくは、前記第2材料が、CrNおよび/またはCrAlNを含む。
【0042】
好ましくは、前記第2材料の層の厚さが、10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。
【0043】
好ましくは、前記情報記憶媒体が、さらに、前記書き込み可能なプレート上に、前記第2材料の局所領域の形態で符号化された情報を含み、好ましくは、前記局所領域は、周囲の前記第2材料から区別可能である。前記書き込み可能なプレートは、その表面に情報が符号化された状態で、または情報が符号化されていない状態で、長期間保管することが可能である。
【0044】
好ましくは、前記第2材料の局所領域が、レーザまたは粒子ビームで処理されている。前記第2材料に対するレーザまたは粒子ビームによるアブレーションは、局所領域から当該第2材料を完全に除去することが可能である。これにより、加工された領域と周囲の第2材料との間に、(光学的に)区別可能なコントラストを得ることができる。
【0045】
好ましくは、情報は、前記書き込み可能なプレート上において情報ブロックに分散されており、各ブロックは100mm×100mm以下であり、より好ましくは24mm×36mm以下、より好ましくは10mm×10mm以下、より好ましくは1mm×1mm以下、より好ましくは0.1mm×0.1mm以下である。情報ブロックは、情報の体系化を促進し、デジタルスキャナにより容易に読み取り可能であるように情報を示すことができる。
【0046】
好ましくは、前記書き込み可能なプレートの領域が、1cm当たり少なくとも1キロバイトの情報、より好ましくは1cm当たり少なくとも10キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも100キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも1メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも10メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも100メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも1ギガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも10ギガバイトの情報を含む。前記書き込み可能なプレート上における情報密度を高くすることで、プレート当たりに、より多くの情報を記憶することが可能となり、製造コストを低減することが可能である。
【0047】
好ましくは、前記セラミック基板は、タブレット形状またはコンピュータ読み取り可能なディスク形状である。タブレット形状またはコンピュータ読み取り可能なディスク形状とすることにより、コンピュータまたはデジタルスキャナが、符号化された情報を容易に読み取ることができ、既存のスキャンシステムと適合可能とすることが可能である。
【0048】
本発明は、第4の態様によると、情報の長期記憶に用いる情報記憶媒体であって、書き込み可能なプレートを備え、前記書き込み可能なプレートは、第2材料の層でコーティングされたタングステン基板、および前記タングステン基板と前記第2材料の層との間の焼結インターフェースを含み、前記第2材料は、前記基板の材料とは異なり、前記焼結インターフェースは、前記基板の材料および前記第2材料の両方から少なくとも一種の元素を含み、前記第2材料の層の厚さは10μm以下である、情報記憶媒体に関する。
【0049】
Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、または1,400℃を超える高融点を有する他の金属の合金は極めて耐久性の高い材料であるので、基板材料としてNi、Cr、Co、Fe、W、Mo、または1,400℃を超える高融点を有する他の金属の合金を用いることによっても、前記セラミック基板について上述した効果を達成し得る。第3の態様に係るセラミック基板を用いた情報記憶媒体について上述した構成はいずれも、本発明の第4の態様においても、単に前記セラミック基板に代えて、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、または1,400℃を超える高融点を有する他の金属の合金を基板とするだけで採用し得る。
【0050】
本発明は、第5の態様によると、長期間の情報記憶に用いる前記情報記憶媒体の使用に関する。
【0051】
好ましくは、使用時に、前記書き込み可能なプレートが、少なくとも1000年、より好ましくは少なくとも10,000年、さらに好ましくは少なくとも100,000年の期間にわたって保存される。
【0052】
以下では、本発明の主題について、添付の図面に示された好適な例示的実施形態を参照しつつ、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】情報の長期記憶に用いる情報記憶媒体の模式図である。
