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特許7246677スクリーンマスク、スクリーン印刷装置、及び印刷物の製造方法
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  • 特許-スクリーンマスク、スクリーン印刷装置、及び印刷物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】スクリーンマスク、スクリーン印刷装置、及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20230320BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20230320BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20230320BHJP
   H05K 3/12 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
B41N1/24
B41F15/08 303E
B41M1/12
H05K3/12 610P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018167979
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020040243
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】松本 華奈
(72)【発明者】
【氏名】八木 功一郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 希仁
(72)【発明者】
【氏名】坪井 恵
(72)【発明者】
【氏名】旭 晃一
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118480(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202713(JP,U)
【文献】特開平11-170719(JP,A)
【文献】特開2007-062225(JP,A)
【文献】特開2005-138318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0080738(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007052679(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B41F 15/08
B41M 1/12
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部と、
前記メッシュ部に設けられ、所定のパターンを有する、マスク膜と、
前記メッシュ部の周縁部の少なくとも一部を支持するサポート部材と、
前記サポート部材の外周部を支持するフレームと、
を備え、
前記サポート部材は金属材料で板状に構成されたサポートプレートであり、
前記メッシュ部は、塗布材を透過する孔部を有するメインメッシュと、前記メインメッシュよりも伸び率が低く構成され前記メインメッシュの外周に設けられたサポートメッシュと、を備え、
前記メインメッシュ及び前記サポートメッシュは金属材料で構成されスクリーンマスク。
【請求項2】
前記メッシュ部に定められた基準点と、印刷物上に転写された基準点の差が、15μm以下である、請求項に記載のスクリーンマスク。
【請求項3】
請求項1または2記載のスクリーンマスクと、
前記スクリーンマスクと印刷媒体とを支持する支持部と、
前記スクリーンマスクの前記印刷媒体に対向する面とは反対側の面に当接して移動可能に構成されたスキージと、を備え、
前記メッシュ部は、前記マスク膜の前記パターンに塗布材が保持された状態で、前記マスク膜が印刷媒体に接離することにより、前記塗布材が前記パターンから前記印刷媒体に転写されるスクリーン印刷装置。
【請求項4】
請求項に記載のスクリーン印刷装置の、前記マスク膜に塗布材を保持させ、
前記スクリーンマスクと前記印刷媒体とを、5mm以下のギャップを介して対向配置し、
前記マスク膜の前記パターンから、前記マスク膜の表面に対向配置された印刷媒体に、前記塗布材を塗布する印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スクリーンマスク、スクリーン印刷装置、印刷物の製造方法、及びスクリーンマスクの支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷法は、メッシュ部上に樹脂組成物で形成された所定の開口パターンが形成されたスクリーンマスクを用い、印刷媒体に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
近年、電子部品の小型化、高品質化により、スクリーンマスクの高精度化が求められている。
【0004】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュ部と、メッシュ部に設けられ開口パターンを有するマスク膜と、を備える。
【0005】
このようなスクリーンマスクにおいて、パターンを有するマスク膜を保持するメインメッシュと、メインメッシュの外周に配置されメインメッシュよりも伸びやすく構成されたサポートメッシュと、を接着剤で固定したいわゆるコンビネーション型のメッシュが知られている。例えばサポートメッシュは、合成樹脂材料で構成され、伸縮性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-169783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
