(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】クッション体
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A47C27/00 D
(21)【出願番号】P 2018186709
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】田島 幸
(72)【発明者】
【氏名】志村 洋二
(72)【発明者】
【氏名】川阪 明彦
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-223900(JP,A)
【文献】特開2015-107207(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092807(WO,A1)
【文献】特開2006-136669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配列された複数の凸部と、
前記複数の凸部の間に格子状に配列された複数の凹部と、
前記複数の凹部の間において延在する複数のスリットと、
を備え
たクッション体であって、
前記凹部は、前記スリットを有する第1凹部と、前記スリットを有しない第2凹部とを含んでおり、
複数の前記第1凹部は、前記凸部及び前記凹部が並設される方向に対して傾斜する方向に連続して配置されており、
前記凸部及び前記第1凹部を含む第1矩形状領域と、前記凸部及び前記第2凹部を含むと共に前記第1凹部を含まない第2矩形状領域と、が共に格子状に配置されて
おり、
前記クッション体は、平面視において長手方向に延びると共に幅方向に一定の幅を有する長方形状とされており、
前記第1矩形状領域及び前記第2矩形状領域は前記長手方向及び前記幅方向のそれぞれに沿って交互に配置されている、
クッション体。
【請求項2】
格子状に配列された複数の凸部と、
前記複数の凸部の間に格子状に配列された複数の凹部と、
前記複数の凹部の間において延在する複数のスリットと、
を備え
たクッション体であって、
前記凹部は、前記スリットを有する第1凹部と、前記スリットを有しない第2凹部とを含んでおり、
複数の前記第1凹部は、前記凸部及び前記凹部が並設される方向に対して傾斜する方向に連続して配置されており、
前記凸部及び前記第1凹部を含む第1矩形状領域と、前記凸部及び前記第2凹部を含むと共に前記第1凹部を含まない第2矩形状領域と、が
配置されており、
前記第1矩形状領域及び前記第2矩形状領域を含む第1領域と、第2領域とを備え、
前記第1領域に形成された前記スリットの数は、前記第2領域に形成されたスリットの数よりも多く、
前記第1領域は、前記第2領域よりも柔らかく、
前記クッション体は、前記第1領域及び前記第2領域を有するマットレスであり、
前記第2領域は、前記マットレスの長手方向の中央に位置しており、
前記第1領域は、前記第2領域に前記長手方向に隣接している、
クッション体。
【請求項3】
前記スリットは、前記マットレスを貫通すると共に前記第2領域に形成されている、
請求項
2に記載のクッション体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者の身体が当てられるクッション体に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の身体が当てられて使用者の寝心地等を良好にするクッション体としては従来から種々のものが知られている。特開2015-84783号公報には、凹凸部が形成されたマットレスが記載されている。マットレスは、格子状に配列された複数の突起部と、複数の突起部の間において格子状に配列された複数の凹部とを有する。複数の凹部のうちの一部には、マットレスを貫通するスリット状の切り込み溝が形成されている。また、前述の公報には、複数の凹部のうちの一部に管状の溝が形成されたマットレスも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したマットレスでは、1つの凹部に1つの切り込み溝又は1つの管状の溝が形成されている。従って、1つの凹部に1つの貫通孔が形成されているだけなので、マットレスに使用者が横たわっても十分に柔軟性を発揮しない場合がありクッション性において改善の余地がある。
【0005】
また、前述したマットレス等のクッション体において、貫通孔の数が多すぎる場合には、柔軟性が高すぎてへたりやすくなることがある。更に、クッション体において貫通孔をランダムに配置する場合、ある特定の部分のクッション性は高められるものの、当該特定の部分以外のクッション性が十分に高められないことがある。このように、クッション性の均一さにおいても改善の余地がある。
