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特許7246667構造部材設計方法、構造部材設計プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】構造部材設計方法、構造部材設計プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20230320BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20230320BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20230320BHJP
【FI】
E04C5/18
E04G21/12 105A
G06F30/13
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022580343
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022025987
【審査請求日】2023-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520036019
【氏名又は名称】株式会社Arent
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大北 尚永
(72)【発明者】
【氏名】丸山 篤史
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045741(JP,A)
【文献】特開2009-030403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04G 21/12
G06F 30/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物のパネルゾーンに対して接続された構造部材が有する主筋部材の接続関係を設計する構造部材設計方法であって、
前記構造物の構造を記述した設計データから前記パネルゾーンの箇所を抽出するステップ、
前記抽出したパネルゾーンに対して接続されている前記構造部材を前記設計データから抽出するステップ、
前記抽出した前記構造部材の内部に組み込まれる主筋部材の本数および配置を前記抽出した前記構造部材ごとにセットするステップ、
前記抽出した前記構造部材のうち前記主筋部材の本数および配置が同じであるものをペアリングするステップ、
前記ペアリングした前記構造部材が有する前記主筋部材を互いに接続するように前記接続関係をセットするステップ、
前記接続関係をセットするステップにおいてセットした前記接続関係にしたがって前記主筋部材を配置したと仮定したとき、前記接続関係によって接続されない前記主筋部材が互いに衝突するか否かを計算するステップ、
前記接続関係によって接続されない前記主筋部材が衝突する場合はその衝突する前記主筋部材のうち少なくともいずれかの位置を移動させることにより衝突を回避するステップ、
前記接続関係をセットした前記主筋部材の周囲に巻き付ける補強鉄筋部材を配置するステップ、
前記補強鉄筋部材の配置を調整するステップ、
を有し、
前記補強鉄筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記補強鉄筋部材を巻き付けた前記主筋部材が延伸する方向に沿って、前記補強鉄筋部材の位置を移動させる
ことを特徴とする構造部材設計方法。
【請求項2】
前記主筋部材の本数および配置をセットするステップは、
前記主筋部材の本数および配置を前記構造部材ごとに指定する指定入力をユーザから受け取る主筋部材設定画面を提示するステップ、
前記主筋部材設定画面において受け取った前記指定入力にしたがって前記主筋部材の本数および配置をセットするステップ、
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の構造部材設計方法。
【請求項3】
前記主筋部材設定画面は、
前記構造部材の断面、
前記断面上において前記主筋部材を配置可能な候補位置、
を表示するように構成されており、
前記指定入力は、前記候補位置のうち前記主筋部材を配置するものを指定する入力である
ことを特徴とする請求項2記載の構造部材設計方法。
【請求項4】
前記主筋部材設定画面は、前記断面上において配置可能な前記主筋部材のうち前記衝突を回避するステップにおいて連動して位置を移動させる2以上の連動主筋部材を指定する連動指定を受け取るように構成されており、
前記衝突を回避するステップにおいては、前記連動指定が指定する前記主筋部材の位置および移動量が互いに連動するように、前記主筋部材の位置を移動させる
ことを特徴とする請求項3記載の構造部材設計方法。
【請求項5】
前記構造部材設計方法はさらに、前記接続関係にしたがって配置した前記主筋部材の配置をさらに調整するステップを有し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいて、前記パネルゾーンに対して接続された前記パネルゾーン外の前記主筋部材の配置を調整する場合は、前記ペアリングにともなう制約条件を充足しつつ、前記主筋部材の配置を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の構造部材設計方法。
【請求項6】
前記構造部材設計方法はさらに、前記接続関係にしたがって配置した前記主筋部材の配置をさらに調整するステップを有し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記連動主筋部材を構成する前記主筋部材が前記連動を維持しつつ移動することができる移動可能方向を特定し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいて、前記連動主筋部材を構成する前記主筋部材については、前記移動可能方向においてのみ配置を移動することを許可する
ことを特徴とする請求項4記載の構造部材設計方法。
【請求項7】
前記構造部材設計方法は、コンピュータによって実行され、
前記主筋部材の配置を調整するステップは、前記主筋部材を移動させる方向を指定する移動ボタンを配置したコントロールパネルを、前記コンピュータの画面上に表示するステップを有し、
前記移動ボタンは、前記移動可能方向においてのみ有効化され、前記移動可能方向以外の方向においては無効化されていることにより、前記移動可能方向においてのみ移動を許可するように構成されている
ことを特徴とする請求項6記載の構造部材設計方法。
【請求項8】
前記移動ボタンは、無効化されている場合であっても、前記コントロールパネル上においてその無効化を解除するように指示することができるように構成されており、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、無効化が解除された前記移動ボタンを用いる場合は、前記移動可能方向以外の方向においても前記主筋部材を移動させる
ことを特徴とする請求項7記載の構造部材設計方法。
【請求項9】
前記主筋部材の配置を調整するステップは、前記主筋部材を前記画面上に表示するとともに前記画面の視点をセットするステップを有し、
前記視点をセットするステップにおいては、前記視点を変更するごとに、前記視点における前記移動可能方向を特定するとともに、特定した前記移動可能方向以外の方向においてのみ前記移動ボタンを有効化する
ことを特徴とする請求項7記載の構造部材設計方法。
【請求項10】
前記構造部材設計方法は、コンピュータによって実行され、
