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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/02 20060101AFI20230320BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20230320BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230320BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230320BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230320BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230320BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C08L3/02
C08L23/02
C08L67/00
C08K5/17
C08K7/02
C08J5/18 CEP
C08J3/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018234835
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094162
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 TOKYO PACK 2018(2018東京国際包装展) 展示日 平成30年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】山田 知夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 奈緒美
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-239265(JP,A)
【文献】特開平05-209091(JP,A)
【文献】特開2015-065829(JP,A)
【文献】特表2005-507018(JP,A)
【文献】国際公開第2008/153149(WO,A1)
【文献】特開2004-339496(JP,A)
【文献】特開2004-002613(JP,A)
【文献】特表2003-519708(JP,A)
【文献】特開2018-188656(JP,A)
【文献】特開平09-194696(JP,A)
【文献】特表2014-517864(JP,A)
【文献】特表2016-524029(JP,A)
【文献】米国特許第09203918(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/222
C08J 3/00 - 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を含み、
前記可塑化澱粉材料が、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、
樹脂組成物。
【請求項2】
可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を含み、
前記可塑化澱粉材料が、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物である、
樹脂組成物。
【請求項3】
前記可塑化澱粉材料が、発泡した部分を有さない、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記可塑化澱粉が、澱粉の可塑化物又は変性された澱粉の可塑化物である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
セルロースナノファイバーをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成されている層を含むフィルム又はシート。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成されている層を表面に有し且つJIS B0031に従い測定された平均粗さ(Ra)が2μm以下である面を有するフィルム又はシート。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成されている、多孔性のフィルム又はシート。
【請求項9】
可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である
ポリオレフィン系樹脂と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる可塑化澱粉材料。
【請求項10】
可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり、且つ、
ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる
可塑化澱粉材料。
【請求項11】
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能であり且つ10~25のSP値を有する極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する第一混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記第一混合工程、
前記第一混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程であって、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である前記可塑化工程、及び
前記可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を混合して樹脂組成物を得る第二混合工程
を含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、
樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能であり且つ10~25のSP値を有する極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する第一混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記第一混合工程、
前記第一混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程であって、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である前記可塑化工程、及び
前記可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を混合して樹脂組成物を得る第二混合工程
を含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物である、
樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能であり且つ10~25のSP値を有する極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記混合工程、及び
前記混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程、
を含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含む、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり且つポリオレフィン系樹脂と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる可塑化澱粉材料の製造方法。
【請求項14】
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記混合工程、及び
前記混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程、
を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含む、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり且つポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる可塑化澱粉材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑化澱粉材料を含む樹脂組成物、当該樹脂組成物から形成されたフィルム又はシート、当該可塑化澱粉材料、当該樹脂組成物の製造方法、及び当該可塑化澱粉材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス素材を含むプラスチック成形品が注目されている。当該プラスチック成形品は、バイオマス素材を石油系材料の代替として含むので、燃焼時に排出されるCO2を削減可能である。バイオマス素材としては、例えば廃棄物系バイオマス(食物廃棄物、家畜排泄物、建築廃材、及び古紙など)、未利用バイオマス(農作物非食用部及び林地残材など)、及び、資源穀物を挙げることができる。
【0003】
バイオマス素材を含むプラスチック成形品に関して、例えば、下記特許文献1には、50~70重量%の澱粉と、20~40重量%の熱可塑性樹脂と、0.1~10重量%の融点が60~100℃の低融点添加剤と、1~15重量%の融点が100℃~150℃の高融点添加剤を含み、熱可塑性樹脂の粒状体のコア部を有し、該粒状体のコア部表面に少なくとも高融点添加剤により付着した、少なくとも低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層を備える澱粉・樹脂複合中間粒体を原料とする樹脂溶融押出してなる澱粉・樹脂複合成形加工材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-104629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチック成形品に含まれるバイオマス素材の割合を高めることができれば、排出CO2の量の削減に貢献することができる。一方で、バイオマス素材の割合を高めることは、プラスチック成形品の品質に影響を及ぼし得る。そこで、本発明は、バイオマス素材の含有割合が高く且つ良好な品質を有するプラスチック成形品を提供するための新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の可塑化澱粉材料によって、バイオマス素材の含有割合が高く且つ良好な品質を有するプラスチック成形品を提供することができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を含み、前記可塑化澱粉材料が、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、且つ前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である樹脂組成物を提供する。
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、少なくとも一つのアミド基を有する化合物であってよい。
前記可塑化澱粉材料は、発泡した部分を有さないものであってよい。
前記極性有機化合物が、常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を含み、且つ、当該常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、多価アルコールから選ばれる少なくとも一つの化合物を含みうる。
前記可塑化澱粉は、澱粉の可塑化物又は変性された澱粉の可塑化物でありうる。
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂、又は、これらの樹脂の混合物でありうる。
前記樹脂組成物は、セルロースナノファイバーをさらに含みうる。
また、本発明は、
可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を含み、
前記可塑化澱粉材料が、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、
樹脂組成物も提供する。
また、本発明は、
可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を含み、
前記可塑化澱粉材料が、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物である、
樹脂組成物も提供する。
前記可塑化澱粉材料は、発泡した部分を有さなくてよい。
前記可塑化澱粉が、澱粉の可塑化物又は変性された澱粉の可塑化物であってよい。

【0008】
また、本発明は、前記樹脂組成物から形成されている層を含むフィルム又はシートも提供する。
本発明は、前記樹脂組成物から形成されている層を含み且つJIS B0031に従い測定された平均粗さ(Ra)が2μm以下である面を有するフィルム又はシートも提供する。
本発明は、前記樹脂組成物から形成されている、多孔性のフィルム又はシートも提供する。
本発明は、前記樹脂組成物から形成されており且つ空気は透過させるが水は透過させないフィルム又はシートも提供する。
【0009】
本発明は、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、且つタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である可塑化澱粉材料も提供する。
また、本発明は、
可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である、
ポリオレフィン系樹脂と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる可塑化澱粉材料も提供する。
また、本発明は、
可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり、且つ、
ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる
可塑化澱粉材料も提供する。

【0010】
本発明は、澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する第一混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記第一混合工程、前記第一混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程であって、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である前記可塑化工程、及び前記可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を混合して樹脂組成物を得る第二混合工程を含む、樹脂組成物の製造方法も提供する。
