(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】燃焼炉の燃料製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/21 20220101AFI20230320BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20230320BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20230320BHJP
C10L 5/46 20060101ALI20230320BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20230320BHJP
C02F 11/13 20190101ALI20230320BHJP
【FI】
B09B3/21
B09B3/60
C10L5/44
C10L5/46
C02F11/02
C02F11/13
(21)【出願番号】P 2019063179
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】517306640
【氏名又は名称】株式会社下瀬微生物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 眞一
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-218312(JP,A)
【文献】特開2007-319738(JP,A)
【文献】特公昭45-010417(JP,B1)
【文献】特開2010-229415(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0044335(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0026760(US,A1)
【文献】特開昭57-046805(JP,A)
【文献】特開2019-42655(JP,A)
【文献】特開2008-195910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/00-5/48
B09B 1/00-5/00
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を投入装置を介して密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機性廃棄物の有機物を発酵させ、減容した乾燥処理物を得る発酵乾燥装置と、
前記発酵乾燥装置から排出された乾燥処理物を投入し、スティック状に成型する造粒機と、
前記造粒機から排出されたスティック状燃料が供給される燃焼炉と、
を備え、
前記造粒機は、
乾燥処理物を一時貯留し、造粒機本体内の基部に投入するホッパーと、
前記ホッパーから供給された乾燥処理物を、外周にヒータを設け、無数の小穴が穿孔されたダイスに向かって圧縮供給する圧縮供給部と、を備え、
前記ホッパーの近傍には、熱硬化剤を一時貯留し、造粒機本体内に熱硬化剤を適宜添加する添加剤ホッパーを備え、
前記圧縮供給部は、前記造粒機本体内の基部側壁に回転自在に支持され、基部側壁外面に設けた電動モータに連結されスクリューであり、
前記ダイスの外面に押し出された乾燥処理物と熱硬化剤の混合物をスティック状燃料として最適な長さにカットする回転刃を有し、
前記燃焼炉は、
前記造粒機から排出されたスティック状燃料を貯留する貯留装置と、前記貯留装置からロータリバルブを介してスティック状燃料が定量供給されるスクリューフィーダと、を有するバーナを備えており、
前記発酵乾燥装置のタンクの長手方向に直交する水平方向を正面として、
前記造粒機は、正面視において、前記タンクから乾燥処理物が排出される排出部の近傍であって、かつ、前記タンクに重複する位置に配置されるとともに、
前記排出部から前記造粒機に至る搬送経路の間には、乾燥処理物から異物を排出する異物選別機が配置されていることを特徴とする、
燃焼炉の燃料製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料炉の燃料製造装置を使用した燃焼炉の燃料製造方法であって、
有機性廃棄物を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して処理対象物の有機物を発酵させ、減容した乾燥処理物を得る発酵乾燥工程と、
前記発酵乾燥工程において得られた乾燥処理物を供給し、造粒機でスティック状燃料に成型する燃料造粒工程と、
