(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】吐出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20230320BHJP
B65D 47/20 20060101ALI20230320BHJP
B65D 47/24 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B65D47/06 400
B65D47/20 111
B65D47/24
(21)【出願番号】P 2019014338
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】島田 知
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】大田 剛
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141412(JP,A)
【文献】特開2018-203369(JP,A)
【文献】特開2015-217952(JP,A)
【文献】特開2016-190675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 47/20
B65D 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に嵌合され、容器内部に収容された内容物を傾斜させて吐出する吐出キャップであって、
前記吐出キャップは、本体天面と前記本体天面から垂下し前記容器口部と嵌合する嵌合部と、前記本体天面から上方に延出し、容器内部に収容された内容物を吐出する吐出筒と、前記容器内部と前記本体天面との間に区画された弁室とを有し、
前記吐出筒の先端には吐出時に傾斜した際に下方に位置する吐出誘導部が設けられており、
前記弁室には、容器内部と連通し内容物を取り出す供給筒及び弁座を有する底部と、逆止弁とが設けられ、
前記逆止弁は前記供給筒の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに、前記弁座方向に付勢されて前記弁座と当接可能な弁シール面を有し、
前記弁座は、前記弁座と前記弁シール面との当接部に上部開口を形成し、
前記上部開口の下方側には、前記容器内部と連通する下部開口を有する流入調整室が設けられ、
前記下部開口は、前記流入調整室に設けられた調整部材で規定され
、
前記吐出キャップは、キャップ本体と中栓とを有し、
前記キャップ本体は、前記本体天面と、前記本体天面から上方に延出する前記吐出筒と、前記本体天面から垂下し前記容器口部と嵌合する前記嵌合部と、前記本体天面から垂下する係合壁部とを有し、
前記中栓は、前記係合壁部と係合可能に構成されるとともに、前記供給筒が設けられた前記底部を有し、
前記逆止弁は、前記供給筒の内周面と当接可能に構成されるとともに、前記供給筒の軸線方向に移動可能な弁部を有し、
前記弁室は、前記本体天面と前記係合壁部と前記底部とによって形成されていることを特徴とする吐出キャップ。
【請求項2】
容器口部に嵌合され、容器内部に収容された内容物を傾斜させて吐出する吐出キャップであって、
前記キャップは、キャップ本体と前記キャップ本体にヒンジ接続された上蓋とを有し、
前記キャップ本体は、本体天面と前記本体天面から垂下し前記容器口部と嵌合する嵌合部と、前記本体天面から上方に延出し、容器内部に収容された内容物を吐出する吐出筒と、前記容器内部と前記本体天面との間に区画された弁室とを有し、
前記吐出筒の先端には吐出時に傾斜した際に下方に位置する吐出誘導部が設けられており、
前記弁室には、容器内部と連通し内容物を取り出す供給筒及び弁座を有する底部と、逆止弁とが設けられ、
前記逆止弁は前記供給筒の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに、前記弁座方向に付勢されて前記弁座と当接可能な弁シール面を有し、
前記弁座は、前記弁座と前記弁シール面との当接部に上部開口を形成し、
前記上部開口の下方側には、前記容器内部と連通する下部開口を有する流入調整室が設けられ、
前記下部開口は、前記流入調整室に設けられた調整部材で規定され、
前記本体天面には、前記本体天面の前記弁部に対向する箇所よりも外方から前記吐出筒にかけて延びる溝状の案内部と、前記案内部のうち、ヒンジ接続側から前記吐出筒にかけて膨出形成されたリブとが設けられていることを特徴とする吐出キャップ。
【請求項3】