図2】セラミック基板の物理蒸着コーティング処理の一例を示す模式図である。
図3】書き込み可能なプレートに、レーザを用いて情報を符号化する一例を示す模式的な斜視図である。
図4】実施例に係る刻印結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
原則として、図面において、同じ部分には同一の符号が付されている。
【0055】
図1には、本発明に係る情報記憶媒体100が模式的に示されている。情報記憶媒体100は、書き込み可能なプレート110を備える。この例では、書き込み可能なプレート110には、情報120が符号化されている。
【0056】
ここで、このような情報記憶媒体100を作製するための、情報の長期記憶方法について説明する。まず、セラミック基板150(図3を参照)を準備し、セラミック基板150に第2材料170の層をコーティングする。第2材料170の層の厚さは、50μm以下である。コーティングを行った後、セラミック基板150および第2材料170に対して焼戻し処理を施し、書き込み可能なプレート110を形成する。前記書き込み可能なプレートは、使用できる状態になるまで保管されてもよいし、続けて、レーザ190等を用いて情報120が符号化されてもよい。レーザ190は、第2材料170の層へと向けられて、このレーザビームの光線が照射された第2材料170のうちの局所領域を、例えば加熱することにより、当該局所領域が、周囲の第2材料170から、例えば光学的に区別可能になる。以下で、この方法について、より詳細に説明する。
【0057】
最初に提供されるセラミック基板150は、書き込み可能なプレート110の重量の大半を占める材料であってもよい。セラミック基板150に対して、複数の異なる材料を用いてもよい。特定の形態では、セラミック基板150は、A1、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、V、または任意の他の酸化物系セラミック材料のうちの少なくとも一種を含む酸化物系セラミックスを含む。代替的に、前記セラミック基板は、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属炭化物;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物、または任意の他の非酸化物系セラミック材料のうちの少なくとも一種を含む非酸化物系セラミックスを含む。前記酸化物系または非酸化物系セラミックスの存在量は、変えることができる。好ましくは、酸化物系または非酸化物系セラミックスの量は、セラミック基板150の少なくとも90重量%としてもよい。より好ましくは、酸化物系または非酸化物系セラミック基板の量は、セラミック基板150の少なくとも95重量%としてもよい。好ましい一形態では、セラミック基板150は少なくとも90重量%のAlを含む。
【0058】
第2材料170は、セラミック基板150上の層として形成される。第2材料170の層は、セラミック基板150の厚さに比べて薄い層であり、第2の層170は厚くても50μmである。第2材料170は、主に、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、Vなどの金属;CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al、VC、ZrC、HfC、ThC、BC、SiCなどの金属炭化物;Al、TiO、SiO、ZrO、ThO、MgO、Cr、Zr、Vなどの金属酸化物;TiB、ZrB、CrB、VB、SiB、ThB、HfB、WB、WBなどの金属ホウ化物;TiSi、ZrSi、MoSi、WSi、PtSi、MgSiなどの金属ケイ化物、または任意の他のセラミック材料のうちの少なくとも一種を含んでいてもよく、好ましくは、前記第2材料は、CrNおよび/またはCrAlNを含む。
【0059】
好ましい一形態では、第2材料170の層は、主に、CrNおよび/またはCrAlNを含む。重要となるのは、第2の層170に用いられる材料が、焼戻し後のセラミック基板150の材料に対して、十分な程度の、例えば光学的コントラストを与えることである。
【0060】
前記光学的コントラストは、人間の観測者に、色および/または明度として視認できる程度であってもよい。代替的に、前記光学的コントラストは、自動システムにより、非可視領域の波長で検出されてもよい。この場合、前記局所領域は、スペクトルのそれぞれの部分において感度を有する光学的なリーダまたはスキャナにより、光学的に区別可能であってもよい。前記光学的コントラストは、ウェーバーコントラストを用いて測定してもよく、前記書き込み可能なプレート上に符号化された情報のウェーバーコントラスト比は、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%である。ただし、その他の場合(特に、符号化された構造体が小さすぎる場合)、前記局所領域は、例えば、走査電子顕微鏡を用いることでしか、または他の物理的パラメータの変化を測定することでしか、周囲の材料から区別できないこともある。