【0006】
本開示は、クッション性が高い領域を均一に形成することができるクッション体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るクッション体は、格子状に配列された複数の凸部と、複数の凸部の間に格子状に配列された複数の凹部と、複数の凹部の間において延在する複数のスリットと、を備えたクッション体であって、凹部は、スリットを有する第1凹部と、スリットを有しない第2凹部とを含んでおり、複数の第1凹部は、凸部及び凹部が並設される方向に対して傾斜する方向に連続して配置されており、凸部及び第1凹部を含む第1矩形状領域と、凸部及び第2凹部を含むと共に第1凹部を含まない第2矩形状領域と、が共に格子状に配置されており、クッション体は、平面視において長手方向に延びると共に幅方向に一定の幅を有する長方形状とされており、第1矩形状領域及び第2矩形状領域は長手方向及び幅方向のそれぞれに沿って交互に配置されている。
本開示の別の側面に係るクッション体は、格子状に配列された複数の凸部と、複数の凸部の間に格子状に配列された複数の凹部と、複数の凹部の間において延在する複数のスリットと、を備えたクッション体であって、凹部は、スリットを有する第1凹部と、スリットを有しない第2凹部とを含んでおり、複数の第1凹部は、凸部及び凹部が並設される方向に対して傾斜する方向に連続して配置されており、凸部及び第1凹部を含む第1矩形状領域と、凸部及び第2凹部を含むと共に第1凹部を含まない第2矩形状領域と、が配置されており、第1矩形状領域及び第2矩形状領域を含む第1領域と、第2領域とを備え、第1領域に形成されたスリットの数は、第2領域に形成されたスリットの数よりも多く、第1領域は、第2領域よりも柔らかく、クッション体は、第1領域及び第2領域を有するマットレスであり、第2領域は、マットレスの長手方向の中央に位置しており、第1領域は、第2領域に長手方向に隣接している。
【0008】
このクッション体は、複数の凸部と複数の凹部と複数のスリットとを備え、複数のスリットは複数の凹部の間において延在している。従って、各スリットが複数の凹部の間において延在するように形成されることにより、スリットが形成された凹部とその周辺のクッション性を高めることができる。また、凹部はスリットを有する第1凹部とスリットを有しない第2凹部とを含んでいる。スリットを有する複数の第1凹部は、凸部及び凹部が並設される方向に対して傾斜する方向に連続して配置されている。従って、スリットを有する複数の第1凹部が連続して配置されているので、第1凹部とその周辺のクッション性を更に高めることができる。また、スリットを有する第1凹部及び凸部を含む第1矩形状領域と、スリットを有しない第2凹部及び凸部を含む第2矩形状領域とが共に格子状に配置されている。よって、第1矩形状領域と第2矩形状領域とが交互に配置される。また、クッション体において、スリットを有しない第2矩形状領域がスリットを有する第1矩形状領域に囲まれた箇所が均一に形成される。従って、スリットを有する第1矩形状領域に囲まれた第2矩形状領域がクッション体において均一に配置されるので、クッション性が高い第2矩形状領域をクッション体に均一に配置することができる。その結果、クッション性が高い領域を均一に形成することができる。
【0009】
前述したクッション体は、第1矩形状領域及び第2矩形状領域を含む第1領域と、第2領域とを備え、第1領域に形成されたスリットの数は、第2領域に形成されたスリットの数よりも多く、第1領域は、第2領域よりも柔らかくてもよい。この場合、クッション体は、柔らかい第1領域と、第1領域よりも硬い第2領域とを備える。よって、第1領域において均一にクッション性を高めることができると共に、第2領域においてクッション体の形状をより確実に維持することができる。
【0010】
前述したクッション体は、当該第1領域及び当該第2領域を有するマットレスであってもよい。この場合、均一にクッション性が高められた第1領域と、第1領域よりも硬い第2領域とを備えたマットレスを提供することができる。
【0011】
前述したクッション体において、第2領域は、マットレスの長手方向の中央に位置しており、第1領域は、第2領域に長手方向に隣接していてもよい。この場合、マットレスの第2領域が長手方向の中央に位置し、第2領域の隣接位置に第1領域が設けられる。従って、使用者の腰が第2領域に載せられて肩が第1領域に載せられることにより、硬い第2領域で腰をしっかり支えることができると共に、柔らかい第1領域で肩の体圧分散を確実に実現させることができる。前述したように、第1領域では均一にクッション性が高められているため、使用者がどのように寝返りを打っても第1領域で高いクッション性を発揮することができる。その結果、使用者に均一に高いクッション性を提供できると共に寝心地を更に良好にすることができる。
