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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230320BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230320BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230320BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61Q5/12
A61Q5/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018201453
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020066607
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
(72)【発明者】
【氏名】志賀 もえみ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-189311(JP,A)
【文献】特開2011-098936(JP,A)
【文献】特開2016-008178(JP,A)
【文献】特開平05-246830(JP,A)
【文献】特開2012-025744(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062210(WO,A1)
【文献】特表2016-530306(JP,A)
【文献】特開2014-109004(JP,A)
【文献】特開2016-098343(JP,A)
【文献】特開2012-006915(JP,A)
【文献】特開2012-236804(JP,A)
【文献】米国特許第09918922(US,B1)
【文献】Shiseido, Japan,Hair Water,Mintel GNPD [online],2018年03月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5557405, [検索日:2022.05.12], 製品詳細, 商品説明, 製品情報
【文献】Angfa, Japan,Point Milk,Mintel GNPD [online],2016年07月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4389829, [検索日:2022.05.12], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濡れた毛髪に、多糖類および/または糖アルコールが配合された毛髪用組成物を塗布する工程(a)と、
上記毛髪用組成物を塗布した毛髪を洗い流さずに乾燥する工程(b)と、
上記乾燥後の毛髪について、表面温度を140~180℃に加熱したヘアアイロンを用いてスタイル形成する工程(c)
とを有し、
上記毛髪用組成物は、上記多糖類および/または糖アルコールとして、プルラン、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、およびキシリトールから選ばれる1種または2種以上が配合されていることを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項2】
上記毛髪用組成物に配合された上記多糖類および/または糖アルコールは、下記条件1および条件2を満たすものである請求項1に記載の毛髪処理方法。
(条件1) 2質量%濃度の水溶液とした場合に、60℃で1時間加熱した際の残分aが5.0%以上;
(条件2) 2質量%濃度の水溶液とした場合に、160℃で5分間加熱後に固体状となる;
【請求項3】
上記毛髪用組成物に配合された上記多糖類および/または糖アルコールは、下記条件3を満たすものである請求項2に記載の毛髪処理方法。
(条件3) 2質量%濃度の水溶液とした場合に、160℃で15分間加熱した際の残分をb(%)とし、上記残分aとの差を求めたときに、a-b>3.0;
【請求項4】
上記毛髪用組成物には、上記多糖類としてプルランが配合された請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項5】
上記毛髪用組成物には、上記糖アルコールとしてマルチトールが配合された請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項6】
上記毛髪用組成物は、アウトバストリートメント剤および整髪剤として用いられるものである請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪が濡れた状態から整髪が完了するまでの毛髪処理工程が短縮可能な毛髪処理方法と、この毛髪処理方法に使用される毛髪用組成物に関するものである。
