(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】間仕切壁構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20230320BHJP
E04B 2/82 20060101ALI20230320BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
E04B2/74 551A
E04B2/82 521A
E04B1/82 W
(21)【出願番号】P 2020504950
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007545
(87)【国際公開番号】W WO2019172040
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018038125
(32)【優先日】2018-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 知哉
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】今泉 直樹
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-133414(JP,A)
【文献】特開2012-017644(JP,A)
【文献】杉江聡 吉村純一,せっこうボードの積層方法が二重壁の遮音性能に与える影響 -積層板の接着方法について-,日本音響学会 2015年 秋季研究発表会講演論文集CD-ROM,ISSN 1880-7658,日本,一般社団法人音響学会,2015年09月18日,p.885-886
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04B 2/82
E04B 1/82,1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁端部を他の建築構造体に突付けられ、該建築構造体に連接する壁端部が建築空間に少なくとも部分的に露出したシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造において、
前記壁端部に配置され、第1及び第2の端柱部材より構成される端柱と、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯とを有し、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材が、第1端柱部材に固定され、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材が、第2端柱部材に固定されており、
第1及び第2端柱部材は、壁芯方向に相対的にずれた位置関係をなして前記壁端部に配置され、前記間隙又は絶縁帯は、第1及び第2端柱部材の間において壁厚方向に延在し、第1端柱部材は、前記他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接し又は接触し、第2端柱部材は、前記壁端部の中空域に配置され、
前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、前記仕上げ面又は下地面とは離間し、目地材が前記端縁と前記仕上げ面又は下地面との間に充填又は挿入され、これにより、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、
第2端柱部材から壁端側に延出する前記面材の突出寸法(L5,L6)は、80mm以下の寸法に設定されたことを特徴とする間仕切壁構造。
【請求項2】
前記間隙又は絶縁帯の寸法は、40mm以下の寸法に設定され、緩衝材が第1端柱部材の外側面に一体的に取付けられ、該緩衝材の外面は、下張り面材の裏面に接触し、或いは、下張り面材の裏面から僅かに離間することを特徴とする請求項
1に記載の間仕切壁構造。
【請求項3】
壁端部を他の建築構造体に突付けられ、該建築構造体に連接する壁端部が建築空間に少なくとも部分的に露出したシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造において、
前記壁端部に配置され、第1及び第2の端柱部材より構成される端柱と、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯とを有し、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材が、第1端柱部材に固定され、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材が、第2端柱部材に固定されており、
第1及び第2端柱部材は、前記壁端部に並列配置され、前記間隙又は絶縁帯は、第1及び第2端柱部材の間において壁芯方向に延在し、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、第1及び第2端柱部材は、前記他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接し又は接触することを特徴とする間仕切壁構造。
【請求項4】
前記間仕切壁は、鋼製壁下地を有する中空構造の軽量間仕切壁であり、該間仕切壁を構成するランナは、鋼製ランナであり、第1及び第2端柱部材は、前記間仕切壁の間柱を構成する鋼製スタッドと実質的に同じ断面外形寸法を有する鋼製スタッドであり、前記間柱は、鋼製スタッド用のランナスペーサを使用して千鳥配列に建込まれ、第1及び第2端柱部材は、該ランナスペーサと同一又は同等のランナスペーサを使用して前記壁端部に立設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の間仕切壁構造。
【請求項5】
前記間仕切壁は、鋼製壁下地を有する中空構造の軽量間仕切壁であり、該間仕切壁を構成するランナは、鋼製ランナであり、前記間柱及び端柱部材は、鋼製スタッドであり、前記間柱は、鋼製スタッド用のランナスペーサを使用して千鳥配列に建込まれ、前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、前記仕上げ面又は下地面とは離間し、目地材が前記端縁と前記仕上げ面又は下地面との間に充填又は挿入され、これにより、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接することを特徴とする請求項3に記載の間仕切壁構造。
【請求項6】
前記間隙又は絶縁帯における第1及び第2端柱部材の離間距離は、55mm以下の寸法に設定されることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の間仕切壁構造。
【請求項7】
前記建築内装面材は、一体的に接着された下張り面材及び上張り面材からなり、下張り面材は、厚さ20~25mmの石膏ボードであり、上張り面材は、厚さ8~13mmの石膏ボードであることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の間仕切壁構造。
【請求項8】
壁端部を他の建築構造体に突付け、該建築構造体に連接する壁端部を建築空間に少なくとも部分的に露出せしめたシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁の施工方法において、
前記壁端部に配置される端柱を第1及び第2の端柱部材により構成し、
第1及び第2端柱部材を、壁芯方向に相対的にずれた位置関係をなして前記壁端部に配置し、該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯を前記端柱部材の間に形成して、該間隙又は絶縁帯を第1及び第2端柱部材の間において壁厚方向に延在せしめ、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材を第1端柱部材に固定し、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材を第2端柱部材に固定
するとともに、前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面とを離間させて、該仕上げ面又は下地面と前記端縁との間に目地材を充填又は挿入する工程を有し、
第1端柱部材は、前記仕上げ面又は下地面に近接し又は接触し、第2端柱部材は、前記壁端部の中空域に配置され、
前記端縁と前記仕上げ面又は下地面とは、前記目地材を介して連接し、これにより、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、
第2端柱部材から壁端側に延出する前記面材の突出寸法(L5,L6)は、80mm以下の寸法に設定されることを特徴とする間仕切壁の施工方法。
【請求項9】
前記間隙又は絶縁帯の寸法を40mm以下の寸法に設定し、緩衝材を第1端柱部材の外側面に一体的に取付け、該緩衝材の外面を下張り面材の裏面に接触せしめ、或いは、下張り面材の裏面から僅かに離間させることを特徴とする請求項
8に記載の施工方法。
【請求項10】
壁端部を他の建築構造体に突付け、該建築構造体に連接する壁端部を建築空間に少なくとも部分的に露出せしめたシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁の施工方法において、
前記壁端部に配置される端柱を第1及び第2の端柱部材により構成し、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯を前記端柱部材の間に形成し、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材を第1端柱部材に固定し、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材を第2端柱部材に固定し、