【0012】
スリットは、マットレスを貫通すると共に第2領域に形成されていてもよい。この場合、マットレスの長手方向の中央に位置する第2領域に貫通するスリットが形成される。よって、使用者の腰が第2領域に載せられるときに、腰の周辺のクッション性及び通気性を高めることができる。従って、蒸れやすい腰の部分の通気性を高めることができるので、使用者の寝心地の更なる向上に寄与する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クッション性が高い領域を均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るクッション体を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のクッション体の表面を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のクッション体に形成されるスリットの例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1のクッション体の第1領域、第2領域及び第3領域を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4の第1領域に形成された凹凸を示す断面図である。
図5(b)は、
図4の第2領域に形成された凹凸を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るクッション体を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6のクッション体に形成されたスリットを拡大した平面図である。
【
図8】
図8は、
図6のクッション体の層構造の例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係るクッション体を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10(a)は、実施例に係るクッション体に仰向けで被検者が寝たときの圧力を例示的に示す実験結果である。
図10(b)は、比較例に係るクッション体に仰向けで被検者が寝たときの圧力分散を例示的に示す実験結果である。
【
図11】
図11(a)は、実施例に係るクッション体に横向き寝で被検者が寝たときの圧力を例示的に示す実験結果である。
図11(b)は、比較例に係るクッション体に横向き寝で被検者が寝たときの圧力を例示的に示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら実施形態に係るクッション体について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るクッション体1を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1のクッション体1の一部を拡大した平面図である。クッション体1は、例えば、マットレス、布団又はクッション等の寝具として使用される。本実施形態では、クッション体1がマットレスである例について説明する。クッション体1は、例えば、汚れ防止用のカバーに収容されて使用される。クッション体1は、例えば、寝具として使用者の身体が当てられて使用される。クッション体1は、平面視において長手方向D1に延びる長方形状とされている。クッション体1は、幅方向D2に一定の幅を有すると共に、高さ方向に一定の厚さを有する。
【0017】
クッション体1は、少なくとも、使用者の肩部が当てられる第1領域3と、使用者の腰が当てられる第2領域4と、使用者の脚部が当てられる第3領域5とを備える。更に、クッション体1は、使用者の頭部及び枕が載せられる第4領域2、及び使用者の足の先端が載せられる第5領域6を更に備えていてもよい。例えば、長手方向D1の一端から他端に向かって、第4領域2、第1領域3、第2領域4、第3領域5及び第5領域6がこの順に並んでいる。
【0018】
一例として、クッション体1の長手方向D1の中央に第2領域4が位置しており、クッション体1は第2領域4に対して互いに対称とされていてもよい。すなわち、第2領域4に対して第4領域2及び第5領域6が互いに対称となるように配置されていてもよいし、第2領域4に対して第1領域3及び第3領域5が互いに対称となるように配置されていてもよい。この場合、クッション体1の長手方向D1の向きを逆にしても逆にする前と同様に使用することが可能となる。
【0019】