前記主筋部材の配置を調整するステップは、2以上の前記連動主筋部材が奥行方向において重なっている視点から前記パネルゾーンにおける前記連動主筋部材の配置を表示する奥行視点画面を、前記コンピュータの画面上に表示するステップを有し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記奥行視点画面上で前記連動主筋部材の配置を移動させるとき、前記奥行視点画面上において重なっている別の前記連動主筋部材の配置を、前記連動にしたがって併せて移動させる
ことを特徴とする請求項6記載の構造部材設計方法。
【請求項11】
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記構造部材の外周形状に沿って前記主筋部材を移動させるか、または、前記外周形状に対する垂線に沿って前記主筋部材を移動させる
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項12】
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記主筋部材のうち前記パネルゾーンを貫通する貫通主筋部材の配置を調整し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記貫通主筋部材の配置を調整する際に、前記貫通主筋部材が貫通する前記パネルゾーン内における前記主筋部材の配置を、前記貫通主筋部材と連動して移動させる
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項13】
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記主筋部材のうち、前記パネルゾーンを介して互いに接続された第1主筋部材と第2主筋部材のいずれか一方の配置を調整し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記一方の配置を調整する際に、前記第1主筋部材と前記第2主筋部材のうち他方の配置を、前記一方の配置と連動して調整する
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項14】
前記主筋部材のうち少なくともいずれかは、端部が折り曲げられたフック部分を有するフック主筋部材として構成されており、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいて、前記フック主筋部材が延伸する方向に前記フック主筋部材の配置を調整する場合は、前記フック主筋部材そのものの位置を移動させることに代えて、前記フック主筋部材の長さを調整することにより、前記フック主筋部材の配置を調整する
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項15】
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいて、前記フック主筋部材が延伸する方向に前記フック主筋部材を移動させる場合は、前記フック主筋部材の一方の端部を延伸するとともに他方の端部を短縮することにより、実質的に移動させる
ことを特徴とする請求項14記載の構造部材設計方法。
【請求項16】
前記主筋部材の配置を調整するステップは、隣接する2つの前記主筋部材のうちいずれか一方を選択し、他方を前記一方へ向かって移動させるステップを有する
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項17】
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記構造物の基礎内に配置する前記主筋部材の配置を調整し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいては、前記基礎内において前記主筋部材が移動することができる移動可能方向を特定し、
前記主筋部材の配置を調整するステップにおいて、前記基礎内に配置する前記主筋部材については、前記移動可能方向においてのみ配置を移動することを許可する
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項18】
前記構造部材設計方法は、コンピュータによって実行され、
前記主筋部材の配置を調整するステップは、
前記主筋部材を移動させる方向を指定する移動ボタンを配置したコントロールパネルを、前記コンピュータの画面上に表示するステップ、
前記基礎内に配置する前記主筋部材上の基準位置を前記画面上で選択するステップ、
前記移動可能方向以外の前記移動ボタンが押下されたとき、前記基礎の外周と前記基準位置との間の距離が短い側の前記移動ボタンが押下された場合は前記主筋部材を延長し、長い側の前記移動ボタンが押下された場合は前記主筋部材を短縮する、ステップ、
を有する
ことを特徴とする請求項17記載の構造部材設計方法。
【請求項19】
前記構造部材設計方法は、コンピュータによって実行され、
前記主筋部材の配置を調整するステップは、
前記補強鉄筋部材を移動させる方向を指定する移動ボタンを配置したコントロールパネルを、前記コンピュータの画面上に表示するステップ、
前記補強鉄筋部材を巻き付けた前記主筋部材が延伸する延伸方向においてのみ、前記移動ボタンを有効化することにより、前記延伸方向においてのみ前記補強鉄筋部材を移動することを許可するステップ、
を有する
ことを特徴とする請求項5記載の構造部材設計方法。
【請求項20】
前記主筋部材の配置を調整するステップは、互いに平行ではない方向に延伸する2つ以上の前記主筋部材がペアとなって構成された傾斜主筋部材の周りに巻き付けた前記補強鉄筋部材を移動させるステップを有し、
前記傾斜主筋部材の周りの前記補強鉄筋部材を移動させる際には、前記傾斜主筋部材の形状に合わせて前記補強鉄筋部材のサイズを変化させながら移動させる
ことを特徴とする請求項19記載の構造部材設計方法。
【請求項21】
前記構造部材は、前記構造物の柱または前記構造物の梁である
ことを特徴とする請求項1記載の構造部材設計方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項記載の構造部材設計方法をコンピュータに実行させることを特徴とする構造部材設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物のパネルゾーンに対して接続された構造部材の接続関係を設計する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を形成する柱と梁が交差する領域は、パネルゾーンと呼ばれる。パネルゾーンにおいては、柱と梁が交差することに加えて、これらの内部に配置されている主筋部材(主に鉄筋)も交差することになる。建築物を設計する際には、柱や梁などの構造部材の位置やサイズなどを設計することに加えて、これらの主筋部材の位置やサイズなどを設計することが必要である。
【0003】
下記特許文献1は、主筋を接続する方法として、『位置合わせ接続』『延長して接続』『曲げて接続』を例示している(同文献の0087~0088)。これらの接続方法は、仕口部(パネルゾーンに相当)における主筋部材の接続関係を規定する態様について説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-045741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来の設計方法においては、パネルゾーンにおいて主筋部材を相互に接続する手順を規定している。しかし、主筋部材を接続することにより他の主筋部材と衝突する場合があり、このような衝突を回避することについては十分検討されていなかった。また衝突を回避しつつ主筋部材を接続した後において、さらに補強鉄筋部材を配置するとともにその配置を再調整することがあり、そのような再調整における配置制約についても十分検討されていなかった。
【0006】
