(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】携帯端末およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230320BHJP
A61M 21/02 20060101ALI20230320BHJP
G10K 15/04 20060101ALI20230320BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H04R3/00 330
A61M21/02 H
G10K15/04 302M
H04M1/00 R
(21)【出願番号】P 2021047488
(22)【出願日】2021-03-22
(62)【分割の表示】P 2019520166の分割
【原出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500439009
【氏名又は名称】株式会社アクション・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】大橋 力
(72)【発明者】
【氏名】河合 徳枝
(72)【発明者】
【氏名】仁科 エミ
(72)【発明者】
【氏名】本田 学
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157118(JP,A)
【文献】特開2013-247620(JP,A)
【文献】特開2018-074460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/00-21/02
G10K 15/00-15/12
H04M 1/00
H04M 1/24- 1/82
H04M 99/00
H04R 1/00- 1/08
H04R 1/12- 1/14
H04R 1/20- 1/34
H04R 1/40- 1/46
H04R 3/00
H04R 9/00
H04R 13/00
H04R 15/00
H04R 17/00
H04R 17/10
H04R 19/00
H04R 23/00
H04R 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末であって、
アプリケーションソフトウェアを実行する実行部と、
可聴帯域の周波数信号を発生する第1信号発生部と、
前記可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波信号を発生する第2信号発生部と、
前記高周波信号を対応する高周波音に変換するスピーカ部と、
前記実行部がアプリケーションソフトウェアを実行することにより発生させる音声信号とは異なるタイミングで、前記高周波信号の発生タイミングを制御するタイミング制御部と
を備え
、
前記タイミング制御部は、前記実行部がアプリケーションソフトウェアを継続して実行している時間が閾値を超えたことに応じて、前記高周波信号の発生タイミングを制御する、
携帯端末。
【請求項2】
前記タイミング制御部は、ユーザが前記携帯端末を操作して情報に依存している状態に応じて、前記閾値を設定する、請求項
1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記タイミング制御部は、
2つの前記閾値を用いて前記高周波信号の発生タイミングを制御し、
前記実行部がアプリケーションソフトウェアを継続して実行している時間が第1の前記閾値を超えたことに応じて、前記高周波信号の発生を停止し、
前記実行部がアプリケーションソフトウェアを継続して実行している時間が第1の前記閾値よりも大きい第2の前記閾値を超えたことに応じて、32kHz以下の周波数成分を含む前記高周波信号の発生を開始する、
請求項
1または
2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記タイミング制御部は、当該携帯端末の電源がオンの状態において、前記第2信号発生部から前記高周波信号を発生させるように前記第2信号発生部を制御する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記タイミング制御部は、前記実行部がアプリケーションソフトウェアを実行している状態に基づき、前記高周波信号の発生タイミングを制御する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記タイミング制御部は、前記実行部が実行中のアプリケーションソフトウェアの種別に基づいて、前記高周波信号の発生タイミングを制御するか否かを決定する、
請求項
