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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】商品陳列什器
(51)【国際特許分類】
   A47F 5/00 20060101AFI20230320BHJP
   A47F 5/11 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A47F5/00 D
A47F5/11
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021010139
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2021062288
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】599151259
【氏名又は名称】株式会社東具
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】堀本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敦
(72)【発明者】
【氏名】泉 雅也
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-115352(JP,A)
【文献】登録実用新案第3161386(JP,U)
【文献】実開昭58-049987(JP,U)
【文献】特開2017-029646(JP,A)
【文献】特開2001-061618(JP,A)
【文献】意匠登録第1081429(JP,S)
【文献】意匠登録第1081430(JP,S)
【文献】特開2014-118208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00- 7/00
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔が形成された厚紙製の背板と、
前記取付孔を挿通するようにして前記背板に取り付けられる厚紙製のフックとを備えた商品陳列什器であって、
前記フックは、前記背板の表面側に配置され、商品が吊り下げられる上面が形成されたロッド部および前記ロッド部の前記背板に近い側の下部が拡がって前記背板の表面に当接する拡張部が形成された商品吊下部と、
前記商品吊下部に隣接し前記背板の前記取付孔に嵌入される頸部と、
前記頸部に隣接し前記背板の裏面側に配置されて前記背板の裏面と当接する基端部とを備え、
前記商品吊下部、前記頸部、前記基端部は、前記厚紙を直線状の折り曲げ線に沿って二つ折りして2枚重ね合わせた厚さになるようにして当該厚紙上に一体に形成され、
前記ロッド部の前記上面が前記折り曲げ線に沿って折り曲げられた折り曲げ面により形成され、
前記背板に取り付けた状態で前記フックの基端部には、前記背板の前記取付孔より上側に拡がって前記背板の裏面に当接する上部当接部が含まれるとともに、前記上部当接部は前記ロッド部の上面の延長線上よりも低くなるように形成される商品陳列什器。
【請求項2】
長手方向を鉛直方向に向けた長孔の取付孔が形成された厚紙製の背板と、
前記取付孔を挿通するようにして前記背板に取り付けられる厚紙製のフックとを備えた商品陳列什器であって、
前記フックは、前記背板の表面側に配置され、商品が吊り下げられる上面が形成されたロッド部および前記ロッド部の前記背板に近い側の下部が拡がって前記背板の表面に当接する拡張部が形成された商品吊下部と、
前記商品吊下部に隣接し前記背板の前記取付孔に嵌入される頸部と、
前記頸部に隣接し前記背板の裏面側に配置されて前記背板の裏面と当接する基端部とを備え、
前記商品吊下部、前記頸部、前記基端部は、前記厚紙を直線状の折り曲げ線に沿って二つ折りして2枚重ね合わせた厚さになるようにして当該厚紙上に一体に形成されるとともに、
前記ロッド部の前記上面が前記折り曲げ線に沿って折り曲げられた折り曲げ面により形成される商品陳列什器。
【請求項3】
前記厚紙は、板厚が1.5~2mmである請求項1~2のいずれかに記載の商品陳列什器。
【請求項4】
前記フックは、前記折り曲げ線およびその延長線を中心線として線対称な形状として前記厚紙上に形成される請求項1~3のいずれかに記載の商品陳列什器。
【請求項5】