本開示は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、衝突を回避しつつ主筋部材を接続するとともに、補強鉄筋部材の配置を再調整する際の制約条件を充足することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る構造部材設計方法は、パネルゾーンに対して接続されている主筋部材を互いにペアリングする接続関係をセットし、前記接続関係を維持しながら主筋部材間の衝突を回避し、前記主筋部材の周囲に巻き付ける補強鉄筋部材を配置してその位置を前記主筋部材の延伸方向に沿って再調整する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る構造部材設計方法によれば、衝突を回避しつつ主筋部材を接続するとともに、補強鉄筋部材の配置を再調整する際の制約条件を充足することができる。本開示のその他の課題、構成、利点などについては、以下の実施形態の説明を参照することによって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る構造部材設計プログラム12を実行するコンピュータ1の構成図である。
図2】構造部材設計プログラム12の動作を説明するフローチャートである。
図3】S201において抽出するパネルゾーン301を表示する画面例である。
図4】パネルゾーン抽出部121がパネルゾーン301を抽出する手順を説明する模式図である。
図5】S203における主筋部材設定画面の例である。
図6】ユーザが主筋部材設定画面上で主筋部材の位置を指定する過程を示す模式図である。
図7】主筋部材設定画面のその他の構成要素を説明する図である。
図8】主筋部材設定画面上において柱を分割する例を示す。
図9】S206におけるマニュアル接続設定画面の例である。
図10】ユーザがマニュアル接続設定画面上で主筋部材の接続関係をセットする過程を示す模式図である。
図11】ペアリングされた主筋部材の接続関係を記述したデータの構造を示す模式図である。
図12】パネルゾーンに対して接続されている柱と梁それぞれに対してペアリングを実施する前における主筋部材の3次元モデルの例である。
図13】S207における自動配筋の結果として主筋部材が衝突する例を示す平面図である。
図14】自動配筋部126が主筋部材の衝突を回避した後の例を示す。
図15】実施形態2に係る構造部材設計プログラム12を実行するコンピュータ1の構成図である。
図16】実施形態2における構造部材設計プログラム12の動作を説明するフローチャートである。
図17】主筋位置調整部127が提供するユーザインターフェースの例である。
図18】視点変更にともなって移動ボタンの有効化/無効化が変わる様子を示す。
図19】主筋部材設定画面において連動指定されている主筋部材の例である。
図20図19に示すパネルゾーンの3次元モデルと複数方向の断面図である。
図21図20の正面図を拡大したものである。
図22図21の主筋部材を移動させた結果を示す正面図である。
図23図21図22の結果を示す上面図である。
図24】円柱状の構造部材内の主筋部材を配置調製する例を示す。
図25】円柱状の構造部材内の主筋部材を移動させた結果を示す。
図26】パネルゾーンにおいてペアリングした主筋部材の例を示す。
図27】ペアリングした主筋部材を移動させる過程を示す上面図である。
図28】フック部分を有する主筋部材2801の形状例を示す模式図である。
図29】主筋部材2801をその延伸方向において移動させる過程を示す上面図である。
図30】主筋部材2801を延伸方向に移動させる代わりに長さを調整する理由を説明する図である。
図31】吸着ボタン1701の例である。
図32】建築物の基礎内に配置されている主筋部材の配置を調整する例である。
図33】基礎内に配置されている主筋部材の長さを調整する例である。
図34】基礎が四角形ではない場合における主筋部材の配置を示す。
図35】せん断補強筋の例を示す3次元モデルである。
図36】せん断補強筋の位置を調整する例を示す。
図37】斜めに延伸する主筋部材の周りに巻き付けたせん断補強筋の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本開示の実施形態1に係る構造部材設計プログラム12を実行するコンピュータ1の構成図である。構造部材設計プログラム12は、建築物のパネルゾーンに対して接続された構造部材(例:柱、梁)が有する主筋部材の接続関係を設計することにより、その建築物の構造を設計する処理を実装したプログラムである。コンピュータ1は、プロセッサ11と記憶部13を備える。プロセッサ11は構造部材設計プログラム12を実行する。以下では記載の便宜上、構造部材設計プログラム12を各処理ステップの動作主体として説明する場合があるが、構造部材設計プログラム12を実際に実行するのはプロセッサ11であることを付言しておく。
【0011】
ユーザ端末2は、コンピュータ1とやり取りして構造部材設計プログラム12に対してユーザからの指示を通知し、その処理結果を構造部材設計プログラム12から受け取ってディスプレイなどの適当なデバイス上で表示する。コンピュータ1とユーザ端末2は、適当なネットワークを介して互いに通信することにより、コンピュータ1による処理結果をユーザ端末2に対して通知し、あるいはユーザ端末2からコンピュータ1に対する指示を送受信することができる。
【0012】
構造部材設計プログラム12は、サブモジュールとして、パネルゾーン抽出部121、構造部材抽出部122、主筋セット部123、ペアリング部124、接続関係セット部125を備える。構造部材設計プログラム12および各サブモジュールの動作については後述する。
【0013】
図2は、構造部材設計プログラム12の動作を説明するフローチャートである。本フローチャートは、ユーザが構造部材設計プログラム12をコンピュータ1上で起動し、所定のメニューなどから本フローチャートを実施するように指示することによって開始される。以下図2の各ステップについて説明する。
【0014】
図2:ステップS201)
パネルゾーン抽出部121は、建築物の設計データを記憶部13から読み取る。設計データは、建築物を構成する柱と梁、柱と梁に対して接続されたパネルゾーン、などの構造を記述したデータである。パネルゾーン抽出部121は、設計データからパネルゾーンの箇所を抽出し、そのリストを保持する。パネルゾーンの箇所は、設計データ上において柱と梁が互いに接続されている箇所を探索することにより、抽出することができる。本ステップの1例は後述する。
【0015】
図2:ステップS201:補足)
本ステップは、例えばユーザが構造部材設計プログラム12上のメニューから本ステップを実施するように構造部材設計プログラム12に対して指示し、さらに設計データのファイルパスなどを指定することによって、開始することができる。設計データは例えば建築物のCADデータである。以下のステップも同様に、各ステップを実施するように指示するメニューをユーザが選択することによって、開始することができる。
【0016】
図2:ステップS202)
構造部材抽出部122は、S201において抽出したパネルゾーンに対して接続されている構造部材(柱または梁)を抽出する。説明の便宜上、本実施形態1においては柱を抽出することとする。
【0017】
図2:ステップS203)
主筋セット部123は、後述する主筋部材設定画面を、ユーザ端末2が備えるディスプレイ上に表示する。ユーザは主筋部材設定画面上で構造部材(本実施形態1においては柱)を選択し、その構造部材の内部に配置する主筋部材(鉄筋)の本数と位置を、主筋部材設定画面上でセットする。本ステップの詳細は、主筋部材設定画面の具体例と併せて後述する。主筋部材の本数と配置が既にセットされている構造部材については、本ステップを省略してもよい。
【0018】
図2:ステップS204)
