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特許7246787磁性シート、ホワイトボード、および磁性シートの製造方法
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  • 特許-磁性シート、ホワイトボード、および磁性シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】磁性シート、ホワイトボード、および磁性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20230320BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230320BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230320BHJP
   B43L 1/08 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B32B27/18 H
B32B27/30 Z
C09J7/38
B43L1/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022083299
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-10-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500304729
【氏名又は名称】大和化成商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】森本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】土居 理人
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-318018(JP,A)
【文献】特開平08-294873(JP,A)
【文献】特開平06-158083(JP,A)
【文献】特開2000-090433(JP,A)
【文献】特開2008-000839(JP,A)
【文献】特開2017-002212(JP,A)
【文献】米国特許第08257523(US,B1)
【文献】特開2008-056787(JP,A)
【文献】特開2008-251735(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2019-0003485(KR,A)
【文献】特開2019-071426(JP,A)
【文献】特開2016-111172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J7/00-7/50
B43L1/00-12/02
15/00-27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂により形成された第1基材フィルムと、
前記第1基材フィルムの一面に形成され、少なくとも磁性粉とバインダ樹脂とを含む磁性層とを備え、
前記磁性粉は鉄粉であり、
前記バインダ樹脂は、アクリル酸エステル共重合体であって、ガラス転移点が-5℃以下であり、
前記磁性粉とバインダ樹脂とを、磁性粉:バインダ樹脂=25:3となる重量比で含むことを特徴とする磁性シート。
【請求項2】
前記磁性層の塗工厚みは、10g~200g(dry)/m2である請求項1に記載の磁性シート。
【請求項3】
前記磁性層の前記第1基材フィルムとは反対側の面に形成され、再剥離可能な粘着層と、
前記粘着層の前記磁性層とは反対側の面に積層される剥離フィルムと、
を備える請求項1または請求項2に記載の磁性シート。
【請求項4】
前記第1基材フィルムの前記磁性層とは反対側の面に形成される第1離型剤層を備える請求項3に記載の磁性シート。
【請求項5】
前記第1離型剤層は、ポリエチレン系誘導体を離型剤として含有する請求項4に記載の磁性シート。
【請求項6】
前記磁性層の前第1記基材フィルムとは反対側の面に形成され、再剥離可能な粘着層と、
前記粘着層の前記磁性層とは反対側の面に積層される剥離フィルムと、
合成樹脂により形成された第2基材フィルムと、
前記第2基材フィルムの前記第1基材フィルム側の面に形成され、前記第2基材フィルムを前記第1基材フィルムの他面に貼着するための貼着層と、
前記第2基材フィルムの前記貼着層とは反対側の面に形成される第2離型剤層と、
を備える請求項1または請求項2に記載の磁性シート。
【請求項7】
前記第2離型剤層は、ポリエチレン系誘導体を離型剤として含有する請求項6に記載の磁性シート。
【請求項8】
請求項4に記載の磁性シートを備え、前記第1離型剤層を筆記層として用いることを特徴とするホワイトボード。
【請求項9】
請求項6に記載の磁性シートを備え、前記第2離型剤層を筆記層として用いることを特徴とするホワイトボード。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の磁性シートの製造方法であって、