第1及び第2端柱部材は、前記壁端部に並列配置され、前記間隙又は絶縁帯は、第1及び第2端柱部材の間において壁芯方向に延在し、第1及び第2端柱部材は、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接し又は接触することを特徴とする施工方法。
【請求項11】
前記間仕切壁は、鋼製壁下地を有する中空構造の軽量間仕切壁であり、該間仕切壁を構成するランナは、鋼製ランナであり、第1及び第2端柱部材は、前記間仕切壁の間柱を構成する鋼製スタッドと実質的に同じ断面外形寸法を有する鋼製スタッドであり、前記間柱は、鋼製スタッド用のランナスペーサを使用して千鳥配列に建込まれ、第1及び第2端柱部材は、該ランナスペーサと同一又は同等のランナスペーサを使用して前記壁端部に立設されることを特徴とする請求項8又は9に記載の施工方法。
【請求項12】
前記間仕切壁は、鋼製壁下地を有する中空構造の軽量間仕切壁であり、該間仕切壁を構成するランナは、鋼製ランナであり、前記間柱及び端柱部材は、鋼製スタッドであり、前記間柱は、鋼製スタッド用のランナスペーサを使用して千鳥配列に建込まれ、前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、前記仕上げ面又は下地面とは離間し、目地材が前記端縁と前記仕上げ面又は下地面との間に充填又は挿入され、これにより、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接することを特徴とする請求項10に記載の施工方法。
【請求項13】
前記間隙又は絶縁帯における第1及び第2端柱部材の離間距離は、55mm以下の寸法に設定されることを特徴とする請求項8乃至
12のいずれか1項に記載の施工方法。
【請求項14】
前記建築内装面材を構成する下張り面材として、厚さ20~25mmの石膏ボードを使用し、前記建築内装面材を構成する上張り面材として、厚さ8~13mmの石膏ボードを使用し、下張り面材を前記端柱部材に固定するとともに、上張り面材を下張り面材に接着することを特徴とする請求項8乃至
13のいずれか1項に記載の施工方法。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の間仕切壁構造を有し、遮音性能の性能値であるTL
D値=50以上の遮音性を有することを特徴とする間仕切壁。
【請求項16】
請求項8乃至14のいずれか1項に記載の施工方法により、遮音性能の性能値であるTL
D値=50以上の遮音性を有する高性能遮音壁を構築することを特徴とする間仕切壁の施工方法。
【請求項17】
間柱を構成する鋼製スタッドを上下の鋼製ランナによって支持する構造の鋼製壁下地を有し、遮音性能の性能値であるTL
D値が57以下の値を示し、壁端部を他の建築構造体に突付け、該建築構造体に連接する壁端部を建築空間に少なくとも部分的に露出せしめたシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁に適用され、そのTL
D値を58~65の範囲内の値に向上させる間仕切壁の遮音方法であって、
前記壁端部に配置される端柱を、鋼製スタッドからなる第1及び第2の端柱部材より構成し、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯を前記端柱部材の間に形成し、
前記間隙又は絶縁帯を第1及び第2端柱部材の間において壁厚方向又は壁芯方向に延在させて、第1及び第2端柱部材の双方又は一方を、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接させ又は接触
させ、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材を第1端柱部材に固定し、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材を第2端柱部材に固定するとともに、前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面とを離間し、該仕上げ面又は下地面と前記端縁との間に目地材を充填又は挿入し、これにより、前記壁端部を他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、
間仕切壁の各側の前記面材を下張り面材及び上張り面材より構成し、該下張り面材として、厚さ20~25mmの石膏ボードを使用し、前記上張り面材として、厚さ8~13mmの石膏ボードを使用し、前記下張り面材を前記端柱部材に固定するとともに、前記上張り面材を該下張り面材に接着することを特徴とする間仕切壁の遮音方法。
【請求項18】
気密性を有する目地構造を前記目地材によって前記仕上げ面又は下地面と前記面材の端縁との間に形成することを特徴とする請求項17に記載の遮音方法。
【請求項19】
前記間隙又は絶縁帯における第1及び第2端柱部材の離間距離を55mm以下の寸法に設定することを特徴とする請求項17又は18に記載の遮音方法。
【請求項20】
前記目地材は、気密性を有する目地構造を前記仕上げ面又は下地面と前記面材の端縁との間に形成することを特徴とする請求項1、2、4又は5に記載の間仕切壁構造。
【請求項21】
気密性を有する目地構造を前記目地材によって前記仕上げ面又は下地面と前記面材の端縁との間に形成することを特徴とする請求項8、9、11又は12に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切壁構造及びその施工方法に関するものであり、より詳細には、中高層建築物の戸境壁、界壁又は耐火区画壁等として一般に施工され、優れた遮音性能を発揮するシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の間仕切壁には、防火性能、耐火性能、遮音性能、防振性能、振動絶縁性能、断熱性能、防犯性能等の各種性能が要求されるが、間仕切壁の遮音性能は、各住居又は各室の独立性及び居住性を確保する上で近年殊に重視される傾向がある。
【0003】
集合住宅等の中高層建築物において間仕切壁として施工される非耐力壁として、石膏ボード、珪酸カルシウム板等の建築内装面材(建築内装工事用のボード材料)を軽量形鋼(LGS)の鋼製間柱に取付けてなる中空構造の乾式間仕切壁や、補強リブ等を有する建築内装面材を自立させ、鋼製間柱を省略した中空構造(一般にノンスタッド構造又はスタッドレス構造と呼ばれる。)の乾式間仕切壁が知られている。このような乾式工法の間仕切壁は、施工容易性及び建築物軽量化等の観点より有利であり、中高層建築物の戸境壁、界壁又は耐火区画壁等の壁体として広く普及している。
【0004】
一般に、鋼製間柱を使用した中空構造の乾式間仕切壁は、非特許文献1に記載される如く、鋼製スタッド、鋼製ランナ、振止め、スペーサ等を含む建築用鋼製下地材(JIS A 6517規格品、或いは、その同等品、準拠品又は互換品等)により構成される鋼製壁下地を構築し、ビス、ステープル、接着剤等の固定手段を用いて建築内装面材を鋼製スタッドに固定した構成を有する壁構造体であり、軽量間仕切壁、軽鉄間仕切壁等の名称で広く知られている。この種の間仕切壁の工法は、スタッド配列の形式又は様式に基づいて概ね以下の如く分類することができる。
(1)シングルランナ・共通間柱(シングルスタッド)工法
(2)ダブルランナ・並列間柱(ダブルスタッド)工法
(3)シングルランナ・千鳥間柱(千鳥スタッド)工法
なお、本明細書において、「軽量形鋼」の用語は、JIS A 6517 (「建築用鋼製下地材(壁・天井) Steel furrings for wall and ceiling in buildings」)に記載された鋼製スタッド及び鋼製ランナを包含する。
【0005】
図20及び
図21は、これら3種の工法に係る間仕切壁構造の構成を概略的に示す水平断面図である。
図20及び
図21の各図において、室、居室、廊下等の建築空間R1、R2を区画する間仕切壁100は、主として、床部分に配設された下部ランナ2、天井部分に配設された上部ランナ(図示せず)、鋼製間柱を構成する鋼製スタッド4(以下、「スタッド4」という。)、スタッド4に支持された下張り面材5及び上張り面材6より構成される。スタッド4は、所定間隔L1を隔てて配列され、間隔L1は、一般に、約150、約230、約300、約450mm又は約600mmに設定される。各図において、間仕切壁100の壁端部100aは、壁Wの壁面Wa(又は柱Cの垂直面Ca)に突付けられており、間仕切壁100は、全体的に壁芯XーXを中心に延在する。なお、例えば、鋼製間柱を木造間柱と読み替え、ランナを木造下枠又は横架材と読み替えることにより、
図20及び
図21に示す各工法の分類を木構造の間仕切壁の工法の分類として読み替えることができる。従って、本明細書においては、広義の「間柱」の用語は、木造間柱等を含み、広義の「ランナ」の用語は、木造下枠又は木造横架材等を包含するものとする。
【0006】
図20(A)には、シングルランナ・共通間柱工法の間仕切壁構造が示されている。間仕切壁1は、壁芯XーXを中心にランナ2、スタッド4等を整列配置し、面材5、6を各スタッド4の両側に一体的に留付けた構成を有する。所望により、グラスウール等の断熱・吸音材(図示せず)が間仕切壁1の中空域αに挿入又は充填される。この工法の間仕切壁構造は、最も汎用的且つ典型的な間仕切壁の構造であり、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0007】
図20(A)に示すシングルランナ・共通間柱工法の間仕切壁構造では、両側の面材5、6が、共通のスタッド4に留付けられるので、面材5、6及びスタッド4からなる固体伝播音の伝搬経路が形成される。このため、間仕切壁1の片側の建築空間(室、廊下等)の騒音がこの伝播経路を介して間仕切壁1の反対側の建築空間に伝搬し易く、従って、間仕切壁1の遮音性能を所望の如く向上し難い事情がある。
【0008】
図20(B)には、
図20(A)に示す間仕切壁構造の変形例として、敷目板4aをスタッド4及び下張り面材5の間に千鳥配列に介挿するとともに、スタッド4及び下張り面材5の間に交互に間隙4bを形成した構成を有する間仕切壁構造が示されている(以下、この工法を「シングルランナ・敷目板千鳥配列工法」という。)。所望により、グラスウール等の断熱・吸音材(図示せず)が間仕切壁1の中空域αに挿入又は充填される。この構造の間仕切壁は、例えば、特許文献1(特開2010ー242298号公報)に記載されている。このように敷目板4aを緩衝材として介挿し且つ間隙4bを交互に配設した間仕切壁構造は、固体伝播音の伝搬経路を遮断し得る点で有利であるものの、特定の材質及び遮音特性を有する敷目板4aの付加的な施工を要する。
