(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】敷き金物の取付け工法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230320BHJP
E21F 17/12 20060101ALI20230320BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E21F17/12
E06B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019087313
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594117995
【氏名又は名称】三基工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】神谷 泰規
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-042389(JP,A)
【文献】特開2016-223149(JP,A)
【文献】実開平02-132718(JP,U)
【文献】特開昭54-091926(JP,A)
【文献】特開2018-084051(JP,A)
【文献】特開2008-063910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E21F 1/00-17/18
E06B 5/00
E01F 9/00-11/00
E04G 23/00-23/08
E04F 21/00-21/32
B24B 1/00-1/04
B24B 9/00-19/28
E02B 5/00-7/18
E02B 8/00
E02B 8/06-8/08
E02C 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部は、5~25mmの厚さを備えた床面を
備え、
前記出入口、又は前記開口部の前記床面には、対の方立て、及び前記対の方立て間に、敷き金物を付設するとともに、止水板の下面に取付けた水密ゴムとの密着性を確保する前記敷き金物の取付け工法であって、
前記床面は、タイル、石割り、又はコンクリートでなる舗装を
備え、
前記床面は、
前記舗装の表面より、2~20mmの深さ、及び30~60mmの表面の幅を備えた
溝を、切削作業で施工し、
前記溝の底面は水平底面とし、
前記溝に接着剤、又は固定手段を施し、前記接着剤、又は前記固定手段の上に前記敷き金物を敷設し、
た構成とした敷き金物の取付け工法。
【請求項2】
請求項1に記載の
溝は、切削砥石機械、研削砥石機械の機械と、
手動工具との組み合わせを利用し、効率的な施工が可能な構成とした請求項1に記載の敷き金物の取付け工法。
【請求項3】
請求項1に記載の
敷き金物は、前記溝に形成した前記水平底面に、取付け可能な構成とした請求項1に記載の敷き金物の取付け工法。
【請求項4】
請求項
2に記載の溝は、両方立ての近辺で、前記方立てに、砥石の切削面が接触可能な第1箇所までを前記機械による前記切削作業とし、未切削の第2箇所は、前記手動工具による前記切削作業とする構成とした請求項
2に記載の敷き金物の取付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部に立設される止水パネル(止水扉、遮水板)用の敷き金物の取付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
止水パネルは、人の往来、物の取扱い等における出入口、又は水、海水の流れ、物流の流れ等の開口部に取付けられる。この取付け方法として、開口部に立設した対の方立て間に設けた敷き金物に、止水パネルの下面の水密ゴムを圧着する方法である。従って、敷き金物は、必要不可欠であり、かつ開口部の床面に水平に施工されている。
【0003】
そして、止水パネルは、方立てに設けた溝に、差し込み支持する差し込み式(持上げ落し込み式)とか、簡易な取付け方式として、方立ての水圧側より差し込み支持する差し込み式(差し込み式)が挙げられる。
【0004】
そして、この敷き金物を、施工する方法として、
図6-1~
図6-4に示した方法がある。
【0005】
具体的には、後述するが、
図6-1のように、建物、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部の床面は、少なくとも、5~25mmの厚さを備えた床面(舗装面)であり、