5に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記第2信号発生部は、前記高周波信号のうち予め定められた周波数帯域の周波数成分を通過させるフィルタ部を有し、前記フィルタ部を通過した周波数成分を前記高周波信号として出力する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項8】
前記フィルタ部は、前記高周波信号のうち32kHz以下の周波数成分を通過させる第1フィルタを有する、請求項
7に記載の携帯端末。
【請求項9】
前記フィルタ部は、前記高周波信号のうち32kHzを超える周波数成分を通過させる第2フィルタを有する、請求項
7または
8に記載の携帯端末。
【請求項10】
前記フィルタ部は、前記高周波信号のうち32kHz以下の周波数成分を通過させる第1フィルタと、前記高周波信号のうち32kHzを超える周波数成分を通過させる第2フィルタとを有し、
前記タイミング制御部は、前記第2信号発生部が第1フィルタおよび第2フィルタのいずれを通過させるかを更に制御する、請求項
7に記載の携帯端末。
【請求項11】
前記スピーカ部にユーザが近接しているか否かを検出する検出部を更に備え、
前記タイミング制御部は、前記検出部の検出結果に応じて、前記高周波信号の発生タイミングを制御する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項12】
前記検出部は、当該携帯端末が前記ユーザに保持されているか否かを検出した場合に、前記ユーザが近接していることを検出する、請求項
11に記載の携帯端末。
【請求項13】
前記可聴帯域よりも高い周波数帯域の前記高周波信号に応じた高周波音に変換する前記スピーカ部が設けられた前記携帯端末にインストールされるプログラムであって、
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータを請求項1から
12のいずれか一項に記載の前記携帯端末の各部として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可聴周波数帯域を超える周波数帯域の非定常な音を人間に対して印加すると、視床、視床下部、中脳を含む脳の深部構造(以下「基幹脳」と呼ぶ)の血流を増大させ、その活動を高め、免疫活性の向上、報酬系神経回路の活性化、ストレスの緩和を導くハイパーソニック効果が知られている(例えば、特許文献1から3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-313610号公報
【文献】特開2003-223174号公報
【文献】特開2005-111261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、現代社会ではさまざまな依存症が大きな社会問題になっている。依存症とは、脳のなかで快感を発生させる報酬系神経回路を興奮させるさまざまな物質や情報による刺激、たとえばアルコール、薬物、ゲーム、スマートフォン、ギャンブルなどに対して高度に依存するようになり、日常生活に支障を来すようになった状態である。報酬系神経回路は、不快感や苦痛を発生する懲罰系神経回路よりも強力に行動を制御するため、法的あるいは社会的罰則によって依存症を治療することは極めて困難である。特に最近では、インターネットや携帯端末の普及により、携帯端末を終始操作して得られる情報等に依存する行為が、ネット依存、ゲーム依存、スマートフォン依存といった新たな社会問題にまで発展している。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、携帯端末のユーザが当該携帯端末を用いて情報に依存する行為を緩和させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、携帯端末であって、可聴帯域の周波数信号を発生する第1信号発生部と、前記可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波信号を発生する第2信号発生部と、前記高周波信号を対応する高周波音に変換するスピーカ部と、前記可聴帯域の前記周波数信号を発生するタイミングとは相関のないタイミングで前記高周波信号の発生タイミングを制御するタイミング制御部とを備える携帯端末を提供する。
【0007】
前記タイミング制御部は、当該携帯端末の電源がオンの状態において、前記第2信号発生部から前記高周波信号を発生させるように前記第2信号発生部を制御してよい。アプリケーションソフトウェアを実行する実行部を更に備え、前記タイミング制御部は、前記実行部がアプリケーションソフトウェアを実行している状態に基づき、前記高周波信号の発生タイミングを制御してよい。
【0008】