前記造粒工程で成形されたスティック状燃料を燃焼炉に供給し、燃焼炉で燃焼させる燃焼工程と、
を備えることを特徴とする燃焼炉の燃料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノコの廃培地や下水汚泥などを含む有機性廃棄物から燃焼炉の燃料を製造する装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、生ごみなどを含む有機性廃棄物を燃焼して処理する場合があるが、その燃焼制御が難しく、また発生熱量が少ないことから、この処理方法では有機性廃棄物は余り処理されていない。また、有機性廃棄物を乾燥処理して燃焼炉の燃料とすることもあるが、臭気成分が分解されていないので、臭気の問題が残っており、十分に利用されていない。このような状況であるから、本願の発明者は、臭気対策として特許文献1に示すように生ごみなどの有機性廃棄物をタンクなどの密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌することによって、効率的に水分を除去し乾燥させることができる装置(発酵乾燥装置)について既に特許出願をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-319738号公報
【文献】特許第4153685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機性廃棄物を発酵乾燥装置で処理した際、有機物は分解、減容化され、乾燥された後、乾燥処理物として排出させることができる。この乾燥処理物からは臭気成分は分解されており、臭気を心配することなく、燃焼炉で燃焼させることも可能であるが、搬送のハンドリング性の悪さから、十分に活用されずにいた。また、この粉状の乾燥処理物をコンベアで搬送する際、この乾燥処理物からは粉塵が飛散し易く、作業環境上好ましくなく、粉塵爆発の危険性もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために本発明では、有機性廃棄物を投入装置で密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機性廃棄物の有機物を発酵させ、減容した乾燥処理物を得る発酵乾燥装置と、前記発酵乾燥装置から排出された乾燥処理物を投入し、スティック状に成型する造粒機と、前記造粒機から排出されたスティック状燃料が供給される燃焼炉とを備えている。
【0006】
したがって、キノコの廃培地や下水汚泥などを含む有機性廃棄物からスティック状燃料を成型することにより、搬送のハンドリング性を改善し、しかも粉塵の飛散を抑えることができることから、作業環境を改善し、さらに粉塵爆発の危険性も排除できる。
【0007】
また、好ましくは、前記造粒機は、乾燥処理物を一時貯留し、造粒機本体内の基部に投入するホッパーと、前記ホッパーから供給された乾燥処理物を、外周にヒータを設け、無数の小穴が穿孔されたダイスに向かって圧縮供給する圧縮供給部であればよい。このことにより、造粒機の構造を簡素化でき、故障のないものとすることができる。
【0008】
さらに、前記圧縮供給部は、造粒機本体内の基部側壁に回転自在に支持され、基部側壁外面に設けた電動モータに連結されスクリューであることが好ましい。そのことにより、造粒機の構造をさらに簡素化でき、故障のないものとすることができる。
【0009】
前記ホッパーの近傍には、熱硬化剤を一時貯留し、造粒機本体内に熱硬化剤を適宜添加可能な添加剤ホッパーを備えることが好ましい。このことにより、この乾燥処理物を造粒機でスティック状燃料に成型すると、確実に強固に成型できるほか、このスティック状燃料を燃焼炉で燃焼すると、今までよりも高い熱エネルギーを発生させることができる。
【0010】
また、本発明は、有機性廃棄物を投入装置で密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して処理対象物の有機物を発酵させ、減容した乾燥処理物を得る発酵乾燥工程と、前記発酵乾燥工程において得られた乾燥処理物を供給し、造粒機でスティック状燃料に成型する燃料造粒工程と、前記造粒工程で成形されたスティック状燃料を燃焼炉に供給し、燃焼炉で燃焼させる燃焼工程とを備えることを特徴とする燃焼炉の燃料製造方法であり、前記燃焼炉の燃料製造装置と同じ効果が期待できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る燃焼炉の燃料製造装置によると、発酵乾燥装置を用いてキノコの廃培地や下水汚泥を含む有機性廃棄物を減圧下で加熱し、効率良く乾燥させるとともに、微生物を利用して有機物の発酵を促進して得られた乾燥処理物として排出させることができる。その後、この乾燥処理物を造粒機に投入し、スティック状に成型された燃料を造粒機から搬送手段を経て、燃焼炉に供給することにより、搬送のハンドリング性も改善される。また、これらスティック状燃料は搬送する際に粉塵の飛散することもなく、粉塵爆発の恐れも解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃焼炉の燃料製造装置の全体概略構成を示すブロック図である。
