(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】舟艇競技用システム
(51)【国際特許分類】
B63B 22/18 20060101AFI20230320BHJP
A63C 19/06 20060101ALI20230320BHJP
A63K 3/02 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B63B22/18
A63C19/06 A
A63K3/02
(21)【出願番号】P 2022200651
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022103072
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512152754
【氏名又は名称】有限会社トータスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 燿平
(72)【発明者】
【氏名】亀井 誠
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特許第4222170(JP,B2)
【文献】特許第6084323(JP,B1)
【文献】特開2017-086546(JP,A)
【文献】特表2015-527915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 22/18
A63C 19/06
A63K 3/00
A63B 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中または水面上に浮設されるコースワイヤを含む浮設ワイヤと、
水面上に浮上し第一係合部を持つフロートと、
該フロートから浮力を受け、前記浮設ワイヤが接続される浮設ワイヤ用接続部と、第二係合部とを持つフロート側連結具と、
水底に沈設されるウェイトと、
該ウェイトに接続され、第三係合部を持つウェイト側連結具と、
水上から、該第一係合部、該第二係合部、該第三係合部の順に係合し、水上から、弛張させることにより、前記浮設ワイヤの張力を調整する調整ワイヤと、
隣接する前記コースワイヤの間にステイクボートを配設するステイクボート保持具と、
スタート信号を発生させるスタート信号発生手段と、
前記ステイクボート上に配設され、前記スタート信号を受信したときにスタート信号を表示する表示器と、
前記スタート信号発生手段及び前記表示器の間で前記スタート信号を伝達する信号線と、
を有し、
前記ステイクボート保持具は、前記ステイクボートが配設される位置をコースの長さ方向両側から挟むようにそれぞれ配設された1組のステイクボート位置決め手段とそれぞれの前記ステイクボート位置決め手段の前記コース幅方向中央付近を結ぶステイクボート固定ワイヤとをもち、
前記ステイクボート位置決め手段は、隣接する前記コースワイヤの間を緩み無く架設する第1架設ワイヤと、前記第1架設ワイヤが前記コースワイヤに接続される部位間を結び且つ前記
第1架設ワイヤよりも長い第2架設ワイヤとをもち、前記ステイクボート固定ワイヤの長さは、前記第2架設ワイヤの緩みが無くなるように設定され、
前記浮設ワイヤは、質量基準で70%以上が樹脂材料から構成され、
前記信号線の少なくとも一部は前記浮設ワイヤに沿うように配設される、
舟艇競技用システム。
【請求項2】
水中または水面上に浮設されるコースワイヤを含む浮設ワイヤと、
水面上に浮上し第一係合部を持つフロートと、
該フロートから浮力を受け、前記浮設ワイヤが接続される浮設ワイヤ用接続部と、第二係合部とを持つフロート側連結具と、
水底に沈設されるウェイトと、
該ウェイトに接続され、第三係合部を持つウェイト側連結具と、
水上から、該第一係合部、該第二係合部、該第三係合部の順に係合し、水上から、弛張させることにより、前記浮設ワイヤの張力を調整する調整ワイヤと、
隣接する前記コースワイヤの間にステイクボートを配設するステイクボート保持具と、
を有し、
前記ステイクボート保持具は、前記ステイクボートが配設される位置をコースの長さ方向両側から挟むようにそれぞれ配設された1組のステイクボート位置決め手段とそれぞれの前記ステイクボート位置決め手段の前記コース幅方向中央付近を結ぶステイクボート固定ワイヤとをもち、
前記ステイクボート位置決め手段は、隣接する前記コースワイヤの間を緩み無く架設する第1架設ワイヤと、前記第1架設ワイヤが前記コースワイヤに接続される部位間を結び且つ前記
第1架設ワイヤよりも長い第2架設ワイヤとをもち、前記ステイクボート固定ワイヤの長さは、前記第2架設ワイヤの緩みが無くなるように設定される、
舟艇競技用システム。
【請求項3】
前記調整ワイヤは、前記第三係合部にて折り返されて係合されており、前記調整ワイヤの折り返しの長さを調整することで前記浮設ワイヤの張力を調整する請求項2に記載の舟艇競技用システム。
【請求項4】
少なくとも一端部に浮設体が接続され、水上に配置されるコースワイヤを含む浮設ワイヤと、
前記浮設体に設けられた定滑車と、水底に固定される固定具と、前記定滑車に巻き掛けられており一端側に前記固定具が連結され他端側に調整ウェイトが連結された調整ワイヤと、前記調整ウェイトを接続し且つ前記調整ワイヤにおける前記固定具と前記定滑車との間の一端側部分に移動可能に係止された可動部とを備える高さ調整装置と、
隣接する前記コースワイヤの間にステイクボートを配設するステイクボート保持具と、
を有し、
前記ステイクボート保持具は、前記ステイクボートが配設される位置をコースの長さ方向両側から挟むようにそれぞれ配設された1組のステイクボート位置決め手段とそれぞれの前記ステイクボート位置決め手段の前記コース幅方向中央付近を結ぶステイクボート固定ワイヤとをもち、