【0009】
図21(A)には、ダブルランナ・並列間柱工法の間仕切壁構造が示されている。この間仕切壁構造は、上下の鋼製ランナ(下部ランナ2のみ示す)及びスタッド4を二列に並列配置した概ね二重壁の構成を有する。中心軸線X1ーX1に合芯した第1列のスタッド4は、建築空間R1側の面材5、6のみを支持し、中心軸線X2ーX2に合芯した第2列のスタッド4は、建築空間R2側の面材5、6のみを支持する。所望により、グラスウール等の断熱・吸音材(図示せず)が間仕切壁1の中空域αに挿入又は充填される。この構造の間仕切壁は、例えば、特許文献2(特開2005ー133414号公報)に記載されている。
【0010】
ダブルランナ・並列間柱工法の間仕切壁100では、各列のスタッド4及びランナ2等が実質的に完全に独立し、各建築空間R1、R2の面材5、6は、各列のスタッド4に夫々留付けられる。また、中空域αの空気層は、その厚さ寸法が、ランナ2の幅ω1の二倍に相当し、かなり大きな空気層が中空域αに形成されるので、グラスウールやロックウール等の断熱・吸音材を中空域αに適切に挿入又は充填することができ、これは、壁構造体の遮音性を向上する上で極めて有利である。加えて、ダブルランナ・並列間柱工法の間仕切壁構造によれば、固体伝播音の伝搬経路を確実に遮断し得るので、遮音欠損等を防止し、良好な遮音性能を発揮する壁構造体を設計し得ると考えられる。しかしながら、この構造の間仕切壁100においては、シングルランナ・共通間柱工法の間仕切壁構造(
図20(A))に比べ、壁厚ω2が倍増するので、有効利用可能な居室面積又は居室空間等が比較的大きく減少又は縮小するという建築設計上又は建築経済上の問題が生じる。
【0011】
図21(B)には、シングルランナ・千鳥間柱工法の間仕切壁構造が示されている。この間仕切壁構造では、スタッド4は、スペーサ9の配設により、壁芯XーXに対して片側に交互に偏心した千鳥配列に配置される。各スタッド4は、片側の建築空間の面材5、6のみを支持し、反対側の建築空間の面材5、6から離間する。この構造の間仕切壁は、例えば、特許文献
3~5(特許第4971876号公報、特許第5663119号公報、特許第5296600号公報)に記載されている。
【0012】
シングルランナ・千鳥間柱工法の間仕切壁構造によれば、シングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造(
図20(B))と同じく、固体伝播音の伝搬経路が形成されず、従って、ダブルランナ・並列間柱工法の間仕切壁構造(
図21(A))と対比すれば、その遮音性能は若干劣るものの、比較的良好な遮音性能を発揮する遮音壁を設計し得る。しかも、シングルランナ・千鳥間柱工法では、敷目板4a(
図20(B))の介挿に起因した構造上、詳細設計上又は施工上の特殊な考慮又は配慮等は必要とされず、加えて、スタッド4が千鳥配列されるにすぎないので、シングルランナ・共通間柱工法の間仕切壁構造(
図20(A))に比べて僅かに壁厚ω2を増大すれば良く、従って、有効利用可能な居室面積又は居室空間は、シングルランナ・共通間柱工法の間仕切壁構造よりも僅かに減少又は縮小するにすぎない。
【0013】
例えば、各工法の間仕切壁構造において、スタッド4として、幅ω1=65mmのC形鋼製スタッドを使用し、面材5、6として、厚さ21mm及び9.5mmの石膏ボードを夫々使用すると、各間仕切壁1の壁厚ω2は、シングルランナ・共通間柱工法(
図20(A))では、壁厚ω2=約125mmであり、ダブルランナ・並列間柱工法(
図21(A))では、壁厚ω2=約200mmであり、シングルランナ・千鳥間柱工法(
図21(B))では、壁厚ω2=約135mm(ランナ2の幅ω3=75mmとした場合)である。
【0014】
但し、いずれの工法においても、間仕切壁100の壁端部100aは、面材5、6の張り仕舞い部又は見切り部を構成するので、面材5、6の支持の安定性や、施工の容易性等が考慮され、ランナ2と実質的に同一又は同等の幅を有する幅ω3のC形鋼製スタッド等が、鋼製スタッド7として端部100aに立設される。この種の鋼製スタッド7は、一般に、縦ランナ、端部ランナ、端部間柱等の名称で呼ばれており、以下、この建築要素を「端柱」と称する。
【0015】
本出願人は、シングルランナ・千鳥間柱工法の間仕切壁構造(
図21(B))を有し、極めて遮音性が高い高性能遮音壁(型式Aー2000・WI)等を開発し、既に実用化している。この壁体は、壁厚約135mm程度の乾式間仕切壁であるにもかかわらず、厚さ260mmのコンクリート壁の遮音性能に匹敵する遮音性(遮音性能:TL
D=56)を発揮することが知られている。この高性能遮音壁(型式Aー2000・WI)は、高い遮音性能を要する集合住宅やホテル等の界壁、殊に高層又は超高層の集合住宅又はホテル等の界壁として好ましく施工されており、その高い遮音性能故に、間仕切壁の軽量性による建築構造負荷の軽減や、工期の短縮等の効果と相俟って、極めて顕著な優位性を有する。なお、TLD値(D-Number of Sound Transmission Loss,TL
D)は、JIS A 1416(ISO140-3)に規定された測定方法に従って測定された音響透過損失の測定結果を間仕切壁の遮音効果又は遮音性能として示す数値であり、より詳細には、日本建築学会が規定する遮音基準曲線に基づいて測定結果を評価することにより得られる間仕切壁等の遮音効果又は遮音性能の指標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2010ー242298号公報
【文献】特開2005ー133414号公報
【文献】特許第4971876号公報
【文献】特許第5663119号公報
【文献】特許第5296600号公報
【非特許文献】
【0017】
【文献】日本建築学会・建築工事標準仕様書・同解説 JASS26 内装工事
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述のとおり、ダブルランナ・並列間柱工法の間仕切壁構造は、優れた遮音性能を発揮するが、この間仕切壁構造の遮音壁を採用すると、壁厚がかなり増大するという問題が生じる。他方、シングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造では、壁厚が僅かに増大するにすぎず、壁厚増大の問題を実質的に回避し得る。しかし、シングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造は、遮音性能の点でダブルランナ・並列間柱工法の間仕切壁構造に若干劣るので、この点において、更に改良すべき余地が残されていた。
【0019】
本発明者等は、シングルランナ・千鳥間柱工法の間仕切壁構造において、中空部の断熱・吸音材(グラスウール等)の厚さや密度を増大し、或いは、制振性能を発揮する制振接着剤等を面材の接着剤として使用するといった改良策又は対策を施した多数の遮音壁を試作し、様々な条件で遮音性能試験を実施したが、中高音域(500~2000Hz)の周波数域において、音響透過損失を効果的に増大し難く、従って、このような改良策又は対策では遮音性能を所望の如く向上し得なかった。また、この遮音性能試験では、特定の周波数における顕著な遮音欠損等の存在も認められず、このため、更なる遮音性能の向上は、事実上、極めて困難であると考えられてきた。
【0020】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造において、中高音域の騒音に対する音響透過損失を増大し、間仕切壁の遮音性能を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者等は、シングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁の遮音性能を向上すべく、壁の中空部に挿入されるグラスウール等の断熱・吸音材の厚さ又は密度が相違する複数の間仕切壁、下張り面材と上張り面材とを接着するための接着剤として制振接着剤等の特殊接着剤を使用した間仕切壁、或いは、壁端部の構造が相違する複数の間仕切壁等の試験体を製作し、条件が相違する多数の遮音性能試験を実施した。この結果、室内に露出した壁端部の構造が間仕切壁の遮音性に大きく影響する現象を知見し、このような知見に基づき鋭意研究を重ねた結果、壁端部に配置された端柱を複数の部材に分割し、各部材を相互離間させることにより、中高音域の騒音に対する音響透過損失を増大して間仕切壁の遮音性能を向上し得ることを見出し、本発明に係る以下の構成の間仕切壁構造及びその施工方法を提案するに至ったものである。
【0022】
即ち、本発明は、壁端部を他の建築構造体に突付けられ、該建築構造体に連接する壁端部が建築空間に少なくとも部分的に露出したシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造において、
前記壁端部に配置され、第1及び第2の端柱部材より構成される端柱と、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯とを有し、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材が、第1端柱部材に固定され、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材が、第2端柱部材に固定されており、
第1及び第2端柱部材は、壁芯方向に相対的にずれた位置関係をなして前記壁端部に配置され、前記間隙又は絶縁帯は、第1及び第2端柱部材の間において壁厚方向に延在し、第1端柱部材は、前記他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接し又は接触し、第2端柱部材は、前記壁端部の中空域に配置され、