【
図2】同燃料製造装置の投入装置、発酵乾燥装置、異物選別機、造粒機などを示す正面図である。
【
図4】
図1の燃料製造装置に備える発酵乾燥装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図5】同燃料製造装置に含む異物選別機の概略構成を示す斜視図である。
【
図6】同燃料製造装置に含む造粒機の内部構成を示す断面図である。
【
図7】同燃料製造装置に含む燃焼炉の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃焼炉の燃料製造装置の全体概略構成を示すブロック図、
図2は、同燃料製造装置の投入装置、発酵乾燥装置、造粒機などを示す正面図である。
図3は、同燃料製造装置の投入装置、発酵乾燥装置、異物選別機などを示す側面図、
図4は、同燃料製造装置の発酵乾燥装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【0014】
図1~
図4に示すように、燃焼炉の燃料製造装置1は、投入装置2、発酵乾燥装置3、異物選別機4、造粒機5、貯留装置6、燃焼炉7などを備えている。
【0015】
燃料製造装置1においては、有機性廃棄物として、キノコの廃培地や下水汚泥を対象としているが、生ごみや一般ごみなど有機成分を含む廃棄物であれば、特にこだわりなく利用することができる。
【0016】
図3では、例えば建屋100内に設置された状態の燃料製造装置1を示しており、建屋100内の所定位置に、投入装置2、発酵乾燥装置3、異物選別機4などが設置されている。
図3では、建屋100の壁、屋根、シャッターなどを2点鎖線で示している。なお、
図3では図示していないが、造粒機5、貯留装置6、燃焼炉7なども建屋100内に設置されている。
【0017】
以下、燃料製造装置1に備えられる各機器について説明する。
【0018】
-投入装置-
投入装置2は、第1搬送コンベア21、第2搬送コンベア22および第3搬送コンベア23とで構成されている。
【0019】
第1搬送コンベア21は、
図2の紙面裏側から表側に向かう方向に配設された一対の筒体21a,21aと、それぞれの筒体21a,21a内に設けられたスクリュー21b,21bと、筒体21a,21a先端上部に設けられた電動モータ21cと、筒体21a,21a基端上部に設けられ、キノコの廃培地や下水汚泥などを含む有機性廃棄物(以下、キノコの廃培地と言う)を投入するホッパー21dと、筒体21a,21a先端下部に設けられた第1接続部21eとで構成されている。前記電動モータ21cを駆動すると、一対のスクリュース21b,21bが回転し、ホッパー21d底部のキノコの廃培地をブリッジ現象もなく、安定して搬送させることができ、第1接続部21eを介して接続された第2搬送コンベア22に投入させることができる。
【0020】
第2搬送コンベア22は、
図2紙面の左下から右上に斜めに配設された筒体22aと、その筒体22a内に設けられたスクリュー22bと、筒体22a先端上部に設けられた電動モータ22cと、筒体22a先端下部に設けられた第2接続部22dとで構成されている。前記電動モータ22cを駆動すると、スクリュー22bが回転し、第2搬送コンベア22基端からキノコの廃培地は斜め上方に向けて搬送され、第2接続部22dを介して接続された第3搬送コンベア23に投入させることができる。
【0021】
第3搬送コンベア23は、
図3紙面の中央から右上がりに配設された筒体23aと、筒体23a内に設けられたスクリュー23bと、筒体23a先端上部に設けた電動モータ23cと、筒体23a先端下部に設けられた第3接続管23dとで構成されている。前記電動モータ23cを駆動すると、スクリュー23bが回転し、搬送コンベア23基端からキノコの廃培地を、第3接続管23dを介して接続された後述するタンク30の投入口30aに投入させることができる。
【0022】