前記ステイクボート位置決め手段は、隣接する前記コースワイヤの間を緩み無く架設する第1架設ワイヤと、前記第1架設ワイヤが前記コースワイヤに接続される部位間を結び且つ前記
第1架設ワイヤよりも長い第2架設ワイヤとをもち、前記ステイクボート固定ワイヤの長さは、前記第2架設ワイヤの緩みが無くなるように設定される、
舟艇競技用システム。
【請求項5】
水中または水面上に浮設される浮設ワイヤと、
水面上に浮上し第一係合部を持つフロートと、
該フロートから浮力を受け、前記浮設ワイヤが接続される浮設ワイヤ用接続部と、第二係合部とを持つフロート側連結具と、
水底に沈設されるウェイトと、
該ウェイトに接続され、第三係合部を持つウェイト側連結具と、
水上から、該第一係合部、該第二係合部、該第三係合部の順に係合し、水上から、弛張させることにより、前記浮設ワイヤの張力を調整する調整ワイヤと、
スタート信号を発生させるスタート信号発生手段と、
前記水上に配設され、前記スタート信号を受信したときにスタート信号を表示する表示器と、
前記スタート信号発生手段及び前記表示器の間で前記スタート信号を伝達する信号線と、
を有し、
前記浮設ワイヤは、質量基準で70%以上が樹脂材料から構成され、
前記信号線の少なくとも一部は前記浮設ワイヤに沿うように配設される舟艇競技用システム。
【請求項6】
前記調整ワイヤは、前記第三係合部にて折り返されて係合されており、前記調整ワイヤの折り返しの長さを調整することで前記浮設ワイヤの張力を調整する請求項5に記載の舟艇競技用システム。
【請求項7】
少なくとも一端部に浮設体が接続され、水上に配置される浮設ワイヤと、
前記浮設体に設けられた定滑車と、水底に固定される固定具と、前記定滑車に巻き掛けられており一端側に前記固定具が連結され他端側に調整ウェイトが連結された調整ワイヤと、前記調整ウェイトを接続し且つ前記調整ワイヤにおける前記固定具と前記定滑車との間の一端側部分に移動可能に係止された可動部とを備える高さ調整装置と、
スタート信号を発生させるスタート信号発生手段と、
前記水上に配設され、前記スタート信号を受信したときにスタート信号を表示する表示器と、
前記スタート信号発生手段及び前記表示器の間で前記スタート信号を伝達する信号線と、
を有し、
前記浮設ワイヤは、質量基準で70%以上が樹脂材料から構成され、
前記信号線の少なくとも一部は前記浮設ワイヤに沿うように配設される舟艇競技用システム。
【請求項8】
前記表示器は、ステイクボート上に配置される請求項5~7のうちの何れか1項に記載の舟艇競技用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舟艇競技用システムに関し、詳しくはボート、カヌーなどの舟艇を用いて行う舟艇競技のコース区画などに用いられる浮設ワイヤ、その浮設ワイヤの張力を調整する浮設ワイヤ調整装置及びスタート装置を有する舟艇競技用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボート、カヌーなどの舟艇競技などのコースは、海、湖、河川などに複数本並列に配置される。舟艇競技におけるスタート合図として、主にスターターのピストル合図によりスタート信号を発生するスタート信号発生手段と、そのスタート信号発生手段から発生されたスタート信号が伝達されたときに信号が点滅する表示器とを有する。その結果、スタート音が鳴ると共に表示器に信号が表示されて発艇するというスタート方式が取られている。
【0003】
現在のボート競技において表示器を配置する位置は全コース中央に設置してある水上の発艇台から前方3方向に向けて配置する場合や、陸上に配置する場合の2つのパターンが主に採用されている。
【0004】
全国大会等の競技は基本的に5レーン及び6レーン(1レーンの幅は12m以上となっている)で開催されており、また設置位置的にはレーン中央の発艇台の設置基準はスタート後方40m~50mに設置と規則で明記されている。この場合、発艇台をコース中心に設置した場合、コースが中心に位置するボートでは信号に向けて真っ直ぐに確認できるのに対して、コースが両端に位置するボートでは信号を斜めに見るような形になる。そのため真っ直ぐに確認できる場合と斜めから確認する場合との間で視準による不公平さが生まれる。
【0005】
通常スタートは各コース中心に設置されたステイクボート(ステッキボート)の発艇補助台上のウォーターマンが選手艇を持って、スタートの音声及び審判の手旗信号・緑の信号によりスタートする。そのためステイクボートは各コースの幅方向の中央に位置するように固定することが求められる。
【0006】
ステイクボートを固定するためには水底にアンカーを固定して行うことができるが、湖などの水深が深い場所では困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、ステイクボートの位置安定性に優れた舟艇競技用システムを提供することを解決すべき課題とする。また、信頼性が高い発艇装置をもつ舟艇競技用システムを提供することも解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決する本発明の舟艇競技用システムは、水中または水面上に浮設されるコースワイヤを含む浮設ワイヤと、
水面上に浮上し第一係合部を持つフロートと、
該フロートから浮力を受け、前記浮設ワイヤが接続される浮設ワイヤ用接続部と、第二係合部とを持つフロート側連結具と、
水底に沈設されるウェイトと、
該ウェイトに接続され、第三係合部を持つウェイト側連結具と、
水上から、該第一係合部、該第二係合部、該第三係合部の順に係合し、水上から、弛張させることにより、前記浮設ワイヤの張力を調整する調整ワイヤと、
隣接する前記コースワイヤの間にステイクボートを配設するステイクボート保持具と、
を有し、
