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  • 特許-パターン漉き装置及びパターン漉き方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】パターン漉き装置及びパターン漉き方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/06 20060101AFI20230320BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20230320BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20230320BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20230320BHJP
   C14B 1/16 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
B26D3/06
B26D3/00 603Z
B26D7/06 E
B26D1/02 Z
B26D3/00 601Z
C14B1/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018114614
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019217565
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390033891
【氏名又は名称】株式会社三宅デザイン事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】國枝 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮前 義之
(72)【発明者】
【氏名】高津 和義
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3209033(JP,U)
【文献】米国特許第03513496(US,A)
【文献】特開平01-146999(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217733(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/06
B26D 3/00
B26D 7/06
B26D 1/02
C14B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層からなるシート状材料と、凸状部で構成された所定のパターンを有する型と、の積層体を、互いに押圧しながら搬送する搬送手段、及び
前記搬送手段の下流側に設けられた切断手段、
を具備し、
前記シート状材料における内側の層を露出させるように、前記型が押圧・積層された状態で、前記積層体における前記シート状材料のうちの、前記型と反対側において前記凸状部に対応して隆起する部分を、前記切断手段で漉くこと、
を特徴とし、
前記搬送手段が、上側ローラ及び下側ローラの組合せで構成されており、
前記型が、互いに異なるパターンを有する複数の型を含み、
前記複数の型のそれぞれについて、前記積層体を押圧しながら搬送し、前記シート状材料のうち前記隆起する部分を前記切断手段で順に漉くことによって、前記シート状材料の内側の層を露出させて三次元的な模様を形成すること、
を特徴とするパターン漉き装置。
【請求項2】
複数の層からなるシート状材料と、凸状部で構成された所定のパターンを有する型と、の積層体を、上側ローラ及び下側ローラの組合せで構成されている搬送手段で互いに押圧しながら搬送し、
前記型が押圧・積層された状態で、前記積層体における前記シート状材料のうちの、前記型と反対側において前記凸状部に対応して隆起する部分を、前記搬送手段の下流側に設けられた切断手段で漉いて、前記シート状材料における内側の層を露出させるパターン漉き方法であって
前記型として、互いに異なるパターンを有する複数の型を準備し、
前記複数の型のそれぞれについて、前記積層体を押圧しながら搬送し、前記シート状材料のうち前記隆起する部分を前記切断手段で順に漉くことによって、前記シート状材料の内側の層を露出させて三次元的な模様を形成すること、
を特徴とするパターン漉き方法。
【請求項3】
前記積層体を、前記複数の型のそれぞれに応じて予め設定した向きで搬送し、前記シート状材料のうち前記隆起する部分を前記切断手段で漉くこと、
を特徴とする請求項2に記載のパターン漉き方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革等のシート状材料への漉き加工に好適なパターン漉き装置及びパターン漉き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の皮革製品が製造・販売されており、様々な特徴あるデザインを実現するために、表面に模様を形成する方法として種々の技術が用いられている。その技術のひとつが、いわゆる「漉き」であり、漉いた部分で皮革を折り曲げる等して模様を形成する。