ペアリング部124は、パネルゾーンの断面上において対向して配置されている構造部材のうち、主筋部材の本数と配置が同じものを全て抽出する。ペアリング部124は、抽出した構造部材をペアリングする。ここでいうペアリングとは、ペアリングされた構造部材の内部の主筋部材が実際の建築物において互いに接続される旨を、構造部材設計プログラム12内部において指定することである。ペアリング部124は、ペアリングの結果を記憶部13へ格納する。パネルゾーンの断面上において、主筋部材の本数と配置が同じではない構造部材は、ペアリングの対象外となる。
【0019】
図2:ステップS205)
接続関係セット部125は、S204の結果にしたがって、ペアリングされた構造部材を互いに接続する。接続関係セット部125は、その接続関係を記述したデータを、記憶部13へ格納する。
【0020】
図2:ステップS206)
接続関係セット部125は、後述するマニュアル接続設定画面を、ユーザ端末2が備えるディスプレイ上に表示する。ユーザはマニュアル接続設定画面上において、S205のなかでペアリングされなかった構造部材の内部の主筋部材を、マニュアル作業によって接続する。接続関係セット部125は、その接続関係を記述したデータを、記憶部13へ格納する。本ステップの詳細は、マニュアル接続設定画面の具体例と併せて後述する。
【0021】
図2:ステップS207)
自動配筋部126は、以上のステップによってセットされた主筋部材の接続関係にしたがって、主筋部材を実際に配置したと仮定し、パネルゾーン内部も含めた主筋部材の配置関係を計算する。このとき、主筋部材が衝突するか否かを併せて計算する。衝突の例などについては後述する。
【0022】
図2:ステップS208)
自動配筋部126は、設計データから、主筋部材のサイズ、材料、強度、などの特性を記述した主筋特性データを記憶部13から読み取る。自動配筋部126は、以上のステップにおいて互いに接続した主筋部材間の接続関係および主筋部材のサイズなどの特性にしたがって、主筋部材の3次元モデルを作成する。自動配筋部126は、作成した3次元モデルを、ユーザ端末2のディスプレイ上で表示する。3次元モデルを提示する意義については、その例と併せて後述する。
【0023】
図3は、S201において抽出するパネルゾーン301を表示する画面例である。パネルゾーン301は、構造部材設計プログラム12が設計する建築物が有する柱と梁が交差する箇所である。パネルゾーン抽出部121は、後述する手順によってパネルゾーン301を建築物の設計データから抽出し、図3のように画面表示する。パネルゾーン抽出部121は、図3の画面を生成してユーザ端末2に対して送信し、ユーザ端末2はその画面上でパネルゾーン301を表示することができる。
【0024】
図4は、パネルゾーン抽出部121がパネルゾーン301を抽出する手順を説明する模式図である。図4において、(a)柱1と柱2によって表される柱、(b)梁1と梁3によって表される梁(便宜上、第1梁と呼ぶ)、(c)梁2と梁4によって表される梁(便宜上、第2梁と呼ぶ)、がパネルゾーンにおいて交差している。
【0025】
パネルゾーン抽出部121は、設計データよりこれら3つの構造部材の位置やサイズなどの形状情報を取得する。パネルゾーン抽出部121は、取得した形状情報にしたがって、柱と第1梁が交差することによって生じる平面領域を特定するとともに、柱と第2梁が交差することによって生じる平面領域を特定する。パネルゾーン抽出部121は、特定した平面領域と柱によって囲まれる3次元空間を、これら3つの部材が交差するパネルゾーンとして抽出することができる。構造部材抽出部122は、これらの過程において用いた構造部材とパネルゾーンとの間の関係にしたがって、パネルゾーンに対して接続されている構造部材を特定できる。
【0026】
図5は、S203における主筋部材設定画面の例である。主筋セット部123は、図5に例示する主筋部材設定画面をユーザ端末2に対して送信し、ユーザ端末2はその画面を表示する。主筋部材設定画面は、ユーザが指定した構造部材(柱または梁)の内部に組み込む主筋部材(鉄筋)の本数および配置を、ユーザがマニュアル操作によって指定するために用いる画面である。図5の中央は、ユーザが指定したパネルゾーンの断面図を示す。平面図上の白丸は、構造部材を配置することができる候補位置である。ユーザはこの平面図上において、構造部材を配置する箇所を指定する。構造部材を配置する位置の白丸は黒丸に置き換わっている。構造部材が柱である場合と梁である場合いずれにおいても、同様の画面を用いることができる。
【0027】
図6は、ユーザが主筋部材設定画面上で主筋部材の位置を指定する過程を示す模式図である。この例において、ユーザはパネルゾーンの断面図の4隅に主筋部材を配置し、それ以外の候補位置における主筋部材を削除している。構造部材の場所によっては高い強度が必要ではない場合もあり、そのような場合においては例えば4隅のみ主筋部材を配置すれば足りるので、図6が示すように主筋部材の本数と配置を変更してもよい。
【0028】
図7は、主筋部材設定画面のその他の構成要素を説明する図である。図7に示す例において、主筋部材設定画面は、パネルゾーンの断面上に配置されている主筋部材に対してロック設定を指定するロックアイコン(例えば701~704)を有する。ロック設定は、S207の自動配筋処理において、主筋部材をどのように移動させるかを指定する属性設定である。
【0029】
自動配筋処理において主筋部材を仮配置したとき、主筋部材同士が衝突する可能性がある。主筋部材の配置はパネルゾーンごとにユーザが主筋部材設定画面上でマニュアル設定する場合があるからである。後述するように、自動配筋部126は衝突した主筋部材の位置を移動させることによって衝突を回避するが、そのとき位置を移動させず固定する主筋部材を、ロック設定によって指定することができる。例えばアイコン704に対してその旨を指定した場合、アイコン704から延伸する直線に沿った横方向5つの主筋部材(図7においては実際には2つの主筋部材が配置されている)は、自動配筋処理において移動しない。
【0030】
自動配筋処理において衝突回避のためにいずれかの主筋部材を移動させるとき、連動して移動させることが望ましい別の主筋部材が存在する場合がある。典型的には同一線上に配置されている主筋部材は連動して移動することが望ましい。ロック設定によってそのような連動して移動させる主筋部材セットを指定することができる。例えばアイコン703に対してその旨を指定した場合、アイコン703から右へ向かって延伸する直線に沿った横方向5つの主筋部材(図7においては実際には2つの主筋部材が配置されている)は、自動配筋処理において連動して移動する(すなわち移動方向と移動量が互いに等しくなるように移動する)。
【0031】
主筋部材設定画面上においては、主筋部材の位置そのものを移動させることもできる。主筋部材間の間隔設定705を選択して入力画面を開き、設定したい間隔を入力することにより、主筋部材の位置を移動させることができる。
【0032】
主筋部材設定画面は、パネルゾーンの断面上において配置した主筋部材を、その断面に対して直交する平面上で見たときの各主筋部材の配置を、ビュー706上で併せて画面表示することもできる。ビュー706は、構造部材の側面図、透過図、などによって構成することができる。
【0033】
図8は、主筋部材設定画面上において柱を分割する例を示す。ユーザは主筋部材設定画面上において、構造部材(柱または梁)を分割することができる。主筋セット部123が分割した構造部材に対してそれぞれ別のIDを割り当てることにより、構造部材設計プログラム12は以後それらを別個の構造部材として管理する。分割前の構造部材はそれぞれ同一の主筋部材を有しているが、分割によってそれらの主筋部材も分割されることになる。ユーザは分割後の構造部材に対して改めて主筋部材の配置と本数を指定することができる。例えば柱の下方は上方よりも主筋部材を多くする、などの個別設定が可能である。ユーザは反対に、構造部材を統合することもできる。ただし主筋部材の配置、本数、材質などが全て一致している構造部材同士に限る。分割することにより発生する構造部材の個数は、建築物の仕様や業界標準などによって適宜定めることができる。例えば柱は2分割のみ可能、梁は2分割または3分割のみ可能、などである。
