(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20230320BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230320BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230320BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20230320BHJP
C08F 20/32 20060101ALI20230320BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230320BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20230320BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230320BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
C08F2/50
C08G59/18
C08F20/32
C08L63/00 Z
C08L71/00 Z
C08K5/10
C08K5/54
(21)【出願番号】P 2020007377
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】石川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 正浩
(72)【発明者】
【氏名】上田 格平
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-084108(JP,A)
【文献】特開2018-153845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0109853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
C08F 2/50
C08G 59/18
C08F 20/32
C08L 63/00
C08L 71/00
C08K 5/10
C08K 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性樹脂と、(B)重合開始剤及び/又は(C)熱硬化剤と、(D)
ポリエーテル系リン酸エステル及び脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上である液状チキソ付与剤と、(E)フィラー(但し、粉体チキソ付与剤ではない)と
、粉体チキソ付与剤とを含む、液晶滴下工法用シール剤。
【請求項2】
(A)硬化性樹脂が、2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂とアクリル樹脂との組み合わせからなる群より選択される1種以上を含む、請求項
1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
更に、シランカップリング
剤を含む、請求項1
又は2に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用シール剤でシールされた、液晶表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶滴下工法用シール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造方法において、滴下工法はシール剤の閉ループ内に液晶を直接滴下、真空貼り合わせ、真空開放を行うことでパネルを作成することができる工法である。この滴下工法では、液晶の使用量の低減、液晶のパネルへの注入時間の短縮等のメリットが数多くあり、現在の大型基板を使った液晶パネルの製造方法として主流となっている。滴下工法を含む方法では、シール・液晶を塗布して、貼り合わせた後、ギャップだし、位置あわせを行い、シールの硬化を主に紫外線硬化により行っている。
【0003】
特許文献1には、シール剤の原料として、粉体の有機系揺変剤(チキソ付与剤)を含む液晶シール剤が記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
滴下工法において、シール剤はディスペンサーを用いて基板上に塗布を行うが、基板間やパターン間では塗布を中断する。その際に、特許文献1に記載された粉体のチキソ付与剤を含むシール剤がノズルの先端に液だれし、その影響で規定の線幅にてシール剤を塗布できない問題があった。
【0006】
本発明の課題は、液だれの発生が軽減された液晶滴下工法用シール剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討の結果、液状チキソ付与剤を用いることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明は以下の[1]~[6]に関する。
[1](A)硬化性樹脂と、(B)重合開始剤及び/又は(C)熱硬化剤と、(D)液状チキソ付与剤と、(E)フィラー(但し、粉体チキソ付与剤ではない)とを含む、液晶滴下工法用シール剤。
[2](D)液状チキソ付与剤が、エステル系の液状チキソ付与剤である、[1]の液晶滴下工法用シール剤。
[3](D)液状チキソ付与剤が、ポリエーテル系リン酸エステル及び脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上である、[1]又は[2]の液晶滴下工法用シール剤。
[4](A)硬化性樹脂が、2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂とアクリル樹脂との組み合わせからなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[3]のいずれかの液晶滴下工法用シール剤。
