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特許7246819パッシブタグおよびこれを使用するシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】パッシブタグおよびこれを使用するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20230320BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61B34/20
A61M37/00 590
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021038068
(22)【出願日】2021-03-10
(62)【分割の表示】P 2017563201の分割
【原出願日】2016-06-03
(65)【公開番号】P2021104338
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/171,804
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/934,019
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509097404
【氏名又は名称】シアナ メディカル,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ルルコフ,ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,マイケル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グリーネ,ジョン,イー.
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/149183(WO,A2)
【文献】特開2000-332523(JP,A)
【文献】特表2005-536314(JP,A)
【文献】特表2007-502049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0151650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の標的組織領域に導入するサイズのマーカであって、
プリント回路基板であって、
前記マーカに当たる光パルス、EMF、RFまたは振動エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換器と、
前記光パルス、EMF、RFまたは振動エネルギーによって開閉するように前記エネルギー変換器に結合されたスイッチと、
静電気放電事象に対する保護を提供するために前記スイッチに結合された静電気放電(ESD)保護デバイスと、
を備えるプリント回路基板と、
第1の端面と当該第1の端面の反対側の第2の端面とを有する筐体である電子機器パッケージであって、前記プリント回路基板が、前記第1の端面と第2の端面との間の電子機器パッケージの長さに沿って収容された又は組み込まれた電子機器パッケージと
アンテナを提供するために前記スイッチに結合された一対の細長いワイヤと、
を備え、
前記スイッチが、前記アンテナにより反射されて信号源へと戻る信号を変調するために、開閉するように構成され、
前記一対の細長いワイヤの第1のワイヤおよび第2のワイヤが、それぞれ、前記電子機器パッケージ内の前記プリント回路基板に結合された第1端部と、拡大または丸みを帯びた先端で終わる第2自由端部とを含み、
前記第1のワイヤが、前記電子機器パッケージの第1の端面から前記電子機器パッケージに挿入されて、前記電子機器パッケージの長さに沿って前記第2の端面まで延びて、前記第1のワイヤの第1端部が、前記第2の端面において、前記プリント回路基板との結合を容易にするように1またはそれ以上の屈曲部を含み、
前記第2のワイヤが前記電子機器パッケージの第2の端面から前記電子機器パッケージに挿入されて、前記電子機器パッケージの長さに沿って前記第1の端面まで延びて、前記第2のワイヤの第1端部が、前記第1の端面において、前記プリント回路基板との結合を容易にするように1またはそれ以上の屈曲部を含むことを特徴とするマーカ。
【請求項2】
請求項1に記載のマーカにおいて、
前記ワイヤは、前記マーカの長手方向軸に対して実質的に平行に延びるように、実質的に直線的な形状をとるようにバイアスされ、前記ワイヤの一方は、送達装置内に前記マーカを装填するのを改善するために、実質的に直線的の形状で前記長手方向軸からオフセットされることを特徴とするマーカ。
【請求項3】
請求項2に記載のマーカにおいて、
オフセットされた前記ワイヤが、前記オフセットされたワイヤの前記第2自由端部が前記送達装置の内面に摺動可能に係合するように、前記実質的に直線的な形状にあるときに、前記長手方向軸に対して鋭角を規定することを特徴とするマーカ。
【請求項4】
請求項1に記載のマーカにおいて、
前記スイッチが、電界効果トランジスタ(FET)またはショットキーダイオードを含むことを特徴とするマーカ。
【請求項5】
請求項4に記載のマーカにおいて、
前記細長いワイヤの第1端部が、前記FETまたは前記ショットキーダイオードの端子に結合されて前記アンテナを提供することを特徴とするマーカ。
【請求項6】
請求項1に記載のマーカにおいて、
前記エネルギー変換器が、光源から受け取った光パルスを変換して前記スイッチを開閉するための電圧を生成するように構成された1またはそれ以上の感光性ダイオードを含むことを特徴とするマーカ。
【請求項7】
請求項1に記載のマーカにおいて、
前記スイッチが、電界効果トランジスタ(FET)を含み、前記一対の細長いワイヤが、前記アンテナを提供するために、前記FETのドレインに接続された第1ワイヤと、前記FETのソースに接続された第2ワイヤとを含むことを特徴とするマーカ。
【請求項8】
請求項7に記載のマーカにおいて、
前記ESD保護装置が、前記FETの前記ドレインと前記ソースとの間に接続されて、前記ドレインとソースとの間の最大電圧を設定することを特徴とするマーカ。
【請求項9】
請求項7に記載のマーカにおいて、
前記エネルギー変換器が、前記FETのゲートと前記ソースとの間に接続された1またはそれ以上の感光性ダイオードを含み、光源から受け取った光パルスを変換して前記FETを開閉する電圧を発生させることを特徴とするマーカ。
【請求項10】
体内のマーカの位置を特定するシステムであって、
請求項1-9の何れか一項に記載のマーカと、
前記マーカに向けて体内に送信信号を送信するように構成された送信アンテナと、前記マーカから反射される受信信号を受信するように構成された受信アンテナであって、プローブの先端に収容された受信アンテナと、前記スイッチが開閉して、前記マーカにより反射されて前記受信アンテナに戻る信号が変調されるように、体内にエネルギーパルスを供給するためのエネルギー源と、を備えるプローブと、
前記受信アンテナに接続されたプロセッサであって、前記マーカにより反射されて変調された信号に少なくとも部分的に基づいて、体内の前記マーカの位置を特定するプロセッサと、