一例として、第4領域2の長手方向D1の長さは15cm以上且つ45cm以下であり、第1領域3の長手方向D1の長さは20cm以上且つ60cm以下であり、第2領域4の長手方向D1の長さは25cm以上且つ70cm以下であり、第3領域5の長手方向D1の長さは20cm以上且つ60cm以下であり、第5領域6の長手方向D1の長さは15cm以上且つ45cm以下である。また、クッション体1の幅方向D2の長さ(幅)は、例えば、80cm以上且つ200cm以下である。但し、これらの各長さ及び幅の値は適宜変更可能である。更に、第4領域2及び第5領域6の少なくともいずれかを省略することも可能である。
【0020】
クッション体1は、高さ方向に突出する複数の凸部11と、高さ方向に窪む複数の凹部12とを備え、第1領域3、第2領域4、第3領域5、第4領域2及び第5領域6は、凸部11及び凹部12の配置態様が互いに異なっていてもよい。クッション体1において凸部11及び凹部12は共に格子状に配列されており、複数の凹部12は複数の凸部11の間において格子状に配列されている。
図1では、説明を容易に行うため、凸部11を灰色で示すと共に凹部12を白色で示している。
【0021】
平面視において、凸部11及び凹部12は、共に矩形状の領域のそれぞれ(
図1の灰色又は白色のマス目の1つ1つ)に配置されており、長手方向D1及び幅方向D2のそれぞれに沿って並設されている。
図1では、長手方向D1に沿って78個の当該領域が配置され、幅方向D2に沿って35個の当該領域が配置される例を示している。但し、当該領域の数は適宜変更可能である。一例として、各領域の長手方向D1の長さは2cm以上且つ7cm以下であり、各領域の幅方向D2の長さは2cm以上且つ7cm以下である。但し、上記各長さの値は適宜変更可能である。
【0022】
第1領域3は複数のスリット13を備え、第3領域5は複数のスリット14を備える。本実施形態において、例えば、第2領域4、第4領域2及び第5領域6にはスリットは形成されていない。スリット13及びスリット14の数及び配置態様は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施形態では、スリット13及びスリット14の数及び配置態様が互いに同一である例について説明する。従って、以下ではスリット13について重点的に説明を行うと共に、スリット14の説明を適宜省略する。
【0023】
スリット13は、複数の凹部12の間を延在している。スリット13は、例えば、長手方向D1及び幅方向D2の双方に傾斜する方向に斜めに延在しており、クッション体1を高さ方向に貫通していてもよい。例えば、第1領域3では、平面視において右上から左下に延びると共に幅方向D2に沿って並ぶ複数のスリット13の第1の組と、平面視において左上から右下に延びると共に幅方向D2に沿って並ぶ複数のスリット13の第2の組と、が長手方向D1に沿って交互に配置されている。一例として、当該第1の組は3つ設けられ、当該第2の組は2つ設けられ、第1の組と第2の組とが長手方向D1に沿って交互に配置されていてもよい。但し、これらの組の数及び配置態様は適宜変更可能である。
【0024】
凹部12は、スリット13が形成された第1凹部12aと、スリット13が形成されていない第2凹部12bとを含んでいる。第1領域3は、凸部11及び第1凹部12aを少なくとも含む第1矩形状領域A1と、凸部11及び第2凹部12bを含むと共に第1凹部12aを含まない第2矩形状領域A2とを有する。
【0025】
例えば、第1矩形状領域A1及び第2矩形状領域A2は、共に、3×3の凸部11及び凹部12を備える。第1矩形状領域A1においてスリット13は3個の凹部12の間で斜めに延びている。一例として、第1矩形状領域A1及び第2矩形状領域A2は長手方向D1及び幅方向D2のそれぞれに沿って交互に配置されている。すなわち、複数の第1矩形状領域A1、及び複数の第2矩形状領域A2が共に格子状に配列されており、複数の第1矩形状領域A1は複数の第2矩形状領域A2の間において格子状に配列されている。
【0026】
図3は、複数のスリット13の例を示す平面図である。各スリット13は、例えば、長手方向D1及び幅方向D2の双方に対して45°の角度を成す方向に延びている。一例として、各スリット13は、曲線状に湾曲しながら延びる波形部13aと、波形部13aの長手方向の両端のそれぞれにおいて拡径された拡径部13bとを有する。拡径部13bの形状は、例えば、円形状であるが、楕円形状、長円形状又は多角形状であってもよく、適宜変更可能である。但し、拡径部13bが円形状、楕円形状又は長円形状である場合には、鋭利な角部を有しないため、スリット13の裂けをより確実に抑制することができる。
【0027】
スリット13が曲線状の波形部13aを有することによって、スリット13の長さ方向へのずれを抑制することができる。但し、スリット13は、曲線状の波形部13aに代えて、直線状の直線部を有していてもよい。スリット13が拡径部13bを有することによって、スリット13の周囲がより変形しやすくなるので、スリット13の周囲のクッション性及び通気性をより高めることが可能となる。