[5]更に、シランカップリング剤及び粉体チキソ付与剤からなる群より選択される1種以上の更なる成分を含む、[1]~[4]のいずれかの液晶滴下工法用シール剤でシールされた、液晶表示体。
[6][1]~[5]のいずれかの液晶滴下工法用シール剤でシールされた、液晶表示体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液だれの発生が軽減された液晶滴下工法用シール剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本明細書において、「グリシジル」とは、2,3-エポキシプロピルを意味する。「メチルグリシジル」とは、2,3-エポキシ-2-メチルプロピルを意味する。「エポキシ基」とは、グリシジル基及びメチルグリシジル基の少なくとも一方を含む。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基(CH2=CH2-C(=O)-)及びメタクリロイル基(CH2=CH(CH3)-C(=O)-)の少なくとも一方を含む。「置換されていてもよい」とは、「置換又は非置換」を意味する。
【0010】
[液晶滴下工法用シール剤]
液晶滴下工法用シール剤(以下、単に「シール剤」ともいう。)は、(A)硬化性樹脂と、(B)重合開始剤及び/又は(C)熱硬化剤と、(D)液状チキソ付与剤と、(E)フィラー(但し、粉体チキソ付与剤ではない)とを含む。
シール剤は、液晶への溶解性が抑えられ、液晶の汚染を防止することができる。
【0011】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂(以下、「成分(A)」ともいう。)は、シール剤の硬化性成分である。硬化性樹脂は、カチオン重合性樹脂、ラジカル重合性樹脂及び/又はアニオン重合性樹脂から、シール剤に含まれる重合開始剤及び/又は熱硬化剤の種類に応じて適宜選択される。このような硬化性樹脂として、不飽和基及び/又はエポキシ基を有する樹脂が挙げられる。硬化性樹脂は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0012】
<不飽和基を有する樹脂>
不飽和基を有する樹脂(以下、「成分(a1)」ともいう。)としては、液晶滴下工法用シール剤の主剤として用いられる従来の不飽和基を有する樹脂が挙げられる。ここで、「不飽和基」とは、エチレン性不飽和基及び/又はアセチレン性不飽和基を意味する。不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物、脂肪族アクリルアミド化合物、脂環式アクリルアミド化合物、芳香族を含むアクリルアミド化合物、N-置換アクリルアミド系化合物、ジエン系ポリマー(例えば、ポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー等)が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリル樹脂であることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物の官能性は、一官能性、二官能性又は三官能性以上の多官能性であることができる。また、(メタ)アクリレート化合物は、アミド結合を有さないことが好ましい。
【0013】
一官能性の(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシ化フェニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1以上の化合物が好ましい。
【0014】
二官能性の(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(例えば、ARONIX M-6100、東亜合成株式会社製)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、4G、新中村化学工業株式会社製)、及びシリコンジ(メタ)アクリレート(例えば、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス株式会社製)からなる群より選択される1以上の化合物が好ましい。ここで、「EO」はエチレンオキシドを意味し、「PO」はプロピレンオキシドを意味する。
【0015】
三官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(三官能)、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(三官能)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(三官能)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(六官能)及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(四官能)より選択される1以上の化合物が好ましい。
【0016】
更に、不飽和基を有する樹脂として、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が(メタ)アクリル酸で変性されたエポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有する変性化合物で変性されたエポキシ樹脂が挙げられる。
不飽和基を有する樹脂は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0017】
<エポキシ基を有する樹脂>