発酵乾燥装置3は、以下に詳述するように、キノコの廃培地を減圧下で発酵乾燥させるものであり、この発酵乾燥装置3によって処理された乾燥処理物は、異物選別機4によって金属などの異物を排除することができる。
【0023】
-発酵乾燥装置-
前記発酵乾燥装置3は、特許文献1などに記載されている公知のものであり、以下に説明するように、キノコの廃培地を減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機物を発酵させ、減容した乾燥処理物を得るものである。
【0024】
図4において模式的に示すように、発酵乾燥装置3は、上述したように投入装置2によって供給されるキノコの廃培地を収容する密閉容器として、内部を大気圧以下に保持するように気密に形成された筒状のタンク30を備えている。このタンク30の周壁部には加熱ジャケット31が設けられ、蒸気制御装置92を介して蒸気発生部72から加熱用蒸気が供給されるようになっている。
【0025】
また、その加熱ジャケット31に取り囲まれるようにして、タンク30の内部にはその長手方向(
図3の左右方向)に延びる撹拌シャフト32が設けられ、電動モータ32aによって所定の回転速度で回転されるようになっている。この撹拌シャフト32にはその軸方向に離間して複数の撹拌板32bが設けられており、これにより、ごみを撹拌するとともに、発酵乾燥終了後にはタンク30の排出部30bに向かって長手方向にも送ることができる。また、32aは油圧モータを使用する場合もある。
【0026】
すなわち、タンク30の長手方向一側(
図3の左側)の上部には、投入装置2から供給されるキノコの廃培地の投入口30aが設けられており、ここから投入されたキノコの廃培地が、加熱ジャケット31によって加熱されながら、前記のように撹拌シャフト32の回転によって撹拌される。そして、所定時間経過した後、タンク30の下部に設けられた排出部30bから排出される。
【0027】
なお、詳細は図示しないが、本実施形態では前記撹拌シャフト32の内部にも蒸気の通路が形成されており、ここにも加熱用蒸気が供給されるようになっている。これにより、撹拌シャフト32によってごみを撹拌しながら、その内側からも加熱することができる。そして、蒸気が復水したドレン水は蒸気経路70を介して蒸気発生部72に戻される。
【0028】
キノコの廃培地を加熱するタンク30の上部には、加熱されたキノコの廃培地から発生する蒸気を凝縮部33へ案内する案内部30cが突設されている。凝縮部33は、一対のヘッド33aによって支持された複数の冷却管33bを備えており、この冷却管33bと、以下に述べるクーリングタワー38との間に冷却水経路38aが設けられている。
【0029】
すなわち、
図4には模式的に示すようにクーリングタワー38には、凝縮部33から排出された冷却水が流入する受水槽38bと、この受水槽38bから冷却水を汲み上げる汲み上げポンプ38cと、汲み上げた冷却水を噴射するノズル38dと、が設けられている。ノズル38dから噴射された冷却水は、流下部38eを流下する間にファン38fからの送風を受けて温度が低下し、再び受水槽38bに流入する。
【0030】
このようにしてクーリングタワー38で冷却された冷却水は、冷却水ポンプ38gによって送水され、冷却水経路38aによって凝縮部33に戻されて、複数の冷却管33bを流通する間に、前記のようにキノコの廃培地から発生した蒸気との熱交換によって温度が上昇する。そして、この冷却水が冷却水経路38aによって再びクーリングタワー38に戻される。つまり、冷却水は凝縮部33とクーリングタワー38との間の冷却水経路38aを循環する。
【0031】
こうして循環する冷却水の他に、クーリングタワー38では加熱されたキノコの廃培地から発生する蒸気が凝縮部33において凝縮した凝縮水も注水される。すなわち、凝縮部33において生成した凝縮水は、凝縮部33および連通路35の内部に滞留する。そして、本実施形態では凝縮部33に連通路35を介して真空ポンプ36が接続され、タンク30内を減圧するようになっている。
【0032】
このため、真空ポンプ36が作動すると、前記の連通路35を介して凝縮部33から空気および凝縮水を吸い出し、さらに前記の連通路34および案内部30cを介してタンク30内の空気および蒸気を凝縮部33に導くようになる。こうして凝縮部33からは凝縮水が真空ポンプ36に吸い出され、この真空ポンプ36から導水管によってクーリングタワー38の受水槽38bに導かれる。
【0033】