また、本発明は、
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能であり且つ10~25のSP値を有する極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する第一混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記第一混合工程、
前記第一混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程であって、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である前記可塑化工程、及び
前記可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を混合して樹脂組成物を得る第二混合工程
を含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、
樹脂組成物の製造方法も提供する。
また、本発明は、
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能であり且つ10~25のSP値を有する極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する第一混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記第一混合工程、
前記第一混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程であって、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である前記可塑化工程、及び
前記可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を混合して樹脂組成物を得る第二混合工程
を含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物である、
樹脂組成物の製造方法も提供する。

【0011】
本発明は、澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記混合工程、及び前記混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程、を含む、タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である可塑化澱粉材料の製造方法も提供する。
また、本発明は、
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能であり且つ10~25のSP値を有する極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記混合工程、及び
前記混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程、
を含み、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、少なくとも一つのアミド基を有する化合物を含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含む、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり且つポリオレフィン系樹脂と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる可塑化澱粉材料の製造方法も提供する。
また、本発明は、
澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記混合工程、及び
前記混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程、
を含み、
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、10~25のSP値を有する化合物であり、
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、ホルムアミドを少なくとも含み、
前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、炭素数2~5の多価アルコールを含む、
タイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下であり且つポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂又はこれらの樹脂の混合物と混合して樹脂組成物を製造するために用いられる可塑化澱粉材料の製造方法も提供する。

【発明の効果】
【0012】
本発明により、プラスチック成形品中のバイオマス素材の含有割合を高めることができ且つ当該プラスチック成形品に良好な品質を与えることができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】可塑化澱粉材料の写真である。
図2】フィルムの表面及び断面の電子顕微鏡写真である。
図3】フィルム表面の平均粗さ(Ra)の測定結果を示すグラフである。縦軸の単位はμmである。
図4】フィルム表面の最大高さ(Ry)の測定結果を示すグラフである。縦軸の単位はμmである。
図5】引張伸びの測定結果を示す図である。
図6】引張強度の測定結果を示す図である。
図7】可塑化澱粉材料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
【0015】
1.樹脂組成物
【0016】
本発明の樹脂組成物は、可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を含み、前記可塑化澱粉材料が、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な少なくとも1種の極性有機化合物と、を含み、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、且つ、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂を例えば20質量部:80質量部~80質量部:20質量部の比率で含み、好ましくは30質量部:70質量部~80質量部:20質量部の比率で含み、より好ましくは50質量部:50質量部~80質量部:20質量部で含みうる。当該比率を有する前記樹脂組成物は、バイオマス度が高い。前記可塑化澱粉材料によって、樹脂組成物のバイオマス度をこのように高めることができ、さらにバイオマス度を高めても、当該樹脂組成物は良好な品質を有する。
【0018】
本明細書内において、バイオマス度は以下の式により算出される値である。
式:バイオマス度(%)=「樹脂組成物に含まれるバイオマスの乾燥重量」÷「樹脂組成物の乾燥重量」×100
本発明の樹脂組成物又は当該樹脂組成物から形成された成形品(例えばフィルム及びシートなど)は、例えば20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上のバイオマス度を有しうる。バイオマス度の上限は、例えば90%以下、80%以下、又は70%以下であってよい。
【0019】
前記可塑化澱粉材料を構成する澱粉は可塑化されている。これにより、前記樹脂組成物から形成される成形品の表面を平滑にすることができる。また、例えば樹脂組成物から形成された層の物性又は当該層を含むフィルム又はシートの物性(例えば引張伸びなど)を向上させることもできる。
【0020】
また、前記可塑化澱粉材料は、澱粉の加熱により生じる着色及び/又は臭いの発生が抑制されるように製造されることができる。すなわち、前記可塑化澱粉材料は、当該着色及び/又は臭いを有さないものであってよく、又は、当該着色及び/又は臭いを有するとしてもそれらは少ない。例えば、前記可塑化澱粉材料は透明であり且つ/又は無臭でありうる。そのため、前記可塑化澱粉材料を熱可塑性樹脂と混合して得られる樹脂組成物も、当該着色及び/又は臭いを有さないものであってよく、又は、当該着色及び/又は臭いを有するとしてもそれらは少ない。
これらの着色及び/又は臭いに関する改善は、主として、前記可塑化澱粉材料を構成する澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物に起因し、特には当該極性有機化合物が常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な化合物を含むことに起因する。
【0021】
常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な化合物は、極性有機化合物以外にもいくつか存在する。常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な物質として、例えば強アルカリ(例えば水酸化ナトリウムなど)、塩類(例えば塩化カルシウムなど)、及びアニオン又はカチオン(例えばNa及びLi)を挙げることができる。しかしながら、強アルカリを用いて澱粉を糊化又は可塑化した場合は、可塑化澱粉材料が強アルカリ性になり危険であるため取り扱いにくい。塩類を用いた場合は糊化とともに発熱反応が起こり、高温になるため、可塑化澱粉材料が着色を有する。アニオン及びカチオンを用いて澱粉を糊化した場合は、澱粉は糊化するが、製造された可塑化澱粉材料は変色する。
本発明において、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が用いられ、且つ、当該極性有機化合物は、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む。これにより、上記で他の化合物について述べた不都合が生じなくなり又は当該不都合の程度を低減できる。
【0022】
また、前記可塑化澱粉材料を用いることで、樹脂組成物中のバイオマス度が高く且つ良好な品質(例えば表面平滑性、低着色度、及び低臭)を有する成形品(例えばフィルム及びシートなど)を製造することができる。例えば、本発明の樹脂組成物中には、粒状の澱粉が含まれないので、薄いフィルム又はシートを当該樹脂組成物から形成しても粒の形状が表面に現れない。例えば本発明の樹脂組成物の澱粉含有割合を高めても、当該樹脂組成物から形成されるフィルム又はシートはその表面に粒の形状を有さない。
さらに、前記可塑化澱粉材料を含む樹脂組成物によって、上記良好な品質を有し且つ多孔性のフィルム又はシートを成形することもできる。本発明によって、このような良好な特性を有する樹脂組成物及び成形品を提供することができる。
【0023】
また、前記可塑化澱粉材料を用いることで、低温で前記可塑化澱粉材料と熱可塑性樹脂とを混合することができ、さらに、低温で樹脂組成物を成形することもできる。これにより、成形品の着色及び/又は臭いを低減することができる。
【0024】
また、本発明の樹脂組成物が前記可塑化澱粉材料を含むことによって、当該樹脂組成物及び当該樹脂組成物から形成された成形品(例えばフィルム又はシート)に透明感を付与することができる。また、本発明の樹脂組成物が前記可塑化澱粉材料を含むことによって、当該樹脂組成物及び当該樹脂組成物から形成された成形品(例えばフィルム又はシート)の表面を平滑にすることもできる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂を主成分として含む。本発明の樹脂組成物中の前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂の合計含有割合は、前記樹脂組成物の質量に対して例えば80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上でありうる。
【0026】
以下で、本発明の樹脂組成物についてより詳細に説明する。
【0027】
[可塑化澱粉材料]
【0028】
前記可塑化澱粉材料を樹脂組成物中のバイオマス材料として採用することによって、当該樹脂組成物のバイオマス度(バイオマス材料の含有割合)を高めることができる。
例えばこれまでに知られている澱粉材料(例えば糊化されていない澱粉材料など)の樹脂組成物中の含有割合を50質量%以上とすると、当該樹脂組成物の成形はできない場合があり、又は、成形可能であっても良好な品質を有さない場合がある。具体的には、当該樹脂組成物を用いてインフレーション成形を行った場合、当該樹脂組成物は膨らまなかったり、又は、当該樹脂組成物中に発泡が生じたりすることがある。さらには、膨らんだとしても、当該成形により得られたフィルムの伸縮性が悪いため、当該フィルムは切れやすい。また、当該樹脂組成物は優れた強度を有さないこともある。
本発明の樹脂組成物は前記可塑化澱粉材料を含むので、成形性に優れており、例えばフィルム又はシートを成形するために適している。すなわち、本発明の樹脂組成物は、フィルム又はシートを成形するために用いられるものでありうる。また、本発明の樹脂組成物は前記可塑化澱粉材料を含むので、優れた物性(例えば引張伸びなど)を有する。
【0029】
本発明において用いられる前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さは20以上であり且つ同澱粉材料のタイプDデュロメータ硬さは40以下である。本発明において、デュロメータ硬さは、JIS K 6253に従い測定される。なお、タイプAデュロメータ硬さが90超である場合はタイプDデュロメータ硬さが用いられ、上記のとおり、硬さの数値範囲の下限値はタイプAデュロメータ硬さにより規定され且つ上限値がタイプDデュロメータ硬さにより規定されている。
樹脂組成物の成形性の観点から、前記可塑化澱粉材料は、より好ましくは22以上であり、より好ましくは25以上であり、さらにより好ましくは28以上のタイプAデュロメータ硬さを有しうる。前記可塑化澱粉材料は、より好ましくは35以下のタイプDデュロメータ硬さ、より好ましくは30以下のタイプDデュロメータ硬さを有しうる。
当該数値範囲内の硬さを有する可塑化澱粉材料によって、成形品の成形性(例えばインフレーション成形のしやすさ)及び/又は成形品の外観が向上される。当該可塑化澱粉材料を用いることによって、例えばフィッシュアイ又は異物が見られない成形品を製造することができる。可塑化澱粉材料のタイプDデュロメータ硬さが40超である場合、例えば当該可塑化澱粉材料を含む樹脂組成物は成形に適しておらず、例えばインフレーション成形できないことがある。
また、本発明において用いられる前記可塑化澱粉材料は発泡した部分を有さないものである。当該発泡は、例えば可塑化澱粉材料の製造における揮発性成分の蒸発に起因して生じうる。発泡した部分を有する可塑化澱粉材料を用いて製造された樹脂組成物は、成形性が悪い場合があり、さらには、当該樹脂組成物の外観が悪くなることもある。
【0030】