エポキシ基を有する樹脂(以下、「成分(a2)」ともいう。)としては、液晶滴下工法用シール剤の主剤として用いられる従来のエポキシ基を有する樹脂が挙げられる。エポキシ基を有する樹脂は、エポキシ基を1以上有するものであれば特に限定されない。エポキシ基を1つ有する樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
2官能以上のエポキシ樹脂は、特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。また、3官能及び4官能のエポキシ樹脂として、特開2012-077202号公報記載のエポキシ樹脂が挙げられる。2官能以上のエポキシ樹脂の官能数は、特に限定されないが、2~4であることが好ましい。
エポキシ基を有する樹脂は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
<不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂>
不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂(以下、「成分(a3)」ともいう。)としては、液晶滴下工法用シール剤の主剤として用いられる従来の不飽和基及びエポキシ基の両方を有する樹脂が挙げられる。不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂としては、1以上の(メタ)アクリロイル基及び1以上のエポキシ基を有する樹脂であることが好ましく、2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂であることが特に好ましい。
【0020】
<<2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂>>
2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応している樹脂を意味し、すなわち、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方を有する。
【0021】
部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により得ることができる。2官能以上のエポキシ樹脂は、好ましい態様を含め、エポキシ基を有する樹脂において前記したとおりである。
【0022】
部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、樹脂中の(メタ)アクリル基とエポキシ基との合計モル数に対して、(メタ)アクリル基が10~90モル%であることが好ましく、より好ましくは40~60モル%である。部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基と(メタ)アクリル基とを、それぞれ1個以上含有する化合物を含む。また、部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂は、原料エポキシ樹脂中の未反応のエポキシ化合物に相当する、一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、(メタ)アクリル基を有さない化合物と、前記エポキシ化合物の全部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応した化合物に相当する、一分子中に2個の(メタ)アクリル基を有し、エポキシ基を有さない化合物とを含み得る。
不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
<好ましい態様>
硬化性樹脂は、(a3)不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂及び(a1)不飽和基を有する樹脂と(a2)エポキシ基を有する樹脂との組み合わせからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、2官能以上のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂とアクリル樹脂との組み合わせからなる群より選択される1種以上を含むことが特に好ましい。なお、硬化性樹脂が、(a3)不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂を含む場合、更に、(a1)不飽和基を有する樹脂及び(a2)エポキシ基を有する樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0024】
(重合開始剤及び/又は熱硬化剤)
重合開始剤(以下、「成分(B)」ともいう。)は、シール剤をラジカル重合硬化性、アニオン重合硬化性及び/又はカチオン重合硬化性の組成物とすることができる成分である。熱硬化剤(以下、「成分(C)」ともいう。)は、シール剤を熱硬化性の組成物とすることができる成分である。重合開始剤及び/又は熱硬化剤は、シール剤に含まれる硬化性樹脂の種類及び所望の硬化条件(エネルギー線硬化及び/又は熱硬化)に応じて適宜選択できる。よって、シール剤は、重合開始剤及び熱硬化剤のいずれか一方を含んでいてもよく、重合開始剤及び熱硬化剤の両方を含んでいてもよい。
【0025】
<重合開始剤>
重合開始剤として、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及び/又はカチオン重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、シール剤に含まれる硬化成分を、ラジカル重合させる際のラジカル発生源、アニオン重合させる際のアニオン発生源、カチオン重合させる際のカチオン発生源となる成分である。