前記磁性粉および前記バインダ樹脂と溶剤とを混合してスラリーを生成するスラリー生成工程と、
前記スラリーを前記第1基材フィルムの前記一面に塗布する塗布工程と、
前記第1基材フィルムに塗布した前記スラリーを乾燥させて前記磁性層を形成する乾燥工程とを備え、
前記スラリー生成工程において、前記スラリーにスルフォ琥珀酸型の界面活性剤を分散補助剤として添加することを特徴とする磁性シートの製造方法。
【請求項11】
前記スラリーは、前記磁性粉、前記溶剤、前記バインダ樹脂、および前記分散補助剤を、磁性粉:溶剤:バインダ樹脂:分散補助剤=25:10:3:1となる重量比で含んでいる請求項10に記載の磁性シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載の磁性シートの製造方法であって、
前記磁性粉と前記バインダ樹脂と溶剤とを混合してスラリーを生成するスラリー生成工程と、
前記スラリーを前記第1基材フィルムの前記一面に塗布する塗布工程と、
前記第1基材フィルムに塗布した前記スラリーを乾燥させて前記磁性層を形成する乾燥工程とを備え、
前記スラリー生成工程において、前記スラリーに珪藻土を添加することを特徴とする磁性シートの製造方法。
【請求項13】
前記スラリーは、前記磁性粉、前記溶剤、前記バインダ樹脂、および前記珪藻土を、磁性粉:溶剤:バインダ樹脂:珪藻土=25:10:3:2となる重量比で含んでいる請求項12に記載の磁性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性シート、ホワイトボード、および磁性シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、合成樹脂により形成された基材フィルム上に、磁性粉とバインダ樹脂とを含む磁性層を積層した磁性シートが知られている。
【0003】
このような磁性シートの磁性層においてはバインダ樹脂内に磁性粉が分散しており、バインダ樹脂の種類によっては磁性層の脆性が高くなったり、磁性層と基材フィルムとの密着性が低くなったりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-31578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、磁性層の脆性が高かったり、磁性層と基材フィルムとの密着性が低かったりすると、磁性シートを屈曲させたときに磁性層が崩れたり、磁性層が基材フィルムから剥がれたりするおそれがあり、磁性シートの使用時、運搬時、および保管等における取り扱いが煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明においては、取り扱いを簡易にすることができる磁性シート、ホワイトボード、および磁性シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する磁性シート、ホワイトボード、および磁性シートの製造方法は、以下の特徴を有する。
【0008】
即ち、磁性シートは、合成樹脂により形成された第1基材フィルムと、前記第1基材フィルムの一面に形成され、少なくとも磁性粉とバインダ樹脂とを含む磁性層とを備え、前記バインダ樹脂は、ガラス転移点が-5℃以下である。
【0009】
これにより、磁性シートを容易に屈曲させることができ、磁性シートの使用、運搬、および保管等の取り扱いを簡易にすることができる。
【0010】
また、前記バインダ樹脂は、アクリル酸エステル共重合体である。
【0011】
これにより、磁性シートを屈曲した際に、磁性層が崩れたり、磁性層が第1基材フィルムから剥離したりすることを抑制できる。
【0012】
また、前記磁性層の前記第1基材フィルムとは反対側の面に形成され、再剥離可能な粘着層と、前記粘着層の前記磁性層とは反対側の面に積層される剥離フィルムと、を備える。
【0013】
これにより、剥離フィルムを粘着層から剥離することで、被接着面に粘着層を当接させて磁性シートを貼り付けることができる。また、被接着面から剥がした磁性シートを、再度被接着面に貼り付けて使用することができる。
【0014】
また、前記第1基材フィルムの前記磁性層とは反対側の面に形成される第1離型剤層を備える。
【0015】
これにより、磁性シートをホワイトボードとして用いることができ、ホワイトボードを任意の場所に容易に設置することができる。
【0016】
また、第1離型剤層は、ポリエチレン系誘導体を離型剤として含有する。
【0017】
これにより、第1離型剤層を塗工する際の調整が容易であり、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
また、前記磁性層の前第1記基材フィルムとは反対側の面に形成され、再剥離可能な粘着層と、前記粘着層の前記磁性層とは反対側の面に積層される剥離フィルムと、合成樹脂により形成された第2基材フィルムと、前記第2基材フィルムの前記第1基材フィルム側の面に形成され、前記第2基材フィルムを前記第1基材フィルムの他面に貼着するための貼着層と、前記第2基材フィルムの前記貼着層とは反対側の面に形成される第2離型剤層と、を備える。
【0019】