前記タイミング制御部は、前記実行部がアプリケーションソフトウェアを継続して実行している時間に基づき、前記高周波信号の発生タイミングを制御してよい。前記タイミング制御部は、前記実行部が実行中のアプリケーションソフトウェアの種別に基づいて、前記高周波信号の発生タイミングを制御するか否かを決定してよい。前記第2信号発生部は、前記高周波信号のうち予め定められた周波数帯域の周波数成分を通過させるフィルタ部を有し、前記フィルタ部を通過した周波数成分を前記高周波信号として出力してよい。
【0009】
前記フィルタ部は、前記高周波信号のうち32kHz以下の周波数成分を通過させる第1フィルタを有してよい。前記フィルタ部は、前記高周波信号のうち32kHzを超える周波数成分を通過させる第2フィルタを有してよい。
【0010】
前記フィルタ部は、前記高周波信号のうち32kHz以下の周波数成分を通過させる第1フィルタと、前記高周波信号のうち32kHzを超える周波数成分を通過させる第2フィルタとを有し、前記タイミング制御部は、前記第2信号発生部が第1フィルタおよび第2フィルタのいずれを通過させるかを更に制御してよい。
【0011】
前記スピーカ部にユーザが近接しているか否かを検出する検出部を更に備え、前記タイミング制御部は、前記検出部の検出結果に応じて、前記高周波信号の発生タイミングを制御してよい。前記検出部は、当該携帯端末が前記ユーザに保持されているか否かを検出した場合に、前記ユーザが近接していることを検出してよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、前記可聴帯域よりも高い周波数帯域の前記高周波信号に応じた高周波音に変換する前記スピーカ部が設けられた前記携帯端末にインストールされるプログラムであって、コンピュータにより実行されると、前記コンピュータを第1の態様の前記携帯端末の各部として機能させる、プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、携帯端末のユーザが当該携帯端末を用いて情報に依存する行為を緩和させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る携帯端末100の構成例を示す。
【
図2】本実施形態に係る携帯端末100の第1変形例を示す。
【
図3】本実施形態に係る携帯端末100の第2変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<携帯端末100の構成例>
図1は、本実施形態に係る携帯端末100の構成例を示す。携帯端末100は、可聴帯域よりも高い周波数の高周波信号を発生するタイミングを調節して、ユーザが当該携帯端末100を継続して操作して情報に依存する行為を緩和させる。携帯端末100は、ネットワーク等に接続可能に構成され、外部からの情報およびデータ等を取得できる携帯通信デバイスおよび携帯情報端末等である。
【0016】
携帯端末100は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ゲーム機器、タブレット型PC、小型PC、およびノート型PC等といったデバイスである。携帯端末100は、入力部110、記憶部120、通信部130、表示部140、第1信号発生部150、出力部160、実行部170、第2信号発生部210、スピーカ部220、およびタイミング制御部230を備える。
【0017】
入力部110は、携帯端末100のユーザ等からの操作を受け付ける。入力部110は、例えば、携帯端末100にインストールされたアプリケーションソフトウェアの実行、ネットワーク経由で外部のデータベース等へのアクセス、および、外部ソフトウェアの実行等の操作を受け付ける。入力部110は、例えば、タッチパネル、音声入力デバイス、ジェスチャ入力デバイス、マウス、およびキーボード等の入力デバイスを有し、ユーザ等からの入力を受け付けるユーザインターフェースとして機能する。
【0018】
記憶部120は、携帯端末100が端末として機能するOS(Operating System)、およびアプリケーションソフトウェアの情報を格納する。また、記憶部120は、当該アプリケーションソフトウェアの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。記憶部120は、例えば、コンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、および作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部120は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでよい。
【0019】