印刷時には、塗布材を保持したスクリーンマスクを印刷媒体に所定のギャップを介して対向配置させ、スキージ等によりスクリーンマスクを印刷媒体に押しつけることで、塗布材が印刷媒体に転写され、スクリーンマスクの開口パターンに対応する画が描画される。このとき、メッシュ部が伸びることにより位置ずれが発生する場合がある。
【0008】
本発明は高精度の印刷が可能なスクリーンマスク、スクリーン印刷装置、印刷物の製造方法、及びスクリーンマスクの支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様にかかるスクリーンマスクは、塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部と、前記メッシュ部に設けられ、所定のパターンを有する、マスク膜と、前記メッシュ部の周縁部の少なくとも一部を支持するサポート部材と、前記サポート部材の外周部を支持するフレームと、を備える。
前記サポート部材は金属材料で板状に構成されたサポートプレートであり、
前記メッシュ部は、塗布材を透過する孔部を有するメインメッシュと、前記メインメッシュよりも伸び率が低く構成され前記メインメッシュの外周に設けられたサポートメッシュと、を備え、
前記メインメッシュ及び前記サポートメッシュは金属材料で構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、高精度の印刷が可能なスクリーンマスク、スクリーン印刷装置、及び印刷物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す平面図。
図2】同実施形態にかかるスクリーン印刷装置の側面図。
図3】同スクリーン印刷装置の側面図。
図4】第1実施形態,他の実施形態、及び比較例にかかるスクリーンマスクと印刷物の位置精度を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について図1乃至図3を参照して説明する。図1は本実施形態に係るスクリーン印刷装置10をZ方向から見た平面図であり図2はスクリーン印刷装置のX方向から見た側面図、図3はY方向から見た側面図である。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示しており、第1方向はY方向、第2方向はX方向である。
【0013】
図1乃至図3に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側である一方の面(表面)に対向して印刷媒体30を保持する保持部材12と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の他方の面(裏面)に当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動手段と、スクリーンマスク20を印刷媒体30に対向して支持する支持手段14と、を備える。
【0014】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体30の表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。スクリーン印刷装置10は、例えば、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0015】
図1乃至図3に示すように、スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設されたメッシュ部22と、メッシュ部22に形成されたマスク膜23と、メッシュ部22のマスク膜23よりも外周に配されるサポート部材としてのサポートプレート24と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に印刷媒体30の表面に対向する側を表面とし、その反対側であって塗布材が供給される側を裏面とする。本実施形態においては一例として320サイズのスクリーンマスク20を用いる。
【0016】
フレーム21は、互いに平行な2対の辺を有し、例えば所望のサイズの方形の開口部21aを備える枠状に構成される。フレーム21は、例えばアルミニウム等の金属材料で構成される。例えば320サイズのフレーム21において、厚さ寸法は13mm~18mm、すなわち、枠の短手に対して3.5%~7%程度、幅寸法は16mm~26mm、すなわち枠の短手に対して5%~8%程度に構成される。フレーム21は、接着剤によりその表面にサポートプレート24が接合される。フレーム21はサポートプレート24を介してメッシュ部22の外周縁を支持し、開口部21aにメッシュ部22を張設する。
【0017】
またフレーム21は、所定量の塗布材をマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。
【0018】
メッシュ部22は、伸び率の異なる中央部のメインメッシュ26と外周部のサポートメッシュ27とがUV硬化性の接着剤で固定されて接続されたいわゆるコンビネーション型である。メッシュ部22は、フレーム21の開口部21a内にマスク膜23を保持する。
【0019】
メインメッシュ26は、経糸26aと緯糸26bとが編まれて形成された織物であり、塗布材を透過可能に開口した透過部である孔部26cを多数有している。メインメッシュ26の経糸26aと緯糸26bは、例えばステンレス,タングステン等の金属のワイヤで構成されている。経糸26aと緯糸26bは、それぞれ例えば矢印Aに沿うスキージ13の移動方向に対して、斜めに延びている。