前記背板に取り付けた状態で前記商品吊下部の前記背板から離れた側となる先端部分における二つ折りされた厚紙の片方に、前記ロッド部の上面より上方に延び、前記上面に吊り下げられた商品の落下を防ぐための突起が延設される請求項1~3のいずれかに記載の商品陳列什器。
【請求項6】
前記背板に取り付けた状態で前記フックの基端部には、前記背板の前記取付孔より下側に拡がって前記背板の裏面に当接する下部当接部が含まれる請求項1~5のいずれかに記載の商品陳列什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗等で背板に取り付けたフックに商品を吊り下げて展示・販売する商品陳列什器に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等で使用されるPOP用品の一つに、背板(台紙)の前方に突き出すようにフックを固定し、このフックに商品を吊り下げて展示するタイプの商品陳列什器が用いられている。従来、この種の陳列什器では、商品を吊り下げるフックは十分な強度を持たせるためにプラスチック製フック(樹脂製フック)が用いられ、フックを固定する孔が加工される背板には厚紙製のものが用いられている。
人の往来が多い売り場等でプラスチック製のフックを用いた商品陳列什器を使用していると、突き出たフックが往来する顧客の体に接触することがあり、激しく接触した場合にはフックが突き刺さったり折れたりすることで、顧客の衣服や持物を傷つけ、場合によっては怪我をさせてしまう可能性もあった。
【0003】
近年、環境への負担軽減を目的として、プラスチックの使用を抑制することが推奨されており、商品陳列什器についてもプラスチックを使わずに、フックを含む製品全体を厚紙製(板紙製ともいう)とした商品陳列什器を使用することが提案されている(特許文献1、2参照)。
厚紙製のフックは環境面だけでなく安全性の面でも優れている。すなわち、特許文献1、2に記載のフックにも見られるが、厚紙製のフックは、紙面が背板の前方に垂直に突き出すようにして固定され、紙面が鉛直方向に向けられるのが一般的である。この場合、商品の荷重が加わる鉛直方向(縦方向)に対しては十分な強度を持たせてあるが、厚紙の性質上、紙面に対し垂直方向(横方向)から加わる力に対しては折れ曲がりやすく、フック正面(前方)から背板に向けて押圧(圧縮)する力に対しては、座屈しやすい。
往来する顧客がフックに接触する際には、フックの紙面に対し垂直方向(横方向)から力が加わる場合であるか、フック正面(前方)から背板に向けて押圧(圧縮)する力が加わる場合であるかであり、いずれの場合も、フックが折れ曲がったり、座屈したりすることになるので、プラスチック製フックのように顧客に危害を及ぼすおそれはなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3161386号公報
【文献】特開2017-29646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
厚紙製のフックを用いる商品陳列什器では、吊り下げた商品の荷重によって簡単に折れ曲がらないように、吊下げる荷重に応じた板厚にする必要がある。また、背板へのフックの取り付け作業が容易であり、フックを背板に取り付けた後は、フックが背板から外れたり、動いたりしないように確実に固定される必要もある。
また、環境面および材料コストを考慮すれば、フックを加工する際に、端材として廃棄する領域(面積)をできるだけ減らすことができるような凹凸の少ない形にするのが望ましい。
【0006】
特許文献1に記載の商品陳列什器では、2枚の商品吊下用板部材のそれぞれに基板部と接合用板部とを設け、基板部と接合用板部との境界線が上辺となるように折り曲げるとともに、接合用板部どうしを接着材で固着することにより固着部分を4枚の板厚とし、残りを2枚の板厚部分とした板紙製商品吊下具を用いている。したがってフック自体の強度については問題ないが、接合用板部を含んだ2枚の商品吊下用板部材を用いているので、使用する厚紙の面積は大きくなる。しかも接合用板部間を接着材で固着しなければならないので製作に手間を要する。
【0007】
一方、特許文献2に記載の背板とフックとからなる商品陳列什器では、商品を吊り下げる吊下部は単紙で形成されている。厚紙の厚さを増やせば単紙でも吊下げ可能な荷重を増やすことはできるが、板厚が厚い厚紙は材料コストが増大することになる。
【0008】