本発明の樹脂組成物に含まれる前記可塑化澱粉材料は、可塑化澱粉を主成分とする材料であってよい。前記可塑化澱粉材料中の可塑化澱粉の含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上でありうる。前記可塑化澱粉材料中の可塑化澱粉の含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば99.5質量%以下、99質量%以下、又は98質量%以下であってよい。当該可塑化澱粉の含有割合は、150℃におけるTG測定(熱重量分析)により測定されてよい。具体的には、当該含有割合は、TG測定装置(STA7200、株式会社 日立ハイテクサイエンス)を用いて測定される質量変化量に基づき決定されてよい。当該質量変化量は揮発性成分の減少量に対応し、当該減少量は、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の量に対応する。そのため、可塑化澱粉材料中の可塑化澱粉の含有割合は以下の式により求められる:(可塑化澱粉材料中の可塑化澱粉の含有割合(単位:質量%))=(質量変化量の測定開始後の質量)/(質量変化量の測定開始前の質量)×100。前記質量変化量の測定条件は以下のとおりである:温度範囲25℃~150℃、昇温速度20℃/分、窒素下。
【0031】
本明細書において、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物とは、澱粉と接触することによって澱粉を糊化又は可塑化することができる極性有機化合物をいう。前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物として、当技術分野で既知の有機化合物が用いられてよい。
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは10~25、より好ましくは12~22、より好ましくは13~21、さらにより好ましくは14~20のSP値を有する化合物であってよい。当該数値範囲内のSP値を有する極性有機化合物が、本発明の効果を奏するための可塑化澱粉材料の成分として適している。例えば、当該数値範囲内のSP値を有する化合物によって、可塑化澱粉材料の着色及び/又は臭いを低減することができ、これにより本発明の樹脂組成物の着色及び/又は臭いも低減することができる。
【0032】
前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温では澱粉を糊化又は可塑化可能でないが常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能である極性有機化合物とを包含する。本明細書内において、前者を「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」ともいい、且つ、後者を「常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」ともいう。後者は、常温で澱粉を糊化又は可塑化することができ且つ高温で澱粉を糊化又は可塑化することもできる化合物である。例えば、極性有機化合物と澱粉とを常温で1時間接触させても当該澱粉が糊化又は可塑化しないが、極性有機化合物と澱粉とを高温で1時間接触させることによって当該澱粉が糊化又は可塑化する場合に、当該極性有機化合物は、「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能」である。前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、澱粉を糊化可能な極性有機化合物、澱粉を可塑化可能な極性有機化合物、及び澱粉を糊化及び可塑化可能な極性有機化合物のいずれであってもよい。
すなわち、本明細書内において、「澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」は、「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」及び「常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」の両方を包含する。
本明細書において、常温よりも高い温度(「高温」ともいう)は、加熱処理によって達成される温度をいう。高温は、例えば50℃以上の温度であり、好ましくは60℃以上の温度であり、好ましくは80℃以上の温度であり、より好ましくは100℃以上の温度である。
本明細書において、常温は、加熱処理が行われない場合における温度をいう。常温は、例えば50℃未満であり、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは15℃~35℃であり、さらにより好ましくは20~30℃である。
【0033】
本発明において、前記可塑化澱粉材料を構成する前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む。常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物によって、樹脂組成物に良好な品質が付与され、例えば着色及び/又は臭いが低減される。常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物のうち、常温で澱粉を糊化可能な極性有機化合物が特に好ましい。澱粉を糊化することによって、澱粉が可塑化されて可塑化澱粉が形成されうる。
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは少なくとも一つのアミド基(例えば1つ、2つ、又は3つのアミド基)を有する化合物であり、例えばホルムアミド(SP値19.2)、N,Nジメチルホルムアミド(SP値:12.1)、及び尿素から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。
澱粉との混合のしやすさの観点から、より好ましくは、前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は常温で液体であり、例えばホルムアミド又はN,Nジメチルホルムアミドでありうる。例えばホルムアミドは常温で澱粉を糊化することができる化合物である。前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を含む可塑化澱粉材料によって、樹脂組成物の成形性が向上し、例えば樹脂組成物のペレットを形成しやすくなる。また、前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を含む可塑化澱粉材料を含む樹脂組成物は、インフレーション成形にも適用できる。
【0034】
本発明の好ましい実施態様において、前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物はホルムアミドであってよい。前記可塑化澱粉材料がホルムアミドを含むことによって、樹脂組成物の成形性(例えば上記で述べたペレット形成のしやすさ及びインフレーション成形への適合性)が特に向上する。また、前記可塑化澱粉材料がホルムアミドを含むことによって、可塑化澱粉材料の着色をより低減することができ、可塑化澱粉材料を例えば半透明にすることもできる。
【0035】
前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは10~25、より好ましくは12~24、より好ましくは14~23、さらにより好ましくは16~22、特に好ましくは18~22のSP値を有する化合物であってよい。当該数値範囲内のSP値を有する化合物が、前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物として適している。
【0036】
好ましくは、前記可塑化澱粉材料中の前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下でありうる。前記可塑化澱粉材料中の前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってよい。前記合計含有割合は、前記高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の含有割合と前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の含有割合との合計である。前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、上記で述べたTG測定により測定された糊化澱粉の含有割合を、100質量%から差し引くことにより算出される。
【0037】
本発明の一つの実施態様において、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の両方を含む。すなわち、これら2種の極性有機化合物の両方が、前記可塑化澱粉材料の一部を構成する。これら2種の極性有機化合物の併用によって、熱可塑性樹脂との混合により適した可塑化澱粉材料が得られる。前記常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは常温で液体である。これにより、澱粉との混合を容易に行うことができる。
【0038】
例えば、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、前記常温よりも高い温度(高温)で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物をさらに含み、当該高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、多価アルコールから選ばれる1つ又は2以上の化合物であってよい。これらの化合物と前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物との組合せが、樹脂組成物に混合される澱粉の可塑化のために特に適している。
【0039】
前記多価アルコールは、好ましくは炭素数が2~5の多価アルコールであり、より好ましくは炭素数が2~4の多価アルコールでありうる。前記多価アルコールは、好ましくは2~5のOH基を有し、より好ましくは2~4のOH基を有する。
前記多価アルコールとして、例えばグリセリン(SP値:16.5)及びグリコールを挙げることができる。当該グリコールとして、例えばエチレングリコール(SP値:14.2)、ジエチレングリコール(SP値:14.6)、及びプロピレングリコールを挙げることができる。
前記多価アルコールは、好ましくはグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。
【0040】
前記可塑化澱粉材料は、多価アルコールエステルをさらに含みうる。多価アルコールエステルは、多価アルコールに含まれるOH基の少なくとも一つに脂肪酸がエステル結合している化合物でありうる。当該多価アルコールは、上記で説明したとおりのものであってよい。例えば、当該多価アルコールは、グリセリンの3つのOH基のうちの1つ、2つ、又は3つに脂肪酸がエステル結合した化合物(それぞれモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドという)でありうる。より好ましくは、前記多価アルコールエステルはモノグリセリドである。当該脂肪酸は、例えば炭素数が14~22、より好ましくは16~20の脂肪酸であってよい。例えば当該多価アルコールエステルは、例えば炭素数が14~22、より好ましくは16~20の脂肪酸の脂肪酸がグリセリンの1つのOH基にエステル結合したモノグリセリドであってよい。当該モノグリセリドの例として、グリセリンモノステアレートを挙げることができる。本発明の可塑化澱粉材料は、当該モノグリセリド(例えばグリセリンモノステアレート)を、澱粉100質量部に対して例えば0.1質量部~3質量部、好ましくは0.5質量部~2質量部含みうる。当該数値範囲内の量でモノグリセリド(特にはグリセリンモノステアレート)を含むことによって、ペレット化された可塑化澱粉材料同士の付着を防ぐことができ、当該材料のハンドリング性の向上をもたらす。
【0041】
前記可塑化澱粉材料は、界面活性剤をさらに含んでもよい。当該界面活性剤は、例えばステアリン酸エステル及び/又はソルビタン酸エステルであってよい。当該界面活性剤は、滑剤として機能しうる。
【0042】
本発明の一つの実施態様において、前記可塑化澱粉材料は、可塑化澱粉と常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物に加えて、多価アルコールを含む。当該多価アルコールは、例えばグリセリンのみであり、又は、グリセリンとエチレングリコールとの組合せでありうる。
【0043】
本発明の他の実施態様において、前記可塑化澱粉材料は、可塑化澱粉と常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物に加えて、多価アルコール及び多価アルコールエステルを含む。当該多価アルコールは、当該多価アルコールは、例えばグリセリンのみであり、又は、グリセリンとエチレングリコールとの組合せでありうる。当該多価アルコールエステルは、モノグリセリドであってよく、特にはグリセリンモノステアレートであってよい。
【0044】
前記可塑化澱粉材料を構成する前記可塑化澱粉は、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の存在下で澱粉を加熱することによって糊化又は可塑化された澱粉である。当該糊化又は可塑化は、例えば常温で糊化又は可塑化可能な極性有機化合物による分子間結合(主に水素結合)の切断によってもたらされるものであってよく、又は、高温で糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の存在下での加熱による分子間結合(主に水素結合)の切断によってもたらされるものであってもよい。可塑化澱粉は、例えばα化澱粉であってよい。当該可塑化が、本発明の樹脂組成物への透明感及び/又は平滑性の付与に寄与していると考えられる。
当該可塑化は、本発明の樹脂組成物のバイオマス度の向上にも寄与していると考えられる。例えば可塑化されていない澱粉を含む樹脂組成物から形成された成形品は、当該澱粉の粒子が成形品の表面に現われやすい。当該澱粉の粒子は例えば約20μm程度の粒子サイズを有する。そのため、例えば可塑化されていない澱粉を含む樹脂組成物を用いてフィルムを形成する場合、当該澱粉の粒子形状をフィルムの表面に表れないようにするために、当該樹脂組成物中の当該澱粉の含有割合は、当該樹脂組成物質量に対して例えば最大で30質量%程度に制限される。また、フィルムの厚みを20μm程度又はそれ以下とする場合において、当該澱粉の粒子が、フィルム表面に顕著に表れる。一方、本発明の樹脂組成物に含まれる澱粉は可塑化されているので、当該澱粉の形状が樹脂組成物の表面に表れにくい。そのため、本発明の樹脂組成物中の澱粉の含有割合は、当該樹脂組成物の質量に対して30質量%超とすることができ、例えば以上であってよく、特には60%以上、より特には70%以上であってもよい。当該澱粉の含有割合が高くても、樹脂組成物又は成形品の表面が平滑である。
【0045】
本発明において用いられる澱粉として、地下系澱粉及び地上系澱粉を挙げることができる。
地下系澱粉は、地下で蓄積された澱粉であり、例えば地下茎又は根などに蓄積された澱粉をいう。地下系澱粉として、例えばタピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