これにより、磁性シートをホワイトボードとして用いることができ、ホワイトボードを任意の箇所に設置することができる。また、磁性シートの耐久性を向上することができる。
【0020】
また、前記第2離型剤層は、ポリエチレン系誘導体を離型剤として含有する。
【0021】
これにより、第2離型剤層を塗工する際の調整が容易であり、生産性の向上を図ることができる。
【0022】
また、ホワイトボードは、請求項4に記載の磁性シートを備え、前記第1離型剤層を筆記層として用いる。
【0023】
これにより、ホワイトボードを任意の場所に容易に設置することができる。
【0024】
また、ホワイトボードは、請求項6に記載の磁性シートを備え、前記第2離型剤層を筆記層として用いる。
【0025】
これにより、ホワイトボードを任意の場所に容易に設置することができる。
【0026】
また、請求項1または請求項2に記載の磁性シートの製造方法であって、前記磁性粉および前記バインダ樹脂と溶剤とを混合してスラリーを生成するスラリー生成工程と、前記スラリーを前記第1基材フィルムの前記一面に塗布する塗布工程と、前記第1基材フィルムに塗布した前記スラリーを乾燥させて前記磁性層を形成する乾燥工程とを備え、前記スラリー生成工程において、前記スラリーにスルフォ琥珀酸型の界面活性剤を分散補助剤として添加する。
【0027】
これにより、磁性粉をスラリー内において安定的に分散させることができる。
【0028】
また、前記スラリーは、前記磁性粉、前記溶剤、前記バインダ樹脂、および前記分散補助剤を、磁性粉:溶剤:バインダ樹脂:分散補助剤=25:10:3:1となる重量比で含んでいる。
【0029】
これにより、特に磁性粉をスラリー内において安定的に分散させることができる。
【0030】
また、請求項1または請求項2に記載の磁性シートの製造方法であって、前記磁性粉と前記バインダ樹脂と溶剤とを混合してスラリーを生成するスラリー生成工程と、前記スラリーを前記第1基材フィルムの前記一面に塗布する塗布工程と、前記第1基材フィルムに塗布した前記スラリーを乾燥させて前記磁性層を形成する乾燥工程とを備え、前記スラリー生成工程において、前記スラリーに珪藻土を添加する。
【0031】
これにより、磁性粉をスラリー内において均一に分散させることが容易となる。
【0032】
また、前記スラリーは、前記磁性粉、前記溶剤、前記バインダ樹脂、および前記珪藻土を、磁性粉:溶剤:バインダ樹脂:珪藻土=25:10:3:2となる重量比で含んでいる。
【0033】
これにより、特に磁性粉をスラリー内において均一に分散させることが容易となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、磁性シートの使用、運搬、および保管等の取り扱いを簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】磁性シートを示す側面断面図である。
図2】磁性シートを示す斜視図である。
図3】別実施形態に係る磁性シートを示す側面断面図である。
図4】磁性層を形成する際のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0037】
図1図2に示す磁性シート1は、本発明に係る磁性シートの一実施形態であり、第1基材フィルム11と、磁性層12と、粘着層13と、剥離フィルム14と、第1離型剤層15とを備えている。
【0038】
第1基材フィルム11は、合成樹脂により形成されている。第1基材フィルム11の厚みは特に限定されないが、10μm~200μmが好ましく、50μm~100μmがより好ましい。第1基材フィルム11を形成する合成樹脂としては、例えばPET(Polyethylene terephthalate)、ナイロン、およびポリイミド、ならびにPE(Polyethylene)およびOPP(Oriented Polypropylene)等のオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0039】
磁性層12は、第1基材フィルム11の一面11aに形成されている。磁性層12は、少なくとも磁性粉とバインダ樹脂とを含んでいる。磁性層12の厚みは特に限定されないが、例えば400μmの厚みに形成することができる。また、磁性層12の塗工厚みは、10g~200g(dry)/m2とすることができる。
【0040】
磁性粉としては、例えば鉄粉を用いることができる。磁性粉を構成する鉄粉は、例えば粒径が3μm~100μm、平均粒径が62μm、見かけ比重が2.52g/m3のものを用いることができる。鉄粉の粒径は、3μm~30μmであればより好ましい。また、鉄粉の見かけ比重は、1.8~2.6g/m3であることが好ましい。磁性粉としては、ニッケル、コバルト、およびフェライト等を用いることも可能である。
【0041】
バインダ樹脂としては、ガラス転移点(Tg)が-5℃以下の合成樹脂を用いることができる。このように、バインダ樹脂として、ガラス転移点(Tg)が-5℃以下の低い値である樹脂を用いることで、例えば磁性シート1を室温で使用する際にバインダ樹脂が柔軟な状態となり、磁性シート1を容易に屈曲させることができるため、使用、運搬、および保管等の取り扱いが簡易となる。また、磁性シート1を屈曲させてもバインダ樹脂を含む磁性層12が崩れたり、第1基材フィルム11から剥離したりすることを抑制することが可能である。なお、磁性層12に含まれるバインダ樹脂のガラス転移点(Tg)は、-15℃以下であることがより好ましい。