【0034】
図9は、S206におけるマニュアル接続設定画面の例である。接続関係セット部125は、図9に例示するマニュアル接続設定画面をユーザ端末2に対して送信し、ユーザ端末2はその画面を表示する。マニュアル接続設定画面は、構造部材の内部の主筋部材を、ユーザがマニュアル作業によって接続するために用いる画面である。
【0035】
ユーザは図9に示す画面上において、まず接続関係をセットする2つの構造部材(この例においては梁Aと梁B)を選択する。ユーザは梁Aのいずれかの主筋部材と梁Bのいずれかの主筋部材をそれぞれ画面上で選択し、これらを接続する旨をさらに画面上で指定する。接続関係セット部125は、その接続関係を記述したデータを記憶部13に保存する。ユーザは、梁Aと梁Bそれぞれのその他の主筋部材についても同様に接続関係をセットする。
【0036】
図10は、ユーザがマニュアル接続設定画面上で主筋部材の接続関係をセットする過程を示す模式図である。構造部材AとBそれぞれのパネルゾーン断面図上において、主筋部材を小さい黒丸によって示している。ユーザが選択した主筋部材は、黒丸の周囲を円が囲むことによって示している。ユーザが接続関係をセットした主筋部材は、大きい黒丸に変更されている。この例においては、ユーザは構造部材AとBそれぞれの4隅に配置されている主筋部材を互いに接続するように、接続関係をセットしている。
【0037】
図11は、ペアリングされた主筋部材の接続関係を記述したデータの構造を示す模式図である。S204~S205またはS206においてペアリング(互いに接続されている旨を指定すること)された主筋部材は、そのペアを構成する主筋部材のIDおよびその主筋部材の属性パラメータをセットにしたデータによって、ペアリングされた旨が記憶部13内に保存される。
【0038】
主筋部材の属性パラメータとしては、例えばオフセット値が挙げられる。ユーザは、マニュアル接続設定画面上において、主筋部材の配置と本数が同一ではない2つの構造部材間であっても、主筋部材を接続するように指定することができる。このときその2つの主筋部材は、図11右下に示すように、屈折して接続されることになる。主筋セット部123は、この屈折の開始点から終端までの距離を、オフセット値として主筋部材ごとに保存する。
【0039】
図12は、パネルゾーンに対して接続されている柱と梁それぞれに対してペアリングを実施する前における主筋部材の3次元モデルの例である。S204~S206においてペアリングする前の時点においては、パネルゾーンを挟んで対向配置された構造部材の内部の主筋部材は、互いに接続されていない状態となっている。ペアリングは、これらの主筋部材を互いに接続する旨を指定することを意味する。S205における自動接続またはS206におけるマニュアル接続によって、例えば図12に示す主筋部材1201と1202を互いに接続する旨の接続関係をセットする。
【0040】
図13は、S207における自動配筋の結果として主筋部材が衝突する例を示す平面図である。図13に示す例において、柱が有する主筋部材1301と梁が有する主筋部材1302が衝突している。これは、例えば主筋部材設定画面においてユーザが主筋部材1301を4隅近傍へ移動させたことに起因している。
【0041】
図13に示すような主筋部材同士の衝突は、例えば衝突している主筋部材のIDなどをリストとして提示することにより、データとしてユーザに対して提示することができる。しかしユーザとしては、主筋部材のリストのみを提示されても、その主筋部材がどのような態様で衝突しているのかを把握することが困難な場合がある。そこで自動配筋部126はS208において、主筋部材の実際の配置を3次元モデルとして視覚的に提示することとした。これによりユーザは、図12図13に例示するような3次元モデル上においてその衝突状態を視覚的に把握できる。
【0042】
図14は、自動配筋部126が主筋部材の衝突を回避した後の例を示す。自動配筋部126は、図13において衝突している主筋部材1301を、柱断面上における中央寄りへ移動させることにより、主筋部材1301と1302との間の衝突を回避した。図14はその結果を示す。衝突を回避する処理は、ユーザがその処理を実施するように指定したとき実施してもよいし、S207(自動配筋)において自動的に実施してもよい。
【0043】
自動配筋部126は、衝突回避のために移動させる主筋部材を選択する際に、図7において説明したロック設定を反映させる。すなわち、(a)固定指定した主筋部材は移動させずその他の主筋部材を移動させる、(b)連動して移動するように指定した主筋部材セットは連動して移動させる。例えば主筋部材1302が固定指定されている場合、主筋部材1302は移動させずその他の主筋部材を移動させる。あるいは主筋部材1301と1303が連動指定されている場合、これらの移動方向と移動量は同一となる。
【0044】
自動配筋部126は、移動させる主筋部材を決定した後、その移動方向と移動量を決定する。移動方向と移動量は、例えば移動後の主筋部材の配置間隔が断面図上(すなわちパネルゾーン内)においてできる限り均等となるようにすればよい。例えば衝突を無視して主筋部材を均等配置したときの各主筋部材の位置と、移動させる主筋部材の位置との間の差分を、移動ベクトルとして用いることができる。自動配筋部126は、その移動ベクトルにしたがって、衝突が回避されるまで主筋部材を移動させればよい。例えば、各主筋部材を均等配置したときと移動後の主筋部材配置との間の2乗和が最も小さくかつ衝突が回避されるような配置を、最終的に採用すればよい。
【0045】
ユーザは、図13または図14の3次元モデルを見た上で、そのパネルゾーンを指定して主筋部材設定画面(図5)を呼び出し、改めて主筋部材の配置や本数をセットしてもよい。自動配筋部126が図14のように衝突を自動的に回避したとしても、例えば施工現場の作業効率を考慮すると、別の主筋部材を移動させたほうが望ましい場合や、移動量もしくは移動方向を変えたほうがよい場合など、必ずしも自動衝突回避の結果が望ましくない場合も考えられる。そのような望ましくない状況が発生するか否かを把握するためには主筋部材の3次元モデルをユーザが視覚的に見ることが有用であると考えられる。衝突箇所のIDなどをリスト表示するのみでは、そのような状況が発生するか否か、あるいは発生するとしてどのような態様であるのか、などを把握することは困難だからである。主筋部材の3次元モデルを提示することは、そのような観点において有用である。
【0046】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、建築物の構造を記述した設計データ(例えばCADデータ)からパネルゾーンを抽出し、パネルゾーンに対して接続されている構造部材の内部の主筋部材の本数および配置をセットし、主筋部材の本数および配置が同じ構造部材同士をペアリングしてそれらの主筋部材を接続する。パネルゾーンを起点としてそのパネルゾーンに対して接続されている構造部材を特定することにより、パネルゾーン内における主筋部材の接続関係を適切にセットすることができる。また主筋部材の配置と本数が同一である構造部材については自動ペアリングすることもできるので、主筋部材の設計作業を効率的に進めることができる。
【0047】