【0061】
図2には、物理蒸着(PVD)を用いてセラミック基板150に第2材料170をコーティングする例示的な方法が示されている。PVD処理において、第2材料の原料160と共に、セラミック基板150を物理蒸着チャンバに入れる。物理蒸着チャンバを真空引きし、当該チャンバ内の第2材料162の大部分が蒸発または昇華するまで第2材料の原料160を加熱する。これにより、第2材料の浮遊粒子164が、セラミック基板150の表面152に接触して付着するまで、物理蒸着チャンバ内で分散する。
【0062】
物理蒸着は、金属基板のコーティングに一般的に用いられる方法であるが、セラミック基板のコーティングでは、粒子を付着させることが難しいと分かることもあり得る。よって、前記セラミック基板の表面152に対する第2材料の粒子164の付着を向上させるために、導電性の金網または導電性の金属板180をセラミック基板150の向こう側に配置して、セラミック基板150を、金網180と第2材料の原料160との間に置いてもよい。このような導電性の網/板180は、電流を導通するときに、第2材料164のイオン化された粒子を引き付けることができ、これにより、前記イオン化された粒子は、セラミック基板150の表面152に衝突し、当該表面で保持されて、セラミック基板の表面152に付着する。セラミック基板の複数の異なる表面をコーティングするために、このコーティング処理を繰り返してもよい。
【0063】
セラミック基板150上への第2材料170の層の堆積は、スパッタリング法や昇華サンドイッチ法などの他のコーティング法を用いて行ってもよい。基本的に、最大で厚さ50μmの第2材料170の層を作製可能な任意の方法を用いることができる。好ましくは、前記第2材料の層の厚さは、最大で10μmであってもよい。より好ましくは、第2材料170の最大厚さは5μmであってもよい。さらに好ましくは、第2材料170の最大厚さは1μmであってもよく、さらに好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下であってもよい。第2材料170の層が薄いと、レーザまたは粒子ビームによる書き込み可能なプレート110のアブレーションが容易になり、符号化処理が早く、エネルギー消費の少ないものとなり得るので、有利である。第2材料170は、必ずしもセラミック基板150全体を覆っていなくてもよい。代わりに、セラミック基板150の一部またはセラミック基板150の1つの面152のみが、第2材料170でコーティングされていてもよい。
【0064】
セラミック基板150に第2材料170をコーティングした後、コーティングされた前記セラミック基板に対して焼戻し処理を行う。一般に、焼戻しは、材料の強度および/または他の性質を向上させる処理として理解されている。セラミックスの場合、焼戻しは、セラミック物品の化学成分が化学的および/または物理的変化して、当該物品が固定または硬化されるように、当該セラミック物品を加熱することを伴うことがある。コーティングされたセラミック基板の焼戻しは、コーティングされたセラミック基板150を、200℃~4000℃の範囲、好ましくは1000℃~2000℃の範囲の温度まで加熱することを含んでいてもよい。前記焼戻し処理は、少なくとも10K/時間で温度を上昇させる加熱フェーズと、ピーク温度を少なくとも1分の間持続させる安定フェーズと、そして、少なくとも10K/時間で温度を低下させる冷却フェーズとを含んでいてもよい。前記焼戻し処理は、第2材料170をセラミック基板150に恒久的に固定することに貢献し得る。場合によっては、第2材料の層170の一部が、下層のセラミック基板150への化学結合を形成し得る。第2材料170を有するセラミック基板150の焼戻し後、書き込み可能なプレート110が形成される。書き込み可能なプレート110の特性は、書き込み可能なプレート110において用いられる実際の材料(exact material)によって決まる。書き込み可能なプレート110は、この状態で保管してもよいし、直ちに情報120を符号化してもよい。
【0065】
図3には、書き込み可能なプレート110に情報を符号化する過程が示されている。符号化の間、レーザ190は、コリメートされたレーザ光を、書き込み可能なプレート110の第2材料170の層へと指向させる。前記レーザビームは、第2材料170のうち、局所領域175内にある部分を変化させ、周囲の第2材料170から(光学的に)区別可能にする。好ましくは、前記レーザまたは集束粒子ビームは、第2材料170の局所領域175を、少なくとも第2材料170の融点まで加熱する。第2材料170の融点は、その化学的組成による。好ましくは、融点を越えて局所領域175を加熱することは、前記局所領域を、少なくとも3,000℃、より好ましくは少なくとも3,200℃、さらに好ましくは少なくとも3,500℃、最も好ましくは少なくとも4,000℃まで加熱することを含んでいてもよい。これらの局所領域を上記のような高温とすることで、局所領域175内で第2材料170の急膨張を引き起こし得る。