【0026】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、α-アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類、有機過酸化物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。また、ラジカル重合開始剤として、WO2012/077720に記載されている、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ジメチルアミノ安息香酸とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ヒドロキシチオキサントンとを反応させて得られる化合物との混合物である重合開始剤が好ましい。
【0027】
アニオン重合開始剤としては、イミダゾール類、アミン類、ホスフィン類、有機金属塩、金属塩化物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0028】
カチオン重合開始剤としては、オニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノールアルミニウム錯体、ルイス酸化合物、ブレンステッド酸化合物、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド、スルホン化合物類、スルホン酸エステル類、スルホンイミド類、ジスルホニルジアゾメタン類、及びアミン類等が挙げられる。
【0029】
重合開始剤は、市販されているか、又は、公知の方法に従い調製することができる。
重合開始剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
<熱硬化剤>
熱硬化剤は、特に限定されないが、アミン系熱硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、及びポリアミノウレア等が挙げられ、VDH(1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)等の有機酸ジヒドラジド;株式会社ADEKAから、アデカハードナーEH5030S等として販売されているポリアミン系化合物;味の素ファインテクノ株式会社から、アミキュアPN-23、アミキュアPN-30、アミキュアMY-24、アミキュアMY-H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。
熱硬化剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
(液状チキソ付与剤)
液状チキソ付与剤(以下、「成分(D)」ともいう。)は、シール剤にチキソ性を付与する成分である。「液状」とは、粉体成分を含有していないことを意味する。
【0032】
液状チキソ付与剤としては、エステル系、アマイド系、多価カルボン酸系等の液状チキソ付与剤が挙げられる。
エステル系の液状チキソ付与剤としては、リン酸エステルの液状チキソ付与剤又は脂肪酸エステルの液状チキソ付与剤が挙げられる。リン酸エステルとしては、ポリエーテル系リン酸エステルが好ましい。ポリエーテル系リン酸エステルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸のエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸のエステル又は高級アルコールリン酸のエステルが挙げられる。
液状チキソ付与剤は、エステル系の液状チキソ付与剤であることが好ましく、ポリエーテル系リン酸エステルである液状チキソ付与剤又は脂肪酸エステルである液状チキソ付与剤であることが特に好ましい。
液状チキソ付与剤の市販品としては、ディスパロン3500、ディスパロン3600N、ディスパロン3900EF(楠本化成株式会社製)、RCM-100(共栄社化学社製)、BYK-R606、BYK-405、BYK-R605等(ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
液状チキソ付与剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
(フィラー(但し、粉体チキソ付与剤ではない))
フィラー(但し、粉体チキソ付与剤ではない)(以下、「成分(E)」ともいう。)は、シール剤の粘度制御やシール剤を硬化させた硬化物の強度向上、又は線膨張性を抑えることによってシール剤の接着信頼性を向上させる等の目的で添加される。フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。
【0034】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ(但し、ヒュームドシリカを除く)、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。
【0035】
有機フィラーとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子、及び高いガラス転移温度を有する共重合体を含むシェルと低いガラス転移温度を有する共重合体のコアとから構成されるコアシェルタイプ粒子等が挙げられる。
【0036】
無機フィラーは、シリカフィラーであることが好ましい。また、有機フィラーは、コアシェルタイプ粒子であることが好ましい。
フィラーは、市販品を用いることができる。シリカフィラーの市販品としては、シーホスターKEシリーズ(KE-C50等)等が挙げられる。また、コアシェルタイプ粒子としては、ゼフィアックシリーズ(F-351等、アイカ工業株式会社製)等が挙げられる。
フィラーは、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
(更なる成分)