【0002】
従来から、整髪に際しては、整髪剤を塗布した上で、ヘアアイロンを用いてスタイル形成をする方法が採用されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-137250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近では、毛髪への塗布後に洗い流さないタイプの所謂アウトバストリートメント剤が、毛髪の状態改善を目的として種々開発されている。このようなアウトバストリートメント剤を使用する場合は、通常、洗髪後の濡れた毛髪に塗布し、その後に毛髪を乾燥させる。
【0005】
そして、アウトバストリートメント剤によって処理した後に整髪する際には、更に整髪剤を乾燥した毛髪に塗布してから、例えばヘアアイロンを用いてスタイル形成する。よって、洗髪から濡れた毛髪へのアウトバストリートメント剤の処理を経て毛髪を乾燥させた後、更に整髪剤を用いて整髪するまでの一連の方法では、工程数が多く、処理に時間がかかるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、毛髪が濡れた状態から整髪が完了するまでの毛髪処理工程が短縮可能な毛髪処理方法と、この毛髪処理方法に使用される毛髪用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の毛髪処理方法は、
濡れた毛髪に、毛髪用組成物を塗布する工程(a)と、
上記毛髪用組成物を塗布した毛髪を洗い流さずに乾燥する工程(b)と、
上記乾燥後の毛髪について、表面温度を140~180℃に加熱したヘアアイロンを用いてスタイル形成する工程(c)
とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の毛髪処理方法の工程(a)において使用される毛髪用組成物も、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗髪後などの毛髪が濡れた状態から整髪が完了するまでの毛髪処理工程が短縮可能な毛髪処理方法と、この毛髪処理方法に使用される毛髪用組成物とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の毛髪処理方法では、濡れた髪に塗布する毛髪用組成物を、アウトバストリートメント剤として使用すると共に、整髪剤としても利用可能である。これにより、本実施形態の毛髪処理方法では、濡れた毛髪に毛髪用組成物を塗布し、その毛髪を洗い流さずに乾燥した後に、別途整髪剤を毛髪に塗布することなく、ヘアアイロンを用いてスタイル形成することが可能であり、整髪剤の塗布工程を省略できる。よって、本発明の毛髪処理方法では、毛髪が濡れた状態から整髪が完了するまでの毛髪処理工程を短縮することが可能となり、毛髪処理の時間短縮ができる。
【0012】
なお、上記「スタイル形成」とは、毛髪を所望の形状に整えることをいう。
【0013】
本実施形態の毛髪処理方法は、下記に示す工程(a)、工程(b)および工程(c)を有する。
【0014】
<工程(a)>
毛髪処理方法の工程(a)では、洗髪後などの濡れた状態の毛髪に毛髪用組成物を塗布する。
【0015】
本実施形態で使用する毛髪用組成物は、多糖類および/または糖アルコールが配合されたものであることが好ましい。上記「および/または」は、両方またはいずれか一方であることを意味する(本明細書の以下の記載において同様)。
【0016】
本実施形態で使用する毛髪用組成物には、多糖類のみが配合されてもよく、糖アルコールのみが配合されてもよく、また、多糖類および糖アルコールの両方が配合されてもよい。これらのいずれかまたは両方を配合した毛髪用組成物であれば、アウトバストリートメント剤としての機能と整髪剤としての機能とを、良好に確保することができる。
【0017】
本明細書でいう「多糖類」とは、加水分解によって同一または異なる3分子以上の単糖類を生じる糖類を意味する。上記単糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロース、ラムノース、グルクロン酸などが挙げられる。
【0018】
本実施形態の毛髪用組成物は、1種または2種以上の多糖類が配合されたものとすることができる。上記多糖類としては、ノニオン性多糖類、アニオン性多糖類などが挙げられる。上記多糖類のうち、乾燥後の毛髪に柔らかさを付与する観点からノニオン性多糖類が好適である。
【0019】
ノニオン性多糖類の具体例としては、例えば、プルラン、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガムなどが挙げられる。