【0003】
ここで、例えば特許文献1(特開2001-123200号公報)には、「皮革の銀面に模様を型押しして、圧縮により得られた凹部と圧縮されなかった凸部からなる模様を銀面に形成する第1工程。型押しされた皮革の凸部を、凹部を消失させない深さの範囲内で削り取り、凸部の銀面を消失させてヌバックを表す第2工程。第2工程の加工を施した皮に水分を含ませることにより、型押しされて圧縮された凹部の圧縮状態を解消してその厚みを復帰させる第3工程。」を含む方法が開示されている(特許文献1、特許請求の範囲)。
【0004】
また、例えば特許文献2(実用新案登録第3195757号公報)には、「皮革の裏面を略直線的に複数箇所に漉き、当該漉きを加えた部分の厚さが1.2mm以下であることを特徴とする革素材。」や、「皮革の裏面を略直線的に複数箇所に漉き、当該漉きを加えた部分の厚さがそれ以外の部分の厚さの1/2以下であることを特徴とする革素材。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-123200号公報
【文献】実用新案登録第3195757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、乳頭層の表面(銀面)及び裏側の起毛面(ヌバック)を有する皮革を用いることが前提とされていて汎用性に劣り、また、型押しで形成された凸部の表面を削り取り、型押しで圧縮された凹部に水分を含ませて元に戻さなければならず煩雑である。
【0007】
また、上記特許文献2の技術は、皮革の裏面を漉くことで表面に模様を浮き上がらせるものであり、模様の表現態様に限界がある。また、この技術は、型を用いず手作業で漉きを入れることを前提としていることから、大量生産には不向きで到底対応できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、皮革等を含む種々のシート状材料に対応可能で汎用性に優れ、例えば種々のデザインの製品をシンプルな工程で製造可能であり、大量生産に好適なパターン漉き装置及びパターン漉き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題点を解消して、種々のシート状材料に対応可能で汎用性に優れ、シンプルな工程で大量生産に好適なパターン漉き装置及びパターン漉き方法を実現するためには、複数層のシート状材料、型及び搬送手段を用いることが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
複数の層からなるシート状材料と、凸状部で構成された所定のパターンを有する型と、の積層体を、互いに押圧しながら搬送する搬送手段、及び
前記搬送手段の下流側に設けられた切断手段、
を具備し、
前記シート状材料における内側の層を露出させるように、前記型が押圧・積層された状態で、前記積層体における前記シート状材料のうちの、前記型と反対側において前記凸状部に対応して隆起する部分を、前記切断手段で漉くこと、
を特徴とするパターン漉き装置、
を提供する。
【0011】
また、本発明は、
複数の層からなるシート状材料と、凸状部で構成された所定のパターンを有する型と、の積層体を、互いに押圧しながら搬送し、
前記型が押圧・積層された状態で、前記積層体における前記シート状材料のうちの、前記型と反対側において前記凸状部に対応して隆起する部分を、前記搬送手段の下流側に設けられた切断手段で漉いて、前記シート状材料における内側の層を露出させること、
を特徴とするパターン漉き方法、
を提供するものでもある。
【0012】
このような構成を有する本発明のパターン漉き装置及びパターン漉き方法によれば、皮革を含む種々のシート状材料に対応可能で汎用性に優れ、シンプルな工程で大量生産に好適なパターン漉き装置及びパターン漉き方法を実現することができる。また、種々の型を使用することにより種々のパターンの漉きを形成することができるとともに、シート状材料の層数、各層の素材及び色彩を適宜変更することができるため、例えば様々なデザインの革製品を大量生産することができる。
【0013】
上記の本発明のパターン漉き装置においては、前記搬送手段が、上側ローラ及び下側ローラの組合せで構成されること、が好ましい。また、上記の本発明のパターン漉き方法においては、前記積層体を、上側ローラ及び下側ローラで搬送すること、が好ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明のパターン漉き装置及びパターン漉き方法によれば、より確実に、シンプルな工程で大量生産に好適なパターン漉き装置及びパターン漉き方法を実現することができる。
【0015】
また、上記の本発明のパターン漉き方法においては、
前記型として、互いに異なるパターンを有する複数の型を準備し、
前記複数の型のそれぞれについて、前記積層体を押圧しながら搬送し、前記シート状材料のうち前記隆起する部分を前記切断手段で順に漉くこと、
が好ましい。