前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、前記仕上げ面又は下地面とは離間し、目地材が前記端縁と前記仕上げ面又は下地面との間に充填又は挿入され、これにより、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、
第2端柱部材から壁端側に延出する前記面材の突出寸法(L5,L6)は、80mm以下の寸法に設定されたことを特徴とする間仕切壁構造(請求項1)を提供する。
本発明は又、壁端部を他の建築構造体に突付けられ、該建築構造体に連接する壁端部が建築空間に少なくとも部分的に露出したシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造において、
前記壁端部に配置され、第1及び第2の端柱部材より構成される端柱と、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯とを有し、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材が、第1端柱部材に固定され、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材が、第2端柱部材に固定されており、
第1及び第2端柱部材は、前記壁端部に並列配置され、前記間隙又は絶縁帯は、第1及び第2端柱部材の間において壁芯方向に延在し、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、第1及び第2端柱部材は、前記他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接し又は接触することを特徴とする間仕切壁構造(請求項3)を提供する。
【0023】
他の観点より、本発明は、壁端部を他の建築構造体に突付け、該建築構造体に連接する壁端部を建築空間に少なくとも部分的に露出せしめたシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁の施工方法において、
前記壁端部に配置される端柱を第1及び第2の端柱部材により構成し、
第1及び第2端柱部材を、壁芯方向に相対的にずれた位置関係をなして前記壁端部に配置し、該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯を前記端柱部材の間に形成して、該間隙又は絶縁帯を第1及び第2端柱部材の間において壁厚方向に延在せしめ、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材を第1端柱部材に固定し、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材を第2端柱部材に固定するとともに、前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面とを離間させて、該仕上げ面又は下地面と前記端縁との間に目地材を充填又は挿入する工程を有し、
第1端柱部材は、前記仕上げ面又は下地面に近接し又は接触し、第2端柱部材は、前記壁端部の中空域に配置され、前記端縁と前記仕上げ面又は下地面とは、前記目地材を介して連接し、これにより、前記壁端部は、他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、
第2端柱部材から壁端側に延出する前記面材の突出寸法(L5,L6)は、80mm以下の寸法に設定されることを特徴とする間仕切壁の施工方法(請求項8)を提供する。
本発明は又、壁端部を他の建築構造体に突付け、該建築構造体に連接する壁端部を建築空間に少なくとも部分的に露出せしめたシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁の施工方法において、
前記壁端部に配置される端柱を第1及び第2の端柱部材により構成し、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯を前記端柱部材の間に形成し、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材を第1端柱部材に固定し、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材を第2端柱部材に固定し、
第1及び第2端柱部材は、前記壁端部に並列配置され、前記間隙又は絶縁帯は、第1及び第2端柱部材の間において壁芯方向に延在し、第1及び第2端柱部材は、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接し又は接触することを特徴とする施工方法(請求項10)を提供する。
【0024】
本発明の上記構成によれば、壁端部に配置された端柱は、第1及び第2端柱部材に分割される。第1及び第2端柱部材は互いに離間し、固体伝播音の伝播を遮断し又はその伝搬経路を絶縁する間隙又は絶縁帯が第1及び第2端柱部材の間に形成される。間隙は、間仕切壁の中空域の空気層と連続する空気層であり、絶縁帯は、間隙に挿入又は充填されたロックウール又はロックウールフェルト等の繊維質材料、或いは、軟質樹脂、ゴム、エラストマー又は多孔質発泡材料等の振動絶縁材料からなる。第1端柱部材の側の建築空間において発生した騒音は、固体振動として第1端柱部材に伝播するが、間隙又は絶縁帯が第1及び第2端柱部材の間に形成されているので、第1端柱部材の固体振動が第2端柱部材に伝播せず、従って、第2端柱部材の側の建築空間における固体伝播音の放出を防止することができる。
【0025】
遮音性能の性能値(TLD値)=57の高性能遮音壁を試験体として使用した本発明者等の遮音性能試験によれば、断熱・吸音材の厚さ又は密度の増大や、制振接着剤の使用等によっても向上し得なかった中高音域(500~2000Hz)の遮音性能が、本発明の構成を採用することにより、TLD=58~61に向上することが判明した。従って、本発明によれば、更なる遮音性能の向上が極めて困難であると考えられてきたTLD=57の高性能遮音壁に関し、その遮音性能を更に向上することができる。
【0026】
他の観点より、本発明は、上記構成の間仕切壁構造を有し、遮音性能の性能値であるTLD値を50以上の値に増大したことを特徴とする間仕切壁を提供する。また、本発明は、上記構成の施工方法により、遮音性能の性能値であるTLD値を50以上の値に増大した高性能遮音壁を構築することを特徴とする間仕切壁の施工方法を提供する。好ましくは、本発明に係る間仕切壁は、TLD値=58以上の遮音性を発揮するように構築され又は施工される。
【0027】
更に他の観点より、本発明は、間柱を構成する鋼製スタッドを上下の鋼製ランナによって支持する構造の鋼製壁下地を有し、遮音性能の性能値であるTLD値が57以下の値を示し、壁端部を他の建築構造体に突付け、該建築構造体に連接する壁端部を建築空間に少なくとも部分的に露出せしめたシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁に適用され、そのTLD値を58~65の範囲内の値に向上させる間仕切壁の遮音方法であって、
前記壁端部に配置される端柱を、鋼製スタッドからなる第1及び第2の端柱部材より構成し、
該端柱部材を互いに離間させ、固体振動の伝播を遮断し又は固体振動の伝播経路を絶縁する間隙又は絶縁帯を前記端柱部材の間に形成し、
前記間隙又は絶縁帯を第1及び第2端柱部材の間において壁厚方向又は壁芯方向に延在させて、第1及び第2端柱部材の双方又は一方を、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に近接させ又は接触させ、
間仕切壁の片側の建築空間を画成する建築内装面材を第1端柱部材に固定し、間仕切壁の反対側の建築空間を画成する建築内装面材を第2端柱部材に固定するとともに、前記壁端部において間仕切壁の各側の壁面を構成する前記面材の端縁と、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面とを離間し、該仕上げ面又は下地面と前記端縁との間に目地材を充填又は挿入し、これにより、前記壁端部を他の建築構造体の鉛直面に対して突付け形態に連接し、
間仕切壁の各側の前記面材を下張り面材及び上張り面材より構成し、該下張り面材として、厚さ20~25mmの石膏ボードを使用し、前記上張り面材として、厚さ8~13mmの石膏ボードを使用し、前記下張り面材を前記端柱部材に固定するとともに、前記上張り面材を該下張り面材に接着することを特徴とする間仕切壁の遮音方法(請求項17)を提供する。
【0028】
本出願において、「壁端部」は、「壁端部」が連接する他の建築構造体から200mm以内、好適には、150mm以内の範囲の壁部分を意味し、「他の建築構造体」は、本発明の間仕切壁が突付けられる他の壁又は柱を意味するものとする。
【0029】
好ましくは、上記建築内装面材の端縁は、他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面に対し、気密性を有する目地構造を介して連接する。なお、本出願において、「近接」は、15mm以下、好ましくは、10mm以下の離間状態を意味するものとする。
【0030】
また、本出願において、「他の建築構造体の内装仕上げ面又は内装仕上げ下地面」は、クロス、塗装等の表層仕上げを施した他の構造体の面のみならず、クロス、塗装等の表層仕上げの未施工面又はその下地面を含む概念である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、間仕切壁は、鋼製間柱を使用した中空構造の乾式間仕切壁であり、鋼製スタッド、鋼製ランナ、振止め、スペーサ等を含む建築用鋼製下地材(JIS A 6517規格品、或いは、その同等品、準拠品、互換品等)により構成される鋼製壁下地を構築し、ビス、ステープル、接着剤等の固定手段を用いて石膏ボード等の建築内装面材を鋼製スタッドに固定した構成を有する壁構造体である。好ましくは、第1及び第2端柱部材は、間仕切壁の間柱と実質的に同一又は同等の鋼製部材であり、例えば、間柱が、Cー65mm×45mm×0.8mmの鋼製スタッドである場合、第1及び第2端柱部材も又、Cー65mm×45mm×0.8mmの鋼製スタッドである。このような構成によれば、間仕切壁の施工において、実質的に単一品種の鋼製スタッドのみを予め用意すれば良く、これにより、建設資材の材種の減少、施工効率の改善又は向上を図ることができる。
