(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】移動体の位置測定システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230320BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20230320BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/04 D
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2019038240
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】小原 政憲
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146074(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146882(WO,A1)
【文献】特開2005-275655(JP,A)
【文献】国際公開第2008/068837(WO,A1)
【文献】特開2009-245295(JP,A)
【文献】特開2014-041814(JP,A)
【文献】特開2003-151070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0100324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G09B 29/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を撮像する少なくとも1つの撮像カメラを含む位置測定装置と、
移動体に搭載され、前記位置測定装置と通信可能な電子装置とを有し、
前記電子装置は、
移動体の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された位置に基づき自車が予め決められた測定エリアに進入したか否かを判定する判定手段と、
前記測定エリアに進入したと判定されたとき、前記位置検出手段に基づく移動体の移動情報と移動体の外観情報とを含む識別情報を前記位置測定装置に送信する送信手段と、
前記位置測定装置から位置情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記位置情報に基づき前記位置検出手段によって検出された位置を補正する補正手段とを含み、
前記位置測定装置は、
前記撮像カメラで撮像された画像データを受け取り、当該画像データ内の移動体を認識し、認識した移動体の位置情報および外観情報を履歴情報として算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された複数の移動体の履歴情報を記憶する記憶手段と、
前記識別情報の移動情報および外観情報と前記履歴情報の位置情報および外観情報とを照合し、前記識別情報に対応する履歴情報を識別する識別手段と、
識別された履歴情報に基づく位置情報を移動体に送信する送信手段とを有する、移動体の位置測定システム。
【請求項2】
前記測定エリアは、GPS測位による測位精度が悪化するエリアであり、前記移動情報は、前記位置検出手段に含まれる自立航法センサにより検出されたものである、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記移動情報は、移動体の時系列差分情報を含む、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項4】
前記識別情報に含まれる移動体の外観情報は、車両のナンバーおよび車体の色を含み、前記履歴情報に含まれる移動体の外観情報は、画像データから認識された車両のナンバーおよび車体の色を含む、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記識別情報はさらに自局宛のアドレスを含み、前記送信手段は、前記アドレスに基づき前記位置情報を送信する、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項6】
前記算出手段は、画像データの中の移動体を矩形状の認識領域で切り出し、移動体の位置情報を算出するために、切り出した矩形状の座標を、緯度および経度を含む位置に変換することを含む、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項7】
前記算出手段は、前記矩形状の認識領域の緯度または経度に応じて誤差を算出し、算出した誤差を前記位置情報に付加する、請求項6に記載の位置測定システム。
【請求項8】
前記算出手段は、位置が変化することがない目標物を撮像した基準画像を利用し、当該基準画像に映された目標物と前記画像データに映された目標物との差分に基づき前記画像データの位置を補正する、請求項1に記載の測定システム。
【請求項9】