また、厚紙からフックを断裁する加工では、一般に、トムソン加工機の木型による抜き加工や、金型による抜き加工が用いられるが、いずれの場合も厚紙の片面側から刃が侵入して厚紙の他方面に突き抜けるようにして断裁するので、断裁面にはカエリ(バリ)が発生することになる。特許文献2に記載されるような単紙の吊下部を形成すると、いずれか片側にカエリが発生するようになり、商品を吊り下げたり外したりする際の商品のスムーズな出し入れが阻害されたり、カエリに手が触れて傷つくおそれがある。
さらに、トムソン加工機の木型による抜き加工の方が、金型による抜き加工に比べて簡便で加工コストが安価になるが、トムソン加工で断裁できる板厚は2mm程度以下であり、それ以上に板厚が厚くなると金型を採用する必要が生じるため加工コストが高くなる。したがって特許文献2のような単紙のフックを製造する場合は、トムソン加工でコストを抑えて製造するために板厚を2mm以下に抑えて小さい荷重でのみ使用可能なフックにするか、材料コスト、加工コストがかかるが2mm以上の板厚の厚紙を用いて金型での抜き加工を行い、十分な強度を有する堅牢なフックを形成するかのいずれかの選択となり、商品としてコスト面と性能面とのバランスのとれた厚紙製フックを提供することが困難である。
【0009】
そこで、本発明は使用する厚紙の板厚による材料コスト、加工方法による加工コストを抑えるとともに、フックとして吊り下げ可能な荷重を増やすことで、価格面と性能面とでバランスのとれた商品陳列什器を提供することを目的とする。
また、本発明は、環境面に配慮し、フックを抜き加工する際に端材として廃棄する領域(面積)をできるだけ減らすことができるようにした商品陳列什器を提供することを目的とする。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の商品陳列什器は、取付孔が形成された厚紙製の背板と、前記取付孔を挿通するようにして前記背板に取り付けられる厚紙製のフックとを備えた商品陳列什器であって、前記フックは、前記背板の表面側に配置され、商品が吊り下げられる上面が形成されたロッド部および前記ロッド部の前記背板に近い側の下部が拡がって前記背板の表面に当接する拡張部が形成された商品吊下部と、前記商品吊下部に隣接し前記背板の前記取付孔に嵌入される頸部と、前記頸部に隣接し前記背板の裏面側に配置されて前記背板の裏面と当接する基端部とを備え、前記背板に取り付けた状態で前記フックの基端部には、前記背板の前記取付孔より上側に拡がって前記背板の裏面に当接する上部当接部が含まれるとともに、前記上部当接部は前記ロッド部の上面の延長線上よりも低くなるように形成され、前記商品吊下部、前記頸部、前記基端部は、前記厚紙を直線状の折り曲げ線に沿って二つ折りして2枚重ね合わせた厚さになるようにして当該厚紙上に一体に形成され、前記ロッド部の前記上面が前記折り曲げ線に沿って折り曲げられた折り曲げ面により形成されるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、直線状の折り曲げ線に沿って厚紙を二つ折りすれば、フックを構成する商品吊下部、頸部、基端部が、厚紙2枚の厚さで形成されるように当該厚紙上に一体に形成してあり、そのとき折り曲げられた折り曲げ面がロッド部の上面を形成するようにしてある。
これにより、一枚の厚紙を折り曲げるだけで、接着材で貼り付ける手間も必要なく、その厚紙の板厚の2倍の厚さを有する堅固なフックにすることができる。しかも折り曲げられた一対の厚紙どうしは上面でつながり一体となっているので、例えばロッド部にねじる方向の力が加わった場合であっても、厚紙どうしは分離できないため一体のままでねじりに対し持ちこたえることができる。
また、背板に取り付けた状態で上部当接部がロッド部の上面(すなわち折り曲げ面)の延長線上よりも低くなるように形成されるので、厚紙上に商品吊下部、頸部、基端部を一体に形成するときに、当該基端部に上部当接部を設けることができる。この上部当接部を設けることにより、商品吊下部に荷重が加えられたときに、上部当接部と背板との間に働く抗力によって補強することができるようになり、しっかりと荷重を支えることができる。
【0012】
また、別の観点からなされた上記課題を解決するための他の発明は、長手方向を鉛直方向に向けた長孔の取付孔が形成された厚紙製の背板と、前記取付孔を挿通するようにして前記背板に取り付けられる厚紙製のフックとを備えた商品陳列什器であって、前記フックは、前記背板の表面側に配置され、商品が吊り下げられる上面が形成されたロッド部および前記ロッド部の前記背板に近い側の下部が拡がって前記背板の表面に当接する拡張部が形成された商品吊下部と、前記商品吊下部に隣接し前記背板の前記取付孔に嵌入される頸部と、前記頸部に隣接し前記背板の裏面側に配置されて前記背板の裏面と当接する基端部とを備え、前記商品吊下部、前記頸部、前記基端部は、前記厚紙を直線状の折り曲げ線に沿って二つ折りして2枚重ね合わせた厚さになるようにして当該厚紙上に一体に形成されるとともに、前記ロッド部の前記上面が前記折り曲げ線に沿って折り曲げられた折り曲げ面により形成されるようにしている。