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、主筋部材設定画面(図5)を提示し、ユーザは同画面上においてパネルゾーンの断面図上で主筋部材の本数と配置を指定することができる。例えばCADデータからインポートした構造部材内の主筋部材が過剰または過少であるような場合においても、ユーザは同画面上で主筋部材を適切に配置することができる。1例として、建築物の下方の柱は主筋部材を多く変更し、上方の柱は主筋部材を少なく変更する、などのマニュアル設計が可能である。
【0048】
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、主筋部材設定画面などによってセットされた主筋部材の接続関係にしたがって主筋部材を実際の建築物において配置したと仮定したとき主筋部材が衝突するか否かを計算し、その結果を例えば主筋部材の3次元モデルなどの視覚的手段によって提示する。これによりユーザは、主筋部材の配置や本数が適切であるか否かを容易に把握し、改めて主筋部材設定画面などによってその配置や本数を調整することができる。
【0049】
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、主筋部材を実際に配置したと仮定したとき主筋部材が衝突する場合は、その衝突を回避するように、主筋部材の位置を移動させる。例えば移動後の主筋部材の配置間隔がパネルゾーン内においてなるべく均等となるように、主筋部材を移動させる。これにより、例えばユーザが主筋部材設定画面上でセットした主筋部材の本数と配置が衝突を招く場合であっても、ユーザに負担をかけることなくその衝突を回避し、実際に施工可能な主筋部材構造を設計することができる。
【0050】
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、衝突回避のために主筋部材を移動させる際に、移動させずに位置を固定する主筋部材を主筋部材設定画面上であらかじめ設定しておき(ロック設定)、その設定にしたがって、移動させる主筋部材を選択する。これにより、例えば建築物の構造との関係において移動させることが望ましくない主筋部材についてはあらかじめ位置を固定しておき、その他の主筋部材のみを移動させることができる。したがって、構造強度などのパラメータを最適に維持しつつ、主筋部材の衝突を自動的に回避することができ、主筋部材の設計効率が高まる。
【0051】
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、衝突回避のために主筋部材を移動させる際に、連動して移動させる主筋部材セットを主筋部材設定画面上であらかじめ設定しておき(ロック設定)、その設定にしたがって、移動させる主筋部材を選択する。これにより、例えば建築物の構造との関係において連動して移動させることが望ましい主筋部材についてはあらかじめ連動ロックをかけておき、それらを連動して移動させることができる。例えばパネルゾーンの断面図上で対向して配置されている主筋部材は連動移動させることが望ましい場合は、そのような連動移動をあらかじめ指定しておくことができる。これにより位置固定ロックと同様に、構造強度などのパラメータを最適に維持しつつ、主筋部材の衝突を自動的に回避することができ、主筋部材の設計効率が高まる。
【0052】
本実施形態1に係る構造部材設計プログラム12は、例えば主筋部材の配置または本数が互いに異なることによって自動ペアリングされなかった構造部材について、マニュアル接続設定画面によって手動で主筋部材の接続関係をセットできる。これにより、構造部材を配置したのみでは主筋部材がパネルゾーン内において接続されない場合であっても、その接続関係を画面上で視覚的にセットすることができる。
【0053】
<実施の形態2>
図15は、本開示の実施形態2に係る構造部材設計プログラム12を実行するコンピュータ1の構成図である。実施形態1においては、パネルゾーンに対して接続された主筋部材をペアリングするとともに、ペアリングされていない主筋部材同士が互いに衝突することを回避する構成例を説明した。本実施形態2においては、その上でさらに主筋部材の配置を調整する際に、パネルゾーンにおける配置制約を充足しつつ再調整する構成例について説明する。
【0054】
構造部材設計プログラム12は、サブモジュールとして、実施形態1で説明したものに加え、さらに主筋位置調整部127を備える。主筋位置調整部127は、衝突回避しつつ主筋部材をペアリングした後において、さらに主筋部材の配置を調整する際に、パネルゾーンにおける配置制約を充足しつつ再調整する処理を実施する。具体的な動作例については後述する。
【0055】
図16は、実施形態2における構造部材設計プログラム12の動作を説明するフローチャートである。実施形態1で説明したステップS208の後に、ステップS1601を実施する。S1601において、主筋位置調整部127は、後述する手順にしたがって、主筋部材の位置を再調整する。その他は実施形態1と同様である。
【0056】
<実施の形態2:連動移動に関する制約>
図17は、主筋位置調整部127が提供するユーザインターフェースの例である。主筋位置調整部127は、例えば図17右側に示す主筋部材の3次元モデル上において、同図に示すコントロールパネル1700を表示する。コントロールパネル1700は、いずれかの主筋部材を3次元モデル上において選択したとき、その主筋部材を移動させる操作指示を入力する画面部品である。ユーザはコントロールパネル1700上の移動ボタンを押下することにより、選択した主筋部材をその方向へ移動させることができる。さらに移動間隔(グリッド間隔)を指定することもできる。
【0057】
ただしパネルゾーンにおいては、実施形態1で説明したロック設定(位置固定、連動移動など)のように、主筋部材を移動させる際の制約条件がセットされている場合がある。主筋位置調整部127は、パネルゾーンに対して接続されている主筋部材を移動させる際には、その接続先のパネルゾーンにおけるこのような制約条件を反映し、制約条件を充足する方向においてのみ、主筋部材を移動させることを許可する。具体的には、コントロールパネル1700上において、主筋部材を移動させることができる方向のみ移動ボタンを有効化し、それ以外の方向においては移動ボタンを無効化する。
【0058】
図17左側に示すパネルゾーンにおいては、左端の列は左右移動が禁止されている。さらに3行目に配置されている主筋部材は、連動して移動させるように指定されている。したがって、3次元モデル上において3行1列の主筋部材(またはその主筋部材に対して接続されているパネルゾーン外の主筋部材)を選択した場合、コントロールパネル1700は、上下方向のみ移動ボタンを有効化し、左右方向の移動ボタンは無効化する。これにより、図17左側のパネルゾーン上の制約条件を充足しつつ、主筋部材の配置を視覚的に再調整することができる。
【0059】
無効化されている移動ボタンは、ユーザ操作により強制的に有効化することもできる。例えばユーザが無効化されている移動ボタンを選択すると、主筋位置調整部127は、その移動ボタンを有効化させるか否かをユーザに対して問い合わせるダイアログを表示する。ユーザが有効化を選択すると、その移動ボタンは有効化される。同様の操作により、同じ移動ボタンを再度無効化することもできる。これにより、パネルゾーン内の制約条件をいったん無視して、強制的に主筋部材を移動させることができる。例えば局所的に配置を微調整したい場合などにおいて、このような制約解除は有用である。
【0060】
ユーザは3次元モデルの視点を自由に変更することもできる。視点を変更することにより、主筋部材を移動させることができる方向も変わる。例えば図17右側の3次元モデルをZ軸方向周りにおいて90°回転させると、同じ主筋部材は画面上において左右方向のみ移動可能となる。主筋位置調整部127は、このような視点の変更にともなって、有効化/無効化する移動ボタンも変更する。この例においては、視点回転にともない、左右ボタンが有効になり、上下ボタンは無効になる。
【0061】