前記撮像カメラは、予め決められた位置に設置され、決められた空間を撮像し、前記位置測定装置は、前記撮像カメラからの画像データを無線通信により受け取る、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項10】
前記位置測定装置は、撮像カメラおよび前記電子装置とネットワークを介して接続されるサーバーである、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項11】
前記撮像カメラは、交差点を撮像する、請求項9に記載の位置測定システム。
【請求項12】
前記電子装置は、車両に搭載された車載装置である、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項13】
前記電子装置は、携帯型端末装置である、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項14】
前記電子装置は、前記位置測定装置から受信した位置情報を出力する出力手段を含む、請求項1に記載の位置測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置により撮像された移動体の画像データを利用した移動体の位置測定システムに関し、特に不特定の移動体の位置測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置を特定する技術として代表的なのは、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、最近では準天頂衛星を用意し、常に頭上にある衛星からGPS信号を利用して精度の高い位置測定をおこなうものもある。また、Bluetooth/Wifiの機器を複数台用意し、それらの機器と通信する信号の減衰をみて位置を特定する技術もある。さらにカメラ画像を使って画像処理し位置を特定する技術もある。例えば、識別マークを取り付けた移動対象物をカメラ画像で識別することで移動対象物の位置を特定し、移動対象物への位置情報の連絡や走行経路の指示等を行う技術も存在する。
【0003】
例えば、特許文献1は、車両周辺を撮像した画像データの中から特定の指標を認識し、認識された指標に関連付けされている位置情報を利用して車両の位置を決定する車両位置検出装置を開示している。特許文献2は、室内空間において、カメラで撮像した画像から移動ロボット位置をリアルタイムで求めるシステムを開示している。特許文献3は、複数の移動体の移動する空間を撮像する撮像カメラで撮像した画像データから移動体の位置を特定し、特定された位置からゴールとなる位置までの経路を設定し、移動体ごとの経路に沿って移動体の走行制御を行う移動体移動制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-10335号公報
【文献】特開2018-14064号公報
【文献】国際公開WO2002/023297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GNSSによる測位は、トンネルや室内などの頭上が開けていない環境では、著しく位置精度が劣化するという課題がある。また、Bluetooth(Ibeacon)/Wifiの機器は、設置場所や通信範囲が限られ、あまり精度を期待できるものではない。
【0006】
また、特許文献1ないし3は、撮像カメラを利用して位置を測定するものであるが、特許文献1は、路上に設置されたカメラで撮像された画像を受信するもの(第4実施形態)であり、カメラの設置には限界があり、またコスト高になってしまう。特許文献2や3では、カメラで撮像した移動体の画像を処理して位置を特定し、測定した位置を移動体に通信するが、移動体の画像情報を事前に機械学習させる必要があり、識別情報を事前に認識していない移動体に対しては位置特定できないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決し、撮像カメラで撮像された画像データを利用して不特定の移動体の位置を精度良く測定することができる移動体の位置測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移動体の位置測定システムは、移動体を撮像する少なくとも1つの撮像カメラを含む位置測定装置と、移動体に搭載され、移動体の識別情報を前記位置測定装置に送信し、前記位置測定装置から位置情報を受信する機能を備えた電子装置とを有し、前記位置測定装置は、前記撮像カメラで撮像された画像データに基づき移動体の位置を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された移動体の位置の履歴情報を記憶する記憶手段と、移動体からの識別情報に対応する履歴情報を識別する識別手段と、識別された履歴情報に基づき位置情報を移動体に送信する送信手段とを有する。
【0009】