【0042】
バインダ樹脂としては、例えばアルキルアクリル酸エステル共重合体等のアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル、およびポリエチレンイミンを用いることができる。この場合、アクリル酸エステルおよびその誘導体の共重合体であるアクリル酸エステル共重合体は、特に柔軟性および接着性に優れていることから、アクリル酸エステル共重合体をバインダ樹脂として用いることで、磁性シート1を容易に屈曲させることが可能になるとともに、磁性層12が第1基材フィルム11から剥離することを抑制可能となる。
【0043】
アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートからなるアクリル酸エステル共重合体を用いることができる。また、「アクリル酸エステル共重合体」における「アクリル酸」は、「メタアクリル酸」であってもよい。さらに、バインダ樹脂としてアクリル酸エステル共重合体を用いる場合は、ガラス転移点(Tg)の調整剤として、1部~5部といった少量のアクリル酸アミド、およびメタアクリル酸等を使用することもできる。
【0044】
粘着層13は、磁性層12の第1基材フィルム11とは反対側の面12aに形成されている。粘着層13の厚みは特に限定されないが、例えば20μmの厚みに形成することができる。
【0045】
磁性シート1は、粘着層13を屋内における壁面等の被接着面に当接させることにより、当該被接着面に貼り付けることが可能である。粘着層13は、一旦被接着面に貼り付けた後に、被接着面に粘着層13を残すことなく被接着面から剥がすことが可能に構成された、再剥離可能な粘着層である。
【0046】
粘着層13は、例えば粒子を含有する粘着剤によって構成されており、粒子の50重量%以上は粘着剤の厚みの80~120%の直径を有し、且つ粒子の含有量は、粘着剤100重量部に対して5重量部から30重量部である。
【0047】
粘着層13を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えばポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系、天然ゴム系、合成ゴム系、およびポリシリコン系の粘着剤を用いることが可能である。
【0048】
粘着層13を構成する粒子の材質は、特に限定されないが、プラスチック製のものや無機質のものを用いることができる。プラスチックとしては、例えばポリメタクリレート系、ポリエチレンメタクリレート系、ポリスチレン系、ポリスチレンアクリル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレンブタジエン系、ポリスチレンジビニルベンゼン系、ポリウレタン系、ポリベンゾグアナミン系、およびメラミン系のものを用いることができる。また、無機質としては、ガラス、シリカ(ケイ酸塩鉱物)、および炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0049】
但し、粘着層13は、被接着面に貼り付けた後に再剥離可能なものであれば、この構成に限定するものではない。
【0050】
剥離フィルム14は、粘着層13の磁性層12とは反対側の面13aに積層されている。剥離フィルム14の厚みは特に限定されないが、例えば50μmの厚みに形成することができる。
【0051】
剥離フィルム14としては、積層された粘着層13から剥離可能な素材であれば特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、およびアルキド樹脂等の剥離層を、PET(Polyethylene terephthalate)、紙、およびポリプロピレン等の基材に形成したフィルム、またはポリプロピレン等の剥離性のある基材単体にて形成されるフィルムを用いることができる。粘着層13に積層される剥離フィルム14は、磁性シート1を被接着面に貼り付ける際に剥離することで、粘着層13を露出させることができる。
【0052】
第1離型剤層15は、第1基材フィルム11における一面11aとは反対側の他面11bに形成されている。第1離型剤層15の厚みは特に限定されないが、例えば0.1μm~0.2μmの厚みに形成することができる。
【0053】
第1離型剤層15は、第1離型剤層15が形成された第1基材フィルム11の他面11bに対する、ホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記、ならびにホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記の消去を可能とする。
【0054】
第1離型剤層15を形成する離型剤としては、例えばポリエチレン系誘導体を用いることができる。具体的には、第1離型剤層15は、例えばエチレン/ビニルアルコール共重合物と、少なくとも8個以上の炭素数を有するアルキルイソシアネートとの反応生成物を主体とする離型剤により形成することができる。この場合、エチレン/ビニルアルコール共重合物は、例えば下記の式1に示される、エチレンの共重合割合が0.1~0.9であるエチレン/ビニルアルコール共重合物を用いることができる。