【0028】
図4は、第1領域3、第2領域4及び第3領域5を示す斜視図である。
図4では、理解の容易のため、スリット13及びスリット14の図示を省略している。
図1及び
図4に示されるように、第2領域4は、クッション体1の第2領域4以外の領域と同様に、凸部11及び凹部12を備えるが、凸部11とは高さ及び幅が異なる凸部15を更に備える。例えば、複数の凸部11の間に複数の凸部15が格子状に配列されている。
【0029】
ところで、クッション体1において、スリット13が形成されている場合には、スリット13が形成されていない場合と比較して外力によるクッション体1の変形が大きくなると共に、より柔らかくなる傾向がある。また、より高い凸部11の方が、凸部15と比較して外力による変形が大きいと共に、より柔らかくなる傾向がある。
【0030】
第2領域4は、スリット13を有していないことによって第1領域3(第3領域5)より硬い領域とされている。更に、第2領域4の凸部15の高さ及び幅が第1領域3(第3領域5)の凸部11の高さ及び幅より小さいことにより、第1領域3(第3領域5)の硬さと第2領域4の硬さとの差がより顕著となっている。このように、第1領域3(第3領域5)と比較して第2領域4が硬いことにより、第2領域4に載せられる使用者の腰をしっかりと支えることができる。また、第2領域4と比較して第1領域3が柔らかいことにより、横向き寝等をした使用者の肩を第1領域3で柔軟に支えることができる。従って、柔らかい感触を使用者に与えることができるので、寝心地を良好にすることができる。
【0031】
図5(a)は、第1領域3の凸部11及び凹部12を示す断面図である。
図5(b)は、第2領域4の凸部11,15及び凹部12を示す断面図である。
図5(a)に示されるように、第1領域3において、凸部11及び凹部12は、例えば、正弦波状とされており、凸部11の高さ及び幅(周期)は凹部12の高さ及び幅と同一であってもよい。一方、
図5(b)に示されるように、第2領域4において、凸部11、凹部12及び凸部15は、湾曲した波状に形成されている。しかしながら、例えば凸部15の高さH2及び幅B2は、凸部11の高さH1及び幅B1の略半分となっており、凸部15の高さH2及び幅B2は凸部11の高さH1及び幅B1よりも小さい。
【0032】
次に、第1実施形態に係るクッション体1から得られる作用効果について詳細に説明する。
図1に示されるように、クッション体1は、複数の凸部11と複数の凹部12と複数のスリット13とを備え、複数のスリット13は複数の凹部12の間において延在している。従って、各スリット13が複数の凹部12の間において延在するように形成されることにより、スリット13が形成された凹部12(第1凹部12a)とその周辺のクッション性及び通気性を高めることができる。
【0033】
また、凹部12はスリット13を有する第1凹部12aとスリット13を有しない第2凹部12bとを含んでおり、スリット13を有する複数の第1凹部12aは長手方向D1及び幅方向D2の双方に対して傾斜する方向に連続するように配置されている。従って、スリット13を有する複数の第1凹部12aが連続して配置されているので、第1凹部12aとその周辺のクッション性及び通気性を更に高めることができる。
【0034】
また、スリット13を有する第1凹部12a及び凸部11を含む第1矩形状領域A1と、スリット13を有しない第2凹部12b及び凸部11を含む第2矩形状領域A2とが共に格子状に配置されている。よって、第1矩形状領域A1と第2矩形状領域A2とが交互に配置される。また、第1領域3において、スリット13を有しない第2矩形状領域A2がスリット13を有する第1矩形状領域A1に囲まれた箇所が均一に形成されている。
【0035】
すなわち、第1領域3において、スリット13を有しない領域(第2矩形状領域A2)がスリット13を有する領域(第1矩形状領域A1)に囲まれた箇所が第1領域3において均一に形成されているので、クッション性が高い第2矩形状領域A2を第1領域3に均一に配置することができる。その結果、第1領域3においてクッション性及び通気性が高い領域を均一に形成することができる。
【0036】
クッション体1は、第1矩形状領域A1及び第2矩形状領域A2を含む第1領域3と、第2領域4とを備え、第1領域3に形成されたスリット13の数は、第2領域4に形成されたスリットの数よりも多く、第1領域3は第2領域4より柔らかくてもよい。この場合、クッション体1は、柔らかい第1領域3と、第1領域3よりも硬い第2領域4とを備える。よって、第1領域3において均一にクッション性及び通気性を高めることができると共に、第2領域4においてクッション体1の形状をより確実に維持することができる。
