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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230320BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230320BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230320BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20230320BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/02
A61K8/37
A61K8/63
A61Q19/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018131448
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020007281
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】青山 真穂子
(72)【発明者】
【氏名】山村 野乃
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-284371(JP,A)
【文献】特開2011-032252(JP,A)
【文献】特開2006-342141(JP,A)
【文献】特開2004-224707(JP,A)
【文献】特開2000-044453(JP,A)
【文献】特開2013-063967(JP,A)
【文献】特開2015-044804(JP,A)
【文献】特開2016-166145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ホホバ種子油0.1~30質量%と、(B)トリイソステアリン及びイソステアリン酸ヘキシルデシルから選択される1種又は2種と、(C)ダイマー酸エステル、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシダイマージリノレイルエーテル、ヒドロキシアルキル(C16-18)ヒドロキシダイマージリノレイルエーテル、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上のペースト油剤1~70質量%を含有し、(A)1質量部に対し(B)を1.2~10質量部含有する、油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ホホバ種子油は、炭素数分布がC36~C44を中心とする、不飽和脂肪酸と不飽和高級アルコールとのエステルの混合物からなるロウ類の1種であり、使用感の優れた化粧料が得られることが知られていた(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】NIKKOL GROUP編,パーソナルケアハンドブック,20-24頁,2016年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホホバ種子油は良好な使用感を呈するが、他の油性成分との相溶性が悪く、経時でホホバ種子油が離油するという課題があった。そこで、経時安定性の良好な、ホホバ種子油を含有する油性化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)ホホバ種子油と、(B)25℃において5~400mPa・sの粘度を有する液状油と、(C)ペースト油剤を含有し、(A)1質量部に対し(B)を1.2~10質量部含有する、油性化粧料を提供する。
さらに、(B)が、エチルヘキサン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、エチルヘキサン酸セチル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン、ネオデカン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、スクワラン、イソステアリン酸ヘキシルデシル、トリエチルヘキサノイン、イソステアリン酸イソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ジリノール酸ジイソプロピル、オクチルドデカノール及びデシルテトラデカノールより成る群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の油性化粧料を提供する。
またさらに(C)が、ダイマー酸エステル、ダイマージオール誘導体、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上である、請求項1又は請求項2に記載の油性化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油性化粧料は、使用感が良好でかつ保存安定性が良好であるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0008】
本発明の油性化粧料は、化粧品、医薬部外品、医薬品等のいずれの用途にも用いられ得る。なお本発明の(B)、(C)成分はホホバ種子油である場合を除く。
【0009】
本発明で使用する(A)ホホバ種子油は、通常化粧品又は医薬部外品に配合し得るものであれば特に限定されない。ホホバ油の配合量は、油性原料全量に対し0.1~30質量%、更には1~30質量%配合することが好ましい。0.1質量%未満の配合では、ホホバ種子油の有する化粧料への使用感向上効果が認められない場合がある。30質量%を超えて配合すると、油性化粧料の安定性を保てない場合がある。
【0010】
本発明で使用する(B)25℃において5~400mPa・sの粘度を有する液状油液状油も公知の物質であり、化粧品の汎用原料として使用されている。該液状油の25℃における粘度は、好ましくは8~350mPa・s、より好ましくは12~300mPa・sである。上記上限を超えては、伸展性が乏しく、使用感としてべたつきが増し、上記下限未満では、粘性が乏しくなる。該粘度は、ブルックフィールド粘度計により、スピンドルNo.2、12rpmで測定したものである。成分(C)として、例えば、エチルヘキサン酸イソノニル(5mPa・s)、イソノナン酸イソノニル(6mPa・s)、パルミチン酸イソプロピル(7mPa・s)、イソステアリン酸イソプロピル(10mPa・s)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(11mPa・s)、イソノナン酸イソトリデシル(12mPa・s)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(13mPa・s)、エチルヘキサン酸セチル(13mPa・s)、ネオペンタン酸イソステアリル(15mPa・s)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(15mPa・s)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(19mPa・s)、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン(25mPa・s)、ネオデカン酸オクチルドデシル(25mPa・s)、ミリスチン酸オクチルドデシル(27.6mPa・s)、スクワラン(32mPa・s)、イソステアリン酸ヘキシルデシル(34mPa・s)、トリエチルヘキサノイン(35mPa・s)、イソステアリン酸イソステアリル(40mPa・s)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(52mPa・s)、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル(64mPa・s)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル(90mPa・s)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(110mPa・s)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(180mPa・s)、トリイソステアリン(185mPa・s)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(290mPa・s)、ジリノール酸ジイソプロピル(310mPa・s) 