地上系澱粉は、地上で蓄積された澱粉であり、例えば種子などに蓄積された澱粉をいう。地上系澱粉として、例えばトウモロコシ澱粉、麦澱粉、及び米澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
本発明において、好ましくは地下系澱粉が用いられる。地下系澱粉を用いて本発明の樹脂組成物を製造することによって、当該樹脂組成物の臭気をより低減することができる。
本発明において用いられる澱粉は、澱粉の変性物(すなわち変性澱粉)、特には地下系澱粉の変性物であってもよい。変性物は、変性されていない澱粉と比べて、より低い温度で可塑化可能である。そのため、可塑化澱粉製造時の加熱に伴う臭気及び/又は着色を抑制することができる。
【0046】
本発明において用いられる澱粉は、好ましくは平衡水分を含むものであってよい。平衡水分の量は、例えば澱粉質量に対して10質量%~15質量%、好ましくは10質量%~14質量%、より好ましくは10質量%~13質量%、さらにより好ましくは11質量%~13質量%でありうる。上記数値範囲内の平衡水分を含む澱粉又は変性澱粉を用いることが、本発明に従う可塑化澱粉材料を製造するために好ましい。平衡水分を含まない澱粉を用いた場合、澱粉が可塑化されないことがある。
【0047】
本発明の一つの実施態様に従い、前記可塑化澱粉は、澱粉の可塑化物又は変性された澱粉の可塑化物である。例えば、当該澱粉は例えばコーン澱粉又はタピオカ澱粉でありうる。
前記可塑化澱粉は、より好ましくは、例えばタピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉から選ばれる1つの澱粉若しくは2つ以上の組み合わせの澱粉の可塑化物、又は、変性された当該1つの澱粉若しくは変性された当該2つ以上の組み合わせの澱粉の可塑化物でありうる。さらにより好ましくは、前記可塑化澱粉は、タピオカ澱粉の可塑化物又は変性されたタピオカ澱粉の可塑化物である。これらの可塑化物は、可塑化澱粉材料の臭気の低減及び本発明の樹脂組成物の臭気の低減の観点から特に好ましい。
【0048】
本発明の一つの実施態様に従い、前記可塑化澱粉材料はセルロースナノファイバー(以下、CNFともいう)を含んでよい。CNFを熱可塑性樹脂に分散させることは困難を伴うことが多い。前記可塑化澱粉材料は、CNFを当該材料中に容易に分散させることができ、さらに、CNFを含む前記可塑化澱粉材料と熱可塑性樹脂とは容易に混合することができる。そのため、前記可塑化澱粉材料によって、CNFを熱可塑性樹脂中に容易に分散させることができる。本発明の樹脂組成物がCNFを含むことによって、当該樹脂組成物から形成される成形品の剛性を高めることができる。なお、前記可塑化澱粉材料がCNFを含む実施態様において、熱可塑性樹脂にCNFが直接添加されなくてよいが、熱可塑性樹脂にCNFがさらに添加されてもよい。
【0049】
前記可塑化澱粉材料がCNFを含むことのメリットを以下でより詳細に説明する。
CNFは親水性である。CNFは、一般的にはセルロース材料を水で解砕することによりナノ化して製造されるため、水に分散されている。
CNFは、例えば熱可塑性樹脂の強度を高めるために用いられる。しかしながら、熱可塑性樹脂はしばしば疎水性であるため、親水性であるCNFを熱可塑性樹脂と混合することには困難を伴いうる。そこで、例えば、CNFを変性して疎水化されたCNF(特には粉末状CNF)を熱可塑性樹脂と混合することが行われている。当該疎水化のために、例えばTENPO酸化法が用いられうる。また、CNFを分散している水を溶媒置換して得られたCNF分散物を液状樹脂(例えばエポキシ樹脂又は塩化ビニル系樹脂)と混合することも行われている。また、セルロース材料を水で解砕せずに、押し出し機で直接解砕し、そして当該解砕の結果得られたCNFを熱可塑性樹脂と混合することも行われている。このような混合手法はコスト(例えば労力、費用、又は時間など)がかさみうる。そのため、水に分散されているCNFをそのまま用いる手法が望ましい。
また、上記のとおり、CNFを熱可塑性樹脂に分散させることは難しい。分散不良である場合は、得られるCNF含有熱可塑性樹脂の引張伸びと引張強度とのうち、どちらかしか向上させることができない。
また、CNFは水に分散された状態にあることが一般的であり、例えばCNF水分散物中のCNF含有割合は数質量%程度であり、CNF水分散物は水の含有割合が高い。そのため、CNFの水分散物を熱可塑性樹脂と混合することはしばしば困難を伴う。
上記のとおり、本発明において用いられる前記可塑化澱粉材料は、CNFを当該材料中に容易に分散させることができ、さらに、CNFを含む前記可塑化澱粉材料と熱可塑性樹脂とは容易に混合することを可能とする。
当該CNFとして、水に分散されたCNFを用いることができる。CNFの水分散物を用いたとしても、前記可塑化澱粉材料の製造においてCNFの水分散物を用いることによって、CNFを、上記で述べた混合手法を用いることなく、熱可塑性樹脂中に容易に分散させることができる。
また、CNFを含む前記可塑化澱粉材料を熱可塑性樹脂と混合した場合、当該熱可塑性樹脂中にCNFはよく分散する。そのため、当該熱可塑性樹脂の引張伸び及び引張強度の両方を向上させることができる。
また、樹脂組成物中のバイオマス含有割合又は生分解性樹脂含有割合が高めると、当該樹脂組成物の引張強度は低下することがある。上記のとおりCNFを含む前記可塑化澱粉材料を熱可塑性樹脂と混合することによって、樹脂組成物中のバイオマス含有割合又は生分解性樹脂含有割合が高いことに起因する引張強度低下の問題を解消することができる。さらに、CNFによりもたらされる他の効果も、樹脂組成物において発現しうる。
前記可塑化澱粉材料に含まれるCNFとして、例えば上記の一般的な製造方法により製造された水に分散されたCNFを挙げることができる。当該水に分散されたCNFに加えて、上記の疎水化されたCNFなどの変性CNFが、前記可塑化澱粉材料に含まれていてもよい。粉末状のCNFも、水に分散させれば、前記可塑化澱粉材料に分散させることができる。このように、前記可塑化澱粉材料は、種々のCNFを当該材料中に分散させることができる。なお、水に分散されたCNFが、費用の観点から及び取り扱い易さの観点から、前記可塑化澱粉材料に分散されるCNFとして好ましい。水に分散されたCNFは前記可塑化澱粉材料の製造設備にも特に投入しやすい。
また、水以外の親水性の液体に分散されたCNFが用いられてもよい。前記可塑化澱粉材料に分散されるCNFは、1つの親水性液体に分散されたものであってよく又は2種以上の親水性液体の混合物に分散されたものであってもよい。すなわち、前記可塑化澱粉材料に分散されるCNFが分散される液体は、水、グリセリン、エチレングリコール、ホルムアミド、及び尿素水から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。当該液体は、上記で述べた多価アルコールのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0050】
本発明において、市販入手可能なCNFが用いられてよい。
本発明において、CNFは、分子状のセルロースとは異なり、溶剤に難溶の平均繊維径10nm~3000nmの繊維状のセルロースを意味しうる。当該平均繊維径はより好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは10nm~500nmであり、さらにより好ましくは10nm~300nmであり、特に好ましくは10nm~100nmでありうる。CNFのアスペクト比は、例えば30~10000であり、好ましくは50~5000であり、より好ましくは50~1000でありうる。アスペクト比は、平均繊維長を平均繊維径で除した数値である。上記平均繊維長及び平均繊維径は、電子顕微鏡で観察した任意のセルロース繊維10本の平均値である。
【0051】
前記可塑化澱粉材料は、後述の製造方法により製造されてよい。
【0052】
[熱可塑性樹脂]
【0053】
本発明の樹脂組成物に含まれる前記熱可塑性樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂、又は、これらの樹脂の混合物であってよい。前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂であってもよい。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα-オレフィン類)を主要なモノマーとする重合により得られる高分子である。当該ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)又はこれらの組み合わせであってよい。
ポリエチレンは、より具体的には低密度ポリエチレン(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)、又は超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE: Ultra High Molecular Weight-Polyethylene)でありうる。
ポリプロピレンは、より具体的には、ホモポリマーのポリプロピレン、又は、ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーのポリプロピレン(例えばエチレン-プロピレン共重合体など)であってよい。
ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(例えばバイオマス由来ポリエチレンなど)であってよく、例えばバイオマスポリエチレンでありうる。バイオマスポリエチレンは、例えばLDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。これによりCO2排出量を削減することができる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、例えばメタロセン触媒系のポリエチレン若しくはポリプロピレンであってよく、又は、これらの組み合わせであってもよい。
前記ポリスチレン系樹脂も、メタロセン触媒系のポリスチレン系樹脂であってもよい。
【0055】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合によりモノマーが重合した高分子である。当該ポリエステル系樹脂は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、若しくはポリカーボネート(PC)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、又はこれらのうちの2以上の組み合わせであってよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂の種類は、例えば当該樹脂組成物から形成される成形品の種類に応じて当業者により適宜選択されてよいが、加工温度が低い熱可塑性樹脂が好ましい。例えば当該樹脂組成物からフィルム又はシートを形成する場合、当該熱可塑性樹脂は例えばポリオレフィン系樹脂であり、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンであり、より好ましくはLLDPE又はLDPEでありうる。これらの樹脂の融点へと本発明の樹脂組成物を加熱しても、可塑化澱粉材料の加熱に起因する臭気又は着色が発生しにくい。そのため、当該樹脂組成物を加熱して成形品を製造する際における臭気又は着色の発生を抑制することができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物に含まれる前記熱可塑性樹脂は、好ましくは90℃~180℃、より好ましくは95℃~170℃、より好ましくは95℃~160℃、さらにより好ましくは95℃~140℃、特に好ましくは95℃~130℃の融点を有するものでありうる。より低い融点を有する熱可塑性樹脂を採用することによって、成形時の温度を低くすることができ、可塑化澱粉材料の加熱に起因する臭気又は着色をより抑制することができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を例えば20質量部:80質量部~80質量部:20質量部の比率で含み、好ましくは30質量部:70質量部~80質量部:20質量部の比率で含み、より好ましくは40質量部:60質量部~80質量部:20質量部の比率で含み、さらにより好ましくは50質量部:50質量部~80質量部:20質量部の比率で含みうる。前記可塑化澱粉材料を用いることによって、本発明の樹脂組成物のバイオマス含有割合を上記数値範囲のとおりに高めたとしても、当該樹脂組成物から良好な品質を有する成形品を製造することができる。
【0059】
本発明の一つの実施態様に従い、前記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂であってよい。この実施態様において、可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂の両方が生分解性である。そのため、この実施態様に従う樹脂組成物は、より環境にやさしい。
【0060】
[その他の成分]
【0061】
本発明の樹脂組成物は、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂に加えて、他の成分を含んでもよい。当該他の成分として、例えば相溶化剤、酸化分解促進剤、着色剤、及び酸化防止剤などを挙げることができる。
【0062】
前記相溶化剤は、前記可塑化澱粉材料と前記熱可塑性樹脂との相溶性をより向上させるために用いられてよい。
前記相溶化剤として、例えば無水カルボン酸変性ポリオレフィン、オレフィン系のグラフト変性物、及びオレフィン系のコモノマーなどを挙げることができる。
当該無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。前記相溶化剤は、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組み合わせであってよい。
当該オレフィン系のグラフト変性物は、酸変性ポリオレフィンであってよく、より具体的には不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性したポリオレフィンでありうる。グラフト変性に用いられる(未変性の)ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)であってよく、特にはポリプロピレンでありうる。例えば、特開2010-095671に記載された酸変性ポリオレフィンが用いられてよい。
【0063】
前記酸化分解促進剤は、前記熱可塑性樹脂の分解を促進するために用いられてよい。前記酸化分解促進剤は、前記熱可塑性樹脂の酸化分解を促進して、例えば土壌中又は堆肥中の微生物が生分解可能である程度に前記熱可塑性樹脂の分子量を低下させうる。
当該酸化分解促進剤は、例えばカルボン酸金属塩、ヒドロキシカルボン酸、遷移金属化合物、希土類化合物、及び芳香族ケトンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含みうる。より好ましくは、前記酸化分解促進剤は、カルボン酸塩及び希土類化合物の組み合わせでありうる。市販入手可能な酸化分解促進剤が用いられてよく、その例として、例えばP-Life(ピーライフ・ジャパン・インク株式会社製)を挙げることができる。前記酸化分解促進剤は、特には前記カルボン酸塩及び希土類化合物の組み合わせは、ポリオレフィン系樹脂の分解促進に適している。