前記ステイクボート保持具は、前記ステイクボートが配設される位置をコースの長さ方向両側から挟むようにそれぞれ配設された1組のステイクボート位置決め手段とそれぞれの前記ステイクボート位置決め手段の前記コース幅方向中央付近を結ぶステイクボート固定ワイヤとをもち、
前記ステイクボート位置決め手段は、隣接する前記コースワイヤの間を緩み無く架設する第1架設ワイヤと、前記第1架設ワイヤが前記コースワイヤに接続される部位間を結び且つ前記第1架設ワイヤよりも長い第2架設ワイヤとをもち、前記ステイクボート固定ワイヤの長さは、前記第2架設ワイヤの緩みが無くなるように設定される。
【0010】
(2)又、上記課題を解決する本発明の別の舟艇競技用システムは、少なくとも一端部に浮設体が接続され、水上に配置されるコースワイヤを含む浮設ワイヤと、
前記浮設体に設けられた定滑車と、水底に固定される固定具と、前記定滑車に巻き掛けられており一端側に前記固定具が連結され他端側に調整ウェイトが連結された調整ワイヤと、前記調整ウェイトを接続し且つ前記調整ワイヤにおける前記固定具と前記定滑車との間の一端側部分に移動可能に係止された可動部とを備える高さ調整装置と、
隣接する前記コースワイヤの間にステイクボートを配設するステイクボート保持具と、
を有し、
前記ステイクボート保持具は、前記ステイクボートが配設される位置をコースの長さ方向両側から挟むようにそれぞれ配設された1組のステイクボート位置決め手段とそれぞれの前記ステイクボート位置決め手段の前記コース幅方向中央付近を結ぶステイクボート固定ワイヤとをもち、
前記ステイクボート位置決め手段は、隣接する前記コースワイヤの間を緩み無く架設する第1架設ワイヤと、前記第1架設ワイヤが前記コースワイヤに接続される部位間を結び且つ前記第1架設ワイヤよりも長い第2架設ワイヤとをもち、前記ステイクボート固定ワイヤの長さは、前記第2架設ワイヤの緩みが無くなるように設定される。
【0011】
上述の(1)及び(2)は、双方共に、ステイクボートを固定するステイクボート固定ワイヤの両端をステイクボート位置決め手段で位置決めすることでコースの幅方向中央付近に確実に固定することができる。
【0012】
ステイクボート位置決め手段は、第1架設ワイヤと第2架設ワイヤとにより三角形を形成するため外力により変形がし難いためにステイクボート固定ワイヤの両端の位置の固定がし易くできる。
【0013】
ステイクボートは選手艇の長さに合わせて前後するがその場合にはステイクボート固定ワイヤに沿って動かすことができる。
【0014】
(3)上記課題を解決する本発明の舟艇競技用システムは、水中または水面上に浮設される浮設ワイヤと、水面上に浮上し第一係合部を持つフロートと、該フロートから浮力を受け、前記浮設ワイヤが接続される浮設ワイヤ用接続部と、第二係合部とを持つフロート側連結具と、水底に沈設されるウェイトと、該ウェイトに接続され、第三係合部を持つウェイト側連結具と、水上から、該第一係合部、該第二係合部、該第三係合部の順に係合し、水上から、弛張させることにより、前記浮設ワイヤを調整する調整ワイヤと、スタート信号を発生させるスタート信号発生手段と、前記水上に配設され、前記スタート信号を受信したときにスタート信号を表示する表示器と、前記スタート信号発生手段及び前記表示器の間で前記スタート信号を伝達する信号線とを有する。
【0015】
(4)又、上記課題を解決する本発明の別の舟艇競技用システムは、少なくとも一端部に浮設体が接続され、水上に配置される浮設ワイヤと、前記浮設体に設けられた定滑車と、水底に固定される固定具と、前記定滑車に巻き掛けられており一端側に前記固定具が連結され他端側に調整ウェイトが連結された調整ワイヤと、前記調整ウェイトを接続し且つ前記調整ワイヤにおける前記固定具と前記定滑車との間の一端側部分に移動可能に係止された可動部とを備える高さ調整装置と、スタート信号を発生させるスタート信号発生手段と、前記水上に配設され、前記スタート信号を受信したときにスタート信号を表示する表示器と、前記スタート信号発生手段及び前記表示器の間で前記スタート信号を伝達する信号線と、を有する。
【0016】
上述の(3)及び(4)は、双方共に、浮設ワイヤは、質量基準で70%以上が樹脂材料から構成され、且つ、スタート信号発生手段が発生させたスタート信号を伝達するための信号線について、その少なくとも一部が、前記浮設ワイヤに沿うように配設される。
【0017】
有線による信号線の接続は、その配設が困難である。具体的には、水上では競技に参加する舟艇が移動するため、水面近くに配線を配置することができず、舟艇の移動に影響が無い水底や水中に配設する。特に水底に配設すると配線に加わる張力が減じられるため配線の損傷が抑えられるなどの信頼性が向上するが、配線の配設は更に困難になる。また、ステイクボートは選手艇の長さに合わせて前後するため完全固定のもので設置することもできない。
【0018】
そのために本発明では、水中のコースワイヤを利用して信号線を添わせる方法を採用している。従来のコースワイヤは4mmのステンレスワイヤを使用している、ステンレスワイヤはそれ自体の自重が重いために各所にブイを付けないといけない。その上で信号線も配置すると、更にブイの数を増加させなくてはならない。しかしながら、ブイについては、ボート競技規則によりサイズと配置が定められている為沢山のブイを付けることが出来ない、又選手及び審判艇等の動力船の通行の妨げになる。
【0019】
本発明の舟艇競技用システムであればコースワイヤの大部分が樹脂材料から構成されるため、自重も軽く、ブイの数を増やさなくても十分に浮遊させることが可能であり、そのコースワイヤに信号線を沿わせることで確実に信号線を配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一実施形態の舟艇競技用システムによりダム湖に設置されたカヌー競技コースの模式図である。
【
図2】
図1(b)の始端側の浮設ワイヤ調整装置の拡大図である。
【