【0037】
クッション体1は、第1領域3及び第2領域4を有するマットレスであってもよい。この場合、均一にクッション性及び通気性が高められた第1領域3と、第1領域3よりも硬い第2領域4とを備えたマットレスを提供することができる。
【0038】
クッション体1において、第2領域4は、マットレスの長手方向D1の中央に位置しており、第1領域3は、第2領域4に長手方向D1に隣接していてもよい。この場合、マットレスの第2領域4が長手方向D1の中央に位置し、第2領域4の隣接位置に第1領域3が設けられる。
【0039】
従って、使用者の腰が第2領域4に載せられて肩が第1領域3に載せられることにより、硬い第2領域4で腰をしっかりと支えることができると共に、柔らかい第1領域3で肩の体圧分散を確実に実現させることができる。前述したように、第1領域3では均一にクッション性及び通気性が高められているため、使用者がどのように寝返りを打っても第1領域3で高いクッション性及び通気性を発揮することができるので、使用者に均一に高いクッション性及び通気性を提供できると共に寝心地を更に良好にすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るクッション体21について
図6~
図8を参照しながら説明する。クッション体21では、スリット23,24,25の形状及び配置態様が第1実施形態とは異なっている。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。クッション体21において、第1領域3は複数のスリット23を備え、第3領域5は複数のスリット24を備え、更に、第2領域4は複数のスリット25を備える。スリット23及びスリット24の形状、数及び配置態様は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0041】
スリット23の形状は、スリット25の形状と互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施形態では、スリット23及びスリット24の形状、数及び配置態様が互いに同一であり、スリット23の形状がスリット25の形状と互いに同一である例について説明する。従って、以下ではスリット23について重点的に説明を行うと共にスリット24及びスリット25の説明を適宜省略する。
【0042】
スリット23は、複数の凹部12の間を延在しており、例えば、長手方向D1及び幅方向D2の双方に傾斜するX字状とされている。スリット23は、クッション体21を高さ方向に貫通している。このように、X字状に形成されたスリット23は、前述したスリット13よりも更に変形しやすく、より高いクッション性及び通気性を発揮することが可能である。
【0043】
前述と同様、凹部12は、スリット23が形成された第1凹部12aと、スリット23が形成されていない第2凹部12bとを含んでおり、第1領域3は、凸部11及び第1凹部12aを含む第1矩形状領域A1と、凸部11及び第2凹部12bを含むと共に第1凹部12aを含まない第2矩形状領域A2とを有する。第1矩形状領域A1において、例えば、スリット23は、5個の凹部12の間でX字状に延びている。更に、第2実施形態において、第1矩形状領域A1は第2凹部12bを有しない。
【0044】
また、第2実施形態に係るクッション体21において、第2領域4は、クッション体21の中央を含む領域に、第1矩形状領域A1と第2矩形状領域A2とを有する。例えば、クッション体21の第2領域4では、クッション体21の中央を含む領域において、長手方向D1に沿って合計3個の第2矩形状領域A2及び第1矩形状領域A1が交互に並ぶと共に、幅方向D2に沿って合計5個の第2矩形状領域A2及び第1矩形状領域A1が交互に並んでいる。
【0045】
すなわち、8個の第2矩形状領域A2と7個の第1矩形状領域A1とがクッション体21の中央を含む領域において交互に配列されている。このように、クッション体21では、第2領域4の中央にスリット25が形成されている。第2領域4では、第1領域3と同様、複数の第1矩形状領域A1、及び複数の第2矩形状領域A2が共に格子状に配列されている。
【0046】
図7は、スリット23を示す平面図である。例えば、スリット23(スリット24,25)は、中央貫通部23aと、中央貫通部23aから長手方向D1及び幅方向D2の双方に対して45°の角度を成す方向に放射状に延びる複数本(一例として4本)の直線部23bと、各直線部23bの中央貫通部23aとの反対側の端部において拡径された拡径部23cとを有する。各拡径部23cの形状は、例えば拡径部13bと同様、円形状であるが、他の形状であってもよい。
【0047】