この急膨張より、局所領域175内の第2材料170をアブレートおよび/または気化させ得る。第2材料170が下層のセラミック基板150に対する光学的コントラストを与えるので、局所領域175を、レーザまたは集束粒子ビームにより、シンボル、文字、ライン、写真、図形、画像、グラフィックス、または他の形態にすることで、書き込み可能なプレート110へと情報を符号化することが可能である。好ましくは、符号化された情報120は、第2材料170の残りの部分に対して、少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%のウェーバーコントラスト比を示す。好適な形態では、焼戻し後の第2材料170は、不透明な灰色/黒色を示し、セラミック基板150は、黄色/白色を示す。このように、レーザまたは集束粒子ビームによる符号化を行った後、情報記憶媒体100は濃色の背景に対して白色の文字/シンボルを示す。
【0066】
レーザ符号化方法に適したレーザ波長としては、10nm~30μmの範囲、好ましくは100nm~2000nmの範囲、より好ましくは200nm~1500nmの範囲の波長である。さらに重要なのは、書き込み可能なプレート110に符号化できるシンボル、文字、写真、図形、画像、グラフィックス、および/または他の形態の最小サイズを決定する、レーザ光または集束粒子ビームの最小焦点径である。好ましくは、レーザまたは集束粒子ビーム190は、最小焦点径が50μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下になるように、レーザ光または集束粒子ビームの焦点を合わせることができる。このような条件下では、解像度を2,500dpiとすることができ、1cmのスペースに5,000個のシンボル/文字を符号化することが可能となる。また、これにより、1頁当たり2,000文字を含む1000頁の本(~200万個のシンボル/文字)を、1枚の20cm×20cmの書き込み可能なプレート内に印字することが可能となる。
【0067】
符号化されたテキストの読み取りは、文字/シンボルが十分に大きければ肉眼でも行うことができる。好ましくは、符号化された情報は、様々な方法の中でも、光学文字認識(OCR)などの方法により、デジタルスキャナを用いて読み取ることができる。このようなデジタルスキャナは、符号化された情報を、人間にとってより読み易い大きさに、速やか且つ正確に再現することが可能である。上述のとおり、情報120は、複数の異なる形式を用いて書き込み可能なプレート110に符号化され得る。情報120は、文字、シンボル、写真、図形、画像、グラフィックス、および/または他の形態を用いて、人間が読み取れる形式で符号化され得る。また、情報120は、例えば、QRコードやiQRコードを用いて、かつ/または任意の他のデジタルコード化および暗号化方法などを用いて、コンピュータ読み取り可能な形式で符号化され得る。このようなコンピュータ読み取り可能な符号化方法を使用することで、情報記憶媒体100の情報密度をさらに高めることが可能である。例えば、iQRコードは、1cm内に40,000文字を記憶することが可能であり、これは、20cm×20cmの書き込み可能なプレートに対して8~16メガバイトに相当する。好ましくは、前記書き込み可能なプレートは、最低でも1cm当たり1キロバイトの情報を記憶することが可能であり、より好ましくは1cm当たり少なくとも10キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも100キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも1メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも10メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも100メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも1ギガバイトの情報、さらに好ましくは1cm当たり少なくとも10ギガバイトの情報を記憶することができる。
【0068】
容易に読み取りおよび/またはスキャンができるように、情報は、前記書き込み可能なプレートにおいて個別のブロック内に符号化してもよい。図1にBとして示されているような、こうした情報のブロックは、好ましくは100mm×100mm以下であり、より好ましくは24mm×36mm以下、より好ましくは10mm×10mm以下、より好ましくは1mm×1mm以下、より好ましくは0.1mm×0.1mm以下である。
【0069】
前記書き込み可能なプレート110の形状は、ユーザのニーズおよび符号化される情報120の種類に応じて決めることができる。場合によっては、書き込み可能なプレート110は、保管のためにタブレット形状に形成することができ、好ましくは200mm×200mm以下、より好ましくは100mm×100mm以下、より好ましくは10mm×10mm以下とすることができる。その他の場合、直径30cm以下、より好ましくは12cm以下、より好ましくは8cm以下のコンピュータ読み取り可能なディスク形状が好ましいこともある。