前記プローブの先端部から前記マーカまでの距離を表す情報を提示するディスプレイとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記送信アンテナがボウタイアンテナ素子であり、前記受信アンテナがボウタイアンテナ素子であり、前記送信アンテナと前記受信アンテナがマルタクロスアンテナを一緒に形成することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記エネルギー源が光源を含み、前記エネルギー変換器が、前記光源からの光を変換して前記スイッチを開閉するための電圧を生成するように構成された1またはそれ以上の感光性ダイオードを含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み可能なマーカまたはタグに関し、さらに、腫瘍摘出術のような外科的処置またはその他の処置の間に、患者の体内にあるそのようなマーカの位置を特定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳房内の病変を除去する生検または外科手術の前に、例えば腫瘍摘出術においては、病変の位置を特定する必要がある。処置の前に病変の位置を特定および/または確認するために、例えば、マンモグラフィまたは超音波イメージングを使用することができる。得られた画像は、例えば病変へのアクセスおよび/または病変の除去を行う切開において、病変の位置を特定して外科医を誘導する手順の間に、外科医によって使用される。しかしながら、そのような画像は一般に二次元であり、除去される乳房および病変は三次元構造であることから、病変の位置を特定するための限られたガイダンスしか与えることができない。さらに、そのような画像は、病変の周りの適切なマージンを決定するのに、すなわち除去されるべき所望の検体体積を定めるのに、限られたガイダンスしか提供することができない。
【0003】
位置の特定を容易にするために、処置の直前に、ワイヤの先端が病変の位置に配置されるように、例えば針を介してワイヤを乳房に挿入する場合がある。ワイヤが配置されると、患者の皮膚に適用された包帯またはテープを用いて、ワイヤが乳房から出てくる位置で固定される。ワイヤを所定の位置に配置して固定した状態で、患者は、手術に進むことができ、例えば、生検または腫瘍摘出術を受けることができる。
【0004】
位置特定のためにワイヤを使用する際の一つの問題は、ワイヤが配置時と外科手術時との間で移動する可能性があることである。例えば、ワイヤが十分に固定されていない場合、病変にアクセスするために使用される管路に対してワイヤが動くことがあり、その結果、その先端が病変の位置を誤って示すことがある。その場合、その位置にアクセスして組織を除去したとき、病変が完全に除去されず、かつ/または健康な組織が不必要に除去される可能性がある。また、外科医は手術中、例えばワイヤの配置中に得られたマンモグラムまたはその他の画像に基づいて、ワイヤ先端および病変の位置を推定することしかできず、更なるガイダンスなしに切開を進める可能性がある。また繰り返しになるが、そのような画像は2次元であるため、治療または除去される病変の位置を特定するための限られたガイダンスしか提供することができない。
【0005】
代替的には、手術中に位置の特定を提供するために、放射性シードを配置することが提案されている。例えば、針を乳房に通して病変部に導入し、その後、針からシードを展開する。そして、針を引き抜き、マンモグラフィを用いてシードの位置を確認する。その後の外科的処置の間、手持ち式のガンマプローブを乳房の上に置き、シードを覆う位置を特定することができる。その後、切開を行い、プローブを用いてシードおよび病変の切除を誘導することができる。
【0006】
シードは針を通して送達され、その針がすぐに除去されるため、配置時と外科手術時との間に患者の体内でシードが移動する危険性がある。そして、位置特定ワイヤを使用するのと同様に、一度配置されたシードを安定化させる外部の方法が存在しないため、シードが病変の位置を正確に特定できないことがある。さらに、そのようなガンマプローブは、例えば三次元で、シードの位置を特定する際に所望の精度を提供できない可能性があり、そのため、病変を特定する限られたガイダンスしか提供することができない。
【0007】
したがって、外科手術、診断またはその他の医療処置の前および/または途中に、病変またはその他の組織構造の位置を特定するための装置および方法が有用であると考えられる。本発明の先行技術文献として、米国特許出願公開第2011/0313288号(US2011/0313288A1)と、米国特許出願公開第2011/0080678号(US2011/0080678A1)とが存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、埋め込み可能なマーカおよびタグに関し、さらには、腫瘍摘出術のような外科的処置またはその他の処置の間に、患者の体内にあるそのようなマーカの位置を特定するためのシステムおよび方法に関する。
【0009】
一実施形態によれば、患者の体内の標的組織領域に導入するサイズのマーカが提供され、当該マーカが、当たったエネルギーパルスを電気エネルギーに変換するエネルギー変換器と、前記エネルギー変換器に結合されたスイッチであって、前記エネルギーパルスによって開閉するスイッチと、アンテナを提供するために前記スイッチに結合された一対の細長いワイヤと、静電気放電事象に対する保護を提供するために前記スイッチに結合された静電気放電(ESD)保護装置とを備え、前記スイッチが、前記アンテナにより反射されて信号源へと戻る信号を変調するために、開閉するように構成されている。
【0010】
別の実施形態によれば、患者の体内の標的組織領域に導入するサイズのマーカが提供され、当該マーカが、電界効果トランジスタ(FET)と、前記FETのソースとゲートとの間に直列に接続され、光源から受け取った光パルスを変換して前記FETを開閉するための電圧を生成する1またはそれ以上の感光性ダイオード(photosensitive diodes)と、前記FETのドレインおよびソースに接続されてアンテナを提供する一対の細長いワイヤと、前記FETのドレインとソースとの間の最大電圧を設定するために、ドレインとソースとの間に接続された静電気放電(ESD)保護装置とを備え、前記FETが、前記アンテナにより反射されて信号源へと戻る信号を変調するために、開閉するように構成されている。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、体内のマーカの位置を特定するシステムが提供され、当該システムが、エネルギー変換器を含むマーカと;前記マーカに向けて体内に送信信号を送信するように構成された送信アンテナと、前記マーカから反射される受信信号を受信するように構成された受信アンテナと、スイッチが開閉して、前記マーカにより反射されて受信アンテナに戻る信号が変調されるように、体内にエネルギーパルスを供給するためのエネルギー源とを備えるプローブであって、その先端部に前記受信アンテナが収容されたプローブと;前記マーカにより反射されて変調された信号に少なくとも部分的に基づいて、体内のマーカの位置を特定または検出するために前記受信アンテナに接続されたプロセッサと;前記プローブの先端部から前記マーカまでの距離を表す情報および/または患者の体内のマーカの位置に関連するその他の情報を提示するためのディスプレイとを備える。例示的な実施形態では、エネルギー源が光源を含むことができ、エネルギー変換器が、光源からの光を変換して電圧を生成するように構成された1またはそれ以上の感光性ダイオードを含むことができる。
【0012】