シール剤は、シランカップリング剤、粉体チキソ付与剤、光増感剤、更なる樹脂からなる群より選択される1以上の更なる成分を含むことができる。なお、更なる成分は、上記した成分(A)~成分(E)ではない。
【0038】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤(以下、「成分(F)」ともいう。)は、接着強度をより高めることを目的として添加される。シランカップリング剤は、特に限定されず、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
<粉体チキソ付与剤>
シール剤は、本発明の効果を奏する範囲内で、粉体チキソ付与剤(以下、「成分(G)」ともいう。)を含むことができる。粉体チキソ付与剤は、溶剤に溶解又は分散した状態であってもよい。
【0040】
粉体チキソ付与剤は無機系又は有機系の粉体チキソ付与剤が挙げられる。ここで、無機系の粉体チキソ付与剤としては、ヒュームドシリカ等が挙げられる。また、有機系の粉体チキソ付与剤としては、アマイド系(ポリヒドロキシカルボン酸アマイド系)、ひまし油系、酸化ポリエチレン系、ポリヒドロキシカルボン酸エステル系等の粉体チキソ付与剤が挙げられる。
【0041】
粉体チキソ付与剤は、市販品を用いることができる。ヒュームドシリカの市販品としては、TG-308F(キャボット社製)、RY200(日本アエロジル社製)等が挙げられる。また、ヒュームドシリカ以外の粉体チキソ付与剤の市販品としては、ディスパロン305、ディスパロン4300、ディスパロン6650、ディスパロン6500、ディスパロン6700、ディスパロンF9050(楠本化成社製)が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂との相溶性が高く、液晶滴下工法用シール剤のチキソ性を向上させる効果を発揮しやすいことから、粉体チキソ付与剤は、ヒュームドシリカであることが好ましい。
粉体チキソ付与剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0043】
<更なる樹脂>
更なる樹脂としては、液晶シール剤の主剤として用いられる硬化性樹脂以外の樹脂であり、従来の不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂が挙げられる。不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有さない変性化合物で変性された変性エポキシ樹脂、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物から形成されるウレタン樹脂等が挙げられる。
【0044】
(各成分の含有量)
成分(A)の含有量は、シール剤の合計100重量部に対して、50~99重量部であることが好ましく、60~90重量部であることが特に好ましい。
成分(a3)の含有量は、成分(A)の100重量部中、30~100重量部であることが好ましく、50~100重量部であることが特に好ましい。
成分(B)の含有量は、成分(A)の100重量部に対して、0.1~5重量部であることが好ましく、1~5重量部であることが特に好ましい。
成分(C)の含有量は、成分(A)の100重量部に対して、5~50重量部であることが好ましく、10~40重量部であることが特に好ましい。
成分(D)の含有量は、成分(A)~成分(E)の合計100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましく、0.05~3重量部であることが特に好ましい。
成分(E)の含有量は、成分(A)~成分(E)の合計100重量部に対して、2~40重量部であることが好ましく、5~30重量部であることがより好ましい。
成分(F)の量は、成分(A)~成分(E)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、0.5~5重量部であることがより好ましい。
成分(G)の含有量は、成分(A)~成分(E)の合計100重量部に対して、0.1~5重量部であることが好ましく、0.5~5重量部であることがより好ましい。
前記した成分以外の更なる成分の含有量は、成分(A)~成分(E)の合計100重量部に対して、0.0001~10重量部であることが好ましく、0.001~5重量部であることがより好ましい。
【0045】
(特性)
液晶滴下工法用シール剤の粘度は、シール剤として通常用いられる粘度であれば特に限定されないが20万~50万mPa・sであることが好ましく、20万~40万mPa・sであることが特に好ましい。粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
(硬化方法)
シール剤は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させることができる。よって、シール剤は、光(エネルギー線)硬化性、熱硬化性、又は、エネルギー線及び熱硬化性の組成物である。
【0047】
(用途)
液晶滴下工法用シール剤の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。よって、本発明は、シール剤でシールされた、液晶表示体も対象とする。
液晶表示体を製造する方法としては、ディスペンサーを用いて、二枚の電極付き透明基板の一方に、シール剤を塗布して、シール剤のパターンを形成する工程、液晶を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐにもう一方の透明基板を貼り合わせる工程、及び、シールパターン部分に紫外線等の光を照射するか、シール剤を加熱するか、シールパターン部分に紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
【実施例】
【0048】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0049】