【0032】
本発明の好適な実施形態において、上記建築内装面材は、下張り面材及び上張り面材からなり、下張り面材は、厚さ20~25mmの石膏ボード(例えば、厚さ21mmの強化石膏ボード)からなり、上張り面材は、厚さ8~13mmの石膏ボード(例えば、厚さ9.5mmの硬質石膏ボード)からなり、下張り面材及び上張り面材は、酢酸ビニル樹脂系接着剤(ステープル併用)によって接着される。なお、第1及び第2端柱部材を壁芯方向に相対的にずれた位置に配置した本発明の上記実施形態においては、間仕切壁の中空域に配置した第2端柱部材から壁端側に延出する下張り面材及び上張り面材の突出寸法(L5、L6)は、好ましくは、75mm以下に制限することが望ましく、このため、上記間隙(γ)(又は絶縁帯)の寸法(L2)は、55mm以下、好ましくは、40mm以下、更に好ましくは、30mm以下に制限することが望ましい。所望により、緩衝材が第1端柱部材の外側面に一体的に取付けられる。緩衝材の外面は、下張り面材の裏面に接触し、或いは、下張り面材の裏面から僅かに離間する。緩衝材は、下張り面材が中空域の側に変形したとき、下張り面材の裏当て材として機能する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、中高音域の周波数帯域における壁体の遮音性能を向上し得るシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造及びその施工方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、TLD値=58以上の遮音性能を保有するシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の遮音壁を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る間仕切壁の構成を概略的に示す水平断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の他の好適な実施形態に係る間仕切壁の構成を概略的に示す水平断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す間仕切壁の具体的な構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す間仕切壁の具体的な構造を示す鉛直断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す間仕切壁の具体的な構造を示す水平断面図である。
【
図7】
図7は、従来のシングルランナ・千鳥間柱工法の軽量間仕切壁に関し、その具体的な構造を比較例として示す水平断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1、2及び比較例1~4の試験体を遮音性能試験用の構造躯体内に建込んだ状態を概略的に示す正面図である。
【
図9】
図9は、比較例1及び比較例2の試験体を使用した遮音性能試験の試験結果を示す性能線図である。
【
図10】
図10は、比較例1及び比較例3の試験体を使用した遮音性能試験の試験結果を示す性能線図である。
【
図11】
図11は、比較例2及び比較例4の試験体を使用した遮音性能試験の試験結果を示す性能線図である。
【
図12】
図12は、実施例1及び比較例1の試験体を使用した遮音性能試験の試験結果を示す性能線図である。
【
図13】
図13は、実施例2及び比較例2の試験体を使用した遮音性能試験の試験結果を示す性能線図である。
【
図14】
図14は、上記実施形態に係る間仕切壁の第1変形例を示す壁端部の水平断面図である。
【
図15】
図15は、上記実施形態に係る間仕切壁の第2変形例を示す壁端部の水平断面図である。
【
図16】
図16は、上記実施形態に係る間仕切壁の第3変形例を示す壁端部の水平断面図である。
【
図17】
図17は、上記実施形態に係る間仕切壁の第4変形例を示す壁端部の水平断面図である。
【
図18】
図18は、上記実施形態に係る間仕切壁の第5変形例を示す壁端部の水平断面図である。
【
図19】
図19は、上記実施形態に係る間仕切壁の第6変形例を示す壁端部の水平断面図である。
【
図20】
図20は、シングルランナ・共通間柱工法及びシングルランナ・敷目板千鳥配列工法に係る従来の間仕切壁構造の構成を概略的に示す水平断面図である。
【
図21】
図21は、ダブルランナ・並列間柱工法及びシングルランナ・千鳥間柱工法に係る従来の間仕切壁構造の構成を概略的に示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る間仕切壁構造について詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る間仕切壁の構成を概略的に示す水平断面図である。
【0038】
図1(A)及び
図1(B)に示す間仕切壁1は、壁端部1aを壁Wの壁面Wa(又は柱Cの垂直面Ca)に突付けられ、壁芯XーXを中心に延在するシングルランナ・千鳥間柱工法の軽量間仕切壁である。間仕切壁1の両側には、居室等の建築空間R1、R2が形成される。間柱を構成するスタッド4は、スペーサ9の交互の配設により、壁芯XーXに対して片側に交互に偏心した千鳥配列に配置される。スペーサ9は、ランナスペーサ等の名称で知られた既知の金属製品である。例えば、スタッド4として、幅ω1=65mmのC形鋼製スタッドが使用され、スペーサ9として、幅ω4=10mmの既製のランナスペーサが使用され、下張り面材5及び上張り面材6として、厚さ21mm及び9.5mmの石膏ボードが夫々使用され、下部ランナ2及び上部ランナ(図示せず)として幅ω3=75mmの鋼製ランナが使用される。間仕切壁1の壁厚ω2は、約135mmに設定される。なお、所望により、スペーサ9として、石膏ボード製スペーサや、木製又は樹脂製スペーサ等の任意のスペーサを使用し得る。
【0039】
図1(A)に示す間仕切壁1の壁端部1aには、一対の端柱部材11、12が壁芯XーXに対して左右対称に配置される。端柱部材11、12として、角形断面の鋼製スタッド、或いは、C形鋼製スタッド等の任意断面の鋼製スタッドを使用し得る。壁芯XーXと直交する方向(以下、「壁厚方向」という。)に離間した端柱部材11、12の間には、約10mm程度の僅かな間隙βが形成される。間隙βは、壁芯XーX方向(以下、「壁芯方向」という。)に延在するとともに、端柱部材11、12の全高に亘って延在する。端柱部材11、12及び間隙βは、複合的な端柱10を構成する。端柱10は、一般に壁端部1aに配設される端部間柱、縦ランナ又は端部ランナ等に相当する。本
出願において、「端柱」は、間仕切壁を構成する柱列の終端部に配置され、連接
する他の建築構造体
(即ち、他の壁又は柱)に近接又は接触して配置される柱、支柱又は柱状部材を意味する。
【0040】
他方、
図1(B)に示す間仕切壁1では、壁端部1aの端柱部材13、14は、壁厚方向において互いにずれた位置に配置されるとともに、壁芯方向において互いにずれた位置に配置される。端柱部材13、14は、幅約10mm程度の僅かな間隔を隔てて壁芯方向に離間する。端柱部材13、14の間には、壁厚方向に延在し且つ端柱部材13、14の全高に亘って延在する間隙γが形成される。端柱部材13、14として、角形断面の鋼製スタッド、或いは、C形鋼製スタッド等の任意断面の鋼製スタッドを使用し得る。
【0041】
図1(A)及び
図1(B)に示す各間仕切壁1において、壁芯XーXに対して建築空間R1の側に偏心して配置された端柱部材12、14には、建築空間R1の壁面を構成する面材5、6が固定され、壁芯XーXに対して建築空間R2の側に偏心して配置された端柱部材11、13には、建築空間R2の壁面を構成する面材5、6が固定される。建築空間R1に発生した騒音Si(実線の矢印で示す)は、固体伝播音として端柱部材12、14に伝播するが、固体振動の伝播は、端柱部材11、12の間の間隙β、或いは、端柱部材13、14の間の間隙γによって遮断又は絶縁される。従って、上下のランナ等を介して伝播した僅かな固体振動が、固体伝播音So(破線の矢印で示す)として建築空間R2に伝播するにすぎず、壁端部1aの構造に起因した遮音性低下の現象を回避することができる。なお、このような壁端部1aの構造に起因した遮音性低下の現象については後述する。
【0042】
図2は、本発明の他の好適な実施形態に係る間仕切壁の構成を概略的に示す水平断面図である。
【0043】
図2に示す間仕切壁1は、
図1(B)に示す間仕切壁1と同様、壁厚方向且つ壁芯方向に互いにずれた位置に配置された端柱部材15、16を有する。端柱部材15、16は、スタッド4と同一の鋼製スタッドからなり、スタッド4と同じく、スペーサ19を使用して下部ランナ2及び上部ランナ(図示せず)の間に建込まれ、上下のランナによって支持される。スペーサ19は、スペーサ9と同じ既製のランナスペーサである。
【0044】
端柱部材15、16は、壁芯方向に約10mm程度の僅かな間隔を隔てて離間し、端柱部材15、16の間には、壁厚方向に延在し且つ端柱部材15、16の全高に亘って延在する間隙γが形成される。建築空間R1に発生した騒音Siは、固体伝播音として端柱部材16に伝播するが、固体振動の伝播は、端柱部材15、16の間の間隙γによって遮断又は絶縁される。従って、上下のランナ等を介して伝播した固体振動が、固体伝播音Soとして建築空間R2に伝播するにすぎず、壁端部1aの構造に起因した遮音性低下の現象を回避することができる。なお、壁端部1aの構造に起因した遮音性低下の現象については後述する。
【0045】
図3~
図5は、
図2に示す間仕切壁1の具体的な構造を示す斜視図、鉛直断面図及び水平断面図である。
【0046】