記憶部120は、ソフトウェアの実行に伴って音声を発生させるための音声データを格納する。また、記憶部120は、可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波信号を発生させるための高周波音のデータを格納する。また、記憶部120は、携帯端末100の設定値等の情報を格納してよい。また、記憶部120は、携帯端末100の動作の過程で生成する(または利用する)中間データ、算出結果、閾値、およびパラメータ等をそれぞれ格納してもよい。また、記憶部120は、携帯端末100内の各部の要求に応じて、格納したデータを要求元に供給してもよい。
【0020】
通信部130は、携帯端末100の外部と通信する。通信部130は、例えば、無線または有線でネットワークに接続し、外部のデータベース等とデータを送受信する。通信部130は、電話回線等に接続して通信してもよい。通信部130は、一例として、アンテナ、およびネットワークI/Oデバイス等を有する。
【0021】
表示部140は、アプリケーションソフトウェア、OS、およびユーティリティソフトウェア等の実行に応じた画像等を表示する。表示部140は、表示パネル等を有し、数値データ、文字情報、静止画、動画、ソフトウェアまたは携帯端末100の動作状態、通信状態、ブラウズしているwebページ等を表示する。
【0022】
第1信号発生部150は、可聴帯域の周波数信号を発生する。第1信号発生部150は、例えば、音声データに対応する音声を再現するための電気信号を周波数信号として生成する。第1信号発生部150は、一例として、20Hz程度から20kHz程度までの帯域の周波数信号を生成する。第1信号発生部150は、生成した周波数信号を出力部160に供給する。
【0023】
出力部160は、周波数信号を外部に供給する。出力部160は、例えば、PHONEプラグ、RCAプラグ、光デジタル端子、同軸デジタル端子、およびHDMI(登録商標)端子等を有する。また、出力部160は、周波数信号を可聴帯域の音に変換する音声出力用のスピーカを有し、音声を出力してもよい。
【0024】
実行部170は、携帯端末100の動作を制御する。実行部170は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、入力部110からのユーザの指示を取得して、当該指示に応じたアプリケーションソフトウェアを実行する。実行部170は、予め定められたタイミング等において、携帯端末100のプログラム等を実行してもよい。実行部170は、例えば、携帯端末100の起動時にOSの実行を開始する。
【0025】
また、実行部170は、実行すべきソフトウェアの情報等を、記憶部120から読み出す。実行部170は、ソフトウェアの中間データおよび実行結果等を記憶部120に記憶してもよい。実行部170は、実行すべきソフトウェアの情報等を、通信部130を介して取得してもよい。また、実行部170は、ソフトウェアの実行に伴う情報等を表示部140に表示する。また、実行部170は、ソフトウェアの実行に伴う音声データを第1信号発生部150に供給して、内部または外部のスピーカ等から音声を発生させる。
【0026】
以上の携帯端末100は、ユーザの操作に応じて、ゲームの実行、動画再生、音声再生、web情報のブラウジング等を実行できる。ユーザは、このような携帯端末100を必要に応じて、または、娯楽として、適切な時間だけ使用することが望ましい。しかしながら、ストレス等を抱えたユーザは、逃避の手段等として当該携帯端末100を使用することがある。この場合、ストレス等の度合いに応じて、逃避時間が継続し、ゲーム依存、ギャンブル依存、および携帯端末100そのものへの依存といった、携帯端末100を終始操作して情報に依存する行為に及ぶことがある。
【0027】
そこで、本実施形態に係る携帯端末100は、第2信号発生部210、スピーカ部220、およびタイミング制御部230を備えることで、このようなユーザの情報依存を軽減させる。
【0028】
第2信号発生部210は、可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波信号を発生する。第2信号発生部210は、例えば、20kHz程度よりも高い周波数の帯域の高周波信号を発生する。第2信号発生部210は、例えば、記憶部120に記憶された高周波音のデータを読み出し、高周波音のデータに応じた高周波信号を発生する。第2信号発生部210は、生成した電気信号の高周波信号をスピーカ部220に供給する。
【0029】