本発明によれば、直線状の折り曲げ線に沿って厚紙を二つ折りすれば、フックを構成する商品吊下部、頸部、基端部が、厚紙2枚の厚さで形成されるように当該厚紙上に一体に形成してあり、そのとき折り曲げられた折り曲げ面がロッド部の上面を形成するようにしてある。
これにより、一枚の厚紙を折り曲げるだけで、接着材で貼り付ける手間も必要なく、その厚紙の板厚の2倍の厚さを有する堅固なフックにすることができる。しかも折り曲げられた一対の厚紙どうしは上面でつながり一体となっているので、例えばロッド部にねじる方向の力が加わった場合であっても、厚紙どうしは分離できないため一体のままでねじりに対し持ちこたえることができる。
また、二つ折りした厚紙を密着させて鉛直方向に向けた背板の長孔に取り付けるので、フックとしての強度が最も強い方向を鉛直方向に向けて取り付けることができ、荷重が加わる鉛直方向に一致させることができる。
【0013】
前記厚紙は、板厚が1.5~2mmである厚紙を用いてもよい。トムソン加工でも断裁可能な板厚(2mm以下)の厚紙を用いて、3mm以上の十分な強度を持つフックにすることが可能になり、価格面と性能面とのバランスがとれた商品陳列什器とすることができる。
【0014】
前記フックは、前記折り曲げ線およびその延長線を中心線として線対称な形状として前記厚紙上に形成されるようにしてもよい。
線対称な形状にすることで、断裁によってカエリが生じた片側面を、二つ折りに折り曲げるときの内側面とすることで、対称な部分についてはカエリを内側に隠すことができるようになり、カエリによって商品のスムーズな出し入れが阻害されたり、カエリに手が触れて傷つくような悪影響を防ぐことができる。
【0015】
前記背板に取り付けた状態で前記商品吊下部の前記背板から離れた側となる先端部分における二つ折りされた厚紙の片方に、前記ロッド部の上面より上方に延び、前記上面に吊り下げられた商品の落下を防ぐための突起が延設されるようにしてもよい。
二つ折りされた厚紙の片方だけに突起を設けることで、フックを背板に取り付けたときに、上面(すなわち折り曲げ面)よりも上側に延びる落下防止用の突起を設けることができる。
【0016】
前記背板に取り付けた状態で前記フックの基端部には、前記背板の前記取付孔より下側に拡がって前記背板の裏面に当接する下部当接部が含まれるようにしてもよい。
下部当接部を設けることにより、商品吊下部に吊り下げられた商品を外すときに、フックが背板から外れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態である商品陳列什器を表面側から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態である商品陳列什器を裏面側から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態である商品陳列什器で用いるフックの斜視図である。
図4】トムソン加工によりフックを加工する一例を示す図である。
図5】トムソン加工により抜き加工された後、二つ折りする前のフックを示す図である。
図6】複数のフックをトムソン加工により抜き加工する際の厚紙上のレイアウトの一例を示す図である。
図7】フックを背板に取り付ける際の第一の状態を説明する図である。
図8】フックを背板に取り付ける際の第二の状態を説明する図である。
図9】本発明の他の実施形態である商品陳列什器を表面側から見た斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態である商品陳列什器を裏面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の商品陳列什器について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の一実施例である商品陳列什器1を表面側から見た斜視図であり、図2は商品陳列什器1を裏面側から見た斜視図である。
商品陳列什器1は、方形の背板10と、フック20とからなる。これらは厚紙製、具体的にはカード紙を用いて作られる。なお、カード紙に代えてダンボール紙、ボール紙等の厚紙を用いてもよい。