【0020】
メインメッシュ26は、例えば一辺のサイズがフレーム21の30%以上80%以下であり、例えば一辺の長さL3が150mm~240mmの、正方形状又は長方形状に構成されている。本実施形態においては一例として一辺の長さL3=200mmの正方形とした。
【0021】
サポートメッシュ27は、メインメッシュ26の外周に接着剤によって接合されている。サポートメッシュ27は、経糸27aと緯糸27bとが編まれて形成された織物であるメッシュ部材で構成され、外周縁が少なくとも一部においてサポートプレート24に支持されている。本実施形態においては、サポートメッシュ27は全周においてサポートプレート24の一方の面に接着され、支持される。サポートメッシュ27の外形、すなわちメッシュ部材のうちサポートプレート24の開口部24a内に規定される部位は、一辺の長さL2がフレーム21の40%以上90%以下であり、例えば190mm~280mmの矩形状に構成されている。本実施形態では一例として一辺の長さL2=250mmの正方形とした。サポートメッシュ27は、メインメッシュ26よりも伸び率が低く構成されている。サポートメッシュ27の、経糸27aと緯糸27bとは、例えばステンレス等の金属のワイヤで構成されている。
【0022】
例えば本実施形態において、メインメッシュ26の伸び率は、サポートメッシュ27の伸び率よりも大きい。例えば、引張り試験機にて引張った場合、メインメッシュ26の伸び率がサポートメッシュ27の伸び率の1倍~5倍である。
【0023】
サポートメッシュ27の外形はフレーム21の開口部21aの形状に対応する形状であって、X方向の寸法とY方向の寸法が同等の正方形状に構成されている。サポートメッシュ27の外周が例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤等によってサポートプレート24に接合され、支持されている。
【0024】
マスク膜23は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。マスク膜23は、メッシュ部22に形成され、サポートプレート24の開口部24a内のメインメッシュ26に配されている。
【0025】
マスク膜23は例えば一辺の長さが開口部24aの長さの30%~90%程度に構成されている。マスク膜23には、マスクレス露光によって、印刷用の所定の開口パターン23aが形成されている。開口パターン23aはメインメッシュ26部分に形成されている。例えば開口パターン23aは、マスク膜23の有効エリアA3において、同じモジュールパターン23bが縦方向及び横方向にそれぞれ複数、例えば30列及び40列で、マトリクス状に、配列されている。例えば各モジュールパターンはラインパターンであり、ライン幅は20μm~50μmに構成されている。
【0026】
本実施形態において、メインメッシュ26の外縁よりも中央側にパターンが形成される有効エリアA3が規定され、その有効エリアA3の内側に、開口パターン23aが形成される。有効エリアA3内であって、開口パターン23aの外側の所定箇所には複数のアライメントマークAMが設けられている。アライメントマークAMは、所定の長方形の領域を規定するコーナーを含む例えば8箇所に設けられている。
【0027】
マスク膜23は、開口パターン23aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ部22の孔部を通過して塗布材が裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23の開口パターン23a以外であってメッシュ部22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材としてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0028】
マスク膜23の開口パターン23aに塗布材が保持された状態で、メッシュ部22の変形によりマスク膜23が印刷媒体30に接離することで、塗布材が開口パターン23aから印刷媒体30に転写される。
【0029】
サポートプレート24は、例えばアルミニウム等の金属材料で構成され、メッシュ部22の外周縁に貼付けられた枠状のプレート部材である。サポートプレート24は、例えば中央に開口部24aが形成された矩形状に構成される。サポートプレート24は、メッシュ部22の裏面側の外周縁、すなわち本実施形態においてはサポートメッシュ27の外周縁に、貼付けられている。サポートプレート24の板厚は0.1mm以上5mm以下程度であり、例えば本実施形態においては厚さ0.2mmに構成されている。サポートプレート24は開口部24aが例えば一辺の長さL2が190mm以上280mm以下の矩形状であり例えば本実施形態においては一辺の長さL2=250mm四方の正方形とした。また、サポートプレート24の幅寸法は20mm以上65mm以下とし、例えば本実施形態においては35mmとした。例えばサポートプレート24がフレーム21から延出する延出部の寸法は、フレーム21の幅寸法よりも大きい。
【0030】
サポートプレート24の内周縁はフレーム21の内周縁よりも内側に位置している。このため、フレーム21の開口部21a内において、サポートプレート24の開口部24aの縁にメッシュ部22の外周縁が全周に亘って接着され、支持される。
【0031】
メッシュ部22は、フレーム21と、フレーム21から開口部21aの内方に延出する薄い板状のサポートプレート24とによって構成される支持部材に、支持される。