【0070】
本発明に係る情報記憶媒体100は、環境の悪化に強く、好ましくは、情報を喪失することなく-273℃(0°K)から1200℃の温度に耐えることができる。また、情報記憶媒体100は、電磁パルス、水損、腐食、酸、および/または他の化学物質に耐え得るものである。本明細書に記載の情報記憶媒体100は、少なくとも1000年、好ましくは少なくとも10,000年、より好ましくは少なくとも100,000年の期間にわたって情報120を保存し得ると考えられる。特定の保管条件下では(地下の岩塩ドーム内での情報記憶媒体100の保管を含む)、前記情報記憶媒体は、少なくとも100万年にわたって情報を保存可能であり得る。
【0071】
以下では、特に好適な一実施例について説明する。
【0072】
CeramTec GmbH社(ドイツ)製の、少なくとも96%のAlを含むRubalit708sからなるセラミック基板(20cm×20cm)を原材料として用いた。
【0073】
前記セラミック基板のプレートの大きさを10cm×10cm、厚さを1mmとし、物理蒸着により、CrNの層をコーティングした。このために、前記セラミックプレートを、10cm×10cmのスチール製導電性プレート上に取り付けた。前記セラミックプレートを、前記導電性プレートと共に、Oerlikon Balzers AG社(リヒテンシュタイン)製の物理蒸着装置に入れた。
【0074】
その後、Oerlikon Balzers AG社のエンハンスドスパッタリング処理BALI-NIT(登録商標)CNIを用いて、処理温度を250℃未満として物理蒸着を行った。
【0075】
堆積後、前記セラミック基板の一方側(導電性プレートに面する側とは反対側)に、一定の厚さ3μmを有するCrNの層が存在していた。
【0076】
その後、コーティングされた前記セラミック基板に対して、Nabertherm GmbH社製のバッチ炉(型式“N 150/H”)内で焼戻しを行った。焼戻しのために、2時間で室温(20℃)から1,000℃まで昇温した。続いて、100K/hで1,000℃から1,200℃まで昇温し、最高温度の1,200℃を5分間維持した。その後、-200K/hで6時間にわたって前記基板を冷却した。
【0077】
焼戻し後、材料の積層体は、前記セラミック基板と、厚さ約2~2.5μmのCrNのコーティング層と、さらに厚さ約0.5~1μmのCrの金属酸化物層とを含んでいた。同様の金属酸化物層が、Z.B. Qi et al. (Thin Solid Films 544 (2013), 515-520)に記載されている。
【0078】
金属酸化物表面は、暗色の、ほとんど黒色の外観を有していた。
【0079】
Trotec Laser GmbH社(オーストリア)製のProMarker100レーザを用いて、シングルラインフォントのテキストとQRコードを、2つの上側コーティングに書き込んだ。この目的で、波長を1064nm、電力を最大5Wとした100nsのパルスを、周波数20kHzで加えた。
【0080】
焦点距離100mmのレンズにより、レーザ光の焦点を合わせた。レーザ光の焦点の幅は約25μmであり、符号化された構造体として、幅が約15μmまたは1,750dpiのマイクロインスクリプションを得た。
【0081】
符号化されたライン/表面は、明色の、ほとんど白色の外観を有しており、暗色の金属酸化物の周囲表面に対して明瞭に視認できるものであった。刻印結果の細部を示す写真が、図4に示されている。
【0082】
本発明について、図面および上記の説明において詳細に図示し説明を行ったが、このような図示および説明は、説明を目的としたもの又は一例に過ぎず、非限定的なものとして理解されるべきである。このように、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。本発明を実施する当業者であれば、図面、明細書、および添付の請求の範囲を研究することにより、開示された実施形態に対する変形例を理解でき、実現することができる。請求の範囲において、「含む」という文言は、他の要素またはステップを除外するものではない。また、単数のものとして記載されている場合でも、複数とすることを除外するものではなく、「少なくとも1つ」を意味し得る。
なお、本発明は実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
情報の長期記憶方法であって、
セラミック基板を準備するステップと、
前記セラミック基板に、前記セラミック基板の材料とは異なる第2材料の層をコーティングするステップであって、前記層の厚さが10μm以下である、ステップと、
コーティングされた前記セラミック基板に対して焼戻しを行い、書き込み可能なプレートを形成するステップと、
レーザおよび/または集束粒子ビームにより前記書き込み可能なプレート上に情報を符号化して、前記書き込み可能なプレートの局所領域を加工するステップと、
を含む方法。
[態様2]