図3に示す如く、間仕切壁1は、鉄筋コンクリート構造の建築物の屋内空間に構築される乾式工法の軽量間仕切壁(鋼製壁下地(JASS26)の間仕切壁)である。建築物の構造躯体は、鉄筋コンクリート構造の床構造体F1、F2、柱C、梁B及び壁Wより構成される。間仕切壁1の下端部は床構造体F1に支持又は支承される。間仕切壁1の上端部は、梁B又は床構造体F2に連接する。間仕切壁1の壁芯方向の終端部、即ち、壁端部1aは、柱C又は壁体Wに対して突付け形態に連接する。なお、壁端部1aは、壁面Wa(又垂直面Ca)から距離L3(
図5)の範囲内の壁部分を意味し、
図3~
図5に示す間仕切壁1では、距離L3は、200mm以下、例えば、約150mmに設定される。
【0047】
梁B、柱C及び壁体Wの室内側面は、セメントモルタル等の左官材料Bc、Cc(
図5)、Wc(
図5)によって左官仕上げされており、梁Bの下端面Ba、梁Bの側面Bd、柱Cの垂直面Ca及び壁体Wの壁面Waは、左官仕上面からなる塗装下地又はクロス下地等の内装下地面からなる。なお、建築構造体の材種、左官仕上げの有無、内装仕上げ材の有無又は種類等については、建築設計上、任意の設計事項であることはいうまでもなく、例えば、下端面Ba、側面Bd、垂直面Ca、壁面Waは、鉄骨面、鉄筋コンクリート躯体面、PC版面、材木面等であっても良い。
【0048】
本例においては、間仕切壁1の下端部は、間仕切壁1を構築する階の床構造体F1に支持され、間仕切壁1の上端部は、上階の梁Bに固定され、間仕切壁1の壁端部1aは、柱Cに連接する。間仕切壁1の上端部は、上階の床構造体F2を構成するコンクリート床スラブ等の下面に固定しても良く、また、間仕切壁1の壁端部1aは、壁体Wに連接しても良い。
【0049】
四周目地を構成する四周目地用充填材20(以下、「目地材20」という。)が、間仕切壁1の上端部、下端部及び終端部の目地部(連接部)に連続的に充填又は挿入される。目地材20は、下張りシール材21、22及び上張りシール材23(
図4、
図5)からなる。本実施形態においては、下張りシール材21として無機質シーリング材、例えば、ロックウールフェルト(例えば、商品名「タイガーロックフェルト(登録商標)」(吉野石膏株式会社製品))が使用され、下張りシール材22及び上張りシール材23として、例えば、ウレタン樹脂系シーリング材(例えば、商品名「タイガーUタイト」(吉野石膏株式会社製品))が使用される。
【0050】
なお、四周目地の各種施工形態として、例えば、以下の四周処理材又は四周処理方法を例示し得る。
(1)四周処理方法1
下張り目地処理:ロックウールフェルト(商品名「タイガーロックフェルト」)、無機質系シーリング材(商品名「タイガージプタイト」)、或いは、ウレタン系シーリング材(商品名「タイガーUタイト」)
上張り目地処理:無機質系シーリング材(商品名「タイガージプタイト」)又はウレタン系シーリング材(商品名「タイガーUタイト」)
(2)四周処理方法2
下張り目地処理:ロックウールフェルト(商品名「タイガーロックフェルト」)及びウレタン系シーリング材(商品名「タイガーUタイト」)
上張り目地処理:無機質系シーリング材(商品名「タイガージプタイト」)又はウレタン系シーリング材(商品名「タイガーUタイト」)
(3)四周処理方法3
下張り目地処理:突き付け(どん付け)
上張り目地処理:無機質系シーリング材(商品名「タイガージプタイト」)又はウレタン系シーリング材(商品名「タイガーUタイト」)
【0051】
図3~
図5に示すように、間仕切壁1の上張り面材6の表面は、塗装又はクロス貼り等の内装仕上工事により、内装仕上材料(塗膜又はクロス等)8によって被覆される。内装仕上材料8は、梁Bの下端面Ba、梁Bの側面Bd、柱Cの垂直面Ca及び壁体Wの壁面Waにも施工される。従って、内装仕上材料8は、上張り面材6、柱C、壁体W及び梁Bの表面全域に延在し且つ実質的に連続し、梁Bの下端面Ba、梁Bの側面Bd、柱Cの垂直面Ca及び壁体Wの壁面Waは、建築物の屋内側表面又は室内側表面を構成する。
【0052】
図4及び
図5に示す如く、間仕切壁1は、床スラブ等の床構造体F1上に固定された下部ランナ2と、梁Bの下面Baに固定された上部ランナ3と、上下のランナ2、3の間に垂直に建込まれた多数のスタッド4とから構成される。スタッド4は、軽量形鋼の鋼製スタッド(JIS A 6517規格品、同等品、準拠品、互換品等)からなり、壁芯に沿って千鳥配列に配置される。スタッド4の幅ω1は、ランナ2、3の幅ω3よりも小さく、幅ω4の寸法を有する金属製スペーサ9が、ランナ2、3の側壁とスタッド4の側面との間に介挿される。
【0053】
下張り面材5がスクリュービス(タッピングネジ)30によってスタッド4に固定され、上張り面材6がステープル及び接着剤(図示せず)によって下張り面材5の外側面に固定される。接着剤として、石膏ボード施工用の接着剤として一般に使用される酢酸ビニル樹脂系接着剤を好適に使用し得る。所望により、ステープル、接着剤及びスクリュービスを併用して上張り面材6を下張り面材5に固定し、或いは、スクリュービスのみによって上張り面材6を下張り面材5に固定することも可能である。壁体両側の下張り面材5の間には、実質的に密閉された隠蔽空間が中空域(中空部)αとして形成される。中空域には、断熱・吸音材40(破線で示す)が配設される。断熱・吸音材40は、
図5に示す如くスタッド4の間に充填又は挿入される。
【0054】
間仕切壁1を構成する部材として、例えば、以下の建築材料が使用される。
・下部ランナ2:軽量形鋼(鋼製ランナ)Cー75mm×40mm×0.8mm
・上部ランナ3:軽量形鋼(鋼製ランナ)Cー75mm×40mm×0.8mm
・スタッド4 :軽量形鋼(鋼製スタッド)Cー65mm×45mm×0.8mm
・下張り面材5:強化石膏ボード・厚さT1=21mm(吉野石膏株式会社製品「タイガーボード(登録商標)・タイプZ」)
・上張り面材6:硬質石膏ボード・厚さT2=9.5mm(吉野石膏株式会社製品「タイガースーパーハード(登録商標)」)
・断熱・吸音材40:グラスウール密度24kg/m3・厚さ50mm
【0055】
下張り面材5及び上張り面材6として、厚さ8~25mmの各種石膏ボードを好適に使用し得る。所望により、下部ランナ2及び上部ランナ3として、軽量形鋼(鋼製ランナ)Cー100mm×40mm×0.8mmを使用しても良い。また、スタッド4として、任意の断面、寸法及び厚さの金属製スタッドを使用することができ、例えば、幅45、50、65、75、90、100mm等の各種サイズのC形鋼製スタッドや、厚さ0.4、0.5、0.6(一般材)、0.8(JIS材)等の各種厚さの金属製スタッドを採用しても良い。更には、断熱・吸音材40の厚さを25、40、50、75、100mm等の寸法に設定し、或いは、断熱・吸音材40の密度を16、24、32、40、48kg/m3等の任意の密度に設定しても良い。
【0056】
図4に示す如く、間仕切壁1の上端部は、梁Bの下端面Baに突付けられる。間仕切壁1の上端部に配置された上部ランナ3は、アンカー等の固定具(図示せず)によって下端面Baに固定される。また、間仕切壁1の上端部を床構造体F2の下面に突付ける場合にも、実質的に同じ接合構造が採用される。
【0057】
図5に示す如く、間仕切壁1の壁端部1aは、建築物の構造躯体を構成する鉄筋コンクリート構造の柱Cの垂直面Caに突付けられる。なお、
図5に括弧内符号で記載したとおり、間仕切壁1の終端部を壁体Wの壁面Waに突付ける場合にも、実質的に同じ接合構造が採用される。
【0058】
図5に示す如く、一対の端柱部材15、16が、壁芯方向に相対的にずれた位置に配置される。端柱部材15、16は、複合的な端柱10を構成する。端柱部材15、16は、スタッド4と同じく、軽量形鋼(鋼製スタッド)Cー65mm×45mm×0.8mmからなり、
図4に示すように、スタッド4と同様、スペーサ19を使用して下部ランナ2及び上部ランナ3の間に建込まれ、上下ランナ2、3によって支持される。
図5に示す如く、端柱部材15、16は、壁芯方向に寸法L2を隔てて離間し、端柱部材15、16の間には、間隙γが形成される。
【0059】
建築空間R1側の下張り面材5は、スクリュービス30によって端柱部材16と、建築空間R1の側に偏心したスタッド4とに留付けられ、建築空間R2側の下張り面材5は、スクリュービス30によって端柱部材15と、建築空間R2の側に偏心したスタッド4とに留付けられる。上張り面材6は、前述のとおり、ステープル及び酢酸ビニル樹脂系接着剤(図示せず)によって各下張り面材5の外側面に固定される。端柱部材15は、建築空間R2側の面材5、6の縁部を比較的安定した状態で支持する。他方、建築空間R1側の面材5、6の縁部は、端柱部材16から垂直面Ca(又は壁面Wa)側に突出するので、面材5、6の支持の安定性、剛性、耐久性等を考慮し、端柱部材16から壁端側に延出する面材5、6の突出寸法L5、L6を100mm以下、好ましくは、75mm以下に制限することが望ましく、このため、間隙γの寸法L2を55mm以下、好ましくは、30mm以下に制限することが望ましい。
【0060】
図6は、間仕切壁1の他の使用形態を示す水平断面図である。
図6に示す間仕切壁1は、これと直交するシングルランナ・千鳥間柱工法の軽量間仕切壁1’に対して突付け形態に連接する。間仕切壁1’は、間仕切壁1と実質的に同じ構造を有し、間仕切壁1の壁端部1aは、目地材20を介して間仕切壁1’の上張り面材6に連接し、端柱部材15は、間仕切壁1’の上張り面材6に近接又は接触する。
【0061】
図7は、
図21(B)に示す従来のシングルランナ・千鳥間柱工法の軽量間仕切壁100に関し、その具体的な構造を比較例として示す水平断面図である。間仕切壁100の壁端部100aは、柱C又は壁体Wに対して突付け形態に連接する。間仕切壁100の壁端部100aは、面材5、6の張り仕舞い又は見切り位置でもあるので、支持又は構造の安定性や、施工の容易性等が考慮され、ランナ2と実質的に同一又は同等の幅を有する幅ω3のC形鋼製スタッド(Cー75mm×45mm×0.8mm)が、端柱7として立設される。
【0062】
本発明者等は、本実施形態に係る間仕切壁1(
図3~
図5)を実施例1及び2として試作するとともに、
図7に示す従来構造の間仕切壁100を比較例1~4として試作し、実施例1、2及び比較例1~4の試験体について遮音性能試験を実施した。但し、各実施例及び各比較例では、上下のランナ2、3の幅ω3は、100mmに設定された。
【0063】
実施例1、2及び比較例1~4の間仕切壁1、100において共通する構成は、次のとおりである。