一実施形態では、電圧がマーカ内のスイッチを開閉して、マーカのアンテナを調節することにより、マーカによって反射された信号を変調することができる。さらに、マーカは、静電気放電事象に対する保護を提供するために、スイッチに結合された静電気放電(ESD)保護装置を含むことができる。別の実施形態では、電圧が、マーカの導体ループ内に断続的に電流を誘導することができ、それにより、マーカによって反射された信号を変調することができる。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、患者の体内の標的組織領域の位置を特定するシステムが提供され、当該システムが、患者の体内に電磁信号を送信し、患者の体内から反射信号を受信するための1またはそれ以上のアンテナと、患者の体内にエネルギーパルスを送達するためのエネルギー源とを含むプローブを備える。また、当該システムは、患者の体内に埋め込むサイズのマーカも備え、前記マーカが、前記エネルギー源からのエネルギーパルスを電気エネルギーに変換するように構成されたエネルギー変換器と、前記エネルギー変換器に接続されたスイッチであって、エネルギーパルスによって開閉して、前記マーカにより反射された前記プローブからの電磁信号を変調するスイッチと、静電気放電事象に対する保護を提供するために前記スイッチに接続された静電気放電(ESD)保護装置とを備える。
【0014】
別の実施形態によれば、患者の体内の標的組織領域の位置を特定する方法が提供され、当該方法が、スイッチ、エネルギー変換器および静電気放電(ESD)保護装置を備えるマーカを患者の体内に埋め込むステップと、患者の体に隣接してプローブを前記マーカに向けて配置するステップと、前記プローブを作動させて、a)患者の体内に電磁信号を送信し、b)患者の体から反射信号を受信し、c)エネルギー変換器がエネルギーパルスを電気エネルギーに変換して、前記スイッチを開閉し、前記マーカにより反射された前記プローブからの電磁信号を変調するように、患者の体内にエネルギーパルスを送達するステップとを備え、前記ESD保護装置が、静電気放電事象に対する保護を提供する。例示的な実施形態では、患者の体内にエネルギーパルスを送達することには、患者の体内に赤外光を送達することが含まれ、前記エネルギー変換器が、前記赤外光を電気エネルギーに変換して前記スイッチを開閉し、前記マーカにより反射された前記プローブからの電磁信号を変調する1またはそれ以上の感光性ダイオードを含むことができる。さらに、プローブは、患者の体内のマーカの位置および/またはプローブに対するマーカの位置に関する情報を提供することができる。
【0015】
一実施形態では、この方法は、前記マーカに隣接する電気的なツールを使用するステップをさらに含み、前記ESD保護装置が、前記ツールからの電気エネルギーが前記スイッチの最大電圧を超えるときに作動されるものであってもよい。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、患者の体内の標的組織領域の位置を特定するシステムが提供され、当該システムが、患者の体内に電磁信号を送信して患者の体内から反射信号を受信するための1またはそれ以上のアンテナと、光パルスを患者の体内に送達するための光源とを含むプローブを備える。また、当該システムは、患者の体内に埋め込むサイズのマーカも備え、前記マーカが、導体ループに連結された1またはそれ以上の感光性ダイオードを含み、当該感光性ダイオードが、前記光源からの光パルスを電気エネルギーに変換して前記導体ループ内に電流を誘導し、前記マーカにより反射された前記プローブからの電磁信号を変調するように構成されている。
【0017】
さらに別の実施形態によれば、患者の体内の標的組織領域の位置を特定する方法が提供され、当該方法が、マーカを患者の体内に埋め込むステップであって、前記マーカが、導体ループに連結された1またはそれ以上の感光性ダイオードを含む、ステップと、患者の体に隣接してプローブを前記マーカに向けて配置するステップと、前記プローブを作動させて、a)患者の体内に電磁信号を送信し、b)患者の体から反射信号を受信し、c)前記1またはそれ以上の感光性ダイオードが光パルスを電気エネルギーに変換して前記導体ループ内に電流を誘導するとともに、前記マーカにより反射された前記プローブからの電磁信号を変調するように、患者の体内に光パルスを送達し、d)患者の身体内の前記マーカの位置に関連する出力を提供するステップとを備える。
【0018】
本発明のその他の態様および特徴は、添付の図面と併せて以下の記載を考慮することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示のこれらのおよびその他の特徴、態様および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付図面に関連して、より良好に理解されるであろう。
図1A図1Aは、患者の体内に埋め込むためのマーカの例示的な一実施形態の上面図である。
図1B図1Bは、患者の体内に埋め込むためのマーカの例示的な一実施形態の側面図である。
図1C図1Cは、患者の体内に埋め込むためのマーカの例示的な一実施形態の端面図である。
図2図2は、図1のマーカに含まれ得る回路の回路図の例示的な実施形態である。
図3図3Aおよび図3Bは、図2の回路のスイッチの動作を示す回路図である。
図4図4は、患者の体内に埋め込むためのマーカの別の例示的な実施形態の回路図である。
図5A図5Aは、乳房の側面図であり、乳房内の組織にマーカを送達するために使用される送達装置を示している。
図5B図5Bは、乳房の側面図であり、乳房内の組織にマーカを送達するために使用される送達装置を示している。
図6図6は、乳房内に埋め込まれたプローブおよび標的の例示的な実施形態の側面図である。
図7図7は、図6のプローブの遠位端部の端面図である。
図8図8は、マーカの位置を特定するためのシステムの例示的な構成要素の概略図である。
図9図9は、図8のプローブの例示的な構成要素を示すブロック図である。
図10A図10Aは、図7図9に示すようなシステムに含まれ得るアンテナプローブの別の例示的な斜視図である。
図10B図10Bは、図7図9に示すようなシステムに含まれ得るアンテナプローブの別の例示的な側面図である。
図10C図10Cは、図10Aのプローブの部分的な分解図である。
図10D図10Dは、図10Aのプローブの先端の線分10D-10Dに沿った断面図である。
図11図11は、図10Aのプローブに含まれ得るアンテナサブアセンブリの斜視図である。
図12A図12Aは、図11のアンテナサブアセンブリのアンテナ素子の斜視図である。
図12B図12Bは、図11のアンテナサブアセンブリのアンテナ素子の上面図である。
図12C図12Cは、図11のアンテナサブアセンブリのアンテナ素子の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、システムのより完全な説明を提供するために、多くの詳細が述べられる。しかしながら、当業者には明らかなように、開示されたシステムは、それらの特定の詳細なしで実施することができる。その他の例では、システムを不必要に不明瞭にしないように、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0021】