図18は、視点変更にともなって移動ボタンの有効化/無効化が変わる様子を示す。図18左においては、移動可能方向に対して略直交する方向を視線方向としているので、コントロールパネル上では左右ボタンが有効化されている。図18右においては、移動可能方向に対して略平行な方向を視線方向としているので、コントロールパネル上では上下ボタンが有効化されている。いずれも同じ主筋部材の移動可能方向の制約をコントロールパネル上で反映している。
【0062】
<実施の形態2:奥行方向の重なり>
図19は、主筋部材設定画面において連動指定されている主筋部材の例である。図19の点線で囲んだ2つの主筋部材は、連動して移動するように指定されている。この例においては図面の左右方向に連動して移動することになる。この制約は主筋部材設定画面においてはユーザが容易に把握できる。他方で主筋部材の3次元モデル上においては、この制約条件が視覚的に把握しにくい場合がある。
【0063】
図20は、図19に示すパネルゾーンの3次元モデルと複数方向の断面図である。図20中央は上面図であり、図19と同じ視点でパネルゾーンを視た図である。図20上下左右は、パネルゾーンのそれぞれ背面図、正面図、左右側面図である。図19において連動指定されている2つの主筋部材は、左右側面図においてはそれぞれ視認することができるが、背面図と正面図(奥行視点画面)においては奥行方向に重なって見える。
【0064】
図21は、図20の正面図を拡大したものである。図21において太線で示す主筋部材は、図19において連動指定されているものである。図21の奥行方向には、連動指定されているもう一方の主筋部材が存在するが、図21においてこの2つの主筋部材は奥行方向に重なっているので、正面図上では見えなくなっている。このような連動されている主筋部材も、コントロールパネル1700によって移動させることができる。ただし図19の主筋部材設定画面における連動指定に準拠する必要がある。
【0065】
図22は、図21の主筋部材を移動させた結果を示す正面図である。図22において太線で示す主筋部材は、図21において選択されているものと同じである。コントロールパネル1700によってこの主筋部材を右方向へ移動させると、主筋位置調整部127は、奥行方向において重なっているもう一方の主筋部材も、連動して右方向へ移動させる。これにより、パネルゾーン上における制約条件が3次元モデル上において視認できない場合であっても、その制約条件に準拠しつつ、主筋部材の位置を視覚的に再調整することができる。
【0066】
図23は、図21図22の結果を示す上面図である。図23左は移動前の主筋配置を示し、図23右は移動後の主筋配置を示す。長方形で囲んだ2つの主筋部材は連動指定されており、一方を移動させることによって他方も連動して移動したことが分かる。主筋位置調整部127は、このようなパネルゾーン上における制約条件を充足しつつ、主筋部材の配置を再調整することができる。
【0067】
<実施の形態2:構造部材の形状に対応した配置調製>
図24は、円柱状の構造部材内の主筋部材を配置調製する例を示す。構造部材のなかには四角柱以外の形状を有するものがある。例えば建築物の基礎の下方には円柱状の構造部材が配置されている。このような構造部材にも主筋部材が配置されるので、その位置を調整する場合がある。主筋位置調整部127は、構造部材の外周形状に対応したコントロールパネル1700を構成する。
【0068】
円柱状の構造部材内には、その外周に沿って主筋部材が配置されている。移動させる主筋部材を選択した上でコントロールパネル1700上で上下方向の移動ボタンを押すと、主筋位置調整部127は、その主筋部材を外周に対して直交する方向に移動させる。上ボタンを押下した場合は外側へ向かい移動させ、下ボタンを押下した場合は内側へ向かい移動させる。左右方向の移動ボタンを押した場合は、外周に沿って移動させる。さらに上下方向と左右方向それぞれにおいて、移動幅をセットすることができる。
【0069】
図25は、円柱状の構造部材内の主筋部材を移動させた結果を示す。図25の矢印が指し示す主筋部材を、図25左側の状態から右側の状態へ移動させた。これはコントロールパネル1700上で右ボタンを押した結果である。構造部材の外周形状に沿って主筋部材が移動したことが分かる。
【0070】
<実施の形態2:ペアリングされている主筋部材の連動>
図26は、パネルゾーンにおいてペアリングした主筋部材の例を示す。図12と同様の主筋部材の配置において、主筋部材1201と1202をペアリングした場合、これらは点線が示すように、パネルゾーンを貫通する1つの主筋部材と同様に構成されることになる。このように、設計の初期時点においては2つの主筋部材であっても、ペアリングによって1つの主筋部材と同様に取り扱う場合においては、一方の主筋部材を移動させるとき他方の主筋部材も連動して移動させるべきである。
【0071】
図27は、ペアリングした主筋部材を移動させる過程を示す上面図である。図27左のパネルゾーン上面図において、黒塗りした主筋部材を選択してコントロールパネル1700によって移動させるとき、主筋位置調整部127は、その主筋部材とペアリングされているもう一方の主筋部材もこれに連動して移動させる。図27右はその結果を示す。
【0072】
<実施の形態2:フック主筋部材の配置調整>
図28は、フック部分を有する主筋部材2801の形状例を示す模式図である。主筋部材のなかには、コンクリートから容易に抜け落ちることがないように、端部において折り曲げられたフック部分を有するものがある。主筋部材2801は、図面の横方向に延伸する梁部材のなかに配置されているものである。主筋部材2801は、梁部材が接続されている柱部材のなかまで貫通して終端する。この終端部分が柱部材から容易に抜け落ちることがないように、終端部分は折り曲げられている。
【0073】
主筋位置調整部127は、主筋部材2801をその延伸方向において移動させる場合は、位置を移動させることに代えて長さを調整する。長くする場合は、フック部分が柱部材に対して押し込まれている部分を長くする。図28右上はその結果を示す。短くする場合は、フック部分が柱部材に対して押し込まれている部分を短くする。図28右下はその結果を示す。
【0074】
図29は、主筋部材2801をその延伸方向において移動させる過程を示す上面図である。図29の太線は図28の主筋部材2801に相当する。ユーザが主筋部材2801を選択してコントロールパネル1700によって延伸方向(図29の縦方向)に移動させるとき、主筋位置調整部127は、主筋部材2801を移動させることに代えて、延伸方向の長さを調整する。この例においては下ボタンを押下することにより、下方向に向かって主筋部材2801の端部を長くする。図29右はその結果を示す。
【0075】
図30は、主筋部材2801を延伸方向に移動させる代わりに長さを調整する理由を説明する図である。主筋部材2801は、フック部分の反対側において別の構造部材に対して押し込まれている。主筋部材2801の長さを変えることなく単純に移動させると、図30下段に示すように、反対側の端部において主筋部材2801が構造部材から抜け落ちてしまう可能性がある。また抜け落ちないにしても、構造部材に対して埋め込まれている部分の長さが、建築基準に準拠できない程度に短くなり過ぎる可能性がある。そこで主筋位置調整部127は、フック部分を有する主筋部材を延伸方向において移動させる場合は、移動することに代えて端部の長さを調整することにした。これにより図30下段のような状況を回避できる。フック部分を有さない主筋部材において図30下段と同様の状況が生じる場合は、同様に移動に代えて端部の長さを調整してもよい。
【0076】
他方で、主筋部材2801を移動したい場合は、以下のようにすることができる。まず一方の端部において、端部を長くする。図28(または図30)に示す例においては、主筋部材2801の左端を画面表示した上で、コントロールパネル1700上で左ボタンを押す。これにより左端が図28右上のように長くなる。さらに主筋部材2801の右端を画面表示した上で、コントロールパネル1700上で左ボタンを押す。これにより右端が短くなる。以上の操作により、主筋部材2801は左端が長くなり右端が短くなるので、実質的には左方向へ移動したことになる。