スピーカ部220は、第2信号発生部210から受け取った高周波信号を対応する高周波音に変換する。スピーカ部220は、携帯端末100を使用しているユーザに近接するように設けられることが望ましい。即ち、スピーカ部220は、高周波音がユーザの体の少なくとも一部を介して当該ユーザの脳へと伝わる程度の範囲に設けられることが好ましい。スピーカ部220は、携帯端末100の表面、裏面、および側面等の外部を向く面に設けられることが望ましい。スピーカ部220は、例えば、圧電型のアクチュエータである。
【0030】
タイミング制御部230は、第2信号発生部210が高周波信号を発生するタイミングを制御する。即ち、タイミング制御部230は、携帯端末100が高周波音を出力するタイミングを制御する。タイミング制御部230は、第1信号発生部150が可聴帯域の周波数信号を発生するタイミングとは相関のないタイミングで、高周波信号の発生タイミングを制御する。即ち、タイミング制御部230は、出力部160から可聴音を出力するタイミングとは無関係に、携帯端末100から高周波音を出力させるように第2信号発生部210を制御する。
【0031】
なお、タイミング制御部230は、実行部170がアプリケーションソフトウェアを実行している状態等の情報を、当該実行部170から取得してよい。また、実行部170として機能するCPUがタイミング制御部230を構成してもよく、実行部170として機能するCPUと異なるCPU又は電気回路がタイミング制御部230を構成してもよい。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る携帯端末100は、ユーザが実行するアプリケーションソフトウェアによって発生させる音声信号および音声とは異なるタイミングで、高周波音をユーザに印加する。例えば、タイミング制御部230は、当該携帯端末100の電源がオンの状態において、第2信号発生部210から高周波信号を発生させるように第2信号発生部210を制御する。このように、携帯端末100は、ユーザが携帯端末100の使用中に高周波音を印加し続ける。
【0033】
可聴周波数帯域を超える周波数帯域の音は、人間が直接聞くことはできないが、脳に伝播すると報酬系神経回路の脳血流を増大させて緊張を和らげ、人間をリラックスさせる効果(ハイパーソニック効果)を有することが知られている。したがって、ユーザが何らかの緊張状態およびストレスが蓄積している状態において携帯端末100を操作した場合であっても、当該携帯端末100は、ユーザの緊張を和らげてリラックスさせることができる。携帯端末100は、ユーザが当該携帯端末100を使用する毎に高周波音を印加するので、ユーザが日々生活している過程で緊張を和らげ、心身の状態を向上させることができる。
【0034】
ここで、人間は、高周波音を体表面から受け取ると考えられている。本実施形態に係る携帯端末100は、高周波音を出力するスピーカ部220を表面、裏面、および側面等の少なくともいずれかの面に有しており、ユーザの体表面へと高周波音を出力する。これにより、ユーザが携帯端末100を手で保持する状態、およびポケット等に入れた状態にすると、携帯端末100は、当該ユーザの体内へと高周波音を伝播させることができる。また、高周波音は、人間の鼓膜を介して脳に伝播する音ではないので、ユーザがイヤホン等を用いて音楽を聴いていても、携帯端末100は、ハイパーソニック効果を当該ユーザに与えることができる。
【0035】
なお、ユーザの心身の状態は、日常生活に支障がない程度の比較的軽いストレス等を感じている状態もあれば、医療機関等で治療が必要なほどの強いストレス等を感じている状態もある。人間が強いストレス等を感じている場合、携帯端末を必要以上に長い時間操作してしまうことがある。例えば、趣味がゲームではないユーザが、ストレスを感じるとゲームで長時間過ごしてしまう等の、依存行為に発展することもある。
【0036】
また、ユーザの脳のなかで快感を発生させる報酬系神経回路を興奮させるさまざまな物質や情報による刺激、たとえばアルコール、薬物、ゲーム、スマートフォン、ギャンブルなどに対して高度に依存して、日常生活に支障を来すようになることもある。報酬系神経回路は、不快感や苦痛を発生する懲罰系神経回路よりも強力に行動を制御するため、法的あるいは社会的罰則によって依存症を治療することは極めて困難である。特に最近では、インターネットや携帯端末の普及により、携帯端末を終始操作して得られる情報等に依存する行為が、ネット依存、ゲーム依存、スマートフォン依存といった新たな社会問題にまで発展している。
【0037】
このような依存行為を回避する治療法のひとつに、「置換治療」という手法がある。置換治療は、一般的に、身体的に害のある依存行為と比較して、より害の少ない化学物質等を投与することによって、依存症の原因となる報酬系神経回路の活性化を代替したうえで、徐々に投与量を減少させて快方に向かわせる治療法である。このような置換治療は、アルコール依存、たばこ依存、および薬物依存等の依存行為に有効性が認められている。本実施形態に係る携帯端末100は、このような置換治療に用いられる化学物質等と比較して、より害のない情報である高周波音をユーザに印加するものであるから、投与によって生じるリスクを低減させて用いることができる。また、高周波音はユーザの年齢等とは無関係に印加することができるので、例えば、未成年者の情報依存等にもこのようなハイパーソニック効果を用いて、報酬系神経回路の活性化を代替することができる。