図面を参照すると、図1A図1Cは、例えば図6に示すように、乳房90内など、患者の体内に埋め込むことができるパッシブマーカまたはタグ40の例示的な実施形態を示している。通常、マーカ40は、一対のワイヤまたはアンテナ44に結合された電子機器パッケージ42を含む。マーカ40は、腫瘍摘出術などの手術を実行するためのシステム1010に含まれてもよく、例えば、当該システムは、例えば図6図8に示しかつ以下に述べるように、1またはそれ以上のマーカを組織内に送達するための送達デバイス260、組織内に埋め込まれる1または複数のマーカの位置を特定するプローブ1020、および/またはその他の構成要素を含む。
【0022】
例示的な実施形態では、各ワイヤ44は、細長い部材、例えば、直径またはその他の最大断面が約1/2ミリメートルから2ミリメートル(0.5-2mm)であり、長さが約1ミリメートルから10ミリメートル(1.0-10mm)である中実または中空の構造体である。ワイヤ44は、本明細書の他の箇所で説明するように、組織内に展開されたときにワイヤ44が予め設定された形状にバイアスされるが、例えば送達を容易にすべく、弾性的に変形するように、弾性または超弾性材料および/または形状記憶材料、例えばステンレス鋼およびニチノールなどで形成することができる。代替的には、ワイヤ44は、マーカ40が実質的に固定された、例えば線形または湾曲した形状を維持するように、実質的に剛性であってもよい。本明細書の他の箇所で説明するように、ワイヤ44はアンテナとして機能し、かつ/または電子機器パッケージ42内の電気部品と協働する。
【0023】
任意選択的には、ワイヤ44は、例えば国際公開第2010/151843号に記載された実施形態と同様に、1またはそれ以上のビーズまたはその他の構成要素(図示省略)を担持することができる。例えば、ワイヤ44は、マーカ40の検出を向上させるために、複数の表面、角度および/またはエッジを含む複数のビーズまたはセグメント(図示省略)を担持するコアワイヤを提供することができる。例示的な実施形態では、ビーズは、複数の個々の環状体を含むことができ、各々が、例えば、ほぼ円筒形または球形の一部分を規定する。ビーズは、所望の材料、例えば、ステンレス鋼、ニチノールおよびチタンなどの金属、プラスチック材料または複合材料から形成することができる。組み立て中に、例えば国際公開第2010/151843号に記載されているように、ワイヤ44を電子機器パッケージ42に取り付ける前または後に、複数のビーズをワイヤ44の上に配置してワイヤに固定することができる。
【0024】
図1A図1Cに示すように、ワイヤ44は、例えば、ワイヤ44がマーカ40の長手方向軸48に対して実質的に平行に延びるように、実質的に直線的な形状をとるようにバイアスされるものであってもよい。任意選択的には、ワイヤ44の一方または両方は、長手方向軸48からオフセットするようにしてもよく、それにより、本明細書の他の箇所で説明するように、送達装置(図示省略)内にマーカ40を装填するのを改善することができる。
【0025】
図示のように、各ワイヤ44は、パッケージ42内のプリント回路基板(PCB)またはその他の回路50に結合された第1端部44aと、拡大および/または丸みを帯びた先端45で終わる第2自由端部44bとを含むことができる。任意選択的には、第1端部44aは、例えば、図1Aに最もよく示されるように、回路50への第1端部44aの結合を容易にすべく、かつ/またはワイヤ44がパッケージ42の反対側から接線方向に延びるように、1またはそれ以上の屈曲部を含むことができる。
【0026】
代替的には、ワイヤ44は、長手方向軸48の周りに曲線状またはその他の形態、例えば螺旋状、蛇行状またはその他の湾曲形状をとるように、バイアスされるものであってもよい。例えば、ワイヤ44は、国際公開第2010/151843号に記載されているように、ワイヤ44が図示のように螺旋状の形態にバイアスされているが、送達装置内へのマーカ40の装填および/または患者の体内へのマーカ40の導入を容易にするために、ほぼ直線状の形態に弾性的に真っ直ぐにすることができるように設定された形状の弾性または超弾性材料から形成することができる。
【0027】
さらに図2も参照すると、マーカ40は、本明細書の他の箇所にも記載されているように、電子機器パッケージ42内に収容されて又は組み込まれてマーカ40の位置を特定するために使用されるプローブ(図示省略;図6に示されて本明細書の他の箇所に記載されているプローブ1020など)からの入射信号を変調するように構成された1またはそれ以上の回路またはその他の電気部品50を含むことができる。例示的な実施形態では、図1Aにおいて最も良く分かるように、半導体チップ、プリント回路基板(PCB)および/またはその他の回路50がパッケージ42内に搭載されており、当該パッケージが、電圧または電源またはその他の電力またはエネルギー変換器52と、エネルギー変換器52が電気エネルギーを生成するときに開閉されるスイッチ54と、静電気放電(ESD)保護装置58とを含む。
【0028】
例示的な実施形態では、エネルギー変換器52は、複数の感光性ダイオードを含み、それら感光性ダイオードは、当たった入射光(例えば、赤外光)を電気エネルギー(例えば、予め設定された最小電圧)に変換することができる。図示のように、複数組のダイオード52を直列に接続することができ、それらをパッケージ42内で空間的に互いに直交して配置することができる。例えば、感光性ダイオードが指向性である場合、埋め込み後のプローブ1020に対するマーカ40の向きにかかわらず、少なくとも1組のダイオード52がプローブ1020の光送信器から光を受信することができるように、少なくとも2組のダイオード52を、図1Aにおいて最も分かるように、パッケージ42内で互いに180度(180°)またはその他の角度オフセットして取り付けることができる。パッケージ42は、少なくとも部分的に透明であってもよく、あるいは、パッケージ42に向けられた光がダイオード52によって受信されるように、ダイオード52が露出されるものであってもよい。
【0029】
代替的な実施形態では、エネルギー変換器52は、外部エネルギーを所望の電圧に変換することができるその他の構成要素を含むことができる。例えば、プローブ1020が別の電源、例えばEMF、RFまたは振動エネルギーの供給源を含む場合、エネルギー変換器52は、ピックアップコイル、アンテナ、または入射エネルギーを所望の電圧に変換することができるその他のデバイスを含むことができ、それには、例えば、コンデンサおよび/またはスイッチ54に所望の電圧を供給するように構成されたその他の構成要素が含まれる。赤外線エネルギーの利点の一つは、患者の皮膚に対して配置されたプローブ1020が、図6に示すように、患者の体内、例えば乳房90内に数インチ離れて埋め込まれた比較的小さなマーカ40を作動させるのに十分なエネルギーを送達できるように、赤外線エネルギーが組織を十分に通り抜けることができる点である。
【0030】
図2に示す実施形態では、スイッチ54が電界効果トランジスタ(FET)、例えば接合型電界効果トランジスタ(JFET)であり、ダイオード52の一端がゲート(G)に接続され、他端がソース(S)に接続されており、例えば、IR光が存在しないときにダイオード52を放電するために、抵抗器56がゲート(G)とソース(S)との間に結合されている。例示的な実施形態では、スイッチ54は、Avago Technologies US Inc.により製造されたVMMK-1225のようなエンハンスモード・シュードモルフィック高電子移動度トランジスタ(E-pHEMT)を含むことができ、抵抗器56は3メガオーム(3MΩ)の抵抗器とすることができる。代替的な実施形態では、スイッチ54は、ダイオード52(またはその他の電圧源)に結合されたショットキーダイオードであり、例えば、ダイオードの両端がワイヤ44に結合されるものであってもよい。