スリット23は、中央貫通部23aと、中央貫通部23aから放射状に延びる複数本の直線部23bとを有するX字状とされているので、スリット13よりも高いクッション性及び通気性を発揮する。特に、中央貫通部23aの周囲であって且つ複数の直線部23bの間の部位で高いクッション性を発揮する。そして、スリット23は、拡径部23cを有することによってクッション性及び通気性を更に高めることが可能となる。
【0048】
図8は、クッション体21の層構造を示す断面図である。
図8に示されるように、クッション体21の凸部11は、上側から順に第1硬質層26、第1硬質層26より柔らかい軟質層27、及び軟質層27より硬い第2硬質層28を備えていてもよい。この場合、クッション体21は、第1硬質層26、軟質層27及び第2硬質層28を備えた三層構造となっている。例えば、第1硬質層26は使用者の身体が接触する接触層、軟質層27は当該身体の体圧を分散する体圧分散層、第2硬質層28は当該使用者の寝姿勢を保持する寝姿勢保持層、に相当する。
【0049】
上記のように、クッション体21は、第1硬質層26、軟質層27及び第2硬質層28からなる三層構造を備え、第1硬質層26と第2硬質層28の間に挟まれた軟質層27によって体圧が分散されるので、クッション体21の上に長時間横たわっても良好なフィット感を使用者に与え続けることが可能となる。なお、第1硬質層26の硬さと第2硬質層28の硬さとは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、第1硬質層26、軟質層27及び第2硬質層28の三層構造に代えて、第1軟質層、硬質層及び第2軟質層の三層構造を備えていてもよい。また、第1実施形態のクッション体1が第1硬質層26、軟質層27及び第2硬質層28を備えていてもよい。
【0050】
図6に示されるように、第2実施形態に係るクッション体21は、スリット23を有する第1凹部12a及び凸部11を含む第1矩形状領域A1と、スリット23を有しない第2凹部12b及び凸部11を含む第2矩形状領域A2とが共に格子状に配置されている。よって、第1領域3において、スリット23を有しない第2矩形状領域A2がスリット23を有する第1矩形状領域A1に囲まれた箇所が均一に形成されている。従って、第1実施形態と同様、第1領域3においてクッション性及び通気性が高い領域を均一に形成することができる。
【0051】
クッション体21において、スリット25は、マットレスを貫通すると共に第2領域4に形成されていてもよい。この場合、マットレスの長手方向D1の中央に位置する第2領域4に貫通するスリット25が形成される。よって、使用者の腰が第2領域4に載せられるときに、腰の周辺のクッション性及び通気性を高めることができる。従って、蒸れやすい腰の部分の通気性を高めることができるので、使用者の寝心地の更なる向上に寄与する。なお、第1実施形態に係るクッション体1において、マットレスを貫通するスリット25が第2領域4に形成されていてもよい。
【0052】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係るクッション体31について
図9を参照しながら説明する。第3実施形態に係るクッション体31は、第1矩形状領域A31及び第2矩形状領域A32の数及び広さが第2実施形態と異なっている。すなわち、第1及び第2実施形態では、スリット13,23が形成されている第1矩形状領域A1の広さとスリット13,23が形成されていない第2矩形状領域A2の広さとが互いに同一である例について説明した。しかしながら、第3実施形態では、スリット23が形成されている第1矩形状領域A31の広さが、スリット23が形成されていない第2矩形状領域A32の広さよりも狭い。従って、第3実施形態のスリット23の数及び密度は、第2実施形態のスリット23の数及び密度よりも小さくなっている。
【0053】
以上、第3実施形態に係るクッション体31では、クッション体1,21と同様、第1矩形状領域A31及び第2矩形状領域A32が共に格子状に配置されているので、第1領域3においてクッション性及び通気性が高い領域を均一に形成することができる。そして、第2領域4に貫通するスリット25が形成されているので、腰の周辺のクッション性及び通気性を高めることができる。
【0054】
以上、本開示に係るクッション体の各実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した各実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形されたものであってもよい。すなわち、クッション体の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、前述の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。例えば、前述の実施形態では、第1領域3、第2領域4、第3領域5、第4領域2及び第5領域6を有するクッション体1について説明した。しかしながら、クッション体が有する領域の数は、1つ以上且つ4つ以下、又は6つ以上であってもよく適宜変更可能である。