図6-2のように、前記床面は、タイル、石割り、又はコンクリートでなる舗装であることで、例えば、この舗装を、カッター等で切断して剥がし、その下面(下側)のコンクリートを、上面の床面(例えば、コンクリート)を斫り、深い凹部を構築する。続いて、
図6-3のように、深い凹部に、例えば、打込みアンカー、及び/又は、アンカー丸鋼等の取付け具を立設しながら、敷き金物を取付ける。そして、
図6-4のように、深い凹部の空間に、モルタル充填とタイル貼り等の仕上げを施し、養生期間として、2~3日を目安として注意と告知をする(実行する必要がある)。
【0006】
このような方法では、カッター加工時の粉塵、騒音等の問題があり、改良点であることと、併せて、作業環境改善が要望される。一方で、養生期間が長いため、その短縮が強く要望されているのが現況である。
【0007】
また、止水板の施工法として、床面が平坦であるか否かが、重要な要素であり、平坦でない場合のレール設置とか、もろもろの各作業がある。故に、専門業者とか、作業人数の確保と、この施工期間、及び/又は、養生期間の決定等に要する時間軸の設定の確保が厳格化される。
【0008】
これらの施工の改良として、調査した結果では特開平8-311827号公報において、舗装面に凹部を刻設し、この凹部に識別表示部を形成した工法が示されている。
【0009】
この文献(1)は、従来の、カッター施工と、養生期間を備えた施工であり、前述と同じような粉塵、騒音等の問題があり、好ましいとは考えられない。
【文献】特開平8-311827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に鑑み、本発明は、床面(舗装)の切削による粉塵の発生を少なくし、かつ、望ましくは、この舗装の表面より、切削作業で2~20mmの深さの溝とし、この溝は、30~60mmの表面の幅を有し、かつ溝は、水平底面となる。そして、養生期間を、望ましくは略0に近くするために、溝を切削作業で施工した後、この溝に、接着剤、又は固定手段を施し、ここに敷き金物を敷設する、極めて、有益な構成を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、床面(舗装)の切削による粉塵の発生を少なく、かつ、望ましくは、この舗装の表面より、切削作業で2~20mmの深さの溝とし、この溝は、30~60mmの表面の幅を有し、かつ溝は、水平底面となる。また、養生期間を、望ましくは略0に近くするために、溝を切削作業で施工した後、この溝に、接着剤、又は固定手段を施し、ここに敷き金物を敷設する、極めて、有益な構成の提供であって、具体的には、請求項1-4で開示する発明である。
【発明の効果】
【0012】
建物、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部は、5~25mmの厚さを備えた床面を備え、前記出入口、又は前記開口部の前記床面には、対の方立て、及び前記対の方立て間に、敷き金物を付設するとともに、止水板の下面に取付けた水密ゴムとの密着性を確保する前記敷き金物の取付け工法であって、
前記床面は、タイル、石割り、又はコンクリートでなる舗装を備え、
前記床面は、前記舗装の表面より、2~20mmの深さ、及び30~60mmの表面の幅を備えた溝を、切削作業で施工し、
前記溝の底面は水平底面とし、
前記溝に接着剤、又は固定手段を施し、前記接着剤、又は前記固定手段の上に前記敷き金物を敷設し、
た構成とした敷き金物の取付け工法。
【0013】
従って、請求項1では、床面(舗装)の切削による粉塵の発生を少なくし、かつ、望ましくは、この舗装の表面より、切削作業で2~20mmの深さの溝とし、この溝は、30~60mmの表面の幅を有し、かつ溝は、水平底面となる。また、養生期間を、望ましくは略0に近くするために、溝を切削作業で施工した後、この溝に、接着剤、又は固定手段を施し、ここに敷き金物を敷設する、極めて、有益な構成の提供である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の溝は、切削砥石機械、研削砥石機械の機械と、手動工具との組み合わせを利用し、効率的な施工が可能な構成とした敷き金物の取付け工法とする。
【0015】
従って、請求項2では、請求項1の目的達成と、最適な切削作業の提供を意図している。
【0018】
請求項3の発明では、請求項1に記載の敷き金物は、前記溝に形成した前記水平底面に、取付け可能な構成とした敷き金物の取付け工法とする。
【0019】
従って、請求項3では、請求項1の目的達成と、敷き金物を水平に取付けるための水平底面を備えた溝の構造を意図している。
【0020】