【0038】
<高周波音の発生タイミングを制御する例>
なお、ユーザの種々の状態に対応すべく、携帯端末100は、高周波信号の発生タイミングをユーザの状態に応じて調節できることが望ましい。携帯端末100は、例えば、ユーザの種々の状態を、ユーザが実行しているアプリケーションの状態に基づいて判断できる。そこで、タイミング制御部230は、実行部170がアプリケーションソフトウェアを実行している状態に基づき、高周波信号の発生タイミングを制御する。
【0039】
例えば、タイミング制御部230は、実行部170がアプリケーションソフトウェアを継続して実行している時間に基づき、高周波信号の発生タイミングを制御する。タイミング制御部230は、一例として、ユーザがアプリケーションソフトウェアを継続している時間が閾値を超えたことに応じて、高周波信号の発生を停止する。
【0040】
これにより、ユーザがアプリケーションソフトウェアを実行すると、携帯端末100は、予め定められた時間が経過するまではユーザの緊張状態を緩和させる。そして、携帯端末100は、予め定められた時間が経過した後に高周波音の印加を停止し、ユーザは快適と感じる状態ではなくなるので、当該アプリケーションソフトウェアの実行の停止を促すことができる。したがって、携帯端末100は、例えば、ユーザのゲームおよびWEBブラウジングを長時間実行させる依存状態を緩和させることができる。また、ユーザの依存状態に応じて、閾値である継続時間を設定することにより、依存状態を継続的に緩和させる効果の度合いを調節できる。
【0041】
また、タイミング制御部230は、実行部170が実行中のアプリケーションソフトウェアの種別に基づいて、高周波信号の発生タイミングを制御するか否かを決定する。タイミング制御部230は、一例として、ユーザがゲームソフトウェアを実行していることに応じて、高周波信号の発生を停止する。これにより、ユーザがゲームソフトウェア以外のアプリケーションソフトウェアを実行すると、携帯端末100は、ユーザの緊張状態を緩和させる。そして、携帯端末100は、ユーザがゲームソフトウェアを実行すると高周波音の印加を停止し、ユーザは快適と感じる状態ではなくなるので、当該ゲームソフトウェアの実行の停止を促すことができる。
【0042】
<ネガティブ帯域>
なお、本実施形態に係る携帯端末100において、高周波音が20kHz程度の周波数よりも高い周波数帯域である例を説明した。このような高周波音は、人間にハイパーソニック効果を及ぼす帯域を含む一方、ハイパーソニック効果とは異なる効果を及ぼす帯域の成分も含まれる。例えば、略16kHzから略32kHzまでの周波数成分は、ハイパーソニック効果とは逆に、人間の基幹の活性を低減させることが知られている。本実施形態において、略16kHzから略32kHzまでの周波数帯域をネガティブ帯域とする。
【0043】
また、略32kHzから略40kHzまでの周波数成分は、ハイパーソニック効果とはほとんど無関係であることが知られている。また、略40kHz以上の周波数成分は、人間にハイパーソニック効果を及ぼす帯域であることが知られている。なお、ハイパーソニック効果を及ぼす帯域の上限の周波数は、未解明な部分ではあるが、略150kHzまたは略200kHz等が考えられる。
【0044】
以上のように、可聴帯域よりも高い周波数帯域の音であっても、ネガティブ帯域のようにハイパーソニック効果とは逆の効果を発生させることがある。そこで、本実施形態に係る携帯端末100は、このようなネガティブ帯域の音信号を除去するフィルタを更に有してもよい。例えば、第2信号発生部210は、高周波信号のうち予め定められた周波数帯域の周波数成分を通過させるフィルタ部を有し、フィルタ部を通過した周波数成分を高周波信号として出力する。この場合、フィルタ部が通過させる周波数成分は、略32kHzよりも高い周波数の成分である。フィルタ部は、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドリジェクションフィルタ等でよく、また、これらの組み合わせでもよい。
【0045】
以上の本実施形態に係る携帯端末100は、ハイパーソニック効果を発生させる高周波音をユーザに印加する例を説明したが、これに限定されることはない。携帯端末100は、ネガティブ帯域の高周波音をユーザに印加してもよい。このような携帯端末100について、次に説明する。