こうしてクーリングタワー38の受水槽38bに導かれた凝縮水は、冷却水と混ざり合って前記のように汲み上げポンプ38cに汲み上げられ、ノズル38dから噴射された後に、流下部38eを流下しながら冷却される。なお、凝縮水には、タンク30内のキノコの廃培地に添加されたものと同じ微生物が含まれており、この凝縮水に含まれる臭気成分などが分解されているので、臭気はタンク外部へ発散しない。
【0034】
-発酵乾燥装置の作動-
前記のように構成された発酵乾燥装置3の作動について説明すると、タンク30内に収容されたキノコの廃培地は、加熱ジャケット31(および撹拌シャフト32などの蒸気通路)に供給される加熱用蒸気によって加熱されながら、撹拌シャフト32の回転に伴い撹拌される。なお、蒸気制御装置92から供給される加熱用温度は例えば140℃程度が好ましい。
【0035】
そうして、タンク30内を取り囲む加熱ジャケット31による外側からの加熱と、撹拌シャフト32などによる内側からの加熱とを受けて、効果的に昇温されるとともに、撹拌シャフト32によって撹拌される。加えて、真空ポンプ36の作動によって減圧されているため、タンク30内では沸点が低下し、水分の蒸発が早まり、発酵乾燥が促進される。
【0036】
なお、発酵乾燥装置3による発酵乾燥工程では一工程が、例えば2時間であることが好ましく、まず30分かけてキノコの廃培地を発酵させることとなる。前記タンク30内を-0.06~-0.07MPa(ゲージ圧、以下ゲージ圧は省略する)に減圧すると、タンク30内の水分温度は76℃~69℃(飽和蒸気温度)に維持される。その結果、キノコの廃培地は下記微生物で主に発酵、分解が促進される。
【0037】
次に、1.5時間かけて発酵中のキノコの廃培地を乾燥させることになる。そのために、前記タンク30内を-0.09~-0.10MPaにさらに減圧すると、タンク内の水分温度は46~42℃(飽和蒸気温度)に維持され、キノコの廃培地の乾燥は十分に促進される。そして、そのような乾燥処理を行う際に、タンク30内のキノコの廃培地に添加する微生物としては、特許文献2に記載されているように複数種類の土着菌をベースとし、これを予め培養した複合有効微生物群が好ましく、通称、SHIMOSE 1/2/3群がコロニーの中心になる。
【0038】
なお、SHIMOSE 1は、FERM BP-7504 (経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター日本国茨城県つくば市東1丁目1-3に2003年3 月14日に国際寄託されたもの)である。また、SHIMOSE 2は、FERM BP-7505 (SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)、塩に耐性を有するピチアファリノサ(Pichiafarinosa) に属する微生物であり、SHIMOSE 3は、FERM BP-7506 (SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)、スタフィロコッカス(Staphylococcus) に属する微生物である。
【0039】
そうして、前記加熱用蒸気によってタンク30内を加熱すると共に、撹拌シャフト32を所定の回転速度(例えば、8rpm程度)で回転させ、更に、真空ポンプ36の作動によってタンク30内を減圧し、これにより、タンク30内の温度が微生物の活動至適環境となり、微生物による内容有機物の有機成分の分解が好適に促進される。なお、撹拌シャフト32の回転速度(8rpm)は一例であって、内容有機物の有機成分の分解が可能であれば他の値であってもよい。
【0040】
このようにしてタンク30内の温度および圧力を維持しつつ、所定の時間(例えば2時間くらい)が経過した場合、真空ポンプ36および蒸気制御装置92の運転を停止し、大気開放バルブを開いて大気圧状態とする。一方、撹拌シャフト32を逆回転させ、タンク30の排出部30bの蓋を開いて、タンク30から乾燥処理物を排出する。このとき、タンク30から排出される乾燥処理物は減容されている。
【0041】
そして、発酵乾燥装置3によって発酵乾燥処理された乾燥処理物は、排出コンベア41によって、異物選別機4へ向けて搬送される。つまり、排出コンベア41によって、発酵乾燥装置3のタンク30下部の排出部30bから排出される乾燥処理物を、排出部30bよりも高い位置に設けられた異物選別機4まで搬送する。異物選別機4によって、発酵乾燥装置3による発酵乾燥処理では微生物分解されなかった金属などの異物と乾燥処理物に分離するようにしている。
【0042】
-異物選別機-
異物選別機4は、