・ランナ2、3:軽量形鋼(鋼製ランナ)Cー100mm×40mm×0.8mm
・スタッド4 :軽量形鋼(鋼製スタッド)Cー65mm×45mm×0.8mm
・下張り面材5:強化石膏ボード・厚さT1=21mm(吉野石膏株式会社製品「タイガーボード(登録商標)・タイプZ」)
・上張り面材6:硬質石膏ボード・厚さT2=9.5mm(吉野石膏株式会社製品「タイガースーパーハード(登録商標)」)
【0064】
比較例1~4において、端柱7は、軽量形鋼(鋼製スタッド)Cー100mm×45mm×0.8mmからなり、実施例1及び2において、端柱部材15、16は、スタッド4と同じく、軽量形鋼(鋼製スタッド)Cー65mm×45mm×0.8mmからなる。
【0065】
実施例1、2及び比較例1~4の間仕切壁1、100において、各部の寸法は、ω1=65mm、ω2=161mm、ω3=100mm、ω4=35mmに設定された。実施例1、2及び比較例1~4の間仕切壁1、100において、下張り面材5はスクリュービス(タッピングネジ)30によってスタッド4、端柱7及び端柱部材15、16に固定された。
【0066】
実施例1及び実施例2の間仕切壁1では、上張り面材6はステープル及び酢酸ビニル樹脂系接着剤によって下張り面材5の外側面に固定された。比較例1~3の間仕切壁100においても、上張り面材6はステープル及び酢酸ビニル樹脂系接着剤によって下張り面材5の外側面に固定された。
【0067】
実施例1及び実施例2の相違は、(1)実施例1において、密度24kg/m3・厚さ50mmのグラスウール1枚が断熱・吸音材40として中空域αに充填又は装填されたのに対し、(2)実施例2では、密度24kg/m3・厚さ50mmのグラスウール2枚が断熱・吸音材40として中空域αに充填又は装填された点のみである。従って、実施例1及び2の試験体の試験により、断熱・吸音材40の厚さの相違による遮音効果の相違を対比することができる。なお、実施例1及び2において、間隙γの寸法L2は、約10mmに設定された。
【0068】
比較例1~4の相違は、(1)比較例1において、密度24kg/m3・厚さ50mmのグラスウール1枚が断熱・吸音材40として中空域αに充填又は装填されたのに対し、(2)比較例2において、密度24kg/m3・厚さ50mmのグラスウール2枚が断熱・吸音材40として中空域αに充填又は装填され、(3)比較例3において、密度32kg/m3・厚さ50mmのグラスウール1枚と、密度32kg/m3・厚さ25mmのグラスウール1枚とが中空域αに充填又は装填され、(4)比較例4において、密度24kg/m3・厚さ50mmのグラスウール2枚が断熱・吸音材40として中空域αに充填又は装填されるとともに、上張り面材6がステープル及び制振接着剤によって下張り面材5の外側面に固定された点にある。即ち、比較例1~4の試験体の試験により、断熱・吸音材40の厚さ及び密度の相違に起因した遮音性能の相違と、面材5、6を接着する接着剤の相違に起因した遮音性能の相違を知り得る。なお、比較例4においては、制振接着剤として、高音域において比較的良好な制振効果を発揮する吉野石膏株式会社製品「サウンドカット」(商品名)が使用された。
【0069】
また、実施例1及び比較例1の相違、或いは、実施例2及び比較例2の相違は、端柱10として二部品構成(端柱部材15、16)を採用した本発明と、単一の鋼製スタッド7を端柱として採用した従来技術との相違であり、従って、実施例1及び比較例1の遮音性能の対比(
図12)、或いは、実施例2及び比較例2の遮音性能の対比(
図13)により、従来技術に対する本発明の効果が判明する。
【0070】
図8は、実施例1、2及び比較例1~4の試験体を遮音性能試験用の構造躯体内に建込んだ状態を示す正面図であり、
図9~
図13は、遮音性能試験の試験結果を示す性能線図である。なお、
図9~
図13には、遮音性能TL
D=40、45、50、55、60の各基準曲線が細い破線で示されている。この基準曲線は、日本建築学会が規定する遮音基準曲線である。TL
D値は、1dB単位で求められる性能値であるが、
図9~
図13には、図を簡略化すべく、5dBごとの基準曲線のみが示されており、従って、図示された基準曲線の間には、実際には、4本の基準曲線が1dB間隔に存在するものと理解すべきである。
図9~
図13には、遮音性能試験の試験結果を指示するプロット(点)が表示されている。プロットが下側に顕れることがない基準曲線であって、最も高いTL
D値の基準曲線が、間仕切壁の遮音性能を示す基準曲線として特定される。かくして特定された基準曲線のTL
D値が、間仕切壁のTL
D値である。
【0071】
遮音性能試験において、間仕切壁1の試験体は、
図8に示すように鉄筋コンクリート構造の躯体Eの方形開口部内に建込まれた。試験体の上端部又は下端部ηは、
図4に示すランナ2、3廻りの建築取合い構造と同等の構造で躯体Eに接合され、試験体の壁端部δは、端柱10又はスタッド7を用いた壁端部1a、100aの建築取合い構造と同等の構造で躯体Eに接合された。
【0072】
図9には、比較例1及び2の各間仕切壁100の遮音試験結果が示されている。断熱・吸音材40の厚さの相違に起因した遮音性能の相違が、
図9に示す遮音試験結果に示されている。
図9の試験結果より明らかなとおり、従来構造の間仕切壁100において断熱・吸音材40の厚さを2倍に増大した場合、125~500Hzの周波数帯域において遮音性能が向上するが、1000~2000Hzの周波数帯域においては、遮音性能が実質的に向上せず、従って、比較例1及び2の各間仕切壁100の遮音性能値は、いずれもTL
D=57である。
【0073】
図10には、比較例1及び3の各間仕切壁100の遮音試験結果が示されている。断熱・吸音材40の厚さ及び密度の相違に起因した遮音性能の相違が、
図10に示す遮音試験結果に顕れている。
図10の試験結果より明らかなとおり、従来構造の間仕切壁100において断熱・吸音材40の厚さを1.5倍、密度を約1.3倍に増大した場合、125~500Hzの周波数帯域において遮音性能が向上するが、1000~2000Hzの周波数帯域においては、実質的な遮音性能の向上は達成されず、従って、比較例1及び3の各間仕切壁100では、比較例1遮音性能値は、TL
D=57であるのに対し、比較例3の遮音性能値は、TL
D=56であるにすぎない。
【0074】
図11には、比較例2及び4の各間仕切壁100の遮音試験結果が示されている。比較例4は、面材5、6を接着する接着剤として上記制振接着剤を使用した構成のものであり、従って、
図11には、制振接着剤の使用に起因した遮音性能の変化が遮音試験結果に顕れている。
図11の試験結果より明らかなとおり、従来構造の間仕切壁100において制振接着剤で面材5、6を接着すると、4000Hzの周波数帯域において遮音性能が比較的顕著に向上するが、2000Hz以下の周波数帯域においては、遮音性能が実質的に向上せず、従って、比較例2及び4の各間仕切壁100の遮音性能値は、いずれもTL
D=57である。
【0075】
図9~
図11に示す試験結果より明らかなとおり、間仕切壁100の遮音性能の向上を企図して断熱・吸音材40の厚さ及び密度を増大し、或いは、面材5、6の接着剤として、制振効果を有する比較的特殊な接着剤を採用した場合においても、殊に500~2000Hzの周波数帯域において遮音性能が所望の如く向上せず、従って、遮音性能の性能値(TL
D値)としては、実質的に従来と同一又は同等の値が得られるにすぎなかった。
【0076】
図12には、比較例1及び実施例1の各間仕切壁100、1の遮音試験結果が示されている。前述のとおり、実施例1及び比較例1の相違は、端柱10として二部品構成(端柱部材15、16)を採用した本発明と、単一の鋼製スタッド7を端柱として採用した従来技術との相違であり、従って、従来技術に対する本発明の効果は、実施例1及び比較例1の遮音性能を対比することにより判明する。
【0077】
図12に示された遮音試験結果より明らかなとおり、実施例1の間仕切壁1では、250~4000Hzに亘る広範な周波数帯域において、その遮音性能が向上している。殊に、500~2000Hzの周波数帯域における遮音性能向上の効果が殆ど観られない
図9~
図11の試験結果と比較すると、
図12の試験結果では、実施例1の間仕切壁1に関し、500~2000Hzの周波数帯域における遮音性能向上の効果が顕著に顕れている。間仕切壁1(実施例1)の遮音性能は、TL
D=58であり、間仕切壁100(比較例1)の遮音性能(TL
D=57)に比べ、向上している。
【0078】
図13には、比較例2及び実施例2の各間仕切壁100、1の遮音試験結果が示されている。前述のとおり、実施例
2及び比較例
2の相違も又、端柱10として二部品構成(端柱部材15、16)を採用した本発明と、単一の鋼製スタッド7を端柱として採用した従来技術との相違であり、従って、実施例2及び比較例2の遮音性能の対比によっても、従来技術に対する本発明の効果が判明する。
【0079】
図13に示された遮音試験結果より明らかなとおり、実施例2の間仕切壁1では、250~4000Hzに亘る広範な周波数帯域において、その遮音性能が向上している。殊に、
図12に示す試験結果と同様、
図13の試験結果では、実施例2の間仕切壁1に関し、500~2000Hzの周波数帯域における遮音性能向上の効果が顕著に顕れており、間仕切壁1(実施例2)の遮音性能は、TL
D=61であり、間仕切壁100(比較例2)の遮音性能(TL
D=57)に比べ、著しく向上している。
【0080】
従って、
図9~
図13の試験結果を参照する限り、従来技術に係る比較例1~4の間仕切壁100では、単一の鋼製スタッド7を端柱として配設した壁端部100aの構造がその遮音性の向上を妨げる原因となっていたことは明白である。これに対し、本発明は、二部品構成(端柱部材15、16)の端柱10を配設した壁端部
1aの構成を採用することにより、間仕切壁1全体の遮音性を向上し得たものである。
【0081】