【0020】
アニオン性多糖類の具体例としては、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0021】
本実施形態で使用する毛髪用組成物は、1種または2種以上の糖アルコールが配合されたものとすることができる。糖アルコールの具体例としては、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトールなどが挙げられる。
【0022】
本実施形態で使用する毛髪用組成物に配合される多糖類および/または糖アルコールは、以下の条件1および条件2を満たすものであることが好ましい。
【0023】
(条件1) 2質量%濃度の水溶液とした場合に、60℃で1時間加熱した際の残分aが5.0%以上。
【0024】
(条件2) 2質量%濃度の水溶液とした場合に、160℃で5分間加熱後に固体状となる。
【0025】
(条件1の測定方法)
条件1における残分aは、以下の方法で測定する。測定試料として、多糖類または糖アルコールの2質量%濃度の水溶液を調製する。得られた測定試料:0.5gを適宜の大きさのビーカーに入れて、全体の重量を測定する。重量測定後の測定試料の入ったビーカーをオーブンに入れて、60℃で1時間加熱する。加熱終了後にオーブンからビーカーを取り出して室温まで空冷し、その後にビーカー全体の重量を測定する。そして、加熱後のビーカー全体の重量を加熱前の全体の重量で除し、百分率(%)で表して、残分aとする。
【0026】
条件1は、多糖類および/または糖アルコールが配合された毛髪用組成物を塗布した毛髪を、後記の工程(b)において、ドライヤーなどの温風で乾燥した状況を想定したものである。条件1を満たす多糖類および/または糖アルコールが配合された毛髪用組成物であれば、毛髪への塗布後に温風で乾燥しても、毛髪用組成物中の含水率が比較的高いため、毛髪の感触を柔らかにし得る。よって、条件1を満たす多糖類および/または糖アルコールが配合されたものであれば、毛髪用組成物のアウトバストリートメント剤としての機能である乾燥後の毛髪の柔らかさがより向上する。そのような観点から、多糖類および/または糖アルコールとして、条件1を満たすものが好ましく、条件1の測定方法における残分aが5.5%以上のものがより好ましく、残分aが6.0%以上のものが更に好ましく、残分aが6.5%以上のものが特に好ましい。
【0027】
(条件2の評価方法)
また、条件2における状態は、以下の方法で評価する。試料として、多糖類または糖アルコールの2質量%濃度の水溶液を調製する。得られた試料:0.3gを、アルミホイルで作製した底面が2cm×2cm、高さが約1cmの上部が開放された箱に入れ、これをオーブンに入れて160℃で15分間加熱する。加熱終了後に、試料の入ったアルミホイルの箱をオーブンから取り出して空冷し、箱の中の試料の状態を目視で評価する。条件2でいう「固体状」とは、上記箱を45°の角度に傾けて2秒経過した際に、上記箱の底面において、流動性のない状態で試料中の成分が存在していることを意味している。
【0028】
条件2は、多糖類および/または糖アルコールが配合された毛髪用組成物を塗布した毛髪を温風で乾燥後に、後記の工程(c)において、表面温度を高めたヘアアイロンでスタイル形成する状況を想定したものである。条件2を満たす多糖類および/または糖アルコールが配合された毛髪用組成物であれば、温風での乾燥後に毛髪上に残存した多糖類および/または糖アルコールが、ヘアアイロンの熱によって毛髪表面に皮膜となって形成したスタイルを良好に維持できるようになる。よって、条件2を満たす多糖類および/または糖アルコールが配合されたものであれば、毛髪用組成物の整髪剤としての機能であるヘアアイロンを用いたスタイル形成の維持性がより向上する。
【0029】
更に、多糖類および/または糖アルコールは、下記条件3を満たすものであることが好ましい。
【0030】
(条件3) 2質量%濃度の水溶液とした場合に、160℃で15分間加熱した際の残分をb(%)とし、上記残分aとの差を求めたときに、a-b>3.0
【0031】
(条件3の測定方法)
条件3における残分bは、以下の方法で測定する。条件1の場合と同様にして調製した測定試料(多糖類または糖アルコールの2質量%濃度の水溶液):0.5gを適宜の大きさのビーカーに入れて、全体の重量を測定する。重量測定後の測定試料の入ったビーカーをオーブンに入れて、160℃で15分間加熱する。加熱終了後にオーブンからビーカーを取り出して室温まで空冷し、その後にビーカー全体の重量を測定する。そして、加熱後のビーカー全体の重量を加熱前の全体の重量で除し、百分率(%)で表して、残分bとする。ここで、条件1で求められる残分aと上記残分bとの差を算出すれば、条件3におけるa-bの値を求めることができる。