前記吐出キャップは、キャップ本体と、中栓と、逆止弁とで構成され、
前記キャップ本体は、本体天面と、前記本体天面から上方に延出する吐出筒と、前記本体天面から垂下し容器口部と嵌合する嵌合部と、前記本体天面から垂下する係合壁部とを有し、
前記中栓は、前記係合壁部と係合可能に構成されるとともに、前記供給筒が設けられた底部を有し、
前記逆止弁は、前記供給筒の内周面と当接可能に構成されるとともに、前記供給筒の軸線方向に移動可能な弁部を有し、
前記弁室は、前記本体天面と前記係合壁部と前記底部とによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の吐出キャップ。
【請求項4】
前記下部開口の流路断面積は、前記上部開口の流路断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1
乃至請求項3のいずれかに記載の吐出キャップ。
【請求項5】
前記底部の前記弁座より下方には、前記底部から下方に延びる供給筒が前記底部と一体に形成され、
前記調整部材は、前記供給筒から内方へ延びる環状邪魔板から形成され、
前記流入調整室は、前記供給筒の内面と前記環状邪魔板の上面とから区画されていることを特徴とする請求項1
乃至請求項4のいずれかに記載の吐出キャップ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれかに記載の吐出キャップに嵌合する容器であって、
前記容器は、内容物を収容する可撓性の内部容器と、前記内部容器を内包する外部容器とを有し、
前記外部容器には、前記内部容器と前記外部容器との間に外気を吸引可能な吸入弁が設けられていることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に嵌合され、容器内部に収容された内容物を吐出する吐出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内部に収容された液状内容物または粘性を有する流動性内容物を吐出する吐出キャップとして、容器内部と吐出口との間に逆止弁が設けられている吐出キャップが公知である。この吐出キャップは、容器から内容物を吐出する際に、容器の外部から加圧された内容物が逆止弁を弁座から離脱させることで、容器内部から吐出口へ内容物が通過し吐出するとともに、内容物への加圧を解除することで、逆止弁が弁座に密着し容器を密閉するため、容器内部を外気から遮断でき、容器内部に残っている内容物の乾燥や酸化等の劣化を防ぐことができる。
【0003】
例えば、特許文献1等で公知の吐出キャップは、容器口部と嵌合する嵌合部と、容器内部に収容された内容物を吐出する吐出口とを有するとともに、容器内部と吐出口との間に区画された弁室をさらに有し、弁室には、容器内部と連通し、内容物を取り出す供給孔及び弁座を有する底部と、逆止弁とが設けられ、逆止弁は供給孔の軸線方向に沿って摺動可能に設けられるとともに、弁座方向に付勢されて弁座と当接可能に構成されており、可撓性の容器に取り付けて使用する場合は容器を握る等して圧力をかけることで逆止弁が弁座から離脱し、内容物を吐出口から吐出するものであり、使用時以外は逆止弁によって供給孔は閉塞されているため、容器内部に残っている内容物の乾燥や酸化等の劣化を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等で公知の吐出キャップには、未だ改善の余地があった。
すなわち、逆止弁によって容器内部を外気から遮断することはできるが、使用時に逆止弁による閉塞を解除する際、必要以上の圧力で容器を押圧してしまうと、逆止弁が弁座から急に大きく移動して流路が開きすぎてしまい、必要以上に多くの内容物を吐出してしまう虞があった。
また、弁座からの離脱圧力が高くなるような逆止弁を使用することで、流路が大きく開きにくい構成にすることも考えられるが、逆止弁が弁座から離脱するまでに時間がかかるとともに、逆止弁が弁座から離脱する際に必要な押圧力が大きいため、急激に内容物が吐出されることで内容物の流れに乱れが発生し、吐出時に周囲に飛び散る虞があった。