図3】調整ワイヤの余剰分引き取り後の同浮設ワイヤ調整装置の拡大図である。
【
図4】縦ワイヤ設置時の始点ウェイト投下工程を示す模式図である。
【
図5】縦ワイヤ設置時のワイヤ投下工程および終点ウェイト投下工程を示す模式図である。
【
図6】縦ワイヤ設置時の張力調整工程を示す模式図である。
【
図7】
図6の始端側の浮設ワイヤ調整装置の拡大図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態の舟艇競技用システムにより高さが調整されるボート又はカヌーの競技コースの平面図である。
【
図9】第2の実施形態の舟艇競技用システムの模式図である。
【
図10】第2の実施形態において、コースポールフロートの正面図である。
【
図11】第2の実施形態において、中間フロートの正面図である。
【
図12】第2の実施形態において、ダム湖の水位が高いときの舟艇競技用システムの模式図である。
【
図13】第2の実施形態の舟艇競技用システムの説明図である。
【
図15】第2の実施形態において、ダム湖の水位が低いときの舟艇競技用システムの模式図である。
【
図16】第2の実施形態において、ダム湖の水位の変動とコースワイヤーの位置との関係を示すための舟艇競技用システムの模式図である。
【
図17】第1の実施形態の変形態様を示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の舟艇競技用システムについて以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態の舟艇競技用システムは、ボート、カヌーなどの舟艇を用いて行う競技に用いるシステムである。舟艇の種類としては特に限定しない。具体的な競技としては、複数のコースワイヤを並列させて区画された複数のコースのそれぞれのコース内をそれぞれの舟艇が漕ぎ進む順位を競う競技である。本実施形態の舟艇競技用システムは、以下の(1)又は(2)の構成を有する。
【0022】
本実施形態の舟艇競技用システムは、浮設ワイヤと、フロートと、フロート側連結具と、ウェイトと、ウェイト側連結具と、調整ワイヤと、スタート信号発生手段と、表示器と、信号線と、その他必要に応じて採用される手段とを有する。
【0023】
(1)第一実施形態
本実施形態の舟艇競技用システムの構成について説明する。
図1に、本実施形態の舟艇競技用システムによりダム湖に設置されたボート又はカヌーを用いる舟艇競技コースの模式図を示す。(a)は上面図、(b)は(a)の中央コースの側面図である。(a)における図面上方がスタート側、下方がゴール側である。
【0024】
図に示すように、ダム湖には、合計八つのコース1が設置されている。各々のコース1は、合計十本の縦ワイヤ2により区画されている。縦ワイヤ2は、本発明(1)の浮設ワイヤに含まれる。縦ワイヤ2は質量の100%が樹脂製であり、採用された樹脂はポリエステルである。縦ワイヤ2は本発明の浮設ワイヤに含まれる。
【0025】
縦ワイヤ2の直径はφ4~6mm程度である。縦ワイヤ2の両端は、各々浮設ワイヤ調整装置3a、3bにより、引っ張られている。これら浮設ワイヤ調整装置3a、3bにより、縦ワイヤ2の張力が確保されている。縦ワイヤ2には、所定間隔ごとに樹脂製であって中空球状のワイヤフロート20が配置されている。ワイヤフロート20は、その浮力により、縦ワイヤ2から上方に延設された状態で浮かんでおり、縦ワイヤ2の位置を所定深度に調節することで水面とほぼ同じ高さに浮かんでいる。
【0026】
また、各々のコース幅を均等に保つため、各々の縦ワイヤ2同士は、横ワイヤ4により連結されている。横ワイヤ4は、縦ワイヤ2に対して、ほぼ垂直に配置されている。横ワイヤ4はポリエステル製である。横ワイヤ4の直径はφ4~6mm程度である。横ワイヤ4は、コース1の始点と中央点と終点とに、合計三本配置されている。縦ワイヤ2及び横ワイヤ4は、それぞれ個別にポリプロピレンなどポリエステル以外の樹脂から構成されていても良い。横ワイヤ4は本発明の浮設ワイヤに含まれる。横ワイヤ4の両端又は一端にも各々浮設ワイヤ調整装置3a、3bと同等の部材により、引っ張ることでコースの横方向の位置が安定できる。これは下記(2)の構成においても同じである。
【0027】
スタート側には、スタート信号を発生するスタート信号発生手段82aが設けられている発艇審判台82が水上に配設されている。そして、それぞれのコース毎にステイクボート5cが係留されている。ステイクボート5cは、選手艇の長さに応じて前後に移動可能である。スタート信号発生手段82aから発生されたスタート信号は、スタート信号発生手段82aに電気的に接続された信号線83を通じて表示器87に伝達される。表示器87はステイクボート5c上に配設される。信号線83は、縦ワイヤ2及び横ワイヤ4に沿って配設される。
図1では、便宜的に信号線83の位置は、見やすくするために縦ワイヤ2及び横ワイヤ4と離れた状態で記載しているが、実際には信号線83は縦ワイヤ2又は横ワイヤ4と一体的に配設されている。
【0028】
ステイクボート5cはステイクボート保持具により保持される。ステイクボート保持具はステイクボート位置決め手段(A~C)とステイクボート固定ワイヤDとからなる。ステイクボート5cはステイクボート固定ワイヤDにて固定される。ステイクボート5cとステイクボート固定ワイヤDとの間は相対移動可能になっている。ステイクボート位置決め手段(A~C)は第1架設ワイヤAと第2架設ワイヤ(B,C)とをもつ。第1架設ワイヤAは隣接する浮設ワイヤ2(コースワイヤに相当)間を緩み無く架設している。第2架設ワイヤと(B,C)は第1架設ワイヤAが浮設ワイヤ2に接続されている両端のそれぞれに接続され合わせて第1架設ワイヤAよりも長いワイヤである。このようなステイクボート位置決め手段(A~C)がステイクボート5cを挟んでコースの長さ方向両側に設けられている。ステイクボート固定ワイヤDはそれぞれの第2架設ワイヤ(B,C)を緩みが無いように接続する。第1架設ワイヤAと第2架設ワイヤ(B,C)は緩みが無い三角形を形成するため間に設けられたステイクボート固定ワイヤDの位置、延いてはステイクボート5cの位置が安定する。このステイクボート5cを固定する構成は下記(2)においても同じである。