【0055】
【化1】
【0056】
第1離型剤層15を形成する離型剤であるポリエチレン系誘導体は、トルエン等の溶剤により希釈することが可能であるため、塗工する際の調整が容易であり、生産性の向上を図ることができる。
【0057】
第1離型剤層15を形成する離型剤としては、オイル/シリコーン系の離型剤、およびフッ素系の離型剤を用いることも可能である。オイル/シリコーン系の離型剤は、液状であるため広範囲に塗布することができ、安価である。
【0058】
但し、シリコーン系の剥離剤は150℃前後での高温焼き付けが必要であり、焼き付け温度が不足した場合には相手側に移行するおそれがある。従って、第1基材フィルム11が、第1離型剤層15としてシリコーン系の剥離剤を用いる場合に必要となる耐熱性を有していない場合には、低温で加工可能な素材を第1離型剤層15として用いることが好ましい。シリコーン系の剥離剤よりも低温で加工可能な素材としては、例えば長鎖アルキルペンダントポリマーを用いることができる。長鎖アルキルペンダントポリマーは、40℃~80℃での加工が可能である。
【0059】
このように構成される磁性シート1は、剥離フィルム14を粘着層13から剥離することで、例えば屋内の壁面における壁紙の表面等に粘着層13を当接させて貼り付けることができる。つまり、壁面の壁紙等を磁性シート1の被接着面とすることができる。
【0060】
壁面等に貼り付けた磁性シート1は、第1離型剤層15を筆記層として用いることで、ホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記、ならびにホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記の消去が可能なホワイトボードとして用いることができる。また、磁性シート1は、壁面のみならず、粘着層13を貼り付け可能な箇所であれば、任意の箇所に貼り付けて使用することができるため、ホワイトボードを任意の場所に容易に設置することができる。
【0061】
この場合、壁紙に貼り付けられる粘着層13は、再剥離可能に構成されているため、磁性シート1を使用後に壁紙を痛めることなく壁面から剥がすことができる。さらに、壁面から剥がした磁性シート1は、再度壁面等の被接着面に貼り付けて使用することが可能である。また、磁性シート1は磁性層12を有しているため、壁面等の被接着面に貼り付けて使用する際に、磁性シート1に磁石を吸着させることが可能である。
【0062】
磁性シート1の磁性層12は、バインダ樹脂として、ガラス転移点(Tg)が-5℃以下の柔軟な合成樹脂を用いているため、磁性シート1を容易に屈曲させることができ、磁性シート1の使用、運搬、および保管等の取り扱いを簡易にすることが可能である。
【0063】
また、磁性シート1においては、バインダ樹脂として柔軟性および接着性に特に優れたアクリル酸エステル共重合体を用いることで、磁性シート1を屈曲した際に、磁性層12が崩れたり、磁性層12が第1基材フィルム11から剥離したりすることを抑制可能である。
【0064】
[磁性シートの別実施形態]
図3に示す磁性シート1Aは、第1基材フィルム11と、磁性層12と、粘着層13と、剥離フィルム14と、第2基材フィルム16と、貼着層17と、第2離型剤層18とを備えている。つまり、磁性シート1Aは、第1離型剤層15を備えていない点、および第2基材フィルム16と、貼着層17と、第2離型剤層18とを備えている点で、磁性シート1と異なっている。
【0065】
第2基材フィルム16は、合成樹脂により形成されている。第2基材フィルム16の厚みは特に限定されないが、20μm~50μmの厚みに形成することができる。第2基材フィルム16を形成する合成樹脂としては、例えばPET(Polyethylene terephthalate)、ナイロン、およびポリイミド、ならびにPE(Polyethylene)およびOPP(Oriented Polypropylene)等のオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0066】
貼着層17は、第2基材フィルム16の第1基材フィルム11側の面16aに形成されている。貼着層17の厚みは特に限定されないが、例えば20μmの厚みに形成することができる。第2基材フィルム16は、貼着層17によって第1基材フィルム11の他面11bに貼着されている。つまり、貼着層17は、第2基材フィルム16を第1基材フィルム11の他面11bに貼着している。
【0067】
貼着層17は、粘着層13と同様の粘着剤により構成することができる。つまり、貼着層17は、例えば粒子を含有する粘着剤であって、粒子の50重量%以上が粘着剤の厚みの80~120%の直径を有し、且つ粒子の含有量が粘着剤100重量部に対して5重量部から30重量部である粘着剤により構成することができる。この場合の粘着剤および粒子も、粘着層13の場合と同様のものを用いることができる。
【0068】