請求項4の発明は、請求項2に記載の溝は、両方立ての近辺で、前記方立てに、砥石の切削面が接触可能な第1箇所までを前記機械による前記切削作業とし、未切削の第2箇所は、前記手動工具による前記切削作業とする構成とした敷き金物の取付け工法とする。
【0021】
従って、請求項4では、請求項1の目的達成と、切削作業の切削砥石機械となる各種機械と、手動工具との組み合わせを利用し、効率的な施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施例を示した建物、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部で、開口部には、原則として、5~25mmの厚さを備えた床面を備えている一例の俯瞰図
【
図2】
図1の例において、床面に、切削作業で2~20mmの深さの溝を形成し、この溝は、30~60mmの表面の幅を有し、かつ溝は、水平底面となる形態の一例の俯瞰図であり、方立ての一方側からの、切削機械(例えば、切削砥石機械)の作業開始時である
【
図3】
図1の例において、床面に、切削作業で2~20mmの深さの溝を形成し、この溝は、30~60mmの表面の幅を有し、かつ溝は、水平底面となる形態の一例の俯瞰図であり、方立ての他方側における、切削機械の作業終了時である
【
図4】
図1の例において、床面に、切削作業で2~20mmの深さの溝を形成し、この溝は、30~60mmの表面の幅を有し、かつ溝は、水平底面となる形態の一例の俯瞰図であり、方立て間において溝が、切削機械で形成された(施工された)状態の俯瞰図
【
図5-1】
図1の例においてタイル、石張り、コンクリート打ち放し等の状態であって、5~25mmの厚さを備えた床面の端面図
【
図5-2】床面に、
図4に示したように、方立て間に、切削作業で2~20mmの深さで、30~60mmの表面の幅を有する溝を構築しつつ、その底部が、水平底面となる形態を示した端面図
【
図5-3】床面の溝に、接着剤、又は固定手段を施し、ここに敷き金物を敷設する施工であり、原則として、養生期間は、0であることを示した端面図
【
図6-1】従来の、建物、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部の床面は、少なくとも、例えば、5~25mmの厚さを備えた床面(舗装面)を備える従来の一例を示す端面図
【
図6-2】従来の床面は、タイル、石割り、又はコンクリートでなる舗装であることで、例えば、この舗装を、カッター等で切断して剥がし、その下面(下側)のコンクリートを、上面の床面(例えば、コンクリート)を斫り、深い凹部を構築する一例の床面の端面図
【
図6-3】前記
図6-2に示した、従来の深い凹部に、例えば、打込みアンカー、及び/又は、アンカー丸鋼等の取付け具を立設しながら、敷き金物を取付ける従来の一例の床面の端面図
【
図6-4】従来の深い凹部の空間に、モルタル充填とタイル貼り等の仕上げを施し、養生期間として、2~3日を目安として注意と告知をする状態の従来の一例の床面の端面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい、各実施例を説明する。
【0026】
図1~
図4において、建物H、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部H1の床面H2は、例えば、タイル、石割り、又はコンクリートでなる舗装とする。そして、
図2~
図4の如く、床面H2に、方立て2の一方側2aから、方立て20の他方側20aに向かって、切削機械(例えば、切削砥石機械3)で、2~20mmの深さの溝5を形成し、この溝5は、30~60mmの表面の幅50を有し、かつ溝5は、水平底面51となる形態である。尚、切削砥石機械3は、床面Hの表面を切削し、かつ深みのある溝5を作るための最適な刃部(図示しない)を有することと、粉塵防止手段と、水供給手段等を備える。前記切削砥石機械3の代替として、例えば、切削砥機械(チップソーを含む、以下同じ)・研削砥石機械・研磨鑿・切削鑿とか、砥粒研磨機械等も可能であり(各種機械)、いずれにしても、限定されないことと、本発明は、敷き金物の取付け工法に関しており、機械の構造とか、その種類、又は自動か、手動かの限定はないものである。尚、発明の理解の容易化のため、各種機械は、切削砥石機械3として説明するが、限定されない。
【0027】