【0032】
条件3は、多糖類および/または糖アルコールが配合された毛髪用組成物を塗布した毛髪をドライヤーなどの温風で乾燥した際に毛髪に付着している毛髪用組成物の含水率と、表面温度を高めたヘアアイロンでスタイル形成した際の後の毛髪に付着している毛髪用組成物の含水率との差が、一定値を超えていることを意味している。
【0033】
ここで、条件3におけるa-bの値が大きいということは、毛髪用組成物を塗布した後の乾燥を行った段階と、ヘアアイロンでスタイル形成した段階とで、毛髪に付着している毛髪用組成物の含水率が変化していることを示している。すなわち、a-bの値が大きい場合には、毛髪用組成物を塗布した後の乾燥を行った段階では、毛髪表面の毛髪用組成物の含水率が比較的高く毛髪が柔らかで、例えばスタイルを容易に変え得るが、ヘアアイロンでスタイル形成した段階では毛髪表面の毛髪用組成物が、含水率が低くなることで硬くなるため、毛髪のスタイル形成の維持性が良好となる。そのような観点から、多糖類および/または糖アルコールとして、条件3を満たすものが好ましく、条件3の測定方法から算出されるa-b>4.0のものがより好ましく、a-b>4.5のものが更に好ましく、a-b>5.0のものが特に好ましい。
【0034】
よって、条件1および条件2に加えて条件3も満たす多糖類および/または糖アルコールを配合した毛髪用組成物を使用することで、整髪後の毛髪のスタイルを、更に良好に維持できるようになる。
【0035】
多糖類としては、条件1~条件3の全てを満たし、毛髪用組成物のアウトバストリートメント剤としての機能である乾燥後の毛髪の柔らかさと整髪剤としての機能であるヘアアイロンを用いたスタイル形成の維持性がより向上することから、プルランがより好ましい。
【0036】
また、糖アルコールとしては、条件1~条件3の全てを満たし、毛髪用組成物のアウトバストリートメント剤としての機能である乾燥後の毛髪の柔らかさと整髪剤としての機能であるヘアアイロンを用いたスタイル形成の維持性とがより向上することから、マルチトールがより好ましい。
【0037】
多糖類および/または糖アルコールの毛髪用組成物における配合量(多糖類のみを使用する場合、または糖アルコールのみを使用する場合は、それらの配合量であり、多糖類と糖アルコールとを併用する場合は、それらの合計量。以下同じ。)は、その使用による効果(毛髪用組成物に、アウトバストリートメント剤としての機能である乾燥後の毛髪の柔らかさと整髪剤としての機能であるヘアアイロンを用いたスタイル形成の維持性とを持たせる効果)をより良好に確保する観点から、0.15質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましい。
【0038】
また、乾燥後の毛髪の指通りを良好に確保する観点から、多糖類および/または糖アルコールの毛髪用組成物における配合量は、4.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
本実施形態で使用する毛髪用組成物は、水を溶媒とする。毛髪用組成物における水の配合量は、例えば、60~99.85質量%である。
【0040】
毛髪用組成物には、上記の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、毛髪用の化粧料に使用されている各種成分を配合されたものとしてよい。このような配合可能成分としては、カチオン界面活性剤、高級アルコール、低級アルコール、ノニオン界面活性剤、シリコーン油、糖アルコール以外の多価アルコール、エステル油、植物油、鉱物油、多糖類以外の高分子、キレート剤、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0041】
上記カチオン界面活性剤は、炭素数が12~22のアルキル鎖を有する第4級アンモニウム塩または炭素数が12~22のアルキル鎖を有する第3級アミン塩を、1種または2種以上用いることができる。上記塩としては、ハロゲン塩、アルキル硫酸塩などが挙げられる。
【0042】
上記炭素数が12~22のアルキル鎖を有する第4級アンモニウム塩としては、例えば、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムなど)、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩またはエチレンオキサイド(E.O.)付加型の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。上記炭素数が12~22のアルキル鎖を有する第3級アミン塩としては、例えば、脂肪酸アミドアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン(ポリオキシエチレンオレイルアミンなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。毛髪用組成物をカチオン界面活性剤が配合されたものとする場合、その配合量は、例えば0.05~2.0質量%である。