また、貼着層17は、粒子を含有しない粘着剤により構成することもできる。この場合の粘着層13を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えばポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系、天然ゴム系、合成ゴム系、およびポリシリコン系の粘着剤を用いることが可能である。
【0069】
但し、貼着層17は、第2基材フィルム16を第1基材フィルム11に貼着可能なものであれば、この構成に限定するものではない。
【0070】
第2離型剤層18は、第2基材フィルム16の貼着層17とは反対側の面16bに形成されている。第2基材フィルム16の面16bは、第1基材フィルム11側の面16aとは反対側の面である。第2離型剤層18の厚みは特に限定されないが、例えば0.1μm~0.2μmの厚みに形成することができる。
【0071】
第2離型剤層18は、第2離型剤層18が形成された第2基材フィルム16の面16bに対する、ホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記、ならびにホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記の消去を可能とする。
【0072】
第2離型剤層18は、第1離型剤層15と同様の離型剤により形成することができる。つまり、第2離型剤層18として、例えばポリエチレン系誘導体により構成される離型剤を用いることができる。具体的には、第2離型剤層18は、例えばエチレン/ビニルアルコール共重合物と、少なくとも8個以上の炭素数を有するアルキルイソシアネートとの反応生成物を主体とする離型剤により形成することができる。この場合、エチレン/ビニルアルコール共重合物は、例えば前記式1に示される、エチレンの共重合割合が0.1~0.9であるエチレン/ビニルアルコール共重合物を用いることができる。第2離型剤層18を形成する離型剤であるポリエチレン系誘導体は、トルエン等の溶剤により希釈することが可能であるため、塗工する際の調整が容易であり、生産性の向上を図ることができる。
【0073】
このように構成される磁性シート1Aは、磁性シート1の場合と同様に、剥離フィルム14を粘着層13から剥離することで、例えば屋内の壁面における壁紙の表面等に粘着層13を当接させて貼り付けることができる。
【0074】
壁面等の被接着面に貼り付けた磁性シート1Aは、磁性シート1の場合と同様に、第2離型剤層18を筆記層として用いることで、ホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記、ならびにホワイトボードマーカーおよび水性マーカーによる筆記の消去が可能なホワイトボードとして用いることができる。これにより、ホワイトボードを任意の場所に容易に設置することが可能となる。
【0075】
磁性シート1Aにおいては、磁性層12が形成された第1基材フィルム11に、第2離型剤層18が形成された第2基材フィルム16を貼着層17によって貼着しているため、磁性シート1Aの強度が全体的に向上しており、磁性シート1Aの耐久性を向上することが可能となっている。
【0076】
[磁性シートにおける磁性層の形成方法]
磁性シート1を製造する際の磁性層12の形成方法について説明する。図4に示すように、磁性層12を第1基材フィルム11の一面11aに形成する際には、スラリー生成工程S01と、塗布工程S02と、乾燥工程S03とを実施する。
【0077】
スラリー生成工程S01においては、磁性層12を構成する磁性粉およびバインダ樹脂と溶剤とを混合して分散機にて攪拌することにより、磁性粉を溶剤中に分散させてスラリーを生成する。この場合、溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、および低級アルコールを用いることができる。
【0078】
磁性粉を溶剤に分散させる場合、鉄等の磁性粉は比重が大きいため、単に磁性粉とバインダ樹脂と溶剤とを混合するだけでは、磁性粉をスラリー内において安定的に分散させることが困難である。
【0079】
従って、スラリー生成工程S01においては、スラリーに分散補助剤を添加することで、磁性粉をスラリー内において安定的に分散させるようにしている。分散補助剤としては、例えばアルキルスルフォ琥珀酸等のスルフォ琥珀酸型の界面活性剤を用いることができる。スルフォ琥珀酸型の界面活性剤としては、例えば下記の式2に示すジ-2-エチルヘキシル琥珀酸ナトリウムを用いることができる。
【0080】
【化2】
【0081】
また、磁性粉をスラリー内において安定的に分散させるための分散補助剤としては、例えば、ポリカルボン酸、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム液、ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジモニウムクロリド、およびステアラミドプロピルジメチルアミン、ならびにピリジン、ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、およびポリエチレンイミン等の各種アミン化合物を用いることもできる。