本発明の一つの実施態様において、前記樹脂組成物に含まれる前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン又はポリプロピレンなど)であり、且つ、前記樹脂組成物は前記酸化分解促進剤を含みうる。この実施態様を採用することによって、可塑化澱粉材料だけなく、熱可塑性樹脂も生分解される。そのため、当該樹脂組成物は、バイオマス度が高いことに加え、環境によりやさしい。
【0064】
前記酸化分解促進剤に含まれる前記カルボン酸塩は、例えば炭素数が10~20である脂肪族カルボン酸の金属塩であってよく、より好ましくはステアリン酸金属塩であってよい。前記脂肪族カルボン酸と金属塩を形成する金属原子としては、例えばコバルト、セリウム、鉄、アルミニウム、アンチモン、バリウム、ビスマス、クロミウム、銅、ガリウム、ランタン、リチウム、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、カルシウム、銀、ナトリウム、錫、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムから選ばれる1つ又は2以上の組み合わせであってよく、より好ましくはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、セリウム、鉄、及び銅から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。例えば前記金属塩は、ステアリン酸鉄であってよい。前記カルボン酸塩として、1種類のカルボン酸塩が単独で用いられてよく、又は、2種類以上のカルボン酸塩の組み合わせが用いられてもよい。
【0065】
前記酸化型分解促進剤に含まれる前記希土類化合物は、例えば、希土類の酸化物、希土類の水酸化物、希土類の硫酸塩、希土類の硝酸塩、希土類の酢酸塩、希土類の塩化物、又は希土類のカルボン酸塩であってよい。前記希土類化合物は、より具体的には、酸化セリウム、硫酸第二セリウム、硫酸第二セリウムアンモニウム、硝酸第二セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、硝酸ランタン、塩化セリウム、硝酸セリウム、水酸化セリウム、オクチル酸セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、及び酸化スカンジウムから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。前記希土類化合物として、1種類の希土類化合物が単独で用いられてよく、又は、2種類以上の希土類化合物の組み合わせが用いられてもよい。
【0066】
前記着色剤の例として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックが用いられてよい。また、前記酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤が用いられてよいがこれに限定されない。
【0067】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性でありうる。以下で本発明に従う熱可塑性樹脂組成物の組成の具体例を説明する。
【0068】
本発明の一つの実施態様に従い、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記可塑化澱粉材料と、前記熱可塑性樹脂と、前記相溶化剤とを含みうる。前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂の構成比率は、上記のとおり、例えば20質量部:80質量部~80質量部:20質量部であってよく、好ましくは30質量部:70質量部~80質量部:20質量部であってよく、より好ましくは50質量部:50質量部~80質量部:20質量部であってよい。前記相溶化剤は、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して、例えば1質量部~10質量部、より好ましくは2質量部~9質量部でありうる。
この実施態様において、前記熱可塑性樹脂は、例えばポリオレフィン系樹脂であり、好ましくはポリエチレンであり、より好ましくはLLPDEでありうる。この実施態様において、前記相溶化剤は、例えば無水カルボン酸変性ポリオレフィンであり、好ましくは無水マレイン酸変性ポリエチレンでありうる。
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、例えばインフレーション成形又はTダイ押出などの成形方法によってフィルム又はシートを製造するために用いられうる。フィルムの厚みは例えば200μm未満であり、特には10μm以上200μm未満でありうる。シートの厚みは例えば200μm以上であり、特には200μm以上且つ1mm以下でありうる。
この実施態様において、前記熱可塑性樹脂は、例えばバイオマス由来の熱可塑性樹脂、特にはバイオマス由来のポリエチレンであってもよい。
【0069】
本発明の他の実施態様に従い、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記可塑化澱粉材料と、前記熱可塑性樹脂と、前記相溶化剤と、前記酸化分解促進剤とを含みうる。前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂の構成比率は、上記のとおり、例えば20質量部:80質量部~80質量部:20質量部であってよく、好ましくは30質量部:70質量部~80質量部:20質量部であってよく、より好ましくは50質量部:50質量部~80質量部:20質量部であってよい。前記相溶化剤は、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して、例えば1質量部~10質量部、より好ましくは2質量部~9質量部でありうる。前記酸化分解促進剤は、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して、例えば0.01質量部~5質量部、好ましくは0.05質量部~3質量部、より好ましくは0.1質量部~0.5質量部でありうる。
この実施態様において、前記熱可塑性樹脂は、例えばポリオレフィン系樹脂であり、好ましくはポリエチレンであり、より好ましくはLLPDEでありうる。この実施態様において、前記相溶化剤は、例えば無水カルボン酸変性ポリオレフィンであり、好ましくは無水マレイン酸変性ポリエチレンでありうる。前記酸化分解促進剤は、カルボン酸塩及び希土類化合物の組み合わせでありうる。
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、例えばインフレーション成形又はTダイ押出などの成形方法によってフィルム又はシートを製造するために用いられうる。フィルムの厚みは例えば200μm未満であり、特には10μm以上200μm未満でありうる。シートの厚みは例えば200μm以上であり、特には200μm以上且つ1mm以下でありうる。
この実施態様において、前記熱可塑性樹脂は、例えばバイオマス由来の熱可塑性樹脂、特にはバイオマス由来のポリエチレンであってもよい。
この実施態様に従う熱可塑性樹脂組成物は、バイオマス度が高いうえに、当該組成物に含まれる熱可塑性樹脂が生分解されうる。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、フィルム及びシート以外の他の成形品を製造するために用いられてよい。当該他の成形品として、例えば容器(例えばボトル容器)、ボトルキャップ、プラダンボール、不織布、及びモノフィラメントなどを挙げることができるがこれらに限定されない。例えば本発明の樹脂組成物は、ブロー成形、射出成形、異形押出成形、紡糸(例えば溶融紡糸)のために用いられてよい。当該ブロー成形によって、例えばボトル容器が成形されうる。当該射出成形によって、例えばボトルキャップ又は容器が製造されうる。当該異形押出成形によって、例えばプラダンボールが成形されうる。当該紡糸(例えば溶融紡糸)により、例えばモノフィラメントが成形されうる。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、後述の製造方法により製造されてよい。
【0072】
[フィルム又はシート]
【0073】
本発明は、本発明に従う樹脂組成物から形成された層を含むフィルム又はシートも提供する。前記フィルム又はシートは、本発明に従う樹脂組成物から形成された層のみから構成された単層のフィルム又はシートであってよく、又は、本発明に従う樹脂組成物から形成された少なくとも一つの層と他の組成物(特には樹脂組成物)から形成された少なくとも一つの層とが積層された多層のフィルム又はシートであってもよい。前記フィルムは、例えば200μm未満の厚みを有し、特には10μm以上200μm未満の厚みを有しうる。前記シートは、例えば200μm以上の厚みを有し、特には200μm以上且つ1mm以下の厚みを有しうる。
【0074】
本発明の一つの実施態様に従い、前記フィルム又はシートは、JIS B0031に従い測定された平均粗さ(Ra)が2μm以下、より好ましくは1.8μm以下、さらにより好ましくは1.5μm以下である面を表面に有し、且つ、当該面は、本発明に従う樹脂組成物から形成された層の面である。平均粗さの測定は、JIS B0031に従う表面粗さ計により測定されてよい。本発明の樹脂組成物により、このように平滑な面を有するフィルム又はシートを提供することができる。
【0075】
本発明は、本発明の樹脂組成物から形成されている、多孔性のフィルム又はシートも提供する。当該多孔性のフィルム又はシートは、例えばフィルム又はシート(特には単層のフィルム又はシート)の形状に成形された本発明の樹脂組成物を延伸することによって、例えば一軸方向又は二軸方向、好ましくは一軸方向に延伸することによって、製造することができる。延伸倍率は例えば1.05倍~5倍、好ましくは1.05倍~3.5倍でありうる。このような延伸によって、フィルムに孔を形成することができる。当該延伸が界面剥離をもたらし、これにより孔が形成されうる。当該多孔性のフィルム又はシートは、例えば以下で述べるとおり、空気は透過させるが水は透過させないものであってよい。
【0076】
本発明は、本発明の樹脂組成物から形成されており且つ空気は透過させるが水は透過させないフィルム又はシートも提供する。単層のフィルム又はシートの形状に成形された本発明の樹脂組成物を、上記で述べた延伸処理を行うことによって、空気透過性且つ水不透過性のフィルム又はシートを製造することができる。当該空気透過性且つ水不透過性のフィルム又はシートは、例えばおむつ(特には紙おむつ)のバックシートとして用いられてよい。本明細書内において、おむつのバックシートは、おむつの吸収材よりも外側(すなわち体表面からより離れた位置)に配置されて、吸収材に吸収された液体(例えば尿など)がおむつの外に漏れるのを防ぐための防水シートを意味する。本発明は、当該空気透過性且つ水不透過性のフィルム又はシートをバックシートとして含むおむつも提供する。
【0077】
本発明において、フィルム又はシートが空気透過性であるかは、以下のとおりに判定されてよい。すなわち、フィルム又はシートが例えば200g/m・day以上、好ましくは250g/m・day以上、より好ましくは300g/m・day以上、さらにより好ましくは350g/m・day以上の水蒸気透過度を有することによって、当該フィルム又はシートは空気透過性であると判定されてよい。水蒸気透過度は、JIS Z 0208に従い測定される。当該フィルム又はシートが当該水蒸気透過度を有さない場合は、空気透過性でないと判定されてよい。
【0078】
なお、前記延伸処理前のフィルム又はシートの水蒸気透過度は、例えば50g/m・day以上200g/m・day未満であり、特には70g/m・day以上150g/m・day以下でありうる。一般的なポリエチレンの水蒸気透過度は例えば5~15g/m・dayである。そのため、本発明に従うフィルム又はシートは、延伸処理前であっても、一般的なポリエチレンよりも高い水蒸気透過度を有する。
【0079】
本発明において、フィルム又はシートが水不透過性であるかは、以下のとおりに判定されうる。まず、水を吸収する紙(例えば新聞紙など)の上にフィルム又はシートを重ね、当該フィルム又はシート上に常温の水を載せ、そして、10分間放置する。当該放置後に、当該水が当該フィルム又はシートから前記紙上に落ちないように、当該フィルム又はシートを移動させる。そして、当該移動後に、前記紙に前記水が吸収された形跡が目視により確認されなければ、水不透過性であると判定されてよい。当該移動後に前記紙に前記水が吸収された形跡が目視により確認された場合は、水不透過性でないと判定されてよい。
【0080】
2.可塑化澱粉材料
【0081】
本発明の可塑化澱粉材料は、可塑化澱粉と、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含み、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含み、且つ、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である。
上記「1.樹脂組成物」における可塑化澱粉材料に関する説明の全て(例えば組成及び各成分の詳細など)が、本発明の可塑化澱粉材料についても当てはまる。そのため、本発明の可塑化澱粉材料についての説明は省略する。
前記可塑化澱粉材料は、上記「1.樹脂組成物」において述べたとおりの効果を奏する。例えば、前記可塑化澱粉材料によって、樹脂組成物のバイオマス度を高めることができ且つ樹脂組成物に良好な品質を付与することができる。
【0082】
3.樹脂組成物の製造方法
【0083】
本発明に従う樹脂組成物の製造方法は、澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する第一混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記第一混合工程、前記第一混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程であって、前記可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である前記可塑化工程、及び前記可塑化澱粉材料及び熱可塑性樹脂を20質量部:80質量部~80質量部:20質量部の比率で混合して樹脂組成物を得る第二混合工程を含む。
本発明の製造方法によって、上記「1.樹脂組成物」において述べた本発明の樹脂組成物を製造することができる。
【0084】
前記製造方法は、以下で各工程について説明する。
【0085】
(1)第一混合工程
【0086】