図5に概略を示すように、磁選機42と振動搬送機43とを備えている。磁選機42は、例えば吊り下げ式のもので、排出コンベア41上に吊り下げられている。磁選機42は、排出コンベア41によって搬送される乾燥処理物から異物である金具や、鉄片などの磁性物(黒丸で示す)を磁石によって吸着し、プーリ41a間を移動するベルト41bによって連続的に排出容器41cへ排出するように構成されている。
【0043】
振動搬送機43は、床面43aと、この床面43aを振動させる振動モータ43bとを備えている。また、振動搬送機43は、複数(例えば4つ)のコイルばね43cによって下台43dに支持され、さらに、床面43aが斜め下方に向けて傾斜した状態で設けられている。このように、振動搬送機43は、コイルばね43cによって下台43dに対しフローティング支持されているので、振動モータ43bの駆動により、斜め前後に振動し、排出コンベア41の先端から投入された乾燥処理物を前方の搬送コンベア44に投入することができる。なお、搬送ベルトコンベア44は、
図2に示すように基部にシュート44aと、先部にベルト駆動モータ44bを設けており、駆動モータ44bを駆動すると、シュート44aに投入された乾燥処理物を、搬送ベルトコンベア44で搬送し、後述する造粒機5のホッパー52に投入することができる。
【0044】
-造粒機-
図6は造粒機の内部構造を示す。造粒機5は、その本体51の基端上部に乾燥処理物を一次貯留し、基端上部の投入口51aから乾燥処理物を供給可能なホッパー52と、本体51の内部に設けられた圧縮供給部としての圧縮スクリュー53と、圧縮スクリュー53の先端に設けられ、無数の小穴54aが穿設されたダイス54とで主に構成されている。
【0045】
また、前記ホッパー52の左近傍には添加剤供給ホッパー55が同じように設けられており、このホッパー55から投入口51bを介して熱硬化剤55aが供給され、この熱硬化剤55aは圧縮スクリュー53で乾燥処理物と混錬される。なお、添加剤ホッパー55は、ホッパー52の近傍に設けているが、乾燥処理物に熱硬化剤55aを供給可能な、例えば搬送ベルトコンベア44上に設けてもよい。
【0046】
前記本体51の基部壁面51cの外面には電動モータ56が設けられており、このモータ56と圧縮スクリュー53の基部とは接続されており、電動モータ56を駆動すると圧縮スクリュー53は基部壁面51cに支持されて回転し、ホッパー52から投入された乾燥処理物と熱硬化剤55aは混錬されながら、ダイス54に向かって圧縮移動する。
【0047】
前記ダイス54の外周にはヒータ57が設けられており、このヒータ57に電気を供給すると、ダイス54は加熱され、乾燥処理物と熱硬化剤55aの混合物がダイス54の小穴54aに圧縮され、ダイス54外面に押し出される際、乾燥処理物はダイス54内で軟化し、外面に出て冷却されて固化する。
【0048】
また、前記ダイス54の外面には回転刃58が回転自在に設けられており、電動モータ(図示せず)を駆動すると、回転刃58は回転し、ダイス54外面に押し出された乾燥物と熱硬化剤55aの混合物は、最適な長さにカットされ、スティック状燃料として成型される。さらに、このスティック状燃料は、
図2に示すようにL字状排出管59などを介して投入ベルトコンベア60の基部に設けたホッパー61に排出される。この投入ベルトコンベア60の先端は、
図7に示す貯留装置6のホッパー62の開口部に向かって延設されており、ホッパー61に投入されたスティック状燃料は、投入ベルトコンベア60を介して貯留装置6のホッパー62内に一時貯留される。
【0049】
本発明の実施例では、発酵乾燥装置にキノコの廃培地を投入し、発酵乾燥処理して乾燥処理物を得ているが、キノコの廃培地にプラスチックなどの容器が含まれていると、プラスチックは発酵乾燥処理されないので、そのまま排出される。つまり、この乾燥処理物には、プラスチックが含まれており、このプラスチックが熱硬化剤55aを代用するので、この場合には熱硬化剤55aを供給する必要はない。
【0050】
また、本発明の実施例では圧縮供給部を圧縮スクリュー53で説明しているが、本体51基部に油圧シリンダーを設け、このピストンでホッパー52から供給された乾燥処理物をダイス54に向かって圧縮させるようにしてもよく、さらに本体51を縦型としてダイス54面に複数のローラを回転自在に設け、このローラで乾燥処理物をダイス54面に押し当て、スティック状燃料としてダイス54から押し出すように成型してもよい。
【0051】
-燃焼炉-
次に、スティック状燃料を燃焼させ、高温の蒸気を発生させる燃焼炉7は、
図7に模式的に示すように、スティック状燃料を効率良く燃焼させることができるバーナ71と、その燃焼熱によって水などの熱媒体を加熱し、高温の蒸気を発生させる蒸気発生部72とを備えている。この蒸気発生部72において発生した加熱用蒸気が、蒸気経路70の蒸気制御装置92を介して発酵乾燥装置3(タンク30の加熱ジャケット31など)に供給される。