【0031】
また、例えば、ワイヤ44がマーカ40のためのアンテナを提供するように、図示のように、スイッチ54のソース(S)がワイヤ44の一方に電気的に接続され、ドレイン(D)が他方のワイヤ44に接続されるものであってもよい。例えば、回路50の構成要素は、図2の回路図内で結合された以外の構成要素が互いに電気的に絶縁されるように、パッケージ52内に取り付けられるものであってもよい。ワイヤ44は、ワイヤ44の端部が図示のようにスイッチ54に電気的に結合されるように、パッケージ52に接着またはその他の方法で取り付けられるものであってもよい。
【0032】
各ダイオード52は、殆どまたは全く負荷が存在しないとき(すなわち、電流引き込み時)、スイッチ54を開閉するために光に曝されたときに、十分な電圧(例えば、約1/2ボルト(0.5V))を発生することができる。回路50は、プローブ1020からの信号を単に変調することを目的としているため、電流が殆どまたは全く必要なく、そのため、ダイオード52(および、その結果としてプローブ1020)から必要とされる電力は最小限になり、マーカ40およびプローブ1020の電力需要を低減することができる。
【0033】
さらに図3Aおよび図3Bも参照すると、ダイオード52を間欠的に照射する光は、スイッチ54を開閉する制御信号を提供するために、ゲート(G)とソース(S)との間に電圧を生成する。例えば、図3Aは、赤外光が存在しないときの開いた形態のスイッチ54を示し、一方、図3Bは、赤外光70がダイオード52に当たって両方のワイヤ44を互いに接続するときの閉じた形態のスイッチ54を示している。このため、結果として、マーカ40は、マーカ40の中央部に高周波スイッチに相当するものを含むパッシブタグを提供する。スイッチ54を閉じた状態から開いた状態に変換できることにより、ワイヤ44によって提供されるアンテナの反射特性は、大幅に変更され得る。例えば、スイッチ54は、スイッチ54が開閉されたときに、マーカ40から反射された信号を変調したり、極性を変えたりすることができる。
【0034】
乳房組織(または患者の体内のその他の位置)に埋め込まれたマーカを検出することに伴う課題のいくつかは、例えば、(a)組織の不均質により生じる散乱、(b)プローブの送信アンテナと受信アンテナとの間のクロストーク、および(c)近接場効果およびその他の要因による信号歪みによる、受信した反射信号のコンタミネーションおよびそのようなマーカの比較的小さなレーダ断面(RCS)を含む。これらの複雑な要因に対処し、反射したマーカ信号をプローブで受信した混入信号から区別するために、スイッチ54は、マーカ40の反射特性の周期的な変調を提供する。
【0035】
具体的には、マーカ40は、2つのフォームファクタ(form factors)、例えば、図3Aおよび図3Bに示す反射器の間でその構造を周期的に変化させるように形成される。例えば、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、超広帯域(UWB)レーダを使用する受信信号のデジタル信号処理は、マーカスイッチング周波数で変調された信号の同期検出を使用する。これは、その他の混入信号が変調期間内に不変のままであるため、マーカ信号の信号対雑音比(SNR)を著しく増加させる。同期検出器のための機構を提供するために、マーカ40によって受信された近赤外(IR)光パルスで乳房組織を照明することにより、マーカスイッチングプロセスがプローブ1020において制御される。
【0036】
マーカ反射によるフォームファクタのスイッチングは、光起電力モードで動作するダイオード52のセットによって制御される。ダイオード52がプローブ102から(図3Bの矢印70で表される)光を受信すると、図3Bに示すように、ダイオード52は、スイッチ54のゲート(G)とソース(S)との間に印加される電圧を生成し、スイッチは閉じて、ドレイン(D)およびソース(S)を互いに接続し、両方のアンテナワイヤ44を互いに接続する。光がオフのとき、スイッチ54は開いており、ドレイン(D)とソース(S)が図3Aに示すように電気的に切断されている。
【0037】
また、ESDデバイス58は、スイッチ54に、例えばドレイン(D)とソース(S)との間に並列に結合され、静電気放電事象に対する保護を提供することができる。例えば、E-pHEMTデバイスをスイッチ54として使用すると、ドレイン(D)とソース(S)との間の絶対最大電圧、よってマーカのアンテナ間の絶対最大電圧に対する制限が設定される。VMMK-1225のE-pHEMTの例示的な実施形態では、スイッチ54の両端の最大電圧は、約5ボルト(5V)以下とすることができる。現代の乳房手術は、しばしば、数kVの電気パルスを生成することができる電気切断ツール、電気焼灼ツールおよび/またはその他のツール(図示省略)の使用を伴う。このようなツールがマーカ40に近づくと、ツールはアンテナワイヤ44間に非常に大きな電圧を生じ、スイッチ54を破壊する可能性がある。
【0038】
そのようなツールの作動中のマーカ40のサバイバリビティを高めるために、ESD保護装置58は、電圧が最大値に近づくと、スイッチ58デバイスの電圧を切り捨てる。一般に、マーカ40内のESD保護装置58は、プローブ1020からの信号から来る小振幅UWB信号の周波数範囲に対してアンテナ44をシャントしない低容量を有する必要がある。例示的な実施形態では、ESD保護装置58は、ツェナーダイオードおよび低容量バリスタなどの過渡電圧抑制器であってもよい。
【0039】
図4を参照すると、直列に接続された複数の感光性ダイオード52’を含み、その出力が導体ループ53’に結合されるパッシブマーカ40’の代替的な実施形態が示されている。得られた電流ループは、同期検出のために、例えばマーカ40と同様にプローブ1020を使用して、光トリガによって変調される。光がフォトダイオード52’をトリガすると、電流が導体ループ53’の導体路に誘導され、それにより、マーカ40’の反射特性を調整して、例えば、マーカ40’の散乱特性を変化させる。プローブ1020は、マーカ40’の2つの状態の差を減算し、その差を同期検出に使用することができる。
【0040】
任意選択的には、図5Aおよび図5Bに示すように、針または送達装置260が、例えば国際公開第2010/151843号に記載された実施形態の何れかと同様に、患者の体内に1またはそれ以上のマーカ40または40’(1つのマーカ40が示される)を導入するために与えられるものであってもよい。例えば、送達装置260は、近位端部262aおよび遠位端部262bを含み、組織を通って標的組織領域(図示省略)に導入され、1または複数のマーカ40を運ぶことができる大きさのシャフト262を含むことができる。送達装置260は、シャフト262の近位端部262aと遠位端部262bの間に少なくとも部分的に延びるルーメン264と、1またはそれ以上のマーカ40を、ルーメン264から連続的または別個に選択的に送達するために、シャフト262内を摺動可能なプッシャ部材266とを含むことができる。
【0041】