【0032】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚みが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して往復移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有して構成される。スキージ13の先端部分13aがスクリーンマスク20の裏面に当接し、表側に押しつけられた状態で、Y方向に沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材が予め充填された開口パターン23aから塗布材を表側に押し出す。
【0033】
支持手段は、印刷媒体30に対して所定のギャップG1を開けて平行に、フレーム21を支持する。移動手段は、スキージ13を所定の速度で第1方向に沿って移動させる。ここで、G1は例えば、5mm以下とする。
【0034】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物31を製造する印刷物の製造方法について、図2及び図3を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体30の表面に対向させて配置する。
【0035】
そして、高粘度のペースト状の塗布材をスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体30とは反対側の面から供給し、塗布材を開口パターン23a内に充填させる。
【0036】
次に、スクリーンマスク20の裏面、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体30の表側の面に対して所定の角度θで配置する。そして、スキージ13をメッシュ部22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体30側に向けて押しつけながら、Y方向に沿って、所定の速度で移動させる。
【0037】
スキージ13は、例えばマスク膜23の裏面全面にわたる領域でマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体30に当接する。スキージ13が通過した塗布材が開口パターン23aから印刷媒体30側に押し出される。
【0038】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ部22が復元するように変形して印刷媒体30から離れるとともに、一部の塗布材が印刷媒体30上に転写されて残ることで塗布され、印刷媒体30上にパターン印刷がなされ、印刷物31が完成する。ここでは、開口パターン23aとして複数の同じモジュールパターンを同時に描画し、印刷後に印刷物を切断して分割することで、同じモジュールパターンを有する複数の印刷物が製造される。なお塗布材は、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。
印刷時にはX方向に長いスキージ13を、Z方向に押し付けながら、Y方向に所定量移動させる。この移動と押しつけによってメッシュ部22が変形して伸びる。
【0039】
ここで、スクリーンマスク20において、メッシュ部22の伸び量は、メインメッシュ26の伸び量と、サポートメッシュ27の伸び量の合計となる。ここで、メッシュ部22はその外周縁部が一部、サポートプレート24に貼付けられ支持されていることから、外周縁部の伸び及び変形が抑制される。このため、スクリーンマスク20上の複数のアライメントマークAM1と、印刷物31上に転写されたアライメントマークAM2との誤差は小さくなる。
【0040】
また、スクリーンマスク20の表面と印刷媒体30とのギャップG1は5mm以下としたことにより、印刷時の伸び及び変形が抑制され、位置ずれが小さくなる。
【0041】
以上のように構成されたスクリーンマスク20、スクリーン印刷装置10、及びスクリーン印刷方法によれば、単純な構成で高精度の印刷が可能となる。
【0042】
すなわち、サポートプレート24に貼付けられ支持されていることから、外周縁部の伸び及び変形が抑制され、メッシュの変形による印刷形状のずれを抑制できる。
【0043】
また、ギャップG1は5mm以下としたことにより、印刷時の伸び及び変形が抑制され、印刷形状のずれを抑制できる。
【0044】
特に同媒体に何層も積層して印刷する場合に、好適である。したがって、例えば異なるパターンを有する複数のスクリーンマスクを用いて複数のパターンを重ねて印刷する積層印刷にも好適である。
【0045】
また、メッシュ部を金属材料で構成したことにより、引張り強度が強くなるため版離れが良好になり、かつ高位置精度の印刷を可能にする。
【0046】
また、本実施形態によれば、サポートプレート24を設けることで、メッシュ部22の支持状態を調整できるため、既存のフレーム21及びメッシュ部22を用いることができる。すなわち、既存のスクリーン印刷装置を用いて、支持構造として、フレーム21に、内周に延出するサポートプレート24を追加するだけで、位置精度の高い印刷が実現できるため、汎用性が高い。また、サポートプレート24の幅やギャップG1を調整することにより、メッシュ部22の支持状態を調整できるため、既存のフレーム21やスクリーン印刷装置を用いて、位置精度の高い印刷が実現できる。
【0047】
図4は、本実施形態にかかるスクリーンマスク20と、サポートプレートを用いない比較例1に係るスクリーンマスクA1の、位置精度の測定結果を示す。比較例1にかかるスクリーンマスクA1は、合成樹脂製のサポートメッシュ127と、金属製のメインメッシュ126とで構成されるメッシュ部材122をフレーム121に接合し、サポートプレートを用いない構成とした。その他の条件はスクリーンマスク20と同様とした。