【0019】
背板10には、複数の長孔11が互いに間隔をあけて形成されている。長孔11は長手方向の長さがL、幅方向の長さがWとなる長方形に形成してあり、長手方向が鉛直方向(縦方向)に向くようにして用いられる。すなわち背板10の上辺近くに設けた一対の吊り孔12に吊紐13が掛け渡してあり、吊紐13で背板10を吊り下げたときに長孔11の長手方向が上下に向くようにして用いられる。
【0020】
図3はフック20の斜視図である。フック20は、上面21を有する商品吊下部22と、商品吊下部22の背板10に近い側に隣接し、背板10の長孔11(取付孔)に嵌入すように縦方向長さをL、横方向長さをWにした頸部23と、頸部23に隣接し、背板10の裏面側に装着される基端部26とを備えている。
また、フック20は、板厚がt(=W/2)の厚紙を二つ折りして板厚がWとなるように形成してある。
【0021】
商品吊下部22には、上面21に商品が吊り下げられるロッド部22aと、ロッド部22aの背板10に近い下部側で背板10に近づくにつれて鉛直方向(下方)に拡がる拡張部22bとが形成され、拡張部22bによってロッド部22aが補強されるようにしてある。拡張部22bの下側は背板10の長孔11の下部側に当接するようにしてあり、ロッド部22aに加えられた荷重を当接面で支えることができるようにしてある。
【0022】
また、拡張部22bとは反対側の端となるロッド部22aのさらに先端側には、上面21を超える高さにした突起部27が延設してある。ロッド部22aから突起部27にかけての部分も、厚紙を二つ折りして一体形成するようにするため、ロッド部22aを形成する二つ折りの厚紙の片側のみに突起部27が延設してある。
【0023】
そしてフック20は、先端の突起部27を除いて、厚紙を二つ折りして2枚重ね合わされた形状として一体形成される部分、すなわち上面21を含むロッド部22aから拡張部22b、頸部23、基端部26までの部分は、折り曲げ線およびその延長線を中心線として線対称な形状の厚紙を重ね合わせて形成するようにしてある。
【0024】
次に、フック20の加工方法について説明する。フック20は、ベースとなる合板にトムソン刃を埋め込むことにより形成したトムソン型(木型)を用いて、加工対象の厚紙をプレスして打ち抜くトムソン加工により形成する。トムソン加工では、ベース面に立設するトムソン刃の刃高を調整することで、型抜きするフルカット部分と、折り曲げ線とするハーフカット部分とを形成することができる。
【0025】
なお、トムソン加工で厚紙を打ち抜く場合、2mm以上の板厚になると加工が困難になる。一方、フックとしての強度を保つ観点からは、フックの板厚を厚くする方が望ましいことから、2mm以下の板厚の厚紙を用いてトムソン加工するとともに、加工後の厚紙を二つ折りすることで板厚を2倍にし、加工しやすさの維持と強度維持とを同時に図るようにしている。具体的にはトムソン加工が可能な板厚tが1.6mmのカード紙を用いて、これを2枚重ね合わせて理論上の板厚が3.2mm(ただし実測すればカエリの影響等で2枚重ねた板厚が3.6mm程度になる)のフック20となるようにしている。
【0026】
図4は一枚の厚紙を用いて、図3に示したフック20を加工するトムソン加工の一例を示す図である。
方形で厚さt(例えば1.6mm)の厚紙40に対し、太い実線で示したフルカットライン41の加工に用いるトムソン刃と、細い破線で示した直線状のハーフカットライン42の加工に用いるトムソン刃とを埋め込んだトムソン型を用いて、厚紙40をトムソン型にプレスして打ち抜くことにより、図5に示したような二つ折りする前のフック20が加工される。
打ち抜かれたフック20を折り曲げ線43に沿って山折りすることにより図3に示したフック20を形成することができる。このときの直線状の折り曲げ線43で折り曲げられたハーフカット面(折り曲げ面)はフック20におけるロッド部21の上面を形成することになる。
【0027】
トムソン型で打ち抜いたときに片面側にカエリ(バリ)が発生するが、山折り(二つ折り)したときに内側となる面がカエリ発生面になるように打ち抜くことで、突起部27を除いてカエリを隠すことができるので突起部27以外のカエリを除去する処理を省くことができる。
【0028】
また、本発明のフック20は、ロッド部22aの上面となる折り曲げ線43およびその延長線を中心線として、ほとんど線対称な形状として厚紙上に形成することができる。その場合、二つ折りする前のフック20は、ロッド部22aをT字の縦線とし、拡張部22b、頸部23、基端部26をT字の横線とする略T字状の型として打ち抜くことができる。