【0046】
<ネガティブ帯域の高周波音の発生タイミングも制御する例>
図2は、本実施形態に係る携帯端末100の第1変形例を示す。第1変形例の携帯端末100は、ユーザに印加する高周波音の周波数帯域を切り換える。
図2に示す第1変形例の携帯端末100において、
図1に示された携帯端末100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第1変形例の携帯端末100は、第2信号発生部210がフィルタ部240と切換部250とを有する。
【0047】
フィルタ部240は、高周波信号のうち32kHz以下の周波数成分を通過させる第1フィルタ242を有する。即ち、第1フィルタ242は、ネガティブ帯域の高周波信号を通過させ、略32kHzよりも高い周波数の成分を低減させる。また、フィルタ部240は、高周波信号のうち32kHzを超える周波数成分を通過させる第2フィルタ244を有する。即ち、第2フィルタ244は、ネガティブ帯域の高周波信号を低減させ、略32kHzよりも高い周波数の成分を通過させる。第1フィルタ242および第2フィルタ244は、それぞれ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドリジェクションフィルタ等でよく、また、これらの組み合わせでもよい。
【0048】
切換部250は、第1フィルタ242および第2フィルタ244のいずれか一方のフィルタを、フィルタ部240が用いるフィルタとして切り換える。即ち、切換部250が第1フィルタ242に切り換えると、第2信号発生部210は、略32kHz以下の周波数帯域の高周波信号をスピーカ部220に供給する。また、切換部250が第2フィルタ244に切り換えると、第2信号発生部210は、略32kHzよりも高い周波数帯域の高周波信号をスピーカ部220に供給する。
【0049】
このようなフィルタ部240を有する第2信号発生部210に対して、タイミング制御部230は、第2信号発生部210が第1フィルタ242および第2フィルタ244のいずれを通過させるかを更に制御する。タイミング制御部230は、切換部250を制御して、フィルタ部240が用いるフィルタを第1フィルタ242および第2フィルタ244のいずれか一方に切り換える。
【0050】
例えば、タイミング制御部230は、ユーザがアプリケーションソフトウェアを継続している時間が閾値を超えたことに応じて、フィルタ部240のフィルタを第1フィルタ242に切り換える。これにより、ユーザがアプリケーションソフトウェアを実行すると、携帯端末100は、予め定められた時間が経過するまではユーザの緊張状態を緩和させる。そして、携帯端末100は、予め定められた時間が経過した後にネガティブ帯域の高周波音を印加するので、ユーザは快適と感じる状態ではなくなり、当該アプリケーションソフトウェアの実行の停止を促すことができる。
【0051】
したがって、携帯端末100は、例えば、ユーザのゲームおよびWEBブラウジングを長時間実行させる依存状態を緩和させることができる。なお、携帯端末100によるネガティブ帯域の印加は、人間の基幹の活性を低減させるので、依存状態が比較的軽いユーザに用いることが望ましい。また、ユーザの依存状態に応じて、閾値である継続時間を設定することが望ましい。これに加えて、携帯端末100は、閾値が2つ設けられ、1つ目の閾値の時間が経過した後に高周波音の印加を停止し、2つ目の閾値の時間が経過した後にネガティブ帯域の高周波音をユーザに印加してもよい。
【0052】
また、タイミング制御部230は、ユーザがゲームソフトウェアを実行していることに応じて、ネガティブ帯域の高周波信号を発生させてもよい。これにより、ユーザがゲームソフトウェア以外のアプリケーションソフトウェアを実行すると、携帯端末100は、ユーザの緊張状態を緩和させる。そして、携帯端末100は、ユーザがゲームソフトウェアを実行するとネガティブ帯域の高周波音を印加するので、ユーザは快適と感じる状態ではなくなり、当該ゲームソフトウェアの実行の停止を促すことができる。
【0053】
以上の本実施形態に係る携帯端末100は、少なくとも、略32kHzよりも高い周波数帯域の高周波音をユーザに印加するタイミングを制御する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、フィルタ部240が第1フィルタ242だけを有し、携帯端末100は、ネガティブ帯域の高周波音をユーザに印加するか否かのタイミングを制御してもよい。
【0054】