態様1に記載の方法において、前記セラミック基板が、酸化物系セラミックスを含み、好ましくは、前記セラミック基板が、Al 、TiO 、SiO 、ZrO 、ThO 、MgO、Cr 、Zr 、V 、もしくは任意の他の酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含む、方法。
[態様3]
態様1に記載の方法において、前記セラミック基板が、非酸化物系セラミックスを含み、好ましくは、前記セラミック基板が、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si 、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al 、VC、ZrC、HfC、ThC、B C、SiCなどの金属炭化物;TiB 、ZrB 、CrB 、VB 、SiB 、ThB 、HfB 、WB 、WB などの金属ホウ化物;およびTiSi 、ZrSi 、MoSi 、WSi 、PtSi、Mg Siなどの金属ケイ化物、もしくは任意の他の非酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含む、方法。
[態様4]
態様1から3のいずれか一つに記載の方法において、前記セラミック基板が、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、もしくは融点が1,400℃を超える他の金属のうちの一種またはそれらの組み合わせを含む、方法。
[態様5]
態様4に記載の方法において、前記セラミック材料および前記金属が、金属基複合材料を構成する、方法。
[態様6]
態様4または5に記載の方法において、前記金属が、前記セラミック基板の5~30重量%であり、好ましくは10~20重量%である、方法。
[態様7]
態様4から6のいずれか一つに記載の方法において、前記セラミック基板が、WC/Co-Ni-Mo、BN/Co-Ni-Mo、TiN/Co-Ni-Mo、および/またはSiC/Co-Ni-Moを含む、方法。
[態様8]
態様1から7のいずれか一つに記載の方法において、前記第2材料が、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、Vなどの金属;または、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si 、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al 、VC、ZrC、HfC、ThC、B C、SiCなどの金属炭化物;A1 、TiO 、SiO 、ZrO 、ThO 、MgO、Cr 、Zr 、V などの金属酸化物;TiB 、ZrB 、CrB 、VB 、SiB 、ThB 、HfB 、WB 、WB などの金属ホウ化物;TiSi 、ZrSi 、MoSi 、WSi 、PtSi、Mg Siなどの金属ケイ化物などのセラミック材料、または任意の他のセラミック材料のうちの少なくとも一種を含み、好ましくは、前記第2材料が、CrNおよび/またはCrAlNを含む、方法。
[態様9]
態様1から8のいずれか一つに記載の方法において、物理蒸着、スパッタリング、化学蒸着、または任意の他の薄膜コーティング法を用いて、前記セラミック基板に前記第2材料の層をコーティングし、好ましくは、物理蒸着時に、前記セラミック基板が、前記第2材料の原料と導電性プレートおよび/または線材格子との中間に配置される、方法。
[態様10]
態様1から9のいずれか一つに記載の方法において、コーティングされた前記セラミック基板の焼戻しは、コーティングされた前記セラミック基板を200℃~4,000℃の範囲、好ましくは500℃~3,000℃の範囲、より好ましくは1,000℃~2,000℃の範囲内の温度まで加熱することを含む、方法。
[態様11]
態様1から10のいずれか一つに記載の方法において、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工は、前記局所領域を、少なくとも前記第2材料の融点まで、好ましくは少なくとも3,000℃、好ましくは少なくとも3,200℃、より好ましくは少なくとも3,500℃、最も好ましくは少なくとも4,000℃まで加熱することを含む、方法。
[態様12]
態様1から11のいずれか一つに記載の方法において、前記第2材料の層の厚さが、5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは10nm以下である、方法。
[態様13]
態様1から12のいずれか一つに記載の方法において、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工は、前記局所領域の加熱、分解、酸化、アブレーション、および/または気化を含む、方法。
[態様14]
態様1から13のいずれか一つに記載の方法において、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工により、前記第2材料の層が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域から除去される、方法。