【0082】
また、鉄等の磁性粉は比重が大きいため、スラリー内において短時間で沈降して、スラリー内の下層部にハードケーキを生成し易い。従って、スラリー生成工程S01においては、比重が小さい珪藻土をスラリーに添加することで、磁性粉のスラリー内における沈降を抑制して、磁性粉をスラリー内において安定的に分散させることを可能としている。スラリーに添加する珪藻土としては、例えば粒径が5μm~30μmのものを用いることができる。
【0083】
この場合、スラリーにおいては、バインダ樹脂を介して磁性粉と珪藻土とが結合されることにより、磁性粉が沈降することを抑制でき、スラリー内において磁性粉を均一に分散させることが容易となる。これにより、スラリー内においてハードケーキが生成することを抑制可能となる。
【0084】
本実施形態においては、スラリー生成工程S01にて生成されるスラリーは、磁性粉、溶剤、バインダ樹脂、分散補助剤、および珪藻土を、磁性粉:溶剤:バインダ樹脂:分散補助剤:珪藻土=25:10:3:1:2となる重量比で含んでいる。スラリーは、分散補助剤をこのような比率で含むことにより、特に磁性粉をスラリー内において安定的に分散させることが可能となっている。また、スラリーは、珪藻土をこのような比率で含むことにより、特に磁性粉をスラリー内において均一に分散させることが容易となる。本実施形態においては、スラリーは、分散補助剤および珪藻土の両方を含んでいるが、分散補助剤および珪藻土のいずれか一方をスラリーに添加する構成とすることもできる。
【0085】
また、スラリー生成工程S01においてスラリーを生成するときに、ブチラール系樹脂を少量添加することで、分散している磁性粉が沈降するまでの時間を長くすることが可能となる。このように、磁性粉が沈降するまでの時間を長くすることで、磁性層12を形成する際の磁性粉の分散安定性を向上することができる。
【0086】
スラリー生成工程S01の後に、塗布工程S02を実施する。塗布工程S02においては、スラリー生成工程S01にて生成したスラリーを、第1基材フィルム11の一面11aに塗布する。この場合、スラリーは、第1基材フィルム11の一面11aに均一な厚さの塗膜が形成されるように塗布する。スラリーは、例えば、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、およびバーコーター等の塗工装置を用いて第1基材フィルム11の一面11aに塗工することができる。
【0087】
塗布工程S02の後に、乾燥工程S03を実施する。乾燥工程S03においては、第1基材フィルム11の一面11aに塗布されたスラリーを乾燥させて磁性層を形成する。スラリーの乾燥は、例えば、スラリーが塗布された第1基材フィルム11を加熱することにより行うことができる。この場合、スラリーが塗布された第1基材フィルム11の加熱温度は、例えば120℃程度以下に設定することができる。
【0088】
スラリーが塗布された第1基材フィルム11に対する加熱は、加熱炉、および熱風吹き付け等により行うことができる。第1基材フィルム11は、乾燥工程S03において加熱されるため、少なくとも乾燥工程S03における加熱温度において耐熱安定性を有することが求められる。
【0089】
なお、磁性シート1を製造する場合、スラリーを生成してから、第1基材フィルム11にスラリーを塗工して乾燥させるまでの間に要する時間は、6時間~12時間程度である。従って、スラリーに分散補助剤および珪藻土を添加して、磁性粉をスラリー内において安定的に分散させる場合、少なくともスラリーの生成から塗工、乾燥へ至るまでの間に要する時間だけ、磁性粉の安定的な分散を保持できればよい。
【0090】
また、スラリー生成工程S01において、スラリーに分散補助剤および珪藻土を添加した場合、スラリーを乾燥することにより形成された磁性層は、分散補助剤および珪藻土を含む。
【0091】
本実施形態では、磁性シート1における磁性層12の形成方法について説明したが、磁性シート1Aにおける磁性層12の形成方法についても同様である。
【符号の説明】
【0092】
1、1A 磁性シート
11 第1基材フィルム
11a 一面
11b 他面
12 磁性層
12a (磁性層の第1基材フィルムとは反対側の)面
13 粘着層
13a (粘着層の磁性層とは反対側の)面
14 剥離フィルム
15 第1離型剤層
16 第2基材フィルム
16a (第2基材フィルムの第1基材フィルム側の)面
16b (第2基材フィルムの貼着層とは反対側の)面
17 貼着層
18 第2離型剤層
S01 スラリー生成工程
S02 塗布工程
S03 乾燥工程
【要約】
【課題】取り扱いを簡易にすることができる磁性シートを提供する。
【解決手段】磁性シート1は、合成樹脂により形成された第1基材フィルム11と、第1基材フィルム11の一面11aに形成され、少なくとも磁性粉とバインダ樹脂とを含む磁性層12と、磁性層12の第1基材フィルム11とは反対側の面12aに形成され、再剥離可能な粘着層13と、粘着層13の磁性層12とは反対側の面13aに積層される剥離フィルム14とを備え、バインダ樹脂は、ガラス転移点が-5℃以下である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4