【0006】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、逆止弁の弁座からの離脱圧力が変わらず、必要以上に容器を押圧した場合でも必要以上のストローク量で逆止弁が弁座から離脱することがなく、吐出時に内容物が飛び散るような勢いを抑制可能な吐出キャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吐出キャップは、容器口部に嵌合され、容器内部に収容された内容物を傾斜させて吐出する吐出キャップであって、前記吐出キャップは、本体天面と前記本体天面から垂下し前記容器口部と嵌合する嵌合部と、前記本体天面から上方に延出し、容器内部に収容された内容物を吐出する吐出筒と、前記容器内部と前記本体天面との間に区画された弁室とを有し、前記吐出筒の先端には吐出時に傾斜した際に下方に位置する吐出誘導部が設けられており、前記弁室には、容器内部と連通し内容物を取り出す供給筒及び弁座を有する底部と、逆止弁とが設けられ、前記逆止弁は前記供給筒の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに、前記弁座方向に付勢されて前記弁座と当接可能な弁シール面を有し、前記弁座は、前記弁座と前記弁シール面との当接部に上部開口を形成し、前記上部開口の下方側には、前記容器内部と連通する下部開口を有する流入調整室が設けられ、前記下部開口は、前記流入調整室に設けられた調整部材で規定され、前記吐出キャップは、キャップ本体と中栓とを有し、前記キャップ本体は、前記本体天面と、前記本体天面から上方に延出する前記吐出筒と、前記本体天面から垂下し前記容器口部と嵌合する前記嵌合部と、前記本体天面から垂下する係合壁部とを有し、前記中栓は、前記係合壁部と係合可能に構成されるとともに、前記供給筒が設けられた前記底部を有し、前記逆止弁は、前記供給筒の内周面と当接可能に構成されるとともに、前記供給筒の軸線方向に移動可能な弁部を有し、前記弁室は、前記本体天面と前記係合壁部と前記底部とによって形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る吐出キャップによれば、逆止弁は供給筒の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに、弁座方向に付勢されて弁座と当接可能な弁シール面を有し、弁座は、弁座と弁シール面との当接部に上部開口を形成し、上部開口の下方側には、容器内部と連通する下部開口を有する流入調整室が設けられ、下部開口は、流入調整室に設けられた調整部材で規定されているため、弁室に流入する際の内容物を、容器内部から上部開口を越えて直接弁室に流入させずに一度流入調整室内に流入させることで、内容物が吐出する勢いを制限できる。
また、流入調整室に内容物を流入させることで、逆止弁に勢いよく内容物がぶつかることを阻止でき、逆止弁の急な開放による内容物の飛び出しを抑えることができる。
さらに、流入調整室は、調整部材で規定される下部開口を有するため、調整部材の配置や大きさによって、流入調整室内への内容物の流入速度の抑制や、流入調整室内への内容物流入位置を分散することができる。
また、弁室は、キャップ本体の係合壁部に中栓が嵌合することで形成されるため、各部の形状の設計自由度が高く、例えば、中栓側のみを形状変更して流入調整室の形状を変更する場合、同じキャップ本体を形状の異なる中栓に対して使用することができる。
【0009】
請求項2に係る吐出キャップによれば、逆止弁は供給筒の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに、弁座方向に付勢されて弁座と当接可能な弁シール面を有し、弁座は、弁座と弁シール面との当接部に上部開口を形成し、上部開口の下方側には、容器内部と連通する下部開口を有する流入調整室が設けられ、下部開口は、流入調整室に設けられた調整部材で規定されているため、弁室に流入する際の内容物を、容器内部から上部開口を越えて直接弁室に流入させずに一度流入調整室内に流入させることで、内容物が吐出する勢いを制限できる。
また、流入調整室に内容物を流入させることで、逆止弁に勢いよく内容物がぶつかることを阻止でき、逆止弁の急な開放による内容物の飛び出しを抑えることができる。
さらに、流入調整室は、調整部材で規定される下部開口を有するため、調整部材の配置や大きさによって、流入調整室内への内容物の流入速度の抑制や、流入調整室内への内容物流入位置を分散することができる。
また、本体天面には、本体天面の弁部に対向する箇所よりも外方から吐出筒にかけて延びる溝状の案内部と、案内部のうち、ヒンジ接続側から吐出筒にかけて膨出形成されたリブとが設けられているため、内容物の吐出時に案内部とリブとによって弁室からの内容物の流動が安定化され、内容物を飛び散ることなく吐出できる。
請求項3に記載の構成によれば、弁室は、キャップ本体の係合壁部に中栓が嵌合することで形成されるため、各部の形状の設計自由度が高く、例えば、中栓側のみを形状変更して流入調整室の形状を変更する場合、同じキャップ本体を形状の異なる中栓に対して使用することができる。