図示のように、シャフト262の遠位端部262bは、シャフト262が組織を通って直接導入されるように、斜めになった、先が尖った、かつ/またはその他の方法で尖ったものとすることができる。代替的には、送達装置260は、例えば国際公開第2010/151843号に記載されているように、組織を貫通するように予め配置されたカニューレ、シースまたは他の管状部材(図示省略)を介して導入することができる。任意選択的には、遠位端部262bは、例えば蛍光透視法、超音波および電磁信号などを用いて導入中に遠位端部262bのモニタリングを容易にすることができる、放射線不透過性、エコー源性またはその他の材料から形成されるバンドまたはその他の特徴を含むことができる。
【0042】
図示のように、プッシャ部材266は、1または複数のマーカ40に隣接するルーメン264内に配置されたピストンまたはその他の構成要素(図示省略)と、ルーメン264から1または複数のマーカ40を押すためにピストンに結合されたプランジャまたはその他のアクチュエータ268とを含む。例えば、図5Aに示すように、シャフト262の遠位端部262a(その中にマーカ40を持つ)は、乳房41(またはその他の組織)に挿入され、例えば癌性病変(図示省略)内の標的部位にマーカ40を配置するために、前進またはその他の方法で配置される。任意選択的には、病変に対するマーカ40の位置を確認するために、外部イメージングを使用することができる。標的位置に到達すると、シャフト262はプッシャ部材266に対して引き抜かれ、それにより図5Bに示すように、マーカ40を展開することができる。任意選択的には、送達装置260は、複数のマーカ(図示省略)を担持することができ、シャフト262は、1回またはそれ以上の回数再配置して、追加のマーカを展開することができる。
【0043】
代替的には、シャフト262を引き戻すのではなく、必要に応じて、プッシャ部材266を前進させて、ルーメン264から連続的に1または複数のマーカ40を展開することができる。別の代替例では、トリガ装置またはその他の自動アクチュエータ(図示省略)をシャフト262の近位端部262aに設けることができ、それが、例えば個々のマーカ40を遠位端部262bから送出するために、それぞれの起動時にシャフト262を十分に後退させることができる。
【0044】
任意選択的には、1または複数のマーカ40の送達を容易にするために、ワイヤ44の一方または両方を長手方向軸48からオフセットするようにしてもよい。例えば、一方のワイヤ44は、長手方向軸48と実質的に平行に延びる一方で、他方のワイヤ44は、長手方向軸48に対して予め設定された鋭角を規定することができ、それにより、摩擦に打ち勝つのに十分な力でシャフト262がプッシャ部材266に対して引き戻されない限りは、例えばマーカ40がルーメン264から自由に出るのを防止するのに十分な摩擦を伴って、ワイヤ44の先端部45が送達装置260の内面と摺動可能に係合するものであってもよい。
【0045】
図6図9を参照すると、乳房90または体内のその他の部位の腫瘍、病変またはその他の組織構造のような、患者の体内の標的組織領域の位置を特定するシステム1010の例示的な実施形態が示されている。図8に示すように、システム1010は、概して、国際公開第2010/151843号および国際公開第2014/149183号に記載されている実施形態と同様に、1またはそれ以上のターゲット、タグまたはマーカ40(1つが図示されている)を担持する送達装置260と、例えば超広帯域レーダを用いて、マーカ40を検出かつ/またはその位置を特定するプローブ1020と、例えば1または複数のケーブル1036を使用して、プローブ1020に接続されたコントローラおよび/またはディスプレイユニット1040とを含む。
【0046】
例えば、プローブ1020は、国際公開第2010/151843号および国際公開第2014/149183号に記載されている実施形態と同様の、電磁信号出力機能および受信機能を有するポータブルデバイス、例えばマイクロパワーインパルスレーダ(MIR)プローブであってもよい。図6に示すように、プローブ1020は、組織、例えば患者の皮膚またはその下の組織に当接または隣接して配置されることが意図された第1または遠位端部1024と、ユーザが保持することができる第2または近位端部1022とを含む携帯端末であってもよい。通常、プローブ1020は、セラミックディスク1032(図7に示す)上に取り付けられた1またはそれ以上のアンテナ、例えば、送信アンテナおよび受信アンテナ(図示省略)を含む。さらに、プローブ1020は、遠位端部1024が接触する組織内、例えば図6に示すように乳房組織90内に、光パルス(図6において破線1038aで表される)を伝達するように構成された光送信器、例えば、複数の光ファイバ1038(図7に示す)を含む。光ファイバ1038は、光源(図示省略)からの光がプローブ1020の遠位端部1024から遠位側に光ファイバ1038を通過するように、例えばカップリング1039により光源に結合されるものであってもよい。
【0047】
例示的な実施形態では、光源は、例えば、800ナノメートルと950ナノメートルの間(800-950nm)の波長で近赤外光を送達することができる赤外光源である。任意選択的には、光ファイバは、必要に応じて、1またはそれ以上のレンズおよびフィルタなど(図示省略)を含むことができ、例えば、プローブ1020により送信された光を所望の方法で、例えばプローブの中心軸1030にほぼ平行に延びる相対的に狭いビームあるいは広いビーム等に集束させるようにしてもよい。
【0048】
代替的には、プローブ1020は、光送信器1038の代わりにその他のエネルギー源を含むことができる。例えば、本明細書の他の箇所で説明したように、マーカ40を作動させるエネルギーパルスを送達するために、プローブ1020の遠位端部1024に、電磁エネルギー源、無線周波数(RF)エネルギー源および振動エネルギー源など(図示省略)を設けることができる。1または複数のエネルギー源は、例えばマーカ40の回路を交互にアクティブおよび非アクティブ状態にするように、予め設定された方法でパルスを発することができる。
【0049】
プローブ1020は、送信アンテナにより送信する信号を生成し、かつ/または受信アンテナで受信した信号を処理するのに必要とされる、1またはそれ以上のコントローラ、回路、信号発生器およびゲートなど(図示省略)を含むディスプレイユニット1040内のプロセッサを含むことができる。プロセッサのコンポーネントとしては、必要に応じて、ディスクリートコンポーネント、固体素子、プログラマブル素子およびソフトウェアコンポーネントなどを含むことができる。例えば、プローブ1020は、送信アンテナに接続されて送信信号を生成する、例えばパルス発生器および/または疑似雑音発生器(図示省略)のようなインパルス発生器と、受信アンテナにより検出された信号を受信するインパルス受信器とを含むことができる。プロセッサは、マイクロコントローラとレンジゲート制御器を含むことができ、例えば本明細書のその他の実施形態と同様に、それらがインパルス発生器とインパルス受信器を交互に作動させて、送信アンテナを介して電磁パルス、電磁波またはその他の信号を送信した後、受信アンテナを介して反射した電磁信号を受信する。使用することができる例示的な信号には、例えば超低帯域幅領域におけるマイクロインパルスレーダ信号など、電波およびマイクロ波が含まれる。
【0050】