前記第一混合工程において、澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部が混合される。当該澱粉及び当該澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、上記「1.樹脂組成物」において説明したとおりであり、その説明が本製造方法においても当てはまる。澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の量が20質量部以下であると、本発明に従う可塑化澱粉材料を製造することができない場合がある。また、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の量は100質量部以上であると、当該量は、澱粉の量に対して過剰であり、本発明に従う可塑化澱粉材料を製造するために余計な労力及び時間を要し得る。
【0087】
前記第一混合工程において用いられる当該澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む。当該常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは前記澱粉100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~100質量部、より好ましくは0.5質量部~75質量部、さらにより好ましくは1質量部~50質量部の量で、前記澱粉と混合される。前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくはホルムアミド、N,Nジメチルホルムアミド、及び尿素から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであり、より好ましくはホルムアミドである。当該尿素は、好ましくは尿素水(尿素水溶液)として、澱粉と混合される。
【0088】
前記第一混合工程において用いられる当該澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を含みうる。すなわち、本発明の一つの実施態様において、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物及び高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の両方を含む。当該高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、多価アルコールから選ばれる1つ又は2以上の化合物であってよい。これらの化合物と前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物との組合せが、樹脂組成物に混合される澱粉の可塑化のために特に適している。前記第一混合工程において、前記澱粉及び前記極性有機化合物に加えて、多価アルコールエステルも混合されてよい。
【0089】
本発明の一つの実施態様において、前記第一混合工程において、澱粉及び常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物に加えて、多価アルコールが混合される。当該多価アルコールは、例えばグリセリンのみであり、又は、グリセリンとエチレングリコールとの組合せでありうる。
【0090】
本発明の他の実施態様において、前記第一混合工程において、澱粉及び常温で澱粉を可塑化可能な極性有機化合物に加えて、多価アルコール及び多価アルコールエステルが混合される。当該多価アルコールは、例えばグリセリンのみであり、又は、グリセリンとエチレングリコールとの組合せでありうる。当該多価アルコールエステルは、モノグリセリドであってよい。
【0091】
前記第一混合工程において用いられる澱粉として、地下系澱粉及び地上系澱粉を挙げることができ、例えばコーン澱粉又はタピオカ澱粉が用いられてよい。本発明において、好ましくは地下系澱粉が用いられる。地下系澱粉を用いて本発明の樹脂組成物を製造することによって、当該樹脂組成物の臭気をより低減することができる。前記第一混合工程において用いられる澱粉は、澱粉の変性物(すなわち変性澱粉)であってもよい。
【0092】
前記第一混合工程において用いられる澱粉は、好ましくは平衡水分を含むものであってよい。平衡水分の量は、例えば澱粉質量に対して10質量%~15質量%、好ましくは10質量%~14質量%、より好ましくは10質量%~13質量%、さらにより好ましくは11質量%~13質量%でありうる。上記数値範囲内の平衡水分を含む澱粉又は変性澱粉を用いることが、本発明に従う可塑化澱粉材料を製造するために好ましい。平衡水分を含まない澱粉を用いた場合、澱粉が可塑化されないことがある。
【0093】
前記第一混合工程は、例えば撹拌機を用いて行われてよい。当該撹拌機として、市販入手可能な装置が用いられてよい。前記第一前混合工程は、好ましくは常温で行われる。常温で前記第一混合工程を行い、そして次に、以下の可塑化工程を行うことで、澱粉の加熱に起因する着色及び/又は臭いの発生を抑制することができる。
【0094】
前記澱粉は、例えば、可塑化澱粉材料を製造するために用いられる原料の合計量のうち、例えば40質量%~85質量%を占め、好ましくは45質量%~80質量%を占め、より好ましくは50質量%~75質量%を占めうる。
【0095】
前記第一混合工程において、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、例えば澱粉100質量部に対して30質量部~120質量部の量、好ましくは35質量部~100質量部の量、より好ましくは40質量部~100質量部の量で混合されてよい。
【0096】
前記第一混合工程において、前記常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、例えば、澱粉100質量部に対して、例えば1質量部~60質量部、より好ましくは1質量部~50質量部の量、さらにより好ましくは1質量部~40質量部、特に好ましくは1質量部~30質量部の量で混合されてよい。
当該常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくはホルムアミドを含み、より好ましくはホルムアミドのみでありうる。
【0097】
前記第一混合工程において、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を含んでもよい。前記第一混合工程において、前記高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、例えば、当該澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の量から前記常温で澱粉を可塑化可能な極性有機化合物の量を差し引いた残りの量で、混合されてよい。
当該高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくはグリセリン及び/又はエチレングリコールを含みうる。前記第一混合工程において、グリセリン質量対エチレングリコール質量の比は例えば5:1~0.5:1、好ましくは4:1~1:1、より好ましくは3:1~1:1で、グリセリン及びエチレングリコールが用いられうる。
本発明の一つの実施態様に従い、当該高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、グリセリン及びエチレングリコールのみを含みうる。
前記第一混合工程において、モノグリセリドがさらに前記澱粉と混合されうる。前記第一混合工程において、モノグリセリドは、澱粉100質量部に対して、例えば0質量部~5質量部、好ましくは0.1質量部~4質量部、より好ましくは0.5質量部~3質量部の量で混合されうる。
【0098】
(2)可塑化工程
【0099】
前記可塑化工程は、前記第一混合工程において得られた混合物を押出機内で加熱することを含む。当該加熱により、前記澱粉が可塑化されて、可塑化澱粉材料が得られる。当該加熱は120℃~150℃の温度で行われる。当該押出機は、例えば二軸押出機又は単軸押出機であってよく、市販入手可能なものが用いられてよい。当該押出機から押し出された可塑化澱粉材料は、例えば円柱状又はペレット形状を有しうる。
【0100】
当該可塑化澱粉材料は、上記「1.樹脂組成物」において説明したとおりのものであり、その説明が、本製造方法における可塑化澱粉材料にもあてはまる。例えば、当該可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つタイプDデュロメータ硬さが40以下である。
【0101】
(3)第二混合工程
【0102】
前記第二混合工程において、前記澱粉材料製造工程において製造された可塑化澱粉材料と熱可塑性樹脂とが上記比率で混合される。当該混合によって、本発明に従う樹脂組成物が製造される。当該混合は、例えば押出機、好ましくは二軸押出機を用いて行われてよい。当該混合工程において、前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂に加えて、相溶化剤が混合されてもよい。当該相溶化剤は、上記「1.樹脂組成物」において説明したとおりであるので、その説明は省略する。
【0103】
前記混合工程において、混合される成分(例えば前記可塑化澱粉材料及び前記熱可塑性樹脂、並びに、任意的に前記相溶化剤)が加熱される。当該加熱は、前記熱可塑性樹脂が溶融するように行われうる。混合される成分は、例えば、前記熱可塑性樹脂が溶融する温度まで加熱されてよい。当該温度は、熱可塑性樹脂の種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。例えば前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである場合、当該温度は例えば105℃~120℃でありうる。例えば前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合、当該温度は例えば120℃~170℃でありうる。
【0104】
前記製造方法は、前記混合工程において得られた樹脂組成物を成形する成形工程をさらに含んでもよい。当該成形工程によって、所望の形状を有する成形品が製造される。当該成形は、例えばインフレーション成形又はTダイ成形でありうる。このような成形手法によって、フィルム又はシートの形状に成形された樹脂組成物が製造されうる。当該成形温度は、熱可塑性樹脂の種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。例えば前記熱可塑性樹脂がポリエチレンである場合、当該温度は例えば160℃~185℃でありうる。例えば前記熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合も、当該温度は例えば160℃~185℃でありうる。
【0105】
前記製造方法は、前記成形工程においてフィルム又はシート形状に成形された樹脂組成物を延伸する延伸工程をさらに含んでもよい。当該延伸工程によって、当該フィルム又はシート形状の樹脂組成物を多孔性にすることができる。多孔性にするための延伸条件は、上記「1.樹脂組成物」において説明したとおりであるので、その説明は省略する。
【0106】
4.可塑化澱粉材料の製造方法
【0107】
本発明は、可塑化澱粉材料の製造方法も提供する。当該製造方法は、澱粉100質量部に対し、澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を20質量部~100質量部を混合する混合工程であって、前記極性有機化合物が、常温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を少なくとも含む、前記混合工程、及び前記混合工程により得られた混合物を120℃~150℃の温度に加熱することにより前記澱粉を可塑化して可塑化澱粉材料を得る可塑化工程を含む。
当該製造方法によって、本発明の樹脂組成物を製造する為に用いられる可塑化澱粉材料が製造される。
【0108】
当該製造方法に含まれる前記混合工程及び前記可塑化工程は、上記「3.樹脂組成物の製造方法」において述べた前記第一混合工程及び前記可塑化工程とそれぞれ同じである。そのため、上記「3.樹脂組成物の製造方法」においてこれらの工程について述べた説明が、本発明の可塑化澱粉材料の製造方法の上記2つの工程にも当てはまる。
【実施例
【0109】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものでない。
【0110】
試験例1:樹脂組成物の製造及び成形(ホルムアミドを用いた例)
【0111】
(実施例1)
【0112】
以下表1に示されるとおり、澱粉(昭和コーンスターチ、昭和産業株式会社)70質量部、グリセリン32質量部、エチレングリコール16質量部、及びホルムアミド4質量部を用意した。これら4成分を、ミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、前記エチレングリコール、及び前記ホルムアミドは、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
なお、以下表2には、澱粉の量を100質量部とした場合における他の澱粉材料製造用成分の質量部が示されている。
【0113】
当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。当該粉状混合物について、以下の基準に従いべとつきを評価した。
A:べとつきがなく、取り扱い易い。
B:わずかにべとつくが、取り扱いやすい。
C:べとつくため、取り扱いにくい。
【0114】
評価結果は以下表1に示されるとおりであり、当該混合物は、べとつきがなく、取り扱い易かった。
【0115】
前記混合により得られた混合物を、単軸押出機(ナカタニ機械株式会社、VSK50)内へ供給し、そして、当該混合物が混錬処理に付された。当該供給における、当該混合物をフィーダーから押出機への供給のしやすさを評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:容易にフィーダーから押出機内へと落ち、供給しやすかった。
B:フィーダーから押出機内へと落ちたが、フィーダー内面に付着するものもあった。
C:フィーダーから押出機内へ落ちにくかった。
【0116】
評価結果は以下表1に示されるとおりであり、当該混合物は、容易にフィーダーから押出機内へ落ち、供給しやすかった。
【0117】
当該混錬処理におけるシリンダ温度は130℃であった。当該混錬処理において、ベントは開放されていた。当該ベントからの吸引は行われなかった。当該混錬処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の可塑化澱粉材料が得られた。
【0118】
前記可塑化澱粉材料について、物性、気泡の有無、及びべとつきを以下の基準に従い評価した。
<物性>
A:20以上のタイプAデュロメータ硬さが20以上であり且つ40以下のタイプDデュロメータ硬さを有した。
C:40超のタイプDデュロメータ硬さを有した、又は、可塑化澱粉材料の全体にわたって気泡が発生し(膨化し)、硬さを測定できなかった。
<気泡の有無>
A:可塑化澱粉材料の全体にわたって気泡が発生しなかった。
B:可塑化澱粉材料の一部に気泡が発生した。
C:可塑化澱粉材料の全体にわたって気泡が発生した。
<べとつき>
A:べとつきがなかった。
B:わずかにべとつきがあった。
C:べとついたものであった。
【0119】
評価結果は以下表1に示されるとおりであり、当該可塑化澱粉材料は、20のタイプAデュロメータ硬さを有した。当該可塑化澱粉材料は、弾性を有するものであった。