、オクチルドデカノール(57mPa・s)、デシルテトラデカノール(81mPa・s)が挙げられる。これらのうち、トリイソステアリン及びイソステアリン酸ヘキシルデシルが特に好ましい。カッコ内はいずれも25℃における粘度を示す。
【0011】
本発明の油性化粧料には、(A)1質量部に対し(B)を1.2~10質量部含有する。(B)の含有量が(A)の1.2質量部未満の場合、油性化粧料の安定性が保てない場合がある。
【0012】
本発明で使用する(C)のペースト油剤は、ダイマー酸エステル、ダイマージオール誘導体、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の油剤である。
【0013】
これらは構造が類似した物質の混合物であったり、多環式化合物のためにガラス転移温度が高いなどの理由から、部分的にしか結晶化しないため、25℃でペースト状(高粘度液体~半固体)の外観・性状を示す。
【0014】
ダイマー酸エステルとしては、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)等が挙げられ、例えば、Plandool-G、Plandool-H(以上、日本精化社)等の市販品を使用することができる。
【0015】
ダイマージオール誘導体としては、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシダイマージリノレイル エーテル、ヒドロキシアルキル(C16-18)ヒドロキシダイマージリノレイル エーテル等が挙げられ、例えば、スーパーモルLM、スーパーモルPS(以上、クローダ社)等の市販品を使用することができる。
【0016】
コレステロール脂肪酸エステルとしては、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル等が挙げられ、例えば、エキセパールIS-CE(花王社)、サラコスHS(日清オイリオ社)、YOFCO MAC、YOFCO CLE-S(以上、日本精化社)等の市販品を使用することができる。
【0017】
フィトステロール脂肪酸エステルとしては、オレイン酸フィトステリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル等が挙げられ、例えば、サラコスPO(日清オイリオ社)、YOFCO MAS、Plandool-G、Plandool-S、Plandool-H、(以上、日本精化社)等の市販品を使用することができる。
【0018】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、マカデミアナッツ油ポリグリセリル、(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリン/ポリグリセリル-6)エステルズ等が挙げられ、例えば、Sフェイス VL-211、VL-212(以上、阪本薬品工業社)等の市販品を使用することができる。
【0019】
ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等が挙げられ、例えば、コスモール168M、コスモール168E、コスモール168EV、コスモール168AR(日清オイリオ社)等の市販品を使用することができる。これらのペンタエリスリトール脂肪酸エステルの中でもテトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチルを用いることが好ましい。
【0020】
(C)としては、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルを用いることが、油性化粧料の安定性上好ましい。(C)の配合量は、油性化粧料全量に対し、1~70質量%配合することが好ましく、より好ましくは3~65質量%である。
【0021】
本発明の油性化粧料の性状は特に限定されず、オイル状、ジェル状、ゲル状、固形等の形態を取り得る。
【0022】
本発明の油性化粧料には、高級アルコールを配合することができる。高級アルコールとしては化粧料に配合し得るものであれば特に限定されない。具体的にはミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。これらの中でもセタノールを用いることが好ましい。
【0023】
本発明の油性化粧料には、ホホバ種子油以外のロウ類を配合することができる。ロウ類としては化粧料に配合し得ものであれば特に限定されない。具体的にはミツロウ、カルナウバロウ、サトウキビロウ、パーム脂、水素添加ラノリン、水素添加ホホバ油等が挙げられる、これらの中でも水素添加ホホバ油を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の油性化粧料は、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0025】
本発明の油性化粧料は定法により調製することができる。
【実施例
【0026】
本発明の油性化粧料の実施例を示す。実施例はあくまでも本発明の一例であり、これによって本発明が限定されるものではない。なお、配合量は断りのない限り質量%で示す。
【0027】
本発明の実施例、比較例の評価方法を示す。
[硬度測定方法]
測定機器:RHEO METER(レオテック社製)
針入プランジャー:ステンレス鋼直径20mm
測定条件:中心表面から10mmまでの距離を、プランジャーを6cm/分で動かすときに必要な最大の力
温度:室温
化粧料:軟こう壷容器
[粘度測定方法]
測定機器:B型粘度計(東機産業株式会社製)
測定条件:ルーターNo.2、No.4、6rpm60秒
温度:室温
[保存安定性]
-5℃、5℃ 24時間サイクル恒温槽 30日保管後の状態を観察
【0028】
表1の記載に基づき、定法により油性化粧料を調製し、翌日の硬度および保存安定性の観察を行った。結果を表1に併せて示す。
【0029】
表1の記載に基づき、定法により油性化粧料を調製し、翌日の硬度および保存安定性の観察を行った。結果を表1に併せて示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示したとおり、(A)ホホバ種子油1質量部に対し(B)を1.5質量部含有する実施例1は、保存安定性が良好出会ったのに対し、(A)1質量部に対し(B)を1.2質量部未満配合した比較例1、2は、保存安定性が良くなく、離油が認められた。分析の結果、離油した成分は、ホホバ種子油であった。
【0032】
【表2】