【0029】
縦ワイヤ2及び横ワイヤ4は、樹脂から構成されているため、SUSなどの金属から構成される場合と比べて相対的に軽量であり、水上に浮遊させるために必要なフロートを金属から構成される場合と比べて小さくすることができる。そのため信号線83を沿わせることで質量が大きくなってもフロートに余裕を持たせることができる。
【0030】
図2に、
図1(b)の始端21側の浮設ワイヤ調整装置3aの拡大図を示す。なお、浮設ワイヤ調整装置3bの構成は、浮設ワイヤ調整装置3aの構成と同様である。したがって、浮設ワイヤ調整装置3bについては、説明を割愛する。図に示すように、浮設ワイヤ調整装置3aは、主に、フロート30aとフロート側連結具31aとウェイト32aとウェイト側連結具33aと調整ワイヤ34aと補助ウェイト35aとスペーサ36aとを備えている。
【0031】
フロート30aは、樹脂製であって中空球状を呈している。フロート30aには、上下方向に第一係合孔300aが穿設されている。第一係合孔300aは、本発明(1)の第一係合部に含まれる。
【0032】
フロート側連結具31aは、SUS製であってリング状を呈している。フロート30aとフロート側連結具31aとは、SUS製であって円柱状のスペーサ36aを介して接続されている。フロート側連結具31aには、SUS製の浮設ワイヤ用接続リング310aと、SUS製の補助ウェイト用接続リング311aとが係合されている。浮設ワイヤ用接続リング310aには、前記縦ワイヤ2の始端21が接続されている。浮設ワイヤ用接続リング310aは、本発明(1)の浮設ワイヤ用接続部に含まれる。また、フロート側連結具31aには、SUS製の第二係合リング312aが溶接されている。第二係合リング312aは、本発明(1)の第二係合部に含まれる。補助ウェイト35aは、補助ウェイト用接続リング311aに接続されている。補助ウェイト35aの質量は20~30kg程度である。
【0033】
ウェイト32aは、合計三つの軽量ウェイト320aからなる。各々の軽量ウェイト320aの質量は15~20kg程度である。ウェイト側連結具33aは、SUS製であってリング状を呈している。ウェイト側連結具33aは、本発明(1)の第三係合部に含まれる。ウェイト側連結具33aには、SUS製のウェイト用接続リング330aが係合されている。ウェイト用接続リング330aには、前記三つの軽量ウェイト320aがワイヤを介して接続されている。
【0034】
調整ワイヤ34aは樹脂製である。調整ワイヤ34aの直径はφ15~20mm程度である。調整ワイヤ34aの一端は、第一係合孔300aからフロート30a上方に突出している。調整ワイヤ34aの突出部分には、第一係合孔300aの孔径よりも大きい結び目(図略)が形成されている。この結び目により、突出部分がフロート30a内部に引き込まれるのを抑制している。調整ワイヤ34aの他端340aは、第一係合孔300aおよび第二係合リング312aを貫通し、ウェイト側連結具33aに固定されている。
【0035】
次に、本実施形態の浮設ワイヤ調整装置の水位低下時における動きについて説明する。水位がL1からL2に低下すると、水位低下分だけ調整ワイヤ34aが弛んでしまう。したがって、フロート側連結具31aを介して、調整ワイヤ34aと接続されている縦ワイヤ2も弛んでしまう。そこで、
図2中白抜き矢印で示すように、ボート5から調整ワイヤ34aの余剰分を引き取る。図に示すように、三つの軽量ウェイト320aは湖底に沈設されている。このため、三つの軽量ウェイト320aは不動である。したがって、調整ワイヤ34aの余剰分を引き取ると、図中白抜き矢印で示すように、フロート側連結具31aは、軽量ウェイト320aに近接する方向に引っ張られる。ここで、フロート側連結具31aには、縦ワイヤ2の始端21が接続されている。このため、縦ワイヤ2も、フロート側連結具31aとともに軽量ウェイト320aに近接する方向に引っ張られる。前出
図1に示すように、縦ワイヤ2の終端22側の浮設ワイヤ調整装置3bにおいても、同様の動作により縦ワイヤ2が引っ張られる。したがって、縦ワイヤ2は両端側から引っ張られることになる。
【0036】
図3に、調整ワイヤの余剰分引き取り後の浮設ワイヤ調整装置の拡大図を示す。図に示すように、第二係合リング312aとウェイト側連結具33aとの間の間隔は、前出
図2のD1からD2に狭まっている。狭まった分だけ、調整ワイヤ34aの余剰分が第一係合孔300aから上方へ引き取られている。また、調整ワイヤ34aが再度緩まないように、すなわち調整ワイヤ34aの余剰分が第一係合孔300a内に戻らないように、余剰分には第一係合孔300aの孔径よりも大きい結び目が形成されている。調整ワイヤ34aの余剰分が引き取られることにより、縦ワイヤ2に所望の張力が加えられている。
【0037】
次に、本実施形態の浮設ワイヤ設置方法により、縦ワイヤを設置する場合について説明する。浮設ワイヤ設置方法は、始点ウェイト投下工程とワイヤ投下工程と終点ウェイト投下工程と張力調整工程とを有している。始点ウェイト投下工程においては、
図4に示すように、浮設ワイヤ調整装置3aを構成する各部材を、人力によりボート5aから水中に投下する。三つの軽量ウェイト320aは、各々個別に水中に投下される。こうして、浮設ワイヤ調整装置3a全体が水中に配置される。ワイヤ投下工程においては、
図4、
図5に示すように、ウェイト32aを始点として、ボート5aを対岸まで移動させる。この際、縦ワイヤ2は、浮設ワイヤ調整装置3aに接続された始端21から順に、水中に投下される。投下された縦ワイヤ2は、ワイヤフロート20の浮力により水中を漂う。終点ウェイト投下工程においては、