【0055】
前述の実施形態では、スリット13が曲線状の波形部13aを有する例について説明した。しかしながら、スリット14、スリット23、スリット24及びスリット25の少なくともいずれかが波形部13aと同様の波形部を有していてもよい。具体例として、
図7に示されるスリット23は、直線部23bに代えて、波形部13aと同様の波形部を有していてもよい。この場合、前述と同様、スリット23の波形部の長さ方向へのずれを抑制することができる。
【0056】
前述した実施形態では、クッション体1,21,31がマットレスである例について説明した。しかしながら、本発明に係るクッション体は、マットレス以外にも適用可能であり、例えば、枕用の芯材、枕以外の寝具の芯材、自動車若しくは電車等といった車両用のシート、航空機等の車両以外の輸送機用のシート、又は介護用の椅子等といった輸送機以外のシートにも適用可能である。
【0057】
(実施例)
以下では、クッション体の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。実施例では第1領域3にスリット13が形成されたクッション体1を用いたときの体圧分散を測定し、比較例では第1領域にスリットが形成されていないクッション体を用いたときの体圧分散を測定した。
【0058】
被検者を敷き寝具の上で仰向けにして上記実施例及び比較例において体圧分散を測定した結果を
図10(a)及び
図10(b)に示している。
図10(a)は実施例のクッション体1に被検者を仰向けにしたときの測定結果を示し、
図10(b)は比較例のクッション体に被検者を仰向けにしたときの測定結果を示している。
図10(a)及び
図10(b)は、クッション体に付与される圧力の値をマトリクス状に示しており、色が濃い部分に高い圧力がかかっており、色が薄い部分には低い圧力しかかかっていないことを示している。
【0059】
図10(b)に示されるように、スリットを有しない比較例の場合には、被検者の肩及び腰のあたりに高い圧力がかかっていることが分かる。一方、
図10(a)に示されるように、スリット13有りのクッション体1を用いた実施例の場合には、肩及び腰にかかっていた圧力が緩和されており、クッション体1によって被検者の体圧が分散されていることが分かる。
【0060】
また、比較例のクッション体に付与された最大体圧は30mmHg~35mmHg、平均体圧は8mmHg~10mmHgであったのに対し、実施例のクッション体1に付与された最大体圧は25mmHg~30mmHg、平均体圧は6mmHg~8mmHgであった。このように、スリット13有りのクッション体1では、最大体圧及び平均体圧を共に減少できることが分かった。
【0061】
図11(a)は実施例のクッション体1に被検者を横向き寝にしたときの圧力の値をマトリクス状に示しており、
図11(b)は比較例のクッション体に被検者を横向き寝にしたときの圧力の値をマトリクス状に示している。
図11(b)に示されるように、スリットを有しない比較例の場合には、横向き寝とされた被検者の肩及び腰のあたりに高い圧力がかかっていることが分かる。
【0062】
これに対し、
図11(a)に示されるように、スリット13有りのクッション体1を用いた実施例の場合には、横向き寝とされた被検者の肩及び腰にかかっていた圧力が緩和されており、クッション体1によって横向き寝とされた被検者の体圧が分散されていることが分かる。また、比較例のクッション体に付与された横向き寝時の最大体圧が35mmHg程度、平均体圧が10mmHg~12mmHgであったのに対し、実施例のクッション体1に付与された横向き寝時の最大体圧が30mmHg程度、平均体圧が8mmHg程度であった。このように、スリット13有りのクッション体1では、横向き寝時であっても最大体圧及び平均体圧を共に減少できることが分かった。
【符号の説明】
【0063】
1,21,31…クッション体、2…第4領域、3…第1領域、4…第2領域、5…第3領域、6…第5領域、11…凸部、12…凹部、12a…第1凹部、12b…第2凹部、13,14…スリット、13a…波形部、13b…拡径部、15…凸部、23,24,25…スリット、23a…中央貫通部、23b…直線部、23c…拡径部、26…第1硬質層、27…軟質層、28…第2硬質層、A1,A31…第1矩形状領域、A2,A32…第2矩形状領域、B1,B2…幅、D1…長手方向、D2…幅方向。