以上説明したとおり、間仕切壁100の中空域αに挿入されるグラスウール等の断熱・吸音材40の厚さ又は密度を変化させ、面材5、6の接着剤として制振接着剤等の特殊接着剤を使用したとしても、遮音性能の性能値(TLD値)は実質的に同一の値、或いは、僅かに増大した数値であるにすぎず、遮音性能を容易に向上し得なかったのに対し、本発明に従って間仕切壁1の端柱10を複数の端柱部材15、16に分割し、端柱部材15、16を間隙γで相互離間させることより、殊に中高音域(500~2000Hz周波数域)の遮音性能を実質的に向上し、遮音性能の性能値(TLD値)を高めることが可能である。
【0082】
また、従来の間仕切壁100では、スタッド4としてCー65mm×45mm×0.8mmの鋼製スタッドを用意し、端柱7としてCー100mm×45mm×0.8mmの鋼製スタッドを用意し、従って、2種類の鋼製スタッドを用意する必要があったのに対し、間仕切壁1の端柱部材15、16は、スタッド4と同じ軽量形鋼(Cー65mm×45mm×0.8mm)からなり、スペーサ19も又、スペーサ9と同一の既製品であり、従って、間仕切壁1の施工においては、1種類の鋼製スタッドのみを用意すれば良く、従って、建設資材の材種を減少し、施工の効率性を改善又は向上することが可能となる。
【0083】
図14~
図19は、間仕切壁1の変形例を示す壁端部1aの水平断面図である。各図において、
図4及び
図5に示す各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0084】
図14に示す間仕切壁1においては、ロックウールフェルト、或いは、樹脂発泡体等の緩衝材51、52が端部1aに配設される。緩衝材51は、シート状の部材であり、壁W又は柱Cの表面Wa、Caと端柱部材15のウェブ部15aとの間に介挿され、壁W又は柱Cと端柱部材15との間の固体振動音の伝播を防止する。緩衝材51の厚さは、例えば、10mmに設定され、緩衝材51の幅は、例えば、端柱部材15の幅と同一又は同等の寸法、或いは、中空域αの幅と同一又は同等の寸法に設定される。緩衝材51は、端柱部材15の全高に亘ってウェブ部15aに取付けられ、或いは、上下方向に間隔を隔ててウェブ部15aに部分的に取付けられる。
【0085】
緩衝材52は、比較的厚い帯状部材からなり、端柱部材15のフランジ部15bの外側面に一体的に取付けられ、端柱部材15の概ね全高に亘って延在する。緩衝材52の表面は下張り面材5に近接する。緩衝材52の厚さは、例えば、10mmに設定され、緩衝材52の幅は、例えば、10~30mmに設定される。緩衝材52の外面は、下張り面材5の裏面に接触し、或いは、僅かに離間する。緩衝材52は、端柱部材15の全高に亘ってフランジ部15bに取付けられ、或いは、上下方向に間隔を隔ててフランジ部15bに部分的に取付けられる。緩衝材52の外面は、下張り面材5の裏面に接触し、或いは、僅かに離間する。例えば、外力Pが壁端部1aの壁面に作用し、面材5、6が外力Pによって内側に変形した場合、緩衝材52は、面材5、6の裏当て材として機能し、面材5、6の過剰な変形を阻止する。緩衝材51、52として、振動絶縁性を有する繊維質材料、軟質樹脂、ゴム、エラストマー又は多孔質発泡材料等を好適に使用し得る。
【0086】
図15に示す間仕切壁1では、断面サイズが相違する端柱部材15、16が端柱10として壁端部1aに配設される。例えば、端柱部材15の幅ω5は、スタッド4の幅ω1(
図5)よりも大きく、端柱部材16の幅ω6は、スタッド4の幅ω1(
図5)よりも小さい。
【0087】
図14及び
図15に示す間仕切壁1の端部構造によれば、前述の各実施例と同様、壁厚方向に延在する間隙γが端柱部材15、16の間に形成される。所望により、断熱・吸音材40と同様の断熱・吸音材41(破線で示す)を端柱部材15、16の間に介挿し、間隙γを部分的に閉塞する絶縁帯を断熱・吸音材41によって形成しても良い。
【0088】
図16に示す間仕切壁1は、
図1(A)に示す間仕切壁構造のものであり、中空構造且つ正方形断面の端柱部材11、12を端柱10として壁端部1aに並列配置した構成を有する。端柱部材11、12は、壁芯XーXに対して対称の配置及び断面を有する。端柱部材11、12の間には、寸法T3の間隙βが形成される。寸法T3は、例えば、約10mmに設定される。端柱部材11、12として、角形断面の鋼製スタッドを好適に使用し得る。
【0089】
図16に示す間仕切壁1の端部構造によれば、壁芯方向に延在する間隙βが端柱部材11、12の間に形成される。所望により、振動絶縁性を有する繊維質材料、軟質樹脂、ゴム、エラストマー又は多孔質発泡材料等が絶縁帯42(破線で示す)として端柱部材11、12の間に介挿される。
【0090】
図17に示す間仕切壁1は、
図1(B)に示す間仕切壁構造のものであり、中空構造且つ長方形断面の端柱部材13、14を端柱10として壁端部1aに配設した構成を有する。端柱部材13、14は、スタッド4と同様、壁厚方向に弱軸(長軸)を配向し且つ壁芯方向に強軸(短軸)を配向した断面性状を有する。端柱部材13、14の間には、寸法L2の間隙γが形成される。寸法L2は、例えば、約30mmに設定される。端柱部材
13、14として、角形断面の鋼製スタッドを好適に使用し得る。
【0091】
図17に示す間仕切壁1の端部構造によれば、前述の各実施例と同様、壁厚方向に延在する間隙γが端柱部材13、14の間に形成される。所望により、振動絶縁性を有する繊維質材料、軟質樹脂、ゴム、エラストマー又は多孔質発泡材料等が絶縁帯42(破線で示す)として端柱部材13、14の間に介挿される。
【0092】
図18(A)及び
図18(B)に示す間仕切壁1は、長方形断面の鋼製スタッド部材を端柱部材
11~14及びスタッド4’として使用した構成を有する。各鋼製スタッド部材は、壁芯方向に弱軸(長軸)を配向し且つ壁厚方向に強軸(短軸)を配向するように配置される。
図18(A)に示す端柱部材11、12の間には、
図1(A)に示す間仕切壁構造と同様、寸法T3の間隙βが形成され、
図18(B)に示す端柱部材13、14の間には、
図1(B)に示す間仕切壁構造と同様、寸法L2の間隙γが形成される。
【0093】
図19(A)に示す間仕切壁1は、
図2~
図5に示すシングルランナ・千鳥間柱工法の間仕切壁構造において、敷目板4aをスタッド4及び下張り面材5の間に千鳥配列に介挿した構成を有する。また、
図19(B)に示す間仕切壁1は、
図20(B)に示すシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造と同様、敷目板4aをスタッド4及び下張り面材5の間に千鳥配列に介挿するとともに、スタッド4及び下張り面材5の間に交互に間隙4bを形成した構成を有する。
図1(B)~
図5に示す間仕切壁構造と同様、一対の端柱部材15、16が端柱10として壁端部1aに配置され、端柱部材15、16の間には、間隙γが形成される。間隙γの寸法L2は、55mm以下、好ましくは、30mm以下(例えば、10mm)に設定される。
【0094】
更なる変形例として、本発明の構成は、木質系又は木製間柱を使用した木造間仕切壁に適用しても良く、例えば、
図1(A)及び
図1(B)に示す間仕切壁構造を木造軸組構造の間仕切壁に適用し、
図16~
図18に示す端柱部材11~14として中実且つ角形断面の木質系部材を使用しても良い。
【0095】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であることはいうまでもない。
【0096】
例えば、上記実施例では、間仕切壁の建築内装面材として、強化石膏ボード及び硬質石膏ボードを使用しているが、構造用石膏ボード、シージング石膏ボード、化粧石膏ボード等の石膏ボード製品、ガラス繊維不織布入り石膏板(商品名「タイガーグラスロック(登録商標)」(吉野石膏株式会社製品))、スラグ石膏板(商品名「アスノン」(登録商標)等)、セメント板(「デラクリート」(登録商標)等)、繊維混入石膏板(商品名「エフジーボード」等)、押し出し成型板(商品名「クリオンスタッドレスパネル」、「SLPパネル」等)、ALC板、珪酸カルシウム板、木質系合板、窯業系サイディング等を間仕切壁の建築内装面材として使用しても良い。
【0097】
また、上記実施形態においては、鉄筋コンクリート構造の建築物に設置される間仕切壁について説明したが、鉄骨構造、鉄骨鉄筋コンクリート構造、或いは、木構造の建築物に設置される間仕切壁に対して本発明を適用しても良い。
【0098】
更に、上記実施形態においては、TLD=50以上の遮音性能を有する間仕切壁について説明したが、TLD=50未満の遮音性能の間仕切壁、例えば、TLD=40の遮音性能を有する間仕切壁に対して本発明を適用しても良い。また、本発明の構成は、TLD=20又は30程度の間仕切壁に対しても同様に適用し得るものである。
【0099】
また、
図1~
図6に示す実施形態においては、端柱部材の間に形成された間隙の空気層によって固体振動の伝播を遮断又は絶縁しているが、繊維質材料、軟質樹脂、ゴム、エラストマー又は多孔質発泡材料等の振動絶縁材料を間隙に充填又は挿入し、間隙の部分を絶縁帯として構成しても良く、或いは、振動絶縁可能な連結具又は連携具等を介して端柱部材同士を相互連結しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、一般に中高層建築物の戸境壁、界壁又は耐火区画壁等として施工されるシングルランナ・千鳥間柱工法又はシングルランナ・敷目板千鳥配列工法の間仕切壁構造及びその施工方法に適用され、中高音域の騒音に対する音響透過損失を増大し、間仕切壁の遮音性能を向上するのに使用される。本発明によれば、遮音性能の性能値(TLD値)がTLD=50を超える高性能遮音壁の遮音性能を比較的簡単な構成で更に向上することができるので、その実用的効果は、顕著である。
【符号の説明】
【0101】
1 間仕切壁
1a 壁端部
2 下部ランナ
3 上部ランナ
4 鋼製スタッド
5 下張り面材
6 上張り面材
8 内装仕上材料
9、19 金属製スペーサ
10 端柱
11、13、15 第1端柱部材
12、14、16 第2端柱部材
20 四周目地用充填材
30 スクリュービス
40、41 断熱・吸音材
42 絶縁帯
51、52 緩衝材
α 中空域
β、γ 間隙
L2、T3 間隙寸法
L5、L6 突出寸法
R1 建築空間
R2 建築空間
Si 騒音
So 固体伝播音
X 壁芯
B 梁
Ba 下端面
C 柱
Ca 垂直面
W 壁体
Wa 壁面
F1 床構造体
F2 床構造体