請求項4に記載の構成によれば、下部開口の流路断面積は、上部開口の流路断面積よりも小さいため、下部開口、すなわち容器内部から流入調整室内へ流入する内容物の流量を抑えることができ、上部開口、すなわち流入調整室から弁室への内容物の飛び出しをより確実に抑えることができる。
請求項5に記載の構成によれば、底部の弁座より下方には、底部から下方に延びる供給筒が底部と一体に形成されているため、流入調整室を構成する際に必要な部品の数を削減することができ、製造コストを低減できる。
また、調整部材は、供給筒から内方へ延びる環状邪魔板から形成され、流入調整室は、供給筒の内面と環状邪魔板の上面とから区画されているため、円形の下部開口と円筒状の流量調整室が規定される。
したがって、容器内部から流入調整室内へ流入する内容物の流量や勢いをコントロールしやすくなり、上部開口、すなわち流入調整室から弁室への内容物の飛び出しをより確実に抑えることができる。
【0011】
請求項6に係る容器によれば、内容物を収容する可撓性の内部容器と、内部容器を内方する外部容器とを有し、外部容器には、内部容器と外部容器との間に外気を吸引可能な吸入弁が設けられているため、外部容器を押圧して内部容器内の圧力を高め内容物を吐出した後、外部容器の押圧を解除すると、内容物の吐出に伴い減少した外部容器内の体積を、吸入弁から外気を吸引することで補填し外部容器のみ復元することができ、使用後に内容物が少なくなった場合でも、使用前と同様の使用感で容器を押圧して逆止弁を弁座から離脱させ、内容物を吐出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吐出キャップ100の、側面断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吐出キャップ100の、上蓋120を開けた状態を示す側面断面図及びA部拡大図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るキャップ本体110の下面図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る中栓131の上面図及び側面断面図と、逆止弁132の上面図及び側面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る吐出キャップ100の、吐出時の状態を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る吐出キャップ100について、図面に基づいて説明する。なお、吐出キャップ100に嵌合する容器200は、容器口部201周辺のみを図示する。また、上蓋120は、
図1を除いて図示しない。
吐出キャップ100は、容器200の容器口部201に嵌合され、容器200の内部に収容された内容物Pを吐出するものであり、
図1乃至
図3に示すように、キャップ本体110と、上蓋120と、弁室130とが設けられている。
【0014】
キャップ本体110は、本体天面111と、本体天面111から下方に垂下する嵌合壁部113と、吐出口114aを有する吐出筒114と、嵌合壁部113より内側で本体天面111から下方に円筒状に垂下する係合壁部115と、本体転面111の周縁部から下方に垂下するスカート壁116とを有している。
【0015】
嵌合壁部113及びスカート壁116が容器口部201との嵌合部であり、キャップ本体110と容器200とは、嵌合壁部113とスカート壁116との内周面上方に設けられた係合凸部118との間に容器口部201を挿入することで嵌合し、スカート壁116の内周面下方に設けられた係止リブ117を、容器口部201の係止突条202が乗り越えた位置で吐出キャップ100と容器200との位置関係が固定される。
また、係合壁部115の下端部には内方に突出する突条115aが形成されている。
【0016】
上蓋120は、キャップ本体110とヒンジ119によって接続されており、上蓋天面121と、上蓋121から垂下した閉塞栓122とを有している。
吐出筒114のヒンジ接続側と反対側には、吐出誘導部114bが形成されている。
【0017】
中栓131は、
図4に示すように、中央に容器200の内部と連通する下部開口135aを有し下方に延出する円環状の供給筒135が設けられた円環状の底部133と、底部133の外縁部から上方に延出する複数の係合柱部136とを有している。