[使用成分]
(A)硬化性樹脂
(a-1)(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂:化合物1;WO2014/057871号公報の段落0092に記載された、下記構造式を有する「化合物B」である。
【化1】
(B)重合開始剤
(b-1)開始剤1:WO2012/077720号公報の段落0058に記載された、下記構造式を有する開始剤である。
【化2】
(b-2)開始剤2:WO2012/077720号公報の段落0060に記載された、下記構造式を有する開始剤である。
【化3】
【0050】
(C)熱硬化剤
(c-1)ポリアミン系化合物(EH-5030S、ADEKA製)
【0051】
(D)液状チキソ付与剤
(d-1)ポリエーテルリン酸エステル(ディスパロン3500、楠本化成社製)
(d-2)脂肪酸エステル(RCM-100、共栄社化学社製)
【0052】
(E)フィラー
(e-1)無機フィラー;シリカフィラー(シーホスターKE-C50、日本触媒社製)
(e-2)有機フィラー;コアシェル型アクリル樹脂フィラー(ゼフィアックF-351、アイカ工業社製)
【0053】
(F)粉体チキソ付与剤
(f-1)疎水性ヒュームドシリカ(TG-308F、キャボット社製)
(f-2)疎水性ヒュームドシリカ(RY200、日本アエロジル社製)
(f-3)アマイド系粉体チキソ付与剤(ディスパロン6500、楠本化成社製)
(G)シランカップリング剤
(g-1)3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBM-403、信越化学工業社製)
(H)重合禁止剤
(h-1)2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール(BHT、関東化学社製)
【0054】
[実施例1~2及び比較例1~5]
下記の表1に示す配合量(重量部)にて混合後、3本ロールミル(C-4 3/4×10、株式会社井上製作所製)により充分に混練して実施例及び比較例のシール剤を製造した。実施例及び比較例のシール剤について、以下の試験による評価を行った。
【0055】
<特性の測定>
(粘度)
E型粘度計(東機産業社製 RE105U)を用いて、25℃で、コーンロータの回転速度0.5rpm、2.5rpm及び5.0rpmで粘度を測定した。
(チキソ比)
上記「(粘度)」で測定した「0.5rpmの粘度/5.0rpmの粘度」の値をチキソ比とした。
【0056】
(エポキシ当量)
JISK7236:2001によりエポキシ当量を測定した。
【0057】
(液だれ試験)
ノズルを取り付けたシリンジ(武蔵エンジニアリング製、容量30ml)に、シール剤10gを充填し、3時間静置した。目視により、ノズルの先端の液溜の有無を確認して、液だれの有無を評価した。
【0058】
(塗布性試験)
シール剤塗布装置(武蔵エンジニアリング製)、ノズル(武蔵エンジニアリング製、ノズル径0.3mm)を用いて、ITO基板上に、塗布速度150mm/s、ノズルギャップ30μm、で描画した。目視によりシール切れの有無を確認し、塗布性を評価した。
【0059】
(配向性試験)
純水洗浄後乾燥させたITO基板(403005XG-10SQ1500A、ジオマテック株式会社製)にエアディスペンサーを用いてポリイミド系配向液(サンエバーSE-7492、日産化学工業社製)を滴下(0.4MPa、5.0秒)した後、スピンコーターにて10秒で5000rpmに達し、その後20秒キープする条件で均一塗布した。均一塗布した後、85℃のホットプレート上でプリベーク(1分)、230℃のオーブンでポストベーク(60分)し、ポリイミド配向膜付基板を作製した。
【0060】
配向膜を塗布した基板にシール剤を塗布し枠を構成し、枠内に液晶を滴下させ、対向基板を真空下で貼り合わせた後、マスク越しにUV(積算光量200mJ/cm2)を照射、120℃で60分間加熱して、セルを作製した。セルを顕微鏡で透過偏光観察しムラがないか確認を行った。以下の基準で配向性の評価を行った。
〇:ムラがない。
×:ムラがある。
【0061】
(接着強度試験)
シール剤を、6μmスペーサーを散布したITO基板(30mm×30mm×0.5mmt)上の15mm×3mm、15mm×21mmの位置に、貼り合わせ後のシール剤の直径が1.5~2.5mmφの範囲となるように点塗布した。その後、同種の基板(23mm×23mm×0.5mmt)を貼り合わせ、紫外線を積算光量3,000mJ/cm2で照射(照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機社製)して硬化させ、120℃オーブンで60分間加熱して、硬化物試験片を作製した。オートグラフ(TG-2kN、ミネベア社製)を用い、試験片を固定して基板の15mm×25mmの位置を5mm/分の速度で押し抜き、接着強度を測定した。
【0062】
結果を表1及び表2に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
実施例のシール剤は、液だれ性及び塗布性の両方に優れていた。特に、実施例1と比較例4、及び、実施例2と比較例5との比較により、有機系のチキソ付与剤の中でも、液状のチキソ付与剤を用いた場合は、液だれ性及び塗布性の両方に優れることがわかる。
一方、比較例1~5のシール剤は、液状チキソ付与剤を含まない。
比較例1~2のシール剤は、チキソ付与剤として、無機系の粉体チキソ付与剤のみを含むため、塗布性に劣っていた。
比較例1と比較例3との比較により、チキソ付与剤として、無機系の粉体チキソ付与剤の含有量が少ない場合、液だれ性に劣っていた。
比較例4のシール剤は、チキソ付与剤として、有機系の粉体チキソ付与剤を含むため、液だれ性に劣っていた。
比較例5と比較例4との比較により、チキソ付与剤として、有機系の粉体チキソ付与剤の含有量が多くなる場合、液だれ性及び塗布性のいずれも劣っていた。