【0029】
そこで、方形(より好ましくは平行四辺形)で大きな面積の厚紙から、多数の略T字状のフック20を打抜く際に、図6に示すように各フック20のロッド部22a(T字の縦線部分)を平行に並べるとともに、各フック20の基端部26(T字の横線部分)が左右交互に配置されるレイアウトにすれば、端材部分を減らすことができ、厚紙を有効利用することができて材料コストを抑えることができるようになる。
【0030】
次に、背板10へのフック20の取付方法(取出方法)について説明する。図7図8は背板10にフック20を取り付ける手順を説明する図である。
最初に、フック20を斜めにして、基端部26を長孔11に挿通し、基端部26の上部26aが長孔11を通過して裏面に抜け出た後、頸部23の上辺23aを長孔11の上辺に当接させる(図7)。
続いて、頸部23の上辺23aを長孔11に当接させたまま、基端部26の下部26b側が背板10の裏面側に抜け出るまでフック20を回転させていく。そして拡張部22bの下部22bが背板表面側に当接するとフック20の回転を止め、頸部23の下辺23bが長孔11の下辺に当接するようにする。その結果、頸部23が長孔11に嵌入された状態でフック20が固定されるようになる(図8)。
【0031】
このとき、頸部23と基端部上部26aとの段差、および、頸部23と基端部下部26bとの段差を、適切な寸法に設定しておくことで、基端部上部26aを上部当接部として背板10の裏面と当接させることができ、基端部下部26bを下部当接部として背板10の裏面と当接させることができる。
この上部当接部を設けることによって商品吊下部22に加えられた荷重を支える力を補強することができる。また、下部当接部を設けることによって商品吊下部22に吊り下げられた商品を外すときに、フック22が背板10から外れにくくすることができる。
【0032】
次に、本発明の変形例について説明する。図9は本発明の他の一実施例である商品陳列什器2を表面側から見た斜視図であり、図10は商品陳列什器1を裏面側から見た斜視図である。商品陳列什器2は、方形の背板10Aと、フック20とからなる。図1図2で説明した背板10と背板10Aとの違いは、前者では長孔11(I型孔と称する)が形成してあるのに対し、後者では下部側が二股に分かれ、その間に凸部14が形成されたA字状の孔11A(A型孔と称する)が形成されている点であり、それ以外は同じ構造である。フック20は図3で説明したものと同じ形状ものが用いられる。
【0033】
本実施形例では、フック20は下部側を二股に開いて逆V字状にした状態で、凸部14を挟むようにして孔11Aに取り付けられる。その結果、図1、2で示したI型孔に取り付けたときに比べると、鉛直方向(上下方向)の荷重に対する強度はI型孔の方が優れているが、A型孔では凸部14によって左右方向が補強され、左右のブレに対する強度が優れるようになる。したがって、鉛直方向の強度を優先するか、左右方向の強度を優先するかにより、好ましい背板を選択すればよい。
【0034】
以上、本発明の商品陳列什器の一例について説明したが、これに限られるものではない。例えば本実施例では背板10を吊紐13で吊下げるようにしているが、脚部を設けて自立するようにしてスタンド型の什器として使用するようにしてもよい。
また、上記実施例ではI型孔用とA型孔用のフック20とを同じものとしたが、変更してもよい。
また、上記実施例ではトムソン加工により加工コストを抑えるようにしたが、金型を用いた抜き加工を採用した場合でも、材料コストを抑えつつ、より強度を有するフックを加工することができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形実施できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、商品を展示・販売するための陳列什器に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
10、10A 背板
11 長孔
11A A字状の孔
20 フック
21 上面
22 商品吊下部
22a ロッド部
22b 拡張部
23 頸部
26 基端部
27 突起部
40 厚紙(カード紙)
41 フルカットライン
42 ハーフカットライン
43 折り曲げ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10