【0016】
このような構成を有する本発明のパターン漉き方法によれば、複数の型を用いることで、表現できる模様のバリエーションが大幅に増加するから、種々の模様を有する製品を大量生産することができる。
【0017】
また、上記の本発明のパターン漉き方法においては、
前記積層体を、前記複数の型のそれぞれに応じて予め設定した向きで搬送し、前記シート状材料のうち前記隆起する部分を前記切断手段で漉くこと、
が好ましい。
【0018】
このような構成を有する本発明のパターン漉き方法によれば、各型のパターンをより忠実に再現できる向きでシート状材料を漉くことができるから、複雑な模様を有する製品をより正確に大量生産することができる。
【0019】
なお、本発明における「シート状材料」は、天然皮革及び合成(人工)皮革のいずれの皮革も含む概念であり、その他の樹脂並びに天然及び人工木材等、漉くことができるシート状材料を全て含む概念である。ただし、本発明は、複数層の構造を有するシート状材料を用いるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のパターン漉き装置及びパターン漉き方法によれば、皮革等の種々のシート状材料に対応可能で汎用性に優れ、種々のデザインのシート材及びこれを用いた革製品等の製品をシンプルな工程で製造でき、かつ大量生産が容易である。特に、本発明のパターン漉き装置及びパターン漉き方法は、上記製品の製造工程をパターン化してその均一性、生産性及び効率を向上するものであるが、シート状材料の構成や各工程の条件によっては、例えば版画のように、その均一性に一定の振れ幅があり、偶然にもより良い模様やデザインを有するシート材が生まれる可能性が期待される。また、本発明によれば、表面に立体感のある三次元的な模様やデザインを有するシート材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】複数の層11~14からなるシート状材料1に模様1bを形成する技術について説明するための図である。
図2】本発明のパターン漉き方法において、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を、パターン漉き装置10に挿入する様子を概念的に説明するための図である。
図3】本発明のパターン漉き方法において、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を、互いに押圧しながら搬送する様子を概念的に説明するための図である。
図4】本発明のパターン漉き方法において、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を搬送しながら、シート状材料1の部分Pを切断刃6で切断して漉き溝1aを形成する様子を概念的に説明するための図である。
図5】本発明のパターン漉き方法において、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を搬送して、シート状材料1に漉き溝1aを形成した状態を概念的に説明するための図である。
図6】積層体4のうちのシート状材料1において、パターン2aの凸状部に対応して隆起する部分Pが切断刃6で切り取られて漉き溝1aが形成される様子を詳細に説明するための図である。
図7】本発明において用いることのできる型2の一具体例の平面図(写真)である。
図8】本発明において用いることのできる型2’の一具体例の平面図(写真)である。
図9】本発明において得られる漉き溝1a及び模様1bを形成したシート状材料1の平面図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の代表的な実施形態に係るパターン漉き装置及びパターン漉き方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もあり、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0023】
まず、皮革等のシート状材料に漉きを施す様子について図1を参照しながら説明すると、シート状材料1は、図1(A)に示すように複数の層11~14からなり、図1(B)に示すように隣り合う層同士を接着することで作製される。ここで、シート状材料を構成する層の数は2以上であればよい。各層の素材は、天然皮革でも人工皮革でもよいし、樹脂、木材などのように漉くことができるものであればよい。薄い金属層であってもよい。また、各層の材質、厚み、硬さ、密度、色彩等は互いに異なっていてもよい。
【0024】
このようなシート状材料1に漉きを入れる場合、切断手段としてナイフやべベラ等の切断刃を有する革漉き工具を用いて、図1(C)に示すように、例えば線状の漉き溝1aを形成する。このとき、漉き溝1aが複数の層に亘って形成され内側の層が外部に露出することで、外表面に模様1bが出現することになる。ここで、漉き溝1aは、折り目を形成する場合とは異なり、例えば図9のように、互いに繋がっている必要はなく、途切れていてもよい。
【0025】