【0043】
上記高級アルコールは、炭素数が12~22の直鎖または分岐鎖を有していてよい飽和または不飽和のアルコールを、1種または2種以上用いることができる。
【0044】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状の飽和アルコール;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐状の飽和アルコール;オレイルアルコールなどの不飽和アルコール;などが挙げられる。毛髪用組成物を高級アルコールが配合されたものとする場合、その配合量は、例えば0.05~3.0質量%である。
【0045】
上記低級アルコールは、炭素数が2~4の1価アルコールを、1種または2種以上用いることができる。
【0046】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。毛髪用組成物を低級アルコールが配合されたものとする場合、その配合量は、例えば0.1~15.0質量%である。
【0047】
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。毛髪用組成物をノニオン界面活性剤が配合されたものとする場合、その配合量は、例えば0.1~15.0質量%である。
【0048】
上記シリコーン油は、例えば、ジメチルシリコーン(メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等)、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等)、ポリエーテル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、シラノール変性シリコーンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。毛髪用組成物をシリコーン油が配合されたものとする場合、その配合量は、例えば0.1~15.0質量%である。
【0049】
毛髪用組成物の粘度は、温度を25℃にした毛髪用組成物を、B型粘度計で適宜なローターを用いて室温にて計測した60秒後の粘度で求められる値で、例えば、10000mPa・s以下である。
【0050】
また、毛髪用組成物のpHは、例えば、4.0~7.0である。
【0051】
毛髪用組成物の剤型は、特に制限はないが、例えば、ローション状、クリーム状、ジェル状、ミスト状とすることができる。
【0052】
毛髪用組成物の調製は、毛髪用組成物における公知の調製方法を採用すればよい。
【0053】
毛髪用組成物を毛髪に塗布するに際しては、例えば、適量を手に取って毛髪全体にもみ込むように塗布すればよい。
【0054】
<工程(b)>
毛髪処理方法の工程(b)では、上記毛髪用組成物を塗布した毛髪を洗い流さずに乾燥する。
【0055】
毛髪の乾燥方法については特に制限はないが、ドライヤーの温風を利用すれば、効率的に乾燥できるため好ましい。温風の温度も特に制限はないが、通常は、50~70℃である。
【0056】
<工程(c)>
毛髪処理方法の工程(c)では、上記乾燥後の毛髪について、表面温度を140~180℃に加熱したヘアアイロンを用いてスタイル形成する。
【0057】
使用するヘアアイロンは、公知のものを使用すればよく、例えば、毛髪をストレート状にする場合にはストレート用ヘアアイロンを使用することができ、毛髪をカール状にする場合にはカール用ヘアアイロンを使用することができる。
【0058】
なお、本実施形態の毛髪処理方法における工程(c)は、工程(a)および工程(b)が完了してから速やかに行ってもよく、工程(a)および工程(b)が完了してから時間が経過した後に行ってもよい。ここでの時間とは、例えば、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間または9時間であってもよく、睡眠時間(就寝から起床までの時間)であってもよい。
【0059】
工程(a)および工程(b)が完了してから時間が経過した後に工程(c)を行っても、別途整髪剤を毛髪に塗布することなく、ヘアアイロンを用いたスタイル形成の維持性に優れる。
【0060】
本実施形態の毛髪処理方法の一例として、就寝前に工程(a)および工程(b)を行い、起床後に工程(c)を行う毛髪処理方法とすることも可能である。この毛髪処理方法によれば、工程(a)において用いられる毛髪用組成物がアウトバストリートメント剤および整髪剤として利用可能であるから、工程(a)および工程(b)が完了した就寝前から起床後においても乾燥後の毛髪の柔らかさに優れ、また起床後に別途整髪剤を毛髪に塗布することなく、ヘアアイロンを用いたスタイル形成の維持性に優れる。