ある実施態様では、移動体の移動情報を含む。ある実施態様では、前記移動情報は、移動体の位置変化を表す情報を含む。ある実施態様では、前記識別情報は、移動体の外観情報を含む。ある実施態様では、前記外観情報は、車両のナンバーまたは車体の色を含む。ある実施態様では、前記識別情報は、自局宛ての情報を受信するためのアドレス情報を含む。ある実施態様では、前記算出手段は、画像データの中の移動体の座標を、緯度および経度を含む位置に変換する。ある実施態様では、前記算出手段は、画像データの中の移動体の位置に応じて移動体の座標の誤差を補正する。ある実施態様では、前記撮像カメラは、予め決められた位置に設置され、決められた空間を撮像し、前記位置測定装置は、前記撮像カメラからの画像データを無線通信により受け取る。ある実施態様では、前記位置測定装置は、撮像カメラおよび前記電子装置とネットワークを介して接続されるサーバーである。ある実施態様では、前記撮像カメラは、交差点を撮像する。ある実施態様では、前記撮像カメラは、オフィス空間を撮像する。ある実施態様では、前記電子装置は、車両に搭載された車載装置である。ある実施態様では、前記電子装置は、携帯型端末装置である。ある実施態様では、前記電子装置は、前記位置測定装置から受信した位置情報を出力する出力手段を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像カメラで撮像された画像データに基づき移動体の位置を算出し、算出された位置の履歴情報を記憶し、移動体からの識別情報に対応する履歴情報を識別し、識別された履歴情報に基づき位置情報を移動体に送信するようにしたので、事前に特定されていない不特定の移動体の位置を測定し、移動体により正確な位置情報を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る位置測定システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係る車載装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施例に係る位置情報取得プログラムの機能的な構成を示す図である。
【
図4】本実施例の位置情報取得プログラムの動作フローである。
【
図5】本発明の実施例に係るサーバーの構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施例に係るサーバーの制御部の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図7】本実施例のサーバーの位置測定動作を示すフローである。
【
図8】本実施例の座標変換部の動作を説明する図である。
【
図9】本実施例の座標変換部により得られた位置(緯度、経度)の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例による座標変換部による位置情報の共有を説明する図である。
【
図11】本発明の実施例による座標変換部の誤差補正を説明する図である。
【
図12】本発明の実施例による座標変換部の較正を説明する図である。
【
図13】本発明の実施例による移動体の位置測定システムの動作を説明する図である。
【
図14】本発明の実施例による移動体の特徴と画像認識された移動体の特徴との関連付け方法を説明する図である。
【
図15】本発明の他の実施例による位置測定システムの構成を示す図である。
【
図16】本発明の他の実施例による携帯端末装置の構成を示す図である。
【
図17】本発明の他の実施例による携帯端末装置の動作フローを示す図である。
【
図18】本発明の他の実施例による位置測定サーバーの動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明に係る移動体の位置測定システムは、移動体に搭載された電子装置と、移動体の位置を測位する位置測定装置とを含む。電子装置は、コンピュータ装置、スマートフォンに代表される高機能型携帯電話端末、ポータブル端末、またはナビゲーション・オーディオ・ビジュアル機能を備えた車載装置であることができる。ある実施態様では、位置測定装置は、ネットワークに接続されたサーバーであり、電子装置や撮像カメラとの間でデータ通信を行う。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る移動体の位置測定システムの概略構成を示す図である。本実施例の移動体の位置測定システム10は、種々の車両M1、M2、M3に搭載された車載装置100と、予め決められた位置に設置され、決められた空間を撮像する1つまたは複数の撮像カメラ200(200_1~200_4)、と、インターネット等のネットワーク等を介して車載装置100および撮像カメラ200に接続された位置測定サーバー300とを含んで構成される。
【0014】
本実施例の位置測定システム10は、撮像カメラ200によって撮像された車両の画像データを解析して車両の位置を算出し、算出された位置の履歴情報と車載装置100から送信される識別情報とを照合し、識別情報に該当する履歴情報を識別し、識別された履歴情報に基づき位置情報を車両に送信し、不特定の車両の位置測定を行うことを可能にする。また、本実施例の位置測定システム10は、撮像カメラによって車両を監視し、画像認識された車両と実際の車両との関連付けを行い、画像認識された車両の位置を実際の車両に送信することで、例えば、測位環境が良好でない車両に高精度の位置情報を提供することができる。