プローブ1020は、例えばケーブル1036により、ディスプレイユニット1040のディスプレイ1042に接続して、プローブ1020のユーザに情報、例えばアンテナを介して得られた空間データまたは画像データを表示するようにしてもよい。任意選択的には、プローブ1020は、1またはそれ以上のユーザインターフェース、メモリ、送信機、受信機、コネクタ、ケーブルおよび電源など(図示省略)、その他の特徴または構成要素を含むことができる。例えば、プローブ1020は、プローブ1020の構成要素を動作させるための1またはそれ以上のバッテリまたはその他の内部電源を含むことができる。代替的には、プローブ1020は、プローブ1020の構成要素を動作させるために、例えば標準AC電源などの外部電源に接続されるケーブル、例えばケーブル1036の一つを含むことができる。
【0051】
図6に示すように、プローブ1020の内部構成要素をハウジングまたはケーシング内に設け、プローブ1020を自己完結型のものにするようにしてもよい。例えば、ケーシングは、プローブ1020全体がユーザの手に保持されるように、比較的小さく、携帯可能なものであってもよい。任意選択的には、プローブ1020の一部分、例えば遠位端部1024に隣接する部分は、使い捨てであってもよく、あるいは、必要に応じて使い捨てのカバー、スリーブなど(図示省略)が設けられて、プローブ1020の少なくとも近位部分が、例えば本明細書のその他の実施形態と同様に、再利用可能であってもよい。代替的には、プローブ1020全体は、使い捨てのシングルユースデバイスであるが、ディスプレイユニット1040は、当該ディスプレイユニット1040に新しいプローブ1020を接続することによって複数の手術中に使用することができ、手術領域外にあるが、必要に応じてアクセス可能かつ/または目に見えるようにすることができる。プローブ1020の構成および/または動作に関する更なる情報は、国際公開第2010/151843号および国際公開第2014/149183号に見出すことができる。
【0052】
図9は、プローブ1020の例示的な構成要素を示すブロック図600である(代替的には、構成要素の幾つかを、図8のディスプレイユニット1040内に配置することができる)。プローブ1020は、信号発生器620、増幅器640、アナログ-デジタル(A/D)変換器650およびデジタル信号プロセッサ(DSP)660を含むことができる。信号発生器620、例えば基準発振器は、方形波信号、三角波信号または正弦波信号などの発振信号を生成する。
【0053】
例えば、方形波信号625は、信号発生器620からプローブ1020のアンテナ部分532の送信アンテナに送信されるものであってもよい。方形波信号625が送信アンテナを通過するとき、送信アンテナは帯域通過フィルタ(「BPF」)として機能し、方形波信号625を一連のパルス630に変換する。このように、プローブ1020によって送信される送信信号1034T(図6に示される)は、一連のパルス630を含む。送信信号1034Tは、受信信号1034Rによって表されるように、組織に送信されてマーカ40(図6に示されるように)から反射される。送信信号1034Tがマーカ40から反射されると、反射信号(すなわち、受信信号1034R)は、一連の減衰パルス635(図9に示す)を含む。
【0054】
プローブ1020のアンテナ部分532の受信アンテナは、受信信号1034R(図6に示す)を受信することができる。図9に示すように、パルス635の利得を増幅するために、一連の減衰パルス635を含む受信信号1034Rを増幅器640に入力するようにしてもよい。また、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するために、増幅器640の出力をA/D変換器650に入力するようにしてもよい。A/D変換器650から出力されたデジタル信号は、処理のためにDSP660に入力される。DSP660は、数多くの処理機能を実行することができ、それには、送信信号501が送信された時から受信信号502が受信された時までの時間の差を計算すること、マイクロ波アンテナプローブ531の先端からマーカ521までの距離を判定すること、プローブ1020の先端に対するマーカ40の位置を判定すること、受信信号1034Rの振幅を測定すること、および/またはプローブ1020の先端に対してマーカ40が位置する方向を判定することが含まれるが、それらに限定されるものではない。DSP660の出力は、ディスプレイユニット1040のディスプレイ1042上に提示することができる。
【0055】
図10A図10Dを参照すると、本明細書の他の箇所に記載されたシステムおよび方法の何れかで使用することができるアンテナプローブ930の例示的な実施形態が示されている。通常、プローブ930は、ハウジング940、アンテナサブアセンブリ950およびシールド980を含む。任意選択的には、プローブ930は、プローブ930の1またはそれ以上の構成要素、例えばハウジング940の開口部を取り囲んで、汚染、曝露を低減し、かつ/またはプローブ930の内部構成要素を保護する外部スリーブまたはカバー(図示省略)を含むことができる。
【0056】
図11にも示すように、アンテナサブアセンブリ950は、送信アンテナ960tおよび受信アンテナ960rを含み、各々がボウタイ構成を有し、組み合わされてマルタクロスアンテナ(Maltese cross antenna)を形成する。図12A図12Cに示すように、各アンテナ960は、誘電材料964のディスクまたはその他のベース上で互いに90度(90°)オフセットされた1対のアンテナ素子962を含む。アンテナ要素962の各々は、別々に形成された後、ディスク964に取り付けられるか、またはディスク964上に直接堆積される。例示的な実施形態では、アンテナ素子962は、セラミックディスク964の上面に置かれた銀フィルムまたはその他の材料から形成することができる。
【0057】
回路970は、アンテナ960に接続することができ、例えばPCB972を含み、その上に、適当なリードによってそれぞれのアンテナ素子962に接続された1またはそれ以上の変圧器974およびコネクタ976が設けられるものであってもよい。コネクタ976に同軸ケーブル978を接続して、本明細書の他の箇所に記載されたその他の実施形態と同様に、アンテナ960をシステムのその他の構成要素に接続することができる。
【0058】
図12A図12Cに示すように、ディスク964は、アンテナ素子962間に複数の放射状スロット966を含む。このため、アンテナ素子962は、スロット966内の空気によって互いに実質的に隔離されており、それにより、感度を高めて、クロストークおよび/またはその他のノイズを低減することができる。代替的には、スロット966内に、その他の絶縁材料、例えば発泡体(図示省略)などを充填することができ、それら材料は、所望の比較的低い誘電率を有し、アンテナ素子962を互いに実質的に隔離することができる。
【0059】
図10Dに示すように、ディスク964は、シールド980内に取り付けることができ、当該シールドは、例えば、接着剤による接着、音波溶接、融着、協働コネクタ(図示省略)などの1またはそれ以上により、ハウジング940の先端942に連結することができる。図示のように、シールド980は、例えばナイロンまたはその他のポリマー材料のカラーから形成される内側絶縁層を含み、この絶縁層が、ファラデーシールドを提供するために、例えば銅またはその他の材料から形成される比較的薄い外側シールド984によって取り囲まれている。例示的な実施形態では、銅テープの層を、内部シールド982の周りに巻き付けて、その端部を互いに固定することができる。代替的には、外側シールド984は、遮蔽材料のスリーブであってもよく、その中に、内側シールド982が挿入されて、例えば接着剤による接着、締り嵌めなどによって取り付けられるものであってもよい。