当該可塑化澱粉材料の写真を、図1(a)に示す。図1(a)に示されるとおり、当該可塑化澱粉材料の全体にわたって気泡は形成されていなかった。
また、当該可塑化澱粉材料は、べとつきがなかった。
【0120】
前記可塑化澱粉材料60質量部、ポリエチレン(LLDPE、製品名SP2540、株式会社プライムポリマー)35質量部、及び相溶化剤(マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン株式会社製)5質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混錬処理に付された。当該混錬処理におけるスクリュー温度は120℃であり、且つ、樹脂圧力は4.3MPaであった。当該混錬処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混錬処理によって、樹脂組成物(以下、「実施例1の樹脂組成物」ともいう)が得られた。
【0121】
実施例1の樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムが得られた。
【0122】
前記インフレーション成形における成形性及び得られたフィルムの外観を、以下の基準に従い評価した。
<成形性>
A:樹脂組成物は伸びやすく、良好に吹き上がった。
B:樹脂組成物はやや伸びにくかったが、吹き上がった。
C:樹脂組成物は吹き上がる前に、破れた。
<フィルム外観>
A:滑らかな表面を有し、フィッシュアイ又は異物はフィルム内に観察されなかった。
B:わずかにフィッシュアイ又は異物がフィルム内に観察された。
C:多数のフィッシュアイ又は異物が観察された。
【0123】
評価結果は以下表1に示されるとおりであり、実施例1の樹脂組成物は伸びやすく、良好に吹き上がった。また、得られたフィルムは、滑らかな表面を有し、且つ、当該フィルム中にフィッシュアイ又は異物(例えば澱粉の粒子など)は観察されなかった。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【0126】
(実施例2)
【0127】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、ホルムアミド2質量部、及びグリセリンモノステアレート0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。なお、前記グリセリン、前記エチレングリコール、前記ホルムアミド、及び前記モノグリセリドは、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例2の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例2の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0128】
実施例2においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。表1に示されるとおり、実施例1と同じ評価結果が得られた。
より具体的には、実施例2において製造された可塑化澱粉材料は、65のタイプAデュロメータ硬さを有した。当該可塑化澱粉材料は、弾性を有するものであった。当該可塑化澱粉材料の写真を、図1(b)に示す。図1(b)に示されるとおり、当該可塑化澱粉材料の全体にわたって気泡は形成されていなかった。また、当該可塑化澱粉材料は、べとつきがなかった。
実施例2の樹脂組成物は伸びやすく、良好に吹き上がった。また、得られたフィルムは、滑らかな表面を有し、且つ、当該フィルム中にフィッシュアイ又は異物は観察されなかった。
【0129】
(実施例3)
【0130】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、ホルムアミド1質量部、及びモノグリセリド0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例3の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例3の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0131】
実施例3においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。表1に示されるとおり、実施例1と同じ評価結果が得られた。
【0132】
(実施例4)
【0133】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、ホルムアミド2質量部、及びモノグリセリド1質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例4の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例4の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0134】
実施例4においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。表1に示されるとおり、実施例1と同じ評価結果が得られた。
【0135】
(実施例5)
【0136】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、ホルムアミド2質量部、及びモノグリセリド2質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例5の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例5の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0137】
実施例5においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。表1に示されるとおり、実施例1と同じ評価結果が得られた。
【0138】
(実施例6)
【0139】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉50質量部、グリセリン25質量部、及びホルムアミド25質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。なお、前記グリセリン及び前記ホルムアミドは、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例6の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例6の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0140】
実施例6においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。表1に示されるとおり、実施例1と同じ評価結果が得られた。
【0141】
(比較例1)
【0142】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、及びモノグリセリド0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得ることを試みた。しかしながら、材料がべとつき、押出機内に落ちなかったため、可塑化澱粉材料は得られなかった。
比較例1においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。表1に示されるとおり、澱粉材料を得るための混合物は、べとつくため、取り扱いにくかった。また、当該混合物は、フィーダーから押出機内へ落ちにくかった。
【0143】
(比較例2)
【0144】
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン4質量部、エチレングリコール2質量部、ホルムアミド0.5質量部、及びモノグリセリド0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。なお、前記グリセリン、前記エチレングリコール、前記ホルムアミド、及び前記モノグリセリドは、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
【0145】
前記ミキサーによる混合によって得られた混合物は、粉状混合物であった。当該粉状混合物は、べとつきがなく、取り扱い易かった。
また、前記混合物の前記二軸押出機への供給は、前記混合物がべとつきを有さないものであったため、容易に行うことができた。
しかしながら、比較例2において製造された可塑化澱粉材料は、図1の(d)に示されるとおり、その全体にわたって気泡が形成されていた(膨化していた)。そのため、タイプA及びEのいずれのデュロメータ硬さも測定できなかった。
当該可塑化澱粉材料は発泡していたことにより均一なペレットが形成できなかったため、熱可塑性樹脂と混合することができなかった。
【0146】
(比較例3)
上記表1に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン8質量部、エチレングリコール4質量部、ホルムアミド1質量部、及びモノグリセリド0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。なお、前記グリセリン、前記エチレングリコール、前記ホルムアミド、及び前記モノグリセリドは、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
【0147】
前記ミキサーによる混合によって得られた混合物は、粉状混合物であった。当該粉状混合物は、べとつきがなく、取り扱い易かった。
また、前記混合物の前記二軸押出機への供給は、前記混合物がべとつきを有さないものであったため、容易に行うことができた。
しかしながら、前記可塑化澱粉材料は、50のタイプDデュロメータ硬さを有した。また、図1の(c)に示されるとおり、当該可塑化澱粉材料の一部に気泡が形成されていた。なお、前記デュロメータ硬さは、気泡が形成されていない部分について測定された。また、当該可塑化澱粉材料は、べとつきが無かった。
【0148】
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「比較例3の樹脂組成物」ともいう)を得た。
【0149】
比較例3の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得ることを試みた。しかしながら、インフレーション成形中に当該樹脂組成物から形成されるフィルムが破れた。また、当該破れたフィルム中にはフィッシュアイ又は異物が観察された。
【0150】
(評価結果のまとめ)
【0151】
以上で述べたとおり、ホルムアミドを用いた実施例1~6において、ミキサーによる混合によって得られた混合物は、粉状混合物であり、べとつきがなく、取り扱い易かった。また、これらの混合物の押出機への供給も容易に行うことができた。
また、実施例1~6において製造された可塑化澱粉材料はべとつきが無く又はべとつきがあったとしてもわずかであったので、取り扱い易かった。実施例1~6において製造された可塑化澱粉材料は、いずれも気泡が形成されていなかった。また、実施例1~6の樹脂組成物の成形性及び外観も良好であった。
これらの結果より、本発明に従う可塑化澱粉材料は、常温で澱粉を可塑化可能な極性有機化合物を含まない澱粉材料と比べて容易に製造することができることが分かる。さらに、本発明に従う可塑化澱粉材料は、成形性に優れた樹脂組成物を製造することを可能にする。さらに、可塑化澱粉材料は、その熱可塑性樹脂に対して高い割合で配合されても、例えばインフレーション成形などによってフィルム又はシートを成形することができる。さらに、製造されるフィルム又はシートは、澱粉に起因するフィッシュアイ又は異物を有さない。
【0152】
試験例2:フィルム表面の評価
【0153】
実施例4において製造されたフィルムの表面及び断面を走査型電子顕微鏡により観察した。当該表面及び断面の写真を図2(a)に示す。図2(a)に示されるとおり、表面及び断面に澱粉粒子は確認されなかった。
一方で、可塑化されていない澱粉材料を用いて製造されたフィルムの表面及び断面が図2(b)に示されている。当該フィルムは、インフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度160℃)を用いて製造された。当該フィルムを製造するために用いられた樹脂組成物は、可塑化されていない澱粉30質量部、金属石鹸5質量部、ポリエチレン65質量部、及び相溶化剤5質量部から構成されたものであった。図2(b)に示されるとおり、可塑化されていない澱粉材料を含むフィルムは、表面に澱粉粒子に起因する凸部が多数形成されており、且つ、断面においても澱粉粒子が確認できる。
【0154】
上記2つのフィルムの平均粗さ(Ra)を、JIS B0031に従い表面粗さ計(表面粗さ形状測定機HANDYSURF E-40A、株式会社 東京精密)を用いて測定した。測定結果が、図3に示されている。図3に示されるとおり、実施例4において可塑化澱粉材料を用いて製造されたフィルム表面の平均粗さは約1.2μmであった。
一方で、可塑化されていない澱粉材料を用いて製造されたフィルム表面の平均粗さは、同じ測定方法により測定したところ、約2.8μmであった。
【0155】
上記2つのフィルムの最大高さ(Ry)を、JIS B0061に従い表面粗さ計(表面粗さ形状測定機HANDYSURF E-40A、株式会社 東京精密)を用いて測定した。測定結果が、図4に示されている。図4に示されるとおり、実施例4において製造されたフィルム表面の最大高さは約8μmであった。
一方で、可塑化されていない澱粉材料を用いて製造されたフィルム表面の最大高さは、同じ測定方法により測定したところ、約17μmであった。
【0156】
以上のフィルム表面の評価結果より、本発明に従う可塑化澱粉材料を含む樹脂組成物から形成されたフィルムは、平滑な表面を有することが分かる。
【0157】
試験例3:フィルムの物性の評価
【0158】
実施例4において製造されたフィルムの引張伸び及び引張強度をJIS Z 1702に従い測定した。また、可塑化されていない澱粉材料を用いて製造されたフィルムについても、同じ測定を行った。当該フィルムは、試験例2において製造されたものと同じであった。これらの測定結果を引張伸び及び引張強度の測定結果を図5及び6にそれぞれ示す。
【0159】
図5に示される通り、実施例4において製造されたフィルムは、可塑化されていない澱粉材料を用いて製造されたフィルムと比べて、引張伸びがより高かった。そのため、樹脂組成物中の澱粉が可塑化されていることによって、引張伸びを高められることが分かる。また、図6に示されるとおり、両フィルムの引張強度は同程度であった。
また、図5中に記載されている目盛り以外の横線(150%)以上の引張伸びを有し且つ図5中に記載されている目盛り以外の横線(11.8MPa)以上の引張強度を有するフィルムは、JIS Z 1702に規定された1種A(比較的柔軟性をもつもの)の品質要件を満たす。図5及び6に示される通り、実施例4において製造されたフィルムは、これらの品質要件を満たすので、良好な品質を有するフィルムである。
【0160】