【0052】
一例として前記バーナ71は、燃料としてスティック状燃料が貯留されている貯留装置6のホッパー62と、このホッパー62から投下されてくるスティック状燃料を送り出すように、電動モータ74aによって駆動されるスクリューフィーダー74と、こうして送られてきたスティック状燃料を熱分解して、可燃ガスを発生させる1次燃焼炉75と、この可燃ガスを完全燃焼させる2次燃焼炉76とを備えている。
【0053】
スクリューフィーダー74は、円筒状のチャンバ74b内に収容され、その後端側の上方に貯留装置6が接続されている。また、ホッパー62の下部にはロータリバルブ73aが設けられている。一方、スクリューフィーダー74の前端部(
図7の左端部)は、円筒状の1次燃焼炉75の上流端(
図7の右端)の開口に臨んで、ここにスティック状燃料を供給するようになっている。
【0054】
また、前記1次燃焼炉75の上流端の開口に臨んで電熱式の点火栓75aも設けられ、バーナ71の運転を開始するときに、1次燃焼炉75内のスティック状燃料に点火するようになっている。このような1次燃焼炉75には、スクリューフィーダー74からスティック状燃料が供給されるとともに、そのチャンバ74b内にファン77によって押し込まれた空気が流入し、スティック状燃料を燃焼させる。
【0055】
そうして上流端の開口から空気が流入する他に、1次燃焼炉75内にはその周壁に設けられた複数の穴からも空気が流入するようになるが、これらの空気の量がスティック状燃料の燃焼に対して不足気味になることから、1次燃焼炉75においては燃焼する一方、その残部が高温下で熱分解されて可燃ガスを発生する。こうして発生した可燃ガスすなわち、1次燃焼炉75の下流端(
図9の左端)には、2次燃焼炉76内に突出するように先窄まりのノズル部75bが設けられており、ここから2次燃焼炉76内に可燃ガスが燃焼しながら吹き込まれる。こうして吹き込まれる高温の可燃ガスが、2次燃焼炉76内に設けられたバーナ部76aにおいて、空気吸入路76bから吸入される2次空気と混ざり合って燃焼し、この火炎が下流側の燃焼室76cに吹き出すようになる。
【0056】
この火炎は燃焼室76c内の空気を巻き込んで、未燃分がほぼなくなるように燃焼し、これにより発生した高温の燃焼ガスが蒸気発生部72を通過して、その下流側の排気管78や集塵装置(図示せず)などを通過した後に、大気中に放出されるようになる。このようにスティック状燃料から発生した燃焼ガスを燃焼させるようにしているので、排気中には有害物質が少なく、一般的な集塵装置によって清浄化が可能になる。
【0057】
前記の蒸気発生部72については一般的な構成であり、詳しい説明は省略するが、火炎の吹き出す2次燃焼炉76の燃焼室76cを取り囲むよう螺旋状に(或いは燃焼室176c内でジグザグに)配管72aが設けられており、その内部を流通する蒸気または水が燃焼室76cの火炎や燃焼ガスによって加熱されて、高温の蒸気が発生する。そして、この配管72aが蒸気経路70を介して蒸気タービン発電機91や蒸気制御装置92に接続されている。
【0058】
すなわち、前記のような燃料の燃焼熱エネルギーによって蒸気発生部72では、水を加熱して発電用蒸気を発生させる。本実施形態では、前記のように燃焼炉7の蒸気発生部72において発生した発電用蒸気が、蒸気タービン発電機91に供給され、これにより、電力会社に電力を供給するようになっている。
【0059】
また、加熱用蒸気は蒸気制御装置92を介して発酵乾燥装置3(タンク30の加熱ジャケット31など)に供給され、
図3を参照して上述したようにタンク30内を加熱する。これにより蒸気が復水したドレン水は、加熱ジャケット31などから排出されて蒸気経路70を流通し、蒸気発生部72に戻ってくる。
【0060】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均などの意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、キノコの廃培地や下水汚泥などを含む有機性廃棄物を減圧下で加熱しながら、微生物を利用して発酵させ、さらに乾燥させて排出された乾燥処理物からスティック状燃料を成型し、この燃料を燃焼炉に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 燃料製造装置
2 投入装置
3 発酵乾燥装置
4 異物選別機
5 造粒機
6 貯留装置
7 燃焼炉