【0060】
図10Dに示すように、シールド980は、ディスク964の厚さ「t」よりも実質的に大きい長さを有することができる。例えば、内側シールド982は、環状凹部986を含むことができ、その中に、ディスク964が挿入されて、例えば締り嵌め、接着剤による接着などによって取り付けられるものであってもよい。図示のように、ディスク964の底面は、本明細書の他の箇所に記載されているように、ディスク964が使用中に組織に接触することができるように、シールド980の遠位端部と実質的に同一平面上であってもよい。任意選択的には、例えば、流体またはその他の材料が先端に入り込むのを防止し、汚染を低減し、かつ/またはプローブ930の先端を保護するために、マイラーフィルムまたはその他の比較的薄い材料の層(図示省略)をディスク964の底面および/またはシールド980上に設けることができる。
【0061】
引き続き図10Dを参照すると、ディスク964の上面(アンテナ素子962(図示省略)がその上にある)が、シールド980内の空気領域に曝されている。空気の誘電率は低いため、送信アンテナ960tからの送信は、遠位に、すなわちディスク964に接触する組織に向けて集束する。組織の誘電率と実質的に一致するように選択されたディスク964の材料によって、組織への透過の深さが増加する。ディスク964の後ろの空気は、それがなければ、組織から離れるように送信アンテナ960tにより放出されたであろう損失エネルギーを最小にすることができる。同様に、ディスク964は、組織に向けられた受信アンテナ960rの感度に焦点を合わせることができる。シールド980内のディスク964の後方の空気(およびアンテナ素子962間のスロット966)は、クロストーク、ノイズを最小限に抑えることができ、かつ/またはプローブ930の働きを向上させることができる。プローブ930に関する追加の情報および/または代替的な実施形態は、国際公開第2010/151843号および国際公開第2014/149183号に見出すことができる。
【0062】
図6のシステム1010は、医療処置中に、例えば乳房生検または腫瘍摘出術において使用することができ、例えば、病変またはその他の標的組織領域の位置の特定を容易にし、かつ/または乳房90またはその他の身体構造からの検体の切除および/または除去を容易にする。なお、システム1010は、乳房病変の位置の特定に特に有用であるとして記載されているが、当該システム1010は、身体のその他の領域におけるその他の対象物の位置特定にも使用され得ることに留意されたい。
【0063】
処置の前に、標的組織領域、例えば腫瘍またはその他の病変を、従来の方法を用いて同定することができる。例えば、乳房90内の病変(図示省略)を、例えばマンモグラフィおよび/またはその他のイメージングを用いて識別し、その病変を除去する決定を下すことができる。マーカ40は、例えば図5Aおよび図5Bに示す送達装置260など、針またはその他の送達装置を使用して、標的病変部内またはその近傍の乳房90内に埋め込むことができる。
【0064】
図6に示すように、1または複数のマーカ40が埋め込まれたら、プローブ1020を、患者の皮膚に対して、例えば乳房90に対して配置することができる。プローブ1020のアンテナからの信号は、光源からのパルス光とともに送達することにより、マーカ40が受信してプローブ1020へと反射して戻すときに、スイッチ54を開閉させることができる。例えば、プローブアンテナ、マーカ40の近くの患者の体内の組織またはその他の構造などにより、実質的なクラッタ、クロストークまたはその他のノイズがプローブ1020により受信される場合に、2つの状態(スイッチ54の開閉)からの反射信号を、互いから減算して、その他のノイズを実質的に除去することにより、プローブ1020がマーカ40を識別および/または位置の特定を行うことができる。このため、プローブ1020は、変調された反射信号を使用して、信号の信号対雑音比を増加させることができる。
【0065】
ディスプレイ1042は、ユーザに情報を表示して、乳房90内のマーカ40の位置の特定を容易にすることができる。例えば、ディスプレイ1042は、予め設定された基準に基づいて、例えばマーカ40からプローブ1020までの相対距離に基づいて、距離、角度、向きおよび/またはその他のデータを提供する読み出しであってもよい。距離情報は、インチ(in.)またはセンチメートル(cm)などの長さの単位で距離を表す数値として表示されるものであってもよい。追加的または代替的には、ディスプレイユニット1040上のスピーカ1044が、距離の可聴表示、例えばプローブ1020がマーカ40に近付くに連れて速さが増加する、間隔を空けたパルスを生成することができる。別の代替例では、ディスプレイ1042が、マーカ40、プローブ1020、プローブ1020からマーカ40までの距離、および/またはマーカを含む身体部分(例えば、乳房)の生理学的映像を示すグラフィック画像(例えば、二次元または三次元画像)を提示することができる。
【0066】
例えば、図6に示すように、プローブ1020の遠位端部1024は、例えば病変のほぼ上にある、患者の皮膚に隣接または接触して配置され、かつ/または病変およびマーカ40の方向にほぼ向けられ、作動される。プローブ1020の送信アンテナ(図示省略)は、電磁信号1034Tを放射することができ、この電磁信号は、組織を通って進んで、マーカ40により反射される。戻り信号1034Rは、反射されてプローブ1020の受信アンテナ(図示省略)に戻り、それにより、マーカ40とプローブ1020の遠位端部1024との間の空間的関係、例えば、距離および/または方位角度を決定することができ、外科医の切開の適切な方向を決定するのを容易にする。
【0067】
また、ほぼ同時に、プローブ1020は、光パルス1038aを送信することができ、これがマーカ40のダイオード52によって受信される(図示省略、例えば図3Aおよび図3Bを参照)。ダイオード52は交互に電圧を生成し、スイッチ54を開閉させる。これにより、マーカ40は、反射されてプローブ1020に戻る信号の位相を変化させ、プローブは、例えばサブトラクションにより、信号を処理して、マーカ40を識別し、かつ/またはマーカの位置、それにより標的病変部の位置を特定することができる。
【0068】
その後、例えば患者の皮膚に切開部を作って、例えば病変周辺の標的マージンに対応する所望の深さに達するまで、介在組織を切開することにより、組織を切断することができる。組織検体は、従来の腫瘍摘出術を使用して、切除または除去することができ、例えばそれを、除去された検体1046内にマーカ40を残したまま行うことができる。
【0069】
なお、本明細書の何れかの実施形態で示された構成要素またはコンポーネントは、特定の実施形態の例示であり、本明細書に開示したその他の実施形態においても、またはその他の実施形態と組み合わせて使用できることを理解されたい。
【0070】
本発明は、様々な変更および代替形態が可能であるが、その特定の例が図面に示されており、本明細書において詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、開示した特定の形態または方法に限定されるものではなく、それとは反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての変更、均等物および代替物を包含することを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C