【0015】
撮像カメラ200は、
図1に示すように、例えば、ビル等の建造物、駐車場や信号機などに設置された1つまたは複数の定点カメラまたは防犯カメラであり、例えば、交差点エリアを走行する車両を撮像する。撮像カメラ200には、位置測定サーバー300と通信をするための通信モジュールが搭載され、撮像カメラ200は、通信モジュールを介して撮像した画像データを位置測定サーバー300に送信する。
【0016】
通信モジュールは、予め決められた送信フォーマットに従い、画像データを位置測定サーバー300に送信する。送信フォーマットは、例えば、ヘッダー情報として位置測定サーバー300の送信先アドレス、撮像カメラ200を識別する撮像カメラID、撮像時間等を含み、ボディ情報として画像データを含む。撮像カメラ200は、例えば、1秒間に30フレームまたは60フレームからなる画像データを生成し、このような画像データを圧縮して撮像時間とほぼリアルタイムで位置測定サーバー300に送信される。画像データの圧縮方法は任意である。
【0017】
また、ある実施態様では、撮像カメラ200は、制御モジュールを搭載することができ、制御モジュールは、位置測定サーバー300からの遠隔指示に応じて撮像カメラ200の動作を制御する。位置測定サーバー300は、例えば、撮像カメラ200の撮像の開始や停止を指示したり、撮像カメラ200のアクチュエータを介して撮像方向を調整する。
【0018】
図2に、本実施例の車載装置100の内部構成を示す。車載装置100は、位置測定サーバー300との通信を行う通信部110、表示部120、ナビゲーション用の地図データやその他必要データを記憶する記憶部130、自車の絶対位置を検出するためのGPS信号を受信するGPS受信部140、自車の相対的な方位を検出するための加速度・角速度センサ150、ナビゲーション機能を含む各部の制御を行う制御部160を含んで構成される。なお、ここに示す車載装置100の構成は一例であり、車載装置100はさらに、オーディオ信号やビデオ信号を再生する機能、テレビ放送やラジオ放送を受信する機能などを含むことができる。
【0019】
制御部160は、例えば、ROM/RAM等を含むマイクロコントローラやマイクロプロセッサを含み、ROMに格納されたソフトウエアプログラムを実行することで各部を制御する。本実施例では、制御部160は、ナビゲーション動作を制御するプログラムに加えて、自車の識別情報を位置測定サーバー300に送信したり、位置測定サーバー300から位置情報を受信する位置情報取得プログラムを実行する。位置情報取得プログラムは、単独で実行されてもよいし、ナビゲーション用のプログラムが実行されるときにこれと連携して実行されてもよい。
【0020】
図3は、位置情報取得プログラムの機能的な構成を示すブロック図である。本実施例の位置情報取得プログラム170は、自車位置を検出する自車位置検出部172と、位置測定システム10による測定エリアに自車が入ったか否かを判定する測定エリア判定部174と、測定エリア内と判定された場合に、自車の識別情報を位置測定サーバー300に送信する識別情報送信部176と、位置測定サーバー300から自車の位置情報を受信する位置情報受信部178と、受信した位置情報に基づき車載装置100で検出した自車位置を修正する自車位置修正部180とを含んで構成される。修正された自車位置は、表示部120に表示されたり、あるいはナビゲーションに利用される。
【0021】
自車位置検出部172は、GPS受信部140で受信されたGPS信号および/または加速度・角速度センサ150の検出結果に基づき自車位置を検出する。自車位置検出部172は、一定の時間間隔で現在の自車位置を検出する。
【0022】
測定エリア判定部174は、自車位置検出部172により検出された自車位置が測定エリア内に進入したか否かを判定する。測定エリアは、例えば、高層ビル等が立ち並びGPS信号のマルチパス等が生じ易いエリア、GPS衛星を測位し難いようなエリア、つまり車載装置100の自車位置精度が悪化するようなエリアである。このような測定エリアの位置座標は予め設定される。また、測定エリアは、ナビゲーションが使用する道路地図データに関連付けして設定されるようにしてもよい。例えば、高層ビルが立ち並ぶような市街地エリアや特定の道路を含むようなエリアである。
【0023】
測定エリア判定部174によって自車が測定エリア内に進入したと判定されると、識別情報送信部176は、自車の識別情報を位置測定サーバー300に送信する。自車の識別情報は、自車を識別する自車ID、位置測定サーバー300から位置情報を受け取るときの自局宛てのアドレス、自車の移動を識別可能な移動情報、自車の外観を識別可能な外観情報を含むことができる。自車の移動情報は、位置、速度、方位などの時間的変化量あるいは移動ベクトルなどを含む。自車の速度は、例えば、自車位置検出部172で検出された単位時間当たりの自車位置の変化から算出したり、車速センサから出力される車速パルスに基づき算出される。方位は、GPSで測位された位置変化や加速度・角度センサ150の検出結果から算出される。移動情報は、自車が測定エリア内を走行している期間中、算出される。また、外観情報は、自車の外観形状の特徴、自車の色、自車のナンバープレート等の情報であり、これらは予め記憶部130に格納され、そこから読み出される。