以上のフィルム物性の評価結果より、本発明に従う可塑化澱粉材料を含む樹脂組成物により、良好な品質を有するフィルムを製造することができることが分かる。
【0161】
試験例4:延伸フィルムの作成及び評価
【0162】
実施例4において製造されたフィルムを一軸延伸装置(東レエンジニアリング株式会社製)に供給して、一軸方向に延伸されたフィルムを製造した。延伸倍率は2.5倍であった。
【0163】
当該延伸されたフィルムの水蒸気透過度を、JIS Z 0208 に従い測定したところ、370g/m・dayであった。例えば、ポリエチレンは5~15g/m・dayの水蒸気透過度を有する。そのため、当該延伸されたフィルムは、高い水蒸気透過度を有することが分かる。
【0164】
試験例5:極性有機化合物と澱粉との混合割合
【0165】
可塑化澱粉材料を製造するための材料を混合した場合の混合物の状態を評価した。評価された混合物の組成は、以下の表3に示されるとおりである。押出機への供給のしやすさの観点から、評価基準は以下のとおりとした。混合物の評価結果も同表に示す。
A:粉状である。
B:粉状であるが、湿り気を有しべたつく。
C:ゲル状又は液状である。
【0166】
【表3】
【0167】
表3に示されるとおり、製造例2-1及び2-2の混合物は、粉状であるが湿り気を有し、べたついた。また、製造例2-3及び2-4の混合物は、ゲル状又は液状であった。そのため、グリセリンのみを澱粉と混合して得られる混合物は、押出機への供給には適さない。
一方、製造例2-5~2-8の混合物は粉状であった。また、製造例2-5~2-8の混合物は、圧縮すると固まりやすく、また、当該圧縮により得られた塊は崩しやすく、容易に粉状になった。そのため、ホルミアミドのみを澱粉と混合して得られる混合物は、押出機への供給に適していた。
製造例2-9~2-12の混合物もまた粉状であった。また、製造例2-9~2-12の混合物は、圧縮すると固まりやすく、また、当該圧縮により得られた塊は崩しやすく、容易に粉状になった。そのため、グリセリンとホルムアミドとの混合物を澱粉と混合した場合においても、粉状の混合物が得られることが分かる。
A評価であった製造例の混合比率から、ホルムアミドの量を澱粉100質量部に対して10質量部~70質量部とすることによって、押出機への供給に適した混合物を得やすいと考えられる。
また、製造例2-1~2-4と製造例2-9及び2-12の比較より、グリセリンだけを澱粉と混ぜた場合には取扱い易い粉状混合物は得られないが、グリセリンにホルムアミドを加えることで、グリセリンの量は同じであり且つホルムアミドという液体が加えられたにもかかわらず、取扱い易い粉状混合物が得られることが分かる。
【0168】
試験例6:CNFを含む樹脂組成物の製造及び成形
【0169】
(実施例2-1)
【0170】
澱粉(昭和コーンスターチ、昭和産業株式会社)70質量部、グリセリン32質量部、エチレングリコール16質量部、及びホルムアミド4質量部に加えて、CNFを0.05質量部を用意し、これら5成分を、実施例1と同様にミキサー内で混合して混合物を得た。当該混合物を用いて、実施例1と同様に混錬処理を行って、CNFを含有する可塑化澱粉材料を製造した。
当該可塑化澱粉材料とポリエチレンとを二軸押出機により混錬して樹脂組成物(実施例2-1の樹脂組成物という)を得た。当該樹脂組成物を用いて、インフレーション成形法により厚み40μmのフィルム(以下、「実施例2-1のフィルム」という)を得た。
【0171】
実施例1の樹脂組成物を用いて、上記成形法により厚み40μmのフィルム(以下、「実施例1のフィルム」という)を得た。
【0172】
実施例2-1のフィルム及び実施例1のフィルムの引張強度及び引張伸びを測定したところ、前者のフィルムは後者のフィルムよりも引張強度がより高く且つ引張伸びもより高かった。そのため、CNFを含むことによって、引張強度及び引張伸びを向上させることができることが分かる。
また、CNFは例えばポリエチレンなどの熱可塑性樹脂中に分散されにくいが、実施例2-1の樹脂組成物中にはCNFがよく分散されていた。そのため、CNFが混合された可塑化澱粉材料を熱可塑性樹脂と混合することによって、CNFを熱可塑性樹脂中によく分散させることができることも分かる。
【0173】
(実施例2-2)
【0174】
CNFの量を0.1質量部、0.5質量部、又は1質量部に変更したこと以外は実施例2-1と同じ方法で3種の可塑化澱粉材料を製造した。そして、実施例2-1と同じ方法で、当該3つの可塑化澱粉材料のそれぞれを用いて、3つの樹脂組成物を得た。当該3つの樹脂組成物のそれぞれを用いて、実施例2-1と同じ方法で3つのシートを製造した。得られた3つのシートは、いずれも、実施例1のシートよりも高い引張強度及び引張伸びを有した。また、当該3つの樹脂組成物中には、CNFがよく分散されていた。
【0175】
試験例7:樹脂組成物の製造及び成形(尿素水を用いた例)
【0176】
(実施例3-1)
【0177】
下記表4に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉50質量部、グリセリン20質量部、尿素水20質量部(尿素濃度が水溶液質量に対して32.5質量%である尿素水溶液)、及びグリセリンモノステアレート0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。なお、下記表5に、澱粉を100質量部とした場合の他の成分の量を示す。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例3-1の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例3-1の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0178】
実施例3-1においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果も下記表4に示されている。表4に示されるとおり、可塑化澱粉材料を得るための混合物のべとつき及びフィーダーから押出機への供給のしやすさはいずれもA評価であった。実施例3-1において製造された可塑化澱粉材料のデュロメータ硬さ及び気泡の有無はいずれもA評価であった。当該可塑化澱粉材料は、タイプAのデュロメータ硬さが30であった。実施例3-1の樹脂組成物の成形性及びフィルム外観はいずれもA評価であった。
【0179】
【表4】
【0180】
【表5】
【0181】
(実施例3-2)
【0182】
上記表4に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉50質量部、グリセリン15質量部、尿素水15質量部(尿素濃度が水溶液質量に対して32.5質量%である尿素水溶液)、及びグリセリンモノステアレート0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例3-1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例3-2の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例3-2の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0183】
実施例3-2においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果も上記表4に示されている。表4に示されるとおり、可塑化澱粉材料を得るための混合物のべとつき及びフィーダーから押出機への供給のしやすさはいずれもA評価であった。また、製造された可塑化澱粉材料のデュロメータ硬さ、気泡の有無、及びべとつきはいずれもA評価であった。当該可塑化澱粉材料は、タイプAのデュロメータ硬さが48であった。当該可塑化澱粉材料の写真が図7の(7-a)に示されている。当該写真に示されるとおり、気泡は生じていなかった。また、実施例3-2の樹脂組成物の成形性及びフィルム外観はいずれもA評価であった。
【0184】
(実施例3-3)
【0185】
上記表4に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン32質量部、エチレングリコール16質量部、尿素水4質量部(尿素濃度が水溶液質量に対して32.5質量%である尿素水溶液)、及びグリセリンモノステアレート0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例3-1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例3-3の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例3-3の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0186】
実施例3-3においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果も上記表4に示されている。表4に示されるとおり、可塑化澱粉材料を得るための混合物のべとつき及びフィーダーから押出機への供給のしやすさはいずれもA評価であった。また、製造された可塑化澱粉材料のデュロメータ硬さ、気泡の有無、及びべとつきはいずれもA評価であった。当該可塑化澱粉材料のタイプAデュロメータ硬さは30であった。また、実施例3-3の樹脂組成物の成形性及びフィルム外観はいずれもA評価であった。
【0187】
(実施例3-4)
【0188】
上記表4に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン16質量部、エチレングリコール8質量部、尿素水2質量部(尿素濃度が水溶液質量に対して32.5質量%である尿素水溶液)、及びグリセリンモノステアレート0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例3-1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
前記可塑化澱粉材料を用いて、実施例1と同じ方法で樹脂組成物(「実施例3-4の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例3-4の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0189】
実施例3-4においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果も上記表4に示されている。表4に示されるとおり、可塑化澱粉材料を得るための混合物のべとつき及びフィーダーから押出機への供給のしやすさはいずれもA評価であった。また、製造された可塑化澱粉材料のデュロメータ硬さ、気泡の有無、及びべとつきはいずれもA評価であった。当該可塑化澱粉材料のタイプDデュロメータ硬さは30であった。当該可塑化澱粉材料の写真が図7の(7-b)に示されている。当該写真に示されるとおり、気泡は生じていなかった。また、実施例3-4の樹脂組成物の成形性及びフィルム外観はいずれもA評価であった。
【0190】
(比較例3-1)
【0191】
上記表4に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉50質量部、グリセリン6質量部、尿素水(尿素濃度が水溶液質量に対して32.5質量%である尿素水溶液)6質量部、及びモノグリセリド0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
【0192】
比較例3-1においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果も上記表4に示されている。表4に示されるとおり、可塑化澱粉材料を得るための混合物のべとつき及びフィーダーから押出機への供給のしやすさはいずれもA評価であった。なお、当該混合物は発泡していた。また、製造された可塑化澱粉材料のデュロメータ硬さについてはC評価であり、気泡の有無についてはB評価であった。当該可塑化澱粉材料のべとつきについてはA評価であった。当該可塑化澱粉材料のタイプDデュロメータ硬さは55であった。当該可塑化澱粉材料の写真が図7の(7-c)に示されている。当該写真に示されるとおり、当該可塑化澱粉材料の表面に気泡が見られた。また、比較例3-1の樹脂組成物の成形性及びフィルム外観はいずれもC評価であった。
【0193】
(比較例3-2)
【0194】
上記表4に示されるとおり、前記ミキサー内で澱粉70質量部、グリセリン8質量部、エチレングリコール4質量部、尿素水(尿素濃度が水溶液質量に対して32.5質量%である尿素水溶液)1質量部、及びモノグリセリド0.5質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で、可塑化澱粉材料を得た。
【0195】
比較例3-2においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果も上記表4に示されている。表4に示されるとおり、可塑化澱粉材料を得るための混合物のべとつき及びフィーダーから押出機への供給のしやすさはいずれもA評価であった。なお、当該混合物は発泡していた。また、製造された可塑化澱粉材料のデュロメータ硬さについてはC評価であり、気泡の有無についてはB評価であった。当該可塑化澱粉材料のべとつきについてはA評価であった。当該可塑化澱粉材料のタイプDデュロメータ硬さは60であった。また、比較例3-1の樹脂組成物の成形性及びフィルム外観はいずれもC評価であった。
【0196】
以上の結果と試験例1の結果より、ホルムアミドの代わりに尿素水を用いた場合であっても、得られる樹脂組成物は成形性に優れていること及び当該樹脂組成物から外観に優れたフィルムを製造できることが分かる。
【0197】
試験例8:樹脂組成物の製造及び成形(ポリプロピレンを用いた例)
【0198】
(実施例4-1)
【0199】
実施例1に記載されたとおりに可塑化澱粉材料を得た。当該可塑化澱粉材料を用いて、ポリエチレン35質量部の代わりにポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社、ウィンテック WFX4TA)35質量部を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で、樹脂組成物(「実施例4-1の樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例4-1の樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行ってフィルムを得た。
【0200】
実施例4-1の樹脂組成物に対して、実施例1で述べた評価が行われた。当該評価の結果、実施例4-1の樹脂組成物は伸びやすく、良好に吹き上がった。また、得られたフィルムは、滑らかな表面を有し、且つ、当該フィルム中に澱粉に起因するフィッシュアイ又は異物は観察されなかった。
【0201】
この結果より、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンを用いた場合であっても、得られる樹脂組成物は成形性に優れていること、及び、当該樹脂組成物から外観に優れたフィルムを製造できることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7