また、下部開口135aは、供給筒135の下端部から半径方向内方向かって形成された調整部材135bに囲まれるように配置されている。
【0018】
底部133上面から供給筒135内面との弧状接続領域には後述する弁部138の弁シール面138aと当接する弁座134が形成されている。
【0019】
エラストマーまたは低密度ポリエチレンの如き比較的軟質である合成樹脂から形成される逆止弁132は、略円板形状であって下方に位置する弁部138と、円環形状であって上方に位置する基部140と、弁部138と基部140とを接続する接続片141とを有する。
弁部138の上面は上方に膨出しており、上面と下面が上方にやや膨らんだ弧状断面形状を有している。
【0020】
また、弁部138の外周面下端部には半径方向内方に向かって下方に傾斜する逆円錐台形状の弁シール面138aが形成されている。
接続片141は周方向に等角度間隔を置いて3個配設される帯状部材である。よって、弁部138には接続片141の弾性力による下向きの復元力が常時作用せしめられる。
【0021】
弁室130は、本体天面111の下面側に設けられており、本体天面111と、係合壁部115と、中栓131とで区画された空間として形成される。
弁室130内には、下方に付勢された逆止弁132の弁部138の弁シール面138aが、底部133の供給筒135の上方に形成された弁座134に当接可能に設けられている。
また、弁座134は、弁座134と弁シール面138aとの当接部に上部開口134aを形成している。
なお、上部開口134aと下部開口135aとは、同一の中心軸を中心とした円形状に形成されている。
【0022】
また、底部133は半径方向外方に向かって下方へ傾斜しており、底部133及び係合柱部136と係合壁部115とが当接することで、逆止弁132が弁室130内に係合保持される。
さらに、弁室130の下方には、弁部138と、供給筒135と、調整部材135bとで区画された流入調整室142が形成される。
【0023】
なお、図示の実施例において、調整部材135bは、供給筒135の下端から内方へ延びる環状邪魔板135bから形成されている。
したがって、流入調整室142は、供給筒135の内面と環状邪魔板135bの上面とから区画されている。
また、本体天面111には、少なくとも本体天面111の弁部138に対向する箇所よりも外方から吐出筒114にかけて延びる溝状の案内部112aと、案内部112a内のヒンジ接続側から吐出筒114にかけて膨出形成されたリブ112bとが設けられている。
【0024】
容器200は、内容物Pを収容する可撓性の内部容器(図示しない)と、内部容器(図示しない)を内包する弾性を備えた外部容器(図示しない)とを有し、内部容器(図示しない)と外部容器(図示しない)との間に外気を吸引可能な吸入弁(図示しない)が設けられており、内容物Pの吐出に伴い減少した外部容器(図示しない)内の体積を、吸入弁(図示しない)から外気を吸引することで復元するものである。
【0025】
次に、本実施形態における吐出キャップ100による、内容物Pの吐出動作について、
図5を用いて説明する。
まず、容器200を外側から押圧すると、容器200は変形し、加圧された内容物Pが、下部開口135aを通り流入調整室142へ流入する。
【0026】
このとき、下部開口135aは、調整部材135bに囲まれ、供給筒135の上部開口134aよりも小径に形成されているため、内容物Pは流入調整室142内へ流入する際に流量を抑えられ、弁部138に勢いよくぶつかることがなくなり、弁部138が急に開放されることがなく、内容物Pの急な飛び出しを抑制できる。
また、上部開口134aと下部開口135aとは、同一の中心軸を中心とした円形状に形成されていることで、通常使用時の内容物Pの流動を阻害することなく安定的に吐出可能であるとともに、内容物Pの急な飛び出しをより一層抑制できる。
【0027】
流入調整室142内が内容物Pで満たされると、内容物Pは徐々に弁座134側に付勢されている逆止弁132の弁部138を流入調整室142側から押し上げ、弁部138の弁シール面138aと弁座134との間を通り、弁室130内へ流入する。
このとき、逆止弁132の開放量は押圧力の強さによって変化するが、下部開口135aが供給筒135の上部開口134aよりも小径、つまり下部開口135aの流路断面積が上部開口134aの流路断面積よりも小さく設けられていることで、下部開口135aから流入調整室142へ補充される内容物Pの量を抑えているため、流入調整室142から弁室130へ内容物Pが流入する度に弁部138へかかる押圧力が下がりやすくなり、容器200を強く押圧しても、逆止弁132が大きく開放されることがなく、内容物Pが急激に飛び出すようなことがない。