図5に示すように、縦ワイヤ2の終端22に接続された浮設ワイヤ調整装置3bを構成する各部材を、人力によりボート5aから水中に投下する。三つの軽量ウェイト320bは、各々個別に水中に投下される。こうして、浮設ワイヤ調整装置3a、縦ワイヤ2、浮設ワイヤ調整装置3bの全てが水中に配置される。張力調整工程においては、
図6に示すように、ボート5bから人力により調整ワイヤ34aの余剰分を引き取る。
図7に、
図6の浮設ワイヤ調整装置3aの拡大図を示す。図に示すように、三つの軽量ウェイト320aは湖底に沈設されている。このため、三つの軽量ウェイト320aは不動である。したがって、調整ワイヤ34aの余剰分をボート5bから引き取ると、フロート側連結具31aは、軽量ウェイト320aに近接する方向に引っ張られる。ここで、フロート側連結具31aには、縦ワイヤ2の始端21が接続されている。このため、縦ワイヤ2も、フロート側連結具31aとともに軽量ウェイト320aに近接する方向に引っ張られる。前出
図6に示すように、縦ワイヤ2の終端22側の浮設ワイヤ調整装置3bにおいても、同様の動作によりボート5aから縦ワイヤ2が引っ張られる。したがって、縦ワイヤ2は両端側から引っ張られることになる。このようにして、縦ワイヤ2に所望の張力が加えられる。所望の張力が得られたら、調整ワイヤ34a、34bが緩まないように、各々の調整ワイヤ34a、34bの一端に、第一係合孔の孔径よりも大きい結び目を形成する。
【0038】
(2)第二実施形態
本実施形態の舟艇競技用システムは、
図8に示すように、ダム湖A90に設置された、ボート又はカヌーの競技コースのコースワイヤA21の高さを調整する高さ調整装置A1を備える。ダム湖A90には、合計3つのコースが設けられている。3つの各コースは、4本の互いに平行に配列するコースワイヤA21によりそれぞれ区画されている。各コースワイヤA21の長さは1100mである。コースワイヤA21は、本発明の浮設体であり、ポリエステルから構成される。各々のコース幅を均等に保つため、各々のコースワイヤA21同士は、横ワイヤA4により連結されている。横ワイヤA4は、コースワイヤA21に対して、ほぼ垂直に配置されている。それぞれのコースワイヤA21は、それぞれ同じ構成の高さ調整装置A1によりダム湖A90に設置されている。
【0039】
図8、
図9に示すように、スタート側(図面右側)には、スタート信号を発生するスタート信号発生手段A82aが設けられている発艇審判台A82が水上に配設されている。そして、それぞれのコース毎にステイクボートA5cが係留されている。ステイクボートA5cは、選手艇の長さに応じて前後に移動可能である。スタート信号発生手段A82aから発生されたスタート信号は、スタート信号発生手段A82aに電気的に接続された信号線A83を通じて表示器A87に伝達される。表示器A87は、ステイクボートA5c上に配設される。信号線83は、コースワイヤA21に沿って配設される。便宜的に信号線A83の位置は、見やすくするためにコースワイヤA21及び横ワイヤA4と離れた状態で記載しているが、実際には信号線83はコースワイヤA21又は横ワイヤA4と一体的に配設されている。
【0040】
コースワイヤA21は、樹脂から構成されているため、SUSなどの金属から構成される場合と比べて相対的に軽量であり、水上に浮遊させるために必要なフロートを金属から構成される場合と比べて小さくすることができる。そのため信号線A83を沿わせることで質量が大きくなってもフロートに余裕を持たせることができる。
【0041】
図8、
図9に示すように、コースワイヤA21の途中には、複数の樹脂製の中空球状の中間フロートA22が設けられている。各中間フロートA22は、中間ワイヤA23によりコースワイヤA21に所定間隔を隔てて連結されている。中間フロートA22は水面に浮き、コースワイヤA21は、中間ワイヤA23の長さ(2m)分だけ水面から下の水中に位置している。
【0042】
図8、
図9に示すように、コースワイヤA21の両端は、コースポールフロートA25が連結されている。コースポールフロートA25は、ウインチ付コースポールである。コースワイヤA21の両端に固定されたコースポールフロートA25には、それぞれ高さ調整装置1が設けられている。
【0043】
図10に示すように、コースポールフロートA25は、水中において上下方向に延在するポールA25aと、ポールA25aに対して直角方向(即ち水平方向)に延設されポールA25aの上側に固定されたブイ固定具A25bと、ブイ固定具A25bに固定された一対のブイA25f、A25fと、ウインチA25gとを有する。ウインチA25gは、ポールA25aの上端に固定されている。
【0044】
図11に示すように、コースワイヤA21の途中にはブランチハンガーA23aが設けられている。ブランチハンガーA23aは、ステンレス製のパイプA23cが固定されていて、パイプA23cには中間ワイヤA23が上下移動可能に挿通されている。中間ワイヤA23は、その下端に連結されている錘A23bにより水中より自立しており、錘A23bの作用で中間フロートA22がコースワイヤA21の水面上で直線状に正確に配置される。
【0045】
ポールA25aの下端には、連結具A25cが固定されている。連結具A25cの一端には、アイボルトA25dが固定されており、連結具A25cの他端にはリング状のワイヤガイドA25eが固定されている。ポールA25aの中間部分にもリング状のワイヤガイドA25jが設けられている。アイボルトA25dには、コースワイヤA21の一端が固定されている。ワイヤガイドA25e、A25jには、全長30mの連結ワイヤA27の一端側が挿通され、該一端側の先端はウインチA25gに固定され、余分はウインチA25gに巻付けられている。連結ワイヤA27は、ウインチA25gの操作で長さを変えることにより、中間フロートA22が移動できる位置調整機能とコースワイヤA21の張力を調整する機能を有する。