そして、この漉き溝1aの形状や構造を駆使することにより、例えば図9に示すように、外表面に種々の模様1bを有するデザインの、シート状材料からなる製品(例えばカバン等の革製品)を作製できる。
【0026】
そこで、このようなシート状材料を生産するために、本発明の代表的な実施形態においては、図2及び図3に示すように、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を、互いに押圧しながら矢印Xの向きに搬送し、更に、図4及び図5に示すように、型2が押圧・積層された状態で、積層体4におけるシート状材料1のうちの、型2と反対側においてパターン2aに対応して隆起する部分Pを、搬送方向の下流側に設けられた切断刃6で漉く。
【0027】
本実施形態では、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を、互いに押圧しながら搬送する搬送手段である上側ローラ8a及び下側ローラ8b、並びに、搬送手段の下流側に設けられた切断刃6と、を具備するパターン漉き装置10を用いている。
【0028】
詳細に説明すると、本実施形態では、まず、図2及び図3に示すように、複数の層からなるシート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、の積層体4を、それぞれ矢印Ya及び矢印Ybの向きに回転する上側ローラ8a及び下側ローラ8bで挟むようにして、矢印Xの向きに搬送する。このとき、積層体4におけるシート状材料1と型2とは互いに押圧されている。また、シート状材料1は、表側になるべき面が下側ローラ8b側(型2とは反対側)を向くように配置されることが好ましい。
【0029】
ここで、型2は、本発明の効果を損なわない範囲で種々の材料を用いて作製することができる。例えば、凸状部で構成された所定のパターン2aは、上側ローラ8a及び下側ローラ8b等の搬送手段で挟まれた際に、凸状部が形状変化して漉き溝1aを形成できないという状況にならない程度の強度を有していればよく、例えば各種樹脂、皮革、再生皮革(リサイクルレザー)、木材、金属等で作製されていてよい。
【0030】
また、パターン2aは、上側ローラ8a及び下側ローラ8bの間に入って挟まれて搬送され易くかつ型としての役割を確実に果たすという観点から、ある程度の柔軟性を有しているのが好ましい。加工精度を保つために、ゴミ等の有無並びにズレやヨレの様子を目視できるという観点から、パターン2aは、透明であってもよい。
【0031】
パターン2aを構成する凸状部については、所望する漉き溝1aのデザインや最終製品の表面に表したい模様に応じて、適宜設計すればよい。例えば凸状部の高さは、シート状材料1の材質、硬さ、上側ローラ8a及び下側ローラ8bの間の距離等の条件に応じて、所望の深さの漉き溝1aが形成されるように、当業者であれば適宜選択することができる。特に、漉き溝1aからシート状材料1の内側層が露出するように、凸状部の高さを設定することが好ましい。また、凸状部は、例えば図7及び図8のように、幅方向に並ぶように配置されてもよいし、途切れていてもよい(繋がっていなくてもよい)。凸状部はまた、予め設定されたシート状材料1の搬送方向(例えば図7及び図8に矢印S,Tで示す方向)に概ね直交するように配置されていることが好ましい。このように凸状部を配置することで、パターン漉き装置10で漉いたときに、パターン2aのデザインをシート状材料1上により忠実に再現することができる。
【0032】
また、基部2bには、パターン2aを保持・固定できるものであれば特に制限なく種々の材料を用いることができ、例えば、種々の紙や樹脂シートを用いることができる。なお、型2を構成するパターン2aと基部2bとは、例えば接着剤で互いに接着しておけばよい。また、加工精度を保つために、ゴミ等の有無並びにズレやヨレの様子を目視できるという観点から、基部2bは透明であってもよい。
【0033】
本実施形態では、1つの型2を用いてもよいし、例えば図7及び図8のように、異なるパターン2aを有する一組の型2,2’を用いてもよい。一組の型2,2’を用いることで、生産性を保持しながらシート状材料1上に多彩な模様1bを表出させることが可能となる。
【0034】
そして、矢印Xの向きにおける上側ローラ8a及び下側ローラ8bの下流側には、切断刃6が配置されており、切断刃6は、図2の紙面に略垂直な方向において、シート状材料1の幅と略同一の幅を有している。
【0035】
また、切断刃6は、いわゆる片刃の構造を有しており、片刃の傾斜面が下方を向いている(上方を向いていてもよい。)。切断刃6は両刃でもよく種々の形状を有していてよい。なお、本実施形態は、切断手段としてかかる切断刃6を用いる態様であるが、例えばバンドマシンやスライサー等の漉き割り機等、皮革加工の分野で使用されている各種切断手段を用いることもできる。
【0036】
かくして、上側ローラ8a及び下側ローラ8bによって矢印Xの向きに搬送される積層体4は、図3に示される位置から図5に示される位置に搬送される過程において、押圧・積層された状態の積層体4におけるシート状材料1の一部が、切断刃6で切り取られる(切断される)。
【0037】