【0048】
図4は、本実施形態にかかるスクリーンマスク20と、変形例にかかるスクリーンマスク20Aと、比較例にかかるスクリーンマスクA1の、構成と、その動き難さ、位置ずれ量、を比較して示している。
【0049】
ここで、位置ずれ量は、スクリーンマスク20、A1上の複数のアライメントAM1と、印刷物31上に転写されたアライメントマークAM2との誤差の平均とした。例えば有効エリア内であって開口パターン23aが形成されている描画エリアの外側の目印となる任意の位置に、設定する。すなわち、例えば正方形または長方形を規定する四隅と、その中間点、及びその中心の計9点を設計値上の基準点として設定した。
【0050】
そして、スクリーンマスク20におけるアライメントマークAM1の座標を検出し、これらの座標から算出される中心点との相対的な位置関係を実測の外形情報として検出する。印刷物31上のアライメントマークAM2の座標とその中心との位置関係から、誤差を求め、この誤差の大きさを位置ずれ量とした。
【0051】
図4によれば、本実施形態にかかるスクリーンマスク20は位置ずれ量が0μm~15μmとなり、比較例1に係るスクリーンマスクA1は位置ずれ量が25μmより大きい。
すなわち、本実施形態にかかるスクリーンマスク20は、印刷媒体30とマスク膜23の位置ずれが少なく、位置精度が高い。したがって、例えば複数の異なるパターンの印刷を積層させることで、所望の製品を作製する際の重ね合わせ精度が向上するという効果が得られる。
【0052】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば上記実施形態においては、コンビネーション型のメッシュ部を例示したが、これに限られるものではなく、1種類のメインメッシュからなるシングルタイプのメッシュ部22であってもよい。この場合にあっても、上記第1実施形態と同様の効果を得られる。すなわち、メッシュ部22を支持するサポートプレートを備えることにより、メッシュ部の伸びを抑制し、位置ずれを抑制できる。また、メッシュ部22を金属メッシュとすることで、メッシュ部22の伸び及び位置ずれを効果的に抑制できる。
【0053】
また、上記実施形態においては、サポートメッシュ27の形状を正方形としているが、これに限られるものではなく、例えば他の実施形態として長方形のサポートメッシュ27を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、フレーム21とサポートプレート24が一体として構成され、フレーム21の一部が内側に突出するプレート状の延出部を一体に有する形状であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態においてはフレーム21の一方側の面にサポートプレート24が配され、サポートプレート24の一方側の面に、メッシュ部22が接着される例を示したが、積層の順番や接合方法はこれに限られるものではない。例えばフレーム21にメッシュ部22が接着されていてもよい。あるいはフレーム21とサポートプレート24とでメッシュ部22の外周縁を挟む順番で積層されていてもよい。
【0056】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部と、
前記メッシュ部に設けられ、所定のパターンを有する、マスク膜と、
前記メッシュ部の周縁部の少なくとも一部を支持するサポート部材と、
前記サポート部材の外周部を支持するフレームと、
を備える、スクリーンマスク。
[2]
前記サポート部材は板状に構成されたサポートプレートであり、
前記メッシュ部は、塗布材を透過する孔部を有するメインメッシュと、前記メインメッシュよりも伸び率が低く構成され前記メインメッシュの外周に設けられたサポートメッシュと、を備え、
前記メインメッシュ及び前記サポートメッシュは金属材料で構成される、[1]記載のスクリーンマスク。
[3]
前記メッシュ部に定められた基準点と、印刷物上に転写された基準点の差が、15μm以下である、[1]または[2]に記載のスクリーンマスク。
[4]
[1]乃至[3]のいずれか記載のスクリーンマスクと、
前記スクリーンマスクと印刷媒体とを支持する支持部と、
前記スクリーンマスクの前記印刷面側とは反対側の面に当接して移動可能に構成されたスキージと、を備え、
前記メッシュ部は、前記マスク膜の前記パターンに塗布材が保持された状態で、前記マスク膜が印刷媒体に接離することにより、前記塗布材が前記パターンから前記印刷媒体に転写されるスクリーン印刷装置。
[5]
[4]に記載のスクリーン印刷装置の、前記マスク膜に塗布材を保持させ、
前記スクリーンマスクと前記印刷媒体とを、5mm以下のギャップを介して対向配置し、
前記マスク膜の前記パターンから、前記マスク膜の表面に対向配置された印刷媒体に、前記塗布材を塗布する印刷物の製造方法。
[6]
塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部の周縁部を支持する板状のサポート部材と、前記サポート部材の外周部を支持するフレームと、を備える、スクリーンマスクの支持部材。
【符号の説明】
【0057】
10…スクリーン印刷装置、12…保持部材、13…スキージ、14…支持手段、20、20A…スクリーンマスク、21…フレーム、21a…開口部、22…メッシュ部、23…マスク膜、23a…開口パターン、24…サポートプレート、24a…開口部、26…メインメッシュ、26a…経糸、26b…緯糸、26c…孔部、27…サポートメッシュ、27a…経糸、27b…緯糸、30…印刷媒体、31…印刷物、G1…ギャップ。
図1
図2
図3
図4