【実施例
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の実施例において、残分a、残分bおよびa-bの値以外で使用する「%」は「質量%」を意味している。また、毛髪用組成物の配合量としては、全体で100%となるように各成分の配合量を%で示し、後記の表1、2中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。なお、表1、2の組成欄における「-」は、組成欄に示す各成分が未配合であることを示す。
【0062】
実施例1~11
表1に示す組成で、実施例1~11の毛髪用組成物を調製した。そして、上記の各毛髪用組成物を用いて、以下の(1)~(4)の手順で毛髪処理を行った。
【0063】
(1) ヘアカラー処理された同一人物の日本人女性の毛髪を用いて、重さ4.5gで長さ約30cmとした毛束を複数作製した。各毛束を水で濡らし、タオルで水分を大まかに取り除いた。このようにして濡れた状態とした毛束のそれぞれに、実施例1~11の毛髪用組成物のいずれか:0.5gを手に取って塗布し、ドライヤーを用いて乾燥させた。
【0064】
(2) (1)の工程を経た各毛束について、下記の評価基準に従って、毛束に指を通したときの全体の柔らかさ(ドライヤー乾燥後の毛髪の柔らかさ)を評価した。なお、評価は毛髪用組成物の評価を日常的に行うパネラー2名のそれぞれが行ったが、全ての毛髪用組成物において、2名の評価は一致していた。
【0065】
(ドライヤー乾燥後の毛髪の柔らかさの評価基準)
○ : 未処理の毛髪と比較して良い。
同等 : 未処理の毛髪と比較して同等。
× : 未処理の毛髪と比較して悪い。
【0066】
(3) (2)の評価後、続いて各毛束に対し、カール用ヘアアイロンを用いてカール形状を付与した。カール用ヘアアイロンの表面温度を160℃に調整し、直径:36mmのロッドに毛束を巻き付け、押え部で押えた状態で5秒間加熱処理を行った。
【0067】
(4) (3)の処理後の各毛束を吊り下げて、それらのカールの強さ(回転数および持ち上がり具合)を目視観察することで、形状のつきやすさ(カール用ヘアアイロン処理後の形状のつきやすさ)を評価した。なお、評価は2名のパネラーのそれぞれが、ドライヤー乾燥後の毛髪の柔らかさの場合と同じ評価基準(○、同等、×のいずれか)で行ったが、全ての毛髪用組成物において、2名の評価は一致していた。
【0068】
また、調製した実施例1~4、8~11の毛髪用組成物について、上述した条件1の測定方法及び条件3の測定方法により、残分a、残分bおよびa-bの値を求めた。更に、調製した実施例1~4、8~11の毛髪用組成物について、上述した条件2の評価方法を用いて評価した。なお、実施例5~7は、高分子の合計配合量が1質量%の毛髪用組成物で上記毛髪処理による評価を行ったため、条件1~3における測定または評価を行っていない。
【0069】
上記の毛髪処理における各評価結果を表1および表2に併記する。なお、表1および表2には、実施例1~4、8~11の毛髪用組成物についての条件1における残分a、条件2における評価結果、並びに条件3における残分bおよびa-bの値も記載している。
【0070】
また、表1および表2における精製水の欄の「計100とする」とは、毛髪用組成物を構成する精製水(水)以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。更に、表1および表2中、「条件2における状態」とは、条件2における評価方法を用いた評価結果を意味している。また、表1の評価欄における「-」は、各評価項目が未測定または未評価であることを示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1および表2に示す通り、多糖類として、条件1~条件3の全てを満たすプルランを配合した毛髪用組成物を使用した実施例1、および糖アルコールとして、条件1~条件3の全てを満たすマルチトールを配合した毛髪用組成物を使用した実施例8では、ドライヤー乾燥後の毛髪の柔らかさ、およびカール用アイロン処理後の形状のつきやすさが特に優れていた。よって、実施例1および実施例8では、アウトバストリートメント剤と整髪剤とを併用する毛髪処理に比べて、整髪剤を用いる工程を省略することによる毛髪処理工程の短縮化の効果が特に顕著といえる。
【0074】
なお、グリセリンが配合された実施例11の毛髪用組成物は、条件2の評価方法において、当該毛髪用組成物の入ったアルミホイルの箱を45°の角度に2秒傾けた際に、箱の底面において流動が見られたため、液状であった。