以上の本実施形態に係る携帯端末100は、当該携帯端末100の電源がオンの状態において、可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波音をユーザに印加する例を説明したが、これに限定されることはない。高周波音は、人間の体の少なくとも一部を介して脳へと伝わるので、携帯端末100は、ユーザに近接することが望ましい。また、携帯端末100のスピーカ部220がユーザに接することがより望ましい。そこで、携帯端末100は、当該携帯端末100がユーザに近接したことに応じて、可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波音をユーザに印加してもよい。このような携帯端末100について次に説明する。
【0055】
<スピーカ部220がユーザに近接した場合に高周波音の発生タイミングを制御する例>
図3は、本実施形態に係る携帯端末100の第2変形例を示す。第2変形例の携帯端末100は、スピーカ部220がユーザに近接したか否かを検出し、検出結果に応じて高周波音の発生タイミングを切り換える。
図3に示す第2変形例の携帯端末100において、
図1に示された携帯端末100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2変形例の携帯端末100は、検出部260を更に有する。
【0056】
検出部260は、スピーカ部220にユーザが近接しているか否かを検出する。検出部260は、例えば、携帯端末100がユーザに保持されているか否かを検出した場合に、ユーザが近接していることを検出する。なお、スピーカ部220は、携帯端末100をユーザが保持した場合に、ユーザの手に近接するか、または接するような位置に設けられることが望ましい。
【0057】
また、検出部260は、ゲームソフトウェア、ブラウザ等の予め定められたソフトウェアが実行された場合に、ユーザが近接していると判断してもよい。また、検出部260は、携帯端末100の移動、および温度上昇等が検出された場合に、ユーザが近接していると判断してもよい。検出部260は、実行部170からアプリケーションソフトウェアの実行状況を取得してよく、また、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS、温度センサ等を有してよい。検出部260は、検出結果をタイミング制御部230に供給する。
【0058】
タイミング制御部230は、検出部260の検出結果に応じて、高周波信号の発生タイミングを制御する。タイミング制御部230は、例えば、スピーカ部220およびユーザが近接している検出結果を受け取ったことに応じて、第2信号発生部210から高周波信号を発生させるように第2信号発生部210を制御する。また、タイミング制御部230は、スピーカ部220およびユーザが近接している検出結果を受け取ったことを条件に、略32kHzよりも高い周波数帯域の高周波信号およびネガティブ帯域の高周波信号等の発生タイミングを制御してもよい。
【0059】
以上の第2変形例の携帯端末100は、スピーカ部220およびユーザが離間して高周波音がユーザの体内に伝播できる可能性が低い場合、当該高周波音を発生しない。これにより、携帯端末100は、消費電力を低減させ、効率よくユーザの体内へと高周波音を伝播させることができる。
【0060】
以上の本実施形態に係る携帯端末100の少なくとも一部は、一例として、コンピュータ等である。コンピュータ等は、例えば、プログラム等を実行することにより、本実施形態に係る入力部110、記憶部120、通信部130、表示部140、第1信号発生部150、出力部160、実行部170、第2信号発生部210、スピーカ部220、タイミング制御部230等として機能する。
【0061】
コンピュータは、CPU等のプロセッサを備え、記憶部120に記憶されたプログラムを実行することによって、入力部110、通信部130、第1信号発生部150、出力部160、実行部170、第2信号発生部210、タイミング制御部230、フィルタ部240、切換部250、および検出部260の少なくとも一部として機能する。コンピュータは、GPU(Graphics Processing Unit)等を更に備えてもよい。なお、プログラムは、一例として、可聴帯域よりも高い周波数帯域の高周波信号に応じた高周波音に変換するスピーカ部220が設けられた携帯端末100にインストールされる。また、コンピュータは、このような携帯端末100に実装される。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0063】
100 携帯端末
110 入力部
120 記憶部
130 通信部
140 表示部
150 第1信号発生部
160 出力部
170 実行部
210 第2信号発生部
220 スピーカ部
230 タイミング制御部
240 フィルタ部
242 第1フィルタ
244 第2フィルタ
250 切換部
260 検出部