【0028】
弁室130へ流入した内容物Pは、吐出筒114を通り、吐出誘導部114bに沿って吐出される。
このとき、弁室130から吐出筒114にかけて案内部112aと、リブ112bとが設けられており、案内部112aとリブ112bとによって弁室130からの内容物Pの流動が安定化されるため、内容物Pはより一層飛び散ることなく吐出される。
【0029】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
なお、上述した実施形態では、容器は内容物を収容する可撓性の内部容器と、内部容器を内包する弾性を備えた外部容器とで構成されているものとして説明したが、容器の構成はこれに限定されず、例えば、内部容器を用いずに外部容器のみで構成してもよく、容器底部に上下動可能なピストンを設けて、容器内容積が可変となるように構成してもよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、吐出キャップにはヒンジ接続された上蓋が設けられているものとして説明したが、吐出キャップの形態はこれに限定されず、例えば、上蓋がなくてもよく、キャップ本体とは別体のスクリューキャップ式の上蓋として設けてもよい。
また、上述した実施形態では、弁室は、本体天面と、係合壁部と、中栓とで区画された空間として形成されているものとして説明したが、弁室の形成方法はこれに限定されず、例えば、キャップ本体とは別体の弁室を用意し、キャップ本体の所定の位置に弁室を嵌合させて吐出キャップを構成するようにしてもよく、容器口部の先端に中栓を設け、キャップ本体と容器口部を嵌合することで弁室を形成してもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、本体天面には、少なくとも本体天面の弁部に対向する箇所よりも外方から吐出筒にかけて延びる溝状の案内部と、案内部内のヒンジ接続側から吐出筒にかけて膨出形成されたリブとが設けられているものとして説明したが、本体天面の構成はこれに限定されず、例えば、リブが複数設けられていてもよく、案内部やリブが形成されていなくてもよい。
また、上述した実施形態では、下部開口は、供給筒の下端部から半径方向内方に向かって形成された調整部材に囲まれるように配置されているものとして説明したが、下部開口の構成はこれに限定されず、例えば、調整部材を供給筒の下端部の一部を塞ぐように格子状に配置して、調整部材によって形成された複数の隙間を下部開口としてもよく、調整部材と兼ねて下方が窄まった円錐台状の供給筒を設け、供給筒の下端部の開口を下部開口としてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、弁室の下方には、弁部と、供給筒と、調整部材とで区画された流入調整室が形成されるものとして説明したが、流入調整室の構成はこれに限定されず、例えば、上部開口と下部開口の間に下部開口よりも開口面積の狭い中間開口部が設けられていてもよい。
また、上述した実施形態では、上部開口と下部開口とは、同一の中心軸を中心とした円形状に形成されているものとして説明したが、上部開口と下部開口との関係はこれに限定されず、例えば、上部開口の中心と下部開口の中心とがそれぞれ別の中心軸上にあってもよく、下部開口が多角形状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 ・・・ 吐出キャップ
110 ・・・ キャップ本体
111 ・・・ 本体天面
112a ・・・ 案内部
112b ・・・ リブ
113 ・・・ 嵌合壁部
114 ・・・ 吐出筒
114a ・・・ 吐出口
114b ・・・ 吐出誘導部
115 ・・・ 係合壁部
115a ・・・ 突条
116 ・・・ スカート壁
117 ・・・ 係止リブ
118 ・・・ 係合凸部
119 ・・・ ヒンジ
120 ・・・ 上蓋
121 ・・・ 上蓋天面
122 ・・・ 閉塞栓
130 ・・・ 弁室
131 ・・・ 中栓
132 ・・・ 逆止弁
133 ・・・ 底部
134 ・・・ 弁座
134a ・・・ 上部開口
135 ・・・ 供給筒
135a ・・・ 下部開口
135b ・・・ 調整部材(環状邪魔板)
136 ・・・ 係合柱部
138 ・・・ 弁部
138a ・・・ 弁シール面
140 ・・・ 基部
141 ・・・ 接続片
142 ・・・ 流入調整室
200 ・・・ 容器
201 ・・・ 容器口部
202 ・・・ 係止突条
P ・・・ 内容物