【0024】
識別情報送信部176は、自車が測定エリア内を走行している期間中、識別情報を一定周期で位置測定サーバー300に送信する。識別情報は、位置測定サーバー300において、画像データの中の車両の走行を識別するために用いられる。
【0025】
位置情報受信部178は、位置測定サーバー300によって測定された自車の位置情報を受信する。位置情報は、車両位置とその時刻とを含む。自車位置修正部180は、受信した位置情報に基づき自車位置を演算し、車載装置100において検出された自車位置を修正する。修正された自車位置は、GPS信号のマルチパス等の影響を受けないため、車載装置100で検出された自車位置よりも高い精度を有する。
【0026】
図4に、本実施例の位置情報取得プログラムの動作フローを示す。測定エリア判定部174は、自車が測定可能エリアに進入したか否かを判定し(S100)、進入したと判定されると、識別情報送信部176は、自車の識別情報(移動データや外観情報等)を位置測定サーバー300に送信する(S102)。その後、位置情報受信部178は、位置測定サーバー300から自車の位置情報(車両位置とそのときの時刻)を受信したか否かを監視し(S104)、自車位置が受信されると、自車位置修正部180により自車位置が演算され、車載装置100で検出された自車位置が修正または補正される(S106)。この修正された自車位置が、例えば、表示部120の道路地図画面上に表示される。
【0027】
図5に、本実施例の位置測定サーバーの構成を示す。位置測定サーバー300は、撮像カメラ200からの画像データを受信する画像データ受信部310と、車載装置100との通信を行う通信部320と、各部を制御する制御部330と、撮像カメラ200からの画像データや車両からの識別情報等を格納する記憶部340とを有する。
【0028】
画像データ受信部310は、
図1に示すように、交差点等の建物や信号機などに設置された撮像カメラによって撮像された画像データをネットワーク等を介して受信する。受信した画像データは、制御部330に提供される。通信部320は、上記したように、測定エリアに進入した車両から当該車両の識別情報を受信したり、車両に位置情報を送信する。
【0029】
制御部330の機能的な構成を
図6に示す。制御部330は、通信部320を介して車両からの識別情報を受信する識別情報受信部350と、画像データ受信部320から取得した画像データの車両を認識し、認識した車両の座標を位置(緯度、経度)に変換する座標変換部352と、座標変換部352で変換された車両の位置の履歴情報を記憶部340に保存する履歴情報保存部354と、識別情報と履歴情報とを照合し、識別情報に該当する履歴情報を識別する履歴情報識別部356と、識別された履歴情報に基づき車両に位置情報(車両位置と時刻)を送信する位置情報送信部358とを有する。
【0030】
識別情報受信部350は、測定エリア内を走行する種々の車両から識別情報を受信し、受信した識別情報を、例えば、識別情報に含まれる車両IDに基づき車両ID毎に分類し、保持する。
【0031】
座標変換部352は、1つまたは複数の撮像カメラ200から送信された画像データを取得し、画像データが圧縮されている場合にはこれを解凍する。そして、画像データに含まれる撮像カメラIDに基づき画像データを撮像カメラID毎に分類する。
【0032】
撮像カメラ200が送信する画像データは、単位時間当たり複数の静止画フレームから構成されるものであり、位置情報算出部334は、各静止画においてその中に映された1つまたは複数の車両を認識し、認識した車両の位置を算出する。位置の算出は、撮像カメラ200が撮像する撮像空間の2次元の座標を実空間の位置(緯度、経度)に変換することにより行われる。
【0033】
例えば、
図8(A)に示すように車両M1、M2、M3、M4を撮像した画像データであるとき、座標変換部352は、画像認識処理により車両M1~M4を矩形状の認識領域P1~P4で切り出す。次に、
図8(C)に示すように、フレーム画像内の各グリッドの座標を緯度/経度の位置に変換するための変化テーブルを用いて、認識領域P1~P4の決められた変換点(例えば、矩形の底辺の中点)を緯度/経度の位置に変換する。変換点に一致する座標がない場合には、近接する座標が用いられる。グリッドの座標の間隔または粗さは適宜選択することができる。こうして、各フレーム画像において、車両M1~M4の緯度/経度の位置が時系列的に順次算出される。例えば、
図9に示すように、車両M3の時刻と緯度/経度とを対にする位置情報が画像データから算出される。
【0034】
また、1つの空間を複数の撮像カメラで撮像したとき、複数の撮像カメラによって同一の車両が撮像されることがある。このような場合、それぞれの撮像カメラの画像データから算出された車両の緯度/経度と移動ベクトルとが等しい場合には、それぞれの車両を同一とみなす共有機能が設けられる。例えば、