【0077】
<実施の形態3>
実施形態2においては、パネルゾーン内の制約条件を充足しつつ、コントロールパネル1700によって主筋部材の位置を再調整する例を説明した。本開示の実施形態3では、コントロールパネル1700によって主筋部材の位置を再調整するその他の例について説明する。本実施形態の各図において説明する処理は、主筋位置調整部127によって実施することができる。
【0078】
図31は、吸着ボタン1701の例である。吸着ボタン1701は、隣接する別の主筋部材の近傍へ移動するように指示するボタンである。例えば図31の黒塗りした主筋部材を選択した吸着ボタン1701を押すと、右側に隣接する別の主筋部材の近傍へ即座に移動する。図31右はその結果を示す。記載の便宜上、右側に移動させる吸着ボタン1701のみを図示したが、上下左方向においても同様の吸着ボタンを設けることができる。吸着ボタンによって移動した場合における隣接主筋部材からの間隔は、あらかじめ別画面において指定してもよいし、固定間隔でもよいし、コントロールパネル1700内で指定できるようにしてもよい。
【0079】
図32は、建築物の基礎内に配置されている主筋部材の配置を調整する例である。基礎はパネルゾーンとは異なり、一般的には四方が閉じた領域であるので、主筋部材を移動させる際には、主筋部材の延伸方向に対して直交する方向に移動させることになる。図32における太線が示す主筋部材をユーザが選択したとき、主筋位置調整部127は、コントロールパネル1700の上下ボタンのみ有効化する。これにより、基礎内の主筋部材の配置制約にしたがって、配置調整をすることができる。
【0080】
図33は、基礎内に配置されている主筋部材の長さを調整する例である。基礎内の主筋部材は、原則として延伸方向には移動しないが、長さを調整したい場合もある。この場合はその主筋部材のうち長さ調整したい側の端部(例えば終端から全長の4分の1程度までの領域、図33左の点線楕円部分)をクリックしてコントロールパネル1700を呼び出す。主筋位置調整部127は、延伸方向における移動ボタンを、長さ調整ボタンに変更する。
【0081】
図33の例において、左上の点線楕円領域をクリックしてコントロールパネル1700を呼び出した場合、左右ボタンが長さ調整ボタンに置き換わる。左ボタン(外周に近い側の移動ボタン)が押されると、主筋位置調整部127は、その主筋部材の左端を左方向に伸ばす。右ボタン(外周から遠い側の移動ボタン)が押されると、主筋位置調整部127は、その主筋部材の左端を右方向に短縮する。右端においても同様の動作を実施する。上下方向に延伸する主筋部材についても、上下端において同様の動作を実施する。以上の動作により、基礎内に配置されている主筋部材について、長さ調整をコントロールパネル1700によって実施できる。
【0082】
図34は、基礎が四角形ではない場合における主筋部材の配置を示す。図34の点線が示すように、四角形ではない基礎形状においては、四角形の基礎を前提とした主筋部材配置は適切ではない。また必ずしも全ての主筋部材が同じ長さではない。この場合、図33で説明したように、主筋部材の長さを調整する機能を提供することにより、四角形基礎の主筋部材配置を流用しつつ、部分的に配置や長さを調整することができる。これにより、任意形状の基礎において主筋部材の配置をコントロールパネル1700上で調整することができる。
【0083】
図35は、せん断補強筋の例を示す3次元モデルである。せん断補強筋は、せん断力に対して柱や梁を補強するために、主筋の周りに巻き回す補強鉄筋である。せん断補強筋は典型的には等間隔で配置するが、主筋部材と同様に配置を調整する場合がある。例えば他の主筋部材とせん断補強筋が衝突するような場合である。
【0084】
図36は、せん断補強筋の位置を調整する例を示す。せん断補強筋は主筋部材の周りに巻き回す部材であるので、構造部材(すなわち主筋部材)が延伸する方向に移動することになる。例えば図36の矢印が指し示すせん断補強筋を選択したとき、コントロールパネル1700は、左右ボタンのみが有効化されている。これにより、構造部材(主筋部材)の形状にしたがって、せん断補強筋の位置をコントロールパネル1700によって調整することができる。
【0085】
図37は、斜めに延伸する主筋部材の周りに巻き付けたせん断補強筋の例である。図37に示す例において、互いに平行ではない方向に延伸する4つの主筋部材がセットになっている(このセットのことを便宜上、傾斜主筋部材と呼ぶ)。せん断補強筋は、傾斜主筋部材の周りに巻き付けられている。傾斜主筋部材の断面サイズは位置によって異なるので、せん断補強筋のサイズもこれにともなって位置ごとに異なる。主筋位置調整部127は、せん断補強筋を移動させるとき、傾斜主筋部材のサイズにしたがって、せん断補強筋のサイズも変化させる。図37の例においては、矢印が指し示すせん断補強筋は、移動にともなってサイズが変化している。
【0086】
<本開示の変形例について>
本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0087】
以上の実施形態において、構造部材設計プログラム12が図2(または図16)の各ステップを実施することを説明したが、各ステップのうち全部または一部を、設計者がマニュアル作業によって実施することも可能である。例えば各ステップのうち全部または一部を表計算ソフトウェアのマクロによって実装し、これを実行することにより、画面上で設計結果を視認しながら微調整を実施することができる。
【0088】
以上の実施形態において、構造部材設計プログラム12およびそのサブモジュールは、ソフトウェアに代えて、回路デバイス(例:Field Programmable Gate Array:FPGA)などのハードウェアによって実装することもできる。
【0089】
以上の実施形態において、コンピュータ1とユーザ端末2は、必ずしも別装置でなくてもよく、これらを単一のコンピュータ上に構成してもよい。この場合、ユーザ端末2が画面表示する各画面は、これに代えてコンピュータ1が備える表示デバイス上で画面表示することになる。
【0090】
以上の実施形態において、建築物が備えるパネルゾーンとこれに接続される構造部材(柱または梁)が備える主筋部材について説明したが、本開示は建築物に限るものではなく、同様の構造を備えた構造物一般について適用することができる。すなわち本開示の対象は、建築構造物、土木構造物、プラント、その他同様の構造を有する構造物一般について適用することができる。この場合、本開示におけるパネルゾーンに対応するのは、構造物の高さ方向に延伸する構造部材とこれに対して直交する方向に延伸する構造部材が交差する領域となることを付言しておく。
【符号の説明】
【0091】
1:コンピュータ
12:構造部材設計プログラム
121:パネルゾーン抽出部
122:構造部材抽出部
123:主筋セット部
124:ペアリング部
125:接続関係セット部
126:自動配筋部
127:主筋位置調整部
13:記憶部
2:ユーザ端末
【要約】
本開示は、衝突を回避しつつ主筋部材を接続するとともに、補強鉄筋部材の配置を再調整する際の制約条件を充足することを目的とする。本開示に係る構造部材設計方法は、パネルゾーンに対して接続されている主筋部材を互いにペアリングする接続関係をセットし、前記接続関係を維持しながら主筋部材間の衝突を回避し、前記主筋部材の周囲に巻き付ける補強鉄筋部材を配置してその位置を前記主筋部材の延伸方向に沿って再調整する(図15参照)。
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