そして、図示しないが、方立て2の一方側2aと、方立ての20の他方側20aにおいて、切削砥石機械3の刃物が働かない箇所では、図示しないが、手動切削機械(切削砥機械(チップソーを含む、以下同じ)・研削砥石機械・研磨鑿・切削鑿等の手動利器とする)を利用して、前記溝5を構築する。また、水平底面51に、敷き金物6を接着か、止め螺子で固定し、フラットの状態を確保することで、止水板10の水密ゴム100との密着性と、敷き金物6への止水板10の受け水圧に対する強度部材として機能することと、止水性・止水板10の強度の向上ができる。さらに、敷き金物6が、蓋を備える構造では、蓋を起立し、水密ゴム当たり面とすることで、密着性と、前述の止水板10の受け水圧に対する強度部材として機能すること等の特徴がある。方立て2、20への止水板10の取付けは、落込み式、差込み式の何れでも可能であり、また、ハンドル緊締式、その他のロック式であっても可能であり、必要時に使用する。更に図示しないが、方立て2、20を設置せず、止水板10は、開口部H1に落込み式、差込み式の何れかで取付けることも可能である。
【0028】
そして、
図5-1~
図5-3において、5~25mmの厚さを備えた床面H2に、
図4に示したように、方立て間に、切削作業で2~20mmの深さで、30~60mmの表面の幅50を有する溝5を構築しつつ、その底部が、水平底面51となる形態であって、床面H2の溝5に、接着剤、又は固定手段を施し、ここに敷き金物6を敷設する施工では、原則として、養生期間は、0である。
【0029】
尚、切削砥石機械3の刃部の回転切削か、又は連続切削(剥離)作業で、行うことで、溝5の形態変化、及び/又は、寸法変更等は自在であり、重宝することと、各所の開口部H1に対しても自由度があり、有効・有益であって、かつ顧客の要望にも対応できる。そして、後述するが、タイルとコンクリートの組み合わせの床面H2等においても、原則として、一度に、切削・剥離ができる切削砥石機械3の刃部の構造とか、前述した連続切削作業が可能な構造である。
【0030】
併せて、従来例(従来の課題)を示している
図6-1~
図6-4において、従来の、建物H、構造物、構築物の何れかの出入口、又は水路、トンネルの何れかの開口部H1には、5~25mmの厚さを備えた床面H2を備える。そして、図示の如く、従来の床面H2は、タイル、石割り、又はコンクリートでなる舗装であることで、床面H2を、カッター等で切断して剥がし、その下のコンクリートをコンクリート斫りで斫り、深い凹部HH(本発明の
図5-1に比し、
図6-1の如く深い凹部HH)を構築する。例えば、設置したい金物幅より約5~6cm程度大きくタイルを剥がし、後述するように、床面H2を斫り続ける(例えば、堀り続ける)こととなり、後述するように、例えば、敷き金物のみでは曲りが大きい上に、しかも溶接等(連結、一体化)による歪発生による、例えば、H形状やコの字形状に変化する弊害が考えられる。予想しがたい、例えば、敷き金物だけでは曲りが大きい上に溶接等の固定に歪みが発生し、最悪では、H形状やコの字形状の構造になる。さらに、従来の深い凹部HHに、例えば、打込みアンカー、及び/又は、アンカー丸鋼等の取付け具を立設しながら、敷き金物を取付けるので、深い凹部の空間に、モルタル充填とタイル貼り等の仕上げを施し、養生期間として、2~3日を目安として注意と告知をする必要がある。併せて、敷き金物が複雑でコストがかかることと、掘り込み・埋戻し・タイル仕上工程が必要である等の問題が発生し、例えば、多くの工程が必要なため、工事日数・現場養生も多く必要となる。またその他として、例えば、覆い蓋の固定、後工程が必要であって、コストの上昇とか、溝形状の金物の固定、後工程が必要となり厄介である(従来の課題と云える)。
【0031】
しかしながら、本発明では、従来の“コンクリート斫りで深い凹部HHを構築し、この深い凹部HHにおいては、設置したい敷き金物幅より約5~6cm程度大きくタイルを剥がし、床面H2を斫り続けることなり、これに起因する、敷き金物のみでは曲りが大きい上に、しかも溶接等による歪発生による、H形状やコの字形状に変化する弊害を回避できる特徴”とか、“工事日数・現場養生もなくなり有益である”、殊に、前述した、“タイル剥がし作業、その後の貼付け等の作業と、職人の手間、及び/又は、招集回避が図れる実益がある”。
【0032】
以上で説明した各構造・特徴等は、本発明の好ましい一例の説明である。従って、本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造とか、同じ特徴と効果を達成できる構造、等は、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0033】
2 方立て
2a 一方側
20 方立て
20a 他方側
3 切削砥石機械
5 溝
50 幅
51 水平底面
6 敷き金物
10 止水板
100 水密ゴム
H 建物
H1 開口部
H2 床面
HH 深い凹部(本発明の深い凹部の略10倍の深さである)