図10に示すように、撮像カメラ200_1および200_2によって車両M3が撮像され、その結果、座標変換部352によって、同一の時刻に同一の座標が算出され、かつその移動ベクトル(位置差分)が等しければ、2つの位置情報は共通のものとして1つに統合される。
【0035】
さらに座標変換部352は、車両の緯度/経度を算出するに際し誤差を補正する機能を備えることができる。
図11(A)に示すように、撮像カメラで撮像した画像データは、撮像カメラから遠ざかる物体ほど誤差さが大きくなる。
図11(B)に示すように、人物などの移動体の認識領域P5を変換点Q5(矩形の底辺の中点)で変換した場合、人物の奥行方向はそれほど大きくないため誤差は小さいが、奥行方向に長さのある車両の認識領域P6を変換点Q6で変換した場合、その長さが大きいため誤差が大きくなる。そこで、車両の奥行方向の緯度/経度に応じて誤差を算出し、
図11(C)に示すように推定誤差を位置情報に付加することができる。あるいは、認識領域P6のY方向の高さが一定以上である場合には、変換点Q6をY方向にオフセットさせた変換点Q7で変換するようにしてもよい。「1m」、「1.2m」は、緯度方向の誤差である。
【0036】
さらに座標変換部352は、撮像カメラの取付け位置が風や地震などで移動してしまった場合にも誤差が生じるため、この誤差を補正する機能を備えることができる。具体的には、位置が変化することがない地上の目標物(例えば、信号機など)を撮像した基準画像を用意し、基準画像に映された目標物と受信した画像データに映された目標物の差分を抽出し、受信した画像データの補正を行う。例えば、
図12に示すように、まず動くことがない信号機Tが映された基準画像Rが用意され、この基準画像Rの信号機Tと、受信した画像データの信号機Tとの位置ズレを確認し、そのズレを補正する。
【0037】
履歴情報保存部354は、座標変換部352で算出された各車両の位置情報の履歴情報を保存する。すわわち、座標変換部352によって画像フレーム単位で各車両の位置情報が算出されるため、履歴情報保存部354は、これを履歴情報として保存する。なお、位置情報に含まれる時間は、撮像カメラ200からの画像データに含まれる撮像時間や画像フレームの時間間隔に基づき決定することができる。また、履歴情報保存部354は、座標変換部352によって抽出された認識領域内の車両の外観情報(例えば、車両の色、ナンバープレート、その他、外観の特徴)を、車両の履歴情報に関連付けして保存する。
【0038】
履歴情報識別部356は、識別情報受信部350で識別情報が受信されると、当該識別情報と履歴情報とを照合し、識別情報に該当する履歴情報を識別する。1つの態様では、識別情報に含まれる車両の移動情報や外観情報と一致する履歴情報が識別される。例えば、識別情報に含まれる車両の移動ベクトルに一致する移動ベクトルを持つ履歴情報が識別される。また、他の態様では、識別情報に含まれる車両の外観情報に一致する外観情報を持つ履歴情報が識別される。
【0039】
位置情報送信部358は、履歴情報識別部356によって識別された履歴情報に基づく位置情報(車両位置とその時刻)を、該当する車両の車載装置に送信する。これにより、識別情報を送信した車両は、位置測定サーバー300によって測定された高精度の位置情報を得ることができる。
【0040】
図7は、位置測定サーバー300の制御部330の動作フローである。座標変換部352は、撮像カメラ200からの画像データに映された車両を画像認識し、画像認識した車両の緯度/経度の位置を算出し、履歴情報保存部354は、算出された車両の位置と時間とを履歴情報として車両毎に保存する(S200)。次に、識別情報受信部350により識別情報の受信が監視され、識別情報が受信されると(S202)、履歴情報識別部356は、識別情報と各車両の履歴情報とを照合し、該当する車両の履歴情報を検索する(S204)。該当する履歴情報が識別できた場合には(S206)、位置情報送信部358は、識別情報に含まれる車載装置のアドレス宛に識別された位置情報を送信する(S208)。
【0041】
次に、本実施例の移動体の位置測定システムの全体の動作ついて説明する。
図13は、位置測定サーバー300と車載装置100との間のデータの送受を説明する図である。先ず、車両が位置測定システムの測定可能エリアに進入すると、車載装置100は、自車の特徴となる識別情報を位置測定サーバー300に送信する。例えば、外観特徴として、車両の色とナンバープレート、移動情報として時系列差分情報とが送信される。
【0042】
図14に、さらに詳細な識別情報の例を示す。時系列差分推移は、自立航法センサ(加速度・角速度センサ)で検出された時間と座標の差分から算出され、時間とそのときの差分「4m」が移動情報として位置測定サーバー300に送信される。なお、時系列差分情報は、車速パルスから算出することもできる。また、車両の外観識別情報として、車の色「赤」およびナンバープレート「8275」が位置測定サーバー300に送信される。外観情報は、予め記憶部に格納される。
【0043】
一方、撮像カメラ200で撮像された画像データを解析することで車両の色やナンバーが認識される。画像認識からの特徴と識別情報の外観特徴とが比較され、画像データ上の車両と実際の車両との同一性が識別される。また、画像認識から得られた座標(緯度/経度)の時系列差分推移が算出され、これが識別情報の移動情報と比較され、両者の同一性が識別される。