[態様15]
態様1から14のいずれか一つに記載の方法において、コーティングされた前記セラミック基板の焼戻しにより、前記セラミック基板と前記第2材料の層との間に焼結インターフェースが形成される、方法。
[態様16]
態様15に記載の方法において、前記焼結インターフェースが、前記基板の材料および前記第2材料の両方から少なくとも一種の元素を含む、方法。
[態様17]
態様1から16のいずれか一つに記載の方法において、コーティングされた前記セラミック基板の焼戻しにより、少なくとも前記第2材料の層の最も上側の副層を酸化させる、方法。
[態様18]
態様17に記載の方法において、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域の加工により、酸化した前記副層が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記書き込み可能なプレートの前記局所領域から除去される、方法。
[態様19]
態様1から18のいずれか一つに記載の方法において、前記レーザが、10nm~30μmの範囲、好ましくは100nm~2,000nmの範囲、より好ましくは200nm~1,500nmの範囲の波長を有するレーザ光を発する、方法。
[態様20]
態様1から19のいずれか一つに記載の方法において、前記レーザ光または粒子ビームの最小焦点径が50μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下である、方法。
[態様21]
態様1から20のいずれか一つに記載の方法において、前記情報が、アナログ形式で符号化され、好ましくは人間が読み取れる形式で、好ましくは文字、シンボル、写真、図形、画像、グラフィックス、および/または他の形態を用いて符号化される、方法。
[態様22]
態様1から21のいずれか一つに記載の方法において、前記情報が、コンピュータ読み取り可能な形式で符号化され、好ましくは、前記情報が、デジタル形式で符号化され、より好ましくは、前記情報が、QRコードおよび/またはiQRコードとして、かつ/または任意の他のデジタルコード化および暗号化方法を用いて符号化される、方法。
[態様23]
態様1から22のいずれか一つに記載の方法において、前記書き込み可能なプレートの領域が、1cm 当たり少なくとも1キロバイトの情報、好ましくは1cm 当たり少なくとも10キロバイトの情報、より好ましくは1cm 当たり少なくとも100キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも1メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも10メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも100メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも1ギガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも10ギガバイトの情報を含む、方法。
[態様24]
情報の長期記憶に用いる情報記憶媒体であって、
書き込み可能なプレートを備え、
前記書き込み可能なプレートは、第2材料の層でコーティングされたセラミック基板、および前記セラミック基板と前記第2材料の層との間の焼結インターフェースを含み、
前記第2材料は、前記セラミック基板の材料とは異なり、
前記焼結インターフェースは、前記基板の材料および前記第2材料の両方からの少なくとも一種の元素を含み、
前記第2材料の層の厚さは10μm以下である、
情報記憶媒体。
[態様25]
態様24に記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板が、酸化物系セラミックスを含み、好ましくは、前記セラミック基板が、A1 、TiO 、SiO 、ZrO 、ThO 、MgO、Cr 、Zr 、V 、もしくは任意の他の酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含む、情報記憶媒体。
[態様26]
態様24に記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板が、非酸化物系セラミックスを含み、好ましくは、前記セラミック基板が、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si 、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al 、VC、ZrC、HfC、ThC、B C、SiCなどの金属炭化物;TiB 、ZrB 、CrB 、VB 、SiB 、ThB、HfB 、WB 、WB などの金属ホウ化物;TiSi 、ZrSi 、MoSi 、WSi 、PtSi、Mg Siなどの金属ケイ化物、もしくは任意の他の非酸化物系セラミック材料のうちの一種またはそれらの組み合わせを、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%含む、情報記憶媒体。