連結ワイヤA27の他端には、本実施形態の高さ調整装置A1が固定されている。
【0046】
本実施形態の高さ調整装置A1は、
図12、
図13に示すように、定滑車A31と、固定具A51と、調整ワイヤA6と、動滑車A33とを備える。定滑車A31は、連結ワイヤA27の他端に保持されている。固定具A51は、水底A98に沈められており、水底A98に食い込むことで水底に固定されている。固定具A51は、平面視でコースワイヤA21よりも外側に固定される。
【0047】
固定具A51は、本実施形態では錨であるが、ウェイトであってもよい。固定具A51がウェイトである場合、固定具A51としてのウェイトは、調整ワイヤA6の一端に加わる張力よりも大きい重力を発揮し得る重さであることが必要であり、少なくとも調整ウェイトA53よりも重いことが必要である。
【0048】
図12に示すように、調整ワイヤA6は、全長が40mであり、定滑車A31に巻き掛けられている。調整ワイヤA6の一端側の端部には固定具A51が連結されており、調整ワイヤA6の他端側の端部には調整ウェイトA53が連結されている。
【0049】
調整ワイヤA6における固定具A51と定滑車A31との間の部分を一端側部分A61と称し、調整ワイヤA6における定滑車A31と調整ウェイトA53との間の部分を他端側部分62と称する。
【0050】
図9に示すように、コースワイヤA21の両端には、一対のコースポールフロートA25、A25及び一対の高さ調整装置A1、A1が設けられている。一対の高さ調整装置A1、A1は、一対の固定具A51、A51間の距離が一対のコースポールフロートA25、A25間の距離よりも離れるように設置されている。コースワイヤA21の両端にそれぞれ設けられた一対の調整ワイヤA6、A6の一端側部分A61、A61は、鉛直方向に対して水底に向かうに従って互いの距離を離す方向に傾斜している。鉛直方向に対する調整ワイヤA6の一端側部分A61の傾斜角度α(
図9参照)は、20~70°がよく、更に30~60°が好ましい。
【0051】
図14に示すように、動滑車A33は、枠体A33aと、回転体A33bと、環状部A33cとを有する。枠体A33aは、互いに向合う一対の対面壁A33d、A33dと、一対の対面壁A33d、A33d間を連結する側壁33eとを有する。回転体A33bは、一対の対面壁A33d、A33d間に回転自在に設けられている。環状部A33cは、枠体A33aにネジA33fで締結されている。枠体A33aの側壁A33eと回転体A33bとの間には空間部A33gが形成されていて、空間部A33gには、調整ワイヤA6の一端側部分A61が挿通されている。環状部A33cには、調整ワイヤA6の他端側部分62の端部が固定されている。さらに、環状部A33cには、調整ウェイトA53に連結された接続ワイヤA53aが固定されている。なお、環状部A33cには調整ウェイトA53が直接連結されていてもよい。かかる構成により、動滑車A33は、調整ウェイトA53を伴いながら、調整ワイヤA6の一端側部分A61において一端側部分A61に沿って移動自在とされている。
【0052】
図12に示すように、調整ウェイトA53は、動滑車A33により接続されたときに、調整ワイヤA6、連結ワイヤA27及びコースワイヤA21にそれぞれ張力を付与する。調整ウェイトA53は、これらの各ワイヤに張力を付与できる程度の重さ(例えば30~60kg)であるとよい。
【0053】
本実施形態の高さ調整装置A1によれば、
図12及び
図16の実線に示すように、ダム湖90の水位Wが上昇したとする。本実施形態において「水位W」は、水底からの水面の高さをいう。水位Wが上昇したときには、それに伴って、定滑車A31は、コースワイヤA21とともに上昇しようとする。定滑車A31により調整ワイヤA6の一端側部分A61が上方に引っ張られ、一端側部分A61の張力が増え、調整ワイヤA6が定滑車A31に対して一端側に相対的に移動する。調整ワイヤA6の一端側部分A61が長くなり、他端側部分62は短くなる。これにより、固定具A51からのコースワイヤA21の距離が長くなり、コースワイヤA21が上昇する。
【0054】
一方、
図15及び
図16の一点鎖線に示すように、ダム湖90の水位Wが下降したときには、水位Wの下降に応じてコースワイヤA21が下降しようとする。調整ワイヤA6の一端側部分A61の張力が減少して、一端側部分A61が短くなり、他端側部分A62が長くなる。これにより、コースワイヤA21が下降する。
【0055】
このように、本実施形態によれば、水位Wの昇降に応じて、水底からの距離を定める調整ワイヤA6の一端側部分A61の長さが自動的に変化し、コースワイヤA21の高さを自動的に調整することができる。
【0056】
ここで、調整ウェイトA53が調整ワイヤA6の他端側部分A62のみによって保持されている場合には、調整ウェイトA53は定滑車A31から鉛直方向に垂下される。調整ウェイトA53は水の流れにより揺れ、その揺れ幅は調整ワイヤA6における他端側部分A62の長さに応じて大きくなりうる。水位Wが低く調整ワイヤA6の他端側部分A62が長くなったときの調整ウェイトA53の揺れ幅は特に大きくなりうる。このため、コースワイヤA21の揺れが大きく、コースワイヤA21を安定に設置することが困難になる。
【0057】
そこで、本実施形態では、調整ワイヤA6の一端側部分A61に動滑車A33を係止させ、動滑車A33に調整ウェイトA53を接続させている。調整ウェイトA53は、調整ワイヤA6の一端側部分A61に安定に保持される。
【0058】