【0044】
図13に戻り、位置測定サーバー300は、識別情報に該当する位置情報を車載装置100に送信する。車載装置100は、受信した高い精度の位置情報に基づき自立航法により得られた自車位置を修正したり、受信した位置情報をナビゲーションに利用して表示部120に表示させる。このように本実施例によれば、GPS信号の測位環境が良好でないようなエリアにおいて、位置測定システム10に紐付けされていない不特定の車両の位置を高精度に測定することができる。また、撮像カメラの解像度が高ければ高いほど、正確に移動体の位置測定を行うことができる。さらに撮像カメラの台数が多ければ、位置測定の精度が高まり、かつ広範囲のエリアを測定することができる。
【0045】
次に、本発明の他の実施例について説明する。上記実施例では、移動体として車両の位置を測定する例を示したが、本例では、移動体として携帯端末装置(例えば、スマートフォンなど)の位置を測定するものである。
【0046】
図15に、本例の移動体の位置測定システム10Aの概要を示す。ここでは、複数の撮像カメラ200_1、200_2は、オフィス空間を撮像するように任意の位置に設置される。オフィス空間内を複数の人物U1、U2が携帯端末装置400を所持しながら移動し、その様子が撮像カメラ200によって撮像され、撮像された画像データが位置測定サーバー300に逐次アップロードされる。一方、複数の人物U1、U2が所持するそれぞれの携帯端末装置400は、識別情報を位置測定サーバー300に送信し、位置測定サーバー300によって測定された位置情報を受信する。
【0047】
図16に携帯端末装置400の内部構成例を示す。携帯端末装置400は、位置測定サーバー300と通信を行う通信部410、表示部420、記憶部430、加速度・角速度センサ440、および制御部450を含む。制御部450は、上記した実施例と同様に、位置情報取得プログラムを実行する。
【0048】
図17に、位置情報取得プログラムの動作フローを示す。人物U1、U2または携帯端末装置400が位置測定システムの測定可能エリアに進入するか否かが判定される(S300)。この判定には、加速度・角速度センサ440の自立航法センサにより検出された位置情報が用いられる。あるいは、人物U1、U2が携帯端末装置を操作し進入したことを判定させるようにしてもよい。
【0049】
次に、人物U1、U2または携帯端末装置400が測定エリアに進入すると、携帯端末装置400は、識別情報を位置測定サーバー300送信する(S302)。識別情報は、上記した実施例と同様に、携帯端末装置400の移動情報や外観情報を含む。但し、ここでの外観情報は、人物の特徴を表す情報であり、例えば、人物の服装の色などである。携帯端末装置400は、位置測定サーバー300から位置情報(端末位置とその時刻)を受信すると(S304)、位置情報に基づき端末位置を計算し、これを表示する(S306)。
【0050】
図18は、サーバー300の動作フローを示す図である。サーバー300のステップS400~S408の動作は、実質的に上記した
図7に示す動作と同様であり、携帯端末装置400からの識別情報を受信すると、当該識別情報に該当する携帯端末装置の位置情報を送信する。
【0051】
以上説明したように、本実施例によれば、移動体側がGPS機能を搭載している場合、GPS信号を受信ができないようなエリアでも、サーバーとのネットワーク通信ができれば、サーバーから高精度の位置情報を取得できる。また、移動体側がGPS等の位置を特定するデバイスを搭載していなくても、通信機能を搭載していれば本発明を利用することができる。さらに撮像カメラの位置、性能、数を見直すことで、フレキシブルな位置測定システムの構成を構築することができる。さらに位置測定の精度自体は画像認識で行われるため、外乱による精度の劣化は少ない。さらにGPSの精度が出せないエリアで使うことで位置精度を高めるための補足情報を提供することができる。さらに撮像カメラ側が情報を持っていない移動体に対しても位置測定が可能になる。
【0052】
本発明の適用例として、車載装置の位置特定の精度向上(自動運転への補足情報)、歩行者が持つモバイルデバイスの位置特定の精度向上、オフィスの従業員の動体監視(だれが、どこにいる)、工場での従業員の動態監視(ムリムダムラの可視化)、コンビニ監視カメラと連動することによる発進誤操作防止、家のガレージに設置することにより、前方に子供がいた場合の事故防止、駐車場の誘導対応(特に地下駐車場などGPSが届かない領域に対する位置特定)、巨大ショッピングモールのフロア内の位置表示、自動車学校の動体監視と自動運転補正などである。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:位置測定システム 100:車載装置
110:通信部 120:表示部
130:記憶部 140:GPS受信部
150:加速度・角速度センサ 160:制御部
200:撮像カメラ 300:位置測定サーバー
310:画像データ受信部 320:通信部
330:制御部 340記憶部
M1~M4:車両
P1~P5:認識領域