[態様27]
態様24から26のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板が、Ni、Cr、Co、Fe、W、Mo、もしくは融点が1,400℃を超える他の金属のうちの一種またはそれらの組み合わせを含む、情報記憶媒体。
[態様28]
態様27に記載の情報記憶媒体において、前記セラミック材料および前記金属が、金属基複合材料を構成する、情報記憶媒体。
[態様29]
態様27または28に記載の情報記憶媒体において、前記金属が、前記セラミック基板の5~30重量%であり、好ましくは10~20重量%である、情報記憶媒体。
[態様30]
態様27から29のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板が、WC/Co-Ni-Mo、BN/Co-Ni-Mo、TiN/Co-Ni-Mo、および/またはSiC/Co-Ni-Moを含む、情報記憶媒体。
[態様31]
態様24から30のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記第2材料が、Cr、Co、Ni、Fe、Al、Ti、Si、W、Zr、Ta、Th、Nb、Mn、Mg、Hf、Mo、Vなどの金属;または、CrN、CrAlN、TiN、TiCN、TiAlN、ZrN、AlN、VN、Si 、ThN、HfN、BNなどの金属窒化物;TiC、CrC、Al 、VC、ZrC、HfC、ThC、B C、SiCなどの金属炭化物;A1 、TiO 、SiO 、ZrO 、ThO 、MgO、Cr 、Zr 、V などの金属酸化物;TiB 、ZrB 、CrB 、VB 、SiB 、ThB 、HfB 、WB 、WB などの金属ホウ化物;TiSi 、ZrSi 、MoSi 、WSi 、PtSi、Mg Siなどの金属ケイ化物などのセラミック材料のうちの少なくとも一種を含み、好ましくは、前記第2材料が、CrNおよび/またはCrAlNを含む、情報記憶媒体。
[態様32]
態様24から31のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、
さらに、前記第2材料の層の上部に酸化物層を含み、
前記酸化物層が、好ましくは、前記第2材料の一種以上の酸化物を含む、情報記憶媒体。
[態様33]
態様24から32のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記第2材料の層の厚さが、5μm以下、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらに好ましくは10nm以下である、情報記憶媒体。
[態様34]
態様24から33のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記情報記憶媒体が、さらに、前記書き込み可能なプレート上に、前記第2材料の局所領域および/または前記酸化物の形態で符号化された情報を含む、情報記憶媒体。
[態様35]
態様34に記載の情報記憶媒体において、前記書き込み可能なプレートの領域が、1cm 当たり少なくとも1キロバイトの情報、より好ましくは1cm 当たり少なくとも10キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも100キロバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも1メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも10メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも100メガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも1ギガバイトの情報、さらに好ましくは1cm 当たり少なくとも10ギガバイトの情報を含む、情報記憶媒体。
[態様36]
態様24から35のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板、前記焼結層、および前記第2材料の層の融点が、1,000℃を越え、好ましくは1,200℃を超え、より好ましくは1,300℃を超える、情報記憶媒体。
[態様37]
態様24から36のいずれか一つに記載の情報記憶媒体において、前記セラミック基板の融点が、前記第2材料の層の融点以上である、情報記憶媒体。
[態様38]
態様24から37のいずれか一つに記載の情報記憶媒体の、長期情報記憶のための使用であって、好ましくは、前記書き込み可能なプレートが、少なくとも1,000年、より好ましくは少なくとも10,000年、さらに好ましくは少なくとも100,000年の期間にわたって保存される、使用。
図1
図2
図3
図4