即ち、図4及び図5に示されるように、積層体4のうちのシート状材料1において、型2と反対側においてパターン2aの凸状部に対応して隆起する部分Pを、矢印Xの向きにおける下流側に設けられた切断刃6で漉いて、漉き溝1aが形成される。このとき、漉き溝1aからシート状材料1の内側層が露出するように、つまり、シート状材料1の一部が複数層に亘って切り取られるように、切断刃6の位置を設定することが好ましい。
【0038】
ここで、図6を参照しながら、積層体4のうちのシート状材料1において、型2と反対側においてパターン2aの凸状部に対応して隆起する部分Pが切断刃6で切り取られ、漉き溝1aが形成される様子を詳細に説明する。
【0039】
図6(A)に示すように、積層体4は、シート状材料1と、凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2と、を含んでいる。この積層体4を、上側ローラ8a及び下側ローラ8bで互いに押圧しながら搬送すると、図6(B)に示すように、パターン2aの凸状部に対応して下方に隆起する部分Pが形成される。
【0040】
この隆起する部分Pは、切断刃6によって、複数層に亘って切断されて切り取られ、図6(C)に示すように、シート状材料1のうちの型2とは反対側に漉き溝1aが形成される。切断刃6は、例えば、切断刃6の先端部が図6(B)において破線Qで示される位置に沿うように、配置され、部分Pを確実に切断するように調整すればよい。
【0041】
本実施形態においては、上記のようなパターン漉き方法及びパターン漉き装置10により、所望するパターン2aを有する型2を用いてシート状材料1に効率良く漉き溝1aを形成することができ、続く折り曲げ加工等を経て、種々のデザインを有するシート材をシンプルな工程で大量に生産することが可能である。このとき、シート状材料1の厚み等の構造、搬送速度、加工時の天候等の各工程の諸条件に応じて、同じパターン2aに対して生成される模様1bは微妙に異なってくるため、シート状材料1から、表面に立体感のある三次元的な模様からなる固有のデザインを有するシート材が得られ、より良いデザインが生まれる可能性も期待される。
【0042】
ここで、より具体的な例を挙げる。図7及び図8は凸状部で構成された所定のパターン2aと基部2bを有する型2,2’の一具体例の平面図である。型2,2’は一組で使用されるように設計されており、したがって、シート状材料1は、型2,2’又は型2’,2の順に、2度漉かれることになる。なお、各型に他の型のデザインを例えば線で表示しておくと、積層体4を準備する際の型2,2’の向きを正しくセットすることができる。
【0043】
また、型ごとに搬送時の向きが予め設定されており、例えば、型2の搬送時の向きは矢印Sの方向であり、型2’の搬送時の向きは矢印Tの方向である。搬送時の向きは、各型のデザインをより忠実に再現する観点から設定されるものであり、例えば、パターン2aを構成する凸状部が延びる向きに概ね設定するとよい。なお、搬送時の向きについては、当該向きとシート状材料1及び型2,2‘の構成等に条件との組合せによって、形成される模様やデザインが種々変化し得るため、所望する模様やデザインに応じて、適宜決定すればよい。
【0044】
その結果、シート状材料1には、図9のような模様1bが形成される。図9は、図7及び図8の型2,2’と上記の本発明のパターン漉き方法及びパターン漉き装置10を用いて漉き溝1aを形成したシート状材料1の平面図である。
【0045】
この図9のシート状材料1を適宜折り曲げることにより、漉き溝1aに対応する模様1bを有する最終製品(例えばカバン)を得ることができる。
【0046】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更した態様も全て本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、パターン漉き装置10は、型2,2’を自動的に取り換える装置を具備していてもよいし、上側ローラ8aと下側ローラ8bとの組合せを複数具備していてもよい。長尺状のままのシート状材料1に、型2,2’を用いて、連続して本発明のパターン漉き工程を施し、その後に、長尺状のシート状材料1を切断してもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、最終製品がカバンである場合について説明したが、シート状材料1の種類によっては種々の最終に適用可能である。例えば、ベルト、靴、財布、ポーチ及びブックカバー等の製品が挙げられ、更には、模型、木工品、家具、金属製品等の製品にも、例えば最終製品の表面に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・シート状材料、
1a・・・漉き溝、
1b・・・模様、
2,2’・・・型、
2a・・・パターン、
2b・・・基部、
4・・・積層体、
6・・・切断刃、
8a・・・上側ローラ、
8b・・・下側ローラ、
10・・・パターン漉き装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9