しかも、動滑車A33は、調整ワイヤA6の一端側部分A61を調整ワイヤA6に沿って移動可能である。水位Wが変位したときに、一端側部分A61に沿った動滑車A33の移動に伴って、調整ワイヤA6の一端側部分A61と他端側部分A62の長さが変化する。このため、動滑車A33に調整ウェイトA53を接続しても、水位Wの変化に応じてコースワイヤA21の高さを自動的に調整する作用が妨げられることはない。
【0059】
本実施形態では、コースワイヤA21の両端に設けたコースポールフロートA25にそれぞれ高さ調整装置A1を設けているが、コースワイヤA21の途中にコースポールフロートA25を設けて該コースポールフロートA25に高さ調整装置A1を配設してもよい。また、コースワイヤA21の一端に設けたコースポールフロートA25のみに高さ調整装置A1を配設し、コースワイヤA21の他端は、他のワイヤなどの連結手段を介して陸に固定してもよい。
【0060】
(3)その他
以上、(1)及び(2)の記載に基づき、本発明の舟艇競技用システムの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。以下に変形、改良について例示する。
【0061】
・その1
第1の実施形態において、調節ワイヤの第三係合部側において、長さを大きく調整できる機構を備えることが好ましい。例えば、
図17に示すように、第三係合部に含まれるウェイト側連結具33aに調整ワイヤ34gを折り返されて係合され、その折り返しの長さD5を調節することで本実施形態の舟艇競技用システムの位置を大まかに決定することができる。その後の微調整を第一係合孔300aを介して行うことができる。折り返しにより長さD5を調節するのは、折り返した調整ワイヤ34gの先端を調整ワイヤ34gの中頃に固定することで行うことが好ましく、例えば短冊状の羽子板34hを用いて調整ワイヤ34gの先端を調整ワイヤ34gの中頃に固定する。
【0062】
羽子板34hは、長手方向に2つの羽子板係合孔34h1、34h2をもち、そのうちの羽子板係合孔34h1に調整ワイヤ34gの先端が固定されている。もう一方の羽子板係合孔34h2には、調整ワイヤ34gの中頃が挿通されており、折り返しの長さD5を調節するときには羽子板係合孔34h2の外縁に調整ワイヤ34gが接触しないように羽子板34hを調整ワイヤ34gに対して略垂直方向に傾斜させた状態で、羽子板係合孔34h2内を調整ワイヤ34gを移動させて行う。移動させた結果、必要な長さD5となった後に羽子板34hを調整ワイヤ34gと平行にすることで羽子板係合孔34h2の外縁と調整ワイヤ34gとが係合して調整ワイヤ34gが羽子板係合孔34h2内を自由に移動できないようになり、長さD5を保つことができる。
【0063】
・その2
第1の実施形態の構成要素と第2の実施形態の構成要素とについて、対応するものを適宜入れ替えても構わない。例えばウェイト32aに変えて、第2の実施形態の固定具A51を採用しても良い。
【0064】
・その3
縦ワイヤ2、横ワイヤ4は、質量基準で70%以上の樹脂材料から構成されていれば充分であり、樹脂材料の構成比の下限は80%、90%、95%などが例示できる。
【0065】
・その4
更に、縦ワイヤ2、横ワイヤ4、調整ワイヤ34a、34bの径、断面形状などは特に限定しない。テープ状のものであってもよい。また、細線が束ねられたものであってもよい。また、チェーン状のものであってもよい。また、第一係合部、第二係合部、第三係合部の形状も特に限定しない。例えばフック状であってもよい。また、上記実施形態においては直線状のコース1を設置したが、例えば弧状に湾曲したコースを設置してもよい。
【0066】
・その5
縦ワイヤ2をコースに交差する方向から保持することができる。例えば直交する方向から縦ワイヤ2を引っ張るように保持することで縦ワイヤ2の位置、ひいてはコースの位置を安定化することができる。また別途の構成要素として縦ワイヤ2を交差する方向から保持する以外にも横ワイヤ4を延長することで縦ワイヤ2を交差する方向から保持することができる。
【0067】
(付記)
本出願の特許請求の範囲に記載の請求項5~8は、本出願の優先権の基礎となった特願2022-103072の請求項1~4の番号を変更し、且つ、令和4年7月11日付起案の拒絶理由通知を解消するために同通知にて示唆された補正案の内容を反映させたものである。
【符号の説明】
【0068】
1:コース、2:縦ワイヤ(浮設ワイヤ)、20:ワイヤフロート、21:始端、22:終端、3a:浮設ワイヤ調整装置、3b:浮設ワイヤ調整装置、3c:浮設ワイヤ調整装置、3d:浮設ワイヤ調整装置、30a:フロート、300a:第一係合孔(第一係合部)、301a:接続ワイヤ、31a:フロート側連結具、310a:浮設ワイヤ用接続リング(浮設ワイヤ用接続部)、311a:補助ウェイト用接続リング、312a:第二係合リング(第二係合部)、313a:調整ワイヤ用接続部、32a:ウェイト、32b:ウェイト、320a:軽量ウェイト、320b:軽量ウェイト、33a:ウェイト側連結具、330a:ウェイト用接続リング、34a:調整ワイヤ、340a:他端、34b:調整ワイヤ、35a:補助ウェイト、36a:スペーサ、4:横ワイヤ(浮設ワイヤ)、40:ワイヤフロート、5:ボート、5a:ボート、5b:ボート、5c:ステイクボート。
【要約】
【課題】信頼性が高い発艇装置をもつ舟艇競技用システムを提供すること。
【解決手段】水中または水面上に浮設される浮設ワイヤ2と、水面上に浮上し第一係合部を持つフロート20と、フロート20から浮力を受け、浮設ワイヤ2が接続される浮設ワイヤ用接続部と、第二係合部とを持つフロート側連結具と、水底に沈設されるウェイトと、該ウェイトに接続され、第三係合部を持つウェイト側連結具と、水上から、該第一係合部、該第二係合部、該第三係合部の順に係合し、水上から弛張させることにより、前記浮設ワイヤを調整される調整ワイヤと、ステイクボート5cを固定するステイクボート保持具(A~D)とを有する。
【選択図】
図1